手根管症候群でやってはいけない事|対処法も合わせて解説
公開日: 2022.10.14更新日: 2024.10.29
「最近、手や手首にしびれを感じるけど、忙しくて病院に行く時間がない…」
このように思いながらも、手や手首に負担をかける動作を続けている方もいるでしょう。
手のしびれは「手根管症候群」の初期症状かもしれません。
手根管症候群の場合、症状を放置すると治りにくくなる可能性があります。また、手の動きが制限されると、日常生活のあらゆる場面で支障が出て不便です。
しかし、医師の指示のもと正しい対処法を行えば、症状の悪化を防げます。手根管症候群の正しい知識と対処法を知り、悪化しないよう予防・改善に取り組みましょう。
目次
手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと
手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこととして、次の4点があげられます。
- 手に負担のかかる姿勢や動作を行う
- 違和感がある箇所をストレッチやマッサージで無理に伸ばす
- 自己判断で痛み止めの薬を使う
- 症状が続くのに放置する
手に負担のかかる姿勢や動作を繰り返し行うことで、手根間症候群の悪化を招くリスクがあります。また、明らかに症状が続いているのに放置すると、手の動きが制限されて元に戻らないこともあるので注意が必要です。
手に負担のかかる姿勢や動作を行う
手に負担のかかる姿勢や動作には、次のものがあります。
- 手を酷使する
- 手を握りしめる
- パソコンのキーボードを打つ
- 手をねじる
手を酷使したり握りしめたりすることで、手の負担が増え症状が悪化しやすいです。また、パソコンのキーボードを打つ動きは手首を繰り返し使うため、手首にある手根管内を圧迫して炎症を悪化させるリスクがあります。
これらの動きを繰り返すことで、手首にある手根管内を通る正中神経が圧迫を受けます。正中神経は手首や指を曲げる動きや、親指から薬指の感覚をつかさどる神経であるため、圧迫されると動きの制限やしびれを伴う危険性があるでしょう。
違和感のある箇所をストレッチやマッサージで無理に伸ばす
手首に違和感があるからといって、自己流でストレッチやマッサージを行うことはおすすめしません。
手首の内部にある手根管には正中神経をはじめ、指を動かす多数の筋肉が通っています。適切な知識がない状態でストレッチやマッサージを行い手を伸ばしすぎると、かえって手首の負担になり、症状を悪化させる可能性があるでしょう。
手根管症候群が疑われた際は、手首を無理に動かそうとせず、安静に過ごすことが大切です。
自己判断で痛み止めの薬を使う
痛みが治らない場合でも、自己判断で市販の鎮痛剤や抗炎症薬を使うことはおすすめできません。市販薬は自分の体質や症状に合わず、効果がみられない場合があります。また、副作用などの予期せぬ影響が出ることも考えられます。
薬で痛みを抑えられたとしても、手根管症候群が改善するわけではありません。医師の指示なしに痛み止めの服用は避けましょう。
症状が続くのに放置する
症状が続いているのに、「放っておけば治るだろう」と自己判断で放置するのは避けましょう。手根管症候群は軽度であれば自然に治ることはありますが、生活の中で手や手首に負担のかかる動作が多いと症状が改善されず治りにくくなります。
また、自分では自覚しにくい緩やかなスピードで症状が進行していく場合もあります。症状が進行すると手の運動機能や感覚機能に影響を及ぼし、治療が困難になる場合もあるため注意が必要です。
そもそも手根管症候群とは?発症する原因も紹介
手根管症候群とは、手首にある手根管で、その部分を通過する正中神経を圧迫してしまう病気です。正中神経を長く圧迫すると、神経の修復ができなくなったり、正中神経が支配している筋肉にも影響を及ぼし治療が難しくなったりしてしまいます。
手根管症候群を発症する原因にはほかの病気が隠れていることもありますが、手首のケガや手の使い過ぎ、女性ホルモンの乱れなどでも起きることがあります。
手根管症候群の症状|正中神経が傷つくとどうなる?
正中神経は手首を通って手に分布します。正中神経は手のひら側の親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側半分を担う感覚機能と、親指を動かす母指球筋の動きを担当する運動機能をもつ神経です。
そのため、正中神経が障害されると、担っている感覚の範囲でしびれや痛み、進行すれば触っている感覚が鈍くなる知覚麻痺が現れます。また、運動機能の障害で母指球筋が痩せて、親指の付け根の盛り上がりがなくなり、親指を動かすのに障害が出ます。
とくに、小さなものをつまむような動き(親指と人差し指で物を拾い上げる、服のボタンをかける、など)が、やりにくくなり、日常生活に影響が出るでしょう。
正中神経は手首よりも上(肩寄り)では、前腕の回内や手首を曲げるといった役割も担っていますが、手根管症候群では手首の部分で傷つくため、手首より上の動作の障害は現れません(手首より上の症状がある場合は別の病気が考えられます)。
手根管症候群でやってはいけないことを避けるための対処法
手根管症候群が疑われるときにやってはいけないことは以下の通りです。
- 手に負担のかかる姿勢や動作を行うことが多い場合
- ストレッチやマッサージをするか迷った場合
- 痛み止めの薬を使うか迷った場合
- 症状が続くのに放置している場合
それぞれの場合で症状を悪化させないための方法を紹介します。
手に負担のかかる姿勢や動作を行うことが多い場合
手に負担のかかる姿勢や動作が多い場合の対処法は次の通りです。
- 手を酷使することが多い方
- 手を握りしめることが多い方
- パソコンのキーボードを打つことが多い方
- 手をねじることが多い方
手を酷使することが多い方
手根管症候群の治療の1つには「安静」があります。手根管症候群の原因はいくつかありますが、手の使いすぎの可能性もあります。できる限り症状のある手は休めましょう。
仕事などで、どうしても手を使わなければならない人や、朝起きたときに症状が強い人は寝ている間に手根管症候群を悪化させる格好になっている可能性があるので、その場合は装具(サポーターやスプリントとも呼びます)を装着するのも良いでしょう。
装具の一部は自分で購入できますが、合わないものを使ったり、使い方が違ったりするとかえって病状を悪化させる可能性があるので、整形外科を受診して手に入れることをおすすめします。
💡 場合によっては、装具の費用の一部が療養費としてあとから返還される制度を利用することもできます。
参考 厚生労働省「療養費の支給対象となる既製品の治療用装具について」の一部改正について
手を握りしめることが多い方
握りこぶしを作るのはもちろん、柄の細い道具は手首の負担になるので、包丁やフライパンなどは柄の太いものにし、フライパンを持ち上げるときなどはできれば両手で行いましょう。
また、手指や指などの小さな関節よりも、肘や肩などの大きな関節を使った方が手首への負担が減ります。たとえば買い物をするときは買い物カゴを手で持たず、肘にかけることで手首を守れるでしょう。重い荷物の場合は、無理せずカートを利用することもおすすめです。買い物袋は手で持たず、両肩にかけるリュックサックなどを使うことでも、手への負担を減らせます。
パソコンのキーボードを打つことが多い方
手首をまっすぐにするために、専用のパームレストを使ったり、手首の下にたたんだタオルを敷いて手首の位置を整えます。
また、長い時間キーボードを打ったりマウスを操作したりしても、手首の負担は増えます。さらに長時間のパソコンの使用は、首や腰、目の疲れにも影響を及ぼすでしょう。仕事などでパソコンを使うことが多い場合は、継続的な作業はなるべく避け、定期的に休憩をはさむように心がけてください。
手をねじることが多い方
雑巾を絞る動作などは手首に負担がかかります。どうしても絞る動作が必要なときは、タオルを半分の長さにして輪になった部分を丈夫な水道などにひっかけ、両手もしくは症状がない方の手で絞りましょう。
手をねじる動作は日常生活の中でも予想以上に多いです。手をねじる動作にはペットボトルの蓋を開けたり、蛇口をひねったり、ドアノブをまわしたりするなどの場面もあげられます。
ペットボトルオープナーや、丸型ドアノブをレバー式に変える補助具などを使用して手首を守る工夫を施すのも一つの手です。
ストレッチやマッサージをするか迷った場合
手根管症候群でストレッチやマッサージを行うか迷った場合は、医師に相談しましょう。
医師の診断を受けず、自己判断でストレッチやマッサージを行うと、症状を悪化させる可能性もあります。
リハビリ専門職がいる病院やクリニックなら、医師からの許可を得て理学療法士や作業療法士などのリハビリスタッフに適切な運動方法を指導してもらうのがおすすめです。
医師や専門の医療スタッフから正しい方法を教わり、自身での施術に役立ててください。
痛み止めの薬を使うか迷った場合
手根管症候群は痛みが出やすい病気です。痛み止めの薬を使用するか迷った場合、速やかに医師の診察を受けましょう。
自己判断で市販の痛み止めを使用し痛みが治ったとしても、根本的な治療が行われていなければ一時的な痛みの軽減にしかなりません。症状の悪化を防ぐためにも、医師から適切な薬を処方してもらいましょう。
症状が続くのに放置している場合
手根管症候群は続くと正中神経や母指球筋が元に戻らなくなる可能性があります。自分でできる限りのことを行っても症状が続く場合は、整形外科で早めに診てもらいましょう。
手根管症候群が疑われるときに受診する科と検査内容
手根管症候群の可能性がある場合、受診するのは整形外科です。
基本的には正中神経を圧迫するような状態を再現して症状が現れるか、親指の付け根の筋肉が痩せていないか等を確認することで、ほとんど診断は可能です。
ただし、手首にコブができた可能性がある場合はエコーやMRI検査を追加したり、診断に迷うときには正中神経に電気を流して障害の具合を調べる筋電図検査などを追加する場合があります。また、手根管症候群の原因としてほかの病気が隠れている可能性がある場合は、血液検査などを追加することもあります。
【重症度別】手根管症候群と診断された場合の治療の流れ
手根管症候群は痛みやしびれ、筋肉の状態など症状の程度によって治療法が異なります。軽度の手根管症候群の場合には以下のような治療で経過をみます。
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手根管の炎症が強い場合には手首に炎症を抑えるステロイドなどの注射を行うこともあるでしょう。
これらの治療で改善しない場合や手根管周辺に腫瘤がある場合、また母指球筋がやせている場合には手術療法が必要になることもあります。カメラを用いた鏡視下手根管開放術や直視下手根管開放術など、できるだけ傷が小さく、早く日常生活に戻れるように手術も進歩しています。
まとめ|手根管症候群が疑われるなら一度ご相談ください
指のしびれや痛み、物をよく落とすようになったら、手根管症候群の可能性があります。早い段階では手術なしで治療できるので、手根管症候群の可能性があれば、すぐに整形外科で診てもらいましょう。
仕事などで手を酷使する人は、とくに我慢して使い続けると親指の力がなくなり手術が必要になったり、親指の力が戻らない場合もあります。手首に負担のかかる動作はできるだけ避け、どうしてもそのような動作が避けられない場合は病院で装具などについて相談しましょう。
以上、「手根管症候群が疑われるときにやってはいけないこと」について紹介しました。参考になれば幸いです。