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腕を上げると肩が痛いのは五十肩(四十肩)?原因や治し方を解説

腕を上げたときに肩が痛む原因は、五十肩(四十肩)だけではありません。
肩腱板損傷やインピンジメント症候群など、さまざまな疾患が関係している可能性があります。
しかし、その中でも特に中高年層に多く見られ、日常生活に影響を与えるのが五十肩(四十肩)です。
本記事では、腕を上げると肩が痛くなる原因のうち、特に五十肩に焦点を当て、症状の進行段階や治療方法について詳しく解説していきます。
適切なケアを知り、症状の改善を目指しましょう。
目次
腕を上げると肩が痛い原因
腕を上げたときに肩が痛む原因には、大きく3つの疾患が考えられます。
「肩腱板損傷」「インピンジメント症候群」「五十肩(四十肩)」の3つです。
いずれも肩関節の構造や使い方に関連しており、特に加齢や繰り返しの動作によって発症しやすい特徴があります。
肩腱板損傷
肩腱板とは、肩のインナーマッスルである「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉で構成される組織のことです。
これらの筋肉が肩関節を安定させ、スムーズな動きを可能にしています。
しかし、加齢やスポーツ、重いものを持つ動作の繰り返しによって肩腱板が損傷すると、腕を上げる際に痛みを感じるようになります。
特に、「腕を上げようとすると肩の奥にズキッとした痛みが走る」「腕を動かすときに引っかかる感じがする」といった症状が特徴的です。
初期段階では痛みが軽度でも、進行すると夜寝ている間に肩が痛んだり腕が上がらなくなることもあります。
肩腱板損傷について詳しくは、以下の記事もご覧ください。
インピンジメント症候群
インピンジメント症候群は、肩を上げる動作を繰り返すことで、肩の骨(肩峰)と腱板・滑液包が衝突し、炎症を起こす疾患です。
スポーツや仕事で頻繁に腕を使う人に多く発症しますが、加齢によって肩関節周囲の筋肉や腱が弱くなったり、摩耗したりすることで発症するケースもあります。
特に、40代以降では肩のクッションの役割を果たす滑液包がすり減りやすくなるため、インピンジメント症候群を引き起こすリスクが高まります。
「肩を上げると痛みが出る」「肩がゴリゴリ鳴る」「ある角度で痛みが強くなる」といった症状がある場合は、早めに対処することが重要です。
放置すると肩の可動域が狭くなり、五十肩と同じように動かしづらくなることもあります。
インピンジメント症候群について詳しくは、以下の記事もご覧ください。
五十肩(四十肩)
五十肩(四十肩)は、肩関節の周りに炎症が起こり、腕を上げる動作や後ろに回す動作が痛みで制限される疾患です。
主に40代〜50代以降の人に発症しやすいことから、このように呼ばれています。
「腕を上げると肩が痛い」「一定の角度以上に腕が上がらない」「夜間痛がひどく、眠れないことがある」といった症状が特徴的です。
発症の原因は明確には分かっていませんが、加齢に伴う関節や腱の変性、炎症が関与していると考えられています。
次の章では、五十肩がなぜ痛みを引き起こすのか、詳しく解説していきます。
五十肩(四十肩)の正式名称である「肩関節周囲炎」は腕を上げるとなぜ痛い?
五十肩(四十肩)は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩の関節を構成する組織(腱板、関節包、靭帯など)に炎症が起こることで発症します。
腕を上げたときに痛みを感じるのは、関節の可動域が制限されたり、炎症によって肩の動きがスムーズにいかなくなったりするためです。
一般的に五十肩(四十肩)は、「肩関節周囲炎」と言われることが多いのですが、詳細には以下も含まれます。
五十肩(四十肩)の正式な病名
病名 | 影響を受ける部位 | 症状 |
---|---|---|
肩関節周囲炎 | 肩関節の周囲全体 |
肩関節周囲の炎症により痛みや可動域制限が起こる |
腱板炎 | 腱板(肩のインナーマッスル) | 腱板が炎症を起こし、腕を上げると痛みを感じる |
上腕二頭筋長頭腱炎 | 上腕二頭筋の腱 |
腕を前に上げたり、ものを持ち上げると痛みが走る |
腱板疎部炎 | 肩前方の腱板疎部 | 肩を回す動きで痛みが強くなる |
五十肩(四十肩)の原因|加齢による変化と炎症の関係
五十肩(四十肩)の主な原因は、加齢による肩関節周囲の組織の変性(劣化)と考えられています。
年齢を重ねるにつれて、関節を構成する腱板や靭帯、関節包が硬くなり、炎症を起こしやすくなるためです。
具体的には、以下のような変化が五十肩の発症に影響しています。
- 関節包の硬化:肩関節を包む関節包が加齢とともに弾力を失い、動かすと痛みを感じるようになる。
- 血流の低下:加齢により肩周囲の血流が悪くなり、修復能力が低下し、炎症が長引きやすい。
- 腱板の変性:腱板のコラーゲン繊維がもろくなり、小さな負荷でも炎症が起こりやすくなる。
また、普段から肩を動かす機会が少ないと、関節の柔軟性が低下しやすく、五十肩のリスクが高まることも分かっています。
そのため、肩を適度に動かし、柔軟性を維持することが予防にもつながります。
以下の記事も参考にしてください。
五十肩(四十肩)の症状を3段階のステップごとに解説
五十肩(四十肩)は「炎症期」「拘縮期」「回復期」の3段階で症状が変動していくと考えられており、最初は強い炎症に伴う痛み症状を認めたのちに肩関節の拘縮症状が引き起こされ、次第にその拘縮具合も軽快していくとされています。
それぞれの段階で症状が異なり、適切な対処法を知ることが早期回復のポイントになります。
炎症期(初期)
炎症期は、五十肩の最初の段階で、強い痛みが特徴です。
期間:約2週間〜数ヶ月(個人差あり)
主な症状
- 痛みが強くなる(特に夜間に激しくなる)
- 動かすと鋭い痛みが走る(特に腕を上げる・後ろに回す動作)
- 安静時にもズキズキ痛むことがある
対処法
- 肩の安静を保つ(無理に動かさない)
- 痛みを和らげるために消炎鎮痛剤を使用(湿布や飲み薬)
- アイシング(冷やす)や温めるケアを行う(炎症が強い場合は冷やす)
- 夜間痛がひどい場合は医師に相談し、痛み止めや注射を検討
拘縮期(中期)
炎症が落ち着くものの、肩の動きが極端に制限される時期です。
期間:約数ヶ月〜1年
主な症状
- 痛みは減るが、可動域が狭くなる
- 肩が固まり、動かしづらい
- 腕を上げたり、背中に手を回す動作が困難
- 日常生活に支障が出る(服の着脱、髪を結ぶなど)
対処法
- 無理のない範囲でストレッチ(可動域を広げるため)
- リハビリを始める(痛みが少ない範囲で軽い運動)
- 肩を温めることで血流を促進し、回復をサポート
回復期(後期)
肩の動きが少しずつ回復し、日常生活が楽になる時期です。
期間:約半年〜1年以上(症状の程度による)
主な症状
- 痛みはほとんどなくなる
- 可動域が広がり、肩の動きが回復
- 腕を上げたり、後ろに回す動作がスムーズになる
対処法
- 積極的にストレッチやリハビリを行う
- 日常生活の動作の中で肩を意識的に動かす
- 軽い筋力トレーニングで再発予防をする
五十肩(四十肩)おすすめの治療方法
五十肩(四十肩)は放置しても自然に回復することが多いですが、症状が長引いたり、生活に支障をきたすこともあります。
痛みや可動域の制限を改善し、スムーズな回復を促すためには、薬物療法・リハビリ・ストレッチ・手術など、症状に合わせた治療が重要です。
薬物療法|痛みを和らげるための鎮痛剤や注射治療
肩関節部の強い痛みによって夜も眠れない、ほとんど肩を動かせない状態と判断された場合には、その強い炎症を鎮めるために消炎鎮痛剤などの薬物を服用することをおすすめすることになります。
具体的には、炎症を抑える作用があるステロイドを主に肩関節内に関節注射として投与する、あるいは副作用がそれほど強くない非ステロイド系の消炎鎮痛剤を飲み薬として投薬することが多いです。
リハビリ・ストレッチ|肩の可動域を広げるトレーニング
肩の炎症がある程度治まり、痛みが和らいできた段階では、可動域の制限が残ることがあります。
このようなときには、硬くなった肩の動きを改善するために、ストレッチや運動療法(リハビリ)が必要です。
おすすめのリハビリ・ストレッチ
- 振り子運動
肩にかかる負担を最小限にしつつ、滑らかな動きを促す基本的な体操。
方法:痛みのない方の手で机などに体を支え、上半身を前に傾けます。痛む側の腕を自然に垂らし、前後・左右にゆっくりと揺らすように動かします。
- テーブルスライド
肩を前方に伸ばす可動域を広げるストレッチ。
方法:椅子に座ってテーブルに両手を置き、腕を伸ばした状態で前に滑らせながら、上半身を倒します。肩の前面が伸びているのを意識しましょう。
- クロスボディストレッチ
肩の後ろ側の柔軟性を高める運動。
方法:立ったまま、痛みのある腕を反対側の肩方向へ横に伸ばします。もう片方の手で肘を軽く押さえながら、胸に近づけるように引き寄せます。
手術|関節鏡手術の適応とは?
リハビリや薬物療法を続けても、肩の動きが十分に回復せず、慢性的な痛みが解消しない場合には、「関節鏡下授動術」という手術が選択肢に入ります。
この手術では、関節内部をカメラで確認しながら、癒着して硬くなった関節包を電気メスなどで丁寧に剥離します。
肩の可動域が悪くなる原因のひとつは、炎症によって関節包が厚く固まることです。
この癒着を解除することで、術後には肩の動きが大きく改善することが期待できます。
まとめ|五十肩は適切な治療とリハビリで改善できる!
五十肩(四十肩)は、加齢や肩関節の組織に起こる炎症が原因となり、腕を動かす際に痛みが出たり、動かしづらくなることがあります。
とくに腕を上げる、肩を水平に保つといった動きが難しくなり、洗濯物を干す動作や、背中のファスナーを閉めるといった日常の動作に支障が出るケースも多いです。
ただし、早期に医療機関を受診し、炎症を抑える治療や可動域を広げるリハビリを続けることで、徐々に痛みが和らぎ、日常生活の動作が楽になる人も多くいます。
肩の動きに違和感や痛みを感じたときは、放置せず、悪化を防ぐためにも早めの対応が大切です。
五十肩(四十肩)の治療方法には、再生医療という選択肢もあります。
再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。