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恥骨結合炎に効くストレッチを医師が解説!簡単なトレーニングも一緒にご紹介
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「恥骨結合炎に効果的なストレッチはある?」「ストレッチで恥骨結合炎の痛みを和らげたいけれど、どこを伸ばせばいいかわ分からない……。」と悩んでいませんか。
恥骨結合炎は、腹筋と内ももの筋肉を伸ばすようにストレッチを行うと症状が楽になる場合があります。また、お尻のトレーニングや水中歩行などの簡単な運動も効果的です。
本記事では、恥骨結合炎の症状を緩和してくれるストレッチを部位別にご紹介します。家でできるものも多いので、恥骨結合炎で悩んでいる方はぜひ最後までチェックして、ご自宅で実践してみてください。
目次
恥骨結合炎では腹筋と内ももの筋肉をストレッチしよう!
恥骨はちょうど下着で隠れるところにあり、陰毛の生え際あたりに触れる骨です。左右に1つずつある恥骨は、真ん中で軟骨をはさむように結合しており、これを恥骨結合といいます。そしてその恥骨結合に起きる炎症が恥骨結合炎です。
腹筋や内転筋はこの恥骨結合についている筋肉なため、筋肉の固さが恥骨結合に悪影響となります。そのため、恥骨結合炎には腹筋や内転筋のストレッチが有効です。
恥骨結合炎の多くは、ランニングなどのスポーツによる腹筋や太ももの内側にある筋肉(内転筋)のオーバーユース(使いすぎ)が原因です。
腹筋や内転筋が恥骨結合に大きな負荷がかかることで発症するため、これらの筋肉を伸ばすように意識してストレッチを行いましょう。
ちなみに、恥骨結合炎の詳細は以下の記事で詳しく解説しています。ストレッチだけでなく恥骨結合炎についてもっと知りたいという方は要チェックです。
恥骨結合炎に効く腹筋のストレッチ2選
腹筋(腹直筋)は恥骨結合についている筋肉であり、骨盤や背骨の動きをコントロールする筋肉です。スポーツをはじめ、あらゆる日常生活動作で力が入る部位であり、腹筋に固さがあると少しの動作でも恥骨に負担がかかります。
この章ではうつ伏せと四つ這いでできる腹筋のストレッチをご紹介します。2つとも自宅で簡単にできるので、ぜひ実践してみてください。
うつ伏せでする腹筋(腹直筋)のストレッチ
1.手のひらをついた状態でうつ伏せになる
2.手で床を押しゆっくり体を起こす
3.体を起こしきったところで30秒ほど深呼吸する
このストレッチのポイントはみぞおちをできるだけ床につけながら体を起こしていくことです。みぞおちを意識せずに思い切り体を起こすと腰を反りすぎてしまい、腰の痛みにつながります。
みぞおちをつけながらゆっくり体を起こしていき、腹部の伸びを感じてください。
四つ這いでする腹筋(腹直筋)のストレッチ
1.四つ這いの姿勢になる
2.両手を肩のまっすぐ下につき、膝を腰幅に開く
3.息を吸いながらお腹をのぞきこむように背中をまるめる
4.息を吐きながらななめ上を見るように背中を反らす
5.呼吸しながら5回ほど繰り返す
このストレッチのポイントは腹筋と背筋に力を入れて動かすことです。肩や脚に力が入ると肩・骨盤の位置が前後に動きやすく、十分に腹直筋が伸びません。
腹筋と背筋にしっかりと力を入れて背骨を大きく動かすことで腹直筋にストレッチがかかりやすくなります。
恥骨結合炎に効く内転筋のストレッチ3選
内転筋は太ももの内側につき、脚を閉じたり立っているときに脚と骨盤を支える働きをする筋肉です。
脚を動かした時に骨盤と脚の支えをコントロールする筋肉であり、とくにランニングやサッカーで強く働きます。
オーバーユースにより内転筋が固くなると恥骨に負担がかかるため、恥骨結合炎の痛みに悩んでいる方は意識的にストレッチを行いましょう。
この章では3つの姿勢で内転筋をストレッチする方法をご紹介します。
内転筋が柔らかくなるとスポーツのパフォーマンスも向上しやすいので、スポーツをする方は必見です。
あぐらでする内転筋のストレッチ
1.あぐらの姿勢から両方の足裏をぴったりとあわせて座る
2.あぐらのままおへそをぐっと引き上げるようにして骨盤を立てる
3.背筋をのばし、ゆっくり前へ倒れる
4.呼吸しながら内転筋を伸ばし、30秒持続する
ポイントは骨盤を立ててしっかりと背筋を伸ばすことです。
内転筋は骨盤が後ろに倒れると縮みやすいため、姿勢を正してストレッチを行いましょう。
また、前に倒れる時に背中が丸くなりやすいため、前に倒す時も骨盤を立てて背筋を伸ばすよう意識して行ってみてください。
開脚でする内転筋のストレッチ
1.床に座って膝を伸ばしたまま開脚する
2.骨盤を立てて背筋を伸ばす
3.背筋を伸ばしたまま骨盤から前に倒れる
4.呼吸をしながら内転筋を伸ばし、30秒持続する
ポイントはストレッチしているときに膝・背筋を伸ばしたままにすることです。膝や背筋が曲がると内転筋のストレッチの効果が弱くなってしまうため、注意しましょう。
また、体を前に倒した時に膝のお皿やつま先が内側を向いていても内転筋の伸びが悪くなります。そのため、膝とつま先を上に向けるよう意識してください。
立ってする内転筋のストレッチ
1.立って脚を大きく開く
2.膝を曲げて四股の姿勢になり、膝の上に両手を乗せる
3.肘を伸ばしたまま伸ばしたい側の肩を内側に入れていく
4.片側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同様に伸ばしていく
肩を内側に入れるときに、膝が内側に向かないようしっかりと手で抑えることが大切です。
肩が内側に入るときに膝も内側に捻られると、内転筋のストレッチが弱くなってしまうため、膝をしっかり手で押さえましょう。
恥骨結合炎には簡単な運動もおすすめ!効果的なトレーニング4選
恥骨結合炎には腹直筋と内転筋のストレッチだけでなく簡単な運動も有効です。とくにおすすめなのは、腹直筋と内転筋をほぐす効果がある以下4つの運動です。
- 横のお尻のトレーニング
- 後ろのお尻のトレーニング
- 水中歩行
- ジョギング
負担がかからない程度の運動によって恥骨結合炎の症状が軽減できるでしょう。
どれも簡単で実践しやすいため、ぜひ毎日の運動として取り入れてみてください。
横のお尻のトレーニング
横のお尻には中臀筋(ちゅうでんきん)という筋肉があります。中臀筋は内転筋とともに、外側と内側から骨盤と脚を支える筋肉です。中臀筋を鍛えることで内転筋の働きを助け、結果的に恥骨結合にかかる負担が軽減されるでしょう。
中臀筋を鍛えるトレーニングは以下のとおりです。
1.肩から脚がまっすぐなるよう横向きに寝る
2.4秒かけて上の脚を斜め後ろに引きながら持ち上げる
3.8秒かけてゆっくり戻す
4.10回繰り返し、反対側の脚も同様におこなう
ポイントは、脚を持ち上げるときにつま先が上を向かないように脚を持ち上げることです。
つま先が上を向くと脚全体が捻られてしまい、中臀筋よりも太ももの前側に力が入ってしまいます。中臀筋にしっかりと力を入れるためにも、つま先が上を向かない意識を持ってください。
後ろのお尻のトレーニング
後ろのお尻には大臀筋(だいでんきん)という筋肉があります。大臀筋は恥骨結合に直接付着してはいませんが、骨盤と脚の支えに関わる重要な筋肉です。
大臀筋を鍛えることで骨盤と脚が安定し、恥骨結合炎の症状軽減につながります。
大臀筋を鍛えるトレーニングは以下のとおりです。
1.仰向けに寝て膝を90度に曲げる
2.肩・お尻・膝が一直線になるまでお尻を持ち上げる
3.10回ほど繰り返す。
ポイントはお尻を持ち上げたときに肩から膝までが一直線になるように持ち上げることです。
お尻が持ち上がらなかったり、腰を反ったりしてしまうと、大臀筋に力が入らず他の筋肉に頼った動作になるので注意しましょう。
水中歩行
水の中は浮力があり、自分の重さが軽減されるため負荷をかけずに運動できます。
ただし、バタ足は細かいキックを繰り返し恥骨に負担がかかるため、泳ぐのではなく水中歩行をしましょう。
歩くと水圧で全身にほどよく負荷がかかり、さまざまな筋肉をバランスよく鍛えられますし、10分ほどの運動で効果が得られます。慣れたら20分を週2回ほどおこないましょう。距離は10分あたり300m~500mほどが目安ですが、身長や水深によって負荷が変わるため、距離よりも時間を重視して歩いてください。
前歩きや横歩き、後ろ歩きなどさまざまな歩き方ができますが、とくに横歩きは内ももにある内転筋など股関節まわりの筋肉を鍛えられます。
3つの歩き方を組み合わせて、無理なく実践してください。
ジョギング
ジョギングは運動強度が競歩と同レベルで、歩行よりも負荷のある運動かつ、ランニングほどの負担がなく運動療法として最適です。
ランニングよりも小幅で、息切れせず隣の人と話せるくらいのスピードで走ります。はじめは歩行とジョギングをくみあわせて10分程度から、すこしずつ歩行を減らしジョギングのみにしていき、時間も増やしていきましょう。
恥骨結合炎でストレッチ・トレーニングが効かなければ整形外科を受診しよう
ここまでご紹介した恥骨結合炎に効果的なストレッチやトレーニングを実施しても痛みが続く場合、早めに整形外科を受診しましょう。
恥骨結合炎の炎症が強い場合は医師の指示にしたがって抗炎症薬などを使い、炎症が落ち着いてからストレッチ・トレーニングを再開してください。
また、婦人科や泌尿器科系の疾患など、恥骨結合炎以外の病気が隠れているケースもあります。適切な治療を受けるためにも、早めに医療機関を受診するようにしましょう。恥骨結合炎を含めた恥骨の痛みについて以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方はぜひ一度ご覧ください。
なお当院リペアセルクリニックでは、恥骨結合炎にも適応可能なPRP療法などの再生療法に取り組んでいます。
恥骨結合炎で傷ついた軟骨組織の再生が可能であり、炎症や痛みの軽減につながる可能性があります。興味がある方は当院のメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。
まとめ|恥骨結合炎には腹筋と内もものストレッチが有効!強い痛みがあれば受診も検討しよう
恥骨結合炎には腹直筋と内転筋のストレッチが有効です。これらの筋肉がオーバーユース(使い過ぎ)で固くなると恥骨結合炎の症状を強めるため、ぜひ習慣的にストレッチでほぐすようにしましょう。
ただしストレッチでも恥骨結合炎の痛みが緩和されないときは、無理せず整形外科で医師の判断を仰いでください。
ちなみに、当院リペアセルクリニックでは、恥骨結合炎の治療にも適用できる再生医療に取り組んでいます。傷ついた軟骨組織の修復も期待できるため、気になる人はぜひメール相談、もしくはオンラインカウンセリングでお問い合わせください。
この記事が少しでもお役に立てれば光栄です。
\まずは当院にお問い合わせください/
恥骨結合炎のストレッチに関するよくある質問
恥骨結合炎でもランニングは可能ですか?
炎症が強かったり、痛みがある場合はランニングはできません。
再発しやすい病気のため、治ったと思っても息が弾むようなランニングをすぐはじめるのはやめましょう。ただし、隣にいる人と会話できる程度のジョギングは、リハビリとしても推奨されており、痛みのない範囲で可能です。
しばらくはジョギングを続け、すこしずつペースをあげていくとランニングができるまでに回復します。
痛みが強かったり、大会など控えている場合はスポーツ専門医に相談しながらリハビリ計画を立てましょう。
恥骨結合炎は何科を受診しますか?
恥骨結合炎かなと思ったら、整形外科を受診しましょう。
整形外科医は骨や軟骨・靭帯・神経など、からだを動かすのに必要な器官を診る専門家です。診察の結果、恥骨結合炎と診断されるとはかぎりませんが、運動器官のスペシャリストなので痛みの原因をしっかり調べてくれます。
なお、妊娠中や出産後の恥骨痛はまず産婦人科や助産師に相談しましょう。
恥骨結合炎になったらどのくらい安静にすべきですか?
痛みが強い場合は2週間の安静が必要です。
安静中はスポーツや、走ったり重いものを持つといった負担のかかる日常生活の動作もやめ、患部を冷やしてください。そのあとは痛みの具合をみながらストレッチを開始しましょう。
恥骨結合炎はどのくらいで完治しますか?
2か月前後が目安ですが、再発を繰り返す場合はもっとかかる可能性があります。
恥骨結合炎は再発しやすいため、はやく完治させるには再発予防が重要です。痛みがひいても安静期間は十分にとってください。また、すぐにスポーツを開始せずストレッチをしながら少しずつ負荷をかけていきましょう。
監修者
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坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。