ばね指は自然に治る?具体的な症状とやってはいけないことを解説
「ばね指ってなに?」
「ばね指になったときにやってはいけないこととは?」
このような疑問を持っている方は多いでしょう。
ばね指はありふれたものですが、その定義や原因は、あまり正確には知られていません。
また情報の少なさから、本来やってはいけないことを、良かれと思ってやってしまい、症状を悪化させる方が多くいます。
本記事ではばね指の定義や症状、やってはいけないこと、本来取るべき対処法などを解説します。
目次
ばね指とは?
まず、ばね指がどのようなものか確認しましょう。
簡単に言うと、「指に起こる腱鞘炎」を意味します。
指は、筋肉を動かすことで関節が曲げ伸ばしされています。筋肉の力で骨を持ち上げたり下ろしたりするイメージを持つと、理解しやすいでしょう。
そして筋肉と骨がむすびつく部分には、それらの連携をスムーズにするための「腱」組織があります。腱をトンネルのように包み込むのが「腱鞘」です。
その腱鞘に炎症が生じるのが腱鞘炎です。その影響で、指を曲げにくくなったり(ばねる)、痛みを感じたりするのを、一般的に「ばね指」と呼びます。
参考:日本整形外科会
ばね指は自然に治る?
症状が軽微なばね指であれば、自然に治ることはあります。
たとえばほんの少し曲げにくさを感じる、わずかな熱っぽさを覚える程度なら、放っておいても良くなる可能性があります。
しかし症状が顕著に出ているなら、自然に治らないこともあり得ます。また放置することにより症状を悪化させて、日常生活により大きな支障が生じるかもしれません。
したがってばね指が疑われるような症状があった場合、医師による診断を受けるのをおすすめします。
ばね指の症状をセルフチェック
ばね指の具体的な症状として以下が挙げられます。
いずれか一つでも該当する項目があった場合、ばね指を発症している可能性があります。
この機会にセルフチェックしてみましょう。
▼ばね指セルフチェックリスト
- ・曲がった指を戻そうとすると、ばねのような動きになる
- ・指が曲がったままで戻せなくなる
- ・起床時にこわばりを感じる
- ・指に痛みや熱っぽさを感じる
- ・腫れ上がっているように見える
ばね指の症状は、「曲がった指を戻そうとすると、ばねのような動きになる」ことだけだと誤解されがちです。
しかしこれは症状の一つにしかすぎません。実際には、指が戻せない、痛みや熱っぽさが出るなど、症状にはいくつかの種類があります。
いずれか一つに該当した時点で、ばね指の可能性があるでしょう。また複数項目に該当している場合高い確率でばね指になっていると判断できます。
ばね指を発症する主な原因
ばね指を発症する主な原因は、大きく分けて3つ挙げられます。
- ・手指の使いすぎ
- ・ホルモンバランスの変化
- ・老化による腱鞘の衰え
参考:日本整形外科会
もちろん他の理由で発症するケースもありますが、ほとんどの場合で上記いずれかが原因となります。
それぞれに関して、下記で詳しく解説します。
自身の状況と合致するものがないか、チェックしましょう。
手指の使いすぎ
第一に、手指の使いすぎが挙げられます。
年齢性別関係なく、すべての人に考えられる原因となるでしょう。
たとえば以下のような動作が、長時間ないし多数繰り返されることが該当します。
- ・マウスやキーボードの操作
- ・洗い物や掃除などの家事
- ・ゴルフや卓球など、手と指に負担がかかるスポーツ
- ・ピアノやギターなどの演奏
- ・テーブルゲーム
仕事や家事のなかに発症の原因があることから、ばね指は身近な症状であると言えます。
ゆえに、後述するように、手指を休めるなどして、ばね指にならないような対策を取るのが重要でしょう。
ホルモンバランスの変化
女性の場合、加齢に基づくホルモンバランスの変化が、ばね指の原因になっている可能性もあるでしょう。
とくに、女性ホルモンのエストロゲンの低下が、ばね指と深く関係しています。
エストロゲンが低下すると腱鞘が弱くなる、狭くなる、など炎症が起こりやすくなります。
妊娠期や更年期などでは、エストロゲンが急激に減少することが少なくありません。したがってこの時期はとくにばね指になりやすいと言えるでしょう。
また女性の場合、先述した「洗い物や掃除などの家事のやりすぎ」や、後述の「老化による顕彰の衰え」も、状況として重複しがちです。
そのため、女性は時期によって、ばね指を予防するためにより一層強い意識が必要になるでしょう。
老化による腱鞘の衰え
また、老化による腱鞘の衰えによって、炎症が生じやすくなることもあります。結果としてばね指になっているかもしれません。
前提として、人間のさまざまな組織は、加齢と反比例して徐々に弾力性を失っていく傾向があります。これは、腱鞘も例外ではありません。
弾力性を失った結果、炎症や腫れが起こりやすく、治りにくくなり、結果としてばね指として症状があらわれるケースが多々あります。
ばね指になったときにやってはいけないこと
ばね指になったとき、つい、以下のようなことをやってしまいがちです。
- ・無理に伸び縮みさせる
- ・必要のないマッサージを施す
- ・放置する
いずれも逆効果で、ばね指の症状を悪化させる原因になります。
これらを継続した結果、指がまともに動かなくなり、手術が必要なほどの状態に悪化するかもしれません。
なぜ、これらをやってはいけないのか、詳しく解説します。
無理に伸び縮みさせる
ばね指の症状が出たとき、改善しようと無理に指を伸ばしたり曲げたりすることがあります。
しかし、これは一見効果がありそうに見えて、実際には逆効果となるでしょう。
上述したように、ばね指は腱鞘が炎症を起こして、指の動作に支障をきたすものです。
すなわち指を伸び縮みさせると、本来は可能な限り動かさない方が良い腱鞘を、必要以上に動かすことになります。
そうすると症状が改善に向かうどころか、炎症をより悪化させてしまうでしょう。
「つっかえているなら伸ばした方が良い」と感じ、無理に指を伸ばしたり曲げたりしてしまい、かえって症状の改善を遅らせるケースが多く見られます。逆効果となるため、このような方法は避けましょう。
必要のないマッサージを施す
炎症が起こっている箇所に必要のないマッサージを施すことも、やってはいけません。
肩こりなどと同じように、「マッサージすれば、症状が改善する」と思い込んで、患部に刺激を与えてしまうケースがあります。
しかし、マッサージによって患部に圧力が加えられると、症状が悪化する可能性があります。
したがって、ばね指になったときには、患部をもみほぐすようなことは基本的にはしてはいけません。
放置する
ばね指になったとき、もっとも避けたいのは、症状が出ているにもかかわらず放置することです。なぜなら、きちんとした治療を実施できないばかりか、引き続き患部に負担をかけるからです。
たとえばばね指になっても、痛みなどが軽微な場合、医師の診断を受ける必要性は感じにくいでしょう。
指の痛みでは、仕事や家事を休めず、患部に負担をかけ続けてしまうケースが多く見受けられます。
すると治療は受けられず、徐々に腱鞘を傷めるため、症状はより悪くなってしまうでしょう。
したがって、ばね指の疑いがあるにもかかわらず放置することは避けなければいけません。
実際、軽度のばね指であれば、しばらく安静にしていれば改善することがあります。しかし症状の程度を正確に判断するのは危険です。
やはり疑いがあれば、医師による正確な診断を受けるのが基本となるでしょう。
ばね指になったときの正しい対処法
ばね指になったときの正しい対処法は、まず医師の診察を受けることです。
自身で症状の程度を判断せず、軽症だと思っても、病院へ行くようにしましょう。
その上で、ばね指の治療をおこなう場合、以下のいずれかの方法が取られるでしょう。
- ・保存療法
- ・手術療法
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
保存療法
保存療法とは、「患部を動かさないよう、安静にして、少しずつ症状が落ち着くのを待つ」考え方です。
ばね指の場合、腱鞘を動かさないことが基本となります。また必要に応じて、飲み薬や塗り薬、適切なマッサージなどを施す場合もあります。
ここで重要になるのは、患部を動かさないことです。患部を頻繁に動かしてしまっては、本来期待される治療効果が得られなくなります。
したがって保存療法を選択した場合、手指を動かす活動を控えて、症状が落ち着くのを待つことになります。
もし保存療法を選択することになったら、どのようにして安静な状態を確保するか考える必要があるでしょう。
参考:日本整形外科会
手術療法
手術療法とは、その名のとおり、外科手術によって、根本的な治療を図るものです。
ばね指の場合、炎症が起こっている腱鞘の一部を切り開く、「腱鞘切開」手術が用いられるでしょう。
局所麻酔をおこない、かかる時間は10分から30分ほどです。負担が小さいことから、日帰りでも手術を受けるのも可能です。
また腱鞘切開を実施した場合は、その腱鞘において炎症を起こす可能性がきわめて低くなるため、再発リスクを大幅に低減できます。
手術療法は、保存療法での治療が困難な場合に選択されるものです。保存療法が有効である場合、基本的に選ばれることはないでしょう。
反面、安静にした程度では改善できないと判断された場合は、きちんとした手術が必要になります。
参考:日本整形外科会
まとめ・ばね指はきちんとした診療を受けるのが大切
本記事ではばね指の症状や原因、発症した場合にやってはいけないことなどを解説しました。
ばね指は、腱を覆っている腱鞘に炎症が起こり、それが指の動作に支障をきたすことを意味します。
その原因はさまざまですが、ほとんどの場合は手指の動かしすぎ、ホルモンバランスの変化、老化が関係するでしょう。
ばね指は、触りやすい手元に起こるからか、発症するとマッサージしたり、無理に伸ばしたりすることがあります。
しかしこれらは逆効果であり、「やってはいけないこと」であると理解しておきましょう。
もし発症が疑われるなら、症状が軽度だと決めつけて放置せず、医師による正しい診断を受けることが大切です。
この記事が参考になれば幸いです。
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