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ステージ3の乳がんとは?予後・治療法・生存率データをわかりやすく解説

ステージ3乳がん
公開日: 2025.04.30

乳がんは日本人女性にとって、最も罹患率の高いがんの一つです。その中でも「ステージ3」と診断されると、不安や恐怖を感じる方も多いでしょう。

しかし、医療の進歩により、ステージ3の乳がんでも治療の選択肢は広がり、希望を持って治療に向き合える時代になっています。本記事では、ステージ3の乳がんについて基本的な知識から最新の治療法、心のケアまで、わかりやすく解説します。

乳がんのステージとは

乳がんのステージは、がんの進行度を表す重要な指標です。TNM分類と呼ばれる方法で評価され、腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移の程度(N)、遠隔転移の有無(M)に基づいて判断されます。

ステージ 特徴
0期 がん細胞が乳管内にとどまり、周囲組織への浸潤がない(非浸潤性)
Ⅰ期 腫瘍が小さく(2cm以下)、リンパ節転移がない
Ⅱ期 腫瘍は2〜5cmで、転移なし。または腋窩リンパ節転移あり
Ⅲ期 腫瘍が大きく(5cm超)、または多数のリンパ節転移があるが、遠隔転移はない
Ⅳ期 腫瘍の大きさやリンパ節状態にかかわらず、他の臓器への遠隔転移がある

文献1

ステージは治療方針の決定や予後予測において非常に重要な要素となります。

ステージ3の状態

ステージ3の乳がんは、より進行した状態を表し、さらに詳細な分類として3つのサブステージに細分化されます。それぞれの特徴は異なりますが、いずれも局所進行性であり、遠隔転移はまだ認められない段階です。

サブステージ 特徴
ⅢA期 ・腫瘍が5cm以下で、腋窩リンパ節転移の固定または内胸リンパ節転移がある
・腫瘍が5cmを超え、腋窩リンパ節または内胸リンパ節に転移がある
ⅢB期 ・腫瘍が皮膚や胸壁に広がっている
・しこりのない炎症性乳がんもこの段階に含まれる
ⅢC期 ・腋窩リンパ節と内胸リンパ節両方に転移がある
・鎖骨上にまで及ぶリンパ節転移がある

文献1

この段階では、手術や化学療法、放射線療法などを組み合わせた積極的な治療アプローチが必要となります。

乳がん(ステージ3)の予後について

ステージ3の乳がんは進行した状態ですが、適切な治療によって良好な転帰が期待できるケースも少なくありません。治療法の進歩により、以前に比べて予後は改善傾向にあります。

しかし、サブステージや個々の状態によって予後は異なるため、個別の医学的評価が重要です。

生存率のデータの正しい見方

乳がんの生存率は参考情報であり、個人の予後を正確に予測するものではありません。年齢や全身状態、がんの生物学的特性など、さまざまな因子によって大きく左右されます。

「相対生存率」と「実測生存率」の違いも重要です。相対生存率はがん以外の死因を除外して計算され、がんによる影響のみを評価します。一方、実測生存率はすべての死因を含みます。文献2

医療情報を理解する際は、どの生存率指標が使われているか確認しましょう。

【最新データ】乳がんの生存率

乳がんの生存率はステージによって大きく異なります。

ステージ 5年相対生存率
ステージ0 100%
ステージ1 99.8%
ステージ2 95.5%
ステージ3 80.7%
ステージ4 38.7%

文献3

ステージ0〜2は予後が非常に良好で、とくに早期発見された場合は完全治癒が期待できます。ステージ3でも適切な治療を受ければ、5年生存率は80%以上です。ステージ4では治療の焦点は延命と生活の質の向上に移行します。

ステージ3の乳がんの治療目標

ステージ3の乳がんの治療は以下の目標に焦点を当てます。

  • 腫瘍の縮小:手術実施が困難な大きさの腫瘍を縮小するため、術前化学療法(ネオアジュバント療法)を行う。これにより手術の成功率向上と乳房温存の可能性が高まる。
  • 局所制御:手術で腫瘍とリンパ節転移を完全に除去し、その後の放射線治療で局所再発リスクを低減する。
  • 全身治療:化学療法やホルモン療法、分子標的療法などを組み合わせて、目に見えない微小転移を排除し、遠隔転移の発生を防ぐ。

多角的アプローチにより、ステージ3であっても長期生存と完全寛解の可能性があります。

乳がん(ステージ3)の治療法

ステージ3の乳がんは局所進行性であり、治療には複合的なアプローチが必要です。このステージでは、腫瘍が大きく、リンパ節転移が広範囲に及んでいることが多いため、手術だけでなく、化学療法、放射線療法、および薬物療法を組み合わせた集学的治療が標準となります。

早期の段階よりも積極的な治療計画が必要ですが、適切な治療により良好な治療成績が期待できます。

術前化学療法(ネオアジュバント化学療法)

術前化学療法は、手術前に行う薬物療法で、腫瘍を縮小させることを目的としています。ステージ3の乳がんでは、腫瘍が大きく手術が困難なケースが多いため、術前化学療法によって腫瘍を小さくすることで、手術の実施可能性や乳房温存の可能性が高まるケースが多いでしょう。

術前化学療法への反応性を評価することで、治療効果を早期に判断でき、必要に応じて治療法を調整できるメリットもあります。とくに「病理学的完全奏効(pCR)」が得られた場合は、予後が良好とされています。

薬物療法

ステージ3の乳がんの薬物療法は、がんの生物学的特性に基づいて選択されます。

  • 化学療法:アドリアマイシン系薬剤とタキサン系薬剤の併用が一般的
  • ホルモン療法:エストロゲン受容体(ER)またはプロゲステロン受容体(PR)陽性の場合に実施
  • 分子標的療法:HER2強陽性の場合はトラスツズマブなどの分子標的薬を使用

これらの治療法は、肉眼では確認できない微小ながん細胞を排除し、再発を防止するために極めて重要です。治療全体の期間は、患者さんの状態や治療に対する反応に応じて調整されます。

手術

ステージ3の乳がんの手術は、腫瘍の状態により以下のいずれかが選択されます。

  • 乳房全切除術:腫瘍と共に乳房全体を摘出する方法で、進行した乳がんでは最も一般的
  • 乳房部分切除術:術前化学療法で腫瘍が十分縮小した場合に検討される

また、リンパ節転移の評価のため、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩リンパ節にがんが転移していた場合、腋窩リンパ節郭清が行われます。

放射線治療

手術後の放射線治療は、ステージ3の乳がんではほぼ必須の治療です。標準では以下の部位に照射されます。

  • 胸壁全体(手術した胸の範囲)
  • 鎖骨上窩(首の付け根で鎖骨の上の部分)

しこりが手術で取り切れていない可能性がある際は、しこりのあった周囲に追加照射します。症状によっては、内胸リンパ節にも照射する場合があります。

放射線治療は通常1日1回、週5回4〜6週間です。近年では、より精密な照射技術により、心臓や肺などの正常組織への影響を最小限に抑えることが可能になっています。(文献4

ステージ3を含む乳がん患者に対するサポート

ステージ3のような進行した乳がんの状態で診断された患者さんは、身体的な治療だけでなく、精神的・社会的なサポートも必要とします。包括的なアプローチにより、治療効果の向上だけでなく、患者さんの生活の質も大きく改善が可能です。

適切なサポートシステムの構築は、治療成功のポイントとなります。

心の変化と向き合う

乳がんと診断されると、多くの患者さんは感情の波に直面します。

  • ショックと不安:診断直後は「これから何が起こるのか」と不確実性に対する強い不安や恐怖を感じるのが一般的
  • 怒りや否定:「なぜ自分が?」との怒りや「何かの間違いではないか」と現実逃避的な感情が生じることもある
  • 悲しみと喪失感:身体の変化や将来の不確実性に対する悲しみを経験する場合がある

これらの感情はすべて正常な反応であり、感情を抑え込むのではなく、適切に表現していくと心の回復につながります。さまざまな感情を経験すれば、現実に向き合い、前向きな対処を見つけられるでしょう。

家族・専門家の協力

乳がんの治療過程では、患者さん一人だけで困難に立ち向かうのではなく、周囲の人々のサポートを受けることが重要です。ステージ3のような進行した状態では、長期間にわたる複合的な治療が必要となり、心身への負担も大きくなるため、支援ネットワークの構築が治療成功のポイントとなります。

  • 家族や友人との共有:信頼できる身近な人に自分の気持ちを打ち明けることで、孤独感が軽減され、精神的な支えを得られる。家族も患者の気持ちに寄り添いながら、自身の心身の健康維持が必要
  • 専門家へのアクセス:心理カウンセラーやがん専門医などの専門家に相談することで、専門的な精神的サポートを受けられる。「がん相談支援センター」や「患者会」も有用な社会的資源

多くの医療機関では、精神的、社会的なサポートチームが乳がん治療の一環として組み込まれており、必要に応じて利用できます。

情報を見極める

情報過多の時代において、質の高い情報源の選択が重要です。

  • 信頼できる情報源:国立がん研究センターや日本乳癌学会などの公的機関や専門学会が提供する情報は、科学的根拠に基づいており信頼性が高い
  • 情報の更新:乳がん治療は急速に進歩しているため、最新の情報を得ることが重要
    個別化された情報:一般的な情報は参考になるが、最終的には担当医から自分の状態に合わせた具体的な情報を得ることが大切

正確な情報を得ていくと不確実性が減り、前向きに治療を受けようとする気持ちになります。

ステージ3の乳がんでもあなたらしい人生を歩むために

ステージ3の乳がんの診断は、人生における大きな試練ですが、多くの患者さんが治療を乗り越え、充実した日々を取り戻しています。治療の過程では、自分のペースを大切にし、無理せず休息をとることも重要です。適切な医学的治療を受けながら、心のケアも怠らず、信頼できる人々のサポートを受け入れましょう。

病気と向き合う日々の中でも、自分らしさを失わないことが大切です。「患者」である前に、あなたは一人の人間です。趣味や楽しみを見つけ、小さな喜びを大切にしながら、自分自身の人生を送っていきましょう。

今この瞬間を生きることで、病気があっても豊かな人生を歩めます。

乳がんでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談オンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。

\まずは当院にお問い合わせください/

ステージ3の乳がんに関するよくある質問

ステージ3の乳がんの治療期間はどのくらいかかりますか?

ステージ3の乳がんの治療は複数の段階に分かれており、全体としては1年前後の期間を要することが一般的です。個々の状況により異なりますが、主な流れと期間の目安は以下の通りです。

  • 診断確定期間:針生検から病理検査、CT・MRIなどの画像診断まで、2週間程度
  • 術前化学療法:ステージ3では腫瘍縮小のため、通常4~6カ月
  • 手術入院:術式により異なるが、1~2週間
  • 放射線治療:1日1回、週5日のペースで4~6週間
  • 術後薬物療法:ホルモン療法や分子標的療法などは、状況により5~10年継続

文献5)(文献6

ステージ3の乳がんに治療費の補助はありますか?

ステージ3の乳がんの治療には高額な医療費がかかりますが、以下のような公的支援制度があります。

高額療養費制度 ・公的医療保険に基づき、1か月の医療費(保険適用分)が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、その超過分が払い戻される
・自己負担限度額は年齢や所得によって異なり、事前に「限度額適用認定証」を取得すると窓口での支払いが軽減される
医療費控除 ・年間で支払った医療費が一定額を超えた場合、所得税の還付や住民税の軽減を受けられる
・治療費だけでなく、通院交通費なども対象になる場合がある
傷病手当金 ・健康保険に加入している会社員や公務員が対象で、治療のために仕事を休む場合、給与の一部が補填される
自治体独自の助成制度 ・各自治体が実施する医療費助成制度や生活福祉資金貸付制度などがある
がん相談支援センター ・全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、治療費や補助制度について無料で相談できる

文献7

制度を活用すると、乳がん治療による経済的負担を大幅に軽減できます。具体的な手続きについては、加入している保険窓口や自治体に相談することをおすすめします。

ステージ3の乳がんは仕事を続けることはできますか?

ステージ3の乳がんでも、多くの患者さんが治療と仕事を両立させています。治療内容や個人の体調、職種によって調整は必要ですが、工夫次第で継続可能です。

職場との早期相談が重要で、時短勤務やフレックスタイム、テレワークなどの柔軟な勤務形態を活用すると良いでしょう。通院スケジュールに合わせた勤務調整も効果的です。治療中は副作用による体調変化があるため、無理をせず体調に応じて働くことが大切です。

必要に応じて産業医や医療機関のソーシャルワーカーに相談するなど、サポートを受けながら社会とのつながりを維持していくと、精神面でも安定するでしょう。

参考文献

文献1

中外製薬「乳がんのステージ分類って?」おしえて乳がんのコト、2024年12月12日
https://oshiete-gan.jp/breast/diagnosis/stages/detail.html(最終アクセス:2025年4月13日)

文献2

国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がんについて」がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/print.html#blockskip(最終アクセス:2025年4月13日)

文献3

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 がん登録センター 「院内がん登録 2013-2014年5年生存率集計 」2021年
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/pdf/hosp_c_reg_surv_2013-2014.pdf(最終アクセス:2025年4月13日)

文献4

国立研究開発法人国立がん研究センター「乳がん 治療」がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html#blockskip(最終アクセス:2025年4月13日)

文献5

横浜市立みなと赤十字病院 ブレストセンター「治療にかかる期間」横浜市立みなと赤十字病院ホームページ
https://www.yokohama.jrc.or.jp/breast-surgery/breast-info/treatment/summary-02.html(最終アクセス:2025年4月13日)

文献6

一般社団法人日本乳癌学会「Q32 ホルモン療法(内分泌療法)は,どのくらいの期間続けたらよいのでしょうか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/40-2/q32/(最終アクセス:2025年4月13日)

文献7

一般社団法人日本乳癌学会「Q13 乳がん治療に際して受けられる経済面や生活面での支援制度はありますか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/002-2/q13/(最終アクセス:2025年4月13日)

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