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サルコペニア肥満とは|セルフチェックや解消法を医師が解説

肥満 サルコペニア
公開日: 2025.06.29

「体重はあるのに筋力が落ちてきた気がする」

「最近疲れやすくなった」

このように感じている方は、サルコペニア肥満かもしれません。

肥満と筋肉減少が同時に進行する「サルコペニア肥満」になると、日常生活に不便を感じたり、病気のリスクが高まりやすくなったりします。

ただし、早期にリスクに気づいて対策をおこなえば、予防・改善が期待できる状態です。

本記事では、医師の視点からサルコペニア肥満の原因やリスク、予防・改善法を解説します。

「サルコペニア肥満かも」と不安を抱いている方は、セルフチェックで自身のリスクを知ることから始めてみましょう。

サルコペニア肥満とは

サルコペニア肥満とは、体脂肪が多い「肥満」に、筋肉量が減少している状態の「サルコペニア」が合併している状態を指します。文献1

「肥満」と聞くと太っている人をイメージしがちですが、見た目は普通でも体内では筋肉が減少し、脂肪が多い「隠れ肥満」のようなケースもあります。

そのため、サルコペニア肥満の人がかならずしも太って見えるとは限りません。

筋肉が不足すると、体の基本的な動作にも支障が出やすくなり、次のような不調を感じることがあります。

  • 疲れやすい
  • 歩くときにふらつく
  • 階段を上るのがつらい
  • 重いものが持ちにくい

このようにサルコペニア肥満は、見た目では気づきにくいにもかかわらず、日常生活の質を下げる原因となるのです。

サルコペニアについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。

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肥満とサルコペニアの関係性|筋肉に与える悪影響

肥満、つまり体の中に脂肪組織が多い状態は筋肉を減らす方向に作用し、サルコペニアの進行を加速させてしまいます。

具体的には、以下の3つのメカニズムが考えられています。

  • 運動不足
  • 筋肉破壊
  • インスリン抵抗性

ひとつずつ見ていきましょう。

運動不足で筋肉が減少しやすくなる

肥満になると、体を動かすのが億劫になったり、関節に負担がかかったりして、無意識のうちに活動量が減少してしまいます。

筋肉は使用頻度が減ると萎縮し、筋力が低下していきます。

運動不足が続くと筋肉量がみるみる減少し、さらに体を動かすのがつらいと感じるようになるといった悪循環に陥りやすくなります。

筋肉内に脂肪が蓄積して筋力が落ちる

肥満の状態が続くと、全身に脂肪が過剰に蓄積されるだけでなく、筋肉の細胞内や筋肉と筋肉の間にも脂肪が入り込むことがあります。

この筋肉内への脂肪の蓄積は「異所性脂肪(いしょせいしぼう)」と呼ばれており、筋肉の質の低下を招きます。文献2

本来はぎっしり詰まっているべき筋肉の繊維の間に脂肪が入り込むことで、筋肉そのものの機能が落ちてしまうイメージです。

これによりインスリンの働きが妨げられたり、体内で炎症が引き起こされたりした結果、筋肉量の減少や筋力の低下が進むと考えられています。

インスリン抵抗性が筋肉の合成を妨げる

肥満は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」を引き起こすことがあります。(文献3

インスリンは、食べたものからエネルギーを身体に吸収させるだけでなく、筋肉の合成にもかかわるホルモンです。文献4

そのため、肥満によってインスリン抵抗性が生じると筋肉が作られにくく、筋肉量の低下が進む恐れがあります。

サルコペニア肥満が引き起こすリスク

サルコペニア肥満は、サルコペニアまたは肥満単体の場合と比べて代謝機能が低下しやすく、健康リスクが高まると言われています。(文献5

具体的に見ていきましょう。

転倒や骨折のリスクが高まる

筋肉量の減少は、日々生活に欠かせない「動く力」そのものを奪います。

具体的には、以下のような状況です。

  • 階段を上るのが以前よりつらくなった
  • 重いものが持てなくなり買い物が大変になった
  • 歩くスピードが遅くなり、信号を渡りきれないことがある

サルコペニア肥満は、バランスを崩して転倒しやすくなる、骨折のリスクを高めるなど、日常生活への支障をきたすケースが多く見られます。

進行すると、一人で買い物に行けなくなる、着替えが困難になるなど、介護が必要な状態につながる危険性も秘めています。

生活習慣病につながりやすくなる

筋肉は、食事から摂った糖を取り込み、エネルギーとして利用する重要な組織です。

筋肉量が少ないと、摂取した糖を効率よく使えなくなり、血液中の糖分が増えて糖尿病のリスクが高まります。文献6

また、筋肉はエネルギーを多く消費するため、筋肉量が少ないと体のエネルギー消費量である「基礎代謝」が落ち、脂肪が蓄積しやすくなるのも問題です。その結果、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を悪化させる要因にもなります。(文献7

肥満と相まって、これらの生活習慣病のリスクはさらに増大してしまうのです。

【セルフチェック】サルコペニア肥満のリスクレベル

サルコペニア肥満の診断基準は、世界的に統一されたものがなく、自己判断が困難なのが現状です。

しかし、サルコペニア肥満を放置すると将来的なリスクが高まるため、早期の気づきと対策が大切です。

まずは以下のセルフチェック表で、自身のサルコペニア肥満のリスクレベルを知っておきましょう。(文献1)(文献8

サルコペニア肥満と診断するものではありませんので、あくまでも目安としてとらえてください。

チェック内容

方法

サルコペニア肥満を疑う結果

指輪っかテスト

・両手の親指と人差し指で輪っかを作る

・ふくらはぎの一番太い部分を囲む

・隙間ができる場合は筋肉量の減少が疑われる

握力

・握力計で計測する

・日常生活でチェックする

以下の場合で筋力低下が疑われる

<握力の場合>

・男性:28kg未満

・女性:18kg未満

<日常生活>

・ペットボトルのフタが自力で開けられない

・片足立ちで靴下を履けない

歩行速度

・日常生活でチェックする

以下の場合で歩行速度の低下が疑われる

・横断歩道が青信号のうちに渡り切れない

・転びやすい、つまずきやすい

BMI

・「体重(kg)÷身長(m)2」で計算する

・25以上

体脂肪率

・体組成計で計測する

・32%以上

腹囲

・メジャーで簡単に測定できる

・他者に計測してもらうと正確に測れる

・男性:85㎝以上

・女性:90㎝以上

これらのチェック項目で当てはまるものが複数ある場合、サルコペニア肥満のリスクがあるかもしれません。

医療機関で相談することも検討しましょう。

サルコペニア肥満の予防・解消法

サルコペニア肥満の予防・解消するポイントは、筋肉量を増やして筋力を改善しつつ、体脂肪量の低下を目指すことです。(文献1

紹介する予防・解消法をいくつか同時におこなうことで、脂肪の減少や筋力の改善に効果が期待できます。(文献9

ぜひ組み合わせて実施してみてください。

筋トレを中心とした運動習慣

筋肉を維持・増加させるためには、筋肉に適度な負荷を与える以下のような筋力トレーニングが効果的です。(文献2

方法

具体例

筋トレ

・スクワット

・膝伸ばし

・後ろ蹴りだし

有酸素運動

・ウォーキング

・水泳、アクアビクス

・早歩き

・階段を使用

時間は短時間でも、続けることが大切です。

はじめは10分程度から始め、徐々に時間や回数を増やしていきましょう。

筋肉と代謝を支える食事

筋肉を作るための材料となるタンパク質は、サルコペニア肥満の解消に欠かせません。

ダイエット中でも、タンパク質は不足させないように意識しましょう。

  • たんぱく質を毎食しっかり摂取する(肉・魚・卵・大豆製品など)
  • 玄米や全粒粉パンなど、血糖値の上がりにくい炭水化物を選ぶ
  • アボカド・ナッツ・青魚など、良質な脂質を適度に取り入れる
  • 野菜や果物からビタミン・ミネラルをしっかり補給する

サルコペニア肥満の改善には、バランスの取れた食事に加え、専門家の指導を受けることも重要です。

「この方法で本当にサルコペニア肥満のリスクを下げられる?」と感じたら、当院リペアセルクリニックのメール相談またはオンラインカウンセリングまでお気軽にご相談ください。

サルコペニア肥満を理解してできることから始めよう

サルコペニア肥満は、肥満と筋肉の減少が合わさった状態で、見た目では気づきにくいのが特徴です。

早期に気づき適切な対策を始めることで改善できる可能性があります。

まずは自身のリスクを把握し、食事を見直す、体を動かす時間を少し増やすなど、できることから挑戦してみましょう。

「サルコペニア肥満のリスクが高いかもしれない。どうしたら良いの」と一人で悩んでしまうなら、専門家への相談をおすすめします。

当院リペアセルクリニックでは、メール相談オンラインカウンセリングを通じて、あなたの悩みをサポートしています。

自身の健康状態やライフスタイルに合わせた具体的なアドバイスをご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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サルコペニア肥満に関するよくある質問

サルコペニア肥満の診断基準はありますか?

サルコペニア肥満は、診断基準が確立されていません。文献1

これは、肥満や腹囲の基準が国によって異なることで、共通の基準を設けるのが難しいことが背景にあります。(文献1

しかし、医療機関での身体組成測定や専門家への相談によって、サルコペニア肥満のリスクを知ることは可能です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

サルコペニア肥満は高齢者だけでなく若者もなりますか?

サルコペニアと診断されるのは、原則的に65歳以上です。(文献8

ただし、病気をはじめとする何らかの原因によっては、若い方がなる可能性もあります。

また、今は問題なくても、以下のような生活をしている方は将来的にサルコペニア肥満になるリスクが高い可能性があるため、注意が必要です。

  • デスクワーク中心の仕事であるため運動不足である
  • 加工食品中心の偏った食生活を送っている
  • 無理なダイエットをしている

生活習慣が乱れがちな若い層では、見た目は痩せていても体脂肪が多く筋肉が少ない「隠れ肥満」の状態から、サルコペニア肥満に移行するリスクも考えられます。

「若いから」と油断せず、将来的なリスクを回避するためにも、運動習慣を身につけたりバランスの取れた食事を意識したりと準備しておきましょう。

サルコペニア肥満には症状があらわれますか?

サルコペニア肥満は、初期にはっきりとした自覚症状があらわれにくいのが特徴です。

しかし、進行すると「疲れやすい」「つまずきやすくなった」「歩くのが遅くなった」といった身体機能の低下を感じる場合があります。

これらのサインに気づいたら、まずは医療機関で相談し、ほかの病気との区別をつけることが大切です。

サルコペニア肥満が女性に多いのはなぜですか?

男性に比べて女性は筋肉量が少なく脂肪量が多いため、サルコペニア肥満になりやすいと言われています。

しかし、サルコペニアの男女差についてはわかっていないことが多く、一概に「女性が多い」とも言い切れません。

とはいえ、女性の閉経後のホルモンバランスの変化は筋肉量の減少に関連する可能性があると指摘されていることから、早期のサルコペニア肥満対策が重要です。(文献10

 

参考文献

(文献1)

若林秀隆「サルコペニア肥満」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/6/58_58.627/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献2)

名古屋大学「高齢者の筋肉内への脂肪蓄積は サルコペニアと運動機能低下に関係する」

https://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20170209_htc.pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献3)

石川耕,横手幸太郎「脂肪組織機能異常とインスリン抵抗性」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/10/102_2691/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献4)

下村吉治「運動後の筋タンパク質合成のためのタンパク質・アミノ酸栄養」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/62/1/62_16/_pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献5)

PubMed「Muscle loss and obesity: the health implications of sarcopenia and sarcopenic obesity」

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25913270/(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献6)

東京大学大学院医学系研究科「筋肉における新しい糖取り込み調節機構の解明―肥満に伴う 2 型糖尿病の病態解明と治療への応用―」

https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20110302.pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献7)

山川佳那子ら「若年成人女性における安静時代謝量及び食事誘発性体熱産生と体組成との関連」

http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/3181/1/0100_075_002.pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献8)

日本サルコペニア・フレイル学会、国立長寿医療研究センター「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」

https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00426.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b(最終アクセス:2025年6月16日)

(文献9)

日本肥満症学会「肥満症診療ガイドライン」

https://www.jasso.or.jp/data/magazine/pdf/medicareguide2022_09.pdf(最終アクセス:2025年6月13日)

(文献10)

熊本大学「骨格筋の発育と再生メカニズムに性差ありーエストロゲン受容体βの機能的重要性を解明ー」

https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20200821(最終アクセス:2025年6月13日)

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