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「背中が痛い」 「最近腰が曲がってきた気がする」 その症状は、もしかしたら骨粗鬆症(こつそしょうしょう)かもしれません。 「骨粗鬆症」とは、骨の中がスカスカになってもろくなり、骨折しやすくなる病気です。自覚症状がないまま進行し、気づいたときには骨折をしていた、というケースもあります。 この記事では、骨粗鬆症であらわれやすい症状や、病院に行くべきタイミングについてご紹介します。骨粗鬆症の症状について知ることで、早めの対策ができれば幸いです。 骨粗鬆症の主な症状 骨粗鬆症の主な症状は以下の3つです。 背中や腰の鈍い痛みが続く 身長が縮む・姿勢が悪くなる 転倒や軽い動作でも骨折するようになる 今の自分に出ている症状に当てはまるものがないか、確認してみましょう。 背中や腰の鈍い痛みが続く 骨粗鬆症が進むと、背骨がもろくなって小さな骨折を起こすことがあります。 これを「脊椎圧迫骨折」といい、気づかないうちに起きているケースも珍しくありません。 また、骨の内部の「骨梁(こつりょう)」と呼ばれる細かい骨の構造が折れることによる痛みもあります。(文献1) 背中や腰の痛みが続くと「年のせいかな」「少し無理をしたからかな」と思いがちですが、実は骨粗鬆症が関係している可能性もあるのです。 身長が縮む・姿勢が悪くなる 「最近、昔より背が低くなった気がする」そんな変化も、骨粗鬆症のサインのひとつです。 背骨がつぶれるように骨折・変形してしまうと、自然と姿勢も丸くなり、身長が数センチ縮むことがあります。 とくに、若いころと比べて男性は6cm、女性は4cm以上の変化がある場合は、背骨の骨折が進んでいる可能性が高いといわれています。(文献2) 転倒や軽い動作でも骨折するようになる ふとした拍子に尻もちをついたり、重い荷物を持ち上げたりしただけで、骨が折れてしまうのも骨粗鬆症の症状のひとつです。 とくに背中、太もものつけ根、手首、腕のつけ根、肋骨などが折れやすくなります。 こうした骨折が重なると、さらに体を動かすのがつらくなり、生活に大きな影響を与えます。(文献1) 骨粗鬆症の初期症状は気づきにくい 骨粗鬆症は、骨がもろくなっても、痛みなどの自覚症状が出るとは限りません。多くの場合、初めて気づくのは「骨折してから」です。(文献1) とくに閉経後の女性は、女性ホルモンの減少によって骨密度が急激に低下しやすくなります。(文献2) 痛みがなくても、定期的に骨密度を測る、食事や運動に気を配るといった予防意識が大切です。 また、過度なダイエットやステロイドなどの薬の影響でも、骨が弱くなることがあります。(文献3) 骨粗鬆症の症状セルフチェックリスト 骨粗鬆症の兆候に気づくには、まずは自分の体の変化をチェックしてみましょう。 このチェックリストは、公益財団法人 骨粗鬆症財団が公開する「骨の健康度チェック表」より引用しています。(文献5) 次の項目のうち、当てはまるものの点数を合計してください。 あなたの骨の健康度がわかります。 1 牛乳、乳製品をあまりとらない 2点 2 小魚、豆腐をあまりとらない 2点 3 たばこをよく吸う 2点 4 お酒はよく飲む方だ 1点 5 天気のいい日でも、あまり外に出ない 2点 6 体を動かすことが少ない 4点 7 最近、背が縮んだような気がする 6点 8 最近、背中が丸くなり、腰が曲がってきた気がする 6点 9 ちょっとしたことで骨折した 10点 10 体格はどちらかと言えば細身だ 2点 11 家族に「骨粗鬆症」と診断された人がいる 2点 12 糖尿病や、消化管の手術を受けたことがある 2点 13 (女性)閉経を迎えた(男性)70歳以上である 4点 引用:公益財団法人 骨粗鬆症財団|骨の健康度チェック表 結果の見方 あなたの合計点数に当てはまる項目をご覧ください。 2点以下 今は心配ないと考えられます。これからも骨の健康を維持しましょう。 改善できる生活習慣があれば、改善しましょう。 3点~5点 骨が弱くなる可能性があります。気を付けましょう。 6点~9点 骨が弱くなっている危険性があります。注意しましょう。 10点以上 骨が弱くなっていると考えられます。 一度医師の診察を受けてみてはいかがですか。 引用:公益財団法人 骨粗鬆症財団|骨の健康度チェック表 ご自身の骨の状態を知る目安として、参考にしてみてください。 骨粗鬆症の症状を放置するリスク3選 骨粗鬆症の症状を放置すると、下記のようなリスクが考えられます。 骨折の連鎖で、さらに骨がもろくなる 痛みや動きにくさで、日常生活が制限される 寝たきりや介護が必要な状態になる 本章で骨粗鬆症を放置するリスクを理解し、早期発見・早期対策を考えましょう。 骨折の連鎖で、さらに骨がもろくなる 背骨が一カ所でも折れると、そこに負担が集中し、周りの骨まで折れやすくなります。 たとえば、太ももの付け根を骨折した場合、反対側の太ももの骨を骨折してしまう人は10人に1人というデータもあります。(文献6) 骨折の連鎖が起きる原因は、元々骨が弱くなっているためや骨折により転びやすくなること、反対側の骨に力が入りやすいことなどが考えられます。(文献6) 痛みや動きにくさで、日常生活が制限される 骨粗鬆症からの骨折による背中や腰の痛みは、日常生活にじわじわと影響を及ぼします。 掃除や洗濯、買い物といった家事が負担になったり、外出をためらうようになったりすることもあるでしょう。 また、重い荷物を持ち上げるのが怖くなったり、孫を抱っこしたくてもできなかったりと、これまで当たり前にできていた動作が困難になっていきます。 痛みや動きづらさのせいで行動範囲が狭くなると、日々の楽しみや穏やかな毎日がおびやかされる可能性があるのです。 寝たきりや介護が必要な状態になる 骨粗鬆症による背中や腰の痛み、そして度重なる骨折は、日常生活の自由を奪うだけでなく、寝たきりになるリスクにもつながります。 とくに注意したいのが、太もものつけ根(大腿骨)の骨折です。 この部位を骨折すると、長期間のリハビリが必要になるケースも少なくありません。 高齢になると手術やリハビリの負担は大きく、体力や筋力が一気に落ちがちです。 その結果、自分で歩けなくなり、介護が必要になるケースもあります。 転倒をきっかけに生活が一変することもあるため、日頃から骨の健康を意識しておくことが大切です。(文献7) 骨粗鬆症の症状が気になったら迷わず医療機関へ 骨粗鬆症は、痛みなどのはっきりした症状が出にくく、自分では気づきにくい病気です。 「少し背中が痛いだけ」「年のせいかな」と思っていても、実は骨がもろくなり、骨折のリスクが高まっていることもあります。 そのため、骨折してしまう前に、医療機関で骨の状態を確認しておくことが大切です。 病院では、骨密度の測定やレントゲン検査が行われ、現在の骨の状態や将来的なリスクがわかります。(文献6) 骨粗鬆症は、早めの対策で進行を防げる病気です。 「検査までは…」と迷っている方も、まずは相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 骨粗鬆症の症状について不安がある方や、どこに相談すれば良いかわからない方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。 骨粗鬆症の症状が出たときの対策と治療法 骨粗鬆症の主な治療法は下記のとおりです。 外科治療 薬物療法 生活習慣の見直し かかりつけの医師とも相談しながら、適切な治療を進めていきましょう。 外科治療 骨折が見つかった場合は、状態に応じて外科的な治療が行われます。 もっとも一般的なのは、コルセットやギプスなどを使って骨を固定し、安静に過ごす方法です。 こうすることで骨の回復を促し、痛みを軽減させられます。 背骨の圧迫骨折などでは、簡易的なコルセットを数週間着けるだけで改善するケースもありますが、痛みが強い、骨のつぶれが大きい、骨が不安定な状態にあるといった場合には、手術が検討されることもあります。 おこなわれる手術は、骨を金属で固定する手術、骨にセメントを注入する手術などです。 再発や別の箇所の骨折を防ぐために、治療後も日常生活の工夫やリハビリの継続が大切です。(文献8) 薬物療法 骨粗鬆症の治療では、薬によるサポートも重要です。 薬は大きく分けて2種類あり、ひとつは「骨が溶け出すのを防ぐ薬」、もうひとつは「骨を新しく作る力を高める薬」です。 どちらの薬も「飲めばすぐ治る」わけではなく、継続して使うことで効果が発揮されます。 自己判断で中止してしまうと、せっかく改善していた骨密度が再び低下し、骨折のリスクが高まるおそれがあるため、続けることが大切です。 また、毎日服用するものや週に1回の服用で良いタイプなど、さまざまな種類の薬があります。(文献1) 気になることは医師や薬剤師に相談してみてください。 生活習慣の見直し 骨粗鬆症の予防や進行を抑えるためには、薬や治療だけでなく、毎日の生活習慣にも気を付ける必要があります。 なかでも重要なのが、栄養バランスのとれた食事と、無理のない運動の継続です。 食事の面では、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKを意識してとるようにしましょう。(文献1) カルシウムは骨の材料となる栄養素で、牛乳やチーズ、小魚、大豆製品などに豊富に含まれています。 ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、鮭や卵黄、きのこ類などから摂取可能です。 ビタミンKは骨の質を高める役割があり、納豆や小松菜などに多く含まれます。(文献9) 運動については、激しい運動をする必要はありません。 散歩や階段の上り下り、買い物など、日常の中で体を動かすことを意識するだけでも太ももの付け根の骨折予防になるといわれています。(文献1) また、喫煙や過度の飲酒は骨を弱くする原因になるといわれています。 これらを控えることも、骨を守る上で大切な生活習慣のひとつです。 生活の中でできる小さな工夫を積み重ねていくことで、将来の骨折リスクを下げ、健やかな毎日を送ることができます。(文献10) 骨粗鬆症の症状があらわれたら早めの受診を心がけよう 背中の痛みや身長の縮みは、骨粗鬆症のサインかもしれません。 骨粗鬆症は、自覚症状が出にくく、気づかないうちに進行してしまう病気です。 そして、いったん骨折すると、その後の生活に大きく影響してしまう可能性もあります。 背中や腰の痛み、姿勢の変化、骨折しやすさなどが気になるときは、できるだけ早めに医療機関に相談してみてください。 骨密度の検査やレントゲン検査を受けることで、自分の骨の状態がわかります。 予防も治療も、早いうちから始めることが大切です。 「まだ大丈夫」と思わず、体からのサインにしっかり目を向けてあげましょう。 骨粗鬆症の症状に関するよくある質問 骨粗鬆症の症状はどんな痛みがありますか? 骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折では、「体動時腰痛(たいどうじようつう)」と呼ばれる特徴的な痛みがあらわれることがあります。 とくに、寝ている姿勢から起き上がろうとしたときに鋭い痛みが走り、一度立ち上がってしまえば痛みが軽減されるのが特徴です。(文献11) 骨粗鬆症は男性でもなりますか? 男性でも骨粗鬆症になるケースはあるため、注意が必要です。 骨粗鬆症というと女性の病気と思われがちですが、実は患者の4人に1人は男性だといわれています。 とくに病気や薬、栄養不足などが重なると、男性でも骨密度が低下しやすくなります。(文献12) 男性だから大丈夫とは思わず、違和感があれば早めに検査を受けることが大切です。 参考文献 (文献1) 河路 秀巳,伊藤 博元「骨粗鬆症の診断と治療」『日医大医会誌』5(1),pp41-46,2009,https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/5/1/5_1_41/_pdf (文献2) 折茂 肇「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」2015年6月,http://www.josteo.com/data/publications/guideline/2015_01.pdf#page=37 (文献3) 日本臨床内科医会「骨粗鬆症の原因」女性のミカタ,https://jyoseinomikata.jp/osteoporosis/cause.html (文献4) 公益財団法人骨粗鬆症財団「どんな人がなりやすい」骨粗鬆症財団ホームページ,https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/tabid250.html#:~:text=%E9%AA%A8%E7%B2%97%E9%AC%86%E7%97%87%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%80%81%E5%8D%B5%E5%B7%A3%E6%91%98%E5%87%BA%E3%83%BB%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%83%BB,%E9%96%A2%E4%BF%82%E3%81%AA%E3%81%8F%E7%99%BA%E7%97%87%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 (文献5) 公益財団法人骨粗鬆症財団「骨の健康度チェック表」骨粗鬆症財団ホームページ,https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/osteoporosis/inspection_treatment/03/02/Op_health_check_Leaflet.pdf (文献6) 竹内 靖博.「骨粗鬆症の診断とガイドラインの変遷」『日本内科学会雑誌』111(4),pp732-738,2022,https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/4/111_732/_pdf (文献7) 日本臨床内科医会「骨粗鬆症ってどんな病気?」女性のミカタ,https://jyoseinomikata.jp/osteoporosis/ (文献8) 独立行政法人国立病院機構 村山医療センター「骨粗鬆症に関するご案内」村山医療センターホームページ,https://murayama.hosp.go.jp/orthopedics/illness/kotsusosho.html (文献9) 公益財団法人骨粗鬆症財団「骨粗鬆症における栄養」骨粗鬆症財団ホームページ,https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/nutrition/tabid257.html (文献10) 公益財団法人骨粗鬆症財団「タバコや酒の影響について」骨粗鬆症財団ホームページ,https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/nutrition/cigarette.html (文献11) 一般社団法人日本整形外相学会「骨折について」日本整形外傷学会ホームページ,2009年7月,https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip02.html (文献12) 日本医師会日医ニュース「男性の骨粗鬆症」健康ぷらざ,2018年6月20日,https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/503.pdf
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「同年代の人が骨粗鬆症で骨折して大変そう。自分は大丈夫かな?」 「骨粗鬆症の検査を受けたことがないから、何をするのかわからない」 このような不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。 骨粗鬆症は自覚症状がないまま進行し、気づいたときには骨が折れやすい状態になっていることもあります。 知らずにそのまま放置してしまうリスクはさらに高まり、実際に骨折して日常生活に影響を及ぼすかもしれません。 だからこそ骨粗鬆症の検査は、自身の骨の状態を知り、早めに適切な対策を始めるための一歩となります。 本記事では、骨粗鬆症の4つの検査方法や検査を受けるべき人の特徴、検査が可能な場所を解説します。 骨の健康について考えるきっかけとなれたら幸いです。 骨粗鬆症の検査方法 骨粗鬆症のおもな検査は、以下のとおりです。 骨密度検査(骨量測定) 血液検査・尿検査(骨代謝マーカーの検査) レントゲン検査 身長測定 これらの検査の結果から、骨粗鬆症の診断や治療方針の決定に必要な情報が得られます。 それぞれ詳しく見ていきましょう。 骨密度検査(骨量測定) 骨密度検査は、骨の中にどのくらいのミネラル成分が含まれているかを調べる検査です。 一般的に、ミネラル成分が少ないほど骨密度が低いとされ、骨がもろく骨折しやすい状態だと考えられています。 骨密度のおもな測定方法は、以下のとおりです。 骨量の測定方法 説明 使用する機械 DXA(デキサ)法 ・脚の付け根と腰の骨密度を測定する ・精度が高い分、時間がかかる レントゲン(X線) MD法 ・手の骨密度を測る ・簡単だが、精度が下がる QUS法 ・かかとの骨密度を測る ・被ばくせず簡便だが、精度の誤差が大きい 超音波 自身の希望や、医療機関によって検査方法は異なります。 たとえば「少し時間がかかってもしっかりとした検査を受けたい」といった方にはDXA法がおすすめです。一方、「まずは手軽に検査してみたい」と考える方にはQUS法が適しています。 まずは、近くの医療機関にどんな検査があるか問い合わせてみるのが良いでしょう。 血液検査・尿検査(骨代謝マーカーの検査) 血液検査や尿検査では「骨代謝マーカー」とよばれる項目を調べます。 ヒトの骨は、新しい骨が作られ、古い骨が壊されて吸収される「骨代謝」のサイクルを常にくり返しています。(文献1) 骨代謝マーカーは骨の代謝の過程で出てくる物質のことで、これらの数値を調べることで骨の「壊れるスピード」と「作られるスピード」のバランスがどうなっているのかがわかるのです。 おもに以下の項目をチェックします。 骨代謝マーカーの種類 検査項目 説明 骨吸収マーカー ・TRAPC5b(酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ) ・DPD(デオキシピリジノリン) ・NTX(Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド) ・CTX(Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド) ・1CTP(Ⅰ型コラーゲンC末端テロペプチド) <高い場合> 骨吸収(骨の破壊)が進んで骨密度の低下を招くリスクがある <低い場合> 骨の代謝が低下している可能性がある 骨形成マーカー ・BAP(骨型アルカリフォスファターゼ) ・OC(オステオカルシン) ・ucOC(低カルボキシル化オステオカルシン) ・P1NP(Ⅰ型コラーゲンN-プロペプチド) ・P1CP(Ⅰ型コラーゲンC-プロペプチド) 骨吸収が起こってはじめて骨形成がはじまるため、単独で高くなることは少ない 参考:骨代謝とは|日本骨代謝学会(文献1) たとえば、骨吸収マーカーが高く、骨形成マーカーが正常である場合「骨が壊れるスピードは速くなっているのに、新しく骨が作られるスピードは普段どおり」といった状態を示しています。 つまり、骨の破壊に形成が追いつかず、骨の量が減少しやすい状況です。 骨代謝マーカーの検査は、骨の代謝のどの部分に異常があるのかを明らかにします。 それによって、将来的に骨密度がどのくらい減少しやすいのか、骨折のリスクが高いのかを評価できるのです。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨折や骨の変形の有無、骨の密度を確認するためにおこないます。(文献2) 骨粗鬆症が進行している場合、次のような変化が画像に現れることがあります。(文献3) 背骨が変形している 骨の中の網目模様がはっきり見えない 背骨全体がいつもより黒っぽく見える また、気づかないうちに起きている背骨の小さな骨折を発見するのにも、レントゲン検査は有効です。 たとえば高齢者では、骨粗鬆症によって軽い衝撃で背骨が折れてしまうケースが少なくありません。(文献4) こうした骨折を早期に発見し、治療や予防につなげる役割を果たすのが、レントゲン検査です。 なお、レントゲンによる被ばく線量は少なく、健康への影響もほとんどないと言われているため、過度に心配せず検査を受けてみましょう。 身長測定 身長の測定は、骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折や変形を早期発見する手がかりになります。 とくに背骨がつぶれるように変形すると、数センチ単位で身長が縮むことも少なくありません。 いくつかの海外研究では、若いころと比較して身長の低下がある場合、背骨の骨折のリスクが高まると報告しています。(文献2) 25歳頃の身長と比較してどの程度縮んでいるかの確認が、骨粗鬆症の診断に役立ちます。 【検査推奨】骨粗鬆症になりやすい人の特徴 骨粗鬆症は、以下にあてはまる方に起こりやすいと言われています。(文献5) 閉経後の女性 高齢 やせ型 運動不足 喫煙、飲酒 骨折既往歴 ステロイド服用歴 遺伝(家族に骨粗鬆症の人がいる) これらの項目にあてはまるようでしたら、一度、骨の健康状態について検査を受けることをおすすめします。 「自分はどうなのだろう」と少しでも不安に感じたら、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 メール相談やオンラインカウンセリングに対応しているため、来院する手間もかかりません。ぜひご活用ください。 骨粗鬆症の検査は「整形外科」で受けるのが一般的 骨粗鬆症の検査は、整形外科で受けるのが一般的です。 整形外科は「骨の専門家」であり、検査から診断、治療までスムーズに進められるメリットがあります。 整形外科に限らず、内科や婦人科でも検査に対応している場合があります。 とくに女性ホルモンの影響が気になる方は、婦人科で相談するのも選択肢の一つです。 また、自治体によっては健康診断の一環として骨密度検診を実施していることもあり、多くは指定された医療機関や検診センターで検査を受けます。 どこで検査を受けるか迷ったら、まずはかかりつけ医に相談したり、近くの整形外科のホームページで検査の実施状況を確認してみてはいかがでしょうか。 骨粗鬆症の検査にかかる費用 骨粗鬆症の検査を医療機関で受けた場合にかかる費用の目安は、以下のとおりです。 検査の種類 費用相場 骨密度検査(DXA法) 全額自己負担:約4,500円 3割負担:約1,350円 1割負担:約450円 血液検査 全額自己負担:約1万円 3割負担:約3,000円 レントゲン検査 全額自己負担:約2,500円 3割負担:約650円 自治体の検診や健康保険組合の補助で検査を受けるときは、自己負担が無料または数百円程度と安くすむことがあります。 骨粗鬆症の検査を受けるタイミング 骨粗鬆症の検査を受けるタイミングは、以下がおすすめです。 市町村の健診時期になったら 40歳を超えたら 関節痛・背が縮んだ感覚など気になる症状が現れたら 自身の状況と照らし合わせて、受けるタイミングを検討する参考にしてください。 市区町村の健診時期になったら 市区町村で実施される特定健診やがん検診の機会に、対象年齢に該当する場合や、追加で申し込むことで、骨粗鬆症の検査を受けられます。 骨粗鬆症の検診は、健康増進法にもとづき40歳〜70歳の女性を対象に5歳刻みの年齢でおこなわれています。(文献5) 自治体によっては男性も対象にしていたり、対象年齢を拡大したりしている場合もあるため、お住まいの市区町村のホームページで確認し、積極的に活用しましょう。 40歳を超えたら 骨粗鬆症は、閉経後の女性や50歳以上の高齢者に多い病気です。(文献7) 「まだ若いから大丈夫」と思いがちですが、実は骨の量は20代〜30代で最大となり、その後は徐々に減少します。そのため、40歳を過ぎたら一度骨の健康状態をチェックしておくことをおすすめします。 また、男性も決して他人事ではありません。 女性と同じく、年齢を重ねるごとに骨密度が低下するリスクは高まるため、少なくとも50歳を過ぎたら一度は検査を受けておきましょう。 関節痛・背が縮んだ感覚など気になる症状が現れたら 突然の背中や腰の違和感、身長が縮んだ感覚、姿勢の変化などがあれば骨折の兆候かもしれません。 骨粗鬆症が進み、気づかぬうちに骨折していることもあるため、気になる症状が現れたら早めに医療機関で検査を受けましょう。 骨粗鬆症の検査で「要注意」と言われたらすべきこと 骨粗鬆症の検査の結果「骨密度が少し低い」「要注意」などの診断を受けたときにすべきことは、以下のとおりです。 医師の指示をもとに再検査や適切な治療を受ける 骨を強くする栄養を意識した食生活に見直す 運動習慣を取り入れて骨への刺激を増やす 転倒を防ぐ生活環境へ整える 一つずつ見ていきましょう。 医師の指示をもとに再検査や適切な治療を受ける 検査結果について医師から詳しい説明を受け、今後の対応について相談しましょう。 必要に応じて、再検査や生活習慣の改善のアドバイスを受けたり、薬物治療を検討したりします。 「まだ大丈夫だろう」と自己判断で放置してしまうと、骨がもろくなり、骨折のリスクを高めてしまう恐れがあります。 医師の指示を守り、適切な対策を講じることが大切です。 骨を強くする栄養を意識した食生活に見直す 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」によると、以下の3つの栄養素が骨粗鬆症の治療で重視されています。(文献2) 栄養素 骨への作用 おもな食材 カルシウム ・骨の主成分となる ・骨密度を維持する ・牛乳 ・チーズ ・ヨーグルト ・干しえび ビタミンD ・カルシウムの吸収を助けて骨に定着させる ・日光を浴びると体内でもつくられる ・鮭 ・サンマ ・きくらげ ・干ししいたけ ビタミンK ・骨にカルシウムを取り込むのを助ける ・納豆 ・ブロッコリー ・小松菜 ・ほうれん草 参考:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン|日本骨代謝学会(文献2) とくにカルシウムはビタミンDと一緒に摂ることで吸収率がアップします。 ヨーグルトにきな粉をかける、鮭ときのこを一緒に調理するのも、手軽に取り入れられるためおすすめです。 これらを取り入れた、バランスの良い食生活を心がけましょう。 運動習慣を取り入れて骨への刺激を増やす 活発にからだを動かしている方は、骨粗鬆症による骨折が少ないとした研究結果が多く報告されています。(文献2) 具体的には、以下の運動が骨密度の上昇をもたらしたとされています。(文献2) ウォーキング ジョギング ダンス ジャンプ まずは、自身に合った無理のない運動を見つけて、習慣にすることから始めてみましょう。 転倒を防ぐ生活環境へ整える 骨粗鬆症の方は骨がもろくなっているため、転倒による骨折のリスクが高まります。 日常生活の中に以下のような工夫を取り入れて、転倒を防ぎましょう。 室内の段差をなくす 滑りにくいマットを使用する 足元が明るいように照明を工夫する 階段や廊下には手すりを設置する 転倒防止が、骨折や寝たきりを防ぐ第一歩になります。 自宅内に危険な場所がないか、改めて確認してみてください。 生活習慣を見直す 喫煙や過度の飲酒は、骨折のリスクを高めることがわかっています。(文献2) ガイドラインでも、以下のように推奨されています。(文献2) 喫煙を始めない 喫煙習慣のある方は禁煙する 1日のエタノール量を24g未満とする また、塩分やカフェインの過剰摂取もカルシウムをからだの外に出しやすくしてしまうことがわかっています。(文献9) 骨の健康を守るため、これらの成分の摂りすぎには注意しましょう。 骨粗鬆症の検査で自分の骨の状態を知ろう 骨粗鬆症は静かに進行し、骨折として突然現れることがあります。 だからこそ、骨密度をはじめとする検査で、早期に骨の状態を知ることが大切です。 とくに女性や高齢の方、生活習慣に不安を感じる方には、積極的な検査をおすすめします。 「要注意」と診断された場合も、適切な食事や運動、医師との連携によって、骨の健康を維持できます。 自身の骨の状態と向き合うために、まずは検査を受けるところから始めましょう。 「自分の骨の状態は大丈夫なのかな」と不安を感じたら、当院「リペアセルクリニック」のメール相談またはオンラインカウンセリングまでお気軽にご相談ください。 骨粗鬆症の検査についてよくある質問 骨密度の検査はどうやってやるのですか? 骨密度の検査は、骨の中にあるカルシウムをはじめとしたミネラルの量を測定し、骨の強さ(密度)を数値化するものです。 もっとも一般的なのはDXA法と呼ばれる検査で、腰の骨や太ももの骨にX線を当てて測定します。 検査時間は、準備や着替えを含めて10〜15分程度です。 ほかにも手首やかかとを使うMD法やQUS法といった簡易検査もありますが、精度はDXA法がもっとも高いと言われています。 骨密度測定は自宅でできますか? 原則として、正確な骨密度測定は医療機関でおこなう必要があります。とくに検査の精度が高いDXA法は、医療機関の専用装置が不可欠です。 家庭用の体組成計で「推定骨量」を計測できるものも存在しますが、骨密度を測定するものではありません。 手首やかかとで骨密度を測れるものも家庭用で作られていないため、自宅で骨密度測定をおこなうのは現実的ではないでしょう。 本格的な診断を希望する場合は、医療機関で検査を受けるのをおすすめします。 参考文献 (文献1) 骨代謝とは|日本骨代謝学会 https://jsbmr.umin.jp/basic/kotutaisha_ma.html (文献2) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン|日本骨代謝学会 https://jsbmr.umin.jp/pdf/GL2015.pdf (文献3) Q&A Vol.337 【どうやって見ればいい?】骨粗鬆症の画像に関するQ&A | 日本離床学会 https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-337#/ (文献4) 「脊椎椎体骨折」|日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/vertebral_compression_fracture.html (文献5) 健康増進事業実施要領|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/14.pdf (文献6) どんな人がなりやすい|公益社団法人骨粗鬆症財団 https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/tabid250.html (文献7) International Osteoporosis Foundation. Epidemiology. https://www.osteoporosis.foundation/health-professionals/about-osteoporosis/epidemiology (文献8) 骨そして筋肉の健康における栄養素・非栄養素の役割 骨と栄養素の視点から|田中清ら https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/76/5/76_283/_pdf
2025.05.30 -
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「リウマチ検査は陰性なのに指や膝がズキズキする」 原因がわからず不安で情報の検索を続けていませんか? 本記事では変形性関節症や痛風など、リウマチ以外で関節痛を引き起こす主な疾患と見分け方、検査・治療の流れを整形外科医の視点で解説します。痛みを放置せず、早期に適切な対応を取るヒントを見つけてください。 リウマチではない関節痛とは 関節痛は多くの方が経験する症状ですが、必ずしも関節リウマチとは限りません。加齢や過度の使用、外傷、ほかの疾患によって引き起こされることがあります。適切な診断と治療で症状を緩和できることが多いので、長引く症状がある場合は早めに医師にご相談ください。 ここからは、リウマチではない関節痛について詳しく説明していきます。 関節リウマチとの決定的な違い 関節痛とリウマチは似た症状を示すことがありますが、決定的な違いがあります。一般的な関節痛は、使い過ぎや加齢による軽い違和感から始まることが多く、肩や手指、膝などに痛みやこわばり、腫れという症状です。関節の使用後に悪化し、休むと和らぐ傾向があります。 一方、関節リウマチは自己免疫疾患であり、関節の痛み・腫れ・こわばりといった症状に加え、関節を押したり動かしたりすると痛みが強まるのが特徴です。左右対称に症状が現れることが多く、両手の同じ指に症状が出るパターンが見られます。寒い季節や朝起きた直後に症状が強く出やすい傾向があります。 もっとも大きな違いは、リウマチが自己免疫疾患である点です。血液検査でリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体の存在を確認すると、診断の手がかりが得られます。リウマチは多発性の関節炎として左右対称に現れることが多いのに対し、一般的な関節痛は単関節に限られることもあります。 よくある誤解とチェックポイント 関節リウマチについては多くの誤解が存在します。まず、朝のこわばり=リウマチという考えがありますが、必ずしもそうとは限りません。朝のこわばりは変形性関節症や筋肉の硬直でも起こる症状であり、リウマチに特化したものではありません。 リウマチはどの年齢でも発症する可能性があります。日本リウマチ財団によると、人口の0.4%〜0.5%、30歳以上の人口の1%にあたる人が関節リウマチにかかると言われています。発症のピークは60歳代です。しかし、若い方でも症状が続く場合は専門医の診察を受けることが重要です。(文献1) リウマチの症状は個人差が大きく、典型的な症状が現れないこともあります。持続する関節の痛みや腫れがある場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。早期発見・早期治療により、関節の変形や機能障害を最小限に抑えられます。適切な治療を受けることで、多くの方が日常生活の質を維持しています。 リウマチではない関節痛を起こす主な疾患 関節痛の原因は実に多様で、リウマチ以外にも多くの疾患が関係しています。症状の特徴や現れ方を理解すると、より適切な対処につながります。以下の表では、リウマチと間違えやすい主な疾患とその特徴を紹介します。ご自身の症状に心当たりがある場合は、専門医にご相談ください。 疾患名 主な症状と特徴 更年期障害 ホルモンバランスの変化による関節痛、こわばり。肩や膝、手首などに現れやすく、他の更年期症状(ほてり、発汗など)を伴うことが多い。 変形性関節症(OA) 関節の軟骨がすり減ることで起こる痛み。負荷のかかる膝や股関節に多く、動かし始めに痛みが強く、徐々に和らぐ。年齢とともに発症リスクが高まる。 痛風 尿酸結晶が関節内にたまることで炎症を起こす。突然の激しい痛みが特徴で、足の親指の付け根など単関節に発症しやすい。 腱鞘炎・ばね指 指や手首を動かすための腱とその鞘の炎症。曲げ伸ばしで痛みが生じ、とくに朝に症状が強い。指が引っかかる感じや「バネ」のような動きが特徴的。 関節炎 手の関節の炎症。関節のこわばり、腫れ、痛みを伴うことが多い。 線維筋痛症 全身の広範囲に及ぶ慢性的な痛みがあり、中年以降の女性に多いのが特徴。手足のしびれや動悸、呼吸困難などを伴うことも多い。 手根管症候群 手首の「正中神経」と呼ばれる部分で神経が圧迫される状態。手のしびれや痛みを起こす。手首の反復運動や長時間のデスクワークなどが原因。 リウマチと通常の関節痛を見抜くセルフチェック方法 関節の痛みを感じたとき、それがリウマチなのか一般的な関節痛なのか気になるでしょう。医師の診断を受ける前に、ご自身でチェックできるポイントがいくつかあります。以下の項目を参考に症状を観察してみましょう。 ただし、これはあくまで目安です。正確に診断してもらうためにも医師の診察を受けてください。 痛みが強く出る時間帯・動作 痛みのパターンは疾患を見分ける重要な手がかりです。リウマチの場合、とくに朝起きたときや長時間同じ姿勢でいた後のこわばりがあり、微熱が出る場合もあります。また、だるさや食欲低下も見られます。 変形性関節症などの一般的な関節痛は、動き始めや負荷をかけたときに痛み、休むと痛みが和らぐ場合が多いです。日常生活の中で、どのようなときに痛みが増すのかを記録しておくと診断の参考になるでしょう。 部位と左右差 リウマチの特徴の一つに、左右対称に症状が現れることがあります。たとえば両手の同じ指や両膝など、体の左右で同じ部位に痛みや腫れが生じるケースです。対して、変形性関節症や腱鞘炎などは、使い過ぎや負担のかかり方によって片側に症状が出やすいことが多いです。 リウマチは手首や指の小さな関節から症状が現れることが多いのに対し、変形性関節症は主に体重のかかる膝や股関節などの大きな関節に生じやすいという違いもあります。 腫れ・熱感・発赤・可動域制限の有無 関節の炎症サインの有無も、リウマチを見分ける重要な手がかりです。リウマチでは、関節の腫れや熱感、発赤(赤み)などの炎症症状が明らかに見られることが多く、関節を動かす範囲(可動域)が制限されることもあります。全身症状として微熱や倦怠感、食欲不振などを伴うこともあります。 一方、一般的な関節痛では、軽度の腫れはあっても熱感や発赤が目立たないことが多く、全身症状も少ない傾向です。これらの症状に気づいたら、できるだけ早く医師に相談しましょう。 リウマチと関節痛における検査方法 関節痛の原因を特定するためには、さまざまな検査が必要です。医師は症状や経過に基づいて、適切な検査を選択します。 リウマチの診断には、画像検査と血液検査がとくに重要です。検査を組み合わせると、リウマチかそれ以外の関節痛かを見極められ、適切な治療につなげることができます。 画像検査 画像検査は関節の状態を視覚的に評価する重要な検査です。画像検査には以下の種類があります。 レントゲン検査:骨の変形や関節間隙の狭小化などを確認できる MRI:軟部組織の評価に優れており、関節の滑膜炎や骨髄浮腫、靭帯・腱の状態などを詳しく観察できる 関節超音波検査:リアルタイムで関節の炎症状態を評価でき、滑膜の肥厚や関節液の貯留、血流増加などを非侵襲的に検出できる 画像検査を適切に組み合わせれば、リウマチの早期発見や経過観察、ほかの関節疾患との鑑別が可能です。 血液検査 血液検査はリウマチの診断において必須の検査です。主な検査項目は以下のようになります。 検査項目 特徴 リウマトイド因子(RF) リウマチ患者の約80%で陽性となるが、健康な人やほかの疾患でも陽性になることがあるため、単独での診断確定は難しいとされている CRP(C反応性タンパク) 炎症の程度を示す指標で、関節の炎症が強いと値も高くなる 抗CCP抗体検査 リウマチの早期診断や予後予測に有用とされている 抗核抗体(ANA) リウマチだけでなく、ほかの膠原病の鑑別にも重要 (文献2) 血液検査の結果を総合的に判断し、臨床症状や画像所見と併せて診断が進められます。定期的な血液検査によって、病気の活動性や治療効果の評価も重要です。 リウマチではない関節痛の治療方法 関節リウマチではない関節痛の治療は、原因となる疾患や症状の重症度によって異なります。治療の目標は、痛みの軽減や炎症の抑制、関節機能の維持・改善、そして日常生活の質の向上です。 治療法は大きく分けて、薬物療法と注射治療があり、症状や病態に合わせて適切な治療法が選択されます。ここから詳しく解説します。 薬物療法 薬物療法は関節痛の治療においてもっとも一般的に用いられる方法です。症状や原因疾患に合わせて、適切な薬剤が選択されます。 非リウマチ性の関節痛に対しては、主に痛みや炎症を抑える対症療法が中心となります。使用される薬剤はさまざまですが、どの薬剤も効果と副作用のバランスを考慮して慎重に使用することが重要です。 自己判断での服用は避け、医師の指示に従いましょう。症状の変化や副作用が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。 主な薬剤は以下のとおりです。 薬剤 特徴と効果 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs) 炎症と痛みを抑える効果があり、速効性がある。胃腸障害や腎機能障害などの副作用に注意が必要。 アセトアミノフェン 鎮痛効果があり安全性が高い。比較的副作用が少なく、高齢者や他の薬剤が使用しづらい患者にも使用される。 オピオイド 強力な鎮痛効果があるが、依存性や呼吸抑制などの副作用があり、慎重に使用される。 漢方薬 さまざまな生薬の組み合わせにより、体質に応じた処方ができる。副作用が起こる場合もある。 注射治療 注射治療は、薬物療法で十分な効果が得られない場合や、より局所的な治療が必要な場合に選択されます。関節内や周囲の組織に直接薬剤を注入すれば、全身への副作用を最小限に抑えつつ、効果的に症状を緩和できるでしょう。 注射治療の種類によって効果の持続期間や適応疾患が異なるため、症状や病態に合わせて適切な治療法が選択されます。いずれの注射治療も、感染や出血などのリスクがあるため、清潔な環境で専門医により実施されることが重要です。 治療効果は個人差があり、一時的に症状が悪化する場合もありますので、医師の説明をよく聞いて判断しましょう。 以下は主な注射治療です。 注射治療 特徴と効果 ヒアルロン酸注射 関節内の潤滑機能を高め、クッション作用を補うため、直接患部に注射を行う。即効性はないが、定期的な注射で効果が持続する。 ステロイド注射 強力な抗炎症作用があり、即効性がある。頻回の使用は副作用をおこす可能性がある。 PFC-FD療法 自己血由来の成長因子を利用し、組織の修復・再生を促進する。比較的新しい治療法。 リウマチではない関節痛は放置せず早期の受診を心がけよう 関節痛を感じたとき、年齢のせいや、しばらく様子を見ようと放置してしまいがちです。しかし、持続する痛みは早めに医療機関を受診しましょう。 早期受診のメリットは多くあります。痛みの原因を正確に特定でき、早期に治療を開始すると効果が高まります。日常生活への支障も、最小限に抑えられるでしょう。 関節痛が起きたら、自己判断せず医師への相談が必要です。関節痛でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 公益財団法人 日本リウマチ財団「関節リウマチとは」公益財団法人 日本リウマチ財団 ホームぺージ https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/ (最終アクセス:2025年5月14日) 文献2 シーズン神奈川リウマチクリニック「リウマチで重要な3つの血液検査」シーズン神奈川リウマチクリニック ホームぺージ https://seasons-kanagawa.jp/blog/ra-bloodtest/ (最終アクセス:2025年5月14日)
2025.05.30 -
- その他、整形外科疾患
背中の痛みや手足のしびれが続くと「強いストレスが脊髄腫瘍を招いたのでは?」と不安になる方は少なくありません。 現代社会においてストレスは避けて通れないものとなっており、さまざまな健康問題との関連性が指摘されています。しかし、ストレスが腫瘍を直接つくるという科学的根拠は現時点で確認されていません。一方、慢性的なストレスは免疫低下や血流悪化を通じて症状を悪化させる恐れがあります。 本記事では脊髄腫瘍の主な原因とストレスとの関係性、早期発見のポイント、日常でできるセルフケアについてわかりやすく解説します。 脊髄腫瘍の原因とストレスの関係性 脊髄腫瘍の発生メカニズムについては、現在の医学でもまだ完全には解明されていません。しかし、もっとも有力な原因として考えられているのは、遺伝子の突然変異です。正常な細胞の遺伝子に変異が生じることで、細胞の増殖が制御できなくなり、腫瘍が形成されると考えられています。 まれなケースですが、家族性に発生する場合もあります。特定の遺伝子異常を持つ家系では、脊髄腫瘍を含むさまざまな腫瘍が発生するリスクが高まることが知られているのです。 現在の医学的知見では、ストレスそのものが脊髄腫瘍を引き起こす明確なエビデンス(科学的根拠)は確立されていません。しかし、後から説明するように、すでに発症した脊髄腫瘍の症状や経過に影響を与える可能性は否定できないと言えます。 脊髄腫瘍の主な原因 脊髄腫瘍は大きく分けて「原発性」と「転移性」の二つに分類されます。それぞれの特徴と発生原因について詳しく見ていきましょう。 原発性脊髄腫瘍 原発性脊髄腫瘍とは、脊髄や脊柱自体から発生する腫瘍のことを指します。これらの腫瘍は良性(進行が遅く、他の組織に広がりにくいもの)と悪性(進行が早く、浸潤性が高いもの)の両方があります。 原発性脊髄腫瘍の代表的なものには以下のようなタイプがあります。 髄膜腫:脊髄を覆う髄膜から発生する腫瘍で、多くは良性 神経鞘腫:神経の保護層(シュワン細胞)から発生する腫瘍で、多くは良性 星細胞腫:星状神経膠細胞から発生する腫瘍で、良性から悪性までさまざま 上衣腫:脳や脊髄の中心にある脳室系や中心管を覆う上衣細胞から発生する腫瘍で、良性から悪性までさまざま これらの腫瘍は通常、遺伝子の突然変異によって発生すると考えられていますが、その具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。 転移性脊髄腫瘍 転移性脊髄腫瘍は、他の臓器で発生したがん細胞が血流やリンパ流を通じて脊髄に広がった場合に発生します。脊髄腫瘍全体の中では、この転移性のものが多くを占めています。 とくに転移しやすい原発巣(最初にがんが発生した場所)としては以下のがんが挙げられます。 肺がん 乳がん 前立腺がん 腎臓がん 甲状腺がん リンパ腫 黒色腫 (文献1) これらのがんは転移を起こしやすく、脊椎や脊髄周囲に転移する場合があります。転移性脊髄腫瘍の場合、原発巣でのがん発生が関与していることになります。 遺伝性疾患・放射線治療・年齢 脊髄腫瘍の発生リスクを高める要因として、いくつかの遺伝性疾患や環境因子、年齢などが挙げられます。 遺伝性疾患については、神経線維腫症2型が代表的です。この疾患では聴神経鞘腫を主とする腫瘍が特徴的であり、脊髄腫瘍のリスクも高まります。また、フォン・ヒッペル・リンドウ病では脳や脊髄のさまざまな部位に血管芽腫が発生することが知られています。 放射線治療との関連では、過去にほかの疾患の治療目的で放射線治療を受けた部位に、数年から数十年後に腫瘍が発生しているケースです。これは放射線被曝が、腫瘍形成のリスクを高める可能性があるといえます。 年齢も重要な要因の一つです。脊髄腫瘍はさまざまな年齢層で発生しますが、転移性脊髄腫瘍では中高年層での発症リスクが多い傾向です。 ストレスが脊髄腫瘍に及ぼす影響 ストレスそのものが脊髄腫瘍の直接的な原因となる明確な科学的根拠はありませんが、すでに発症した脊髄腫瘍の症状や経過に影響を与える可能性はあります。ここでは、ストレスが脊髄腫瘍患者の身体にどのような影響を与えうるのかを解説します。 免疫低下・炎症促進 ストレスが長期間続くと、体内でさまざまな生理的変化が起こります。とくに注目すべきは、免疫系への影響です。 長期的な心理ストレスが続くと、副腎皮質から分泌されるホルモンであるコルチゾールの分泌が慢性的に高まります。コルチゾールは本来、体のストレス応答を調整する重要なホルモンですが、過剰に分泌され続けると免疫機能に悪影響を及ぼします。具体的には、がん細胞を破壊するナチュラルキラー(NK)細胞やT細胞などの細胞性免疫の働きが鈍くなるのです。 コルチゾールは炎症性サイトカインの産生も促進し、神経組織にむくみや痛みを引き起こしやすい状態をつくります。免疫低下と炎症は、腫瘍そのものの増殖を直接促進する証拠はないものの、疼痛・しびれ・倦怠感といった自覚症状を強め、治療後の回復を遅らせる要因になる可能性があります。 痛み・しびれを増幅 慢性的なストレス状態では、交感神経が優位になり、痛み刺激を増幅する「中枢性感作」という現象が起こりやすくなります。中枢性感作とは、脊髄や脳の痛み伝達経路が過敏になり、通常なら痛みとして感じない程度の刺激でも痛みとして感じるようになる状態です。(文献2) 脊髄腫瘍による神経への圧迫がわずかであっても、中枢性感作によって実際に感じる痛みやしびれが強くなり、QOL(生活の質)が大きく低下する場合があります。痛みによる不眠や食欲不振が重なると、さらに痛みの閾値が下がる悪循環に陥りやすくなります。 脊髄腫瘍の予防につながるストレス解消法 現時点では、ストレスが脊髄腫瘍を直接引き起こす明確な科学的証拠はありません。しかし、ストレスが免疫機能に影響を与え、すでに発症した腫瘍の症状を悪化させる可能性は否定できません。 ここでは、日常生活で実践できるストレス解消法をご紹介します。脊髄腫瘍の直接的な予防にはならないかもしれませんが、全身の健康維持や症状緩和に役立つ可能性があります。 自律神経を整える 自律神経のバランスを整えることは、ストレス耐性を高め、免疫機能を維持する上で非常に重要です。食生活、運動、睡眠の3つの観点から自律神経を整える方法をご紹介します。 まず食生活については、規則正しく、バランスの良い食事を心がけることが基本です。とくに抗酸化物質を多く含む野菜や果物を積極的に摂取し、カフェインや刺激物の過剰摂取は避けましょう。また、日々の適切な水分補給も忘れないようにしましょう。 運動面では、ウォーキングやヨガなどの軽い有酸素運動を定期的に行うことがおすすめです。ただし、過度な運動は逆にストレスになるため、自分のペースで続けられる運動を選ぶことが大切です。可能であれば、自然の中で運動すると、より高いリラックス効果が得られます。 質の良い睡眠も自律神経のバランスを整えるために欠かせません。規則正しい睡眠スケジュールを維持し、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控えましょう。ブルーライトは睡眠の質を下げることが知られています。 寝室の環境を整え(適切な温度、湿度、静けさを保つ)、就寝前には温かい入浴やストレッチ、読書などのリラックスルーティンを取り入れると良いでしょう。 趣味を楽しむ 日常生活の中で自分が純粋に楽しめる時間を持つことは、ストレス解消に非常に効果的です。音楽を聴くことはストレスホルモンの分泌を抑制し、リラックス効果をもたらします。読書によって物語の世界に没頭すれば、現実の悩みから一時的に離れられるでしょう。 また、以下のような趣味もおすすめです。 絵を描く 楽器を演奏する 料理をする 創作活動は脳内の報酬系を刺激し、幸福感をもたらします。 園芸や散歩など、自然と触れ合う活動もストレスホルモンの低下に効果的です。自分が心から楽しめる趣味を見つけ、定期的な時間の確保が重要です。 趣味の時間は「自分だけの時間」として大切にしましょう。日々の忙しさや責任から解放される時間を持つことで、心に余裕が生まれます。同じ趣味を持つ人々との交流も、新たな刺激や喜びをもたらしてくれます。趣味のサークルやオンラインコミュニティに参加すると、社会的つながりが広がり、それ自体がストレス耐性を高める効果があります。 脊髄腫瘍の治療中や経過観察中の患者さんにとっても、体調と相談しながら無理のない範囲で趣味の時間を持つことは、QOL(生活の質)の向上につながります。身体的な負担が少ない趣味から始めて、徐々に活動の幅を広げていくことも一つの方法です。趣味に没頭することで得られる時間は、痛みの知覚を和らげる効果もあるといわれています。 マインドフルネスを実践する マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に、評価や判断をせずに意識を向けること」を意味します。日常的にマインドフルネスを実践すれば、ストレスへの反応パターンを変え、心の平静を保ちやすくなるでしょう。 マインドフルネス瞑想の基本は、背筋を伸ばしリラックスした姿勢で座り、自然な呼吸に意識を向けることから始まります。息が入ってくる感覚、出ていく感覚に注意を払い、雑念が浮かんでも判断せず、優しく呼吸に意識を戻します。初めは5分程度から始め、徐々に時間を延ばしていきます。 日常生活の中でも、食事をするときは味や香り、食感に意識を向け、歩くときは足の裏の感覚や体のバランスを意識するなど、日常の行動に注意を向けることでマインドフルネスが実践可能です。何かを待つ時間があるときも、その間の呼吸や体の感覚に注意を向けてみましょう。 マインドフルネス実践は、特別な道具や場所を必要とせず、日常生活の中で簡単に取り入れられます。 ストレス解消を心がけて脊髄腫瘍の悪化・発症を防ごう 脊髄腫瘍の直接的な原因はストレスではありません。現在の医学的知見では、脊髄腫瘍の主な発生メカニズムは遺伝子の突然変異であり、家族性の要因や放射線被曝、加齢などがリスク因子となります。 しかし、すでに発症した脊髄腫瘍患者では、ストレスが免疫機能の低下や炎症の促進、痛みの増幅などを通じて症状を悪化させる可能性があります。そのため、日常生活におけるストレス管理が重要です。 脊髄腫瘍の症状(背部痛、しびれ、脱力感など)に気づいたら、早めに専門医を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脊髄腫瘍をはじめとする神経系疾患の診断・治療に経験豊富な医師が、一人ひとりに寄り添った医療を提供しています。メール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 参考文献 文献1 MSDマニュアル家庭版「脊髄腫瘍」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E3%81%AE%E8%85%AB%E7%98%8D/%E8%84%8A%E9%AB%84%E8%85%AB%E7%98%8D(最終アクセス:2025年5月13日) 文献2 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター「心理的因子と痛みの関係における中枢性感作の媒介効果」畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターホームぺージ https://www.kio.ac.jp/nrc/2019/04/11/kio_nrc_press_20190411/(最終アクセス:2025年5月13日)
2025.05.30 -
- その他、整形外科疾患
「最近、足に力が入らない」「歩くときにふらつく」そんな症状が続き、病院で脊髄腫瘍と診断された方もいるかもしれません。 脊髄腫瘍で歩けなくなる可能性はあります。 この記事では、脊髄腫瘍によって歩けなくなる原因や、その後の治療・歩行機能回復の見通しについてわかりやすく解説します。 また、脊髄腫瘍に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 患者様ご自身の細胞を活用し、損傷した神経や組織の修復を促す治療であり、多くの場合は入院を必要とせず通院で実施可能なため、体への負担が少ないとされています。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 脊髄腫瘍のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 実際の症例については以下の動画でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/t0J9vVVGGXU 【結論】脊髄腫瘍で歩けなくなる可能性はある 脊髄腫瘍は、脊髄や周辺の神経・血管を圧迫し、歩けなくなる可能性があります。 脊髄腫瘍によって歩けなくなる過程は次のとおりです。 背骨(脊柱)内の脊髄に腫瘍ができ、徐々に大きくなる 腫瘍が脊髄やその周囲の血管を圧迫し、神経の電気信号や血流が遮断される 筋肉に指令が届きにくくなり、脚の力が入らない・しびれるなどの初期症状が現れる 腫瘍の増大や出血、骨折を起こすと、急激に麻痺が進行する場合がある 首・胸・腰といった発生部位によって症状の出方は異なりますが、放置すればするほど症状は進行しやすく、回復が難しくなる傾向にあります。 歩きづらさやしびれ、ふらつきといった症状が続く場合は、医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。 脊髄腫瘍の歩行回復の可能性 脊髄腫瘍によって歩けなくなっても、手術後に歩行機能が回復する可能性はあります。 国立病院機構整形外科の研究によると、脊髄内の腫瘍を手術で切除した患者の84.6%がサポートなしで歩けるようになったという報告もありました。(文献1) 腫瘍が神経を圧迫すると歩けなくなることがありますが、原因を取り除けば再び歩ける可能性があります。 しかし、以下のようなケースでは、歩行の回復が難しい傾向にあるため注意が必要です。 腫瘍の発見が遅れ、長期間ベッド上での生活を送っていた方 高齢で神経や筋力の回復力が低下している方 脊髄腫瘍で歩けなくなる症状は、早期の発見と治療で回復の可能性が高まります。歩行に不安がある場合は、ひとりで抱え込まず脊椎や脳神経の専門医に相談しましょう。 脊髄腫瘍の症状|しびれや歩行障害 腫瘍ができた部位によって異なりますが、脊髄腫瘍の主な症状はしびれや筋力の低下、歩行のふらつきです。 一般的には手足の違和感や痛み、しびれといった軽度の神経症状から始まり、徐々に感覚障害や筋力の低下が進行します。放置すると歩くのが難しくなり、転倒を繰り返すようになる場合もあります。 脊髄腫瘍の症状は加齢による神経の衰えや腰痛と誤解されやすいため、注意が必要です。 腫瘍の発生部位ごとの主な症状と歩行への影響は、以下の通りです。 発生部位 主な症状 歩行への影響 頸髄(首) 手足や体幹の感覚障害や麻痺 首の痛み 足の感覚低下 しびれ ふらつき 転倒 胸髄(胸) 胸部以下の感覚障害 両足の筋力低下 背部痛 歩行時のふらつき バランス喪失 腰髄(腰) 足の痛みやしびれ 腰痛 下肢の筋力低下 歩行時に足が痛む しびれ 足がもつれる また、以下の症状がみられる場合は、脳神経外科や整形外科を受診しましょう。 首や腰、背中の痛みが長く続く 温度の感覚が鈍くなる 歩きにくい 症状に気づいた段階で専門医に相談できれば、進行を抑える可能性が高まります。 しかし「手術は成功したのに、しびれが取れない」「リハビリを続けているが、思うように改善しない」といった、治療後の後遺症や神経障害に対して、幹細胞を用いた再生医療が新たな治療の選択肢として注目されています。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 脊髄腫瘍の手術後も神経症状が残っている方 手足のしびれや感覚障害が改善しない方 歩行のふらつきや転倒の不安がある方 リハビリを続けているが効果を感じない方 手術は避けたいが症状を改善したい方再生医療 脊髄腫瘍治療後の後遺症や神経障害でお困りの方、再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。 脊髄腫瘍の治療法 脊髄腫瘍によって歩けない場合の一般的な治療法は、以下の通りです。 外科的手術 放射線療法 投薬治療 再生医療 腫瘍を取り除き神経の圧迫を緩和できれば、症状の改善が期待できます。 手術を伴わない再生医療という新しい治療法も選択肢の一つとして紹介します。 外科的手術 脊髄腫瘍の外科的手術は、神経を圧迫している腫瘍を直接取り除く治療法です。良性腫瘍や、症状が進行しているケースでは第一選択となります。 以下は、手術のおおまかな手順の一例です。 全身麻酔をかける 顕微鏡で神経や腫瘍を確認しながら腫瘍を少しずつ摘出 背骨が不安定な場合は金属や人工骨で固定 術後は経過観察とリハビリを実施 良性腫瘍の場合、腫瘍が完全に摘出できれば再発の可能性はほとんどありません。一方で、腫瘍がすべて取り切れなかったり、再発のリスクがあったりする場合は、放射線などの治療を追加で行うこともあります。 入院期間は一般的に2〜3週間程度が目安で、術後にはリハビリが必要です。 脊髄腫瘍の外科的手術は、腫瘍を取り除くことで神経の働きが回復し、しびれや歩けない状態の改善が期待できます。しかし、脊髄を損傷するリスクもあるため、治療方針は医師と十分に相談しましょう。 放射線療法 脊髄腫瘍の放射線療法は、手術で取りきれなかった腫瘍や、切除が難しい部位に対して体の外から放射線を照射して、腫瘍細胞の弱体化や縮小を目指します。 脊髄腫瘍の放射線療法は、以下の副作用がみられることがあります。 疲労感 食欲不振 白血球や赤血球の減少など そのため、治療中は体調管理や定期的な検査が欠かせません。腫瘍の種類や部位によって効果に差があるため、医師と相談して治療計画を立てましょう。 投薬治療 脊髄腫瘍に対する投薬治療は、痛みや麻痺、排尿障害などの症状を和らげるための対症療法や、手術・放射線と組み合わせる補助療法として行われます。 腫瘍の種類や症状の程度に応じて、主に以下のような薬が使われます。 薬の名前 使用する場面 コルチコステロイド 多くは手術を前提とした処置 腫瘍が脊髄を圧迫している場合に腫れを抑える目的で使用 痛み止め 手術ができないケース 術後に腰や背中の痛み・しびれが残る場合 排尿しにくさを改善する薬 排尿コントロールが難しいとき 抗がん剤(化学療法) がん細胞の増殖を抑制する目的 主に悪性腫瘍や転移において使用 投薬治療には副作用のリスクも伴うため、定期的な検査が必要です。医師と相談しながら、症状や体調に合った薬を選びましょう。 再生医療 再生医療は、脊髄腫瘍による歩きにくさに対する治療の選択肢の一つです。 自身の細胞や血液を用いて、損傷した神経や組織にアプローチします。多くの場合、手術を伴わず通院で治療が可能なため、体への負担が少ないのも特徴です。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?feature=shared 以下のお悩みを抱えている方は、再生医療による治療も選択肢としてご検討ください。 脊髄腫瘍で歩けないことに不安を抱えている 手術以外の治療法を探している 長期の入院が難しい リハビリの効果が十分に感じられない 手術後のしびれや痛みに悩んでいる 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療に対応しています。治療に関するご不安やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。 脊髄腫瘍のリハビリ 脊髄腫瘍の治療では、手術や放射線治療と並行して行うリハビリが重要です。 主なリハビリの流れは、以下の通りです。 時期の目安 主なリハビリ内容 術後すぐ~2週間程度 関節の曲げ伸ばしをして可動域を保つ 呼吸に使う筋肉を鍛え、持久力の向上を図る 症状が安定し、訓練が可能になったら 寝返りや起き上がり、食事、排泄の訓練 松葉杖や歩行器の使用 体幹や太ももなどのトレーニング 関節の位置感覚を取り戻す訓練 手術後半年以降 残った機能の維持と強化を継続する 神経の損傷や圧迫によって低下した運動機能・感覚機能を取り戻すために、手術後できるだけ早い段階からリハビリが開始されます。 歩けるようになるためには、単に筋力を鍛えるだけでなく足やつま先が今どこにあるかを感じ取る感覚を取り戻すことも重要です。胸部の背骨にできた脊椎腫瘍の手術を受けた方では、この感覚が足の親指で低下していると、術後に歩けるようになるまで時間がかかるという報告があります。(文献2) 退院後も、外来・訪問・通所リハビリなどを活用して、残存機能の維持と強化を継続しましょう。医師やリハビリスタッフと相談しながら、無理のないプランを立てることが大切です。 脊髄腫瘍で歩けないことにお悩みの方は当院へご相談ください 歩こうとしたときのふらつきや脚に力が入らない感覚は、脊髄腫瘍が神経を圧迫している可能性があります。 脊髄腫瘍が進行すると、歩けない・立てないなど日常生活に影響を及ぼす状態につながるため、早期の受診が重要です。 脊髄腫瘍は、手術や放射線治療によって歩けるようになる場合があります。 また、再生医療も、脊髄腫瘍に対する治療法のひとつです。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を利用する治療法です。手術や入院が不要なため、手術のリスクを避けたい方、長期入院が難しい方は、一度ご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様一人ひとりの状態に応じた治療計画を提案し、十分な説明とご相談の上で治療を進めております。 再生医療による治療に興味がある方は、お気軽にご相談ください。 脊髄腫瘍で歩けない方からよくある質問 脊髄腫瘍とはどんな病気ですか? 脊髄腫瘍とは、背骨の中を通る脊髄と呼ばれる神経の周囲に腫瘍ができ、神経を圧迫する病気です。発生部位や性質によって良性・悪性に分かれ、治療法も異なります。 脊髄腫瘍の発生場所や特徴は、以下の通りです。 場所 主な発生源 特徴 治療の考え方 硬膜外(骨と脊髄の外側) ほかの臓器からの転移が最多 骨を壊しながら大きくなり、神経を強く圧迫 手術+放射線・薬でコントロール 硬膜内髄外(脊髄の内側、脊髄の外) 神経の膜や鞘からできる良性腫瘍 大きくなるまで無症状のこともある 小さければ経過観察、大きければ手術 硬膜内髄内(脊髄そのもの) 脊髄内部の細胞 悪性が多く進行が速い 早期に手術・放射線を検討 腫瘍が大きくなると、背中や手足の痛み・しびれ、力の入りにくさが出現し、放置すると歩けなくなったり排尿が難しくなったりすることもあります。 症状が軽いうちにMRIなどの精密検査を受け、専門医と治療方針を相談しましょう。 脊髄腫瘍の診断・検査方法は? 脊髄腫瘍の診断では、痛みやしびれ、ふらつき、筋力低下、排尿・排便障害といった神経症状を確認します。 さらに、腫瘍の有無や位置を特定するために、必要に応じて以下のような検査を行います。 検査名 検査内容 実施の目的 MRI トンネル状の装置を使用し身体の断面を画像化する 神経や腫瘍の形・位置・血流を詳細に確認 CT レントゲンと同じX線を照射し、断面の画像を作成する 骨の破壊や変形の有無を確認 電気生理検査 筋肉に細い針を刺して筋肉の収縮を調べる ヘルニアとの鑑別・神経伝導の状態を確認 生検 細い針を刺して腫瘍の組織を採り顕微鏡で調べる 良性・悪性の確認や種類を確定 なお、脊髄腫瘍の確定診断には画像検査が不可欠です。 脊髄腫瘍の原因は? 脊髄腫瘍のはっきりとした原因は、まだ明らかになっていません。 原因として考えられている要因には、以下のようなものがあります。 体内の細胞がなんらかの理由で異常増殖する 肺がんや乳がんなど他の臓器からの転移 また、ストレスが免疫力や自律神経に影響を与えることで、症状の悪化や体調不良を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 脊髄腫瘍の予後は? 脊髄腫瘍の予後は、腫瘍の種類によって大きく異なります。 腫瘍の種類と生存率について、253人を対象とした研究では以下のような結果が報告されています。(文献3) 腫瘍の種類 上衣腫瘍 血管芽腫 星状細胞腫瘍 特徴 脊髄の上衣細胞から発生する 比較的手術で取りやすい 脊髄内の血管が増殖してできる良性の腫瘍 全摘出しやすい 星状細胞(神経膠細胞)由来 悪性の場合もあり、手術で全摘出が難しい 5年後の生存率 86.7% 88.7% 67.8% 10年後の生存率 86.7% 88.7% 58.1% 15年後の生存率 76.3% 53.2% 記載なし 上衣腫瘍と血管芽腫は比較的全摘出が可能で、長期生存率も高い傾向にあります。一方、星状細胞腫瘍は全摘出が難しいことが多く、5年・10年後の生存率も低めです。 腫瘍の種類を正確に見極めることが、治療方針や予後の予測において重要です。 参考文献 (文献1) 硬膜内髄外脊髄腫瘍患者における腫瘍切除後も術前の歩行障害の程度は残るか? | 国際脊髄学会誌 (文献2) 足の親指の関節位置感覚の障害を伴う脊椎腫瘍患者では、初期段階での歩行機能の術後回復が遅れる|J-STAGE (文献3) 髄内脊髄腫瘍の外科的切除後の生存と機能的転帰:22年間にわたる253人の患者のシリーズ | PubMed
2025.05.30 -
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「尖足と下垂足の違いがわからない」 「尖足と下垂足の症状を見分けるポイントを知りたい」 尖足と下垂足の症状は似ていますが、原因や対処法が異なります。足の変形や歩きにくさが共通しているため、同じ症状と誤解されがちです。しかし、症状を適切に治療するには、両者の違いを知ることが大切です。 本記事では、尖足と下垂足の違いについてわかりやすく解説します。 尖足と下垂足の共通点 尖足と下垂足の違いを見分けるポイント 尖足と下垂足の治療法 違いを知ることが、正しい治療への第一歩になります。 尖足と下垂足の違い 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 症状の現れ方 徐々に足首が下を向いた状態で固まり、可動域が狭くなる 急に足首が上がらなくなり、歩行時に足先が引っかかる 症状の性質 足首が過剰に下を向き、つま先立ちのような姿勢になる、関節の拘縮や変形を伴いやすい 足首の背屈ができず、足先が垂れ下がる、鶏歩や感覚障害を伴う 原因 脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィー、アキレス腱の短縮、長期臥床など 腓骨神経麻痺、坐骨神経障害、腰椎ヘルニア、脳卒中、外傷、手術による神経損傷など 尖足と下垂足の症状はどちらも足に異常が現れ、歩行が困難になる疾患ですが、原因や症状、見た目に違いがあります。 見た目の足の形や、歩き方の特徴も異なります。尖足と下垂足の原因を解説します。 尖足の症状と原因 分類 内容 見た目の特徴 つま先で歩くためバランスが悪く、段差につまずきやすく、長距離歩行が困難になる 歩行への影響 足のアーチが崩れて扁平足や凹足になり、ハンマートゥや外反母趾を併発する場合がある 起こりうるトラブル 足首や足裏に違和感が出やすく、タコやマメができ、靴が合わなくなる 可動域の制限 足首を上に反らす動き(背屈)が制限され、関節の柔軟性が低下する 原因 脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィー、糖尿病性神経障害、アキレス腱の短縮や長期臥床など (文献1) 尖足は、足首が底屈(足の裏側へ曲がる)方向に硬くなり、つま先が下を向いたまま伸びてしまう状態を指します。踵が接地しにくいのが特徴です。 主な原因としては、脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷など、脳や脊髄といった中枢神経系の障害によって起こる疾患が挙げられます。 下垂足は進行性の神経疾患の一部として現れる場合もあるので、症状が現れた段階での早期対応が大切です。 下垂足の症状と原因 分類 内容 足首の動きの制限 足首を上に反らす自力動作(背屈)ができず、足先が垂れ下がる状態になる 歩行への影響 足先が地面に引っかかりやすく、階段や段差でつまずきやすくなり、足を高く上げて歩く鶏歩になることがある 感覚障害 足の甲や外側にしびれや感覚の鈍さが現れることがあり、神経障害の影響で違和感を伴うこともある 筋力の低下 足首を持ち上げる筋肉(前脛骨筋など)の力が弱まり、足の動きが不安定になる 症状の現れ方 軽度ではつま先が少し引っかかる程度にとどまるが、重度では足首がほとんど動かせず、感覚障害や違和感が伴う場合がある 原因 脳卒中、腰椎ヘルニア、坐骨神経障害、末梢神経障害(腓骨神経麻痺など)、外傷や手術後の神経損傷など (文献2) 下垂足は、足首や足の指を持ち上げるための筋肉(前脛骨筋など)の力が弱くなり、足先がだらんと下に垂れ下がる状態です。この状態はドロップフットとも呼ばれます。 歩行時には、垂れたつま先が地面に引っかからないように、膝を通常より高く上げて歩く鶏歩(けいほ)と呼ばれる歩き方になるのが特徴です。 主な原因は、腰椎の問題(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)による神経の圧迫や、腓骨(ひこつ)神経麻痺といった末梢神経障害などが挙げられます。また、脳卒中など重大な病気の可能性もあるため、に医療機関の受診が重要です。 以下の記事では、下垂足の原因について詳しく解説しています。 尖足と下垂足の共通点 共通項目 内容 歩行困難の症状がある 足首の動きに制限があるため、正常な歩行が困難になり、転倒やつまずきのリスクが高くなる 神経や筋肉に異常が起こる 神経や筋肉に異常が起こる いずれも神経や筋肉の障害によって、運動機能のバランスが崩れる 併存リスクがある 神経疾患や中枢性疾患などにより、尖足と下垂足の両方が同時または連続して発症するケースがある 尖足と下垂足は異なる状態ですが、いくつかの共通点も見られます。いずれも筋肉や神経の障害によって足の動きが制限され、日常生活に大きな影響を及ぼします。 尖足と下垂足の共通点は以下の3つです。 歩行困難の症状がある 神経や筋肉に異常が起こる 併存リスクがある それぞれの共通点についてくわしく解説します。 歩行困難の症状がある 項目 内容 共通点 尖足と下垂足はいずれも足の変形や筋肉・神経の異常により歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まる 尖足による歩行障害 足先が常に下を向いてかかとが接地できず、つま先立ちのような歩き方になり、バランスが悪く転倒や足の違和感が起こりやすくなる 下垂足による歩行障害 足首が上がらず足先を引きずるように歩くため、段差でつまずきやすくなり、足の甲や外側にしびれや違和感を伴うことがある 尖足・下垂足ともに、歩行時のバランスが崩れやすく、日常動作に支障が出る場合があります。尖足は、かかとが浮いてつま先で歩くようになる状態です。一方で下垂足は、足先が上がらずにつまずきやすくなります。 どちらの症状も、装具やリハビリを適切に行わないまま放置すると、二次的な関節障害や転倒によるけがのリスクが高まります。 神経や筋肉に異常が起こる 項目 内容 共通点 尖足と下垂足はいずれも、神経や筋肉の異常により足首の動きが制限される共通点がある 尖足の場合 足首を下に曲げる筋肉が過剰に緊張・拘縮し、主に脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィーなどが原因になる 下垂足の場合 足首を上に反らす筋肉が麻痺し、腓骨神経麻痺、腰椎ヘルニア、糖尿病性神経障害などが神経伝達の障害を引き起こす 尖足も下垂足も、足関節周囲の神経や筋肉に異常が生じることで発症します。尖足は足首が下向きに固まり、下垂足は足首を上げられなくなる状態です。原因は異なりますが、どちらも筋肉や神経に異常が起こり、足を動かす機能が低下します。 中枢神経(脳や脊髄)から末梢神経、筋肉まで、障害の部位によって発症の仕組みは異なりますが、運動機能がうまく働かなくなる点は共通しています。 併存リスクがある 項目 内容 併存の可能性 尖足と下垂足は異なる病態ですが、同じ原因から同時に発症するリスクがある 併存の要因 脳卒中や脊髄損傷、糖尿病性神経障害、拘縮、腓骨神経麻痺などにより、筋緊張や麻痺、末梢神経の異常が生じることで、尖足と下垂足が同時に現れることがある 併存による影響 両症状が重なると歩行障害が悪化し、転倒リスクの増加や関節の変形、慢性痛などの二次障害を引き起こす可能性がある 対策 原因疾患の管理を軸に、リハビリテーションや装具療法を併用し、機能の維持と症状の進行予防を目指す 尖足と下垂足は、原因疾患によっては同時に起こることがあります。 たとえば、広い範囲に及ぶ脳血管障害や複数の神経が障害される病気では、両方の症状が併発する可能性があります。 併発した場合、診断や治療は複雑になりますが、症状ごとに適切な対応が必要です。 尖足と下垂足の違いを見分けるポイント 尖足と下垂足は見た目や歩行の様子に違いがあります。注目すべきは、足の向きや足首の動き方、歩行時のクセ、障害を受けている筋肉や神経の部位などです。 足の向き 歩行時の状態 原因となる神経や筋肉 足関節の可動域 尖足と下垂足を見分けるポイントを解説します。 足の向き 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足の向き 足先が常に下を向く(底屈したままの状態) 足先が垂れ下がる(背屈できずダランと下がる) 特徴的な姿勢 つま先立ちのような姿勢で、かかとが浮いて接地しない 足を引きずるように歩き、つま先が地面に引っかかりやすい 動かしづらい方向 上に反らす(背屈)ができない 上に持ち上げる(背屈)ができない 尖足では、足首が下に曲がったまま固定されており、かかとが浮いてつま先だけが地面に接している状態になります。つま先立ちのような姿勢が続くのが特徴です。 一方、下垂足では足先がだらんと下がってしまい、歩こうとするとつま先が地面に引っかかりやすくなり、つまずきやすくなります。 歩行時の状態 比較項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足関節の動き 足が常に下を向く(底屈したまま)ため、背屈ができない 足が上に持ち上がらない(背屈障害)ため、足先が垂れ下がる 歩行時の姿勢 かかとが地面につかず、つま先立ちのような歩き方になる 足先を引きずらないよう、膝を高く上げて歩く(鶏歩)ようになる 歩行の特徴 歩幅が狭くなり、バランスを崩しやすい 足先が地面に引っかかりやすく、つまずきや転倒のリスクが高まる 尖足では、足首が下に向いたまま固まるため、かかとが地面につきにくく、つま先で歩くような動きが特徴です。場合によっては、足裏全体を一度に地面につけるような不自然な歩行が見られます。 一方、下垂足では、足のつま先が垂れ下がって引っかかりやすいため、膝を高く持ち上げて歩く鶏歩(けいほ)の症状が現れます。また、足を引きずるように歩くため、足音が大きくなるのも下垂足の特徴です。 原因となる神経や筋肉 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 関与する動き 足を下に向ける(底屈) 足を上に持ち上げる(背屈) 主な原因筋・神経 腓腹筋、ヒラメ筋 腓骨神経、前脛骨筋、長趾伸筋 筋肉・神経の状態 筋肉が過緊張または拘縮し、足関節が底屈位に固定される 腓骨神経の麻痺により背屈筋が働かず、足先を持ち上げられなくなる 固定される足の向き 足先が下を向いた状態に固定 足先が垂れ下がった状態になり、引きずるような歩行になる (文献3) 尖足と下垂足は、原因となる神経や筋肉の種類にも違いがあります。尖足は、脳や脊髄といった中枢神経の障害によって、ふくらはぎの筋肉が過剰に緊張する痙縮(けいしゅく)が起こり、足首が下を向きやすくなります。 下垂足は、腓骨神経などの末梢神経の麻痺や、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)など足首を持ち上げる筋肉の筋力低下が主な原因です。障害される神経や筋肉の部位が異なる点が、見分ける際の重要なポイントです。 足関節の可動域 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 足関節の状態 足関節が底屈位に固定され、背屈(足を上に上げる動き)が他動的にも制限される 足関節の背屈が自動的に困難になりますが、他動的には背屈が可能な場合がある 可動域の特徴 関節自体が拘縮しており、柔軟性が低下している(構造的な制限) 筋力低下や麻痺で動かせなくても、関節構造には異常がないことが多い(機能的な制限) 主な原因となる障害 下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋など)の過緊張や拘縮 前脛骨筋など背屈筋を支配する腓骨神経の麻痺や筋力低下 見分けるポイント 他動的に背屈も難しい。歩行時はつま先立ちのようになり、かかとが接地しない 他動運動では背屈可能。歩行時は足先が垂れ、膝を高く上げて歩く鶏歩が見られる 足首の可動域にも違いが見られます。尖足では、筋肉の痙縮により足首が硬くなるのが特徴です。 一方、下垂足では、筋力の麻痺によって自分では足を持ち上げにくくなります。足関節の動きに注目すると尖足か下垂足の症状を判断する手がかりになるでしょう。 尖足と下垂足の治療法 尖足・下垂足の治療では、原因に応じて適切な治療法が選択されます。症状の状況に合わせて、治療が行われます。 尖足と下垂足の治療法は以下の5つです。 薬物療法 装具療法 理学療法 手術療法 再生医療 尖足・下垂足の治療法についてくわしく解説します。 また、以下の記事では、下垂足のリハビリ方法について詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 薬物療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 治療の目的 筋肉の過緊張や痙縮を緩和し、関節の拘縮を予防・改善するのが目的 神経の炎症や障害の進行を抑えつつ、神経機能の回復を促す 使われる薬剤 筋弛緩薬(例:チザニジン、バクロフェン)抗痙縮薬(例:ダントロレン)ボツリヌス療法(注射) ビタミンB12製剤(末梢神経修復)神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど)ステロイド(炎症性疾患時) 対象となる異常 筋肉の過緊張・痙縮 神経の麻痺・炎症・障害 補助的な目的 薬で筋肉の緊張を抑えることで、リハビリや装具療法を円滑に行いやすくなる 違和感やしびれを軽減し、運動療法への移行をサポートする 尖足には、筋肉の緊張を和らげる治療が行われ、内服薬やボツリヌス注射で痙縮を抑え、歩行の改善が期待できます。下垂足では、原因が神経炎などの場合に薬物療法が選ばれることがあります。 薬物療法は症状を根本的に治療するのは難しいため、他の治療法と併用するのが一般的です。また、薬物療法による副作用が現れた際は、早期医師への相談が大切です。 装具療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 装具療法の目的 足関節の底屈を制御・矯正し、過度な緊張や変形を防ぐ 足先の垂れ下がりを防止し、歩行時のつまずきや転倒リスクを軽減 主に使用する装具 足底板や短下肢装具(AFO)など 短下肢装具(AFO) 装具による効果 関節の可動域を保ち、拘縮の進行を防止。歩行時のバランス改善と違和感の軽減が期待できる 足先を上げる動作を補い、膝を高く上げずに自然な歩行が可能。日常生活動作(ADL)の改善に役立つ 装具療法は、足関節の動きを適切に抑え、筋肉の緊張や変形を防ぐ目的で行われます。尖足には、足首の底屈を制限し、かかとが地面につくよう補助するタイプの装具を使用します。 下垂足の場合は、足先の持ち上げを支える短下肢装具(AFO)の使用が一般的です。使用にあたっては、自己判断はせず、医師の指導に従い行います。 装具に違和感がある場合は無理に使わず、早めに医師へ相談してください。また、装具を長く使うためには、定期的な点検や調整も大切です。理学療法 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) ストレッチ アキレス腱や足底筋を中心に伸ばし、関節の柔軟性を高めて拘縮を予防する アキレス腱の柔軟性を保つことで、足の過剰な底屈を防ぎ、歩行の安定性を高める 関節運動 背屈・底屈運動を繰り返し行い、可動域を広げて足首の動きを改善する 必要に応じて足関節の他動運動を行い、柔軟性を維持しながら底屈の悪化を防ぐ 筋力トレーニング 足関節周囲の筋力を強化し、つま先立ち歩行による不安定さを軽減する 前脛骨筋など背屈に関与する筋を鍛え、足先を持ち上げる力を回復させる 歩行訓練 装具と併用しながら、正しい足の接地と重心移動を意識した歩行を反復する 装具を使用しながら、足先を引きずらない自然な歩行パターンを習得する 理学療法の効果 拘縮予防と筋力維持により、歩行能力の改善と日常生活への自立支援が期待される 筋力回復と歩行安定により、転倒リスクの軽減や生活の質の向上が見込まれる リハビリが中心となる治療法であり、ストレッチや筋力トレーニングを継続的に行うことで、症状の改善を目指します。 尖足に対しては、拘縮予防や筋緊張の緩和を目的としたストレッチが重視され、下垂足では、前脛骨筋などの機能回復を目指す筋力トレーニングや歩行練習が行われます。 リハビリを実施する際は、医師の指導のもと継続的に取り組むことが大切です。 手術療法 項目 尖足に対する手術療法 下垂足に対する手術療法 手術療法のメリット 保存療法で改善しない筋や腱の拘縮・変形を根本から矯正できる可能性がある 損傷した神経や機能を代替する筋腱を用い、背屈機能を再建する つま先立ち歩行や足の違和感を軽減し、歩行の安定性を改善する 足先を引きずる症状や転倒リスクを軽減し、歩行能力の改善が期待される 手術療法のデメリット 感染・出血・神経損傷などの手術リスクが伴う 同様に手術侵襲による合併症のリスクがある 手術後の関節の可動域制限や装具の継続使用が必要になることがある 手術後もリハビリや装具療法が不可欠で、回復に時間がかかることがある 尖足や下垂足では、保存療法で効果が不十分な場合や症状が進行している場合に手術療法が検討されます。尖足に対しては、アキレス腱や後脛骨筋腱の短縮を改善するための腱延長術が行われます。 手術療法では、変形に対して根本的な改善が期待できる一方、術後の感染や出血、神経損傷のリスクに注意が必要です。手術はリスクを考慮し、医師と相談した上で検討するのが大切です。 再生医療 項目 尖足(せんそく) 下垂足(かすいそく) 原因 筋肉や腱の短縮・拘縮、神経障害 総腓骨神経の麻痺や損傷、筋力低下 再生医療の目的 筋肉や腱の柔軟性を回復させる、筋肉組織の再生 麻痺した神経や筋肉の再生・修復、足部の背屈機能の回復 期待される効果 筋・腱の柔軟性向上による足関節の可動域改善 足首や足指の背屈機能の回復による歩行の安定化 再生医療では、自分の幹細胞を使って、傷んだ神経の回復や筋肉の萎縮の改善を目指します。再生医療は手術を必要とせず、体への負担が少ない治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では、尖足や下垂足によって損傷した神経の再生を促します。 尖足・下垂足の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 尖足と下垂足の違いを理解し適切な治療を受けよう 尖足と下垂足の症状には似ている部分が多い一方、明確な違いがあります。原因や症状によって適切な治療法が異なるため、足に少しでも違和感があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、尖足や下垂足の原因を正確に見極めた上で、幹細胞を使った再生医療による治療も行っています。 尖足または下垂足の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 参考資料 (文献1) Joan Pellegrino. (2024). Talipes Equinovarus (Clubfoot) and Other Congenital Foot Anomalies. MSD ManualProfessional Version https://www.msdmanuals.com/professional/pediatrics/congenital-musculoskeletal-anomalies/talipes-equinovarus-clubfoot-and-other-congenital-foot-anomalies (Accessed: 2025-04-14) (文献2) 深田 亮ほか.「下垂足および足底感覚障害を有する脊髄円錐部髄内腫瘍に対し,術後早期からトレッドミル歩行練習を実施した1例*」『理学療法学 第49巻第5号』2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/49/5/49_12264/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月14日) (文献3) 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる「腓骨神経麻痺」」公益社団法人 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/peroneal_nerve_palsy.html(最終アクセス:2025年4月14日)
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
骨粗しょう症は、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。骨折は要介護状態となる原因の1つとされているため、引き起こさない予防が重要になります。 しかし、なかには骨粗しょう症がなぜ起こるのか原因がわからないと感じる方もいるのではないでしょうか。骨粗しょう症を防ぐ対策には、骨がもろくなる原因を理解しておくことが大切です。 本記事では、骨粗しょう症の主な原因を解説します。骨量を上げる予防策もまとめているので、骨粗しょう症にならないよう骨を強くしたい方は参考にしてください。 骨粗しょう症の原因は骨量の減少 骨粗しょう症の原因には、骨に含まれるミネラルの総量の減少が考えられます。骨量は年齢によって減少していくだけでなく骨の強度が低下していくため、次第に骨がもろくなり、骨粗しょう症を発症します。 また、骨粗しょう症の種類は以下の2つです。 原発性(一次性)骨粗しょう症 自然に発生 続発性(二次性)骨粗しょう症 ほかの病気や薬などが原因で発生 一般的に、骨粗しょう症は自然に発生する原発性が原因となるケースがほとんどです。続発性はきわめて稀な点についても、あわせて覚えておきましょう。 なお、リペアセルクリニックではメール相談やオンラインカウンセリングを受け付けております。骨粗しょう症に関する疑問をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 【骨粗しょう症】骨がもろくなる主な原因 骨粗しょう症の原因は骨量の減少ですが、骨がもろくなる要因は複数あります。主な原因は、以下の6つです。 加齢 閉経による女性ホルモンの低下 無理なダイエットや運動不足 特定の疾患 ステロイド薬 ビタミンD不足 骨粗しょう症予防として、原因について理解を深めましょう。 加齢 骨粗しょう症は、加齢に伴い増加傾向にあります。骨量は幼少期から増加し、20歳頃にはピークに達します。 40歳頃までは横ばい状態となりますが、50歳近くになると次第に減少していくのが一般的な流れです。そのため、年齢を重ねていくごとに骨粗しょう症のリスクが高まります。 加齢に伴い、食事量や運動量が減る点も原因といえます。筋力が低下していくため、骨は徐々にスカスカな状態になり、もろくなってしまうのです。 閉経による女性ホルモンの低下 骨粗しょう症が女性に多いといわれる理由は、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが減少するためです。エストロゲンには、骨を作る細胞と壊す細胞のバランスを調整する機能があります。 しかし、女性は閉経するとエストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンが減少すると、骨を壊す細胞が活性化し、結果として骨量の減少により骨粗しょう症を引き起こしてしまうのです。 実際に、60代の日本人女性は22.8%、80代の56.2%が骨粗しょう症といわれています。(文献1)骨折すると、要介護のリスクが高まるため注意が必要です。 無理なダイエットや運動不足 ダイエットや運動不足などの生活習慣によっては骨量が減少し、骨粗しょう症を引き起こしやすくなります。骨を作る細胞は負荷がかかるほど活性化するため、運動の習慣がなければ次第にもろくなります。 また、過度なダイエットは骨を作るのに欠かせない栄養素が不足しがちです。骨を作る栄養素の1つとなるカルシウムが不足すると、骨が弱くなってしまいます。 とくに20代は骨量がピークを迎える時期となるため、若いうちに骨を作っておくことが大切です。若いうちから無理なダイエットをしていると骨がボロボロになり、年齢を重ねるにつれて骨粗しょう症を引き起こすリスクが高くなります。 特定の疾患 骨粗しょう症は、特定の疾患により引き起こされる可能性があります。原因となる主な疾患は、以下のとおりです。 関節リウマチ 副甲状腺機能亢進症 糖尿病 動脈硬化 慢性腎臓病 慢性閉塞性肺疾患 特定の疾患を発症すると、骨代謝や骨形成に必要な細胞などが異常をきたして骨がもろくなる場合があります。また、骨質を劣化させる物質が増加し、骨が弱くなるケースも珍しくありません。 骨粗しょう症の原因を理解するためには、骨密度や骨の質が低下する疾患についても、あわせて覚えておきましょう。 ステロイド薬 骨粗しょう症には、ステロイド薬が原因となるステロイド性骨粗しょう症があります。ステロイド性骨粗しょう症とは、ステロイド薬の服用により引き起こされる骨粗しょう症です。 ステロイド薬は炎症を抑制する一方で、骨を作る細胞の働きを弱める作用があります。また、骨を吸収する細胞の働きを強めて、骨を弱くするのもステロイド薬の作用です。 使用するステロイド薬の量が多いほど骨はもろくなってしまうほか、3カ月以上継続して使う場合は骨強度の低下を引き起こします。ステロイド薬の長期的な使用は、日常生活における些細な動作でも骨折してしまうほど骨を弱める可能性があります。 ビタミンD不足 ビタミンDが極端に不足した場合、骨がもろくなってしまい骨粗しょう症を引き起こします。ビタミンDにはカルシウムやリンなどの吸収をサポートする役割があり、欠乏すると骨が弱くなってしまいます。 また、骨が弱くなるだけでなく、下肢の筋力が衰えて転倒しやすくなるケースも少なくありません。ビタミンDは骨粗しょう症の予防に欠かせない栄養素で、加齢に伴い必要量も増加します。骨を守るためには、ビタミンD不足を防ぐことが重要です。 骨粗しょう症の予防法 骨粗しょう症を防ぐためには、骨を強くする必要があります。主な予防法は、以下の5つです。 骨粗しょう症予防に適した栄養をとる 骨密度を上げる運動を取り入れる 日光を浴びる 禁煙する 骨密度検査を定期的に受ける 骨を強くする方法について理解を深め、骨粗しょう症を予防しましょう。 骨粗しょう症予防に適した栄養をとる 骨粗しょう症予防には、骨を強くする栄養を積極的に摂取するのが効果的です。骨を強くする栄養の摂取は、骨量の維持や改善が期待できます。 骨粗しょう症予防に適した栄養素は、以下のとおりです。 栄養素 役割 主な食材 カルシウム 骨を作る 牛乳 乳製品 小魚 小松菜 チンゲン菜 ビタミンD カルシウムの吸収を促進 鮭 ウナギ サンマ シイタケ キクラゲ 卵 ビタミンK カルシウムが骨に沈着するのをサポート 納豆 ほうれん草 小松菜 ブロッコリー キャベツ 予防策には骨を強くする栄養素だけでなく、バランスの良い食生活が重要です。なお、スナック菓子やインスタント食品は、カルシウムの吸収を妨げる食塩の含有量が多いため、食べ過ぎないようにしましょう。骨粗しょう症予防策として、バランス良く栄養を取り入れるのがポイントです。 骨密度を上げる運動を取り入れる 運動は、骨密度の向上に効果的です。骨を強化するためには、負荷をかけて細胞を活性化させる必要があります。 骨密度を上げるのにおすすめの運動は、以下のとおりです。 片足立ち つま先立ち スクワット ウォーキング 水泳 バレーボール 負荷がかかる運動を取り入れると骨が強くなるため、継続的に行うのが重要です。なお、足や腰に痛みがあって運動ができない場合は、仰向けになった状態で腰を持ち上げる体操など無理のない範囲で進めていきます。 運動の習慣がない場合は、軽い体操やウォーキングからスタートして、骨密度の低下を予防しましょう。 日光を浴びる 日光浴はビタミンD活性化に良い効果をもたらすため、骨粗しょう症予防に適しています。ヒトの皮膚の下に位置する皮下脂肪には、コレステロールの一種が含まれています。 コレステロールは紫外線に当たると化学反応を起こし、ビタミンDが生成されるため、日光浴は骨作りに効果的です。夏場は、長時間の日光浴を避けて15分〜30分ほどを目安にします。 また、冬場は30分〜1時間ほどを目安に日光浴をするのがおすすめです。洗濯物を干したりウォーキングしたりと、日光が出ているタイミングで外に出てビタミンD生成のサポートを行いましょう。 禁煙する たばこは骨をもろくする要素を多く含んでいるため、禁煙を推奨します。喫煙による骨のリスクは、以下のとおりです。 骨密度の低下 骨形成に必要な細胞の減少 骨を吸収する細胞の増加 骨折のリスク上昇 ビタミンDやカルシウムの吸収を阻害 ホルモンバランスの乱れ 実際に、喫煙における股関節骨折のリスクは女性31%、男性40%の割合で増加すると推定されています。(文献2)たばこは要介護の原因となる骨折リスクに影響するため、骨がもろくなるのを防ぐ方法として禁煙を検討するのがおすすめです。 骨密度検査を定期的に受ける 骨粗しょう症の予防策には、定期的に骨密度検査を受ける方法があります。骨密度検査ではどのくらい骨量が減少しているか、X線を使用して測定します。 主な骨密度検査は、以下のとおりです。 主な骨密度検査 特徴 DXA(デキサ法) 背骨や太ももの付け根、前腕などの骨密度をX線で測定 MD法 手の骨密度を測定 QUS法(定量的超音波測定法) かかとの骨に超音波を当て、骨の強さを測定 レントゲン検査 背骨のX線写真を撮影し、骨折や変形を確認 MRI検査 X線検査では見分けがつきにくい、骨折を詳しく確認 血液・尿検査 骨代謝を測定 骨密度検査は、症状がなくても50歳以上になったら定期的に受けましょう。リペアセルクリニックではメール相談やオンラインカウンセリングを受け付けております。骨粗しょう症に関する疑問や悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 骨粗しょう症の原因から骨量を上げる予防法を実施しよう 骨粗しょう症の原因は、加齢や女性ホルモンの減少、無理なダイエットなどさまざまです。骨は50歳あたりから徐々に減少するため、骨粗しょう症のリスクが高まります。 骨粗しょう症になると骨折しやすくなるので、骨量を上げる予防法の実施が重要です。骨を強くする栄養素や運動を取り入れ、骨粗しょう症を予防しましょう。 なお、骨粗しょう症の骨折は手術を伴う可能性があります。万が一、手術を伴う骨折をした場合は身体の負担が少ない再生医療を検討するのも手段の1つです。発症する原因を理解して、骨粗しょう症を予防しましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「女性向け 知ってほしい健診・検診」健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~2024年 https://kennet.mhlw.go.jp/tools/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/leaf-checkup-female.pdf(最終アクセス:2025年4月24日) (文献2) PubMed「A meta-analysis of the effects of cigarette smoking on bone mineral density」NationalLibraryMedicine2001年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11683532/(最終アクセス:2025年4月24日)
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
「手足が冷えていないのに、ジンジンと冷たく感じる」 「暖かい季節なのに、手足が冷える」 原因不明の違和感は、神経障害の症状かもしれません。手足が冷えていないのに冷たく感じ、さらに神経障害の疑いがあると不安は大きくなるでしょう。 本記事では、以下について解説します。 冷えてないのに冷たく感じるのは神経障害が関係している理由 冷えてないのに冷たく感じる原因 冷たく感じる症状の治療法 【自分でできる】冷たく感じる症状の対処法 記事の最後には、冷たく感じる症状についての質問をまとめました。ぜひ最後までお読みいただき、症状改善にお役立ていただければ幸いです。 冷えてないのに冷たく感じるのは神経障害が関係している 冷たく感じる要因 メカニズム 血管の収縮 交感神経が過剰に働き、血管が収縮する、手足への血流が減って冷たく感じる 体温調節機能の異常 自律神経が乱れ、気温変化にうまく対応できず、寒くなくても冷えを感じる 感覚の異常 温度を感じる神経が過敏になり、実際よりも冷たく感じるようになる 冷えていないのに冷たく感じる症状は、神経障害が関係している可能性があります。この原因不明に思える不快な感覚は、身体の隠れた変化や不調のサインです。 皮膚の神経が誤作動を起こし、冷たさを誤って脳に伝えることで、実際には冷えていなくても冷感を覚えるのです。 神経障害が引き起こされる原因としては、ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。 また、糖尿病や自律神経性ニューロパチーなど、重大な疾患の初期症状の可能性もあります。冷える季節でないのに手足が冷たいと感じる場合は、重症化する前に医療機関を受診しましょう。 冷えてないのに冷たく感じる原因 手足が実際には冷えていないのに冷たく感じる原因には、さまざまな身体の異常が関係しています。単なる冷え性だと思い、放置すると重症化する恐れがあります。 主な原因として、以下の5つが考えられます。 自律神経の乱れ 血管の病気の可能性 末梢神経障害の可能性 糖尿病の疑いの可能性 更年期障害の影響 冷たく感じる原因を特定し、早期に異変に気づき、適切な対処が重要です。 自律神経の乱れ 要因 説明 早期発見するためのサイン ストレス 仕事や人間関係などのプレッシャーが続くと、自律神経のバランスが崩れやすくなる イライラ、不安感、集中力の低下、過呼吸、動悸 睡眠不足 十分な睡眠がとれないと、心と体を休ませる神経(副交感神経)が働きにくくなる 朝起きられない、疲れが取れない、眠りが浅い、寝つきが悪い 不規則な生活習慣 食事の時間がバラバラだったり、夜更かしや昼夜逆転の生活は、自律神経を乱す原因になる 食欲不振、便秘・下痢の繰り返し、だるさ、頭痛 ホルモンバランスの乱れ(更年期など) 年齢や体調の変化でホルモンのバランスが崩れると、自律神経にも影響を与える ホットフラッシュ(ほてり)、汗が出やすい、気分の浮き沈み、不眠 自律神経に関わる病気(糖尿病、自律神経性ニューロパチーなど) 一部の病気は、自律神経に直接影響を与えることがある 手足のしびれ、立ちくらみ、胃もたれ、便秘・下痢、発汗異常 自律神経は体温調節や血流のコントロールに関わっています。ストレスや不規則な生活でバランスが乱れると、実際の温度を正しく感じにくくなり、とくに交感神経が優位になると血管が収縮して手足が冷たく感じやすくなります。 こうした症状は、糖尿病や自律神経性ニューロパチーの初期サインの可能性も考えられるため、早めの受診が大切です。 血管の病気の可能性 病名 原因・特徴 症状 下肢閉塞性動脈硬化症(ASO) 足の動脈が動脈硬化で狭くなり、血流が悪くなる病気。中高年男性に多い 足の冷え、しびれ、歩くと足に違和感がある(間欠性跛行) レイノー症候群 寒さやストレスで手足の血管が強く収縮し、一時的に血流が止まる 指先の冷え、色が白→青→赤と変化する、しびれや違和感 混合性結合組織病(MCTD) 自己免疫の異常で、血管や関節、筋肉などに炎症が起きる 指先の冷えやしびれ、関節痛、筋肉のこわばり (文献1)(文献2)(文献3) 手足が冷たく感じる原因には、血流が悪くなる血管の病気も考えられます。動脈硬化で足の血管が狭くなる閉塞性動脈硬化症や、手足の細い血管に炎症が起こるバージャー病などがあります。 進行すると皮膚の変色や傷が治りにくくなることもあるため、歩くと足が重くなる、皮膚が青白いなどの症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 末梢神経障害の可能性 原因 説明 糖尿病 血糖値が高い状態が続くと、神経にダメージを与えることがある ビタミンB12欠乏症 神経の修復や維持に必要なビタミンB12が不足すると、障害が起こりやすくなる アルコール多飲 長期間の大量飲酒は、神経に悪影響を及ぼす 自己免疫疾患 体の免疫システムが誤って自分の神経を攻撃してしまうことがある 感染症 帯状疱疹やライム病など、一部の感染症が神経に影響を与えることがある 薬剤 抗がん剤や抗HIV薬など、一部の薬が副作用として神経にダメージを与えることがある 外傷 骨折や事故による神経の圧迫・切断が原因となることがある 遺伝性疾患 生まれつき神経の異常。シャルコー・マリー・トゥース病などが知られている (文献4) 末梢神経は皮膚の感覚や筋肉の動きなどを司る神経で、損傷や障害が起こると、温度や痛覚の感知ができなくなります。実際には冷えていないのに冷たく感じる、あるいは触ったものの温度がわかりにくくなる症状が現れます。 末梢神経の原因は、外傷、感染、薬剤、糖尿病などです。慢性的な違和感がある場合は、重症化する前に早期発見が大切です。 以下の記事では、末梢神経障害の症状について解説しております。 糖尿病の疑いの可能性 項目 内容 神経へのダメージ 高血糖が続くと神経にブドウ糖が蓄積し、機能が低下 末梢神経の障害 足の神経は長いためダメージを受けやすく、冷えやしびれが出やすくなる 自律神経の障害 血流を調整する自律神経が障害され、冷えを感じやすくなる 冷えの特徴 足先から始まり、左右対称に出やすい。しびれや違和感を伴うことも。血糖コントロールが悪いと悪化しやすい 受診の目安 冷えに加えてしびれや違和感、感覚の低下がある場合や、糖尿病が疑われる場合は医療機関へ (文献4)(文献5) 糖尿病になると、高血糖の状態が続きます。手足の冷感やしびれ、違和感が生じやすくなり、温度感覚が鈍ることもあります。糖尿病は自覚症状が少なく進行するため、冷たい感じが初期のサインである可能性も否定できません。 健康診断などで血糖値の高さを指摘されたことがある方や、口の渇き、多飲多尿などの症状がある方で、手足の冷感やしびれを感じる場合は、糖尿病の可能性も視野に入れ、早めに医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、糖尿病の初期症状について詳しく紹介しています。 更年期障害の影響 更年期に入ると女性ホルモンのバランスが急激に変化し、自律神経の調整機能が不安定になります。血流が不規則になると、実際の体温とは異なる冷感を覚えることもあります。 更年期障害は心身に影響を与えるため冷感だけでなく、のぼせやイライラ、睡眠障害などの症状が現れることも多いです。 症状の出方には個人差があるものの、少しでも違和感を覚えた際は早めに医師に相談しましょう。 冷たく感じる症状の治療法 治療法 内容 薬物療法 神経の過敏さを抑える薬(抗うつ薬や抗てんかん薬など)を使い、感覚異常を和らげる 運動療法 血流をよくするために、軽いストレッチやウォーキングなどを取り入れる 精神療法 ストレスや不安が神経の働きに影響するため、必要に応じてカウンセリングや認知行動療法を行う 再生医療 損傷した神経の修復を目的とした幹細胞治療などが一部の医療機関で実施される 冷えていないのに冷たく感じる症状の治療法は、原因や進行具合によって変わります。また、一つだけでなく、複数の治療法を組み合わせて行われるのが一般的です。 薬物療法 運動療法 精神療法 再生医療 どの治療法でも自己判断は避け、医師へ相談・指導のもと行いましょう。 薬物療法 薬物療法に関する項目 内容 目的 神経の修復、血流改善、異常な感覚(冷感・しびれ)の緩和 主な治療薬 血糖コントロール薬、免疫抑制薬、プレガバリンなど症状によって異なる 効果 神経の働きを整え、冷たく感じる症状や違和感を軽減 注意点 薬は症状や体質により調整が必要、副作用に注意する、必ず医師の指示に従う (文献6) 薬物療法は、冷たく感じる症状の原因や症状緩和のために用いられる治療法の一つです。症状や原因によって処方される薬は異なります。また、症状の種類や体質によって薬物療法の効果に差があるため、医師による適切な診断と薬の服用が必要です。 薬物療法を行う際は、自己判断で薬の量や使用頻度を変えず、副作用や異変が出た場合には医師に相談するようにしましょう。 運動療法 運動療法の効果 内容 血流の改善 筋肉を動かすことで血液の流れが促進する 筋肉量の維持・増加 運動で筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、冷えの改善につながる 神経機能の回復支援 運動により神経への酸素供給が増え、修復が促される 具体的な方法 つま先立ち・足首ストレッチ、30分程度のウォーキングなど 冷たく感じる症状には、運動療法が効果的です。とくにふくらはぎなどの筋肉を動かすと血流が促進され、冷えや神経の不調を和らげる助けになります。身体を動かす場合は、無理のない範囲で行いつつ、違和感を感じた際は運動を中止しましょう。 運動は身体に合ったメニューで実践するのが大切で、無理をすると逆効果になることもあります。医師の指導を受け、自分の体調に合わせて取り入れましょう。 精神療法 精神療法に関する項目 内容 精神療法が必要な理由 ストレスや不安が原因で、実際の温度とは異なる「冷たい」感覚が生じることがある 精神療法の治療法 患者の不安や感覚を否定せず共感的に受け止め、誤った思い込みを修正する (文献6)(文献7)(文献8) 冷感の原因は神経や血流の異常だけでなく、ストレスや不安など心の要因によることもあります。精神療法では、心理的な影響を和らげることで、冷たく感じる症状を軽減させます。 冷感を感じている方の中には、原因不明の不安からさらに症状が強まってしまうケースもあるため、心身のケアは大切な要素です。生活リズムを整え、ストレスを受け流す習慣をつけることで、改善の糸口が見えてくることもあります。 再生医療 冷たく感じる原因が、難治性の末梢神経障害などの場合、再生医療は有効な治療法です。再生医療は、神経の再生を促す治療法であり、手術を必要としないため、術後の後遺症に悩まされるリスクが少ないのが特徴です。 再生医療に関しては、実施している医療機関が限られている上に、症状に対して適応できるかを医師へ相談する必要があります。 以下の記事では、当院「リペアセルクリニック」の再生医療について詳しく解説しています。 【自分でできる】冷たく感じる症状の対処法 冷えていないのに冷たく感じる症状が神経の障害によるものであれば、医療機関での診断と治療が必要ですが、同時に自分でできる対処法を取り入れることで症状の軽減が期待できます。 自分でできる対処法は以下の3つです。 軽い運動や入浴で血流を促進 食生活の見直し ストレスケア 冷たく感じる症状の対処法を解説します。 軽い運動や入浴で血流を促進 対処法 方法と効果 足踏み運動 座ったまま1分間足踏みをし、ふくらはぎの筋肉への血流を促進させる ウォーキング 1日30分程度の早歩きが目安。有酸素運動は血管の柔軟性を保ち、全身の血流や代謝を改善 ぬるめの全身浴 40℃のお湯に10〜15分浸かると、血管が広がり血流が良くなるとともに、自律神経の緊張が緩和される 半身浴 みぞおちまで湯に浸かって15分程度。心臓への負担を抑えつつ、持続的な温熱効果が期待できる 手足の冷感に対しては、血行促進が有効な場合があります。日常生活の中で簡単に取り入れられる方法として、軽い運動や入浴が有効です。 外出しての運動が難しい方は、デスクワーク中に時々足首を回したり、かかとの上げ下ろしをしたりすると良いでしょう。また、ぬるめのお湯(38~40℃程度)にゆっくり浸かる入浴も効果的です。リラックス効果により副交感神経が優位になり、血管が広がって血行が改善します。 無理な運動は症状の悪化につながる可能性があるため、負担にならない範囲で実践するようにしましょう。 食生活の見直し 対処法 内容 バランスの良い食事 主食・主菜・副菜をそろえた食事を心がけ、ビタミンB群(豚肉、玄米)や鉄分(赤身肉、ほうれん草)をしっかり摂る 身体を温める食品の摂取 ショウガ入りのスープや味噌汁など、温かい料理を意識的に取り入れる。発酵食品で腸内環境も整える 冷たいものを控える アイスや冷たい飲み物は避け、常温〜温かい飲み物(お茶、生姜湯など)を選ぶようにする 栄養バランスの乱れは、自律神経や血流に悪影響を及ぼします。ビタミンB群やE、鉄分など、神経の働きや血液循環を助ける栄養素を意識して摂ることが大切です。アイスや冷たい飲み物は避け、温かい食事を中心にすると内臓の冷えを防止できます。 極端な食事制限や偏食は神経系に負担をかけるだけでなく、ストレスを溜め込む原因になります。ストレスを溜め込まないようにしつつ、普段から規則正しい食生活を意識しましょう。 以下の記事では、身体を温める食べ物などを詳しく紹介しています。 ストレスケア ストレスケアの効果 内容 自律神経の安定 ストレスを減らすことで自律神経のバランスが整い、血管の過剰な収縮が抑えられる ホルモンバランスの改善 ホルモンの乱れが整い、体温調節機能が正常に保たれる 筋肉の緊張緩和 ストレスが軽減されることで筋肉のこわばりがほぐれ、血行が良くなる 睡眠の質向上 良質な睡眠がとれるようになり、体の冷えやすさを改善する効果が期待できる ストレスは自律神経のバランスを乱す大きな要因の一つです。とくに慢性的なストレスは交感神経を刺激し続け、血流の悪化を招きやすくなります。 ストレスケアの方法としては、読書や音楽鑑賞、入浴や負荷のかからない軽い運動などがおすすめです。また、睡眠不足もストレスの蓄積や神経の過敏化を引き起こすため、睡眠の質を高めるようにしましょう。 冷えてないのに冷たく感じる際は医療機関で診てもらおう 冷えてないのに冷たく感じる症状は神経障害の可能性があり、その背景に糖尿病や感染症が隠れていることもあります。放置すると重症化する恐れがあるため、このような症状でお悩みの方は早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、神経障害の症状に対して、幹細胞を活用した再生医療を提供しています。冷えていないのに冷たく感じる症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 冷たく感じる症状についてよくある質問 冷えてないのに冷たく感じる時、病院を受診する目安はありますか? 見た目に異常がなく、周囲の人と比べても寒くないのに冷たく感じる状態が続く場合、自己判断で放置するのは危険です。症状を放置すると慢性化や重症化する恐れがあるため、気になる症状が少しでもあれば、医療機関を受診しましょう。 冷え性との違いはありますか? 冷え性は気温の低下や血行不良によって起こる一時的な状態で、温めると改善しやすい特徴があります。一方、冷えていないのに冷たく感じる症状は、神経の異常による感覚の誤認である可能性が高いため、温めても改善しないことが多いです。 改善しない原因不明の冷感は、冷え性ではなく神経障害や病気の可能性があるため、医療機関への受診をおすすめします。 病院に行くほどではないと思っても受診すべきですか? 病院に行くほどの症状でなくとも、医療機関への受診をおすすめします。軽度だと感じていても神経系の病が徐々に進行している可能性があるため、自己判断はせず、医師の診断を受けるようにしましょう。 何科に相談すれば良いですか? まずは内科または神経内科の受診をおすすめします。医師に症状をできるだけ具体的に伝えることで、適切な診療科に案内してもらえる場合があります。 参考文献 (文献1) Kinanah Yaseen, et al.(2024).Mixed Connective Tissue Disease (MCTD).MSD MANUAL consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/bone-joint-and-muscle-disorders/systemic-rheumatic-diseases/mixed-connective-tissue-disease-mctd?query=%E6%B7%B7%E5%90%88%E6%80%A7%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%97%85(Accessed: 2025-04-11) (文献2) Koon K. 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Brutsaert, et al.(2023).Diabetes Mellitus (DM).MSD MANUAL consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/hormonal-and-metabolic-disorders/diabetes-mellitus-dm-and-disorders-of-blood-sugar-metabolism/diabetes-mellitus-dm(Accessed: 2025-04-11) (文献6) 橋本法修ほか「両下肢灼熱感に対し支持的精神療法が有効であった 身体症状症の 1 症例」『日本ペインクリニック学会誌』, pp.1-4, 2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/27/4/27_20-0002/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月11日) (文献7) 花澤 寿.「ポリヴェーガル理論からみた精神療法について」『千葉大学教育学部研究紀要』, pp.1-9, 2019年 https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/106084/S13482084-67-P329.pdf(最終アクセス:2025年4月11日) (文献8) 公益社団法人 日本精神神経学会「日本精神神経学会 精神療法委員会に「精神療法について」を訊く」公益社団法人 日本精神神経学会, 2021年7月20日 https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=58(最終アクセス:2025年4月11日)
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により立ったり歩いたりするための身体能力が低下した状態です。 一般的な認知度は低く、どのような状態か理解していない方も珍しくありません。 しかし、ロコモティブシンドロームが進行すると介護リスクが高まるため、早期改善が大切です。 本記事では、ロコモティブシンドロームとはどのような状態か、症状や原因をわかりやすく解説します。 理解しておくべき理由もまとめているので、ロコモティブシンドロームについて知識を深めたい方は参考にしてください。 また、ロコモティブシンドロームの原因となる変形性関節症や軟骨損傷についてお悩みの方は、「再生医療」も治療法としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療について興味がある方は、ぜひご利用ください。 ロコモティブシンドロームとは|身体能力(移動機能)が低下した状態 ロコモティブシンドロームとは、身体運動に関わる骨や関節、筋肉などの運動器の障害により、移動機能が低下した状態です。略して「ロコモ」とも呼ばれています。 2007年9月に日本整形外科学会が提唱した症候群であり、ロコモティブシンドロームになると要介護や寝たきりになるリスクが高まるため注意が必要です。 なお、ロコモティブは移動を意味する英語の「locomotion」が語源になっています。 日常生活に支障がなくても、ロコモティブシンドロームを発症していたり進行していたりする可能性があるため、知識を深めたうえで適切な治療を受けましょう。 ロコモティブシンドロームの定義 ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により、移動機能が低下した状態です。 厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」によると、「片足で40cmの高さの椅子から立ち上がれない場合」はロコモティブシンドロームの可能性があるとされています。(文献1) 従来は高齢者の問題と考えられてきましたが、最近では20代・30代における運動不足や生活習慣の乱れにより、若年層のロコモティブシンドロームも注目されています。(文献2) とはいえ、若年層のロコモティブシンドロームに対する意識はまだまだ低く、認知向上が今後の課題です。 日本におけるロコモティブシンドローム罹患数の割合 日本では、ロコモティブシンドロームの主な運動器疾患である変形性膝関節症・骨粗鬆症・変形性脊椎症のいずれかを有する人が、全国で約4,700万人にのぼると推計されています。(文献3) 日本の総人口のおよそ4割に相当し、多くの人がロコモティブシンドロームのリスクを抱えているのが現状です。 また、3つの疾患すべてを合併している人も約530万人いるとされており、移動機能がさらに低下する人が増える可能性があります。 とくに65歳以上では、「手足や腰の痛み」などの自覚症状を訴える人の割合が高いのが特徴です。 今後さらなる高齢化が進む日本において、ロコモティブシンドローム対策の重要性がますます高まっているといえるでしょう。 ロコモティブシンドロームの主な原因 ロコモティブシンドロームは骨・関節・筋肉など運動器の機能が低下する状態を指しますが、原因はひとつではありません。 ここでは、代表的な3つの原因を運動器疾患・加齢・運動不足の観点から詳しく解説します。 運動器の疾患による機能低下 運動器の疾患には、骨粗鬆症・変形性関節症・変形性脊椎症などがあります。 関節軟骨のすり減り、骨のもろさ、関節の変形などを引き起こし、痛みや可動域制限が生じるのが特徴です。 症状が進むと、歩行や階段昇降、立ち上がりといった基本的な動作が難しくなります。 運動器疾患による機能低下は、移動機能の低下や転倒、要支援・要介護のリスクを高める要因です。 機能低下が感じられたら放置せず、早期診断・治療を検討しましょう。 加齢に伴う筋力や骨密度の減少 人の筋力と骨密度は20〜30代でピークに達し、その後徐々に低下していきます。 とくに、下半身の筋肉量が減ると、歩行機能や立ち上がる動作に影響が出やすくなるため注意が必要です。 また、加齢が進むにつれて持久力やバランス能力、反応速度などの身体機能も低下します。 加えて、年齢を重ねると運動器疾患の発症リスクも高まるため、体を動かす習慣や栄養バランスの取れた食生活を取り入れるなど、進行を遅らせる対策が重要です。 運動不足による身体機能の衰え 運動不足は、ロコモティブシンドロームの大きな原因のひとつです。 エレベーターや自動車の多用、歩行量の減少など運動不足が続くと、筋力低下・バランス能力の低下が進みます。 さらに、関節や骨への適度な負荷がないことから、骨粗鬆症や筋肉の萎縮を招く恐れもあるのです。 また、若年期に運動習慣がないと、ピーク時の筋肉・骨量が十分でないまま年齢を重ねることになり、少しの低下で身体機能の衰えが顕在化しやすくなります。 生活の質を維持するためにも、日常的に適度な運動や身体を使う活動を取り入れて予防につなげていきましょう。 ロコモティブシンドロームの主な症状 ロコモティブシンドロームの初期の段階では、加齢による体力の衰えやちょっとした不調と見過ごされがちですが、進行すると歩行や家事、買い物といった基本的な生活動作が難しくなります。 将来的に要介護につながる可能性もあるため、主な症状をしっかり理解しておきましょう。 片足立ちで靴下を履けなくなった バランス感覚の低下や下肢の筋力低下が進むと、片足立ちで靴下を履くことが難しくなります。 体幹や下半身の筋肉が弱ってきているサインであり、ふらつきや転倒のリスクも高まるため注意が必要です。 家の中でつまずいてしまう カーペットの段差やちょっとした床の段差でつまずくことが増えるのも、ロコモティブシンドロームの典型的な症状です。 足の筋力や関節の柔軟性が低下すると、歩行中に足をしっかり持ち上げられなくなり、転倒リスクが高くなります。 とくに、高齢者は骨折のリスクが大きいため、注意しなければなりません。 手すりがないと階段を上れない 下肢の筋力や膝関節の働きが弱まると、階段を自力で上がるのが困難になります。 手すりに頼らないと昇降ができない状態は、運動器の機能がかなり低下しているサインです。 階段の利用が難しくなると外出機会が減り、活動量の低下にもつながる点も懸念されます。 布団の上げ下ろしや掃除機などの日常の家事が大変になった 布団の上げ下ろしや掃除機がけなどの家事は、腰や膝に負担がかかる動作です。 ロコモティブシンドロームが進むと、これらの動作が億劫になり、家事が思うようにこなせなくなります。 結果として生活の質が低下し、心身の自立度も下がる可能性がある点に注意しましょう。 15分も歩き続けられなくなった 以前は問題なかった15分程度の歩行がつらく感じるようになるのも、ロコモティブシンドロームの重大な兆候です。 下半身の筋力低下や関節の可動域制限に加え、持久力の衰えも影響しています。 歩行距離の減少は外出や社会参加の減少にも直結するので、できるだけ避けたいところです。 ペットボトルなど重たい買い物を持ち帰るのが大変 ロコモティブシンドロームが進行すると、牛乳パックや複数のペットボトルなど重たいものを持ち帰るのが難しくなる場合もあります。 重たいものの持ち運びが大変になるのは、筋力の低下だけでなく握力の衰えも影響しています。 重たいものを持てなくなると買い物が億劫になり、生活の質全体に影響を及ぼしかねないため注意が必要です。 横断歩道が青信号の間に渡れない 信号が青の間に横断歩道を渡り切れなくなる状態は、歩行速度の低下を示す明確なサインです。 歩幅が小さくなり、足の回転も遅くなるため、移動に時間がかかるようになります。 安全面での不安が増すと外出を避ける原因にもなるため、注意しましょう。 ロコモティブシンドロームを放置する4つのリスク ロコモティブシンドロームを放置すると、以下のようなリスクに直面します。 要介護状態になる可能性が高まる 健康寿命が大幅に短縮される フレイルの併発リスクが増加する 医療費負担が重くなる 何の対策も取らずに放置してしまうと、将来的に深刻な健康被害や生活への影響が生じる恐れがあります。 具体的なリスクを理解し、改善や予防につなげていきましょう。 では、4つのリスクをそれぞれ詳しく解説します。 要介護状態になる可能性が高まる ロコモティブシンドロームが進行すると、移動機能が大きく低下し、自立した生活の維持が難しくなります。 とくに、歩行能力の障害は、要介護状態に直結する重大なリスク要因です。 進行の過程は以下のように段階的に起こります。 加齢・肥満・過度な運動などにより、膝や腰、関節に負担がかかる 炎症や痛み、しびれなどが生じ、運動機能が徐々に衰える 痛みを避けることで活動量が減り、筋力や関節可動域がさらに低下する 歩行・立ち上がり・階段昇降といった基本動作が困難になる 最終的に要介護認定を受け、寝たきりとなるリスクが高まる 運動器は骨・関節・筋肉・神経などが連動して働くため、いずれかひとつでも機能が低下すると、全体の動きに支障が出ます。 日常生活での自立度を保つためには、ロコモティブシンドロームの早期発見と予防的な取り組みが不可欠です。 健康寿命が大幅に短縮される ロコモティブシンドロームによって運動機能が低下すると、日常生活に支障をきたし、介護を必要とする期間が長くなる傾向があります。 結果として、健康寿命が大幅に短縮されるリスクが高まるのです。 「令和3年版高齢社会白書」によると、65歳以上で介護が必要となった主な原因のうち、運動器の障害は約2割を占めています。(文献4) 運動機能の衰えは、認知症や脳血管疾患と並ぶ主要な介護要因のひとつです。 とくに女性は、加齢に伴う筋力や骨密度の低下が顕著であり、男性よりも運動機能障害が原因で介護を受けるケースが多いと報告されています。 健康寿命を延ばすためにも、ロコモティブシンドロームを予防すべく早い段階から対策していきましょう。 フレイルの併発リスクが増加する ロコモティブシンドロームは、加齢による身体的・精神的・社会的な活力が低下した状態「フレイル」と密接な関係があります。 ロコモティブシンドロームが進行すると、フレイルが併発するリスクが高まるため注意が必要です。 ロコモティブシンドロームは、「ロコモ度」で以下のように3段階に分類されています。 段階 状態 ロコモ度1 ・移動機能の低下がはじまった状態 ・運動や食事の改善が必要 ロコモ度2 ・移動機能の低下が進行した状態 ・痛みを伴う場合は疾患の可能性もあるため医療機関を受診を推奨 ロコモ度3 ・移動機能の低下により社会参加に支障をきたしている状態 ・疾患の可能性もあるため医療機関を受診を推奨 最も進行したロコモ度3では、身体機能の全般的な低下を示すフレイルが併発している状態といえます。 移動機能の著しい低下により社会参加にも支障が生じるため、ロコモティブシンドロームの進行を防ぎ、フレイルの併発を防ぐ取り組みを行っていきましょう。 医療費負担が重くなる ロコモティブシンドロームを放置すると、健康寿命が短くなり、自立した生活を送れない期間が長くなる恐れがあるため注意が必要です。 健康寿命とは、介護や支援を必要とせず、自立して日常生活を過ごせる期間を指します。 日本における健康寿命は、2022年のデータで男性72.57歳、女性75.45歳となっており、この健康ではない期間に医療や介護が必要になる可能性が高まるわけです。(文献5) ロコモティブシンドロームが進行すると、関節や骨、筋肉の障害によって通院や治療、リハビリ、介護サービスの利用が増え、医療費・介護費の経済的負担が大きくなる傾向にあります。 運動器の機能を維持し、ロコモティブシンドロームの進行を防ぐことは医療費の抑制にもつながるため、早期からの予防意識が将来の医療費負担増を防ぐ対策となるのです。 ロコモティブシンドロームを進行させない改善策 ロコモティブシンドロームは、一度進んでしまうと回復に時間がかかります。 軽いうちに自分の状態を把握し、運動や食事などで改善策を取り入れていきましょう。 以下では、具体的な3つの改善策をご紹介します。 「ロコモチェック」で運動機能の衰えを把握する ロコモティブシンドロームの早期発見には、日常生活の動作に着目した「ロコモチェック」が有効です。 移動機能が低下しはじめているかどうかを判断する7つの項目で構成されており、いずれか1つでも該当する場合は、ロコモティブシンドロームになっている可能性があります。 1.片脚立ちで靴下が履けない 2.家の中でつまずいたり滑ったりする 3.階段を上がるのに手すりが必要である 4.家のやや重い仕事(掃除機を使う、布団の上げ下ろしなど)が困難である 5.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(牛乳パック2本程度) 6.15分くらい続けて歩くことができない 7.横断歩道を青信号で渡りきれない 7つすべてが当てはまっているなら、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインです。 該当項目ゼロを目指して運動を習慣とするほか、必要に応じて医療機関に相談しましょう。 ロコモチェックに関しては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。 「ロコモ体操」で運動不足を予防する 日常的な運動不足は、下肢の筋力やバランス能力を衰えさせ、ロコモティブシンドロームの進行を早める要因となります。 進行の予防に役立つのが「ロコモ体操(ロコトレ)」です。 代表的な方法には、「片脚立ち」と「スクワット」があります。 代表的なロコモ体操 やり方 片脚立ち 1.両手を軽く支えられる場所(壁や椅子の背もたれ)に置き、片脚で立つ 2.1分間左右交互に行い、1日3回を目安に続ける スクワット 1.足を肩幅に開く 2.膝がつま先より前に出ないように注意しながら腰をゆっくり下げる 3.ゆっくり腰の位置を戻す 4.5〜6回を1セットとして、1日2〜3セット行う ロコモ体操は運動不足対策として有効ですが、運動を行う際は以下の点に気をつけましょう。 痛みや違和感があるときは無理をしない 運動前には軽いストレッチで筋肉や関節を整える 無理なく習慣にすることで、運動不足を補い、ロコモティブシンドロームの進行予防に大きな効果が期待できます。 ロコモティブシンドローム同様、筋力の低下にかかわるサルコペニアの予防についての記事も参考になるので、あわせてご覧ください。 食生活でロコモ対策する 運動だけでなく、食事の内容もロコモティブシンドロームの進行予防において重要です。 とくに、以下の点に注意してください。 十分なエネルギー摂取:1日3食を基本としてしっかり食べる たんぱく質の適切な摂取:60〜70kgの体重の高齢者で体重1kgあたり約1.0〜1.25gのたんぱく質が必要(文献6) 栄養バランス:主食・主菜・副菜・牛乳・果物などを組み合わせる 骨や筋肉を維持するためには、十分な栄養の摂取が必要です。 上記の食生活の注意点を実践し、自立的で健康な生活を長く維持するように心がけていきましょう。 以下のロコモティブの予防を解説している記事では、食事法についても触れているので参考にしてみてください。 医療機関を受診する ロコモティブシンドロームのセルフチェックで1項目でもチェックがついた場合は、医療機関の受診を検討しましょう。 治療法は状態によって異なりますが、進行を改善する方法には、薬物療法や運動療法、手術などがあります。 ロコモティブシンドロームは症状回復が見込まれるため、早期に適切な治療を受けることが重要です。 症状を進行させないよう、自身で判断せず医療機関に相談しましょう。 まとめ|ロコモティブシンドロームは運動や食生活を改善して対策しよう! ロコモティブシンドロームとは移動機能が低下した状態で、介護リスクを高める要因になります。 日本における認知度は低いものの、日本人の約4割がロコモティブシンドロームを発症しています。 進行させないためには、セルフチェックや予防策の実施が重要です。 また、ロコモティブシンドロームは適切な治療により症状の回復が期待できます。 症状の回復には、医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。 なお、リペアセルクリニックは、ロコモティブシンドロームの原因となる変形性関節症の再生医療を行っています。 また、公式LINEでは再生医療の情報提供や簡易オンライン診断をご利用いただけますので、ロコモティブシンドロームに関する疑問や悩みをお持ちの方はお気軽に登録してください。 ロコモティブシンドロームに関するよくある質問 ロコモティブシンドロームの看護に関連する団体はありますか? ロコモティブシンドロームに関わる看護の専門領域を扱う団体として、「日本運動器看護学会(JSMN)」があります。 同学会は、骨・関節・筋肉など体を支える「運動器」に関する看護の発展を目的に活動しており、運動機能低下を特徴とするロコモティブシンドロームとも深い関わりを持っています。(文献7) フレイルやサルコペニアとの違いは? サルコペニアやフレイルと比較すると、ロコモティブシンドロームは「運動器」に特化しています。 サルコペニア:加齢などによる「筋肉量や筋力の低下」 ロコモティブシンドローム:骨・関節・筋肉など「運動器全体の衰え」 フレイル:身体的・精神的・社会的側面を含む「心身の総合的な衰え」 フレイル、サルコペニア、ロコモの違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。 ロコモティブシンドロームは若い人にも関係ありますか? ロコモは高齢者だけの問題と思われがちですが、20代や30代といった若い世代にも関係があります。 運動不足や偏った食生活、長時間のデスクワークなどが重なると、筋力低下や関節の柔軟性低下が進み、将来的なロコモのリスクを高めてしまうのです。 若いうちから予防を意識し、健康寿命の延伸につなげていきましょう。 参考文献 (文献1) ロコモをご存知ですか?|厚生労働省 (文献2) 2025年度 認知度調査結果|ロコモONLINE (文献3) 医療計画におけるロコモティブシンドローム対策の重要性|厚生労働省 (文献4) 2 健康・福祉 令和3年版高齢社会白書(全体版)|内閣府 (文献5) 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 生活習慣病などの情報|厚生労働省 (文献6) 2─3 高齢者|厚生労働省 (文献7) 日本運動器看護学会(JSMN)
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害によって移動機能が低下した状態です。 「最近になって足腰の衰えが気になる」「将来寝たきりになるのは避けたい」といった不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。 ロコモティブシンドロームが進行すると、将来介護を必要とする可能性が高まるため、できるだけ早いうちから予防に努めることが大切です。 今回は、運動や体操、食事法など、日常生活で取り入れられるロコモティブシンドロームの予防法を解説します。 また、ロコモティブシンドロームの原因となる変形性関節症や軟骨損傷についてお悩みの方は、再生医療での治療もご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。再生医療について不明な点があれば、ぜひご利用ください。 ロコモティブシンドロームの予防には運動と食事が大切 ロコモティブシンドロームを防ぐためには、動く力を支える運動習慣と、体をつくる栄養バランスの良い食事の両立が欠かせません。 とくに、中高年以降は筋力や骨密度が自然に低下していくため、意識的に対策しないと移動機能が徐々に衰えていく可能性があります。 運動面では、下半身の筋力や柔軟性、姿勢を保つためのバランス能力を養うことが大切です。 片脚立ちやスクワットといった簡単な動きでも、継続すれば日常生活での「立つ・歩く・支える」といった基本動作が安定しやすくなります。 一方、食事面では、筋肉や骨の材料となるたんぱく質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの栄養素をしっかり摂りましょう。 偏った食生活や低栄養状態では、いくら運動をしても十分な効果が得られません。 年齢に関係なく、今できることからはじめるのがロコモの進行を防ぐ第一歩です。 運動と食事を生活の一部として取り入れ、将来の要支援・要介護リスクを軽減し、健康寿命を延ばしていきましょう。 ロコモティブシンドロームの症状や原因については、以下の記事を参考にしてみてください。 ロコモティブシンドロームを予防する運動習慣 ロコモティブシンドロームを予防・改善するためには、日常生活に無理なく取り入れられる運動習慣を継続しなければなりません。 なかでも、ロコモティブシンドローム対策として推奨されているのが「ロコモーショントレーニング(ロコトレ)」と呼ばれる一連の運動です。 ロコモーショントレーニングは、移動機能の維持・向上を目的とした簡単な運動で、高齢者をはじめとする多くの人が自宅で安全に取り組める内容になっています。 特別な道具や広いスペースは必要なく、日常生活の合間に継続可能です。 ここでは、なかでも基本的かつ効果的な運動をご紹介します。 バランス能力を鍛える「片脚立ち」 片脚立ちは、立った状態で片脚を床から数cm浮かせ、姿勢を一定時間保つ運動です。 身体のバランス能力を高めると同時に、太ももやふくらはぎの筋肉を効果的に刺激します。 目安としては、1回につき左右それぞれ1分間ですが、最初は無理のない範囲の秒数で構いません。 安全のため、壁や椅子の背もたれなど、支えになるものの近くで行うのがおすすめです。 また、転倒のリスクを避けるためにも靴下を履かず、床が滑りにくい場所で行いましょう。 下肢筋力を鍛える「スクワット」 スクワットは下半身全体の筋力、とくに太もも・お尻・ふくらはぎなどの強化に効果的な運動です。 ロコモ対策においても、歩行力の維持や転倒防止に役立つことから推奨されています。 基本的なやり方は、足を肩幅に開き、椅子に腰かけるようにゆっくりと膝を曲げて、再び元の姿勢に戻る動作です。 膝がつま先より前に出ないように注意しながら、背筋を伸ばして行いましょう。 1日10回を目安に、無理のない範囲で回数を増やしていくのがポイントです。 太もも前面を鍛える「ストレートレッグレイズ」 ストレートレッグレイズは、床に仰向けになり、片脚をまっすぐに伸ばしたままゆっくり持ち上げて戻す運動です。 太ももの前側にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を集中的に鍛えられ、歩行時の安定性や膝関節の保護にもつながります。 左右それぞれ10回ずつを1セットとして、1日2〜3セットを目指しましょう。 脚を上げすぎる必要はなく、床から30cm程度でも十分な負荷がかかります。 寝たまま行えるため、高齢者や筋力が低下した方にも取り入れやすい運動です。 ただし、膝や腰に痛みがある場合には無理をせず、医師や理学療法士に相談するようにしてください。 腹筋を鍛える「クランチ」 クランチは、腹筋の中でもとくに上腹部を鍛える基本的なエクササイズです。 体幹の安定性を高め、姿勢の改善やバランス能力の向上に役立ちます。 仰向けになり、膝を軽く曲げた状態で頭と肩を少し持ち上げる簡単な動作です。 反動を使わず、腹筋の力でゆっくり上体を起こすのがポイントで、首に負担がかからないように手は胸の前で組むか、軽く頭を支えるようにします。 1セット10回を目標に、無理のない範囲で取り組みましょう。 腹筋を強化することで、日常生活での「ふんばり」が効きやすくなり、転倒しにくい身体づくりにつながります。 ロコモ体操 ロコモ体操は、ロコモティブシンドロームの予防・改善を目的に考案された簡単な運動プログラムです。 ロコトレの「片脚立ち」と「スクワット」が基本構成として組み込まれており、特別な道具を必要とせず、自宅で手軽に実践できます。 体操の手順は以下の通りです。 1.両手を腰に添えて、片脚を床から数cm上げてそのまま10秒キープ(左右交互に) 2.肩幅に足を開き、ゆっくりとスクワット(膝がつま先より前に出ないように) 2.1と2の繰り返しを1日3セット ロコモ体操は、筋力とバランス能力を同時に高められ、継続することで転倒リスクの軽減や歩行機能の改善に役立ちます。 体力や体調に応じて回数を調整しながら、毎日の生活習慣として取り入れましょう。 「よい姿勢」の維持も大切 ロコモティブシンドロームの予防には、筋力やバランス能力の強化に加えて、姿勢の維持も重要です。 姿勢が悪い状態が長く続くと、背骨や関節に過度な負担がかかり、腰痛や関節障害を引き起こす原因になります。 とくに、猫背や前かがみの姿勢は脊椎の湾曲を悪化させ、運動機能の低下を招きやすくなるため注意が必要です。 正しい姿勢を保つためには、腹筋・背筋・体幹の筋肉がバランスよく働く必要があります。 また、座っているときは骨盤を立てて背筋を伸ばすよう意識し、スマートフォンやパソコンの使用時も首を前に出しすぎないようにしましょう。 良い姿勢を意識することは、見た目だけでなく、身体全体の機能維持にも大切です。 日頃から鏡で姿勢をチェックしたり、背中を壁につけて立つなどして、自分の姿勢を客観的に見直す習慣をつけましょう。 ロコモティブシンドロームを予防する食事習慣 ロコモティブシンドロームの予防には、運動だけではなく毎日の食事管理も重要です。 丈夫な骨や十分な筋肉量を保つためにも、必要な栄養素を意識的に摂取しましょう。 骨を丈夫にする食事 ロコモティブシンドロームの予防において、骨を強く保つことは重要です。 骨の主成分であるカルシウムは、骨の密度を維持し、骨折や骨粗しょう症のリスクを低減する効果が期待できます。 日々の食事からの十分なカルシウム摂取が、ロコモの進行を防ぐ基本です。 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、30歳以上の1日あたりのカルシウム推奨量は以下の表のとおりです。(文献1) 年齢 男性 女性 30~49歳 750mg 650mg 50~64歳 750mg 650mg 65~74歳 750mg 650mg 75歳以上 750mg 600mg ※妊娠・授乳期や疾患の有無によって異なる場合があります。目安としてご参照ください。 現代の日本人の平均摂取量は上記の基準を下回っているとされており、意識的な摂取が必要です。 牛乳やヨーグルトなどの乳製品や小魚、豆腐・納豆などの大豆製品、青菜類などカルシウムを多く含む食品を活用し、骨の健康を長く保っていきましょう。 筋肉をつくる食事 ロコモティブシンドロームの予防には、骨の健康だけでなく、筋肉の維持と強化も重要です。 筋力が低下すると、転倒や移動機能の衰えが進行しやすくなるため、日常的なたんぱく質の摂取が欠かせません。 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、30歳以上のたんぱく質推奨量を以下のように定めています。(文献1) 年齢 男性 女性 30~49歳 65g 50g 50~64歳 65g 50g 65~74歳 65g 50g 75歳以上 60g 50g ※個人の体格や活動量によっても異なるため、目安としてご参照ください。 また、筋肉量や筋力の低下が懸念される高齢者の場合、体重1kgあたり1.0〜1.2g程度のたんぱく質摂取が望ましいとしています。 たとえば、体重50Kgの高齢者であれば1日50~60g、体重60Kgなら60~72gが目安です。 たんぱく質は、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品など、さまざまな食品に含まれているので、朝・昼・夕の3食に分散すれば効率的に摂取できます。 定期健診でロコモティブシンドローム予防 ロコモティブシンドロームの進行を防ぐためには、早期発見と適切な対応が重要です。 以下のような定期健診を受けることで、移動機能が低下している前兆に気づきやすく、予防につながります。 骨密度測定(骨粗しょう症のリスクを早期に把握できる) 筋力測定(握力や下肢筋力といった筋力の低下を客観的に評価できる) 歩行機能テスト(歩行速度やバランス能力などを確認できる) ロコモティブシンドロームの予防として、無理のない範囲で年に1〜2回の定期健診を受けておくことをおすすめします。 ロコモティブシンドロームのチェック方法 ロコモティブシンドロームは、自覚症状がないまま進行してしまうケースも珍しくありません。 自分の状態を知ることは、ロコモティブシンドロームを予防する第一歩です。 セルフチェックをしたり、ロコモ度テストを行ったりすると、ロコモティブシンドロームかどうかを確認できます。 以下で、それぞれのチェック方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 7つのセルフチェック項目 ロコモティブシンドロームのセルフチェック項目は、以下の7つです。 片脚立ちで靴下がはけない 家の中でつまずいたり、すべったりする 階段を上がるのに手すりが必要である 家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用・布団の上げ下ろしなど) 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である 15分くらい続けて歩けない 断歩道を青信号で渡りきれない 日常動作における困難さを確認し、1つでも該当する項目があれば、ロコモティブシンドロームが疑われます。 ロコモ度テスト 日本整形外科学会が推奨する「ロコモ度テスト」は3つの段階で構成されており、移動機能の低下リスクを段階的に確認できます。(文献2) 段階 状態 ロコモ度1 移動機能の低下がはじまった状態 ロコモ度2 移動機能の低下が進行した状態 ロコモ度3 移動機能の低下により社会参加に支障をきたしている状態 ロコモの状態を数値や動作で具体的に知ることで、適切な対策を立てやすくなります。 自宅で簡単にできる内容もあるため、定期的にチェックしてみてください。 立ち上がりテスト 立ち上がりテストは、下肢の筋力とバランス能力を確認するための基本的な評価方法です。 まずは座面までの高さ40cmの椅子に座り、両腕を胸の前で組んだ状態から片脚ずつ立ち上がれるかどうかを確認します。 40cmをクリアできたら30cm、20cmと高さを下げて、同様に行いましょう。 どの高さから片脚で立ち上がれるかにより、ロコモ度を判定します。 ただし、膝や腰に不安のある方は無理をせず、必要に応じて専門家の指導を受けてください。 2ステップテスト 2ステップテストは、歩行時のバランス力や歩幅の広さを測定することで、移動能力全体を評価する方法です。 立った状態からできるだけ大股で2歩前に進み、その歩幅の合計を身長で割って数値化します。 数値が1.3未満の場合は、移動機能の低下が疑われます。 2ステップテストは、高齢者に限らず若年層でも簡単に実施しやすく、ロコモの兆候を早期に把握するうえで有効です。 ただし、転倒防止のため、十分なスペースを確保して安全に注意しながら行いましょう。 ロコモ25 ロコモ25は、25項目の質問に答えることで、身体機能だけでなく日常生活への支障や心理的側面を含めた移動能力を多面的に評価する自己記入式の質問票です。 たとえば、「歩く速度が遅くなったと感じるか」「階段の上り下りに不安があるか」など、主観的な不安や困難を数値化できます。 それぞれの回答に点数をつけ、合計点によりロコモ度の進行段階を評価するのが特徴です。 医療機関で使用されることも多く、定期的なチェックを通じて変化を把握することで、早めの対処が可能になります。 ロコモ度テストについては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。 ロコモティブシンドロームの改善方法 運動器の痛みや老化による衰えなど、ロコモティブシンドロームの要因はさまざまです。 複数の要因が重なったりするとロコモティブシンドロームになり、症状が進行すると普段の生活に支障をきたします。 ロコモティブシンドロームの予防・改善方法は、運動や食事以外にも、投薬や手術などがあります。 諸要因に対する主な改善方法は、以下の通りです。 要因 改善方法 痛み・痺れ 運動・投薬・手術 関節可動域制限 運動・手術 柔軟性低下 運動 姿勢変化 運動・手術 筋力低下・麻痺 運動・栄養・手術 バランス能力低下 運動 まとめ|運動習慣とバランスの良い食事でロコモの予防に努めよう ロコモティブシンドロームは運動器の疾患や衰えだけではなく、運動不足や栄養の偏りといった生活習慣による影響が大きく、健康な体づくりが予防につながります。 無理のない範囲で日頃からロコモーショントレーニングや簡単な体操を取り入れると、筋力や柔軟性が高まり、移動機能の低下を防げます。 また、筋肉量や骨量を維持するためには、バランスの良い食事も不可欠です。 将来的に介護が必要になるリスクを少しでも減らせるよう、適度な運動習慣とバランスの良い食事を心がけましょう。 また、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷についてお悩みの方は、治療法として再生医療もご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 移動機能に不安があれば、登録してぜひお気軽にご利用ください。 ロコモティブシンドロームの予防に関するよくある質問 高齢者のロコモティブシンドローム予防で重要な点は? 高齢者におけるロコモティブシンドロームの予防では、運動と食事の両立が極めて重要です。 日常生活に運動習慣を取り入れ、筋肉や骨を支えるたんぱく質やカルシウム、ビタミンDなどを意識した、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。 早期から習慣づけすれば、将来の転倒や骨折、要介護のリスクを大幅に減らすことが可能となります。 厚生労働省ではロコモティブシンドロームをどのように定義していますか? 厚生労働省が運営する「健康日本21アクション支援システム」では、ロコモティブシンドロームを「片脚で40cmの椅子から立ち上がれない状態」としています。(文献3) 筋力やバランス能力の低下によって移動機能に支障をきたしている状態であり、とくに立ち上がり動作は代表的な評価指標です。 ロコモティブシンドロームが進行するとどうなる? ロコモティブシンドロームが進行すると、筋力や骨の脆弱化が進み、日常生活での移動が徐々に困難になります。 その結果、転倒や骨折を繰り返しやすくなり、最終的には「寝たきり」の状態に至るリスクが高まるのです。 厚生労働省の「令和4年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護となる原因のひとつに「骨折・転倒」が挙げられています。(文献4) 移動能力が低下すると外出や社会参加が難しくなり、精神的な不活発や認知機能の低下にもつながりかねません。 ロコモの進行は身体だけでなく、生活の質(QOL)全体を大きく損なう可能性もあります。 早期の段階で適切な運動・栄養指導を取り入れ、進行を食い止めることが重要です。 参考文献 (文献1) 日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省 (文献2) ロコモONLINE|ロコモ度テスト (文献3) 健康日本21アクション支援システム みんなの健康づくり集| (文献4) 令和4年 国民生活基礎調査の概況「第4章 世帯員の健康状況」|厚生労働省
2025.04.30 -
- その他、整形外科疾患
「最近つまずきやすくなった」「階段の昇り降りがつらい」など、日常生活で移動機能の低下を感じるようになったら、ロコモティブシンドロームが疑われます。ロコモティブシンドロームとは、加齢や病気によって骨や関節、筋肉といった運動器の機能が低下し、立つ・歩くなどの移動能力が衰える状態のことです。 今回は、ロコモティブシンドロームの診断に役立つチェック方法を解説します。ロコモ度テストと呼ばれる方法や判定基準をまとめているので、ぜひ参考にしてください。 ロコモティブシンドロームのセルフチェック7項目 ロコモティブシンドロームを疑う場合は、まずセルフチェックを実施しましょう。以下の7項目のうち、1つでも該当する場合はロコモティブシンドロームが疑われます。(文献1) 片脚立ちで靴下がはけない 家の中でつまずいたりすべったりする 階段を上がるのに手すりが必要である 家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用・布団の上げ下ろしなど) 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である 15分くらい続けて歩けない 横断歩道を青信号で渡りきれない ロコモティブシンドロームと一言でいっても、症状や程度は人それぞれで異なります。なお、ロコモティブシンドロームが疑われる場合は、医師の指導のもと予防や治療をおこなうことが一般的です。 ロコモ度テストによるチェック方法と3段階の判定基準 ロコモティブシンドロームのリスクをより詳しく評価するためには、「ロコモ度テスト」と呼ばれる以下の身体機能検査を実施します。 立ち上がりテスト 2ステップテスト ロコモ25 ロコモ度テストとは、日本整形外科学会が提唱するチェック方法で、それぞれの結果に基づき、進行度合いを3段階で評価します。(文献2) ロコモ度の判定基準 ロコモ度1 移動機能の低下が始まっている状態 ロコモ度2 移動機能の低下が進行している状態 ロコモ度3 移動機能の低下によって、日常生活に支障をきたしている状態 自覚症状がない場合でも、ロコモ度テストによってリスクの早期発見が可能です。 【ロコモ度テスト1】立ち上がりテスト 立ち上がりテストは、太ももを中心とした下肢の筋力を評価する検査です。10〜40cmまでの高さが異なる台を用意し、座った状態からの立ち上がり方法を確認します。 立ち上がりテストのチェック方法 立ち上がりテストは、両脚または片脚で実施します。まずは40cmの台に座って両脚テストを始めましょう。テスト中は無理をせず、膝に痛みを感じる場合は中止してください。 両脚テスト 立ち上がりテストは、まず40cmの台を使って両脚でおこないます。 両腕を組んで台に腰掛ける 反動をつけずに立ち上がる そのまま3秒間キープする 台に腰掛ける際は、両脚を肩幅に広げ、床に対して脛(すね)がおよそ70度(40cmの台の場合)になるようにします。なお、反動をつけると後方に転倒する恐れがある点に注意してください。 片脚テスト 40cmの台を使って両脚で問題なく立ち上がれたら、次は片脚テストを実施します。 両腕を組んで台に腰掛け、左右どちらかの脚を上げる(上げた脚は軽く曲げる) 反動をつけずに立ち上がる そのまま3秒間キープする 40cmの台を使って左右どちらの脚でも立ち上がれたら、台の高さを10cmずつ低くし、片脚テストを続けます。なお、40cmの台で片脚テストができなかった場合は、両脚テストに戻り、30cmから10cmずつ低い台に座ってどこまで立ち上がれるかチェックしましょう。 立ち上がりテストによるロコモ度の判定基準 立ち上がりテストによるロコモ度の判定基準は、下表の通りです。 立ち上がりテストによる判定基準 ロコモ度1 どちらか一方の片脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる ロコモ度2 両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる ロコモ度3 両脚で30cmの台から立ち上がれない 40cmの台を使った片脚テストができた場合、左右とも片脚で立ち上がれた最も低い台がテスト結果です。40cmの台を使った片脚テストができなかった場合は、両脚で立ち上がれた最も低い台を基準に判定します。 各年代別の立ち上がれる台の高さは、20代が片脚20〜30cm、30~60代は片脚40cm、70台なら両脚10cmが目安になります。(文献3) 【ロコモ度テスト2】2ステップテスト 2ステップテストとは、歩幅の広さから下肢の筋力やバランス能力を測る検査です。 2ステップテストのチェック方法 2ステップテストは、以下の方法で値を算出します。 スタート位置を決め、両脚のつま先を合わせる できる限り大股で2歩踏み出し、両脚を揃える 2歩分の歩幅を測る 2回実施し、長いほうの記録を採用する 「2歩幅(cm)÷身長(cm)」の計算式で「2ステップ値」を算出する 2ステップテストは、介助者のもと、滑りにくい床で実施してください。また、無理をせず、バランスを崩さない範囲でおこないましょう。 2ステップテストによるロコモ度の判定基準 2ステップテストによるロコモ度の判定基準は、下表の通りです。 2ステップテストによる判定基準 ロコモ度1 2ステップ値が1.1以上1.3未満 ロコモ度2 2ステップ値が0.9以上1.1未満 ロコモ度3 2ステップ値が0.9未満 なお、2ステップ値は年齢別・性別の平均値が数値化されています。(文献3) 年齢別 男性 女性 20〜29歳 1.73〜1.64 1.68〜1.56 30〜39歳 1.68〜1.61 1.58〜1.51 40〜49歳 1.62〜1.54 1.57〜1.49 50〜59歳 1.61〜1.56 1.55〜1.48 60〜69歳 1.58〜1.53 1.52〜1.45 70〜79歳 1.52〜1.42 1.48〜1.36 ロコモ度に該当していなくても、年齢別の平均値から大きく外れている場合は、将来的にロコモティブシンドロームの状態になるリスクがあると考えられます。 【ロコモ度テスト3】ロコモ25 ロコモ25とは、専用の質問票で自身の身体機能や生活状況について回答し、ロコモ度を自己評価するチェック方法です。 ロコモ25のチェック方法 ロコモ25では、身体の痛みや普段の生活に関する25個の質問が用意されています。以下は主な質問内容です。 頚・肩・腕・手のどこかに痛み(しびれも含む)がありますか 背中・腰・お尻のどこかに痛みがありますか 下肢のどこかに痛み(しびれも含む)がありますか 普段の生活で身体を動かすのはどの程度つらいと感じますか ベッドや寝床から起きたり、横になったりするのはどの程度困難ですか 腰掛けから立ち上がるのはどの程度困難ですか 家の中を歩くのはどの程度困難ですか シャツを着たり脱いだりするのはどの程度困難ですか など 各質問に5段階(0〜4点)で回答し、合計点数を算出します。 全てのチェックリストを確認したい方は、ロコモonlineの「ロコモ度テスト結果記入用紙」をご覧ください。 ロコモ25によるロコモ度の判定基準 ロコモ25によるロコモ度の判定基準は、下表の通りです。 ロコモ25による判定基準 ロコモ度1 7点以上16点未満 ロコモ度2 16点以上24点未満 ロコモ度3 24点以上 「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つのテスト結果をもとに、ロコモ度を判定します。各テストの結果がどの段階に該当するかチェックし、該当するロコモ度の最も進行している段階が最終的な判定結果となります。 なお、いずれのテストでロコモ度の判定基準に該当しない場合は、現時点でロコモティブシンドロームが疑われる状態ではありません。 ロコモティブシンドロームの3大原因疾患 ロコモティブシンドロームの背景には、加齢に伴う運動器の疾患が関わっています。なかでも、以下の疾患は、ロコモティブシンドロームの3大原因疾患として知られています。(文献4) 変形性膝関節症 変形性腰椎症 骨粗しょう症 変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が起こる疾患です。歩行時の痛みや階段の昇降困難など、移動機能の低下を直接的に引き起こします。 また、変形性腰椎症は、加齢や長年の負担によって腰の骨に変形やすり減りが生じ、腰痛などの症状を引き起こす疾患です。とくに中高年以降に多くみられ、運動器の老化現象の一つとされています。 骨粗しょう症を発症して骨密度が低下すると、骨折のリスクが高まります。とくに大腿骨や脊椎を骨折してしまうと、歩行困難や寝たきりの原因になりかねません。 いずれの疾患も放置すると症状が悪化し、移動機能の低下を進行させるリスクがあります。ロコモチェックの結果に限らず、普段の生活で気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 なお、リペアセルクリニックでは、ロコモティブシンドロームの原因疾患にあたる変形性膝関節症や変形性腰椎症に対する再生医療をおこなっています。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しているので、ぜひ気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ ロコモティブシンドロームのチェック項目を把握し早期診断につなげよう ロコモティブシンドロームは、移動機能の低下を示す重要なサインです。日常生活において、よくつまずくようになったり、続けて家事をするのがしんどいと感じたりする場合は、ロコモティブシンドロームを疑いましょう。 自覚症状がロコモティブシンドロームに該当するかどうかは、7つのセルフチェック項目や3つのロコモ度テストを用いて判断できます。移動機能低下の進行を遅らせるためには、医師の指導のもと、予防や治療に取り組むと効果的です。 健康的な生活を続けるためにも、定期的にロコモティブシンドロームのチェック項目を確認し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 日本整形外科学会「ロコチェック」ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト https://locomo-joa.jp/check/lococheck(最終アクセス:2025年4月17日) (文献2) 日本整形外科学会「ロコモ判定方法」ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト https://locomo-joa.jp/check/judge(最終アクセス:2025年4月17日) (文献3) ロコモチャレンジ!推進協議会ロコモ度テストサーキンググループ調査資料 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/143031/201412014A/201412014A0002.pdf(最終アクセス:2025年4月17日) (文献4) 日本整形外科学会「もっと知ろう!ロコモティブシンドローム」 https://www.joa.or.jp/media/comment/locomo_more.html(最終アクセス:2025年4月17日)
2025.04.30 -
- 足部、その他疾患
- 手部、その他疾患
- 手部
- 足部
- その他、整形外科疾患
「足のしびれや自律神経の乱れを感じる」 「足にピリピリ感があり、日常生活に影響をきたしている」 最近、原因不明の足のしびれやピリピリ感はありませんか。日常生活や仕事にも影響が出始めると不安になりますよね。 とくに忙しい毎日を送っていると、足のしびれや自律神経の乱れがストレスによるものではないかと気になることでしょう。 それらの原因不明の症状は、末梢神経障害によるものかもしれません。 本記事では、末梢神経障害の症状とともに以下の内容について解説します。 末梢神経障害を放置すると筋肉の萎縮や痛みの慢性化につながりますので、症状と原因を正しく理解し、早めに医療機関を受診しましょう。 また、つらい末梢神経障害の治療には、再生医療も選択肢の一つです。 \末梢神経障害に対する再生医療とは/ 再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を向上させることで、痛みやしびれの原因となっている損傷した神経の改善を促す治療法です。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?si=Kx0lm_YjfUhh1P4e 【こんな方は再生医療をご検討ください】 長年、手足のしびれや痛みに悩まされている 既存の治療では改善が見られない 具体的な治療法については、当院リペアセルクリニックで無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 末梢神経障害とは 区分 主な症状 感覚神経の障害 しびれ・冷感・灼熱感、感覚の低下、ピリピリ・チクチクする異常感覚 運動神経の障害 筋力低下、筋萎縮、歩行困難、運動機能の低下 自律神経の障害 発汗異常、立ちくらみ・めまい、便秘・下痢、排尿障害、動悸 症状の特徴 手足の先から始まる、左右対称に出る、徐々に進行する (文献1) 末梢神経障害とは、脳や脊髄から枝分かれした神経が傷つき、感覚や運動、自律神経の働きに異常が起きる状態のことを指します。 主に糖尿病やビタミン欠乏、ストレス、生活習慣の乱れなどが原因で引き起こされます。症状を放置すると徐々に進行し、重症化する恐れがあるため、早めに医療機関を受診しましょう。 以下の内容では、末梢神経障害に対してタリージェは効果があるのかを解説しております。 末梢神経障害の症状 末梢神経障害の症状は多岐に渡ります。主な症状は以下の4つです。 症状の種類 概要 足のしびれ・冷感・灼熱感 足先にしびれや冷たさ、焼けつくような感覚が現れる 筋力低下 力が入りにくくなり、歩行時につまずきやすくなる 感覚の異常 触れた感覚が鈍くなる、逆に過敏になる 自律神経に異常をきたす 発汗や血圧、消化・排尿などの機能に影響が出ることがある 少しでも違和感を覚えた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 足のしびれ・冷感・灼熱感 症状 内容の概要 足のしびれ 神経の障害で足の感覚が鈍くなり、しびれが起こる 足の冷感 自律神経の障害により血流が悪化し、冷たく感じる 足の灼熱感 足が焼けるように熱く感じられる 感覚神経がダメージを受けると現れる代表的な症状です。足先や足裏にジンジン、ピリピリといったしびれを感じたり、正座の後のような感覚が続いたりします。 また、実際の温度とは関係なく、足が冷たく感じたり熱く感じたりする症状が現れることもあります。 症状の持続性には個人差がありますが、少しでも違和感を覚えた場合は、医療機関を受診しましょう。 筋力低下 症状 内容の概要 筋肉の萎縮 神経の損傷によって筋肉が細くなり、見た目にも痩せてくることがある 歩行困難 足の筋力が低下し、ふらつきや転倒が起きやすくなる 日常生活動作の困難 手の筋力が弱まり、物をつかむ・ボタンを留めるなど細かな作業がしにくくなる (文献2)(文献3) 運動神経がダメージを受けると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、筋力が低下します。筋力が低下すると足の場合、スリッパが脱げやすくなったり、つま先が上がらずにつまずきやすくなります。 手の筋力であれば、物を落としやすくなり、私生活に支障をきたすでしょう。進行すると、歩行が不安になったり、物を持つことが困難になったりする可能性があります。 感覚の異常 症状 概要 しびれ(感覚鈍麻) 触れた感覚が鈍くなり、とくに手足の先に出やすい 違和感 焼ける・刺す・電気が走るような違和感など、多様なタイプの症状が現れる 異常感覚(錯感覚) 触れていないのに触れたように感じる 感覚過敏 軽い刺激でも強い不快感を覚える 温度感覚の異常 冷たさ・熱さに対する感覚が鈍くなる、または過敏になる 振動感覚の異常 携帯のバイブレーションなど、小さな振動を感じにくくなる 位置感覚の異常 ふらつきや物にぶつかりやすくなることも (文献4) しびれや冷感・灼熱感以外にも、さまざまな感覚の異常が現れます。 触った感じが鈍くなる感覚鈍麻が起こると、やけどや怪我をしても気づきにくくなることがあります。逆に軽い刺激に対して過敏になるアロディニアと呼ばれる状態になることもあり、症状はさまざまです。 感覚の異常は、QOL(生活の質)を低下させる原因になるだけでなく、症状によっては後遺症が出る可能性があります。 自律神経に異常をきたす 自律神経は、血圧、体温、発汗、消化、排泄など、自分の意思とは関係なく体の機能を調整する神経のことを指します。 具体的な症状としては、起立性低血圧や発汗異常、消化器症状、排尿障害など、全体にさまざまな不調が現れるため、重症化する前に早期発見が必要です。 また、自律神経とストレスの因果関係に関して、現時点で明確なエビデンスがありません。 研究段階ではあるものの、ストレスが末梢神経障害を引き起こす原因であるといわれているため、生活習慣に気をつける必要があります。 末梢神経障害の原因 末梢神経障害の原因は、主に以下のような糖尿病や過度なアルコール摂取・喫煙など生活習慣から来るものや遺伝的なものといわれています。 ストレス性によるもの 糖尿病(糖尿病性神経障害) 過度なアルコール摂取・喫煙 ビタミンB12欠乏症 自己免疫疾患・遺伝性疾患・感染症 これから紹介する内容が当てはまる方は、末梢神経障害を発症させないためにも生活習慣の見直しが必要です。 ストレス性によるもの 要因 概要 自律神経の乱れ ストレスにより交感神経が過剰に働き、血管収縮や筋緊張が起こり、神経への血流が悪化する 炎症反応の促進 ストレスが炎症性物質の分泌を促進し、慢性的な炎症が神経を傷つける可能性がある 違和感の感受性亢進 脳の違和感を汲み取る領域が影響を受け、症状を感じやすくなる 生活習慣の乱れ ストレスが睡眠・食事・運動に影響し、神経への負担や回復力低下を招くことがある 過度な精神的ストレスが、直接的に末梢神経障害を引き起こすエビデンスはありません。 しかし、ストレスは血行不良や免疫機能の低下、睡眠不足などを招き、間接的に神経の健康に影響を与える可能性が指摘されています。 他に明らかな原因がなく、精神的な負荷を感じる時期に症状が悪化するような場合は、ストレスの関与が疑われるでしょう。 精神的な負荷が引き金になり、末梢神経障害を引き起こしている可能性を感じた場合は、ストレス環境から距離を取り、休息を取りましょう。 糖尿病(糖尿病性神経障害) 障害の種類 概要 感覚障害 足先のしびれ、ピリピリするような違和感など 運動障害 足に力が入らない、筋力の低下など 自律神経障害 立ちくらみ、便秘、発汗異常など (文献4) 糖尿病で長期間、血糖値が高い状態が続くと、細い血管がダメージを受けて血流の悪化や、糖代謝の異常によって神経細胞そのものが変性する神経障害が引き起こされます。 足先のしびれや感覚鈍麻から始まることが多く、進行すると筋力低下や自律神経症状も現れ、日常生活に大きな支障をきたします。 糖尿病を患っている方は、とくに足先のしびれや感覚鈍麻の症状に注意が必要です。 過度なアルコール摂取・喫煙 要因 概要 アルコールの毒性 神経細胞に直接ダメージを与え、長期摂取で変性や破壊を引き起こす ビタミンB群の欠乏 吸収阻害により神経の維持に必要な栄養素が不足し、障害リスクが高まる 肝機能障害 栄養代謝が妨げられ、神経細胞に必要な成分の供給が不足する 血管収縮・血流低下 ニコチンが血管を収縮させ、神経への酸素・栄養供給が不足し機能が低下する 酸化ストレス増加 神経細胞が酸化ダメージを受けやすくなり、障害のリスクが上がる 長期間にわたる過度なアルコール摂取は、神経毒性やアルコール代謝に伴う栄養障害により、末梢神経障害を引き起こします。 また、喫煙もニコチンによる血管収縮作用や血行不良を引き起こし、神経への酸素や栄養の供給を妨げるため、末梢神経障害のリスクがあります。 普段からお酒を飲む習慣がある、タバコを普段から吸う方は、末梢神経障害の症状に注意が必要です。 ビタミンB12欠乏症 原因 概要 摂取不足 動物性食品を控えた食事や偏った食生活により、ビタミンB12が不足する 吸収不良 胃や小腸の疾患により、ビタミンB12の吸収がうまくいかなくなる 薬剤の影響 一部の薬(メトホルミン、PPIなど)がビタミンB12の吸収を妨げることがある (文献4) ビタミンB12は、神経細胞の髄鞘を維持したり、神経伝達物質の合成を助けたりする役割があります。 偏った食生活でビタミンBの不足や、胃の切除手術後、特定の胃腸疾患などによってビタミンB12の吸収が妨げられると、欠乏症となり末梢神経障害を引き起こす恐れがあります。 普段から偏った食事や胃腸に疾患を持つ方は、ビタミンB12が不足しないよう工夫しましょう。 自己免疫疾患・遺伝性疾患・感染症 分類 代表疾患 特徴・メカニズム 自己免疫性 ギラン・バレー症候群 感染後に免疫が神経を攻撃すると、急に手足が動かしにくくなることがある CIDP(慢性型) 髄鞘を慢性的に攻撃し、筋力低下やしびれがゆっくり進行する 遺伝性 CMT(シャルコー・マリー・トゥース病) 遺伝子の異常で筋力や感覚に障害が出る、手足の変形を伴うこともある 感染症 帯状疱疹 ウイルスが神経にダメージを与えることで、神経痛が起こる その他(HIV、ライム病など) 神経を直接傷つけたり、免疫を介して障害を起こすことがある (文献5)(文献6)(文献7) 自己免疫疾患である、ギラン・バレー症候群やCIDPは、免疫が誤って末梢神経を攻撃し、障害を引き起こします。 遺伝子異常による家族性ニューロパチーや帯状疱疹後神経障害、ライム病、HIV感染などの感染症も原因となることがあります。 自己免疫疾患が疑われる場合は、専門の医療機関での検査が必要です。 末梢神経障害の治療法 治療法 概要 薬物療法 神経の過敏性を抑える薬(抗てんかん薬、抗うつ薬など)や、違和感の軽減を目的とした薬を使用 栄養療法 ビタミンB群や必要な栄養素を補い、神経の修復や維持をサポート 手術療法 神経の圧迫が原因の場合、圧迫部位を除去・緩和するための手術が行われる 再生医療 幹細胞や再生因子を用いて、傷ついた神経の修復や機能回復をめざす治療法 末梢神経障害の改善には、複数の治療法を組み合わせた適切な治療が必要です。以下で詳しく解説します。 薬物療法 分類 主な薬剤 概要 糖尿病性神経障害 血糖コントロール薬(メトホルミンなど) 血糖値を管理し、神経への負担を軽減 メコバラミン(ビタミンB12製剤) 神経の修復や維持に必要なビタミンB12を補う 自己免疫性神経障害 免疫グロブリン製剤、ステロイド薬 自己免疫による神経の炎症を抑える 免疫抑制薬(アザチオプリンなど) 免疫の過剰な働きを抑制し、神経への攻撃を防ぐ ビタミン欠乏性神経障害 ビタミンB1、B12、葉酸など 不足しているビタミンを補い、神経の機能回復を促す 症状に対する治療薬 プレガバリン、ガバペンチン、デュロキセチン 神経の興奮を抑え、しびれや神経障害性疼痛を緩和 抗けいれん薬(カルバマゼピンなど) 神経の過剰な信号を抑え、不快感を軽減 (文献8) 症状緩和を目的とし、しびれや不快な感覚を抑える薬が用いられます。 末梢神経障害の症状によって処方される薬剤が異なり、服用は医師の指示に従いながら服用し、自己判断で量を増減させたり中止したりしてはいけません。 薬剤の服用でも改善が見込めない場合や副作用が出た場合は、医師に相談しましょう。 栄養療法 栄養素 主な役割 多く含まれる食品例 ビタミンB群 神経の修復・機能維持 豚肉、レバー、魚、卵、緑黄色野菜 タンパク質 神経や筋肉の材料となる 肉、魚、大豆製品、卵 食物繊維 血糖コントロールや便通の改善 野菜、果物、海藻、きのこ類 抗酸化物質 神経の酸化ストレスを軽減・保護 緑黄色野菜、果物、ナッツ類 ビタミンB12 神経の構造維持・修復に関与 レバー、貝類、魚、乳製品 シスチン・テアニン 疼痛の緩和に関与するとされるアミノ酸 肉類、魚介類、玉ねぎ、緑茶(※食品によって含有量に差) (文献9) 末梢神経障害では、ビタミンB群(B1、B6、B12など)の補給が大切です。医師や管理栄養士の指導のもと、個々の状態に合わせた栄養管理を行います。 栄養療法を行う場合は、医師の指導に従い、偏った栄養補充は行わないようにしましょう。 手術療法 項目 概要 目的 神経の圧迫除去、損傷した神経の修復 代表的手術 神経剥離術、神経縫合・移植術、脊椎手術、胸郭出口症候群手術 メリット 薬やリハビリで改善しない症状の改善、根本原因の除去が可能 デメリット 手術リスクあり(感染・出血など)、術後リハビリが必要な場合もある、手術が適応外の場合もある 手術の適応例 圧迫や損傷が明確、重度の麻痺、薬剤療法などで症状が改善しない場合 症状が改善しない場合、その圧迫を取り除くための手術が選択肢に入ります。手術療法では、神経圧迫の除去や、神経の修復などが行われます。 手術が適応となるケースは限定的であり、術後もリハビリや後遺症が出る可能性もあるため、患者と医師の慎重な判断が必要です。 再生医療 損傷した神経細胞や組織の修復・再生を目指す再生医療は、末梢神経障害に対して、有効な治療法です。 再生医療では、骨髄や脂肪から採取した幹細胞を損傷した神経組織に移植し、症状の改善を目指します。 https://youtu.be/iHqwMDfKID8?si=c4QCczJw6WEp9lbf 薬剤療法で起こりうる副作用や、手術を必要としないのが魅力です。 実際に、当院では40年来の糖尿病患者である方が、内科主治医から糖尿病性末梢神経障害と診断されており、10年以上続く両足のしびれ・既存の治療では改善が見られない状態になっていました。 【治療後の変化】 両足のしびれが大幅に軽減 日常生活の質の向上 健康増進への積極的な姿勢の芽生え 「運動療法と食事療法をさらに頑張っていきたい」という前向きな発言 当院(リペアセルクリニック)では、患者様一人ひとりの症状や体調に合わせた治療を行っております。 「長年しびれが改善しない」「薬を増やしたくない」「足の感覚が鈍くなって不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。 再生医療については、以下の記事で解説しております。 末梢神経障害を再発しないための注意点 注意点 概要 血糖のコントロール 高血糖を防ぐことで、神経へのダメージを抑える ビタミンB群と栄養バランス 神経の修復・維持に必要な栄養素を不足なく摂取する アルコール・喫煙を控える 神経への直接的ダメージや血流悪化を防ぐ 適度な運動 血流促進・筋力維持により神経の機能を保つ ストレス管理・良質な睡眠 自律神経のバランスを整え、神経への負担を軽減する 末梢神経障害の治療後や、症状を悪化させないためには、原因への対処を継続するとともに、神経に負担をかけない生活習慣を心がけることが重要です。 末梢神経障害が再発しないための注意点を解説します。 血糖のコントロールを徹底する 方法 内容の概要 食事療法 バランスよく規則正しく食べる、食物繊維・低GI食品を積極的に摂取する 運動療法 有酸素運動(例:ウォーキング、水泳)を無理なく継続する 薬物療法 医師の指示で血糖降下薬を服用 定期検査 血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を定期的に測定 糖尿病性神経障害の予防・進行抑制において重要なのは、血糖値を良好な範囲に維持することです。 医師の指示に従い、食事療法、運動療法、必要であれば薬物療法を継続し、定期的に血糖値をチェックしましょう。 継続的な血糖コントロールは、末梢神経障害の再発予防だけでなく、糖尿病との合併症などへの予防にもつながります。 ビタミンB群の摂取と栄養バランスを整える ビタミン 主な働き 不足時のリスク B1(チアミン) 糖質をエネルギーに変換、神経細胞のエネルギー源を供給 神経の炎症など B6(ピリドキシン) 神経伝達物質の合成、神経の興奮を抑制 しびれの発生など B12(コバラミン) 神経細胞の修復・再生をサポート 神経の変性・破壊、重度な神経障害のリスク ビタミンB群(とくにB1、B6、B12)は神経の機能維持に重要な役割を果たします。これらのビタミンを多く含む食品(豚肉、レバー、魚介類、豆類、緑黄色野菜など)を意識的に摂取しましょう。 特定の栄養素に偏った食事ではなく、全体的な栄養バランスが取れた食事を心がけることが大切です。 アルコール摂取と喫煙を控える アルコールは神経に直接的なダメージを与える可能性があります。喫煙は血行を悪化させ神経への栄養供給を妨げます。神経の健康を維持するためには、できる限りアルコール摂取を控え(節酒)、禁煙が大切です。 末梢神経障害の予防と症状改善のためにも、神経細胞を傷つける過度のアルコール摂取や、血管を収縮させるタバコは控えましょう。 適度な運動を日常に取り入れる 運動による効果 概要 血行促進 神経に酸素と栄養を届け、機能低下を防ぐ 筋力維持 筋力低下を防ぎ、神経への負担を軽減 血糖コントロール 血糖値を安定させ、神経へのダメージを軽減 ストレス軽減・自律神経調整 ストレスを和らげ、自律神経のバランスを整える 神経再生の促進 神経成長因子(NGF)の産生を促し、神経の修復や再生を助ける ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの適度な運動は、血行を促進し、神経への酸素や栄養の供給を改善する効果が期待できます。 運動を行う場合は、怪我に注意し、無理のない範囲で行うことが大切です。運動の内容は、医師の指示に従うようにしましょう。 ストレス管理や睡眠の質を高める 項目 主な方法 ストレス管理 リラックス時間の確保(入浴・音楽など)、適度な運動、専門家への相談 睡眠の質向上 規則正しい生活リズム、寝る前のスマホ・カフェイン・アルコールを避ける 過度なストレスや睡眠不足は、自律神経の乱れを招き、血行や免疫力を低下させ、神経症状を悪化させる原因になります。 趣味や入浴、瞑想など、自分に合った方法でリラックスし、ストレスをため込まないことが大切です。 規則正しい生活と十分な睡眠で、神経の修復を促しましょう。 末梢神経障害の症状がある方は早めに医療機関を受診しよう 足のしびれや感覚の異常、力の入りにくさなど、末梢神経障害を疑う症状がある場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。 末梢神経障害は放置すると症状が進行し、悪化する恐れがあります。 少しでも末梢神経障害の疑いのある方は当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 当院では、患者さま自身の細胞や血液を活用し、自然治癒力を高める再生医療による治療を行っています。 損傷した神経の修復を促すことで、しびれ・痛み・脱力感などの改善を目指す治療法で、従来の対症療法とは異なるアプローチが期待できます。 https://youtu.be/NeS1bk2i5Gs?si=jPlCZu6NTz1tAksh 末梢神経障害が疑われる症状でお困りの方は、一人で悩まず、ぜひ当院の無料カウンセリングをご利用ください。 参考記事 (文献1) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「末梢神経障害」 https://www.pmda.go.jp/files/000145962.pdf(最終アクセス:2025年4月9日) (文献2) Michael C. Levin, et al.(2023)Weakness.MSD MANUAL Professional Version https://www.msdmanuals.com/professional/neurologic-disorders/symptoms-of-neurologic-disorders/weakness (Accessed: 2024-04-09) (文献3) Michael Rubin, et al. (2022).Peripheral Neuropathy.MSD MANUAL Professional Version https://www.msdmanuals.com/professional/neurologic-disorders/peripheral-nervous-system-and-motor-unit-disorders/peripheral-neuropathy (Accessed: 2024-04-09) (文献4) Larry E. Johnson, et al. (2024). Vitamin B12 Deficiency.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/disorders-of-nutrition/vitamins/vitamin-b12-deficiency (Accessed: 2024-04-09) (文献5) Michael Rubin, et al. (2024). Guillain-Barré Syndrome (GBS).MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/brain-spinal-cord-and-nerve-disorders/peripheral-nerve-and-related-disorders/guillain-barr%C3%A9-syndrome-gbs(Accessed: 2024-04-09) (文献6) Michael Rubin,et al. (2022). Charcot-Marie-Tooth Disease.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/brain-spinal-cord-and-nerve-disorders/peripheral-nerve-and-related-disorders/charcot-marie-tooth-disease(Accessed: 2024-04-09) (文献7) Kenneth M. Kaye, et al. (2023). Shingles.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/infections/herpesvirus-infections/shingles(Accessed: 2024-04-09) (文献8) ガン科学療法を受ける患者さんへ末梢神経障害『東邦大学医療センター薬学部』, pp.1-2, 2020年 https://www.sakura.med.toho-u.ac.jp/sinryoka/yakuzai/ue7s91000000a3px-att/massyousinnkeisyougai.pdf(最終アクセス:2025年4月9日) (文献9) 木田 耕太「神経疾患における栄養療法,その基礎知識」, pp.1-5, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/39/1/39_8/_pdf(最終アクセス:2025年4月9日)
2025.04.30







