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肩の腱板損傷|その症状と保存療法(リハビリ)とは

肩の腱板損傷|その症状と保存療法(リハビリ)について

肩の痛みに悩まされる人が多いですが、その症状、『腱板損傷』かも知れません。

あなたが五十肩だと思っているその痛みも、放っておくとどんどん上がらなくなる・・・かも?!

今回は、腱板損傷の保存的治療方法を中心に解説していきます。

腱板損傷の症状

腱板を損傷すると、以下のような症状がみられます。

  • 腱板損傷の症状

  • ・夜眠れないほどの痛みが出る
  • ・手を上げる時、ある一定の範囲だけ痛みや引っかかり感が出る
  • ・手を水平の位置に保てない
  • ・手を上げる時に肩全体が上がってしまう(腕の上げ方が左右で違う)
  • ・肩の筋肉(特に棘下筋)の萎縮が進み、見た目でわかる

肩腱板損傷

腱板損傷の症状で多くみられるのが、「夜間痛」です。

その名の通り、夜寝ている時に痛みがひどくなり眠れない、という声がよく聞かれます。

腱板損傷とは

腱板とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩の奥の筋肉です。正式名称は、回旋筋腱板(ローテーターカフ)であり、以下の4つの筋肉からなります。

  • 腱板とは
  • ・棘上筋
  • ・棘下筋
  • ・小円筋
  • ・肩甲下筋

肩の上腕骨の骨頭と呼ばれる部分を包み込むように付着し、一枚の板のように並んでいるため腱板と言われています。

腱板の役割

この4つの筋肉は、肩を動かす上で非常に重要な役割を担います。肩にはアウターマッスルとインナーマッスルとがあり、腱板はインナーマッスルに属します。

 

肩の筋肉

役割

筋肉の位置

アウターマッスル

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋

関節を安定させてアウターマッスルを働きやすくする

より関節に近いところに位置する

インナーマッスル

三角筋、上腕二頭筋など

速くて強い力を生み出す 体の表層

腱板の基本的な役割について説明しました。小さい筋肉ですが、非常に重要な働きをしてくれます。

腱板損傷とはどのような状態なのか

そんな腱板が損傷した状態とはどのようなものなのでしょうか。

腱板は筋肉や腱のことであり、他の筋肉、腱と同じで線維状になっています。その線維が部分的に傷んでいる、切れている状態が腱板損傷です。損傷がひどく、一部または大部分に断裂がみられるものは腱板断裂と呼ばれています。

腱板損傷、腱板断裂は、筋肉や腱の変性が起きやすい50代以降の男性に多くみられます。発症のピークは60歳代です。

若い世代でも、肩を酷使するスポーツ選手などにもみられることもあるため、医療機関できちんと検査をすることをおすすめします。

腱板損傷の原因

前述したように、中年以降に多くみられることから、筋肉や腱などの加齢による変性が大きく関わってきます。

  • 腱板が損傷する原因
  • ・筋肉や腱などの軟部組織の変性が起こりやすい中年男性
  • ・重い荷物を持ち運ぶ
  • ・野球など投げる動作を繰り返すスポーツ
  • ・後ろのものを取ろうとして不自然な肩の動きをしてしまう
  • ・転んだ拍子に手をつく、もしくは肩を打つ

上記の通り、肩に負担のかかる動作を繰り返すと発症しやすくなります。例えば、重いものを抱える配送の仕事や、肩に強い負荷がかかる野球のピッチャーなどです。

他にも様々な原因で腱板損傷が起こります。

腱板損傷の診断

腱板損傷はレントゲンでは分かりにくく、よく五十肩と勘違いされます。そのため、正確な診断にはMRIやエコー検査などが用いられます。

他にも、前述した腱板損傷の所見を、視診や触診で確認することも重要です。他の肩関節疾患との鑑別を正確にすることで、今後の治療方針を早期に決めることができるため、気になる症状がありましたら早期に医療機関へ受診することをオススメします。

腱板損傷の保存療法(リハビリ)

腱板損傷の治療法には外科的な処置を施す「手術療法」と、注射やリハビリなどで機能の改善を図る「保存療法」とに分けられます。

ここでは、保存療法を中心に詳しくご紹介します。

腱板が傷んでしまうと、その性質から腱板自体が自然に修復するのは難しいのです。

そのため、腱板損傷を発症してしまったら以下のことに留意し、リハビリ等の治療にあたります。

  • 保存療法の目的
  • ①痛みを減らし、悪循環を断つ
  • ②痛んだ腱板への負荷をできる限り減らす
  • ③肩周囲の動きを良くする

順番に解説していきます。

①痛みを減らし、悪循環を断つ

まず一番に対処すべき症状は痛みです。痛みが残っていると脳がその痛みを覚えてしまい、長引くことがあります。

さらに、痛みが続くと無意識に患部を動かさなくなってしまいます。そうなると関節の動きが悪くなり、結果的に肩関節に機能低下が生じてしまうのです。

痛み → 動かさない → 肩関節の機能低下 → 痛み

ではどのように対処していけばいいのでしょうか。

医療機関を受診すると、痛み止めの注射やお薬を処方されることがあります。原因を根本的に治す治療ではないのですが、痛みを一時的にでも抑えることは大切なことです。

また、腱板損傷の方は夜間痛を訴えるケースが多くみられます。痛みのせいで悪い寝姿勢になっている人もしばしば見受けられます。

そこで試して欲しいのが、寝る姿勢の調節です。具体的には以下の通りです。

  • 夜間痛をけいげんするための寝姿勢
  • ・上半身を少し高くして寝る
  • ・寝る時に痛い方の腕の下にバスタオルを敷き、リラックスした姿勢を保つ
  • ・抱き枕で横向きに寝る

しっかり睡眠をとることは、脳や体に良い休息を与え、自律神経の改善につながります。そうすると余分な筋肉の緊張も抜け、痛みが軽くなることがあります。

②傷んだ腱板への負担をできる限り減らそう

一度傷んでしまった腱板は自然修復が難しく、より重度の損傷が起きてしまうと手術が必要なケースもあります。そのため、余計なストレスをかけず重症化を防ぐことが大切です。

  • 痛んだ腱板の負担を少なくするための注意点
  • ・重いものを持たない
  •  →どうしても持たなければならない場合は、以下のことに注意しましょう。
  • ・小分けにする
  • ・腰をしっかり落として体の近くで持つ
  • ・急に持ち上げない
  • ・無理な体勢で物を取ろうとしない
  • ・痛みが出ている肩を下向きにして寝ない

以上のことに気をつけて過ごしましょう。

③肩周囲の動きを良くする

胸の中心にある胸骨、鎖骨、肩甲骨、肋骨など周辺にある様々な骨や関節を総合して『肩』と言います。

つまり、肩を効率的に動かすためには、これらの部位もしっかり動かせることが重要です。

特に鎖骨周りや肩甲骨などは動きが悪くなることが多いので、鎖骨周りのセルフマッサージや、肩甲骨を意識した肩回しをするなど、意識的に動かしましょう。

スポーツを行う人はトレーニングの他にテーピングも有効

スポーツ中のケガで腱板損傷を発症する方もいらっしゃいます。もちろんリハビリやトレーニング等で機能を戻すことが大前提ですが、場合によってはテーピングで腱板の機能の補助をすることも可能です。

肩にテーピングをした女性

今回は例として、棘上筋、棘下筋、小円筋をサポートするテーピングを巻いています。テーピングをすることで動きに違和感を覚えるかもしれませんが、安定性が増し、より安全にスポーツを行うことができます。

しかし、テーピングにも限界があります。痛みが強く出てしまう時は、無理せず患部の鎮痛および機能回復を待ちましょう。

まとめ・肩の腱板損傷|その症状と保存療法(リハビリ)について

今回は、腱板損傷の病態と症状、保存療法であるリハビリについてご紹介しました。

腱板損傷は、他の肩の疾患と見分けがつきにくく、医療機関に受診しても見落とされることがあります。しかし、ほとんどの場合は詳しい検査で分かります。

自分の素人判断で五十肩だろう…と決めつけることなく、痛みがあったり長引いたりする時は迷わず医療機関にご相談下さい。そして適切な治療を受け、不安を排して快適な日常を少しでも早く取り戻しましょう。

以上、肩の腱板損傷の症状と機能改善を目指す保存療法(リハビリ)について記してまいりました。

ご参考になれば幸いです。

肩の痛みの治療

 

No.S088

監修:医師 加藤 秀一

 

▼以下もご産国ください
腱板損傷|発症後、段階別の注意点とリハビリについて

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