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血友病性関節症とは?症状、治療、そして日常生活での対策

血友病は、一生付き合っていかなければいけない疾患です。

しかし、出血のリスクがあっても、しっかりコントロールできていれば、血友病ではない方と同じような生活を送ることも可能です。適切な治療と予防策で、関節の機能を維持し、生活の質を向上させることができます。

ところが、血友病性関節症を発症してしまうと、痛みや腫れをともない、日常生活にも影響を及ぼします。

今回の記事では、血友病性関節症の基礎知識や症状、治療などについて詳しく解説します。生活の中でできる対策も紹介しますので、血友病性関節症に対し不安を抱いている方は、ぜひ、最後までお読みください。血友病性関節症の知識を深めて、不安や心配事が少ない生活を送りましょう。

血友病性関節症

血友病性関節症とは?

血友病性関節症とは、血友病患者が関節内で出血を繰り返し起こした場合に発症します。血友病の特徴的な合併症です。ここでは、血友病性関節症の症状や診断、疾患が関節に与える影響について解説します。

症状と診断

関節内出血を起こすと、以下のような症状があらわれます。

  • ・関節の痛み
  • ・腫れ
  • ・熱感
  • ・こわばり
  • ・違和感
  • ・動きの悪さ
  • ・重い感じ

関節内は狭いため、少しの出血でも症状があらわれる場合が多いです。血友病性関節症の診断は、関節の状態を検査し評価して診断します。血友病性関節症を疑う場合、以下のような4つの検査をおこないます。

  • ・触診
  • ・レントゲン検査
  • ・MRI検査
  • ・超音波(エコー)検査

触診では、関節の可動域や変形を確認します。レントゲン検査では、骨の状況は評価できますが、出血の状況までは把握できません。レントゲン検査で、明らかな所見があらわれる頃には、骨破壊が進んでいる状況と考えられます。MRI検査は、骨だけでなく軟骨やじん帯、滑膜の肥厚など、関節内部を詳しく評価できます。

ただし、MRI検査は撮影に30分ほど時間がかかります。その間、静止していなければならないため、小さな子どもには難しい検査といえるでしょう。エコー検査では、パワードップラー法を用いると、血液の観察をおこない滑膜炎の評価も可能です。これら4つの検査を組み合わせて、関節の状態を評価し診断します。

疾患が関節に与える影響

血友病は、出血を起こしやすい病気です。出血を起こしやすい部位として最も多い関節が、足関節だとされています。

次いで、肘関節、膝関節が出血頻度が高い傾向です。関節内に出血を起こすと、滑膜が働いて、関節内に溜まった血液を取り除こうとします。

しかし、出血が繰り返されると滑膜の働きが追いつかなくなり、滑膜の増殖と炎症を引き起こします。増殖した滑膜は、脆弱で細い血管が多いために出血しやすい状態です。出血を繰り返すと、滑膜の増殖や炎症も繰り返し生じます。

その結果、関節の軟骨を攻撃し、軟骨の破壊や骨の変形を引き起こすのです。

血友病性関節症の治療

血友病の長期的な治療目標として、血友病性関節症を発症しない、進行させないを目標として治療方針を決めていきます。

現在の治療オプション

現在、血友病性関節症の治療の選択肢は、以下の通りです。

  • ・定期補充療法
  • ・予備的補充療法
  • ・出血時補充療法(オンデマンド療法)

基本的にこの3つの治療方法を組み合わせ、状況によって使い分けます。

<定期補充療法>

定期的に血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血予防のため、「週に2回」や「5日に1回」など、決められたタイミングで注射をおこないます。使用する製剤の種類や血友病の重症度で注射のタイミングは医師が判断します。

医師の指示通り、忘れず注射しましょう。

<予備的補充療法>

足に負担がかかる予定の前に事前に血液凝固因子製剤を投与しておく方法です。スポーツや出張、遠足、旅行などが予定されている場合、事前に注射をおこないます。血液凝固因子製剤は、効果が持続する時間が短くて12時間程度です。

そのため、予定があるその日の朝に注射しておくとよいでしょう。

<出血時補充療法(オンデマンド療法)>

出血したときに血液凝固因子製剤を投与する方法です。出血時には、できるだけ早く血液凝固因子製剤を投与します。

また、出血の応急処置時に必要な4つの処置(RICE)をおこないましょう。RICEとは、処置方法の頭文字を取ったものです。ここでは、関節内出血をした場合の処置のポイントについて紹介します。

頭文字 処置方法 処置のポイント
R (Rest) 安静 • 横になり、出血した部位を動かさないようにし安静にする。
I(Ice) 冷却 • 氷のうで20~30分持続的に出血部位を冷やす。
• 消炎作用がある湿布や冷却シートでもよい。
• 冷やし過ぎに注意する。
C (Compressi on) 圧迫 • 関節内の出血の場合、包帯やサポーターを使用し固定する。
E(Elevation) 挙上 • 出血部位を心臓より高い位置まで上げる。

関節内出血の治療以外に、直接関節内にヒアルロン酸やステロイドを注入する方法もあります。

しかし、感染や出血のリスクをともなうため、メリットが上回る場合のみおこなわれる方法です。

新しい治療法と臨床試験

血友病性関節症の新しい治療法として、「自己骨髄間葉系幹細胞輸注術」と呼ばれる治療法の研究や臨床試験が進められています。この治療で使用される「間葉系幹細胞」とは、骨や血管、心臓の筋肉などに分化することができる幹細胞です。

移植までは以下のような流れでおこなわれます。

  1. 事前に採血をおこない血清を準備
  2. 骨盤から間葉系幹細胞が含まれる骨髄液を採取
  3. 間葉系幹細胞を培養
  4. 移植前日に、関節内の滑膜組織を切除し移植環境を整える
  5. 間葉系幹細胞が多く含まれている血清を関節内に注入

関節内へ移植をした間葉系幹細胞が、関節軟骨への再生が期待されています。現在は膝関節での臨床試験がおこなわれていますが、今後はその他の関節や適応できる年齢を広げて研究が進められています。

関節保護のための戦略

血友病性関節症は、関節内の出血を繰り返し、関節の骨や軟骨を破壊します。

そのため、破壊され続けると、血友病患者は将来的に人工関節を入れる可能性が高くなります。人工関節は10年~15年で入れ替えが必要です。

早い段階で人工関節を入れると、その後に何度か入れ替えの手術が必要になります。人工関節を入れるまでの期間を延ばせれば、手術回数も少なくなります。そのため、日常の中でできる関節の保護や関節の健康を保つ運動、予防策など、関節のケアが重要です。

日常活動での関節保護テクニック

日常活動の中で、出血を起こさないために関節保護はとても大切です。関節保護には以下のようなポイントがあります。

  • ・血液凝固因子製剤の投与
  • ・定期健診
  • ・出血後の対応
  • ・適度な運動

患者の状態や生活スタイルを考慮して、血液凝固因子製剤の投与量や間隔を決めていきます。

そのためには、定期的に検査をおこない、関節の評価も必要なため、定期検診は欠かさず行きましょう。また、関節の保護には出血後の対応や管理も重要です。出血があった場合や出血した可能性がある場合には、血液凝固因子製剤を投与し、RICE処置をおこないます。

しかし、出血が治まり痛みや腫れなどの症状が消失すれば、適度な運動をして筋力をつけていくことも大切です。

関節の健康を保つ運動と予防策

関節の健康を保つためには、適度な運動が必要です。血友病患者は、「出血したらどうしよう」と不安な気持ちを抱えています。

しかし、出血を起こさないようにと安静にばかりしていると、筋力が衰え、筋肉の委縮を引き起こします。また、そのように筋肉が健康な発達をしていない関節は出血しやすい傾向です。

出血や症状が治まっているときには、出血の予防策を十分にしてから適度な負荷をかけ、運動をおこないましょう。出血予防は、血液凝固因子製剤の予備的補充投与をしてから運動をします。

運動は内容によっては、出血リスクが高いものがあります。水泳やアクアビクス、サイクリング、筋トレなどは、比較的負荷が少なく出血リスクが少ない傾向です。

しかし、ラグビーやレスリング、ボクシングなどは負荷が高く、出血リスクも高くなります。サッカーや野球、バスケットボールなどのスポーツは、運動強度に幅があるため、自己判断は難しいでしょう。

また、負荷が少なく出血リスクが少ない運動でも、血友病の重症度や関節の可動域、出血コントロールの状況など、人によりさまざまです。そのため、運動を始める際には、必ず整形外科医や理学療法士と、どの程度の運動から取り組むか相談してからおこないましょう。

生活の質を向上させるための日常生活での調整

血友病性関節症では、出血の予防だけでなく、食事やストレスなどさまざまな面でも調整が必要です。どのようなことに注意や意識をして生活をするか、生活の質を向上させるポイントを紹介します。

食生活と栄養

食事は、規則正しく栄養バランスを考えた食事をするよう心がけましょう。肥満は、関節や骨に大きな負担をかけます。

適切な体重を維持するよう、食べ過ぎに注意し、適度な運動を取り入れましょう。急なダイエットも関節には負担がかかるため、体重のコントロールについて、主治医と相談すると安心です。また、血友病患者は骨粗しょう症になる傾向があります。カルシウムやビタミンDの摂取、日光浴をおこない、骨粗しょう症の予防をしましょう。

ストレス管理と精神的健康のサポート

血友病性関節症の患者は、日常生活の中でも気を付けることや制限があり、ストレスを感じる場面が多いでしょう。一般的に、ストレスが溜まっているサインは以下のような症状があらわれます。

  • ・イライラしやすく怒りっぽくなる
  • ・食欲がなくなる
  • ・気分が落ち込みやる気が起きない
  • ・寝つきが悪くなり夜間に目が覚める

ストレスをうまく発散し、ため込まないことがポイントです。ストレスによる症状がある場合、まずは、主治医に相談してみましょう。必要であれば、心療内科やカウンセリングを受け、精神的に安定して過ごすことが大切です。血友病患者には、血友病患者にしかわからない悩みや不安もあります。ほかの血友病患者との繋がりをもってみると、悩みが共有でき不安が解消できるかもしれません。

患者と家族への支援

血友病患者には血友病患者にしかわからない、悩みや不安があるでしょう。家族もまた同じです。そのような方々の集まりに参加してみてはどうでしょうか。さまざまな年齢の血友病患者とのコミュニケーションは、悩みや不安が共有でき、有意義な情報交換の場となるでしょう。

コミュニティリソースとサポートグループ

血友病患者が利用できる、コミュニティリソースやサポートグループは、以下のようなものがあります。

  • 血友病友の会(ヘモフィリア友の会)
  • 世界血友病連盟(WFH)
  • 血友病患者のためのオープンチャット

さまざまなコミュニティリソースやサポートグループがあります。血友病友の会(ヘモフィリア友の会)は、加盟する患者会が全国にあります。また、世界血友病連盟は、世界の血友病患者のコミュニティです。

海外在住の方には、心強い情報源となるでしょう。血友病患者のためのオープンチャットもあります。匿名で参加できるため、身近な人にできない相談事も気軽にできるところが利点です。

ただし、オープンチャットは誰でも参加できるものなので、情報の信憑性には注意が必要です。

長期的な健康管理の重要性

血友病は、長く付き合っていく病気であり、血友病性関節症はその後の生活の質(QOL)を大きく左右します。そのため、長期的な健康管理が非常に重要です。

無理をしたり、出血の管理をおろそかにすれば、関節内の出血が繰り返され、人工関節をいれなければならなくなります。人工関節の入れ替えをする回数を減らすためにも、人工関節にするのはできるだけ遅い方がいいでしょう。

また、出血を恐れ、安静にばかりしていても、骨や筋肉が衰えていきます。肥満になれば、関節への負担も大きくなります。出血しないよう血液凝固因子製剤の投与を忘れずにおこない、負荷が高くなる予定があれば、予備投与しておくなど対策が大切です。

長期的に健康管理をおこなうことで、血友病性関節症の発症を遅らせたり、発症しても進行させないようにしたりできるでしょう。

結論

血友病性関節症は、血友病患者にとっては身近であり心配な合併症です。しかし、血液凝固因子製剤の投与や出血時の適切な対応をおこなえば、骨破壊を抑え、血友病性関節症の発症や進行を遅らせることができるでしょう。

血友病性関節症は、適切な治療と予防策をおこなえば関節の機能を維持して、生活の質を向上させることが可能です。普段との違いや関節の違和感などがある場合は、早めに受診しておくと安心です。なにかあれば、まずは主治医に相談しましょう。

監修:医師 渡久地 政尚

参考文献一覧

血友病性関節症診療のポイント-病態から治療・ケアまで

血友病ハンドブック 血友病性関節症を防ぐ5つのポイント

血友病性関節症への挑戦 関節の検査と評価の最新情報

血友病性関節症に対する自己間葉系細胞移植治療の開発

血友病患者における運動とスポーツ

患者中心医療の可能性:患者会の現在と将来

 

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