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【産後ケア完全マニュアル】恥骨結合炎の原因、症状、治療法

妊娠出産で骨盤がゆるむと、陰毛の生え際あたりにある恥骨に負荷がかかりやすく、恥骨結合炎をおこします。痛みをなんとかしたくても、育児中だとなかなか病院にも行けませんし、妊娠中や授乳中だと薬を飲んでいいか悩みますよね。

この記事では以下をポイントに妊娠出産による恥骨結合炎について解説します。

  • ・妊娠出産でおこる恥骨結合炎の原因
  • ・妊娠・授乳中にできる検査や治療・再発予防
  • ・産後の恥骨結合炎で気を付けること

うまく痛みとつきあえるよう全力でサポートしますので、ぜひ最後までお読みください。

【産後ケア完全マニュアル】恥骨結合炎の原因、症状、治療法

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恥骨結合炎の原因と症状

まずは恥骨結合炎の原因や症状を確認しましょう。

原因や症状を知ることで、なぜ痛いのか・どういうときに痛むのか・どんな動作で痛みが増すか分かります。

  • 原因:①妊娠出産で体が変化するため

  • 原因:②出産時に圧迫されるため

  • 症状:①恥骨や股関節の痛み

  • 症状:②思ったように歩けない

1つずつ解説します。

原因:①妊娠出産で体が変化する

妊娠中はエストロゲンとリラキシンというホルモンが、妊娠の維持や出産の準備のため分泌され骨盤がゆるみます。

恥骨は左右それぞれから身体の正中(もしくは中心)に向き合い、陰毛の生えぎわあたりで軟骨と結合しており、これを恥骨結合といいます。骨盤がひらくとこの恥骨結合に負荷がかかりやすくなり、痛めてしまうことは珍しくありません。

骨盤が不安定ななかで、子どもを抱っこしたり無理な姿勢で育児したり、痛みを我慢して家事をしていると恥骨結合や恥骨にくっついている筋肉に疲労がたまり、恥骨結合炎となります。

原因:②出産時に圧迫されるため

出産で赤ちゃんの頭や体が産道をとおるときに、恥骨周囲が直接圧迫され、恥骨結合や周囲の筋肉に炎症がおきると恥骨結合炎となります。

症状:①恥骨や股関節が痛む

症状は恥骨の前側の痛みや、股関節の痛み、恥骨に筋肉が付着している内ももの痛みです。

また、歩いたり前かがみになる動作、立ち上がり動作、太ももを閉じるような動作でとくに痛みが増すため、動作に注意しましょう。

症状:②思ったように歩けない

恥骨結合にはお腹や太ももの筋肉がくっつているため、恥骨結合炎で周囲の筋肉も炎症をおこすと、思ったように足が動かせなかったりいつものように歩けないといった症状がでます。

恥骨結合炎の検査や診断

妊娠中や出産後に恥骨結合炎を疑うときの検査についてまとめました。

  • ・検査の方法
  • ・妊娠中・授乳中に検査できるのか

以上の2点を解説します。

恥骨結合炎の検査

恥骨のあたりに痛みがある場合、骨の状態や炎症の具合をみる検査をおこないます。

  • ・レントゲン
  • ・MRI

レントゲンは、かたい骨がうつりやすいため恥骨の状態が分かりやすく、恥骨結合炎の診断によくつかわれます。

MRIはやわらかい組織をうつすのが得意で、骨以外の靭帯や筋肉などの炎症も分かりやすいのが特徴の1つ。時間のかかる検査のため、より精密に検査したい場合におこなわれます。

軽い痛みであればレントゲン撮影で済むでしょう。

妊娠中・授乳中にレントゲン・MRI検査はできる?

レントゲン検査は放射線を照射するため、妊娠中や授乳中に検査してもいいのか不安ではないでしょうか。

レントゲン撮影は放射線被ばく量が少ないため、妊娠中も授乳中も可能です。

少量の放射線は空気中や大地、食物に含まれており、わたしたちは日頃から少量の被ばくをうけています。自然の被ばく量とレントゲンの被ばく量を比較してみましょう。

  空気中から 大地から 宇宙から 食物から レントゲン(胸)
被ばく量 0.48mSv/年 0.33mSv/年 0.3mSv/年 0.99mSv/年 0.06mSv/1回

(参考:環境省

レントゲンの被ばく量の少なさが分かりますね。

帝王切開などの手術の事前検査でレントゲンを撮影したり、身長の低い方・胎児が大きい場合に産道を赤ちゃんが通れるか骨盤計測するためにレントゲンを撮ることもあります。また、放射線は母乳に影響しないため授乳中も検査ができます

安心してレントゲン検査をうけてください。

また、MRI検査は磁気を利用した検査で、通常のMRI検査は胎児に影響しません

ただし、造影剤をもちいるMRI検査は胎児に影響がでる報告があり妊娠中はおこなえません。造影MRIは血管の状態をみるときにおこなう検査で、恥骨結合炎疑いで検査することはまずないため安心してくださいね。

治療法と自宅でできるケア

妊娠中や育児中でもできる治療やケアをご紹介します。妊娠中や授乳中は飲める薬が限られますし、なるべく自力で治せたらいいですよね。病院での治療や自宅で出来るケアをまとめたので、ぜひ参考にしてください。

妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:①薬を飲む

恥骨結合炎の一般的な治療は、投薬や冷却、注射などです。妊娠中や授乳中は痛み止めが飲めないわけではありません。

しかし、種類が限られるため、なるべく受診して医師に処方してもらいましょう。妊娠中や授乳中に飲める痛み止め成分はアセトアミノフェンです。

アセトアミノフェンが主成分の市販薬もありますが、市販薬は他の成分も含まれているためかならず薬局の薬剤師やかかりつけの医師に相談しましょう。

妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:②冷やす

痛みが強い・炎症が強い場合は冷やすのも効果的です。保冷剤などをタオルで巻き、冷やしてみてください

市販の冷湿布は妊娠中・授乳中につかえない成分が含まれているものがあります。湿布の成分は皮膚を通してからだに吸収されるため、おうちにある湿布を安易に貼らないようにしましょう。

湿布を使いたい場合は薬剤師に相談するか、病院を受診して処方してもらいます。

妊娠中・出産後の恥骨結合炎の治し方:③安静にする

なるべく動かずに安静にすることも恥骨結合炎で大事な治療の1つ。

とはいっても、育児中だとなかなか安静にできないですよね。子どもが寝ているときになるべく一緒に寝たり、ネットスーパーを利用しできるだけ家で過ごすなど、痛みが強い場合は無理しないようにしましょう。

自宅でできる恥骨結合炎の治し方:④骨盤ベルト

骨盤ベルトを日頃から使い、骨盤を安定させると痛みの軽減につながります

妊娠中は出産に向けてすこしずつ骨盤がひらき、胎児が大きくなることで恥骨への負担が増えます。出産後も骨盤はすぐ元にもどらないため、ベルトで骨盤を安定させましょう。

骨盤ベルトは産婦人科のある病院や助産院で購入できる場合があるので、恥骨の痛みを感じたらはやめに助産師や医師に相談してください。

市販の骨盤ベルトを選ぶ場合は、「妊娠中から産後までつかえる」と書いてあるなど、妊産婦向けの商品を選んでくださいね。

自宅でできる恥骨結合炎の治し方:⑤ストレッチや散歩

痛みが強い急性期は、痛み止めの内服や冷却をして安静にするのが基本ですが、痛みが慢性化している場合は軽い運動が効果的です。再発予防にもなるため、医師の診察で軽い運動の許可が出たら少しずつおこないましょう。

マタニティヨガや産後ヨガなど痛みの出ない範囲でおこなうといいでしょう。ベビーカーをつかい、お子さんとお散歩するのもおすすめです。

恥骨結合炎:産後の日常生活で気を付けるべき3つのこと

産後の恥骨結合炎は、赤ちゃんの抱っこやお世話・授乳時に無理な姿勢をとりやすく、恥骨結合炎が悪化することも。

出産後、育児中の恥骨結合炎との付き合い方についてまとめました。

気を付けること①赤ちゃんの抱っこ

出産後は赤ちゃんを抱っこすることが多いですよね。

抱っこするときは前かがみの姿勢になりやすいですが、前かがみは恥骨に体重がかかるため負荷がかかります。床など低い位置から赤ちゃんを抱っこするときは、なるべく背筋をのばし、片膝を立てて抱き上げるようにしましょう。

また、抱き上げたあとも、左右どちらかに体重がかからないよう注意し、片方の腰の骨に赤ちゃんを乗せる抱き方もひかえます。

抱っこして歩くときはなるべく骨盤ベルトを使用してくださいね。

気を付けること②授乳などお世話の姿勢

授乳時も前かがみになりやすいため、なるべく前かがみにならないよう床ではなく椅子に座り、授乳クッションをつかいましょう。

オムツ替えやお着換えなどのお世話も前かがみになりやすいですが、オムツ交換台を使用すると腰の負担が減りますよ。オムツ交換台は転落に十分注意しながら使ってみてくださいね。

気を付けること③恥骨結合離開

恥骨結合の痛みで気を付けなくてはいけないのは、恥骨結合離開です。

恥骨結合に炎症が起きるのとは違い、恥骨結合離開では、左右からつながっている恥骨の結合が離れてしまうことで、出産時に恥骨を強く圧迫されることで起こります。

とくに以下の状態であれば注意してください。

  • ・痛みが強い
  • ・歩行が困難
  • ・安静や冷却、骨盤ベルトをしても痛みが改善しない

6週間以上改善がない場合は手術適応と考える医師もいます。

「恥骨結合炎だ」と自分で判断して我慢しているとなかなか完治しないため、痛みが強い場合ははやめに受診しましょう。

恥骨結合炎とうまくつきあって再発を予防しよう!

ここまで、妊娠・出産における恥骨結合炎の原因や検査、ケアや注意点をご紹介しました。

妊娠や出産で骨盤まわりは変化しますが、痛みがでやすいなかでの妊婦生活や育児は大変ですよね。どうしても姿勢がくずれてしまったり、慌ててしまって腰や恥骨に負荷がかかることはよくあります。しかし、お母さんが健康でいることも大切なことです。

痛みがあるときはなるべく安静にし、しっかりケアしてください。また、痛みがひいても姿勢に気を付けたりヨガなどのストレッチや散歩をおこない、再発を予防しましょう。

この記事がご参考になれば幸いです。

 

監修:医師 渡久地 政尚

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