高血圧の原因に女性ホルモンの影響が?更年期高血圧と対策
公開日: 2024.04.22更新日: 2024.10.07
目次
高血圧の原因に女性ホルモンの影響が?更年期高血圧と対策
高血圧は生活習慣病の一つとして広く知られています。
しかし、高血圧の裏に別の病気が隠れていることも少なくありません。
思い当たる節がないのになぜか血圧が高いと思ったことは?その高血圧は、更年期によるものかもしれません。
40〜50代の女性が注意すべき更年期高血圧!
更年期は、女性ならば誰しもが通る道です。そして、更年期の変化によって生じる高血圧を『更年期高血圧』と呼びます。
これまで健康診断に引っかかることもなかったのに急に血圧が上がったり、生活習慣には気をつけているのに血圧を測ったら高かった、などということがあれば要注意!高血圧を放置しておくと、心臓病や脳血管障害に繋がることも。だからこそ、病態を理解し、きちんと対策を行うことが大切なのです。
女性ホルモンの減少によって生じる更年期障害
更年期とは、閉経前後それぞれ5年間を合わせた10年間を指します。日本人の平均閉経年齢は50歳とされていますが、早い人では40代前半、遅い人では60歳手前で迎えることもあります。
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。更年期になると卵巣機能が低下し、それに伴い女性ホルモンも減少します。このうちエストロゲンの減少が、更年期障害の発症に大きく関わっていると考えられています。ホルモンバランスを保てなくなったことに対して、脳がそれを補おうと必死に身体に様々な命令を送り、それが更年期症状として現れてしまうのです。
加えて、加齢による身体的影響、性格などの心理的影響、そして家庭や仕事によるストレスが複雑に絡み合い、個々の症状に現れてきます。症状が軽度で済む人もいれば、日常生活に支障が出るくらい重い症状を呈する人もいます。軽度の場合は更年期症状、症状が重くなると更年期障害となります。
多岐にわたる更年期症状ですが、高血圧以外には以下のようなものが挙げられます。
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それでは、どうして更年期になると血圧まで影響を受けてしまうのでしょうか?
更年期障害と高血圧の関係性
日常生活の中で、例えば運動中は血圧は上がり、運動後リラックスしている時は血圧が下がります。このように血圧の変動がある中でも、私たちの身体は常に一定の血圧を保持できるよう機能しており、高くなりすぎず、低くなりすぎないように調整されているのです。エストロゲンは、その調整因子の一つであり、血管を広げて血圧を下げる働きをします。よって、このエストロゲンが減少すると、血圧は下がりにくくなってしまうのです。
さらにもう一つ、自律神経の乱れも更年期高血圧に大きく関わる因子です。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。活発な時や緊張状態の時には交感神経が優位となり、血管が収縮して血圧が上昇します。逆に休んでいる時や就寝中は副交感神経が優位となり、血管は拡張して血圧が下がります。このように血圧調整にとても大切な自律神経ですが、女性ホルモン低下に追いつけないことでパニックになった脳は、様々な命令を身体に送る中で、自律神経も乱してしまうのです。自律神経の乱れは血圧変動のみならず、上記に述べたような精神症状や身体症状の原因にもなっています。
このようにエストロゲンの減少と自律神経の乱れは、本来私たちに備わっている血圧調整の歯車を狂わせ、結果的に更年期高血圧を引き起こすのです。
更年期高血圧の特徴とは?
更年期高血圧の特徴は、大きく2つあります。
特徴①40〜50代の女性に生じる
まず一つ目の特徴として、更年期に生じる高血圧のため、40〜50代の女性にみられます。
それゆえ、更年期を過ぎると血圧も正常化する人もいます。しかし、加齢とともに血管の老化や自律神経の働きが低下し、更年期高血圧以降もそのまま高血圧に転じてしまう人も多くみられます。
特徴②血圧が不安定になり上がりやすくなる
二つ目の特徴は、血圧が不安定になることです。
不安やイライラなどの精神的な要素も加味され、ちょっとしたことで血圧が上がりやすくなっています。
更年期高血圧に!今日から自分でできる対策
今日からご自身で始められる、更年期高血圧の対策をいくつかご紹介いたします。
血圧の管理
まずは血圧の測定を定期的に行い、その血圧上昇が一時的なものなのか、あるいは血圧が高い状態がずっと続いているのか、そしてどのような時に高くなるのか確かめることが大切です。
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外出時は精神的・身体的・環境的因子が血圧に影響することも多いため、自宅での血圧測定を推奨します。
定期測定は起床時と就寝前の2回、そしてめまいや動悸など、上記の更年期症状が出た際にも血圧を測定し、血圧の推移とともにどのような状況で血圧が上がったのかを書き留めておくと良いでしょう。自分の状況を把握するだけでなく、医師からの診察の際にも役立ちます。
生活習慣の見直し
次に、生活習慣の見直しも行いましょう。
冒頭で述べたとおり、塩分過多は高血圧の原因として最も多いとされています。また、肥満は動脈硬化を起こし、結果的に高血圧を生じさせます。
近年は特に、インスタント・冷凍食品の改良化や食事のデリバリー事業などが進み、便利な時代となりました。しかし、既製品や外食は塩分量とカロリーが高くなる傾向にあります。減塩調味料の使用や野菜多めの食事を心がけるようにしましょう。
運動習慣を取り入れる
仕事や家事に追われて、なかなか運動の時間をとるのが難しい方もいらっしゃいます。
1日の中で、少し早起きしてウォーキングをしてみる、パソコンで10分のエクササイズ動画を真似してみる、休日にスポーツセンターに行ってみる、一駅分歩いてみる、など小さなことで構いません。
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自分のできる範囲内で何か始めてみましょう。運動するとイライラした気持ちも収まり、身も心もスッキリします。
睡眠時間を十分に取る
睡眠不足は交感神経を刺激し、高血圧を引き起こします。
しかし更年期障害の一つに不眠もあり、夜なかなか寝付けない人もいるかと思います。
就寝時間の2時間前までに食事を摂り終える、布団に入ったらスマートフォンはいじらない、夜にカフェインやお酒は控える、リラックス効果のある香りや音楽をつけてみる、などの工夫をおすすめします。
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ここまでの対策は自身でできることですが、やはり重症化予防の鍵は早期受診となります。
高血圧を適切に治療しなかった場合、心臓や脳の血管に障害を生じ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がります。こうならないためにも、適切な治療を受けることが必要です。
循環器内科を受診しましょう
更年期症状の改善に関しては婦人科、高血圧の改善に関しては循環器内科が専門となります。今はオンライン診療やオンライン医療相談も広まってきていますので、コロナ以降病院から足が遠のいた方や忙しい人も医師に気軽に相談できます。気になる方はぜひ調べてみてください。
治療法としては、上記に述べたような生活指導の上、高血圧に対しては降圧薬、更年期症状に対しては漢方薬や抗精神薬の処方、そして必要な場合にはホルモン療法なども検討されます。
どの治療法になるかは、患者さん一人一人に合った方法を医師と相談して決めていくこととなります。
まとめ・高血圧の原因に女性ホルモンの影響が?更年期高血圧と対策
更年期高血圧は、更年期の身体の変化に伴って生じるものです。
更年期を過ぎると血圧が元に戻ることもありますが、多くの場合は加齢の変化と相まって高血圧のままとなります。命を脅かす病気に発展しないよう、血圧のコントロールを行うことが大切です。
毎日の生活習慣を改善し、早期に病院を受診しましょう。このコラムがご参考なれば幸いです。
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