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【医師監修】人工股関節置換術後における仕事復帰の目安を解説|職種別の注意点も紹介
「変形性股関節症のため、人工股関節の手術を受けることになった」
「手術後、仕事に復帰できるのだろうか?」
「看護師に戻れるの?」
人工股関節置換術を受ける方の中でも現役世代の方は、手術に加えて術後の仕事復帰に関する不安を多く持たれていることでしょう。
人工股関節置換術後の仕事復帰は、術後の回復状況や職種により異なるため、個人差が大きくなります。しかし、一般的な目安や注意点を知ることで、仕事復帰への不安が軽減できる可能性もあります。
本記事では、仕事復帰の目安や職種別の注意点を中心に解説します。
術後の仕事復帰に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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人工股関節置換術や術後の仕事復帰について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。
目次
人工股関節置換術後における仕事復帰の目安
人工股関節置換術後に仕事へ復帰するまでの期間は、仕事内容や回復状況によって大きく異なります。デスクワークであれば術後数週間で復帰できる場合もありますが、看護師や介護士、建設業など身体を使う仕事の場合は、数カ月かかることもあります。
仕事復帰を考えるために重要なことは、主治医との相談です。現在の身体状況やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法を話し合いましょう。
職場の上司や同僚との連携も大切です。仕事復帰に向けて、勤務時間や業務内容などの調整が必要となる場合もあります。必要に応じて、産業医への相談も選択肢に入れましょう。
焦らずに、自分のペースで復帰を目指しましょう。復帰後も定期的に主治医の診察を受け、経過を追う必要があります。
【人工股関節置換術】仕事復帰を考える現役世代に増えている理由
人工股関節置換術とは、股関節のすり減った軟骨や変形した骨を取り除き、インプラントに置き換える手術のことです。
変形性股関節症や大腿骨骨頭壊死、関節リウマチなどで強い関節痛がある、薬物療法や理学療法でも改善の見込みが少ないといった状況の方が手術適応となります。
人工股関節の耐用年数は約15〜20年と言われています。耐用年数を過ぎた人工関節は交換可能ですが、再手術が必要です。そのため以前は、比較的高齢の患者さんが手術適応でした。しかし近年は、生活の質(QOL)を高めるために、比較的若い世代の方も手術を受けるようになっています。(文献1)
手術後の仕事復帰を考える層に多い不安要素
仕事復帰に対する不安の理由はさまざまです。
術後は股関節痛が和らぐものの、筋力や関節可動域の回復には時間が必要です。「元のように動けるだろう」との期待と現状のギャップが、不安を強める場合もあります。家族や職場の方から、「そろそろ動けるようになるのでは?」と言われ、プレッシャーになるケースもあります。(文献2)
杖や補助具を使う、重いものを持てない、長時間の立ち仕事は難しいといった制限を抱えながらの仕事復帰に不安を抱える方も少なくありません。
人工関節に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
【時期別】人工股関節置換術後における仕事復帰までのスケジュール
人工股関節置換術は、激しい関節痛や動きの制限を改善し、より快適な生活を送るための重要な一歩です。手術を受ける決断は大きなものですが、その先には、リハビリテーションを通じて少しずつ身体の機能を取り戻し、再び活動的な日々を送る未来が待っています。
この手術は、まるで身体に新しい部品を組み込むような大がかりなものです。また、術後の経過には個人差があります。焦らず、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。
この章では、手術後のリハビリテーションを中心に解説していきます。
術後早期(術後1日目~)
この時期は、手術による身体への負担が大きいため、安静が最優先されます。ただし、安静にしすぎると血栓症や肺炎などの合併症リスクが高まるため、ベッド上でもできる運動が推奨されます。具体的には、足首の運動や深呼吸、寝返りなどです。これらの運動は、血液循環の促進や呼吸機能の維持に役立ちます。
術後1~2週間
積極的なリハビリテーションが開始される時期です。ベッド上での運動に加えて、座位や立位、歩行練習などが行われます。この段階では、関節可動域の拡大と筋力強化を図ることが目標です。理学療法士の指導のもと、杖や歩行器などの補助具を使用しながら、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。
術後2~4週間
歩行が安定してくると、日常生活動作の練習が中心となります。具体的には歩行器および杖を使った歩行練習や階段昇降、トイレへの移動、着替えなどです。日常生活に必要な動作の練習を繰り返しながら、自宅での生活にスムーズに戻れるよう準備していきます。
術後1~3カ月
この時期は、さらに積極的なリハビリテーションプログラムが組まれます。自転車エルゴメーターや水中歩行など、関節への負担が少ない運動を取り入れながら、関節可動域の維持・拡大、筋力強化を図ります。加えて、退院後の生活を見据え、趣味や軽い運動などもリハビリテーションに組み込まれる時期です。
リハビリテーションの内容は、一人ひとりの状態に合わせて調整されます。年齢や手術前の活動レベル、合併症の有無など、さまざまな要因が考慮されます。理学療法士や作業療法士などの専門家と相談しながら、無理なく進めていきましょう。手術後のリハビリについてはEnhanced Recovery After Surgery(ERAS)プログラムが注目されています。ERASは、術前から術後の包括的な管理を行うことで、より早期の回復と社会復帰を目指すプログラムです。(文献3)
【職種別】人工股関節置換術後に仕事復帰する際の注意点
人工股関節置換術を受けた患者の復職時期は、退院後2〜3か月が最も多かったとの研究データがあります。(文献4)しかし実際の復職時期は、患者の職種や人工関節の状態、手術後の回復状況などによりさまざまです。
この章では、デスクワークの場合と体を動かす仕事の場合に分けて解説します。
人工股関節手術後から仕事復帰までの目安については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
デスクワークの場合
デスクワーク中心で座っている時間が長い方の場合、股関節を含めた足腰への負担は比較的少ないため、手術後数週間で復帰できる可能性があります。しかし、通勤時に階段を何度も昇り降りしたり長い距離を歩いたりする状況では、股関節に負担がかかるため、復帰時期が遅る傾向にあります。
通勤に不安があるときは、仕事復帰前に何度か通勤を試してみましょう。
体を動かす仕事の場合
看護師や介護士、建築業、土木業、農業、漁業といった、体を動かす仕事の方は、手術後3〜6か月程度が仕事復帰時期の1つの目安です。ただし、人工関節の状態や筋力および体力の回復には個人差があるため、主治医とよく相談してから決めましょう。
仕事上の動作に関して医師やリハビリ専門職の指導を受けておくと、股関節の再脱臼や転倒を防ぐためのポイントを把握できます。
デスクワークの方同様、必要に応じて復帰前に通勤を試してみましょう。
手術後に介護職へ戻ることを希望されている方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:人工股関節でも介護の仕事を続けたい方が注意すべきことは
人工股関節手術後の仕事復帰に向けた準備
人工股関節手術を受けた後、仕事に復帰するためにはいくつかの準備が必要です。この章では、復職時期決定および復職後の働き方に関するポイントを解説します。
復帰時期決定には医師や職場との話し合いが必要
仕事復帰のタイミングは、一概には決められません。術後の回復状況や基礎疾患の有無、仕事内容によって異なるためです。主治医やリハビリ専門職と相談した上で、無理のない復帰スケジュールを立てましょう。
仕事復帰に関しては、職場との話し合いも必要です。フルタイムではなく時短勤務から始める、当面の間重いものを持つ作業を控えるなど、業務内容を調整してもらえるか相談しましょう。医師の診断書や回復状況、リハビリの状況などを記載した書類があると、話し合いがスムーズに進みやすくなります。
身体的負担を減らす働き方の工夫
人工股関節手術後の通勤は、意外に大きな負担となる可能性があります。公共交通機関を利用して通勤している方の場合、複数回の階段昇降や長距離の移動なども想定されます。
身体的負担が大きい場合、通勤手段の見直しも一つの方法です。具体的には、自家用車での通勤や家族による送迎などです。
職場内では、休憩スペースやトイレの位置、業務上の動線などを確認し、身体的負担を減らせるよう工夫しましょう。また、杖や歩行補助具を使う場合は、上司や同僚に状況を共有し、無理なく働ける環境を一緒に整えていきましょう。
人工股関節置換術後の仕事復帰は段階的に進めよう
人工股関節置換術後の仕事復帰は、一定期間のリハビリを経てからになります。ただし、リハビリ後の回復状況や人工関節の状態、もともとの仕事内容などにより、復帰時期は異なると知っておきましょう。
仕事復帰時期を決める際は、医師や職場との十分な話し合いが必要です。身体的負担を減らすために働き方や通勤方法の工夫が必要になる場合もあります。仕事復帰の時期は個人差が大きいため、焦らず段階的に進めていきましょう。
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手術後の股関節痛やリハビリなどについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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人工股関節置換術後の仕事復帰に関するよくある質問
人工股関節手術後車の運転はいつからできますか?
足がアクセルからブレーキまで動けば運転は可能ですが、身体状況によって異なるため、一概に「いつから可能」とは言えません。運転を希望される場合は、必ず主治医やリハビリ専門職へ事前に相談しましょう。
股関節脱臼予防のため、自動車の運転席にはお尻から座るようにしてください。
股関節手術後、立ち仕事はいつからできますか?
一般的に、股関節手術後に立ち仕事を再開できるのは術後6~8週間程度と言われています。しかし、回復には個人差があるため、必ず主治医に相談しましょう。
立ち仕事を含めた長時間の同じ姿勢は股関節に負担をかけます。職場の方と相談した上で、こまめに休憩をとるよう心がけましょう。
参考文献
人工股関節置換手術 Total Hip Arthroplasty|東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター
人工股関節置換術を受けた患者の社会的役割の継続を模索するプロセス―退院時から術後6か月の脱臼のリスクが低減していくまでの時期に焦点をあてて―|日本運動器看護学会誌











