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人工股関節置換手術後の日常生活の注意点6選!やってはいけないことやリハビリについて医師が解説

「病院で人工股関節への置換術をすすめられた」「変形性股関節症の手術が決まっている」といった方の多くは、手術後の生活が気になるのではないでしょうか。
股関節の変形などの治療として手術で人工股関節を入れても、すべてが元通りになるわけではありません。
手術後は、股関節に負担がかからないように以下のような動作や姿勢に気をつけて生活する必要があります。
- 適度に歩く時間をつくる
- 股関節に負担がかかる日常動作は避ける
- 過度な運動やスポーツを避ける
- 重いものを持たないようにする
- 入浴時は膝を大きく曲げないようにする
- 転倒を防ぐための生活環境を整える
本記事では、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことを解説します。
早期回復のためのポイントや仕事復帰までの目安もまとめているので、人工股関節手術を控えている・検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
人工股関節置換手術後の日常生活の注意点【6選】
人工股関節手術後の生活では、過度な運動や股関節に大きな負担がかかる姿勢を避ける必要があります。
具体的には、以下の6つに注意して過ごしましょう。
それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
以下の記事では、変形性股関節症の方が人工関節手術を行うリスクについて解説しているので、合わせてご覧ください。
適度に歩く時間をつくる
人工股関節手術後の歩行に関して、とくに制限はありませんが、以下の点に注意しましょう。
- 筋力の低下を防ぐため歩く時間を作る
- 歩行時は革靴ではなく滑り止めがついた運動靴を履く
翌日まで疲労が残る場合は、運動量が多すぎる可能性が高いため、ペースを調節してください。
股関節に負担がかかる日常動作は避ける
人工股関節手術後の生活では、股関節を曲げて膝を内側にねじるような姿勢は負担が大きいので避けましょう。
とくに股関節の屈曲などの複合動作が続くと、股関節に大きな負担がかかって脱臼や骨折の原因になります。
人工股関節の脱臼を防ぐためにも、日常生活の中では以下の点に注意が必要です。
- あぐらや横座りなどを避ける
- ズボンや靴下などを履くときは床ではなく椅子に腰掛ける
ただし、座るときにどの程度の注意が必要かは、手術方法によって異なります。
近年は筋肉や腱を切らずに済む方法が増え、人工股関節手術後の脱臼のリスクそのものが低下しています。
手術後に避けるべき動作や姿勢については、医療機関や主治医に確認しましょう。
過度な運動やスポーツを避ける
人工股関節手術後は、過度な運動やスポーツを避ける必要があります。
手術をしたからといって、ハードな運動ができるわけではありません。
過度な運動は股関節の脱臼やゆるみを起こしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
ただし、適度な運動は、股関節周りの筋肉を鍛えることにつながるため、無理のない範囲で体を動かすことをおすすめします。
実際に、人工股関節手術後の生活で、ハイキングやウォーキングなど、さまざまな運動を楽しんでいる人もいます。
手術後の生活で無理なくできる運動は、水泳やウォーキングなどです。
ただし、水泳の場合、股関節に負担がかかる平泳ぎよりもバタ足などがおすすめです。
また、ウォーキングは15分程度の軽い運動にとどめるなどの配慮が必要です。
重いものを持たないようにする
人工股関節手術後の生活では、日常的に重たいものを持たないように注意しましょう。
重いものを持ち上げたり、持って移動したりすると、股関節に大きな負担がかかります。
もちろん、しゃがんだ姿勢から荷物を持ち上げることも避けましょう。
軽い荷物であれば大丈夫ですが、足腰を使わなければ持ち上がらないほどの重い荷物であれば、家族や友人に手伝ってもらって運んでください。
とくに家族には、人工股関節手術ことを伝え、手術後の生活についてよく理解してもらっておくと安心です。
入浴時は膝を大きく曲げないようにする
人工股関節手術後の入浴時は、とくに身体を洗う姿勢に注意してください。
ほかにも、以下の点に気をつけると股関節への負担を減らせます。
- シャワーチェアを使用して椅子に腰掛けた姿勢で身体を洗う
- かがみこまなくて済むようにタオルではなく柄が長いブラシを使用する
- 浴槽で両足を伸ばせない場合は浴槽用の小さな椅子を使用する
椅子を使うスペースがない場合は、浴槽の縁にも腰掛けることも可能です。しかし、足先を洗う際などは無理にかがみこむと脱臼する可能性が高いため注意しましょう。
なお、浴槽への出入りしやすくするためには、浴室の壁に手すりを取り付けると便利です。
転倒を防ぐための生活環境を整える
人工股関節手術後は、人工股関節の破損を避けるためにも転倒に気をつけましょう。
手術後の生活では、人工股関節とうまく付き合っていく意識が必要です。
転倒は、人工股関節の破損だけではなく骨折の原因にもなります。
骨折によって歩行が難しくなると、手術をした意味がなくなってしまいます。
手術後は、外出の際に階段を避けてエスカレーターやエレベーターを利用したり、足場の悪いところは極力歩かないようにしたりするといった心がけが必要です。
人工股関節置換手術後の生活でやってはいけないこと
人工股関節置換手術後は、人工関節が脱臼する可能性があるため、以下の姿勢はやってはいけません。
- 正座やあぐら
- 脚を組んで座る
- 勢いをつけて立ち上がる
- 深くしゃがみ込む
- 前屈みで家事や仕事をする
- 深いソファーに腰をかける
近年の股関節手術では、人工関節の質が向上したことや筋肉や靭帯を切離しない手術方法の普及により脱臼率が改善されています。
そのため、どの程度まで股関節を曲げて良いかなどは医療機関や患者さまの状態によって異なります。
手術後に行動や姿勢の制限があるか、主治医に確認しておくと良いでしょう。
人工股関節置換手術後の仕事復帰までの目安期間
人工股関節置換手術後に仕事復帰できるまでの期間は職種によって異なり、事務職であれば、数週間から1カ月程度で復帰が可能です。
しかし、業務上でしゃがんだりかがんだりする動作を伴う場合は、復帰までに時間がかかります。
人工股関節手術後の仕事復帰までの目安は、以下の通りです。
事務職 |
2~4週 |
立ち仕事(半日) |
4~6週 |
立ち仕事(1日) |
6~8週 |
ドライバー・配送業 |
2~3カ月 |
激しい肉体労働が中心の仕事 |
3カ月以降 |
ただし、手術後の回復には個人差があるため、まずは主治医に相談してから仕事に復帰する計画を立てましょう。
人工股関節置換手術後から早期に日常生活へ復帰するためのポイント
ここでは、人工股関節手術後の生活において、早期回復のために工夫すべきポイントを紹介します。
股関節に負担の少ない生活スタイルに変える
人工股関節手術後の生活では、股関節に負担のかかる姿勢を避ける必要があります。
たとえば、正座や足を前に投げ出して座る姿勢は手術後でも問題ありませんが、体育座りや横座りなどは脱臼のリスクが高まります。
和式トイレなどでしゃがみ込む、座布団に座る、重いものを持ち上げるなどの動作は、意識して避けましょう。
人工股関節手術後は、できる範囲で椅子や洋式トイレを利用するようにして、生活スタイルを切り替えていくことをおすすめします。
また、布団を敷いて寝ている方は、ベッドにしたほうが股関節に負担をかけずに済みます。
体重管理をする
人工股関節手術後の回復を早めるためには、体重管理もポイントです。
体重が重いだけでも、股関節には大きな負担がかかるため、適度な運動をして体重管理しましょう。
標準体重よりも重い場合や、普段から身体が重いと感じている場合は、思い切ってダイエットを始めることもおすすめです。
ただし、単に体重を減らすだけではなく、筋力の維持にも努める必要があります。手術後は徐々に股関節を慣らすようにして、1日15分程度のウォーキングなど軽い運動をしましょう。
適切なリハビリテーションを続ける
人工股関節手術後の回復を早めるためには、適切なリハビリテーションを続ける必要があります。
人工股関節手術後は、筋力が低下している状態です。
とくに手術前から痛みで動きが制限されていた場合は、筋力の低下が顕著になる傾向があります。
人工股関節手術後に目指す生活レベルにもよるものの、筋力を回復させるためには、手術後も長期間にわたってリハビリテーションを続けることが大切です。
医療機関や主治医に相談しながら、納得のいく治療計画を立てましょう。
人工股関節置換手術後の日常生活の注意点に関するよくある質問
人工股関節置換手術後の日常生活の注意点に関するよくある質問と回答を紹介します。
人工股関節置換手術後の日常生活で気を付けることは?
人工股関節置換手術後の日常生活では、股関節に負担がかからないように気を付けましょう。
近年では人工股関節の耐久年数が向上していることから、日常生活だけでなく運動をする方も増えてきています。
しかし、人工関節は使えば使うほど摩耗していくため、股関節に負担がかかる動作を続けることで人工股関節の寿命が短くなっているといえます。
そのため、人工股関節を少しでも長持ちさせるためにも、術後の日常生活では股関節に負担がかからないように注意することが重要です。
自宅でもリハビリは必要ですか?
基本的に退院後でも自宅でリハビリは継続した方が良いです。
必要なリハビリは患者さまの目的によって異なるため、自分に合ったリハビリを続けましょう。
例えば「趣味のスポーツを再開したい」という場合には、そのスポーツで股関節にかかる負担を軽減できるように筋力トレーニングやストレッチが必要です。
しかし、自宅付近の移動ができれば良いという方は、スポーツをやりたい人ほどリハビリを頑張る必要はないといえます。
日常生活をおくる上で影響がない程度に筋力や柔軟性の維持に努めましょう。
人工股関節置換手術後にやってはいけないスポーツは?
人工股関節手術後は、股関節を捻るような以下のスポーツは控えましょう。
- サッカー
- バスケットボール
- 野球
- バレーボール
- テニス
- 水泳
- 柔道
- ラグビー
上記のようなスポーツは、股関節を捻る際に大きな負荷がかかるため、人工関節の摩耗や破損につながる可能性が高いです。
しかし、筋力や柔軟性を低下させないために適度な運動は推奨されています。
どの程度の運動ができるかは個人差があるため、主治医と相談した上で行いましょう。
人工股関節置換手術後に杖はいつまで使うべき?
人工股関節置換手術後は、3ヶ月前後を目安に杖を使用しましょう。
術後に転倒してしまうと人工股関節の脱臼や損傷のリスクがあるため、転倒防止に杖の使用が有効です。
とくに混雑しやすい場所や長時間歩く場合などの状況をみて、3ヶ月を過ぎても杖を使用した方が良いでしょう。
人工股関節置換手術後の生活では関節に負担をかけないよう配慮することが重要
今回は、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことや工夫すると良いことなどを解説しました。
基本的に人工股関節手術後の生活では、人工股関節に配慮さえすれば大きな支障はきたさないでしょう。
しかし、人工股関節とうまく付き合っていく必要があるため、どうしても注意や工夫をしなければならない場面も出てきます。
なお、手術後の生活における注意事項や運動、リハビリテーションなどに関しては、必ず主治医の指導を受けるようにしてください。
▼ 立ち上がり動作における股関節への負担を減らすポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。