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指が痛いのは更年期が原因?治療・対処法・受診について解説【医師監修】

指の痛みやこわばりが続いてはいるものの、年齢のせいだと見過ごしていませんか?
とくに、40代後半から50代の女性に多く見られる手指の不調は、更年期によるホルモンバランスの変化が関係している可能性があります。
女性ホルモンの減少は、関節や腱に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすほどの指の痛みを引き起こすケースもあるのです。
そこで本記事では、更年期に起こる指の痛みの原因や考えられる疾患、治療法、さらに自宅でできる対処法までわかりやすく解説します。
目次
指が痛いのは更年期障害が原因の一つ
更年期に差しかかると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。
ホルモンバランスの変化は、体全体にさまざまな不調を引き起こしますが、その一つが関節の痛み、とくに指の関節痛です。
医学的には「関節痛」や「こわばり」として認識され、更年期障害の症状の一つとして起こることが知られています。
なかでも、手や指に特有の不快感や運動障害を伴う症状は「メノポハンド」(文献1)と呼ばれ、以下のような不調を感じるのが特徴です。
- 朝起きたときに手指がこわばる
- 指の関節が痛む、または腫れる
- 手指の動かしにくくなる
- 握力が低下する
- 手指がしびれる
上記のような症状は、更年期によるホルモン変化によって関節や腱、神経の働きが影響を受けるために起こります。
更年期と聞くと、のぼせや発汗といった全身症状に注目されがちですが、関節痛や手の不調も見逃せない重要なサインです。
女性ホルモンの減少が関係している
更年期における指の痛みは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量の減少と深く関係しています。
エストロゲンは骨や関節、筋肉の健康を維持する働きがあり、減少すると関節の炎症やこわばりが生じやすくなるのが特徴です。
また、筋肉と骨をつなぐ「腱(けん)」や関節を覆う薄い膜である「滑膜(かつまく)」に影響が及ぶと、手指の不調が現れるケースもあります。
とくに朝の指のこわばりや痛みは、更年期のサインの一つとして見逃せません。
自律神経の乱れや筋力低下も原因
更年期における指の痛みは女性ホルモンの減少だけでなく、自律神経の乱れや筋力低下も影響しています。
自律神経のバランスが崩れると、血流が悪化して手先の冷えや痛みが強まります。
さらに、加齢による筋力や柔軟性の低下が伴うと、関節や腱に負担がかかりやすくなるのです。
複合的にさまざまな要因が重なり、手指のこわばりや痛みが日常生活に支障をきたすケースがある点を押さえておきましょう。
関節リウマチとの違い
更年期の指の痛みと似た症状を持つ疾患に「関節リウマチ」がありますが、両者は異なる原因によるものです。
更年期の関節痛はホルモンバランスの変化による一時的な症状であるケースが多いのに対し、関節リウマチは自己免疫疾患であり、関節に炎症を引き起こして悪化します。
朝のこわばりが1時間以上続く場合や、左右対称に痛む場合はリウマチの可能性もあるため、医療機関で検査を受けましょう。
更年期の女性に多い指が痛い疾患
更年期の女性はホルモンバランスの変化により、関節や腱、神経に不調が生じやすくなります。
とくに手指は日常生活で頻繁に使う部位であり、痛みやしびれといった症状が現れると大きな支障になるため注意しなければなりません。
ここでは、更年期に多く見られる指の疾患について、代表的な4つの病気を紹介します。
指の第一関節が痛む「ヘバーデン結節」
ヘバーデン結節は、指の第一関節に変形や痛みを引き起こす疾患です。(文献2)
更年期の女性に多く見られ、関節が赤く腫れたり、指が曲がったまま戻らなくなったりする場合もあります。
原因は加齢やホルモン変化による関節軟骨のすり減りであり、炎症を伴うケースも少なくありません。
進行すると関節が変形し、見た目にも大きな変化が現れます。
握力が低下して日常生活に支障が出る恐れもあるため、早期の対応が重要な疾患です。
指の第二関節が痛む「ブシャール結節」
ブシャール結節は、指の第二関節に発症する関節疾患で、ヘバーデン結節と同様に更年期以降の女性に多く見られる傾向があります。(文献2)
関節の腫れや痛み、こわばりが生じるのが特徴です。
進行すると、関節の変形を伴う場合もあります。
原因は明確ではないものの、女性ホルモンの分泌量の低下や関節への負担が影響すると考えられています。
しびれが生じる「手根管症候群」
手根管症候群は、手首の内側にある「手根管(しゅこんかん)」というトンネル内で正中神経が圧迫されて起こります。(文献2)
更年期の女性に多く、ホルモンの変化によって腱や滑膜が腫れ、神経が圧迫されるのが原因の一つです。
主な症状は、親指から薬指のしびれや痛みで、夜間や早朝に悪化するケースもあります。
進行すると筋力低下や指先の細かい動作が困難になるため、早めの診断と治療が求められます。
指を伸ばそうとしたときに勢いよく伸びる「ばね指」
ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に引っかかりや痛みがあり、無理に伸ばすとカクンと跳ねるように伸びる症状が特徴です。(文献2)
腱鞘炎(けんしょうえん)とも呼ばれ、腱を包む組織が炎症を起こし、腱がスムーズに動かなくなることで発症します。
とくに更年期の女性は、ホルモンバランスの乱れや手の使いすぎにより発症しやすく、悪化すると指が動かなくなることもあるため、早めの休息と医療機関での治療が重要です。
更年期で指が痛いときの治療法
更年期の指の痛みは、ホルモンバランスの変化によるものであるケースが多く、治療ではホルモンの働きを補う方法が重視されます。
ここでは、代表的な治療法の「ホルモン補充療法(HRT)」と、補助療法の「エクオール」を紹介します。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期に減少するエストロゲンを外から補って、ホルモンバランスを整える治療法です。(文献3)
エストロゲンの補充によって関節や腱の炎症を抑え、痛みやこわばりの軽減が期待されます。
更年期症状全般に効果があるとされ、医師の指導のもとで内服薬や貼付薬などを用いるのが一般的です。
ただし、副作用のリスクや適応の有無があるため、治療については医師との相談が不可欠となります。
エクオール
エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできる成分です。(文献1)
体内で、エストロゲンに似た働きをすることが知られています。
更年期にエストロゲンの急激な減少によって起こる関節痛に対して、緩やかにホルモン作用を補うのが特徴です。
とくに、ホルモン補充療法の副作用リスクに不安を感じる方や、軽度の症状を抱える方にとって比較的取り入れやすい選択肢となります。
ただし、体質によってエクオールを産生できない人もおり、サプリメントの効果には個人差がある点に留意しておきましょう。
更年期で指が痛いときに自分でできる対処法
更年期に伴う指の痛みは、日常生活の中でのセルフケアによって軽減できる場合があります。
ここでは、自宅で実践できる具体的な対処法を6つ紹介するので、症状が軽いうちから意識して取り入れてみましょう。
生活習慣を見直す
不規則な生活習慣は、ホルモンバランスの乱れを助長します。
以下の点に注意して、健康的な生活を心がけましょう。
- 朝食を抜かず1日3食をバランスよく食べる
- ビタミンDやカルシウムを含む食品を積極的に食べる
- 適度な運動を日常に取り入れる
上記のような生活習慣がエストロゲンの作用を高め、関節の健康維持につながります。
また、規則正しい生活リズムを整えることも、ホルモンバランスを安定させる上で重要です。
手のケアやストレッチを行う
指の痛みやこわばりを和らげるためには、日々のケアが欠かせません。
以下のような方法を試してみてください。
- 手を温めながらマッサージする
- 指の曲げ伸ばし運動を毎日続ける
- 握力を保つためにタオル握り体操を行う
無理のない範囲で継続すれば、関節の柔軟性と血流改善に役立ちます。
また、手の保湿ケアも大切です。
乾燥によって皮膚が硬くなると関節の動きにも悪影響を与えるため、保湿クリームなどで手指を丁寧にケアしましょう。
体を温める
冷えは血流を悪化させ、関節の痛みを悪化させる原因になります。
次の方法で温めましょう。
- 入浴時はぬるま湯にゆっくり浸かる
- 手袋や温熱パッドで手元を保温する
- 白湯や温かい飲み物を積極的に取る
冷えを防いで体温を保つことで、炎症や痛みの緩和が期待できます。
日中も冷房の風に直接当たらないよう注意するなど、適切に冷え対策を行っていきましょう。
関節に負担をかけないように注意する
手や指に過剰な負荷をかけない工夫も重要です。
日常生活や仕事で、以下のような行動を意識してみてください。
- 重いものを持つときは両手を使う
- 指先ではなく手のひら全体で物を持つようにする
- 家事や手作業はこまめに休憩をとる
関節にやさしい動作を意識すれば、痛みの悪化を防ぐことにつながります。
また、作業の際は補助具やサポーターを活用するなどの工夫をこらしてみましょう。
ストレスや睡眠不足を改善する
自律神経のバランスは、ホルモン分泌にも大きく関わります。
以下のように意識しながら、ストレス管理と十分な休息を心がけましょう。
- 寝る前にスマートフォンやテレビを控える
- リラックスできる音楽や香りを活用する
- ストレッチや深呼吸で副交感神経を高める
就寝前にはスマートフォンの使用を控える、照明を落とすなど、睡眠の質を高める工夫が大切です。
心身のリラックスによってホルモンバランスが安定し、症状の緩和へつながっていきます。
エクオール含有サプリメントを利用する
大豆由来の成分であるエクオールは、体内でエストロゲンに似た働きを持つとされます。
ただし、サプリメントは健康食品であり、効果には個人差があります。
信頼性の高い製品を選ぶことも重要なので、医師と相談のうえ利用を検討しましょう。
更年期で指が痛い場合は何科を受診すべきなのか
更年期に指が痛む場合、症状によって適切な診療科が異なります。
関節や腱の異常が疑われる場合は整形外科、もし近隣にあれば手の怪我や病気を治療する「手外科専門医」を受診しましょう。(文献2)
手外科専門医は変形性関節症やばね指、手根管症候群など構造的な異常の診断・治療に対応しています。
なお、皮膚の変形や外見上の違和感がある場合は、形成外科でも対応可能です。
一方で、ホルモンバランスの乱れが関与していると考えられる場合は、婦人科で更年期障害の検査・相談するのがおすすめです。(文献4)
ホルモン補充療法や生活指導を通じて、根本的な改善につながる可能性があります。
まとめ|症状に合わせて適切に治療・対処しよう
更年期における指の痛みは、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れ、筋力低下などさまざまな要因が複雑に関係しています。
関節のこわばりやしびれ、痛みといった症状を放置すると、日常生活に支障をきたす恐れがあるため注意しなければなりません。
早期の対処と継続的なケアを意識しつつ、更年期を前向きに乗り越える気持ちを持つことが大切です。
気になる症状がある場合は、我慢せず専門医に相談しましょう。
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指が痛い更年期に関するよくある質問
更年期の指の痛みはいつ治りますか?
更年期の指の痛みは個人差が大きく、数か月で軽快する人もいれば、数年続く場合もあります。
エストロゲンの低下が原因なので、閉経後数年以内に自然と改善するケースもあります。
生活習慣の見直しやホルモン補充療法により緩和できる可能性があるため、症状が続く場合は医師の診察を受けましょう。
更年期の男性も指が痛くなりますか?
男性も加齢に伴って男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下し、関節のこわばりや指の痛みが現れるケースがあります。
「男性更年期障害(LOH症候群)」と呼ばれており、女性とは異なるホルモン変化によるものです。
指が痛い更年期に漢方は効果ありますか?
漢方薬は直接的に痛みを抑えるのではなく、体全体のバランスを整えて症状の改善を図ります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)といった漢方を更年期障害に用いる場合があります。
体質や症状に合った漢方薬を選ぶため、使用するときは漢方に詳しい医師や薬剤師へ相談しましょう。(文献5)
朝の寝起きで指が痛いのは更年期が原因ですか?
朝起きたときに指の関節がこわばったり、手が握れなかったりといった症状は、更年期に見られる女性ホルモンの低下による影響の可能性があります。
エストロゲンが減少すると関節や腱の柔軟性が損なわれ、炎症やむくみを引き起こしやすくなるのです。
とくに、朝方に指の動きにくさや痛みを感じる傾向があります。
症状が継続する場合は、整形外科や婦人科での検査を検討しましょう。
参考文献
(文献1)
更年期の手の不調|宝塚 かおるレディスクリニック コラム
(文献2)
更年期以降の女性に多い手指の疾患|おおさかグローバル整形外科病院
(文献3)
ホルモン補充療法(HRT)とは|あすか製薬株式会社
(文献4)
更年期の「関節痛」と「指のこわばり」リウマチとの違い・受診の目安や治療法を婦人科女医が解説!|白金高輪海老根ウィメンズクリニック