糖尿病(2型)完治は困難、ただし改善や進行を遅らせはできる!
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糖尿病(2型)の完治は困難、ただし改善や進行を遅らせる方法はある!
2017年国民健康・栄養調査によると、男性の18%、女性の11%が「糖尿病」と疑われていることがわかりました。これは男性6人中1人が糖尿病という計算になります。それだけ多くの人が糖尿病に悩まされていることになります。
では「糖尿病」は、「治る」のでしょうか。糖尿病は一度発症すると医学的に完治することは難しいと言われていますが、食事療法と運動療法で健康な人と同等の状態を維持できることがあります。
糖尿病と診断され「糖尿病を発症した後に治った人はいるのか」と気になる方に、糖尿病を改善するためにできる治療方法や薬について紹介します。
糖尿病は治らなくても、取り組み方次第で改善できたり、進行を遅らせられる
糖尿病とは、何らかの原因よってインスリンが働かない、あるいは分泌されないことによって高血糖が続いてしまう病気です。
糖尿病には成因によって1型と2型に分けられます。1型糖尿病はインスリンを分泌するすい臓のβ細胞が破壊されるため、現代の医学では機能を回復させられる見込みがありません。したがって、インスリン製剤を生涯にわたって投与し続ける必要があります。
一方、生活習慣の悪化などから発症する2型糖尿病なら、β細胞の早期治療に取り組めむことで機能の改善が期待でき、健康な人と同様の生活が送ることが可能になります。
さらに1型、2型のどちらに対しても症状が初期である段階で、医療機関できちんとした治療を行えば合併症の発症を遅らせることが可能になります。
体重のコントロールに着目・肥満を解消しよう
糖尿病の寛解を目指す臨床試験「DiRECT」がイギリスで行われ、次のことがわかりました。食事療法と運動療法をしっかり行い、体重をコントロールすることで2型糖尿病患者の半数近くは「事実上の完治」を維持できる
では、なぜ食事療法と運動療法と体重コントロールだけで、薬物を使わず「事実上の完治」を達成できたのかを解説します。暴飲暴食や運動不足が続くと、全身に脂肪がたまり、肝臓にも脂肪がたまります。脂肪がたまった肝臓は働きが低下します。
肝臓の働きが低下するとインスリンへの体の反応が鈍くなることがわかっています。これを「インスリン抵抗性」といいます。インスリン抵抗性が強まると、体は大量のインスリンを必要とするようになります。
すると、すい臓は「フル稼働」でインスリンをつくろうとするので、次第に疲弊してインスリンの分泌に支障をきたすようになります。インスリンの分泌が減ると、さらに肝臓に脂肪がたまるので、インスリン抵抗性がさらに強まることになります。
この悪循環を断ち切るには、食生活と運動不足を改善し、脂肪がたまらないように肥満を解消する必要があるのです。
2型糖尿病の症状は肥満を解消すれば緩和する
2型糖尿病の症状は体重コントロールによって緩和できることがわかりました。体重コントロールとは、標準体重(身長(m)×身長(m)×22)に近づけることです。
糖尿病の場合、標準体重と比べてやせている人より太っている人のほうが問題になるので、肥満の解消が課題になります。そして標準体重がわかったら、次に適正なエネルギー摂取量を求め、それ以上食べすぎないようにします。
栄養バランスを考えたり、運動や睡眠の改善も重要です。具体的にどのような方法で肥満を解消(ダイエット)すれば良いのかみていきます。
気になる脂肪は、食事量をコントロールして減らせる
ダイエットの原則は「入りを減らして」「出を増やす」ことです。まずは食べる量を減らして、入りを減らすようにしましょう。具体的には次のような方法で食事量(摂取エネルギー)を減らしましょう。
<糖尿病患者の理想の食生活ポイント> ・糖質やカロリーの低い食事を摂る ・1日3食、規則正しい時間に摂る ・1日の活動量に合わせた適正なエネルギー量の食事をする ・栄養バランスの取れた食事をする |
食事量が多い人は、食事量を適正エネルギー量に調整しましょう。1日の適正エネルギー量は人によって異なり、「標準体重×身体活動量」で算出できます。
標準体重と身体活動量の数値は以下のとおりです。 ・標準体重=身長(m)×身長(m)×22 ・身体活動量 |
ウォーキングなどの運動で脂肪を減らす
「入りを減らす」ことができたら、次は「出を増やす」ことに取り組みましょう。運動で脂肪を燃焼させることによって、体内の脂肪を減らすことができます。
また、運動にはインスリンの働きを良くする効果があるとされているので、その意味でも糖尿病患者の方は運動に取り組む必要があります。おすすめしたい運動は、ウォーキングやジョギング、水泳やサイクリングなどの有酸素運動と、スクワットや腹筋、ダンベル体操などの筋肉トレーニングです。
運動は1回20~60分、週3~5回が理想です。 |
睡眠を十分にとりストレスを軽減させる
肥満解消と併せて、糖尿病患者の方は睡眠を十分にとり、ストレスを解消することも大切です。睡眠不足が続くと、空腹時の血糖値が上昇し、インスリンの分泌が減ることがわかっています。
糖尿病を改善したいなら、7~8時間は睡眠時間を確保したいところです。一方、ストレスが加わると血糖値を上昇させるホルモンが分泌されることもわかっています。
趣味を持つことや旅行など、自分に合った方法でストレス解消に努めましょう。
2型糖尿病患者のHbA1cの改善に効果が期待できる薬
ここまで、食事療法と運動療法や生活習慣の重要性について解説してきました。これらの対処を行っても糖尿病の症状が改善しない場合は薬物療法に移行します。
薬物療法では次のような薬を使用します。 ・DPP-4阻害薬 |
糖尿病は空腹時血糖値以外に、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)など、さまざまな指標を用いて判断します。
HbA1c(%)は「糖が結合したヘモグロビン量÷すべてのヘモグロビン量」で算出します。ヘモグロビンは赤血球内にあるたんぱく質のことをいい、細胞に酸素を送る働きを担っています。
つまりHbA1cが高いと血中内の糖が多いということになります。上記の薬は血中内の糖を減らす効果を有するので、これらを服用・投与することでHbA1cの低下が期待できるのです。
まとめ・糖尿病(2型)の完治は困難だが、改善や進行を遅らせはできる!
「糖尿病は完治しない」と、よく言われています。しかしイギリスの臨床試験では生活習慣を改善することで「事実上の完治」まで持っていくことが可能であることが示されています。
糖尿病患者の方はぜひ生活を見直し、糖尿病の改善に努めましょう。以上、2型糖尿病は治らなくても、進行が遅くなる方法についてご説明いたしました。
監修:院長 坂本貞範
再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目されています