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関節リウマチと遺伝の関係性|検査方法や予防法を現役医師が解説

関節リウマチ 遺伝
公開日: 2025.05.30 更新日: 2025.11.29

「手の指が腫れていて、こわばる感じがする。」「血縁者にリウマチ患者がいるので、遺伝したのでは?」などと、関節リウマチの症状や遺伝について不安を抱える方もいるのではないでしょうか。

関節リウマチ発症には遺伝的要素もありますが、環境要因も発症に関係するため、確実に遺伝するわけではありません。

本記事では、関節リウマチと遺伝の関係性やその他の要因、予防法などについて解説します。

関節リウマチと遺伝に関する疑問を解消したい方は、参考にしてみてください。

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関節リウマチは遺伝要因と生活習慣が関係する

関節リウマチは、自分の免疫細胞が関節の滑膜を攻撃することで関節炎を引き起こす疾患です。

関節リウマチを発症する原因は、現在も完全には解明されていませんが、遺伝的な要因に加えて生活習慣が背景にあるとされています。

たとえば、家族内では食習慣や喫煙習慣などが受け継がれるケースがあるため、関節リウマチの発症リスクと間接的に関係する場合があるのです。

遺伝要因としては、「HLA-DR4」や「HLA-DR1」など、ヒト白血球抗原(HLA)に分類される特定の遺伝子の存在が関与しているとされています。

ただし、関節リウマチの遺伝は、いわゆる単一遺伝子疾患とは異なり、発症に関与する複数の遺伝子が複雑に関係しています。

つまり、特定の遺伝子を持っているからといって、必ずしも関節リウマチを発症するわけではありません。

関節リウマチと遺伝の関係については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

関節リウマチが遺伝する確率

家族歴がある場合、関節リウマチの発症リスクは高くなることが知られています。複数の研究により、親や兄弟姉妹が関節リウマチである場合、発症リスクは一般人口の約3〜12倍になると報告されています。(文献1)(文献2

一卵性双生児での発症一致率は12~15%程度、二卵性双生児や兄弟姉妹間の発症一致率は2~4%程度とされています。(文献3

しかし、関節リウマチは遺伝的背景に加えて環境要因も関係するため、確実に遺伝する疾患ではありません。

血縁者に関節リウマチ患者がいても発症しない場合がありますし、血縁者に関節リウマチ患者がいない方でも発症するケースがある点に留意しておきましょう。

男性より女性のほうが遺伝しやすい

関節リウマチは女性に多く見られる疾患であり、発症には男女差が大きく影響していることが知られています。

日本リウマチ学会によると、男女比はおよそ1:3.21で女性に多いとされ、女性ホルモンや免疫機能の違いが関与している可能性があると考えられています。(文献4

また、関節リウマチの発症年齢は一般的に40~60代に多く見られますが、最近では高齢になってから症状が現れるケースが増加傾向にある点も見逃せません。

高齢の発症例では、男女比は1:2~3程度と報告されており、全体と比較して性別による差がやや小さくなる傾向があります。(文献4

したがって、高齢者の場合は、男女の区別なく関節リウマチに注意すべきであるといえるでしょう。

関節リウマチの遺伝と発症メカニズム

関節リウマチの発症には、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に関与しています。

ここでは、関節リウマチに関連する遺伝子や発症メカニズムについて詳しく見ていきましょう。

関節リウマチの発症に関わる遺伝子

関節リウマチの発症には、複数の遺伝子が関与しています。

なかでも「HLA遺伝子(ヒト白血球抗原遺伝子)」は、発症リスクにもっとも大きな影響を与える遺伝的要因とされています。

HLA遺伝子は、免疫機能を調整する働きを持ち、体内の異物を識別して排除するための重要な役割を果たしているのが特徴です。

HLA遺伝子は「クラスI」「クラスII」「クラスIII」の3つの領域に分類されます。(文献5

とくに、クラスII領域のひとつである「HLA-DRB1遺伝子」が関節リウマチと強く関連していることが、近年の研究で明らかになっています。(文献6

関節リウマチとの関連が判明している代表的な遺伝子は、以下のとおりです。

  • HLA
  • PTPN22(免疫の働きを調整する遺伝子)
  • PADI4(炎症反応に関与)
  • CCR6(免疫細胞の移動に関与)
  • IL2RA(免疫応答を調節)
  • TNFAIP3(炎症抑制因子の調整)
  • TYK2(免疫関連シグナル伝達に関与)
  • IRF5(免疫応答の転写因子)
  • IRAK1(炎症応答の活性化に関与)
  • CD40(免疫細胞の活性化に関与)

関節リウマチの原因は完全に解明されていない

関節リウマチの明確な原因は、完全に解明されていません。本来自身を守るはずの免疫が誤って自分自身の関節の組織を攻撃する「自己免疫疾患」であり、誤作動によって関節の滑膜と呼ばれる組織に炎症が起き、腫れや痛み、関節の変形が進行していきます。

なぜ免疫が誤って反応してしまうのかについては、遺伝的素因と環境的要因(感染、喫煙、ストレスなど)が複雑に関係していると考えられています。つまり、特定の遺伝子を持つ人が外的な刺激を受けたことをきっかけに、免疫の異常を引き起こす可能性があるわけです。

このように、関節リウマチはひとつの原因で発症するわけではなく、複数の要因が重なり合って発症に至る「多因子性疾患」である点を理解しておきましょう。

炎症性サイトカインが骨を壊す破骨細胞を活性化させる

関節リウマチの発症や進行には、「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が深く関係しています。サイトカインとは免疫細胞が出すタンパク質の一種で、体内で炎症や感染をコントロールする働きを担っているのが特徴です。

代表的な炎症性サイトカインには、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)やIL-6(インターロイキン6)などがあります。本来、病原体と戦うために必要な物質ですが、関節リウマチではこれらのサイトカインが必要以上に作られ、関節内に慢性的な炎症を引き起こすのです。

さらに、炎症性サイトカインは「破骨細胞」という骨を壊す細胞を活性化させます。破骨細胞が過剰に働くと関節の骨が次第に溶かされ、骨そのものが破壊されていきます。

その結果、関節の変形が進んで動かしづらくなるなど、日常生活に大きな支障をきたすようになるわけです。

関節リウマチにおける主な検査

関節リウマチにおける主な検査は、血液検査と画像診断です。

血液検査では免疫反応や炎症反応を調べ、画像診断では関節の炎症や破壊の状況を確認します。

なお、一部の民間遺伝子解析サービスで関節リウマチの遺伝子検査が実施されていますが、医療機関で診断に用いられているケースはまれです。

また、一部の自己炎症性疾患に対して遺伝子検査を実施している医療機関もありますが、確定診断ではなく、発症リスクの評価や治療方針の決定に用いられています。

関節リウマチの検査については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

関節リウマチを予防する生活習慣改善のポイント

関節リウマチは、遺伝的な素因を持つ人が、さまざまな環境因子の影響を受けて発症する疾患とされています。

完全に予防することは困難ですが、発症リスクを低下させるために取り組める生活習慣の改善ポイントがいくつか明らかになっているのでチェックしておきましょう。

禁煙する

喫煙は、関節リウマチの発症リスクを高める要因のひとつです。

タバコに含まれる有害物質が免疫機能に影響を与え、自己免疫反応を誘導する可能性があると考えられています。

関節リウマチの予防と治療において、禁煙は極めて重要です。

喫煙は、一度関節リウマチを発症したあとの病状悪化にも関与するとされ、薬が効きにくくなるなど治療効果の低下にもつながる恐れがあります。

とくに、遺伝的素因がある人は、速やかに禁煙しましょう。

適切な体重を管理する

肥満も、関節リウマチの発症と進行に関わるリスク要因です。

体脂肪が増加すると、炎症性サイトカインの産生が活性化され、免疫のバランスが崩れることで関節リウマチのリスクが高まると考えられています。

さらに、肥満は関節に過剰な負担をかけるだけでなく、発症後の症状悪化や治療効果の低下にも影響を及ぼしかねません。

バランスの取れた食事や適度な運動を通じて適正な体重を維持し、予防につなげていきましょう。

歯周病を予防する

歯周病と関節リウマチには、強い関連があるとされています。

歯周病を引き起こす細菌が免疫系に異常な反応を誘発する可能性があり、自己免疫疾患の発症に関与するとされているのです。

歯周病を予防するためには、日常的な歯磨きに加えて定期的に歯科検診を受けましょう。

とくに、家族に関節リウマチの患者がいる場合や、すでに歯周病の兆候が見られる人は、早めに対処してください。

早期に医療機関を受診する

関節リウマチは、早期発見・早期治療が重要な疾患です。

初期には、以下のような症状が現れます。

  • 朝の手のこわばり
  • 指や手首の関節の違和感
  • 左右対称に出る腫れや痛み

これらの症状を放置すると関節の破壊が進み、元の機能を取り戻せなくなる恐れがあるため注意が必要です。

発症の兆候に早く気づき、医療機関で適切な検査と診断を受ければ、関節の機能を保ちつつ進行を抑えることが可能になります。

関節リウマチで注意すべき食生活と運動については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

関節リウマチの痛みに対する「再生医療」の選択肢

近年、関節リウマチによる痛みや炎症に対して「再生医療」が新たな選択肢になっています。

再生医療とは、本来の機能を失った組織や細胞に対して、自分自身の幹細胞や血液を用いる治療法です。

再生医療には、主に2つの方法があります。

  • 他の細胞に変化する能力を持つ幹細胞を患部に投与する「幹細胞治療」
  • 血液中の血小板に含まれる成長因子の働きを活用する「PRP療法」

いずれの治療法も入院や手術は不要で、日帰りでの対応が可能です。

体への負担を抑えた治療を検討している方にとって、手術を伴わない選択肢のひとつとなっています。

当院で行っている関節リウマチに対する再生医療については、以下の症例記事をご覧ください。

まとめ|関節リウマチは遺伝の有無にかかわらず早めに医療機関を受診しよう

関節リウマチは遺伝的な素因が関与しているものの、必ずしも遺伝性疾患とは言い切れません。

関節リウマチが疑われる症状がある場合、家族に患者がいるかどうかにかかわらず、早期の受診が極めて重要です。

初期段階で適切な治療を開始することで、関節の破壊や日常生活への支障を最小限に抑えられます。

また、喫煙や感染、歯周病などの環境要因も発症に関係があるため、生活習慣も改善していきましょう。

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関節リウマチと遺伝に関するよくある質問

関節リウマチになりやすいのはどのような人ですか?

日本での関節リウマチ患者数は60万人~100万人程度といわれており、人口の約0.5%から1%が関節リウマチ患者とされています。(文献7

関節リウマチは女性に多い疾患であり、男女比は1:3.21です。

年齢で見ると、最も多いのは40代から60代とされてきましたが、近年では65歳以上で発症する「高齢発症関節リウマチ」も増えています。

関節リウマチは父母、もしくは祖母から孫へ隔世遺伝する?

関節リウマチは、親や祖父母が患者であっても、必ず子や孫に遺伝するわけではありません

確かに遺伝的な素因が発症リスクに関与することは知られていますが、発症しやすい体質が受け継がれる可能性を示すものであり、直接的な遺伝性疾患とは異なります。

生活習慣や環境要因の影響も大きいため、過度に不安になる必要はありません。

関節リウマチ発症における遺伝以外の要因とは何ですか?

関節リウマチの発症は、遺伝的な要因だけではなく、以下のような環境要因も関与します。

  • 細菌やウイルスへの感染
  • 過労・精神的ストレス
  • 喫煙
  • 外傷
  • 出産

上記のような要因が重なって自己免疫反応が活性化し、関節の炎症を引き起こすと考えられています。

参考文献

(文献1)
Familial aggregation of rheumatoid arthritis and co-aggregation of autoimmune diseases in affected families: a nationwide population-based study|Rheumatology (Oxford)

(文献2)
Familial risks and heritability of rheumatoid arthritis: role of rheumatoid factor/anti-citrullinated protein antibody status, number and type of affected relatives, sex, and age|Arthritis Rheum

(文献3)
関節リウマチ(RA):トピックス診断と治療の進歩|日本内科学会雑誌

(文献4)
関節リウマチの基礎知識|一般社団法人 日本リウマチ学会

(文献5)
関節リウマチのゲノム医療の入り口としてのHLA遺伝子|臨床リウマチ

(文献6)
Imputing Variants in HLA-DR Beta Genes Reveals That HLA-DRB1 Is Solely Associated with Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus.|PLOS ONE

(文献7)
リウマチ等対策委員会報告書」について|厚生労働省