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【医師監修】股関節唇損傷とは|症状・原因・治療法からやってはいけない動作まで解説

股関節唇損傷
公開日: 2025.12.13

股関節の奥にズキズキとした痛みがあり、整形外科で「股関節唇損傷」と診断されることがあります。

聞き慣れない病名で、治るのかもよくわからず不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

股関節唇損傷は、スポーツだけでなく日常動作でも起こる可能性があります。

この記事では、股関節唇損傷の症状や原因、治療法、日常で避けたい動作などを解説します。

手術だけでなく、リハビリや再生医療といった選択肢も紹介するため、治療方法を見直したい人のお役に立てれば幸いです。

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股関節唇損傷とは「股関節を安定させる軟骨が傷ついている状態」

股関節唇損傷は、関節を支えるクッションの役割をもつ「関節唇(かんせつしん)」という軟骨が傷ついた状態です。

関節唇とは?

関節唇は、関節の骨と骨のすき間をふちどるようにして囲んでいる、やわらかい軟骨です。

関節を包み込むようにして、骨の動きをなめらかにしたり、衝撃を吸収したり、股関節を安定させたりする働きをしています。(文献1

関節唇が損傷するとどうなる?

関節唇が傷つくと、股関節の安定性が下がり、動かす際に痛みや違和感が出やすくなります。

たとえば、足の付け根の痛みや引っかかるような感覚などが特徴です。(文献1

進行すると、軟骨がすり減ることで変形性股関節症へ進むおそれがあります

変形性股関節症について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

股関節唇損傷の症状

股関節唇損傷の程度や動かし方によって、痛みや違和感の出方はさまざまです。

股関節の前側や足のつけ根(鼠径部)に痛みが出ることが多く、ときにはお尻も痛むことがあります。

また、関節の安定性が失われることで、痛み以外に動かしにくさや引っかかり感といった違和感が出るのが特徴です。(文献1

代表的な症状は以下の通りです。

  • 足の付け根の痛み
  • お尻の痛み
  • 股関節のポキポキ音やパキッという音
  • 動かしたときの引っかかり感、カクッとした動き
  • 股関節が外れそうなぐらつき、不安定な感覚
  • 関節が動かなくなる「ロッキング現象」
  • うまく股関節がはまっていないような違和感

痛みが長く続く場合は、早めの受診と適切な対応が必要となります。

坂本 貞範
坂本 貞範
過去にサッカー、テニスなどの股関節を大きく動かすスポーツの経験がある方で、特別なきっかけが無くても徐々に痛みが出てくるケースがみられます。他の疾患と鑑別するためにも、早期の受診をお勧めします。

股関節唇損傷の主な原因

股関節の関節唇が損傷する背景には、以下のように骨の形や動きのクセ、年齢による変化などが関係しています。

  • FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)
  • 繰り返しの動作やスポーツによる負担
  • 加齢による変性や関節の不安定さ

各原因の特徴を、順番に見ていきましょう。

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)

股関節唇損傷の原因のひとつとされるのが、股関節の痛みや動かしづらさにつながるFAI(エフエーアイ:大腿骨寛骨臼インピンジメント)です。(文献1

FAIとは、股関節の骨の形により、大腿骨の先端と受け皿となる骨盤側のくぼみ(寛骨臼)がぶつかりやすくなってしまう状態です。(文献2

関節の動きのなかで骨が繰り返し接触することで、関節唇や軟骨にストレスがかかり、少しずつ軟骨がすり減ってしまいます。

また、FAIでは、股関節の痛みに加えて、股関節を曲げられる角度が少なくなることも特徴です。

坂本 貞範
坂本 貞範
骨盤の「被り」が深すぎる場合と、大腿骨の形状が骨盤と「合わない」場合に痛めやすくなります。
さらに股関節周りの筋力が低下することで、骨と骨同士の衝突がしやすくなってしまうことがありますので、普段からの筋力強化が重要です。

繰り返しの動作やスポーツによる負担

関節唇損傷は、小さな負荷の積み重ねも原因のひとつです。股関節を曲げたりねじったりするスポーツや仕事をしている人は、日常的に大きな負担がかかりやすい状態です。(文献1

とくに以下のような競技では、関節唇に負荷が集中しやすいといわれています。

  • バレエ
  • サッカー
  • ラグビー
  • ゴルフ など

違和感や痛みを感じながら無理を続けると、損傷が進行するおそれがあるため、早めのケアが大切です。

加齢による変性や関節の不安定さ

関節唇は、加齢とともに変性(劣化)していき、傷つきやすくなります

筋力が落ちて股関節をうまく支えられなくなると、関節の動きが不安定になり、そのぶん関節唇への負担も大きくなるのです。

また、交通事故や股関節の脱臼などのケガも股関節唇損傷につながります。(文献1

年齢を重ねても股関節を守るためには、日ごろから無理のない動きと適度な筋力を保つことが大切です。

股関節唇損傷の診断方法

股関節唇損傷の診断は、症状の聞き取りや画像検査が中心です。

まずは問診で、痛みが出る動作や期間、生活の中で支障を感じる場面などを確認し、股関節を動かして痛みの場所や動きにくさを確かめる診察が行われます。

画像検査では、レントゲンで骨の形や位置を確認したあと、MRIや造影MRI(MRA)を使って関節唇や軟骨の損傷を詳しく調べます。

さらに、関節に麻酔を注射して痛みが一時的に軽くなるかを確認する股関節内ブロックテストも、診断を確定する手がかりのひとつです。(文献1

股関節唇の治療方法

股関節唇損傷においては、痛みの程度や関節の状態に応じて、保存療法・手術・再生医療などから治療法が選ばれます。

股関節唇損傷の治療については、以下の記事でも詳しく解説しているため併せてご覧ください。

保存療法|安静・薬・リハビリ

保存療法とは、手術をせずに痛みを軽減し、関節の機能を回復させていく方法です。(文献1

  • あぐらやしゃがみ込みなど股関節唇への負荷がかかる動作の回避と安静
  • 痛みや炎症を抑える薬の使用
  • 筋力強化や動かしづらさを改善するリハビリテーション

症状を見ながら、これらを組み合わせて治療していきます。

坂本 貞範
坂本 貞範
これらは医師や理学療法士などの専門家の意見を基に実施してください。保存療法で痛みが解消される方は沢山いらっしゃいますが、長く痛みが続く時には改めて診察を受けてみるのが良いでしょう。

また、以下の記事では、肩の関節唇損傷時の治療について詳しく書かれています。

併せてご覧ください。

手術療法|股関節鏡視下手術

保存療法で効果が出ない場合や損傷が広範囲な場合は、手術が検討されます。

状況に応じて、損傷部位の修復や痛み・違和感を引き起こす原因となる部分の切除などが行われます。(文献1

また、股関節唇損傷の手術では、関節鏡(内視鏡)を使った手術も選択肢のひとつです。

関節鏡視下手術は、傷口が小さく、入院期間も短くてすむのが特徴です。

再生医療|幹細胞治療

再生医療による治療は、股関節唇損傷の新しい治療法です。

再生医療とは、患者自身の脂肪や骨髄から採取した幹細胞(他の細胞に変化する能力がある細胞)を関節に注入する方法です。

また、手法によっては手術・入院が不要なケースもあるため、手術に不安がある人や入院は避けたい人にとって、選択肢の一つとなるでしょう。

当院リペアセルクリニックでは、手術以外の治療法として、股関節唇損傷に対して再生医療をご提案しています。股関節の痛みにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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当院の股関節治療の再生医療については、以下の記事もご覧ください。

手術しなくても治療できる時代です。

股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

股関節唇損傷でやってはいけないこと

股関節に負担をかけるような動きは、回復を妨げる原因になります。

股関節に強い負荷がかかる動作

以下のような負荷は、関節唇に大きなストレスを与えます。

  • 深くしゃがむ
  • 高くジャンプする
  • 股関節を勢いよくひねる
  • 重いものを持った状態でスクワットをする

痛みや違和感がある動作を無理に続けると、損傷が悪化したり、回復が遅れたりする原因になります。関節に負担がかかる運動は控え、回復までは安静を意識しましょう。

坂本 貞範
坂本 貞範
長年の習慣になってしまっているものが多いと思います。
床の生活から、椅子の生活に切り替えるなど、環境を整えていただくことが有効です。

長時間の同じ姿勢

あぐらや正座、脚を組む姿勢など、股関節に負荷がかかる姿勢を長時間続けると、関節の一部に力が集中しやすくなります。

とくにデスクワークや長時間の運転、立ち仕事などでは注意が必要です。同じ姿勢が続かないようにする工夫や仕事環境を調整しましょう

無理なストレッチ

「よかれと思ってやったストレッチ」がかえって逆効果になることもあります。

痛みを我慢して関節を強く伸ばしたり、可動域を無理に広げたりすると、関節唇にさらなるダメージが加わるおそれがあります。

ストレッチは痛みのない範囲で行い、できれば理学療法士や専門家の指導を受けながら進めるのが安心です。

こちらの記事では、股関節唇損傷の改善に役立つストレッチを詳しく紹介しているため、ぜひご覧ください。

股関節唇損傷はひとりで悩まず専門医へ相談しよう

股関節唇損傷は、放っておくと悪化したり、関節の変形につながったりするおそれがあるため、状態に応じた適切な対応が欠かせません。

とくに、痛みが続いているのに我慢して動かし続けていると、関節の中の軟骨や周囲の組織にもダメージが広がる可能性があります。

違和感や動かしづらさが長引くときは、なるべく早めに整形外科や股関節の専門医を受診しましょう。

治療には、安静・リハビリといった保存療法のほか、関節鏡手術や再生医療といった選択肢もあります

からだにかかる負担や生活スタイルも考慮しながら、自分に合った治療法を見つけるために、まずは専門の医師に相談することが大切です。

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股関節唇損傷に関するよくある質問

股関節唇損傷が自然治癒することはありますか?

関節唇は一度損傷すると、自然に元の状態に戻ることは難しいとされています。

ただし、損傷の範囲が小さい場合や、痛みの原因が主に炎症や筋肉の緊張であるケースでは、保存療法によって症状の改善がみられることもあります。

その後痛みが改善しても元の生活に戻ると再発することがあるため、医師に指示された生活上の指示を守るようにしましょう。(文献1

股関節唇損傷の安静期間はどのくらいですか?

安静にすべき期間は、損傷の程度や治療内容によって異なりますが、保存療法では2カ月半~3カ月程度がひとつの目安とされています。(文献1

最初は炎症を抑えるために安静を保ち、痛みが落ち着いてきたら、リハビリで筋力や柔軟性を徐々に回復させていきましょう。

参考文献

(文献1)
A comprehensive review of hip labral tears|Curr Rev Musculoskelet Med

(文献2)
大腿骨寛骨臼インピンジメント (FAI)に対する鏡視下手術の up to date|第 40 回日本整形外科スポーツ医学会学術集会