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腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを解説|疼痛期間や治し方を紹介

下肢の痛みやしびれがあった際、坐骨神経痛と診断される場合があります。なかには、腰椎椎間板ヘルニアを患っているのに坐骨神経痛と診断されて違いがわからず戸惑う方もいるのではないでしょうか。
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は混在しやすいですが、定義に違いがあります。本記事では、腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いについて解説します。
坐骨神経痛を引き起こす主な疾患や治療法も紹介するので、ヘルニアとの違いを正しく理解したい方は参考にしてください。
目次
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違い
腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアと坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の違いは、以下の通りです。
名称 |
特徴 |
---|---|
腰椎椎間板ヘルニア |
腰の痛みやしびれを伴う病名 |
坐骨神経痛 |
腰の痛みやお尻から脚にかけてしびれを伴う症状 |
腰椎椎間板ヘルニアは病気の名称で、坐骨神経痛は症状を指します。つまり、腰椎椎間板ヘルニアが要因で神経が圧迫されて、腰の痛みやしびれを伴う坐骨神経痛が生じるのです。
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛は混同されがちですが、定義が異なるため違いを理解しておきましょう。
坐骨神経痛を引き起こす主な疾患
坐骨神経痛を引き起こす原因は、腰椎椎間板ヘルニアだけではありません。主な疾患は、以下の3つです。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症
発症する原因や主な症状や好発年齢についてまとめたので、参考にしてください。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは骨と骨の間にある腰椎椎間板に負担がかかり、椎間板の中心核となる髄核(ずいかく)が外に飛び出し神経を圧迫した状態のことです。主な症状は、以下の通りです。
- お尻から足首にかけて痛みとしびれが生じる
- 脚に力が入りにくくなる
- 陰部や肛門にしびれが生じる
- 尿や便が出しにくくなる
腰椎椎間板ヘルニアが発症する原因には、重いものを持ち上げたり同じ姿勢を続けたりして背骨に負担をかける行為が挙げられます。また、体重増加も腰椎椎間板ヘルニアを引き起こす原因の一つです。
腰椎椎間板ヘルニアの好発年齢は、20代〜40代になります。
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態のことです。主な症状は、歩行や運動による痛みです。
脊柱管狭窄症は、運動により神経へ血流が不十分になると痛みを引き起こします。安静にしていると神経への血流が安定するため、症状はありません。
また、脊柱管狭窄症の原因は以下の通りです。
- 腰に負担がかかる作業や肥満などにより、腰椎に負担がかかり神経が圧迫される
- 骨粗鬆症が原因で骨が変形する
- 骨や椎間板により神経が圧迫される
好発年齢は50代〜80代くらいで、男性に多く見られます。
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは、腰椎のずれにより脊柱管の中を通る神経が圧迫される状態のことです。主な症状は歩行や運動による痛みで、脊柱管狭窄症と症状が似ています。
痛みを引き起こしても、安静にしていると再び歩行や運動が可能です。
腰椎すべり症の原因には、加齢による椎間板の変化が考えられます。また、激しい運動により疲労骨折した部分が分離し、ずれが生じて引き起こされる場合もあります。
腰椎すべり症は脊柱管狭窄症と症状が似ていますが、発症の原因が異なる点を押さえておきましょう。
なお、腰椎すべり症の好発年齢は、40歳以上になります。
椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の疼痛期間
椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の疼痛期間は、1〜3カ月ほどが目安となります。種類や症状の進行によって異なりますが、ヘルニアは一般的に手術をしなくても自然に痛みが緩和されます。
しかし、長期間しびれや筋肉のけいれんなどの神経障害が現れる可能性も少なくありません。また、下肢に力が入らない、もしくは尿や便が出ない場合は早急に受診する必要があります。
症状の回復が見込めない際は手術治療が必要になる可能性があるため、放置せず担当医に相談しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治し方
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の治し方は症状によって異なります。主な治し方は、以下の5つです。
- 保存療法
- 薬物治療
- ブロック治療
- 理学療法
- 手術治療
各治療法の特徴を以下で解説するので、ご自身に合った治療プランを検討する参考にしてください。
保存療法
腰椎椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛の初期症状では、保存療法が適用される傾向にあります。保存療法は原因を取り除くのではなく、症状の改善や緩和を目指す治療法です。
具体的な治療法としては患部を安静に保ち、痛みが引くのを待ちます。坐骨神経痛は運動により痛みが悪化する可能性があるため、症状が回復するまでスポーツは控えましょう。
また、安静にする際は症状を悪化させないよう、重いものを持つ行為や急な動作をしないように注意が必要です。腰椎椎間板ヘルニアが原因となる坐骨神経痛ではコルセットの装着も、保存療法の1つになります。
薬物治療
薬物治療とは、医薬品を使用して症状の回復を図る保存療法の一つです。痛みやしびれなどのつらい症状が続く場合は、安静にしていても不調を招く可能性があるため薬物治療をおこないます。
薬物治療では、痛みを抑制させる内服薬で症状の回復を促します。
症状が重い場合、神経痛の強い薬剤投与をおこなうケースもありますが、副作用がある点に注意が必要です。また、薬物治療では、経過観察で症状を見ながら処方量を調整します。
ブロック治療
ブロック治療とは坐骨神経の周辺に薬を直接投与し、痛みや炎症を抑える保存療法の一つです。神経を抑制させ、痛みを感じる部分をほぐして血行を促進させるのがブロック治療の特徴になります。
なお、ブロック治療では主に局所麻酔薬を使用します。局所麻酔薬は即効性があり、継続的な治療により効果の持続時間が長くなるため、痛みの予防に効果的です。
中長期的に症状を軽減させたい場合は、ブロック治療が適しています。
理学療法
理学療法とは、運動機能の維持や改善を目的に物理的な手段を使用しておこなう保存療法の一つです。物理的な手段には、以下の方法が用いられています。
- 運動療法
- 温熱療法
- 電気療法
- 光線療法
一般的に坐骨神経痛では、腰の痛みを軽減させたあとに腰椎周辺の筋トレやストレッチを取り入れます。理学療法では、医師や理学療法士の指導をもとに、症状に適した療法を進めていきます。また、運動療法で腰椎周辺の筋力を強くしていくのも、坐骨神経痛の症状回復に効果的です。
手術治療
保存療法で症状の回復が見られなかった場合は、手術治療がおこなわれます。坐骨神経痛の主な術式は、以下の通りです。
術式 |
手術内容 |
---|---|
内視鏡下腰椎椎間板摘出術 |
開創して内視鏡でヘルニア部分を確認して切除 |
経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術 |
皮膚に小さな穴を開け内視鏡を通してヘルニア部分を確認して摘出する |
内視鏡下腰椎椎弓切除術 |
内視鏡の管を通して椎弓(ついきゅう)の一部や肥厚した黄色靭帯を切除 |
内視鏡下腰椎椎体間固定術 |
内視鏡とX線透視装置を使用して椎体間を固定して脊椎を整形 |
術式は症状の進行状態によって異なるため、医師と相談しながらご自身に適した治療プランを検討しましょう。
痛みを感じた際にヘルニアと坐骨神経痛でやってはいけないことの違い
坐骨神経痛では、体を冷やしすぎないよう注意が必要です。腰や足を冷やしてしまうと、筋肉が固まりやすいだけでなく、神経を圧迫する可能性があります。
ただし、椎間板ヘルニアの痛みを伴う場合に身体を温めると炎症が悪化して、痛みを強くするケースがあるため注意しましょう。
また、坐骨神経痛ではやってはいけないことは以下の通りです。
- 重いものを持ち上げない
- 長時間座り続けない
- ハムストリングスストレッチをおこなわない
- 前かがみにならない
- 背骨をねじりすぎない
- やわらかすぎるマットレスを使用しない
- 太りすぎない
坐骨神経痛で悪化を防ぐためには、やってはいけないことを避けて生活を送ることが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛が治らない場合に検討したい再生医療
再生医療は、腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛が治らない場合の選択肢の一つです。分化誘導による関節の再生医療では、幹細胞を神経や骨といった特定の組織に分化するように誘導します。
当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を冷凍せず投与に合わせて都度培養し、生存率を高めています。また、再生医療は入院が不要です。
当院では、メール相談やオンラインカウンセリングを受け付けておりますので、治療に関する悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。
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腰椎椎間板ヘルニアにおける再生医療の症例
50代の女性は、腰椎椎間板ヘルニア手術の後遺症により、以下の症状に悩まされていました。
- 左足のしびれ
- 歩行障害
- 下肢のだるさ
- 尿漏れ
再度MRI検査を受けたところ、術前にあった腰椎椎間板ヘルニアは綺麗に取れていたものの、新たに中枢の方で脊柱管の狭窄が見つかったそうです。損傷した神経の回復を促す治療法の一つに、幹細胞治療があります。幹細胞は早期治療が重要なため、初診後すぐ治療をおこないました。
幹細胞治療では、脊髄内に直接幹細胞を2回点滴投与しました。1回目の投与後数日で、困難であった階段昇降ができるようになり、左足のしびれや尿漏れの改善がみられたそうです。
また、2回の投与終了後、投与前は両脚上げをするのも困難だった筋力が、2か月で抵抗を加えても楽に上げられるまでに改善しました。
そのため、歩行は安定し、足元を見なくても不安なく歩けるようになった事例となります。
まとめ・腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを理解して最適な治療を検討しよう
腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛には、定義に違いがあります。病名となる腰椎椎間板ヘルニアが要因で神経が圧迫されて、腰の痛みやしびれを伴う坐骨神経痛の症状が生じるのです。
種類や症状の進行によりますが、ヘルニアは一般的に手術をしなくても自然に痛みが緩和されるため、1〜3カ月ほどで症状の回復が見込めます。
腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛の初期症状では保存療法をおこない、回復が見込めない場合は手術が選択されます。手術を躊躇している方は、再生医療を選択するのも一つです。腰椎椎間板ヘルニアと坐骨神経痛の違いを理解した上で、適した治療プランを検討しましょう。
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。