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筋肉の衰えの原因や対策を解説!運動・食事・セルフチェック法を紹介
年齢とともに、「最近つまずきやすくなった」「階段の上り下りがつらい」と感じていませんか?
それは、筋肉の衰えが進行しているサインかもしれません。
筋肉の衰えは、体型の変化といった外見上の問題にとどまらず、転倒や骨折、要介護状態を招く深刻な健康リスクにつながるため注意が必要です。
本記事では、筋肉が衰える原因や初期症状、進行によるリスクを解説し、セルフチェック方法や食事・運動を中心とした具体的な対策もご紹介します。
最後までご覧いただき、いつまでも元気で自立した生活を続けるための第一歩を踏み出しましょう。
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目次
筋肉の衰えは加齢が主な原因
加齢は、筋肉の衰えにおいて最も大きな要因です。
年齢を重ね、自然と筋肉量や筋力が低下しやすくなる現象は「サルコペニア」と呼ばれており、要介護状態に陥る一因となります。さらに筋肉の衰えは、身体機能やバランス能力の低下を引き起こすため注意しなければなりません。
また、骨折や関節障害の原因となる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」や、虚弱な状態で健康障害や介護が必要になる「フレイル」の進行にも深く関与しています。
とくに、高齢者は食事が偏りがちになり、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど筋肉の維持に必要な栄養素が不足しやすいため注意が必要です。
筋肉が低下した状態を「サルコペニア」と呼ぶ
サルコペニアとは、筋肉量が減少し、それに伴って筋力や身体機能も低下する状態を指す医学用語です。
加齢に伴って自然に起こる「一次性サルコペニア」と、病気や栄養不良、運動不足などが原因で生じる「二次性サルコペニア」に分類されます。
サルコペニアが進行すると、歩行速度の低下やつまずき・転倒が増えるため、日常生活で動作が制限されるようになる前に対策を講じることが大切です。
また、フレイルやロコモといった加齢に伴って起こりやすい症状や状態と重なって進行しやすく、結果的に介護が必要な状態につながる恐れもあります。
筋肉の衰えは気づかないうちに進行するため、健康寿命を延ばすには初期段階での発見と対策が欠かせません。
フレイル・サルコペニア・ロコモについては、以下の記事もご覧ください。
筋肉の衰えと同時にしびれや震え(けいれん)があるなら重大な病気かも
筋肉の衰えに加えて手足のしびれや震え、けいれんなどの神経症状が同時に見られる場合は、重大な病気の恐れがあります。
単なる加齢や運動不足による筋力低下ではなく、以下のような脳や脊髄、末梢神経の病気が原因の可能性があるのです。
- 脊髄損傷
- 多発性硬化症
- 筋萎縮性側索硬化症
- 末梢神経障害
上記は、早期発見・早期治療が極めて重要な疾患です。
筋力の低下に加えて神経症状が見られる場合は、速やかに神経内科や脳神経外科など専門の医療機関を受診しましょう。
筋肉の衰えで生じる症状
筋肉の衰えは、複数の要因が重なって生じてきます。気付かぬうちに進行するため、早めに症状の特徴を知っておくことが重要です。
ここでは、筋肉の衰えで生じる典型的な症状を見ていきましょう。
筋肉量が減少した場合の症状|体重減少など
筋肉量が減ると、その分だけ体重も減少しやすくなります。筋肉は熱産生や水分保持にも関与しており、筋量の低下は冷え性や脱水・熱中症のリスクにもつながります。
また、筋肉が減ることで骨密度も低下し、骨粗しょう症を併発するケースもあるため注意しなければなりません。
気になる体重の変化や冷え、疲れやすさなどがあれば、早めに対処していくことが大切です。
筋力が低下した場合の症状|立ち上がれないなど
筋力低下が進むと、「椅子から立ち上がるのが難しい」「ペットボトルの蓋が開けにくい」といった日常動作で支障が生じます。
脚の筋力が落ちると、椅子から立ち上がる際に何かにつかまらないと難しくなる状態になる恐れがあるのです。また、握力低下によって、缶のプルタブを開けるのが難しいなどの細かな動作にも影響が出ます。
筋力が低下すると、常に最大の力を使ってしまいがちになるため、疲れやすくなる点も見逃せません。動作がぎこちなくなったり、日常生活に支障が出てきたりしたら、筋力低下の可能性を疑いましょう。
身体機能が低下した場合の症状|階段を上り下りできないなど
身体機能が落ちると、歩行速度やバランス、階段昇降などの動作にも支障が出ます。
たとえば、歩行速度が落ちると、青信号のうちに横断歩道を渡り切れないといった事態にもなりかねません。また、階段の上り下りがつらくなった場合は、脚部の機能低下のサインです。
疲れるからと外出を控えるようになると、身体機能のさらなる低下を招く悪循環に陥ってしまいます。身体機能低下は、単に筋肉が弱くなるだけでなく、生活の自由度にまで影響を及ぼす点を理解しておきましょう。
筋肉の衰えによる健康リスク
筋肉の減少や筋力の低下は、単なる身体能力の衰えにとどまりません。
筋肉は、運動や姿勢を保つことだけでなく、代謝・免疫・呼吸・摂食嚥下といった多くの生理機能に関わっているのです。
ここでは、筋肉の衰えによって生じる代表的な健康リスクを解説します。
転倒・骨折から寝たきりになるリスク
筋力が衰えると、姿勢保持やバランス機能が低下しやすくなります。その結果、わずかな段差やバランスの崩れでも転倒しやすくなるため注意が必要です。
高齢者が転倒すると、大腿骨などの骨折を引き起こす危険性が高く、長期入院や安静が続くことでさらに筋力が低下する悪循環に陥ります。
最終的に寝たきり状態となると、日常生活の自立が困難になるケースも少なくありません。
転倒して骨折し、寝たきりになるという流れは、高齢者の健康寿命を大きく縮める要因のひとつになっているのです。
要介護状態になるリスク
筋肉が衰えると、日常生活に必要な以下の基本動作が困難になります。
- 立ち上がり
- 歩行
- 階段昇降
- 衣服の着脱
さらに進行すると、自力で生活を維持できなくなり、介助を必要とする「要介護状態」に移行します。
とくに、加齢とともに体力・筋力が低下している高齢者では、ちょっとした体調不良や怪我がきっかけとなり、急速に介護依存度が高まる場合も少なくありません。
筋力の低下を早期に察知して予防的な対策を講じることが、介護を必要としない生活を長く維持するためには不可欠です。
生活習慣病が悪化するリスク
筋肉は、糖代謝に重要な役割を担っており、血糖を取り込んでエネルギーとして利用する働きが活発な組織です。
筋肉量が減ると血糖の処理能力が低下し、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が悪化する可能性が高まります。
さらに、筋肉の減少により基礎代謝も低下し、エネルギー消費量が減ることで肥満のリスクが高まる点も要注意です。
生活習慣病が進行すれば、動脈硬化や心血管疾患にもつながるため、筋肉の維持が慢性疾患の予防や管理にもつながります。
誤嚥性肺炎のリスク
筋肉の衰えは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする際に使う、咀嚼筋(そしゃくきん)や嚥下筋(えんげきん)にも影響を与えます。
咀嚼筋や嚥下筋の筋肉が弱くなると、食物や唾液が気管に誤って入る「誤嚥」が起こりやすくなるため注意しなければなりません。誤嚥が繰り返されると、口腔内の細菌が肺に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクも高まります。
とくに高齢者においては、免疫力の低下も重なって肺炎の重症化や死亡リスクが高くなるため、口周りや喉の筋肉の機能低下には要注意です。
筋肉の衰えをセルフチェックしよう
筋肉量・筋力が低下し始めると、身体活動や日常動作に支障が出やすくなります。とくに高齢期には、早めの段階で衰えを察知して対策しましょう。
ここでは、医療機関や研究で紹介されている簡単なセルフチェック方法を紹介します。専用機器が無くても自宅で実施可能なので、ぜひ実践してみてください。
指輪っかテスト
両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲みましょう。輪の方が大きくて隙間ができる場合、ふくらはぎの筋肉量が低下している可能性があります。
ふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれ、全身の筋肉量の指標にもなる部位です。ふくらはぎが細くなっている状態に気づいたときは、早めに対策しましょう。
開眼立脚位テスト
両手を腰に当て、両目を開けたまま片足を床から数センチ浮かせて立ちます。転倒を防ぐため、壁や椅子のそばで行ってください。
床に着けている「支持足」がずれる、または支持足以外の体の一部が床や壁に触れるまでの時間を最大1分まで測定して記録します。(文献1)
年代別に、以下の時間と照らし合わせてみてください。
- 30代:55秒
- 40代:40秒
- 50代:30秒
- 60代:20秒
- 70代以上:20秒以上を目標に
上記の時間を下回る場合は、筋力の低下やバランス感覚(平衡感覚)に問題が起きている可能性があります。定期的にチェックして、ご自身の状態を把握しておきましょう。
筋肉そのものだけでなく身体の安定性もチェックでき、高齢者の転倒リスクの把握に有効なテストです。
5回立ち座りテスト
肘掛けのない椅子に浅く腰かけ、手を使わずに立ち上がり・座る動作を5回繰り返し、かかった時間を測定しましょう。
12秒以上かかる場合、下肢の筋力や持久力が落ちている可能性があります。(文献2)
立ち座りの動作には、大腿四頭筋などの主要な筋肉が関わるため、日常生活動作の基礎を定期的に評価するのに有効です。
ペットボトル開けテスト
未開封のペットボトルを使い、キャップをどのように開けているかを確認します。
正常な握力があれば、親指と人差し指を中心とした「筒握り」で開けられますが、握力が低下していると指先だけでは力が足りず、5本の指全体でキャップを上から覆うように握る「逆筒握り」になりがちです。
日常的な動作から筋力の低下を見つけ出すテストで、とくに上肢の筋肉の状態を把握する手がかりとなります。
筋肉の衰えを防ぐ対策
筋肉の衰えを予防するには、日常生活の中で運動・栄養・生活習慣をバランスよく整えることが欠かせません。
ここでは、筋肉の健康を維持するための対策をご紹介します。
たんぱく質の摂取
筋肉の衰えを防ぐには、たんぱく質の十分な摂取が必要です。
たんぱく質は、筋肉・臓器・皮膚など身体を構成する材料であり、人間の生命維持に不可欠な栄養素のひとつです。とくに、高齢者は筋肉の合成効率が低下するため、意識的にたんぱく質を摂りましょう。
たんぱく質を多く含む主な食品は、以下の通りです。
- 魚
- 肉
- 卵
- 大豆製品
- 乳製品
高齢になると食事が単調になりやすく、炭水化物中心の食生活が続くと、たんぱく質不足を招きかねません。全体的に少ない食事量でも、多種類の食材を組み合わせ、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
なお、食事の用意が負担になる場合には、ヨーグルトや牛乳、豆腐、納豆など調理不要で手軽に摂れる食品を冷蔵庫に常備しておくと便利です。
下半身のトレーニング
下半身を積極的に動かすことが、筋肉の衰えを予防するのに有効です。
以下では、家庭でも実践しやすい2つの下半身トレーニングをご紹介します。
椅子を利用して大腿四頭筋を鍛える
椅子に浅く腰かけた状態から、ゆっくりと立ち上がる・座る動作を繰り返すことで、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を効果的に鍛えられます。
膝や腰に痛みがなければ、「立ち座り10回→1分休憩」を1セットとし、最大3セット行いましょう。特別な器具が不要で、椅子があれば誰でも始められます。
以下の2点を意識するとより効果的です。
- 立ち上がる・座るをなるべくゆっくりと繰り返し、筋肉にしっかり刺激を与える
- 手を使わずに、脚の筋力にしっかり負荷をかける
片脚で立ち座りする
より負荷を高めるには、片脚を少し浮かせた状態で立ち座りを行う方法があります。
椅子の近くにテーブルや壁など支えにつかまるものを用意し、慣れるまでは安全を確保してから実施しましょう。
片脚での立ち座りは、片脚で立ったときのバランス能力・脚全体の筋力・体幹の安定性を同時に鍛えられるため、加齢による動作機能低下を防ぐ上で効果的です。
ゆっくり動作を行い、立ち上がった時に数秒静止するように意識すると、さらに効果が高まります。週に数回、少しずつ回数・セット数を増やし、脚の筋力とバランス感覚を養っていきましょう。
日光を浴びる
筋肉の健康維持には、適度な日光浴も欠かせません。
日光に含まれる紫外線を浴びると、体内でビタミンDが生成されます。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けるだけでなく、筋肉の合成や筋力の維持にも関与している重要な要素です。
とくに、高齢者はビタミンD不足が進みやすく、筋肉の衰えや転倒リスクが高まる要因となります。
1日15~30分程度、腕や脚に日光を浴びる習慣を取り入れるだけでも効果が期待できるので、実践していきましょう。季節や地域、肌の色によって必要な時間は異なります。
筋肉の衰えで運動するときは腰痛や膝の痛みに注意
運動は、筋肉の衰えを防ぐために重要ですが、やり方を誤ると関節や筋肉を傷め、かえって健康を損なう恐れがあります。
高齢者や運動習慣のない方が急に強い運動を始めると、腰や膝に過度な負担がかかり、慢性的な痛みや炎症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。安全に配慮しながら、強度・回数・時間を少しずつ段階的に増やしていきましょう。
また、体調がすぐれない日や、猛暑・寒冷時などの過酷な環境では無理をせず、体調管理を優先してください。とくに、関節痛や腰痛、持病(高血圧・心疾患など)がある方は自己判断で行わず、事前にかかりつけ医にまずは相談しましょう。
まとめ|筋肉の衰えを対策して介護リスクを減らそう
筋肉の衰えに対する予防・対策は、将来的な介護リスクを軽減し、自立した生活を長く維持するために不可欠です。
年齢とともに筋力や運動機能は自然と低下していきますが、放置すると転倒・骨折・要介護といった深刻な問題に発展しかねません。
たんぱく質を中心としたバランスの良い食事を意識しつつ、無理のない範囲で体を動かす習慣を取り入れていきましょう。
今回の記事が、介護を必要としない、いきいきとした生活を送る一助となれば幸いです。
当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷などに用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。
膝の痛みなどでお悩みの方は、ぜひご登録いただき、ご活用ください。
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筋肉の衰えに関するよくある質問
筋肉の衰えで主な初期症状は?
筋肉が徐々に衰えると、まず以下のような症状が現れます。
- 以前と比べて力が入りにくくなった
- 歩くスピードが遅くなったと感じる
- 階段を上るのがつらい
初期段階では自覚症状が少なく見過ごされやすいため、普段の動きで疲れやすさやつまずきやすさを感じたら要注意です。
筋肉の衰えがはじまる年齢は?
筋肉量は、一般的に20代をピークに減少し始めます。加齢とともに減少ペースが加速し、50代以降に顕著になる傾向があります。
そのため、40代のうちから運動習慣や食事の見直しを始め、筋肉量の維持を心がけることが大切です。
筋肉がない人の特徴は?
筋肉量が少ない人に共通する特徴は以下の通りです。
- 長時間座る生活が中心で運動習慣がない
- たんぱく質摂取が不十分、あるいは極端な食事制限を行っている
- 睡眠が浅い・休息が十分ではない
上記の生活習慣が重なることで、筋肉量の低下リスクが高まります。
筋トレしているのに筋肉が減る・つかないのは何故?
筋トレを行っていても筋肉が増えない、また減る原因として、以下のような要因が考えられます。
- 負荷が軽すぎて筋肥大刺激が不足している
- たんぱく質やエネルギーの摂取が十分でない
- オーバートレーニング・休息不足で筋肉修復が追い付いていない
- 有酸素運動が過剰で筋肉分解が促進されている
上記を見直せば、筋肉の成長環境を整えられます。
筋肉の衰えは何科を受診すればいい?
筋肉の衰えが疑われる場合、症状に合わせて次の科を受診先として検討しましょう。
- 「整形外科」または「サルコペニア外来」:下肢・体幹の筋力低下や筋量減少が主体
- 「脳神経内科」または「脳神経外科」:手足の麻痺・力が入らない・言語や嚥下機能の低下を伴う
筋肉が衰える背景には神経・筋疾患が潜む可能性もあるため、早めに専門医に相談してください。
参考文献











