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痛風の治療法|発作時の対処法から再発予防まで詳しく解説【医師監修】

「痛風の激痛に襲われて、どんな治療を受ければいいのか不安」「薬は一生飲み続けないといけないの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
痛風の治療は、急性期の発作を抑える治療と、慢性期の再発予防という二段階のアプローチで行われます。
適切な薬物療法と生活習慣改善を組み合わせることで、痛風発作のない快適な生活を送れるようになります。
本記事では、痛風治療の基本的な考え方から具体的な治療法、使用される薬剤の詳細、治療期間の目安まで詳しく解説します。
なお、当院「リペアセルクリニック」では、無料電話相談を実施しております。痛風について痛みやお悩みがある方は、ぜひ一度当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。
目次
痛風治療の基本的な考え方と目標
痛風治療は「急性期治療」と「慢性期治療」の二段階で構成されており、それぞれ異なる目的と治療方法があります。
急性期治療では、痛風発作による激しい関節の炎症を速やかに鎮静化することを優先していますが、選択肢としては低用量コルヒチン、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、副腎皮質ステロイドの経口投与の中から選ばれます。
治療法を選択する判断基準は、患者様の腎機能や消化性潰瘍歴、併用薬などです。
一方、慢性期治療では高尿酸血症の根本的な改善を目指し、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持して痛風の再発を防ぐのが目的となります。(文献1)
さらに、痛風には腎障害、尿路結石、高血圧、糖尿病などの合併症が伴いやすいため、これらへの対応も治療計画に含めるのが基本的な考えです。
治療の最終目標は、単に痛みを取り除くだけでなく、尿酸値を適正にコントロールして合併症を予防することです。健康的な日常生活を取り戻すことを第一に考えて治療計画を立てます。
急性期治療|痛風発作時の対処法
痛風発作時の治療では、急激に尿酸値を下げる薬を服用すると発作が悪化してしまいます。
そのため、急性期は炎症や痛みを抑えることが重要です。
治療においてはまずNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を選択し、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシンなどが症状の程度や患者様の状況に応じて選択されます。
薬の名称 | 特徴 |
---|---|
ロキソプロフェン |
|
ジクロフェナク |
|
インドメタシン | |
コルヒチン |
|
NSAIDs使用時には、胃腸障害や腎機能への影響に注意が必要で、とくに高齢者や腎機能低下のある患者様では慎重な投与が求められます。(文献7)
コルヒチンは発作の初期段階で使用すると高い効果を発揮しますが、発作が本格化してからは効果が限定的になるため、投与のタイミングは慎重な判断が必要です。
副腎皮質ステロイド薬は、NSAIDsやコルヒチンが使用できない場合の代替選択肢として用いられ、腎機能障害や消化性潰瘍の既往がある患者様に適用されます。
慢性期治療|高尿酸血症の治療と再発予防
慢性期治療の目的は、血清尿酸値を目標値である6.0mg/dL以下に維持し、痛風発作の再発を防ぐことです。(文献1)
治療には主に尿酸降下薬が使用され、患者様の病型(尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型)に応じて薬剤を選択します。
【尿酸産生阻害薬】
•アロプリノール:古くから使用されている標準的な薬剤。
•フェブキソスタット:アロプリノールより強力で、腎機能低下例にも使用可能。
【尿酸排泄促進薬】
•ベンズブロマロン:尿酸の腎排泄を促進。有効性が高い一方、重篤な肝障害リスクが知られており、定期的な肝機能検査が必要。
•プロベネシド:尿酸排泄を促進しますが、現在は使用頻度が比較的少ない薬剤。
フェブキソスタットは、アロプリノールと比較して尿酸降下効果が高く、腎機能低下患者でも使用できることが臨床試験で確認されています。(文献3)
治療開始時は低用量から開始し、血清尿酸値をモニタリングしながら段階的に増量していきます。
ただし、急激に尿酸値を下げすぎると、かえって痛風発作を起こすことがあるため、慎重な調整が重要となります。
さらに、尿酸降下薬の開始初期は発作が起こりやすいため、低用量コルヒチンなどの予防投与を3〜6カ月行うことが推奨されます。(文献1)
高尿酸値がもたらすリスクについては、以下の記事も参考にしてください。
痛風の併発症・合併症への対策
痛風はメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病などを合併しやすいことが知られています。各疾患との関連は強く、相互に悪循環を形成するため、総合的な管理が必要です。
慢性腎臓病も重要な合併症の一つで、高尿酸血症が腎機能低下を促進し、腎機能低下がさらに尿酸値を上昇させる悪循環を形成してしまいます。
これらの合併症に対しては、痛風治療と並行して包括的な管理が必要で、各専門科との連携による治療が推奨されます。(文献4)(文献5)
痛風治療で使用される薬剤の詳細と選び方
痛風治療薬の選択は、患者様の病期、病型、腎機能、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。
【急性期治療薬の選択基準】
・NSAIDs:第一選択薬として広く使用
・コルヒチン:NSAIDs禁忌例や併用時に選択
・ステロイド:NSAIDs、コルヒチン両方が使用困難な場合
【慢性期治療薬の選択基準】
・尿酸産生過剰型:アロプリノール、フェブキソスタット
・尿酸排泄低下型:ベンズブロマロン、プロベネシド
・混合型:病態に応じて組み合わせ使用
フェブキソスタットは、アロプリノールと比較して尿酸降下効果が高い一方、心血管安全性については相反する報告があるため、心疾患の既往がある患者様には適応の判断は慎重に行います。(文献3)
薬剤の副作用モニタリングも重要で、肝機能、腎機能、血球数の確認を定期的な血液検査で確認します。
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痛風治療の期間と効果|いつから改善が実感できるか
痛風治療の効果実感時期は、急性期治療と慢性期治療で大きく異なります。
急性期治療(痛風発作)の治療期間
急性期治療では、適切な薬物療法により発症から24〜48時間の段階で痛みの軽減がみられます。
NSAIDsは投与後まもなく鎮痛効果があらわれ、数日以内に炎症が落ち着く例が多いとされます。
症状が軽快になる目安は概ね1週間前後で、経過により長引く場合もあります。回復期も患部の安静と薬物療法の継続が重要です。
慢性期治療(再発予防)の治療期間
慢性期の治療では、尿酸値を6.0mg/dL以下に保つことを目標に、薬の量を少しずつ調整します。
調整のタイミングや観察の間隔は人によって異なり、数週間から数カ月ごとに確認するのが一般的です。
尿酸を下げる薬の効果は、飲み始めてからの血液検査で少しずつあらわれます。
効果が出るまでの速さには個人差があるため、治療をはじめたばかりの時は発作を防ぐために少量のコルヒチンなどを併用し、定期的に診察や検査を受けることが大切です。
再発をどのくらい防げるかは目安はありますが、断言はできない難しいため、目標値6.0mg/dL以下を安定して保てれば発作は減りやすいと考えておきましょう。(文献1)
痛風治療と併用すべき生活習慣改善
薬物療法と並行した生活習慣改善は、治療効果を高め、薬剤の減量や中止につながる可能性があります。
- 食事療法
- 運動療法
さまざまな治療法がありますが、できることから一つずつ実施していきましょう。
また、以下の記事には痛風の対策についてもまとめておりますので、気になる方はぜひご確認ください。
食事療法
プリン体制限は痛風治療の基本ですが、過度な制限は必要ありません。
目安としては、1日のプリン体摂取量を400mg以下推奨とされています。(文献1)
高プリン体食品(100gあたり200mg以上)
- 鶏レバー、豚レバー、牛レバー
- 白子(精巣)
- あん肝
- イワシ、カツオ
- 干し椎茸
中プリン体食品(100gあたり50-200mg)
- 豚肉、牛肉、鶏肉
- アジ、サンマ、イカ
- ほうれん草、カリフラワー
(文献6)
データに基づいた食事指導により、適切な食品を選ぶことで痛風を再発予防できます。
アルコール制限も重要で、とくにビールはプリン体含量が高いため注意が必要です。
日本酒、焼酎、ウイスキーは比較的プリン体含量が少ないものの、アルコール自体が尿酸値を上昇させるため注意が必要です。
食事療法について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
運動療法
高尿酸血症の改善には、適度な有酸素運動が効果的です。
ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどを週3〜5回、1回30分程度行うことが推奨されます(文献1)。
運動強度は「軽く汗ばむ程度」を目安とし、息が上がるほどの激しい運動は逆に尿酸値を上昇させるため避けましょう。
続けるコツは、無理のない範囲から始めることです。まずは週2〜3回、15分程度のウォーキングから開始し、徐々に時間と頻度を増やしていきます。
運動前後のストレッチも忘れずに行い、怪我の予防に努めてください。
腎臓や心臓の状態に合わせて、1日2〜3リットルの水分をとることも大切です。尿酸の排泄を促し、尿路結石の予防にも役立ちます。ただし、心疾患や腎疾患がある場合は水分制限が必要な場合があるため、医師に相談してください。
体重の管理も欠かせません。BMI25未満を保つことを目標にし、BMI25以上の方も急に体重を落とすのではなく1カ月に1〜2kg程度のゆるやかな減量を意識しましょう。
さらに、ストレスをためない・十分に眠る・禁煙するといった生活習慣の見直しも全身の健康に良い影響を与えます。
運動療法の詳細については、以下の記事もご参照ください。
生活習慣の改善ポイント
痛風や高尿酸血症の改善には、薬物療法と併せて日常生活での取り組みが重要です。以下の表に、実践すべきポイントをまとめました。
改善点 | ポイント |
---|---|
水分摂取 | 1日2〜3リットルを目安に摂取し、尿酸の排泄を促進する |
体重管理 | BMI25未満を維持し、月1〜2kgの緩やかな減量を心がける |
アルコール制限 | 1日あたり日本酒1合、ビール500ml、ワイン200ml程度を上限とする |
ストレス管理 | 十分な睡眠(7〜8時間)を確保し、ストレス解消法を見つける |
禁煙 | 喫煙は血管に悪影響を与えるため、禁煙を目指す |
これらの生活習慣改善は継続が重要です。無理のない範囲で少しずつ取り組み、医師と相談しながら進めていきましょう。
詳しい生活習慣改善の方法については、以下の記事もご参照ください。
痛風治療はさまざまな療法を組み合わせて行おう
現代の痛風治療は、単一の治療法ではなく、薬物療法、食事療法、運動療法、生活習慣改善を組み合わせた包括的アプローチが推奨されます。
患者様一人ひとりの病態、合併症、生活環境に応じてオーダーメイドの治療計画を立案し、定期的な評価と調整を行います。
治療の成功には、患者様の治療に対する理解や生活習慣改善への取り組みが不可欠で、医師との良好なコミュニケーションも治療を進める上で大切です。また、家族の理解と協力も重要な要素で、とくに食事療法の実践には家族全体での取り組みが欠かせません。
痛風の治療法に関してよくある質問
痛風の薬は一生飲み続ける必要がありますか?
痛風の薬物治療は、多くの場合長期間の継続が必要ですが、必ずしも一生涯ではありません(文献1)。
血清尿酸値が安定して目標値を維持し、生活習慣改善が十分に行われている場合、医師の判断により薬剤の減量や中止が検討されることがあります。
ただし、薬剤中止後も定期的な血液検査による尿酸値のモニタリングは継続する必要があります。
痛風の治療費はどのくらいかかりますか?
治療費は、使う薬や検査の回数によって変わりますが、月に数千円程度、年間では数万円から10万円前後になるのが一般的です。
急性期治療ではNSAIDsやコルヒチンの処方が中心で、月1,000〜3,000円ほどが目安です。
慢性期治療では、尿酸を下げる薬の継続服用が必要になり、月に2,000〜5,000円ほどかかります。
これに加えて、血液検査の費用(1回1,000〜3,000円程度)が月1〜2回かかることがあり、年間では数万円から10万円前後になります。
痛風は完治しますか?
痛風は完治するのが難しい病気ですが、適切な治療により症状を抑えて、普段どおりの生活を送れます。
治療のゴールは「完治」ではなく、血清尿酸値の管理と生活習慣の改善により「症状のない生活を維持し続けること」です。(文献2)
これにより痛風発作の再発を防ぎ、合併症の進行も抑えることができます。
参考文献
(文献1)
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版|日本痛風・核酸代謝学会
(文献2 )
高尿酸血症・痛風の診断と治療|日本内科学会
(文献3 )
Febuxostat compared with allopurinol in patients with hyperuricemia and gout|New England Journal of Medicine
(文献4 )
痛風患者におけるメタボリックシンドローム|日本痛風・核酸代謝学会
(文献5 )
Gout epidemiology and comorbidities|Seminars in Arthritis and Rheumatism
(文献6 )
食品中プリン体含量(mg/100g)|痛風・尿酸財団
(文献7)
Treatment Options for Acute Gout|Federal Practitioner
(文献8)
Taking the stress out of managing gout|Canadian Family Physician
(文献9)
Mechanism of action of colchicine in the treatment of gout|PubMed