脊髄出血の後遺症やその治療法、予後について解説
脊髄そのものやその周りで出血を「脊髄出血」と呼び、麻痺やしびれなどを引き起こします。
急性期には外科的手術や血管内治療を行うことが多いですが、場合によっては保存的治療が選択されます。
今までは後遺症に対してリハビリテーションなどの対応療法のみでしたが、現在では再生医療も選択可能となり、根治的治療として注目を浴びています。
今回は脊髄出血を引き起こした際にみられる後遺症やその治療法、予後はどうなのか、また術後後遺症が残った場合の治療法「再生医療」についても解説していきます。
脊髄出血の原因や症状については以下の記事で解説しています。
目次
脊髄出血でみられる後遺症
脳から腰に向かって背骨の中を走る太い神経を脊髄と呼びます。脊髄そのものやその周辺に出血をきたすのが、脊髄出血です。
脊髄の圧迫やダメージによって、多くの場合、背部の痛みや麻痺、しびれなどをきたします。
障害部位(頸髄や胸髄、腰髄、仙髄、馬尾)や出血部位(脊髄内やくも膜下、硬膜下、硬膜外)、脊髄へのダメージ具合(部分的か全体的なダメージか)によって症状が異なってきます。
脊髄へのダメージが少ないうちに治療を行うことができれば後遺症を回避、もしくは軽度で済むでしょう。
しかし、治療が遅れてしまった場合や神経へのダメージが大きくなった場合、後遺症を免れることは難しいです。
実際には脳梗塞や脳卒中と似たような症状を呈することもあり、それらに対する治療の後に脊髄出血が判明したという症例も見受けられます。
代表的な後遺症を以下に一覧として示します。
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脊髄出血の治療法について
脊髄出血の治療ですが、出血部位や症状出現からの時間経過、脊髄損傷の程度、出血原因などによって変わってきます。
積極的治療を行う場合、外科的手術や血管内治療が選択されます。
外科的手術では、椎弓切除や血腫除去による除圧術、出血点がわかる場合には止血術を行うこととなります。
以下では、脊髄出血の治療に関して気になる質問に回答しています。
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現代の医療技術の発展によってMRI検査などの画像処理能力が上がり、積極的治療を行わずに保存療法のみで脊髄出血が改善した症例も見受けられています。薬物治療には効果はなく、放射線治療も治療成績が良くないので、残念ながらこれらは有用な治療法となりません。
初期治療を行なっても残存した症状に対しては、リハビリテーションを行いながら症状改善を目指します。
以前までは根本的治療がないと言われていましたが、近年は再生医療がより身近になり、注目を集めています。リハビリテーションと再生医療については、以下で詳しく説明していきます。
脊髄出血に対するリハビリテーション
リハビリテーションとは、病気や怪我の後に社会復帰を目指して行う訓練の総称です。
病気や怪我以前の生活水準を目指し、日常生活を見据えた身体的訓練のほか、不安や無力感といった精神的な障害には心理的訓練、さらに必要に応じて職業訓練も行われます。
リハビリテーションに携わるスタッフは、医師や看護師に加えて、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士などのスペシャリストとなります。
病院で行われることもあれば、リハビリ専門施設で行うこともあります。
脊椎出血の急性期リハビリ
怪我や病気を患った直後の急性期は、まず全身状態を落ち着かせ、損傷や障害を最低限に抑えるためのリハビリテーションが必要となります。
具体的には、
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などを実施します。
全身状態が安定後のリハビリ
全身状態が落ち着いた後は、個々の症状に合わせて積極的にリハビリテーションを進めていくことが重要です。
脊髄出血によって脊髄が大きなダメージを受けてしまった場合は、神経障害などを完全に取り除くことは難しく、後遺症が残ることが多いでしょう。
そこで早期からのリハビリテーションを通じて、残存能力の強化を行い、それに必要な筋力や柔軟性を身につけていくこととなります。
具体的な例として、
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などが行われ、合併症を引き起こすことなく自分で尿路管理を行えるよう目指します。
脊髄出血の予後
脊髄出血は稀な疾患であるため情報が少なく、死亡率や予後についての言及は難しいのですが、一般的には症状の発現から除圧までの時間が短ければ短いほど神経回復は良好です。
しかし、どこから出血したかや出血の原因、年齢によっても予後は変わってくるとされています。
脊髄硬膜下血腫に対して手術を実施した59症例を検討したある報告では、術前の状態が重篤なものほど回復が不良で、くも膜下出血(軟膜とくも膜の間の出血)を伴うものは術前状態が悪くて除圧後の臨床成績も悪かったとされています。
脊髄硬膜外血腫を1000例以上の報告を検討した論文では、69症例に対する死亡率の検討がなされました。
その結果、40歳以上と40歳未満の患者群それぞれの死亡率は9%と4%とされ、治療法に関係なく40歳以上では死亡率が有意に高くなると報告されました。
同じ報告で患者さんの長期フォローアップの結果をまとめたところ、初めの症状が軽度であった患者群では8.5%が軽度の障害を示すのみであったのに対し、初めの症状が重篤だった患者群では症状の改善を認めたのは78.4%に止まり、また軽度の障害を示したのは28.3%でした。
脊髄出血の術後後遺症に対する再生医療とは
再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した最先端医療です。脊髄損傷の手術後に残ってしまったしびれ、麻痺といった後遺症に対する治療として、「幹細胞治療」が適応になる可能性があります。
当院で行う再生医療は“自己脂肪由来幹細胞治療”は、患者さんから採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応がなく、安全な治療法といえます。
ちなみに「幹細胞」とは、さまざまな姿に変化できる細胞で、失われた細胞を再度生み出して補充する機能を持つ細胞のことをいいます。
日本での一般的な幹細胞治療は、点滴によって血液中に幹細胞を注入するものです。しかし、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまいます。
そこで当院では、損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する“脊髄腔内ダイレクト注入療法”を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与するため、数多くの幹細胞を目的の神経部位まで直接届かせることが可能です。
この治療は数分のみで簡単な処置で、入院も不要です。点滴治療と組み合わせることによって、より大きな効果を期待できます。
実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症による神経損傷に由来する麻痺やしびれ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施し、症状が大きく改善した例を経験しています。
▼詳しくは当院の“脊髄損傷の再生医療”に関する動画もご覧ください。
まとめ・脊髄出血の後遺症やその治療法、予後について
脊髄出血を生じた場合、急性期治療としてまず外科的手術や血管内治療を行い、止血や血腫による脊髄圧迫を除圧する必要があります。
どのレベルの脊髄が障害されているか、どの層での出血なのか、そして出血原因が何かによって治療方法が選択され、場合によっては保存療法が選択されることもあります。
後遺症には運動障害や感覚障害、排尿・排便障害などがあり、早期のリハビリテーションによる残存能力の強化や合併症予防のための訓練が大切となります。
多大なダメージを受けてしまった神経を元に戻す治療がなかった中で、近年になって再生医療が多くの人に提供可能となり、根本的治療として注目されています。
実際に当院でも脊髄損傷患者が再生治療を受け、症状が改善した症例が確認できています。
当院では入院不要で外来のみで再生医療を受けることができますので、気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。