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高血圧の原因と対策:食事・運動・薬で血圧をコントロール!

高血圧の原因と対策:食事・運動・薬で血圧をコントロール!

高血圧を放置すると、脳卒中・心疾患・腎臓病など命に関わる病気に発展するリスクがあります。

それにもかかわらず、国内で4300万人と推計されている高血圧罹患者のうち、適切に血圧がコントロールされているのはたった3分の1といわれています。残りの3分の2の方はコントロール不良あるいは未治療、その半数は自分が高血圧であることに気づいてすらいないのです。

高血圧は、気がつかない間に重大な病気を引き起こし得るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。

血圧を予防・改善するには何をすれば良いのでしょうか。鍵となるのは、食事や運動の見直しと適切な薬の使用です。

本記事では、高血圧の原因や症状、基準値などの基本的な情報とともに、効果的な対策法を分かりやすく解説していきます。

高血圧 食事 薬 運動でコントロール

高血圧の原因:何が血圧を上げるのか

高血圧には、原因別に「二次性高血圧」と「本態性高血圧」の2つがあります。

二次性高血圧

二次性高血圧は、特定の病気が原因で血圧が上昇するケースを指します。

その病気を治療することで、高血圧を改善することが期待できます。

本態性高血圧

本態性高血圧は、複合的な原因で起こる高血圧のことです。

原因として、体質や遺伝的な要素に加え、不適切な食事・肥満・運動不足・喫煙などの生活習慣が関係しています。特に日本人は塩分をとりすぎやすく、血圧上昇に大きな影響があります。血圧を下げるためには減塩をはじめとした生活習慣の改善に取り組むことが必要です。

二つの高血圧のうち、圧倒的に多いのは本態性高血圧です。この記事でも主に本態性高血圧について取り上げていきます。

高血圧診断の基本:血圧の基準値とは

高血圧の診断は、診察室と自宅それぞれの血圧測定で行います。

まず、診察室血圧が【収縮期血圧140/拡張期血圧90mmHg以上】であれば自宅で血圧を測定します。

自宅の血圧が135/85mmHgであれば高血圧の確定診断となります。自宅での血圧が測定できない場合は、診察室の血圧だけでも「高血圧」と考えます。

では、基準値より低ければ正常かというと、そうではありません。

「正常血圧」は、診察室で測った血圧が120/80mmHg未満、自宅で測った血圧が115/75mmHg未満の場合を指します。

高血圧でなくても、正常血圧より高いグレーゾーンがあるのです。

病院での測定値で120〜139/80〜89mmHg、家庭血圧で115〜134/75〜84mmHgの場合が、以下のグレーゾーンに該当します。

高血圧表日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019

高血圧の診断を満たさなくとも、血圧が高くなるにつれて脳卒中や心筋梗塞などの「脳心血管の疾患」が起こりやすいのです。また、グレーゾーンの方は生涯のうちに「高血圧」の基準を満たす可能性も高くなります。たとえ診断に至らなくても、血圧が高めの方は対策をとることをおすすめします。

また、自宅での血圧が高血圧に該当しなくても、診察室血圧のみが高血圧の基準を満たす場合は「白衣高血圧」といいます。白衣高血圧の方は高血圧でない方と比べて、将来的に脳心血管の病気を起こすリスクが高く、要注意です。

自宅血圧測定の方法:計測する時間帯や回数

自宅で血圧を測定することは高血圧の診断に重要ですが、それ以上に治療においても重要です。家庭血圧が降圧治療の一番の指標になるからです。

家庭血圧が正常範囲になることが、高血圧対策が有効と判断する重要な材料になるのです。高血圧と診断されたら、家庭血圧を毎日測って把握することが治療の第一歩になります。

では、家庭で血圧を測定するときのポイントをお伝えします。

家庭血圧測定のポイント

1日の中で血圧を測る時間帯は、朝と夜の両方が基本です。

朝は起きてから1時間以内に測ります。朝ごはんを食べる前、薬を飲む前、トイレに行った後が良いです。測定前に水分を取ることは構いません。夜は寝る前に測定しましょう。

血圧測定時は、1〜2分間じっと落ち着いてから行います。測る前に深呼吸をしてリラックスしましょう。急いで測定すると、正確な血圧が出ないことがあります。

血圧は原則的には、都度2回測定します。2回の結果はどちらとも記録しておきましょう。つまり、朝2回、夜2回、計4回測ります。

  • ・起床後  1時間以内に2回
  • ・就寝前 2回

2回測った血圧の値は、平均値で判断します。

高血圧の診断や治療の効果を判断するには、5〜7日間の血圧の平均値を用います。そのため、毎回の血圧測定毎に「高かった」「今日は下がっている」と一喜一憂することはあまり意味がありません。

家庭血圧測定で一番大事なことは、継続することです。ご自身の生活スタイルに合わせて測定時間を調整しましょう。

毎日決まった時間に測定することが望ましいですが、難しい場合は担当医師と相談しましょう。

高血圧の自覚症状:頭痛・肩こりとの関係と潜むリスク

高血圧のみでは自覚症状がないことが多いです。人によっては、血圧が高いと軽度の頭痛や肩こりなどの症状が現れることがあります。

一方で、血圧が急激に高くなることによって危険な状態に陥る場合もあります。それが、「高血圧緊急症」です。脳・心臓・腎臓・大きな血管などに障害をきたし、放置すると命に関わります。多くの場合は180/120mmHg以上の高度の血圧上昇により起こるものです。

高血圧緊急症の例として次のような疾患が含まれます。

  • 〈高血圧緊急症の例〉
  • ・高血圧性脳症
  • ・脳卒中
  • ・急性大動脈解離
  • ・急性心不全
  • ・急性心筋梗塞
  • ・急性腎不全

とくに「高血圧性脳症」は耳慣れない言葉かもしれません。これは急激に血圧が上昇することで、脳の血流が必要以上に増加して脳が浮腫む病気です。

そのまま放置すると脳出血や昏睡状態を引き起こし、命を落とす危険性もあります。急激な血圧上昇に加えて悪化する頭痛・吐き気・嘔吐・視力の障害・意識障害・痙攣などの症状は、緊急で受診をする必要があります。

高血圧対策!生活習慣の見直しで予防・改善

高血圧は生活習慣病であり、生活習慣を見直すことは高血圧の予防・改善の第一歩です。

具体的に改善すべき点の例を以下に挙げます。

  • 〈高血圧対策において見直すべき項目〉
  • ・塩分を控えめにしているか
  • ・食事の内容は野菜・果物・魚などが中心になっているか
  • ・運動習慣があるか
  • ・適正な体重(BMI 25kg/m2未満)を維持できているか
  • ・お酒を飲み過ぎていないか(エタノールで男性20-30mL/日、女性で10-20mL/日以下)
  • ・タバコを吸っていないか

このような項目の1つだけを見直したとしても、一気に10mmHgも20mmHgも血圧が下がるものではありません。2つ、3つと可能な限り複数合わせて取り組むことで、大きな効果をもたらす可能性はあります。

降圧薬を飲んでいる状況でも、生活習慣を改善することで薬を減らすことができるかもしれません。それぞれの項目は互いに関連することも多いため、まずはできることから始めましょう。

食事療法で高い血圧を下げるには

食事で血圧を下げるのに重要な見直しポイントは「減塩」と「食事の内容と量」です。また、「飲酒量のコントロール」も大切です。一つずつ解説していきましょう。

減塩について

減塩については、1日に6g未満を目標にします。

厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査によると日本人の1日の塩分摂取量の推定は10.1gとされています。多くの日本人にとって6g未満の塩分量の食事は、非常に薄味に感じるでしょう。

医療機関では尿検査で1日の塩分量の推定をすることができます。あくまで推定値で誤差はありますが、自分がどのくらいの塩分を取っているかを知る一つの目安になるでしょう。気になる方はかかりつけの病院や最寄りの医療機関で相談してみてください。

減塩のポイントは、出汁やスパイス、お酢などを上手に使うことです。また、漬物やハム・ソーセージなどの加工食品には食塩が多く含まれるためなるべく避けましょう。味噌汁やラーメン・うどんなどの汁は飲み干さないようにしましょう。

食事の内容と量

食事の内容としては、野菜・果物・魚を積極的に摂り、肉類など動物性の脂肪は控えめにすることが重要です。

野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分に含まれるナトリウムを排出させて血圧を下げることがわかっています。ただし、カリウム摂取については腎臓病の方は制限が必要な場合もあります。通院中の方は主治医の指示に従いましょう。

肉や高脂肪の乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸が過多になると、血中のコレステロールが増え動脈硬化が進み血圧が上がります。一方で魚や多くの植物性油脂・ナッツなどに多く含まれる不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減らし血圧を下げる効果があります。

そして、どんなに体に良い食事でも食べ過ぎは肥満のもとです。肥満は血圧上昇とも関連するため、腹八分目を心がけましょう。

飲酒量のコントロール

飲酒習慣は血圧を高くします。節酒も血圧を下げるのに有効です。高血圧がある方の飲酒量の目安は1日あたりエタノールで男性20-30mL、女性で10-20mL以下です。

  • 〈1日あたりの飲酒量の目安:男性の場合〉
  • ・日本酒 1合
  • ・ビール 中瓶1本
  • ・焼酎 0.5合
  • ・ウイスキー ダブル(約60mL)
  • ・ワイン 2杯

※女性はこの半分を目安にしてください。

運動療法で血圧は下がる?有酸素運動のすすめ

運動は血圧を下げるだけでなく、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防や改善にも効果があります。

おすすめは有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳など、ご自身が楽しいと感じるものが継続しやすいでしょう。

「少しきつい」と感じるくらいの運動強度で、1日30分以上行ってください。

毎日続けるのが難しい場合は、まずは週に1回でも運動習慣を作るところから始めてみてはいがかでしょうか。

薬物療法による高血圧のコントロールについて知ろう

高血圧の薬は様々な作用機序で血圧を下げます。代表的なものは以下の通りです。

  • 〈代表的な降圧薬〉
  • ・ACE阻害薬、ARB:血圧を上昇させるホルモンの作用を阻害する
  • ・カルシウム拮抗薬:血管を拡張させて血圧を下げる
  • ・利尿薬:余分な水分やナトリウムを体外に排出する
  • ・β遮断薬:交感神経を抑制して心収縮を抑えて血圧を下げる

血圧を下げる薬を内服する上で大切なことがあります。それは、血圧が下がっても自己判断で中止しないことです。

どのような降圧薬であっても、効果はあくまで一時的なものです。飲み始めて血圧が下がったからと内服をやめてしまうと、元の高い血圧に戻ってしまいます。ただし、生活習慣を良くしていくことで徐々に減薬・中止をすることができる方もいます。薬の調整は、運動や食事に気をつけながら、家庭血圧の測定結果をもとに医師と相談して決めましょう。

まとめ・高血圧は食事・運動・薬でコントロール!

本記事では高血圧の原因をはじめとした基本情報と、効果的な対策について説明しました。

高血圧の多くを占める本態性高血圧では、塩分のとりすぎをはじめとした生活習慣が大きく関わっています。症状がないからといって高血圧を放置すると、命に関わる病気を起こしかねません。

血圧が気になるのであれば、まずは定期的な血圧測定を行い日々の血圧がどのくらいかを把握するように努めましょう。

高血圧対策の第一歩は生活習慣を改善することです。一気に運動も食事も改善しようとするのが難しければ、できるところから始めてみましょう。薬をすでに処方されている方は、しっかり続けることもお忘れなく。

本コラムが皆様の健康的な生活に少しでも役立ちますと幸いです。

 

No.2
監修:医師 渡久地 政尚

参考文献

厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告

日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019

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