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関節リウマチと遺伝の関係性・要因を現役医師が詳しく解説

「手の指が腫れていて、こわばる感じがする」
「これは関節リウマチの症状なのだろうか」
「血縁者にリウマチ患者がいるので、遺伝したのではないか」
関節リウマチと思われる症状と遺伝に関して、お悩みの方もいらっしゃることでしょう。 関節リウマチ発症には遺伝的要素もありますが、確実に遺伝するものではありません。環境要因も発症に関係するためです。
本記事では、関節リウマチと遺伝の関係性やその他の要因、予防法などについて解説します。
遺伝に関する疑問が解消できますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
関節リウマチと遺伝の関係
関節リウマチは、自分の免疫が関節の滑膜を攻撃することで関節炎を引き起こす疾患です。
関節リウマチを発症する原因は現在も完全には解明されていません。しかし、関節リウマチを含む自己免疫疾患には遺伝的な背景があるとされています。
親が関節リウマチである場合、子の発症リスクは約3倍になるといった報告もあるほか、患者の三親等以内の血縁者は33.9%の確率で発症するとされています。(文献1)(文献2)
三親等以内とは、子や孫、ひ孫、きょうだい、甥、姪といった範囲です。親や祖父母、曾祖父母、おじ・おばも三親等以内の血縁者に入ります。
一卵性双生児での発症一致率は12~15%程度、二卵性双生児やきょうだい間の発症一致率は2~4%程度とされています。(文献3)
しかし、関節リウマチは確実に遺伝する疾患ではありません。遺伝的背景に加えて環境要因も関係するためです。血縁者に関節リウマチ患者がいても発症しない場合がありますし、血縁者に関節リウマチ患者がいない方でも発症するケースがあります。
関節リウマチと遺伝の関係については、下記の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
関節リウマチの発症に関わる遺伝子
関節リウマチの発症に関わる遺伝子は、主に以下のとおりです。
- HLA
- PTPN22
- PADI4
- CCR6
- IL2RA
- TNFAIP3
- TYK2
- IRF5
- IRAK1
- CD40
この中でも、関節リウマチ発症に比較的大きな影響を持つのがHLA遺伝子(ヒト白血球抗原遺伝子)です。
HLA遺伝子は、クラスⅠからクラスⅢまでの3領域にわかれます。(文献4)クラスⅡの1つ「HLA-DRB1遺伝子」が関節リウマチと深い関係にあるとの研究結果が示されています。(文献5)
関節リウマチにおける主な検査
関節リウマチにおける主な検査は、血液検査や画像診断などです。
血液検査では免疫反応や炎症反応を調べ、画像診断では関節の炎症や破壊の状況を直接調べます。
関節リウマチの遺伝子検査は一部の民間遺伝子解析サービスで実施されていますが、医療機関で診断に用いられているケースはまれであると考えて良いでしょう。
一部の自己炎症性疾患に対して、遺伝子検査を実施している医療機関もあります。
関節リウマチの検査については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【遺伝で諦めない】関節リウマチの予防法
関節リウマチ発症の予防法として考えられるのは、主に以下の3つです。
- 禁煙
- 歯周病予防
- 食生活改善
喫煙および受動喫煙は、関節リウマチ発症に大きな影響を及ぼすとされており、禁煙は大切な予防行動です。(文献6)
歯周病菌も関節リウマチ発症に関与している可能性が高いとされています。(文献7)そのため、毎日の口腔ケアや定期的な歯科検診といった歯周病予防の実践も、関節リウマチ予防には大切です。
食生活改善のためには、サバやサンマ、鮭などの魚介類や大豆製品を積極的に摂ると良いでしょう。これらの食品には、関節リウマチの発症予防効果があるとされる多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。(文献8)
関節リウマチにとって、望ましくない行動もあります。以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
遺伝の有無にかかわらず関節リウマチの症状がある場合は早めに医療機関を受診しよう
関節リウマチの発症には遺伝的要素も含まれていますが、関節リウマチを遺伝性疾患と断定することは困難です。
関節リウマチ発症には環境要因も関係しているため、血縁者にリウマチ患者がいない場合でも発症するケースがあるためです。
手や指の関節痛や腫れなど、関節リウマチと思われる症状が見られた場合は、遺伝関係の有無に関わらず、早めに医療機関を受診しましょう。まずはかかりつけ医に相談し、リウマチ科や膠原病科、整形外科などにかかることが望ましい流れです。
当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しております。関節リウマチについて、不安や疑問がある方は、お気軽にお問い合わせください。
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関節リウマチと遺伝に関するよくある質問
関節リウマチになりやすいのはどのような人ですか?
日本での関節リウマチ患者数は60万人〜100万人程度といわれており、人口の約0.5%から1%が関節リウマチ患者とされています。(文献2)
関節リウマチは女性に多い疾患であり、男女比は1対4程度です。
年齢で見ると、最も多いのは30代から50代とされてきました。しかし近年では、65歳以上で発症する「高齢発症関節リウマチ」も増えています。高齢で発症する場合、男女差は目立たない状況です。
関節リウマチ発症における遺伝以外の要因とは何ですか?
関節リウマチ発症における遺伝以外の要因として挙げられるものの中で、もっとも関係性が高いものは喫煙です。
喫煙は、関節リウマチの活動性を上昇させて、治療の効果も弱めます。喫煙歴がある方や現在喫煙中の方の場合、男性では2~3倍、女性では1.2~1.3倍程度発症率が高くなるとされています。(文献9)
歯周病も関節リウマチとの関連が注目されている要因です。
歯周病によって、口腔内を含めた体内のタンパク質がシトルリン化される可能性があります。(文献10)タンパク質がシトルリン化された結果作られる物質が、抗CCP抗体です。
抗CCP抗体は関節リウマチ発症に関連するとされています。
参考文献
(文献1) 京都大学医学部附属病院 リウマチセンター 京大リウマチ通信「関節リウマチと遺伝」2024年
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献2) 慶應義塾大学病院「関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)」慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトKOMPAS,2023年03月03日
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000402/
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献3) 山本一彦.「関節リウマチ(RA):トピックス診断と治療の進歩Ⅰ.病因 1.関節リウマチの遺伝的要因」『日本内科学会雑誌』101(10), pp.2818-2823, 2012
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/10/101_2818/_pdf
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献4) 藤尾圭志.「関節リウマチのゲノム医療の入り口としてのHLA遺伝子」『臨床リウマチ』33(2), pp.92-98, 2021
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/33/2/33_92/_pdf/-char/ja
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献5) Kwangwoo Kim, et al.(2016). Imputing Variants in HLA-DR Beta Genes Reveals That HLA-DRB1 Is Solely Associated with Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus.PLOS ONE, 11(2), pp.1-7.
https://journals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.0150283&type=printable
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献6) Yuki Ishikawa & Chikashi Terao(2020). The Impact of Cigarette Smoking on Risk of Rheumatoid Arthritis: A Narrative Review.Cells,9(2),pp.1-24.
https://www.mdpi.com/2073-4409/9/2/475
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献7) Anna Krutyhołowa, et al. (2022).Host and bacterial factors linking periodontitis and rheumatoid arthritis. Frontiers in Immunology,13,pp.01-17.
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2022.980805/full
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献8) Simona Gabriela Bungau, et al.(2021). Probiotics in Rheumatoid Arthritis. Nutrients,13(10), pp.1-18.
https://www.mdpi.com/2072-6643/13/10/3376
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献9) 川人豊「関節リウマチ(RA):トピックス診断と治療の進歩Ⅰ.病因 2.環境的要因」『日本内科学会雑誌』101(10), pp.2824-2829, 2012
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/10/101_2824/_pdf
(最終アクセス:2025年5月21日)
(文献10) 山本一彦「関節リウマチの発症:遺伝要因と環境要因」『日本温泉気候物理医学会雑誌』77(10), pp.20-21, 2013
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/77/1/77_20/_pdf
(最終アクセス:2025年5月21日)