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「突然、片側の手足に力が入らなくなった」 「最近呂律が回らず、うまく話せなくなった」 それらの症状は、心原性脳梗塞の可能性があります。心原性脳梗塞は、心臓内で生じた血栓が血流に乗って脳の血管を詰まらせることで発症します。本記事では、心原性脳梗塞について詳しく解説していきます。 心原性脳梗塞の症状 心原性脳梗塞の原因 心原性脳梗塞の治療法 異変を感じた段階で、早期に適切な治療を受けることが大切です。本記事の最後には、心原性脳梗塞に関するよくある質問もまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 心原性脳梗塞の症状 症状 主な症状 特徴・解説 顔面麻痺・手足の痺れ 顔の片側が動かしにくい、手足の力が入らない、感覚が鈍い 片側に出やすく、日常生活への影響が大きい 構音障害 話しにくさ、言葉が出ない、相手の話が理解できない 言語機能の障害によるコミュニケーションの困難 視覚障害 視野が狭くなる、物が二重に見える、片目の視力が低下する 突然の視覚異常による事故や転倒の危険 高次機能障害 記憶力や判断力の低下、注意力の散漫、感情の不安定さ 脳の機能低下による日常動作や思考の変化 心原性脳梗塞は突然発症するケースが多く、本人や周囲が初期症状に気づきにくいこともあります。顔の片側が動かなくなる、手足の痺れ、言葉が出にくい、視界の異常などの症状が現れます。 心原性脳梗塞は、発見が遅れると後遺症のリスクが高まるため、異変を感じた段階で早めに医療機関を受診するのが大切です。 以下の記事では、脳梗塞の症状の対策について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 脳卒中と脳梗塞の違いは?前兆の症状や後遺症をわかりやすく解説 顔面麻痺・手足の痺れ 項目 内容 原因 心臓の血栓が脳の太い血管を詰まらせ、感覚を司る領域への血流が遮断される 障害部位 大脳半球の感覚野(頭頂葉) 痺れの仕組み 神経細胞が酸素不足になり、感覚の信号が伝わらなくなる 出方の特徴 顔・手・足の片側に痺れが出る(障害された脳の反対側に症状が現れる) 麻痺との関係 感覚野と運動野が近く、痺れと麻痺が同時に出ることが多い 重症化しやすい理由 心原性の血栓は大きく、広い範囲で痺れが強く出やすい よく詰まる血管 中大脳動脈(MCA) (文献1) 脳の一部に血流障害が起こると、身体の左右どちらかに麻痺や痺れが現れるケースがあります。とくに顔の片側がゆがんだり、腕や脚に力が入らないといった症状は、心原性脳梗塞を疑うべきサインです。 顔面麻痺や手足の痺れは前兆なく突然起こることも多く、日常動作に支障をきたすため、早期の診断と対応が必要です。 構音障害 項目 内容 原因 心臓の血栓が脳の太い血管を詰まらせ、言語や発声に関わる部位が障害される 障害される部位 ブローカ野、運動野(顔面領域)、延髄などの脳幹 症状の内容 発音が不明瞭になる、声が出しづらい、言葉が滑らかに出ない 失語症との違い 構音障害は発音の仕方に問題があるのに対し、失語症は言葉の意味を理解したり表現したりする能力に障害が出る状態 構音障害と失語症が併発する可能性 構音障害と失語症が同時に起こるケースもある よくある日常のサイン ろれつが回らない、電話で何を言っているか聞き返される、言葉がつっかえる (文献2) 構音障害とは、言葉を発する際にうまく発音できない状態です。舌や唇、口の動きがうまくいかず、音を正確に発音できなくなります。 心原性脳梗塞では、このような話しづらさは発症直後に現れることが多く、本人や周囲も異変に気づきやすいのが特徴です。発音に違和感を覚えたり、ろれつが回っていないと指摘されたりした場合は、ためらわず早めに医療機関を受診しましょう。 視覚障害 項目 内容 原因 心臓から飛んだ血栓が、視覚をつかさどる脳の血管を詰まらせる 障害される部位 後頭葉や視神経を支配する動脈(例:後大脳動脈) 代表的な症状 両目の片側の視野が見えない(同名半盲) 一時的な視力障害 数秒~数分間、片目が真っ暗になる感覚(過性黒内障) 物が二重に見える症状 脳幹や小脳が障害されることで起こる複視 空間感覚の異常 距離感がつかみにくくなり、物との位置関係がわかりにくくなる 心原性脳梗塞で視覚をつかさどる脳の部位が障害されると、視野が欠ける、物が二重に見えるなどの異常が突然現れることがあります。 本人が気づかないケースもありますが、まばたきや目の動きに違和感が出ることがあります。視野が狭まるなどの異常が続く場合は、脳の異常も考え、早めに医療機関を受診しましょう。 脳の高次機能障害 主な症状 特徴 記憶障害 新しい情報が覚えられない、過去の記憶を思い出しにくい状態 注意障害 集中力の低下、注意の持続が難しい、気が散りやすい状態 遂行機能障害 計画や段取りの困難、手順通りに行動できない状態 言語障害(失語症) 言葉が出ない、話す・聞く・読む・書くことの困難 社会的行動障害 感情のコントロールの難しさ、衝動的・不適切な行動 (文献3) 心原性脳梗塞では、心臓から流れた血栓が脳の太い血管を塞ぎ、広い範囲の脳組織がダメージを受けることがあります。とくに中大脳動脈が詰まると、記憶や判断、注意、言語、感情などをつかさどる領域が障害され、高次脳機能障害が現れることがあります。 物忘れや段取りの悪さといった症状は、加齢と勘違いされやすいため、見逃されやすいのが特徴です。認知機能の低下に気づいた際には、脳梗塞の可能性も考え、早急に医療機関を受診しましょう。 心原性脳梗塞の原因 原因 内容 心房細動 心臓が不規則に動き、血栓ができやすくなる不整脈 心臓弁膜症 弁の異常により血液の流れが乱れ、血栓ができやすくなる状態 心筋梗塞 心筋の壊死によって心臓の機能が低下し、血栓が発生しやすくなる状態 拡張型心筋症 心臓の筋肉が弱まり、血液が滞って血栓ができやすくなる病気 卵円孔開存 心房の間に残った穴を通して、血栓が脳に流れ込む状態 感染性心内膜炎 心内膜や弁にできた感染性の塊(疣贅)が血流に乗って脳の血管を詰まらせる状態 心原性脳梗塞は、心臓で生じた血栓が血流に乗って脳へ到達し、血管を詰まらせることで発症します。発症の背景には、心房細動や心筋梗塞、心臓弁膜症など、心臓の機能に関わる病気が関係しているケースが多く見られます。 とくに心臓に不整脈や異常を指摘されたことがある方は、脳梗塞のリスクが高まるため注意が必要です。 以下の記事では、脳梗塞になりやすい人の特徴をわかりやすく解説しています。 心房細動・弁膜症 項目 心房細動が原因となる理由 弁膜症が原因となる理由 主な特徴 心房が細かく震える不整脈 心臓の弁が狭くなる・閉じにくくなる病気 血液の流れへの影響 心房の収縮が弱くなり、血液が滞りやすくなる 弁の異常で血液の流れが乱れ、特定部位で血液がよどみやすくなる 血栓ができやすい理由 滞留した血液が固まり、心房内に血栓ができやすくなる 血流の乱れと心房の拡大が血栓形成を促進 とくに血栓ができやすい部位 左心耳(左心房の袋状の部分) 拡大した心房内や人工弁の周辺 脳梗塞が起きる仕組み 心房内の血栓が全身へ流れ、脳の血管を詰まらせる 弁膜症により生じた血栓が血流に乗って脳へ運ばれ、血管を詰まらせる 弁膜症との関連 弁膜症が原因で心房細動を引き起こすこともある 心房細動を合併することで、さらに脳梗塞リスクが高まる 治療や注意点 抗凝固薬の服用が必要になることが多い 人工弁使用時は生涯にわたる抗凝固療法が必要 (文献4)(文献5) 心房細動は心臓が不規則に動く不整脈で、心房内に血液がよどみ、血栓ができやすくなります。この血栓が脳に流れると心原性脳梗塞を引き起こします。 高齢者に多い心房細動や弁膜症は自覚しにくく、いずれも脳梗塞のリスクが高いため、心電図や心エコーなどによる定期検査と、循環器内科での継続的な管理が欠かせません。 心筋梗塞・拡張型心筋症 項目 心筋梗塞が原因となる理由 拡張型心筋症が原因となる理由 主な特徴 冠動脈の詰まりによる心筋の壊死 心室の拡大と収縮力の低下 ポンプ機能への影響 心室の動きが悪くなり、血液が滞りやすくなる 心臓の収縮力が弱まり、血液が心室内に滞留しやすくなる 血栓ができやすい部位 壊死した心筋や心室瘤の部分に血液が淀みやすく、血栓が形成されやすい 拡張した心室内で血液がよどみ、血栓ができやすくなる 合併の多い不整脈 心房細動を伴うことがあり、さらに血栓リスクが上昇 心不全や不整脈を伴うことが多く、血栓形成の危険性が高い 脳梗塞が起きる仕組み 心室内の血栓が全身に流れ、脳の血管を詰まらせる 心臓内でできた血栓が脳に流れ込み、血管を詰まらせる (文献4)(文献6) 心筋梗塞や拡張型心筋症は、心臓の収縮力が低下し、血液が滞ることで血栓ができやすくなります。この血栓が脳に流れると心原性脳梗塞を引き起こす原因になります。 これらの心疾患は見逃されやすいため、心電図や心エコーなどの検査で異常を早期に見つけ、速やかな対処が大切です。心臓病のある方は、心原性脳梗塞など脳の異常にも注意が必要です。 卵円孔開存 卵円孔開存(PFO)は、胎児期に心房をつないでいた通路が出生後も閉じずに残っている状態です。多くは無症状ですが、まれに静脈の血栓がこの穴を通って脳に流れ、脳梗塞を引き起こすことがあります。(文献6) 「奇異性脳塞栓症」と呼ばれており、とくに若年者で原因不明の脳梗塞が起きた場合、PFOが関係している可能性があるため、心臓の検査が重要です。再発リスクが高い場合は、経過観察やカテーテルによる閉鎖術が検討されます。(文献7) 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は、心臓の内膜や弁に細菌が感染する病気です。細菌の塊(疣贅)が血流に乗って脳の血管を詰まらせ、心原性脳梗塞を引き起こすケースがあります。慶應義塾大学病院の報告では、患者の20〜40%に脳塞栓症が発生しています。(文献8) 人工弁や先天性心疾患がある方はリスクが高く、歯科治療や手術がきっかけになる場合もあるのが特徴です。発熱、倦怠感、心雑音が続く場合は早めに医療機関を受診する必要があります。(文献9) また、診断には血液検査や心エコー(とくに経食道エコー)が有効で、治療は抗菌薬が中心です。重症例では手術が必要になることもあります。 心原性脳梗塞の治療法 治療法の種類 内容 t-PA静注療法・血管内治療 発症早期に行う血栓溶解薬の投与やカテーテルによる血栓除去 抗凝固薬(ワルファリン、DOACなど) 血液を固まりにくくし、再発を防ぐための内服治療 原因疾患の治療(心房細動の管理など) 心房細動や弁膜症などの心疾患に対する薬物治療や手術 リハビリテーション 麻痺や言語障害の回復を目指す理学療法・作業療法・言語療法 再生医療 神経機能の回復を目指した新しい治療法の研究・臨床応用 心原性脳梗塞の治療は、発症直後の血栓除去と再発予防を目的に行われます。 急性期にはt-PAや血管内治療を行い、以降は抗凝固薬で血栓の再発を防ぎます。脳の障害に応じたリハビリも不可欠です。脳と心臓の両面から総合的に治療を進めていきます。 以下の記事では、脳梗塞は治るのかについて詳しく解説しています。 t-PA静注療法・血管内治療 項目 t-PA静注療法 血管内治療 治療内容 血栓を溶かす薬(t-PA)を静脈から投与して血管の再開通を図る カテーテルを使って血栓を直接回収または吸引し、血流を再開させる 主な作用機序 プラスミノーゲンを活性化し、プラスミンが血栓を分解 機械的に血栓を取り除く(ステントリトリーバー・吸引カテーテルなど) 対象となる血栓 比較的小さめの血栓に有効 太く大きな血栓やt-PAが効きにくい血栓に有効 適応されるタイミング 発症から4.5時間以内が目安 発症から6時間以内(条件次第で24時間程度まで適応されることも) 心原性脳梗塞との相性 心臓由来の血栓が溶解できるケースでは有効 心臓由来の大きな血栓を直接除去できるため、心原性脳梗塞に適応しやすい 使用される場面 比較的早期で症状が中等度までの患者に多く使用 血栓が大きい、症状が重い、t-PA単独で効果が不十分な場合に使用 他の治療との併用の可能性 血管内治療と併用するケースあり 必要に応じて局所的にt-PAを併用も可能 治療の目的 脳への血流を早期に再開し、後遺症を軽減 血栓を確実に取り除き、血流を回復し重症化を防ぐ (文献10)(文献11)(文献12) t-PA静注療法は、血栓を溶かす薬剤(アルテプラーゼ)を点滴で投与し、閉塞した脳の血管を再開通させる治療です。発症から4.5時間以内の投与が目安であり、早期の対応が必要となります。(文献10) 血栓が大きい場合は、カテーテルで直接取り除く血管内治療が有効です。これらの治療は脳のダメージを抑えるために行われ、時間と症状の判断が回復を左右します。少しでも異変を感じた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。 抗凝固薬(ワルファリン、DOACなど) 種類 薬剤 特徴 ワルファリン ワルファリン ビタミンKの働きを抑えて血液を固まりにくくする薬剤。効果の安定には定期的な血液検査(PT-INR)が必要。食事や他の薬との相互作用に注意が必要 直接経口抗凝固薬(DOAC) ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン 凝固因子を直接阻害する新しいタイプの薬剤。定期的な血液検査が原則不要。食事や薬の影響を受けにくく、服用の手軽さが特徴 (文献13)(文献14) 心原性脳梗塞は、心臓内でできた血栓が血流に乗って脳の血管を塞ぐことで発症します。とくに心房細動などの不整脈があると、心房内に血液が滞り、血栓ができやすくなるのが特徴です。 抗凝固薬は血液の固まりにくさを保つことで、こうした血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の発症リスクを約3分の1に減らす効果があると報告されています。(文献15) 抗凝固薬には、ワルファリンと、近年使用が増えているDOAC(直接経口抗凝固薬)があります。DOACは定期的な血液検査が不要で、食事や他の薬の影響を受けにくく、一定の用量で効果が安定しているのが特徴です。このため、服薬の負担が少なく、継続しやすい薬とされています。(文献14) ただし、抗凝固薬は中断すると効果がなくなり、再発リスクが高まります。症状が落ち着いても自己判断で中止せず、医師の指示に従って服用を続けることが不可欠です。出血のリスクもあるため、異変を感じたら早急に医師へ相談しましょう。 原因疾患の治療(心房細動の管理など) 項目 内容 血栓形成の予防 心房細動を適切に管理すると心房内の血流が改善され、血栓の形成を防ぐ効果がある 抗凝固療法の適用 リスク評価(例:CHADS₂スコア)に基づき、ワルファリンやDOACを使用して血栓を予防する 心房細動の根治 カテーテルアブレーションにより、異常な電気信号の発生源を焼灼し、心房細動そのものを治療する 抗不整脈薬の使用 心房細動の発作を抑える薬剤により、発作の頻度や持続を減らす 脳梗塞の再発予防 血栓の原因となる心房細動を抑えることで、心原性脳梗塞の再発リスクを大きく減らせる (文献16) 心原性脳梗塞の予防や再発防止には、血栓をつくらせないための抗凝固療法だけでなく、根本原因となる心疾患の管理が不可欠です。 心房細動がある場合は、心拍を安定させる薬による治療が基本となり、症状が強い場合は、カテーテルアブレーションといった手術も検討されます。 心筋梗塞や弁膜症が原因であるときは、それぞれに合った専門的な治療が必要です。心臓と脳は深く関わっているため、心臓の病気をしっかり管理することが、脳梗塞の再発を防ぐポイントになります。 リハビリテーション リハビリの種類 対応する症状・目的 内容 理学療法(PT) 手足の麻痺や筋力低下などの運動機能障害 筋力や関節の動きを改善し、寝返り・立ち上がり・歩行など基本動作の回復を目指す訓練 作業療法(OT) 着替えや入浴などの日常生活動作や、記憶・注意力といった高次脳機能の障害 食事や更衣などの日常動作の訓練や、認知リハビリテーションを通じた生活機能の向上 言語療法(ST) 話す・理解する・飲み込むなどの言語障害・嚥下障害 発音・言語理解・読み書きなどの回復訓練により、コミュニケーション能力の改善を図る 心理・社会的支援 病気による不安・うつ・家族の精神的負担 心理士・ソーシャルワーカーによる心理サポートや、社会資源の活用支援 早期リハビリ介入 発症直後からのリハビリ開始による後遺症の軽減と回復促進 急性期からリハビリを始めることで、機能回復と社会復帰の可能性を高める包括的支援 (文献4) 心原性脳梗塞によって生じた後遺症を改善するには、発症後できるだけ早期にリハビリを開始するのが大切です。 手足の麻痺や言語障害、高次機能障害など、それぞれの症状に応じて、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)などを組み合わせて実施します。 リハビリは、脳の回復力が高い早期に始めることで効果が期待できます。再発を防ぎ、日常生活への復帰を目指すことが主な目的です。 再生医療 心原性脳梗塞による神経のダメージに対して、再生医療は有効な治療法のひとつとされています。 自分の身体から採取した幹細胞を使い、損傷を受けた脳の神経細胞の回復を促すことが目的です。治療を希望する場合は、再生医療を扱う医療機関で医師と十分に相談し、適切な判断のもとで進めていくことが大切です。 以下の記事ではリペアセルクリニックで取り扱っている再生医療についてわかりやすく解説しております。 リペアセルクリニックでは、心原性脳梗塞に対して手術を必要としない再生医療を提案しています。 心原性脳梗塞の症状が改善せずお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 心原性脳梗塞の症状を理解し適切な治療で回復を目指そう 心原性脳梗塞は、突然の麻痺や言語障害など、日常生活に大きな支障をもたらす病気です。症状を正しく理解し、早期に治療を受けることで後遺症の軽減や再発予防が期待できます。 手足の突然の麻痺や、ろれつが回らないといった症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、心原性脳梗塞による症状や後遺症に対し、従来のリハビリや治療に加えて、幹細胞を用いた再生医療もひとつの選択肢としてご案内しています。患者様の状態やご希望に応じて、医師と相談の上で治療方法を検討していただけます。 心原性脳梗塞の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 心原性脳梗塞の症状に関するよくある質問 心原性脳梗塞の予兆としてどのようなものがありますか? 心原性脳梗塞は突然起こることが多いですが、前ぶれとして一過性脳虚血発作(TIA)が現れることがあります。顔や手足の痺れ、言葉のもつれ、一時的な視力障害などが特徴です。 見逃さないためには、FASTチェックが有効です。 F=顔のゆがみ A=両腕が上がるか S=言葉の異常 T=時間が勝負 1つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼びましょう。 心原性脳梗塞は再発しますか? 心原性脳梗塞は再発のリスクが高く、心房細動の持続や自己判断による抗凝固薬の中断、生活習慣病の悪化が影響します。 再発を防ぐには、正しい薬の継続服用、定期検査、食事や運動など生活習慣の見直しが大切です。 以下の記事では脳梗塞の予防や再発防止について詳しく解説しています。 心原性脳梗塞の症状に対して家族ができるサポートはありますか? 心原性脳梗塞では、家族のサポートが回復と再発予防において大切です。 異変への早期対応、治療や服薬の支援、リハビリや生活習慣の見直しを共に行うことが求められます。また、不安や抑うつへの心のケアも大切です。 参考資料 (文献1) 公益財団法人 日本心臓財団「脳卒中の基礎知識と予防のコツ」公益財団法人 日本心臓財団 https://www.jhf.or.jp/topics/2017/004361/(最終アクセス:2025年5月18日) (文献2) 山本大介.「みんなの脳神経内科ver.2」『中外医学社』, pp.1-8 https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse4460.pdf(最終アクセス:2025年5月18日) (文献3) 社会福祉法人 恩賜財団 済生会「高次脳機能障害」社会福祉法人 恩賜財団 済生会, 2022年09月21日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/higher_brain_dysfunction/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献4) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」 pp.開1-180, 2021年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf(最終アクセス:2025年5月18日) (文献5) 岩﨑 雄樹ほか.「不整脈治療」『日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン』, pp.1-80, 2024年 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf(最終アクセス:2025年5月18日) (文献6) Abbott「PFO(卵円孔開存)と脳梗塞」PFO閉鎖術 https://pfo-japan.com/what/index.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献7) 公益財団法人 日本心臓財団「卵円孔開存と脳梗塞との関係」公益財団法人 日本心臓財団, 2013年4月10日 https://www.jhf.or.jp/check/opinion/3-5/post_3.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献8) 慶應義塾大学「感染性心内膜炎」慶應義塾大学病院|KOMPAS, 2019年3月5日 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000197/?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献9) 河野憲司.「心疾患を有する患者の歯科処置後に発熱を生じたとき」『大分歯界月報』, pp.1-4, 2019年 https://www.med.oita-u.ac.jp/oralsurg/allpdf/sikaigeppou/2019/%E7%AC%AC%EF%BC%93%E5%9B%9E%E3%80%80%E5%BF%83%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%82%92%E6%9C%89%E3%81%99%E3%82%8B%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%87%A6%E7%BD%AE%E5%BE%8C%E3%81%AB%E7%99%BA%E7%86%B1%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%98%E3%81%9F%E6%99%82.pdf(最終アクセス:2025年5月18日) (文献10) 平野照之ほか.「静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版 2023 年 9 月追補」『日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会』, pp.1-14, 2023年 https://www.jsts.gr.jp/img/rt-pa03_supple.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献11) 峰松一夫.「知っておきたい循環器病のあれこれ」『公益財団法人 循環器病研究振興財団』, pp.1-20 https://www.jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_166.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献12) 宮下明大.「Journal Club 脳梗塞発症後6-24時間における血栓除去術」, pp.1-55, 2018年 https://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20180116Fukuda.pdf(最終アクセス:2025年5月18日) (文献13) 平野照之.「日本血栓止血学会サイト お役立ちリンク集」『血戦止血誌』, pp.1-11, 2017年 https://www.jsth.org/publications/pdf/oyakudachi/6-3.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献14) 国立循環器病研究センター「抗血栓薬内服中の患者が脳出血を発症した場合の重症化リスクを解明」国立循環器病研究センター, 2024年10月25日 https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_44966/#:~:text=*3)%20%E7%9B%B4%E6%8E%A5%E4%BD%9C%E7%94%A8%E5%9E%8B%E7%B5%8C%E5%8F%A3,%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(最終アクセス:2025年5月18日) (文献15) 最先端の医療をお伝えする活動推進委員会 「脳卒中の今」先進医療.net, 2022年3月25日 https://www.senshiniryo.net/stroke_c/13/index.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日) (文献16) 一般社団法人 日本循環器気学会「心房細動と心原性脳梗塞栓症」一般社団法人 日本循環器気学会 https://www.j-circ.or.jp/old/about/jcs_ps5th/index03.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月18日)
2025.05.30 -
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「最近、物忘れが増えた気がする」 「身体のしびれ、力が入らないことが増えた」 このような悩みや違和感を覚えていませんか。これらは脳の異変、特にラクナ脳梗塞の可能性があります。自覚症状が出にくいため、異変に気づかないまま放置すると後遺症につながることがあります。 症状に気づかないまま重症化しないためにも、本記事ではラクナ脳梗塞について詳しく解説します。 ラクナ脳梗塞の症状 ラクナ脳梗塞の原因 ラクナ脳梗塞の治療法 ラクナ脳梗塞の再発予防策 記事の最後には、ラクナ脳梗塞に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 ラクナ脳梗塞とは 項目 ラクナ脳梗塞 他の脳梗塞(アテローム血栓性・心原性脳塞栓症など) 詰まる血管の太さ 細い血管(穿通枝) 太い血管(主幹動脈など) 詰まる場所 脳の深部(視床、内包、脳幹など) 大脳皮質や皮質下、広い範囲 梗塞の大きさ 小さい(直径15mm以下) 比較的大きい 症状の出方 軽度または限定的な症状、無症状もある 急激で広範囲な症状が出やすい 見つかり方 健康診断や画像検査で偶然見つかることもある 明らかな発症症状により医療機関を受診し発見されやすい (文献1) ラクナ脳梗塞は、脳の深い部分にある細い血管が詰まることで生じる、小さなタイプの脳梗塞です。とくに視床や内包、脳幹といった脳の中心部で起こりやすく、詰まる血管は穿通枝と呼ばれる細い血管で、その結果生じる梗塞巣は直径15mm以下の小さなものです。 高血圧や糖尿病などが長く続くと、脳の細い血管がもろくなり、血流が止まってラクナ脳梗塞が起こることがあります。これは脳の深い部分に小さな梗塞ができるタイプで、初期には症状が軽く、気づかれにくいことが多いのが特徴です。 一般的な脳梗塞(アテローム血栓性や心原性脳塞栓症など)は太い血管が詰まり、大脳の広い範囲に強い症状が現れますが、ラクナ脳梗塞では影響が小さく、言葉や動きなど特定の機能にだけ症状が出るケースもあります。 中にはまったく症状がなく、検査で偶然見つかることもあります。ただし、たとえ小さな梗塞でも、何度も繰り返すと認知機能の低下や歩きにくさなど、後遺症につながる可能性があるため、少しでも気になる症状があれば、早めに医師への相談が大切です。 以下の記事では、脳梗塞の前兆やサインについて詳しく解説しております。 【関連記事】 突然の肩こりは脳梗塞の前兆?受診すべき症状や予防法を医師が解説 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 ラクナ脳梗塞の症状 症状・状態 起こる場面や原因 考えられる影響 片側の運動麻痺 手足や顔の一部に力が入らなくなる 日常動作の不自由・麻痺の固定 片側の感覚障害 しびれ、触覚の鈍さ、ピリピリ感覚が起こる 感覚の鈍麻・身体の違和感 構音障害 舌や口の動きのぎこちなさによる言葉のもつれ 会話のしづらさ・伝達能力の低下 手足の不器用さ 動きの協調性の低下 細かい作業の困難・転倒リスクの増加 嚥下障害 のどや舌の動きの低下 誤嚥・食事中のむせ・栄養摂取の難しさ バランス障害 体の安定感の低下 歩行困難・転倒リスクの増大 無症候性脳梗塞 自覚症状なし。検査で偶然見つかる小さな梗塞 再発の前兆・脳機能への慢性ダメージ 再発の蓄積 高血圧・糖尿病など動脈硬化が進んだ状態 小さな梗塞の多発・症状の進行 認知機能障害 多発性ラクナ梗塞の影響 物忘れ・判断力の低下・血管性認知症の進行 意欲や感情の変化 前頭葉付近の血流障害 意欲の低下・感情の不安定化 脳卒中リスク増加 全身の動脈硬化が背景にある状態 広範囲の脳梗塞・脳出血など重篤な脳卒中の可能性 ラクナ脳梗塞の症状は、梗塞が起きた場所や範囲によって異なります。典型的には、手足の麻痺やしびれ、感覚の鈍さ、歩行のふらつき、ろれつが回らないといった症状が現れます。 症状は軽度で一時的な場合も多く、加齢による変化と誤解してしまうことも少なくありません。また、頭痛や吐き気、物忘れの増加、力が入りにくいといった症状として現れることもあります。これまでになかった身体の変化に気がついた場合は、脳梗塞の可能性を疑い、早めに医療機関を受診しましょう。 ラクナ脳梗塞の原因 原因の種類 身体への影響 ラクナ脳梗塞との関係 高血圧 血管に強い圧力がかかり、壁が傷つき硬くなる 細い血管の動脈硬化を引き起こす主要な原因 加齢 血管が自然に硬くなり、弾力を失う 詰まりやすくなり、血流障害を起こしやすくなる 糖尿病 高血糖により血管内壁が傷つきやすくなる 細い血管にも影響し、詰まりやすくなるリスク増加 喫煙 血管が収縮し、血流が悪くなる 動脈硬化を促進し、脳血管に悪影響を及ぼす 脂質異常症 血液中の脂質が増え、血管壁にプラークが沈着 血管が狭くなり、詰まりやすくなる原因となる (文献2)(文献3) ラクナ脳梗塞は、脳の細い血管が徐々に狭くなり、最終的に詰まってしまうことで発症するのが特徴です。 主に原因として、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病によって血管が傷み、発症します。また、喫煙や加齢による血管の変性もラクナ脳梗塞を引き起こすリスクがあります。 高血圧 仕組み・状態 身体への影響 推奨される対策 血管壁への強い圧力 細い血管の内側が傷つき、硬く狭くなる 血圧の安定管理・血管負担の軽減 血管の変性(リポヒアリノーシス、フィブリノイド壊死) 血管の弾力低下・閉塞の進行 食塩制限・適度な運動・医師の指導に基づく治療 自動調節機能の低下 血流の調整ができず、細い血管の詰まりが起こりやすくなる 血圧変動の抑制・日々の血圧チェック 無症候性ラクナ梗塞の蓄積 認知機能の低下・血管性認知症への進行 定期的な脳の検査・生活習慣病の早期対策 高血圧の放置 繰り返す脳梗塞・将来的な重い後遺症 医療機関の受診・薬の服用継続 (文献2)(文献3) 高血圧は、ラクナ脳梗塞の原因のひとつであり、血圧が常に高い状態が続くと、脳の細い血管に大きな負担がかかり、壁が傷つきやすくなります。この状態が長期化すると、血管が硬くもろくなり、やがて詰まりを起こす可能性があります。 自覚症状のないまま進行するサイレントキラーとも呼ばれる高血圧は、脳の深部の血流障害を引き起こす大きな要因です。日々の血圧管理は、ラクナ脳梗塞の予防に欠かせません。早朝や夜間の変動にも気を配り、医師の指導に従って治療を続けることが大切です。 加齢による血管の変化 原因の種類 説明 対策 血管の硬化・肥厚 加齢により動脈が硬く厚くなる自然な変化。血管の弾力低下や内腔の狭窄を引き起こす 食事の改善、適度な運動、定期的な血管年齢チェック 穿通枝の狭窄・もろさ 脳の深部にある細い血管が加齢で弱くなり、血流低下や閉塞を招く 血圧・血糖・脂質の管理、禁煙、ストレス軽減 高血圧・糖尿病の影響増大 加齢で弱った血管が生活習慣病の影響を受けやすくなる 早期の生活習慣病治療、定期検診 微小血管障害 加齢により修復力が低下し、微細な血管損傷が血栓や梗塞の原因になる 再発予防の薬物治療、日常的な血圧管理 心血管疾患リスクの増加 加齢とともに心筋梗塞や脳卒中のリスクが急増 高カカオチョコ・ナッツ・魚などを摂取(ポリフェノール・オメガ3) 食生活の偏り 高齢者で栄養が偏りやすく、血管の老化が進行 地中海食を導入する (文献1)(文献4) 加齢により血管は徐々に弾力を失い、硬く狭くなっていきます。とくに細い血管は影響を受けやすく、ラクナ脳梗塞は小さな血管が詰まることで発症します。 加齢は避けられませんが、運動・食事・禁煙など、生活習慣の見直しによって血管の劣化を遅らせることができます。年齢に応じた健康管理が、脳の血流を守るために大切です。 糖尿病 項目 内容 対策 高血糖による血管内皮の損傷 血糖値の上昇で血管の内皮細胞が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行 血糖管理の徹底 糖化反応による血管の劣化 血中の余分な糖がタンパク質と結合し、血管が硬く厚くなる 糖質制限と食事改善 細小血管への特異的な障害(糖尿病性血管症) とくに脳の穿通枝のような細い血管で顕著な構造異常が起こる 血管内皮の保護 血流の悪化・血栓形成 内皮の損傷により血小板が集まりやすくなり、血管内が狭くなる 抗血栓対策と禁煙 ラクナ梗塞の発症 血管が閉塞し、脳深部の小さな領域に血液が届かなくなる 生活習慣病の包括的管理 (文献5) 糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気で、血管を徐々に傷つけます。とくに脳の細い血管はダメージを受けやすく、ラクナ脳梗塞のリスクを高める原因になります。 糖尿病とラクナ脳梗塞の合併症を引き起こさないためにも血糖だけでなく、血圧やコレステロールの管理も大切です。食事や運動、薬による血糖コントロールを続けることが、脳血管を守るためにも欠かせません。 以下の記事では、脳梗塞によって引き起こされる合併症について詳しく解説しています。 喫煙 喫煙による影響 血管への作用 ラクナ脳梗塞への関与 対策・予防策 血管内皮細胞の損傷 血管の炎症・硬化 動脈硬化を進行させ、穿通枝の狭窄を引き起こす 禁煙の実施、受動喫煙も回避 動脈硬化の促進 LDLコレステロールが血管に蓄積 脳の細い血管(穿通枝)の詰まりを助長 食生活改善(野菜・果物・魚を積極的に) 血栓形成の促進 血小板が活性化し血が固まりやすくなる 血管内で血栓が形成されやすくなる 禁煙+水分摂取・適度な運動 血管収縮作用 血圧上昇・血流悪化 一過性の血流低下がラクナ梗塞を誘発 ストレス管理・禁煙補助薬の活用 受動喫煙の影響 同様の血管損傷を引き起こす 非喫煙者にもリスクが波及 家庭・職場での禁煙環境整備 喫煙は、血管の健康に悪影響を与える生活習慣のひとつです。タバコに含まれる有害物質は、血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を進行させます。 喫煙は動脈硬化や一時的な血圧上昇を引き起こし、脳の細い血管が詰まりやすくなることでラクナ脳梗塞のリスクを高めます。発症予防や再発防止のためにも、禁煙の徹底が大切です。 脂質異常症(高脂血症) 項目 内容 解説 対策 血管内への脂質蓄積 LDLが内皮細胞に侵入 傷ついた血管ほど脂質がたまりやすい 動脈硬化の原因となるため、LDLを下げる生活習慣が大切 アテローム硬化の進行 血管内で脂質が粥状に蓄積し、血管が狭く硬くなる 内腔が狭まり、血流が悪化 HDLを増やす・抗炎症的な食生活 脳の細い血管(穿通枝)への影響 穿通枝の内腔狭小化、微小プラークの形成 動脈硬化が脳の深部血管でも起きやすくなり、血流がさらに悪化 血圧・血糖・脂質の総合的管理 血流の悪化と閉塞 プラーク破綻→血栓形成→血管閉塞 ラクナ脳梗塞の直接的原因 脂質異常の是正・抗血栓療法(医師指導のもと) 他リスク因子との相乗作用 高血圧・糖尿病・喫煙と重なるとリスクが跳ね上がる 血管へのダメージが加速 すべての生活習慣病リスクに目を向けた多角的対策 予防・対策 脂質管理の徹底が動脈硬化の進行を防ぐ ラクナ脳梗塞の予防・再発予防への取り組みが大切 食事(魚・ナッツ・野菜中心)、運動、医師の指導による薬物療法 脂質異常症とは、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、または善玉(HDL)コレステロールが少ない状態です。 この状態が続くと血管内にプラークが蓄積し、動脈が狭くなって血流が悪化します。ラクナ脳梗塞は脳の深部で細い血管が詰まることで起こるため、脂質異常症はその大きな原因のひとつとされています。 脂質値の管理は、食事の改善や適度な運動、必要に応じた薬物療法を継続しつつ、定期的な血液検査で異常を把握し、血管を守る意識が大切です。 ラクナ脳梗塞の治療法 治療法 内容・目的 補足・特徴 急性期治療 血栓溶解薬(t-PA)や脳浮腫抑制薬を使用 発症から数時間以内の対応が大切。早期治療で後遺症を軽減できる可能性あり 栄養療法 食事指導により高血圧・糖尿病・脂質異常症などを管理 管理栄養士の助言を受け、減塩・低脂質・低糖質の食事が基本 リハビリテーション 理学療法・作業療法・言語療法により機能回復と生活自立を支援 後遺症の程度に応じて段階的に実施。長期継続で改善が期待される 心理的サポート カウンセリング・精神的ケアで患者や家族の不安・抑うつを軽減 発症後の喪失感や意欲低下への対処。医療ソーシャルワーカーの支援も活用可 再生医療 幹細胞などを用いた脳組織の修復を目指す 保険適用外であり、対応できる医療機関が限られている ラクナ脳梗塞の治療は、発症直後の急性期と、その後の回復・再発予防に分けて行われます。 いずれの治療法においても大切なのは、自己判断を避け、医師の指導のもとで早期に適切な対応を行うことです。早期の対応が、後遺症の軽減や再発予防につながります。 急性期治療(発症直後) 治療法 目的 内容・特徴 血栓溶解療法(t-PA療法) 詰まった血管の再開通 発症から4.5時間以内にt-PAを点滴投与し、血栓を溶かす。出血リスクあり 抗血栓療法 血栓の拡大や新たな血栓の予防 抗血小板薬(例:アスピリン)を使用する。ラクナ脳梗塞では主にこの治療が中心 抗凝固療法 血液が固まるのを防ぎ、新たな血栓を抑制 ヘパリンやアルガトロバンを点滴で使用する。出血のリスクを考慮して選択 脳保護療法 脳神経細胞の損傷の進行を防ぐ エダラボンの点滴で酸化ストレスを抑制し、脳のダメージを軽減 脳浮腫軽減療法 脳の腫れ(浮腫)を軽減し、圧迫を防ぐ グリセオールやマニトールを点滴で投与し、余分な水分を排出して脳圧を下げる 発症直後の急性期には、脳へのダメージを最小限に抑えるため、できるだけ早く治療を始めることが大切です。 ラクナ脳梗塞は小さな血管の詰まりによって起こり、放置すると症状が進行する恐れがあります。治療で使用される主な薬剤は、血栓を溶かして血流を回復させる薬(t-PA療法)や、血栓の拡大や新たな血栓を防ぐ薬(抗血小板薬・抗凝固薬)などです。 また、脳の腫れや細胞の損傷を防ぐための点滴治療(脳保護療法・脳浮腫軽減療法)も行われるケースもあります。 早期発見と治療は後遺症を軽くする鍵です。異変を感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、脳梗塞の治療方法について詳しく解説しています。 栄養療法 項目 内容 目的・効果 高血圧対策 減塩(1日6g未満を目安) 血圧の安定化・血管への負担軽減 糖尿病対策 糖質の摂取量と時間を調整 血糖値の安定化・血管障害の抑制 脂質異常症対策 飽和脂肪酸を控え、魚やナッツでオメガ3を摂取 LDLコレステロールの低下・動脈硬化予防 動脈硬化予防 抗酸化食品(野菜・果物・魚)を積極的に摂取 血管の酸化防止・血流維持 体重管理 カロリー制限とバランス食の実践 肥満・高血圧・糖尿病のリスク低下 総合的な栄養管理 医師・栄養士の指導で継続的に実施 再発予防と生活の質(QOL)の向上 ラクナ脳梗塞の回復や再発予防には、毎日の食事の見直しが大切です。減塩は高血圧予防に効果的であり、糖質や脂質の管理も血糖やコレステロールの安定に役立ちます。 加工食品や外食を控え、栄養バランスの取れた食事を心がけることが、脳を守る基本的な対策となります。 リハビリテーション 項目 内容 効果 注意点 機能回復の促進 麻痺や言語障害などの改善を目指す訓練(運動・発声・作業など) 神経の可塑性を引き出し、機能の再獲得を促進 焦らず継続することが重要。効果が見えるまでに時間がかかる場合あり 日常生活動作(ADL)の向上 食事・着替え・歩行などを自立して行えるように支援 生活の自立度が上がり、介護負担の軽減にもつながる 過剰な無理は禁物。身体機能に合わせて段階的に進める必要がある 合併症の予防 廃用症候群、誤嚥性肺炎、血栓などの予防 体を動かすことで二次的な健康リスクを回避 早期開始が理想だが、体調の安定を見ながら進める必要がある 生活の質(QOL)の向上 社会参加・趣味活動の再開を目指す 心の回復と意欲向上に効果。再発予防にも寄与 患者本人の希望を尊重し、無理のない範囲での目標設定が大切 ラクナ脳梗塞によって運動機能や認知機能に障害が出た場合、医師の指導のもと行うリハビリが症状の回復において大切です。作業療法や理学療法を通じて、日常生活に必要な動作を取り戻すことを目指していきます。 とくに歩行や手の動作に影響がある場合は、早期からの訓練が不可欠です。また、リハビリは、患者の状態や生活習慣に合わせて個別に計画し、医師の指示のもと無理のないペースで進めることが大切です。 関連記事:ラクナ梗塞の後遺症とは?リハビリ方法や再発リスク・再生医療について 心理的サポート 目的 内容 有効な理由 病気への不安や衝撃の緩和 発症のショックや再発への恐怖を軽減 医師との対話で感情を整理し、冷静に治療に向き合えるようになる 後遺症や身体の変化への適応 目に見えにくい症状への戸惑いや落ち込みに対処 残された機能を活かす工夫や前向きな姿勢を引き出す支援ができる 精神症状への対応(うつ・不安) 血管性うつ病など、精神的合併症に対応 精神面の安定によりリハビリ意欲や生活の質が向上する 再発への不安の管理 高い再発率に対する過度な不安を軽減 予防行動への前向きな継続を支える心理的土台をつくる (文献6) ラクナ脳梗塞は身体だけでなく心にも影響を及ぼし、再発への不安や思うように動けないことから、うつや意欲低下が生じやすくなります。 そのため、治療と並行して心理的サポートが不可欠です。心理士のカウンセリングや家族との対話、同じ経験を持つ人との交流は、前向きなリハビリ継続に役立ちます。心のケアは回復を支える大切な要素です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症において患者様の家族が注意したいポイントを詳しく解説しています。 再生医療 項目 内容 期待される効果 神経細胞の修復 患者自身の幹細胞を使い、損傷した神経細胞の再生を促す 運動機能・感覚機能の改善 神経保護・抗炎症作用 幹細胞が神経栄養因子を分泌し、神経の保護や炎症の抑制に働く 脳内環境の安定、再発リスクの低下 血管新生と血流改善 損傷した脳内の微細血管の再生を促進 脳への酸素・栄養供給の改善 再生医療は、ラクナ脳梗塞に対する新たな治療選択肢のひとつです。自己由来の幹細胞を用いて、損傷した神経組織の再生を促し、他の治療法と併用することで後遺症の改善が期待されます。 ただし、再生医療を実施している医療機関は限られており、保険の適用外である点に注意が必要です。治療を検討する際は、事前に医療機関の情報を確認し、医師への相談が大切です。 以下の記事では、リペアセルクリニックで実施している再生医療についてわかりやすく解説しております。 ラクナ脳梗塞の再発予防策 予防策 内容 補足・ポイント 生活習慣病の管理 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療を継続 医師の指示に基づく食事・運動・薬物療法が基本 糖尿病・脂質異常症の管理 血糖・コレステロール・中性脂肪の数値をコントロール 血管保護に直結し、再発リスクを軽減 適度な運動習慣 ウォーキングなど、有酸素運動を継続 無理のない範囲で実施 抗血小板薬などの内服薬の継続 抗血小板薬や抗凝固薬の服用を継続 自己判断で中止せず、処方通りに継続 ストレス管理 リラックス法や趣味の時間を意識的に取り入れる ストレスによる血圧上昇を防ぎ、心身の安定を図る 禁煙の徹底 タバコは血管を傷つけ、動脈硬化を悪化させる 禁煙は最も効果的な再発予防策のひとつ ラクナ脳梗塞は、一度発症すると再発のリスクが高くなる傾向があります。再発を防ぐには、原因となる生活習慣病の管理や、毎日の過ごし方の見直しが不可欠です。 再発は日常生活に支障をきたすだけでなく、発見が遅れると重症化するリスクもあります。 生活習慣病の徹底的な管理 管理項目 具体的な対策内容 期待される効果 血圧管理 家庭で血圧を定期測定し、医師の指示に従って降圧薬を服用する 血管への負担を減らし、動脈硬化や血管破綻のリスクを軽減 血糖管理 血糖値を定期的に測定し、食事・運動療法や必要な薬で安定した血糖コントロールを行う 血管内皮の損傷を防ぎ、細い血管の血流維持に役立つ 脂質管理 定期的な血液検査と食事管理、必要に応じて薬を使用して脂質バランスを整える 動脈硬化の進行を抑え、血管閉塞や血栓形成のリスクを軽減 禁煙 受動喫煙も含めてタバコを完全にやめる 血管の炎症や収縮を防ぎ、血液の流れを保つことで再発を予防 適正体重の維持 バランスの取れた食事と継続的な運動で肥満を防ぎ、標準体重を維持する 高血圧・糖尿病・脂質異常のリスクを下げ、血管の健康を守る 高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病は、ラクナ脳梗塞の主な原因となるため、再発を防ぐにはこれらの改善が欠かせません。 とくに血圧は家庭で簡単に測定できるため、日々の変化を記録しながら管理するのが大切です。あわせて、定期的な通院と検査を続けることで、早期発見・早期対応につながります。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものについて詳しく解説しております。 糖尿病・脂質異常症の管理 管理法 糖尿病に対する対策 脂質異常症に対する対策 食事療法 炭水化物の摂取量を調整し、野菜や海藻、きのこなど食物繊維を積極的に摂取する 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く取り入れる 運動療法 有酸素運動を週3~5回・30分程度行い、血糖値のコントロールを図る 同様の運動で中性脂肪の減少やHDLコレステロールの増加を目指す 薬物療法 血糖降下薬(例:メトホルミンなど)を医師の指示に従って使用する スタチン系やフィブラート系薬剤でLDLコレステロールや中性脂肪を管理する 糖尿病・脂質異常症は血管にダメージを与える病気であり、放置すれば再発の恐れがあります。血糖やコレステロールの数値は、食事や運動、薬の服用によってある程度コントロールできます。 とくに糖尿病では、インスリン抵抗性の改善や血糖値の安定化が不可欠です。脂質異常症に対しては、動物性脂肪の摂取を控え、青魚や野菜を中心とした食事が効果的です。 糖尿病・脂質異常症の管理は自己流ではなく、医師の指導のもと行い、生活習慣を整えることで、再発防止につながります。 適度な運動習慣の継続 効果の分類 具体的な内容 生活習慣病の改善 血圧を安定させ高血圧を予防、血糖値を改善し糖尿病リスクを低下、脂質バランスを整え動脈硬化を抑制 肥満の予防・改善 消費エネルギーを増やし、適正体重を維持する 血管機能の維持・改善 血管の柔軟性を保ち、血液循環を良好に保つ 血栓の予防 血液を固まりにくくし、血管の詰まりを予防 (文献7)(文献8) ラクナ脳梗塞の再発予防には、継続的な運動が効果的です。軽いウォーキングや体操など、無理のない範囲で体を動かすことで、血圧や血糖値の改善、脳血流の促進、さらにはストレスの軽減にもつながります。 運動は気分の安定にも寄与し、心身の健康を支える習慣です。公益財団法人長寿科学振興財団の指針では、歩行と同等以上の身体活動を1日60分以上(週あたり23メッツ・時以上)行うことが推奨されています。(文献7) 対象 目安となる活動量 運動の強度・内容 全年齢共通 歩行と同等以上の身体活動を毎日60分以上(週に23メッツ・時以上) 日常的な歩行、家事、軽作業などを含む 65歳以上 内容を問わず身体活動を毎日40分以上(週に10メッツ・時以上) 散歩、体操、趣味の活動なども可 年齢問わず 息が弾み、汗ばむ程度の運動を週60分以上(4メッツ・時以上) 速歩、軽いジョギング、エクササイズなど ※メッツ(METs):身体活動の強さを表す単位(安静時を1とした相対値)(文献7) 65歳以上では、活動の種類にかかわらず1日40分以上(週あたり10メッツ・時以上)が目安です。また、息が弾み汗ばむ程度の運動(速歩、軽いジョギングなど)は週に60分以上(4メッツ・時以上)を目指しましょう。運動は無理のない範囲で始め、医師の指導のもと進めていくことが大切です。 抗血小板薬などの内服継続 項目 内容 補足情報・代表的な薬剤 再発予防効果の実証 抗血小板薬は、ラクナ脳梗塞の再発を有意に抑制することが研究で示されている アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなど 併用療法の効果 アスピリン+クロピドグレルなどの併用療法(DAPT)は、単剤より高い再発予防効果が期待される 適応は医師が判断(出血リスクとのバランスを考慮) 生活習慣病管理との相乗効果 高血圧・糖尿病・脂質異常症といったリスク因子の管理と併用で、再発予防効果がさらに向上 抗血小板薬+生活習慣改善の組み合わせが推奨される (文献9)(文献10)(文献11)(文献12) ラクナ脳梗塞の再発防止策として、抗血小板薬の継続服用は有力です。アスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなどは血栓の再形成を防ぎ、再発リスクを下げる効果が証明されています。(文献11) 場合によっては、医師の判断で2剤併用(DAPT)が行われるケースもありますが、副作用や出血のリスクもあるため、自己判断で中断せず、医師の指示に従うことが大切です。 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理をあわせて行うことで、薬の効果はさらに高まります。飲み忘れ防止にはカレンダーやアプリの活用が効果的です。薬の継続は治療の一環であり、副作用が気になる場合は早めに医師や薬剤師に相談しましょう。服薬が、再発予防と健康維持につながります。 ストレス管理 ストレスを和らげる方法 内容 適度な運動 ウォーキングやストレッチなど、軽い運動で心身の緊張をほぐす効果 十分な睡眠 規則正しい生活リズムを維持し、質の高い睡眠を確保 リラクゼーション法 深呼吸・瞑想・マインドフルネスなどを活用し、リラックス状態を促す 趣味や交流 趣味に没頭する時間や、家族・友人との交流を楽しみ、気持ちを安定させる ストレスは血圧や血糖の変動を引き起こし、間接的に脳梗塞の再発リスクを高める要因です。自覚がないままストレスが蓄積していることもあります。そのため、日常生活のなかで心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。 深呼吸や軽いストレッチ、趣味の時間などを意識的に取り入れるとストレスが緩和されます。また、家族や医師と定期的なコミュニケーションで悩みを共有することも精神状態の安定に役立ちます。 禁煙の徹底 禁煙は、ラクナ脳梗塞の再発予防において非常に大切です。喫煙は血管を収縮させ、血圧を上げるだけでなく、血管内皮を傷つけて動脈硬化を促進させる要因です。 JPHC研究によると、喫煙者は非喫煙者よりラクナ梗塞の発症リスクが約1.5倍高く、1日40本以上の喫煙では2倍以上に上がることが判明しております。また、禁煙によって男性では約17%、女性では5%の脳卒中が予防できるとの推計もあります。これは年間で約16万人の患者を救える可能性を意味し、禁煙が予防においてどれほど重要かを示したものです。(文献13) JPHC研究データからもわかるとおり、禁煙は比較的早期に血管の状態に現れるとされ、再発予防にも直結します。 ラクナ脳梗塞でお悩みの方は当院へご相談ください ラクナ脳梗塞は、症状が軽くても将来的に認知機能や運動機能に影響を及ぼすおそれがあります。違和感があれば、早めに検査を受けることをおすすめします。 当院リペアセルクリニックでは、ラクナ脳梗塞による後遺症に対して、患者様の状態に合わせた治療を提案しています。 リハビリや薬物療法に加え、必要に応じて再生医療も選択肢のひとつとしてご利用になれます。ラクナ脳梗塞の後遺症が改善せず、お悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。 ラクナ脳梗塞に関するよくある質問 ラクナ脳梗塞を放置するとどうなりますか? ラクナ脳梗塞は症状が軽く見過ごされがちですが、放置すれば、再発や認知症、言語・嚥下障害といった後遺症を招くリスクがあります。早期受診と治療、生活習慣の見直しが再発予防も大切です。 以下の記事では、「症状が軽い脳梗塞」における治療の重要性を詳しく解説しております。 ラクナ脳梗塞が重症化するとどうなりますか? ラクナ脳梗塞が重症化すると、手足の麻痺やしびれ、言葉の出にくさ、物忘れなどの症状が進行し、日常生活に支障をきたすことがあります。生活の質が大きく低下する恐れがあるため、早期の対処が重要です。 ラクナ脳梗塞の後遺症がある場合に利用できる公的支援制度はありますか? ラクナ脳梗塞の後遺症がある方は、公的支援制度を利用することで医療費や介護の負担を軽くできる可能性があります。医療費には高額療養費制度や自立支援医療、介護には介護保険制度や障害者総合支援法があります。 身体障害者手帳や障害年金による支援も受けられます。詳しくは市区町村や医療機関で相談できます。 ラクナ脳梗塞の後遺症改善については、以下の記事で詳しく解説しています。公的支援制度を活用しながら、前向きに回復を目指しましょう。 参考記事 (文献1) 社会福祉法人 恩賜財団済生会「ラクナ梗塞」社会福祉法人 恩賜財団済生会, 2015年12月25日 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/lacunar_infarction/(最終アクセス:2025年5月17日) (文献2) 甲斐 久史.「脳血管障害・心疾患を合併した 高血圧治療のポイント」『日本内科学会雑誌』104巻2(号), pp.1-8, https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/2/104_232/_pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献3) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」, pp.1-180, 2023年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf (最終アクセス:2025年5月17日) (文献4) 冨山 博史.「加齢と血管:血管の老化に向き合う」『東京医科大学病院』, pp.1-2, 2019年 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/info/data/lecture_134.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献5) JIHS「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター, 2015年10月27日 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献6) 「地域のかかりつけ医のための心不全診療ガイドブック」『沖縄県・沖縄県医師会』, pp.1-42 https://www.okinawa.med.or.jp/wp-content/uploads/2025/02/03-%E8%B3%87%E6%96%993%EF%BC%9A%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%A4%E3%81%91%E5%8C%BB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%BF%83%E4%B8%8D%E5%85%A8%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献7) 公益財団法人長寿科学振興財団「生活習慣病予防に効果的な運動習慣」健康長寿ネット,2016年7月25日 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/undou-shukan.html(最終アクセス:2025年5月17日) (文献8) 松元 秀次.「脳梗塞のリハビリテーション治療」, pp.1-9, 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/15/4/15_201/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献9) 「Ⅱ.脳梗塞・TIA」, pp.1-83 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_02.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献10) 内山真一郎.「脳血管障害と抗血栓療法」『21シリーズ特集Dr.内山.indd 3』, pp.1-5, 2008年 https://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/19_1.003.2008.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献11) 国立循環器病研究センター「脳梗塞再発予防抗血小板薬併用療法の適切な切替時期を提案:国内多施設共同 CSPS.com試験サブ解析」国立循環器病研究センター, 2022年01月27日 https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_31291/(最終アクセス:2025年5月17日) (文献12) 岩戸 英仁.「脳梗塞再発予防のための治療」, pp.1-24 https://www.onomichi-hospital.jp/upload/open-c/1438751314.pdf?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日) (文献13) 予防研究グループ(予防研究部・疫学研究部・コホート研究部)「多目的コホート研究(JPHC Study) 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について」国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/267.html?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年5月17日)
2025.05.30 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
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「小脳梗塞と診断されたが、どんな後遺症が出るのか気になる」 「小脳梗塞の後遺症の治療法を知りたい」 小脳梗塞の後遺症に不安を抱えていませんか。小脳は体のバランスや動きを調整する役割を担っており、発症後はふらつきや手足の震えといった症状が現れるケースがあります。ただし、適切な治療によって後遺症が改善する可能性もあります。 小脳梗塞で起こりうる後遺症 小脳梗塞の後遺症の治る見込みと予後 小脳梗塞における後遺症の治療法 記事の最後には、小脳梗塞の後遺症に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 小脳梗塞で起こりうる後遺症一覧 後遺症の種類 主な症状 日常生活への影響 平衡障害 ふらつき、めまい、酔ったような歩行 階段昇降や人混みでの歩行困難、転倒リスク増加 構音障害 ろれつが回らない、発話の不明瞭さ 会話の不便さによるストレスや社会的孤立 運動失調・協調運動障害 手足や体幹の動作不良、ぎこちなさ 細かい作業や移動動作の困難、生活動作の支障 嚥下障害 飲み込みの難しさ、むせやすさ 誤嚥や栄養摂取の困難、食事内容の制限 目の動きの異常 眼振、複視(物が二重に見える) 視界の不安定による読書・作業の困難 頭痛や吐き気の持続 慢性的な頭痛、吐き気 集中力低下、日常生活の質の低下 小脳梗塞では、体のバランスを取る、スムーズに動かすといった小脳の機能が障害されることで、さまざまな後遺症が現れることがあります。後遺症の現れ方は個人差が大きく、症状の程度や組み合わせもさまざまです。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 平衡障害 症状の部類 具体的な症状 生活への影響 ふらつき・不安定感 まっすぐ立つ・歩くのが困難。左右や前後に体が揺れる感覚 移動や姿勢保持の困難 めまい 回転性や浮動性のめまい。耳の病気とは異なる出方 視覚の不快感や動作時の不安定感 歩行困難 歩幅の不安定さや開脚歩行。転倒リスクの増加 外出や移動の制限、転倒の恐れ 体幹失調 座位や立位での体幹の揺れや傾き 座っているだけでも不安定さを感じる 眼振(がんしん) 眼球が意図せず揺れ動く症状 視線の定まりにくさによる集中困難 協調運動障害 手足の動きのぎこちなさや目的部位への動作困難 日常動作のぎこちなさによる生活の不便 小脳は姿勢やバランスを保つ役割があり、障害されると平衡感覚が乱れ、まっすぐ歩けない・立っていられないといった症状が特徴です。 ふらつきや転倒のリスクが高まり、移動や入浴などの日常動作に支障をきたすこともあります。また、階段の上り下りや、人混みの中を歩くことが困難になる場合も少なくありません。症状の改善には、リハビリによる反復練習の継続が大切です。 構音障害 項目 内容 発症の原因 発話に関わる筋肉の動きを調整する小脳の機能障害 機能の役割 発音のタイミング・強さ・協調を整える中枢としての調整機能 症状の分類 運動失調性構音障害 呂律の障害 明瞭な発音の困難、言葉の不鮮明さ 発音の不明瞭さ 音の歪みや曖昧さによる聞き取りづらさ 音節の分断 単語や音が途切れ途切れになり、滑らかな会話が困難になる現象(断綴性言語) 声の震え 声の不安定さや震えによる発声の違和感 話す速度の変化 話し方の異常な遅さや急な加速によるリズムの乱れ 呼吸との協調困難 発声と呼吸のタイミング不一致による会話のしづらさ 生活への影響 意図の伝達困難、対人コミュニケーションの不安やストレスの増加 (文献1) 構音障害とは、言葉の発音が不明瞭になる症状です。小脳が障害されると舌や口の動きがうまく調整できず、ろれつが回らない、息が続かないといった話しづらさが現れます。 聴力には問題がないため、周囲の理解が必要です。また、構音障害は言語聴覚療法で改善が期待できます。 運動失調・協調運動障害 症状の分類 主な症状・特徴 解説 酩酊様歩行 千鳥足のような不安定な歩行 直進困難・ふらつきによる転倒リスクの増加 失調性歩行 足の動きの不規則さや開脚歩行 歩幅の変動によるバランス喪失 体幹失調 座位や立位での不安定さ 体幹バランスの低下による転倒傾向 測定異常(ジスメトリア) 手足が目標に届かない、あるいは通り過ぎる 物を取る動作の正確性の低下 運動分解 一連の動きが滑らかでなく、分割されたぎこちない動きになる 筋肉の協調動作の不良による動作のぎこちなさ 変換運動障害 手のひらと甲を交互に返すなどの動きがスムーズにできない 動きの切り替えの困難さ 企図振戦 手を伸ばすなど目的動作時に出現する震え 静止時には見られず、動作開始時に明瞭になる振戦 構音障害 呂律の回りにくさ、言葉の不明瞭さ、単語が途切れる断綴性言語など 発話に必要な筋肉の協調運動の障害 眼球運動障害 眼振(リズミカルな不随意眼球運動) 視線の安定性の喪失による目の揺れ (文献2)(文献3) 運動失調・協調運動障害は、手足や体幹の動きがぎこちなくなる、思うように手足を動かせなくなるといった症状が現れます。筋力は保たれていても、思いどおりに手足が動かせず、日常生活に大きな支障をきたします。 これらの症状に対しては、理学療法による筋力やバランス感覚の訓練、作業療法による日常動作の練習などが効果的であり、継続的なリハビリによって徐々に改善が期待できます。 嚥下障害 症状の分類 内容 飲み込みにくさ 飲食物を塊にまとめる動作や、のどへの送り込みの困難 むせ・せき込み 飲食中のむせや強いせき込み。とくに水分での頻発 湿った声・ガラガラ声 咽頭残留による声の湿りや濁り 食事の遅延 飲み込みの困難による食事時間の長期化 のどのつかえ感 飲食物がのどに引っかかるような不快感 体重減少 十分な栄養・水分摂取の困難による体重の低下 誤嚥性肺炎 誤嚥によって引き起こされる肺炎の発症リスク増加 嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。むせやすくなったり、食事中に咳き込んだりすることが増えます。食事が楽しめなくなるだけでなく、重症化すると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあるため、注意が必要です。 嚥下障害を改善するためには、食事の形態を工夫するとともに、医師の指示に従いながらリハビリテーションに取り組むことが重要です。 目の動きの異常 症状の部類 内容 眼振(がんしん) 眼球がリズミカル(不随意)に揺れ動く現象。視線の方向によって強まる(方向性眼振)の場合あり 協調運動障害に伴う眼球異常 動く物を追う動作や、視線を目標から目標へ素早く移す動作の障害 視線固定困難 見たい対象に視線を安定して向け続けることの困難 複視(ふくし) 両目の動きの不一致によって物が二重に見える状態 めまい・ふらつきに伴う眼球異常 平衡感覚の障害に伴って起こる反射的な眼球運動の異常 日常生活への影響 視覚の安定性の低下による読書や歩行、運転などに支障が出る 小脳は眼球の動きの調整にも関与しているため、視線がスムーズに移動しない、焦点が合いにくいといった症状が出やすくなります。視界が揺れる、まっすぐ見続けることが難しくなり、不快感やめまいを伴う可能性があります。 視覚の異常は平衡感覚にも影響するため、ふらつきや吐き気と複合的に現れることもあり、日常生活に影響を及ぼすため、注意が必要です。視界の異常が続く場合は、歩行中の転倒や事故を防ぐためにも、早めに医師へ相談しましょう。 頭痛や吐き気などの持続 分類 内容 原因 脳圧上昇、脳幹刺激、平衡感覚障害、炎症や神経過敏による頭痛・吐き気の誘発 頭痛の症状 締め付け感、拍動痛、重だるさ。後頭部や首の違和感。体位変化や咳で悪化 吐き気の症状 食事と無関係な持続的吐き気。嘔吐や乗り物酔いに似た不快感を伴う 生活への影響 読書・外出・睡眠・食事への支障。他の神経症状との併発による日常生活の負担増加 小脳梗塞の直後には、頭痛や吐き気といった症状が続くことがあります。脳内の圧力変化や血流障害に関連する反応と考えられており、これらの症状は、通常時間の経過とともに軽快しますが、なかには慢性的な違和感として残るケースもあります。 症状が長引く場合は、自己判断での無理は禁物です。重症化する前に医療機関を受診しましょう。 小脳梗塞の後遺症の治る見込みと予後 後遺症の種類 回復の見込み 影響する要因 平衡障害(歩行時のふらつき) リハビリによる改善可能。ただし慢性化の恐れあり 損傷部位の広さ、年齢、早期リハビリ開始 協調運動障害(四肢の動作のぎこちなさ) 手足の機能回復は可能。細かい動作の障害が残ることあり リハビリ継続の有無、身体機能の基礎体力 構音障害(ろれつの不明瞭さ) 発話の明瞭さ向上。流暢さの完全回復は難しい場合あり 言語療法の有無、脳の損傷範囲、発症前の会話能力 嚥下障害(飲み込みにくさ) 食事調整と訓練で改善可能。誤嚥予防が重要 医師の指導有無、嚥下筋の損傷度、誤嚥性肺炎の有無 高次脳機能障害(記憶力・注意力) 回復に個人差あり。支援環境で生活の自立維持が可能 年齢、合併症の有無、家族や社会的支援の体制 小脳梗塞の後遺症は、適切なリハビリと時間の経過によって改善が期待できます。とくに発症から3カ月ほどは、神経や身体機能が大きく回復する重要な時期とされています。 実際にデンマークで行われた急性期の脳卒中患者、合計1,197人を対象とした、大規模な研究では、脳卒中患者の約95%が発症後12.5週間以内に機能回復のピークを迎えており、とくに最初の6週間で最も大きな改善が見られました。(文献4) 項目 回復期間 全体傾向(全患者の95%) 約12.5週間(約3カ月)以内 早期回復(全体の80%) 約6週間(約1カ月半)以内 軽症の患者 約8.5週間(約2カ月)以内 中等度の患者 約13週間(約3カ月)以内 重症の患者 約17週間(約4カ月)以内 非常に重症の患者 約20週間(約5カ月)以内 (文献4) 回復の速度は発症時の重症度に大きく左右され、軽度な場合は2カ月前後、重度では4〜5カ月で回復が頭打ちになる傾向があると報告されています。 この結果からも、早期からの集中的なリハビリが重要であり、予後の見通しを立てる上でも発症から3カ月以内の経過がひとつの指標です。 以下の記事では、脳梗塞の後遺症について詳しく解説しています。 【関連記事】 BAD(脳梗塞)とは?症状や予後・他のタイプとの違いも解説 脳梗塞の合併症には何がある?起こる原因や対処法を現役医師が解説 小脳梗塞における後遺症の治療法 治療法 目的 主な内容 理学療法 歩行能力・筋力・バランス感覚の回復 歩行訓練、バランス訓練、筋力トレーニング 作業療法 日常生活動作の自立支援 食事・着替え・入浴などの練習。装具や自助具の活用方法の指導 言語聴覚療法 構音障害・嚥下障害への対応 発音訓練、嚥下訓練、コミュニケーション・食事改善の支援 薬物療法 めまい・頭痛・吐き気の緩和、再発予防 症状緩和薬、抗血栓薬や降圧薬などの内服管理 精神的ケア・カウンセリング 不安・抑うつなど精神的負担の軽減 心理士や医師による相談支援。前向きな気持ちでのリハビリへの誘導 小脳梗塞に伴う後遺症の治療は、多角的なリハビリと必要に応じた薬物療法を組み合わせて行われます。症状ごとに理学療法、作業療法、言語聴覚療法を用い、それぞれの機能回復を目指します。 治療を進める際は、必ず医師と方針を相談した上で、自己流ではなく医師の指導に基づいて継続的に取り組むことが大切です。 以下の記事では、脳梗塞のリハビリ方法について詳しく解説しています。 理学療法 理学療法の目的 内容 バランス機能の再獲得 平衡感覚や姿勢制御の改善。立位保持や歩行訓練による体幹・下肢の安定性の向上 転倒リスクの軽減 段差歩行やバランスマット、重心移動訓練による転倒予防の強化 協調運動の再学習 運動失調に対する視覚・触覚フィードバックを用いた動作精度の改善 日常生活動作(ADL)の向上 立ち上がり・着替え・歩行などの自立度向上。生活の質(QOL)の改善 (文献5) 理学療法は、立つ・歩く・バランスを保つといった基本的な身体機能を改善させるために行われる訓練です。平衡感覚の改善やふらつきの軽減、姿勢や歩行の練習が中心になります。 発症直後から始めることで回復の可能性が高まり、筋力や柔軟性の維持にもつながります。理学療法を行う場合、自己判断で行うのではなく、医師の指導のもと実施するようにしましょう。 作業療法 アプローチ分類 訓練内容 目的・特徴 ADL訓練(基本動作) 食事・着替え・排泄・入浴などの日常動作の練習 自立支援と生活の質(QOL)の向上 上肢機能訓練 手指の巧緻動作、物の把持・離脱練習、両手での動作練習 動作の正確性と日常動作能力の改善 バランス・体幹訓練 座位・立位でのバランス練習、体幹安定のための体操やストレッチ 姿勢保持力と転倒予防の強化 高次脳機能訓練 注意力、遂行機能、記憶力の訓練 認知機能の改善と日常生活への応用力の向上 趣味・レクリエーション活動 手芸、園芸、音楽、ゲームなどの活動 心のリフレッシュと動作応用の練習 応用生活訓練 家事動作訓練(掃除・洗濯・料理)、外出訓練(買い物・交通機関利用など) 実生活への復帰と社会参加に必要なスキルの習得 作業療法は、小脳梗塞の後遺症によって難しくなった着替えや食事、掃除などの日常動作を取り戻し、円滑に行えるよう支援するリハビリです。 小脳障害による運動失調や手先の不器用さには、協調運動の練習や動作の工夫で対応し、注意力や段取りの難しさなどの認知面は、実践的な作業を通じて改善を目指します。作業療法は、生活背景に合わせた支援で自立を促すリハビリです。 言語聴覚療法 対象領域 主な訓練内容 目的・特徴 構音障害の訓練 発音練習、呼吸訓練、口舌機能訓練、話すスピードの調整 発話の明瞭さと滑らかさの向上 嚥下障害の訓練 嚥下体操、姿勢調整、食物形態の調整、摂食訓練、間接訓練 食事動作と誤嚥予防の徹底 言語機能の訓練 話す練習、聞く練習、読む・書く練習、代替コミュニケーション手段(文字盤・ノートなど)の活用練習 表現力と理解力の向上、伝達手段の確保 高次脳機能の訓練 注意・記憶障害への対応、メモや環境調整などの代償手段の指導 コミュニケーション機能と日常生活適応力の改善 家庭・家族支援 自主訓練の方法、介助方法、日常会話での工夫の指導 家庭内でのリハビリ促進と家族のサポート力の向上 小脳梗塞による構音障害や嚥下障害がある場合は、言語聴覚士によるリハビリが必要です。発音の明瞭化や話すスピードの調整、誤嚥を防ぐための嚥下訓練などを通じて、日常生活の質の向上を目指します。 また、会話がしづらくなることで生じる孤立感や不安に対しても、言語聴覚士や周りの適切な支援が不可欠です。言語聴覚療法では、発話や飲み込みだけでなく、文字盤などを活用した代替手段の訓練や、家族への指導も行われます。 薬物療法 治療の目的 内容 主な薬剤例 再発予防 血栓形成の抑制による脳梗塞の再発防止 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)抗凝固薬(DOAC、ワルファリン) 動脈硬化・高血圧の進行抑制 高血圧・脂質異常・糖尿病の管理による血管障害の予防 降圧薬(ARB、Ca拮抗薬など)脂質異常治療薬(スタチンなど) 神経保護・浮腫軽減 脳浮腫や炎症の抑制による脳への圧迫軽減と回復促進 利尿薬・血管拡張薬(グリセオール、マンニトールなど) (文献6)(文献7) 小脳梗塞の後遺症には、再発予防や症状の緩和を目的とした薬物療法が行われます。抗血小板薬や抗凝固薬で血栓を防ぐほか、高血圧や高脂血症の管理も大切です。脳浮腫や炎症を抑える薬が使われることもあり、神経の保護や回復促進につながります。 頭痛や吐き気が強い場合には対症療法も行われます。薬の服用は医師の指示に従い、自己判断で中止や調整をしないことが大切です。 精神的ケアやカウンセリングを活用する 項目 内容 目的・効果 精神的ストレスの軽減 不安や抑うつの言語化、心理的受容のサポート 感情と整理と心の安定 リハビリ意欲の向上 前向きな気持ちの再構築、回復へのエンゲージメント支援 継続的なリハビリ参加の促進 家族の心理的サポート 介護疲れの予防、ストレス対処法の共有 家族の心身負担の軽減と対応力の強化 情緒変化への対応 涙もろさ、怒りっぽさ、感情爆発への理解と対処支援 高次脳機能障害への適応と生活の安定 小脳障害に伴う感情コントロールの不安定さ 本人・家族の戸惑いへの対応、変化への気づきと受容 社会的孤立や自己否定感の軽減、家庭内の理解の促進 (文献6)(文献8) 小脳梗塞の後遺症は、ふらつきや話しにくさ、体の動かしにくさだけでなく、心にも影響を及ぼすケースがあります。とくに若い方や元気に活動している方ほど、思うように動けなくなり、落ち込みや不安を感じやすくなります。 後遺症による不安や気持ちの整理が難しいと感じたときは、心理士や医師によるカウンセリングや認知行動療法などの心のケアが欠かせません。感情の変化があっても、適切な支援を受けることで、前向きに治療を続けることができます。 小脳梗塞の後遺症でお悩みなら再生医療もご検討ください 小脳梗塞の後遺症には長期的な治療が大切ですが、リハビリで十分な改善が見られない場合、再生医療も選択肢に入ります。 再生医療では、幹細胞を用いて神経機能の再生を促す治療が行われており、小脳の障害に対してもその研究が進められています。 小脳梗塞の後遺症でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、当院へお気軽にご相談ください。また、電話相談も実施しております。 小脳梗塞の後遺症に関するよくある質問 小脳梗塞の後遺症で性格が変わることはありますか? 小脳は感情や性格を直接コントロールする部位ではありませんが、後遺症による不自由さや孤立から、気分の落ち込みや怒りっぽさが見られるケースがあります。 性格が変わったように見える場合も、環境や心理的影響が要因となることがあります。心のケアや家族の理解が大切です。 小脳梗塞の後遺症に対して慣れることはありますか? 小脳梗塞の後遺症が改善しない場合もありますが、少しずつ体と心が適応していくことがあります。 早く慣れようとすると、かえって精神的に負担になることがあります。焦らずに少しずつ適応していくことが大切です。 小脳梗塞の後遺症で介護が必要になったとき利用できる支援制度と申請方法は? 小脳梗塞の後遺症で介護が必要になった場合、公的支援制度として以下の制度が利用できる可能性があります。 介護保険制度 身体障害者手帳 障害年金 介護保険では訪問介護やデイサービス、施設入所などの支援を受けることができ、身体障害者手帳や障害年金は、麻痺や言語障害などの後遺症が一定基準を満たす場合に申請が可能です。 手続きは市区町村の窓口で行い、医師の診断書が必要となることが一般的です。 参考記事 (文献1) 生井友紀子.「小脳と構音障害」, pp.1-4, 2012年 https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052110997.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献2) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「協調運動障害」MSD マニュアル 家庭版, 2024年2月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%8D%94%E8%AA%BF%E9%81%8B%E5%8B%95%E9%9A%9C%E5%AE%B3(最終アクセス:2025年5月15日) (文献3) 「事業場における治療と職業生活の両立支援のための ガイドライン 参考資料 脳卒中に関する留意事項」, pp.1-7 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000153518.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献4) NLMNIH(アメリカ国立衛生研究所)保健福祉省USA.gov「Outcome and time course of recovery in stroke. Part II: Time course of recovery. The Copenhagen Stroke Study」PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7741609/(最終アクセス:2025年5月15日) (文献5) 「Ⅶ.リハビリテーション」, pp.1-70 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献6) 小笠原邦昭ほか.「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」, pp.1-180, 2023年 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf(最終アクセス:2025年5月15日) (文献7) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「脳卒中の概要」MSD マニュアル 家庭版, 2023年6月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD/%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81(最終アクセス:2025年5月15日) (文献8) 佐伯覚「脳卒中の 治療と仕事の両立 お役立ちノート」, pp.1-76, 2020年11月19日 https://www.mhlw.go.jp/content/000750637.pdf(最終アクセス:2025年5月15日)
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「最近なぜか、寝起きに手足がしびれている」 「病気が原因ではないかと不安」 このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。 寝起きに手足がしびれる原因は、寝ているときの姿勢から脳血管疾患までさまざまです。 この記事では寝起きに手足がしびれる原因を中心に解説します。 日常生活の中で行える対処法も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 寝起きに手足がしびれる原因 寝起きに手足がしびれる原因としてあげられるのは、主に以下の5つです。 寝ているときの姿勢 神経系疾患 糖尿病による神経障害 脳血管疾患 その他の疾患 寝ているときの姿勢 寝起きに手足がしびれる原因の1つが、寝ているときの姿勢です。 腕に頭をのせて寝た 腕を頭より上にして寝た 狭い場所で寝たために寝返りを打てなかった このような体勢が長時間続くと、手足の神経が圧迫されてしまい、しびれを引き起こします。 枕が合わないこともしびれの一因です。枕が高すぎると、あごを強く引いた体勢になります。その結果生じるのが、肩や肩甲骨周辺の筋緊張です。筋肉の緊張が血行不良を引き起こし、しびれにつながります。 神経系疾患 変形性頚椎症や脊柱管狭窄症、手根管症候群、椎間板ヘルニアなどの疾患により、神経が圧迫されて、手足のしびれが生じるケースもあります。 神経系疾患と手足のしびれの関係については、以下の記事でも解説していますのであわせてご覧ください。 糖尿病による神経障害 糖尿病の三大合併症の1つが神経障害です。手足のしびれは、感覚神経の障害に分類されます。 高血糖が続くと神経に栄養を与える血管に傷がつきます。その結果血流が悪くなり、神経の働きが障害されるのです。 糖尿病による神経障害では、手足のしびれのほか、感覚の低下や筋力の低下などの症状も現れます。(文献1) 糖尿病の合併症については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳血管疾患 脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患でも、手足のしびれが起こります。 手足のしびれ以外に、手足の麻痺や激しい頭痛、視野の異常などの症状が現れたら、速やかに脳神経外科を受診しましょう。 チェックポイントは「ACT-FAST」です。(文献2) Face:顔の片方がゆがむ Arm:片方の腕に力が入らない Speech:いつもどおり話せない Time:時間を空けずに ACT:救急車を呼ぼう 脳血管疾患は命に関わるものなので、迅速な行動が大切です。 その他の疾患 過換気症候群や更年期障害などでも、手足のしびれが起こる場合があります。 過換気症候群とは、強い不安や緊張などが原因で、何度も激しく息を吸ったり吐いたりする状態です。 息を吸ったり吐いたりを繰り返した結果、血液中の二酸化炭素濃度が低くなり、血液がアルカリ性に傾きます。血液がアルカリ性に傾くと、血管が収縮されてしまい、手足のしびれが生じるのです。 更年期障害の場合、女性ホルモンの低下が手足のしびれに関係しているとされています。 寝起きに手足がしびれるときの対処法(セルフケア) 寝起きに手足がしびれるときに自分でおこなえる主な対処法(セルフケア)は、以下の3つです。 寝る姿勢や枕を調整する 身体を温める 身体を適度に動かす 寝る姿勢や枕を調整する 寝る姿勢や枕の調整に関してのポイントを、表に示しました。 ポイント 調整方法 寝る姿勢 横向きで寝るときは、しびれやすい方を上にする あおむけで寝るときは、膝の下にクッションを入れるか腕の位置を少し高くする 枕選び 横幅50㎝以上、奥行き35㎝以上 中央が低く両サイドが高めの立体的な形 自然に立った姿勢をそのままキープできる高さが望ましい 1日の約3分の1は、睡眠時間です。筋肉の緊張や神経の圧迫がない自然な姿勢が、手足のしびれ予防のポイントといえるでしょう。 身体を温める しびれる部分を温めたり、揉んだりすると血流が改善されて、しびれがやわらぐこともあります。具体的な方法は、ゆっくりお風呂につかる、やさしくマッサージするなどです。 ただし、神経障害の方は皮膚の感覚が鈍くなることがあるため、やけどに注意する必要があります。寒いときも、長時間ストーブの前に座らないように心がけましょう。カイロで温めるときは肌に直接当てず、決められた時間を守ってご使用ください。 身体を適度に動かす ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を行うことで、血流改善によるしびれの緩和が期待できます。 手を握ったり開いたりする、手首や足首をゆっくり曲げ伸ばしするなどもストレッチの一種です。 ただし、症状が強いときには無理に動かさず、安静にしましょう。 下記の記事では、手根管症候群による手のしびれを自分で治すためのストレッチが紹介されています。あわせてご覧ください。 まとめ|セルフケアを行っても寝起きに手足がしびれるときは医療機関を受診しよう 寝起きに手足がしびれる原因は、寝るときの姿勢から脳血管疾患までさまざまです。 自分でできるセルフケアもありますが、ケアを続けても手足のしびれが改善されない場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 とくに、手足が動かない、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、脳血管疾患の可能性があります。命に関わることもあるので、ためらわず救急車を呼びましょう。 糖尿病を治療している中で、徐々に手足のしびれが出てきた方は、神経障害の可能性があります。早めに主治医へ相談しましょう。 手足がしびれ解消のためには、セルフケアや治療が大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中や糖尿病などの疾患に対して再生医療を提供しています。 手足のしびれでお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。 寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問 ここでは、寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問を2つ紹介します。 手足がしびれるときは何科に行くと良いでしょうか? 手足がしびれるときの受診先としてあげられるのは、整形外科や神経内科、脳神経外科などです。整形外科の中でも脊椎(背骨)疾患の治療を行っているところが望ましいでしょう。 整形外科や神経内科などの受診歴がない場合は、主治医に相談しましょう。主治医に紹介状を書いてもらうことで、受診がスムーズに進みます。 しびれが急に出てきて、手足の麻痺があるときは早急に脳神経外科を受診しましょう。脳血管疾患の可能性が高く、一刻を争います。 更年期になると朝起きたら手がしびれるのはなぜですか? 原因として考えられるものが、女性ホルモンの1つ、エストロゲンの減少です。エストロゲンの減少は、自律神経の乱れにも関係しています。自律神経の乱れが、血流の悪化、ひいては手のしびれにつながっています。 エストロゲン減少の影響としてもう1つあげられるのが、皮膚の乾燥です。乾燥した皮膚は敏感であるため、しびれを感じやすくなるといわれてます。 参考文献 (文献1) 出口尚寿,西尾善彦.「糖尿病性末梢神経障害」『日本内科学会雑誌』108(8), pp.1538-1544, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/8/108_1538/_pdf (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2) 厚生労働省「みんなで知ろう! からだのこと」厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202410_006.html (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.31 -
- 糖尿病
- 脳卒中
- 足部、その他疾患
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頭部
- 手根管症候群
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 足部
- 内科疾患
「手や足のしびれが続いて困っている」 「何か病気があるのだろうか?」 このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。 手足のしびれを引き起こす病気はさまざまです。なかには原因がわからないものもあります。 本記事では、手足のしびれを引き起こす病気を中心に解説します。 しびれが続くときの受診先や、病気の予防法なども解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 手足のしびれの原因となる病気 手足のしびれを引き起こす病気は、以下の5つです。 脳神経系の病気 脊髄(脊椎)神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 その他の病気 それぞれの病気について解説します。 脳神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脳神経系の病気としては、主に以下のようなものがあげられます。 脳梗塞 脳出血 一過性脳虚血発作 脳腫瘍 ここで紹介する症状がある場合は、すぐに救急車を呼んで脳神経外科を受診しましょう。 脳梗塞 脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、酸素および栄養不足のため、脳細胞が死んでしまう病気です。 手足のしびれのほかに、手足が麻痺して動かない、ろれつが回らないといった症状が見られます。意識障害を起こすこともあります。 脳梗塞は命に関わる病気でもあるため、これらの症状が現れたら早急に医療機関を受診しましょう。 脳梗塞の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳出血 脳の血管が切れて出血した結果、脳細胞が障害を受ける病気です。 手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなど、脳梗塞と同じような症状のほか、激しい頭痛や吐き気といった症状も見られます。 脳出血も命に関わる病気であるため、早急な受診が必要です。 脳出血の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 一過性脳虚血発作 一時的に脳の血流が悪くなり、酸素や栄養が不足する病気です。 手足のしびれや麻痺、感覚の低下といった症状が出ますが、通常は24時間以内に消失します。(文献1) 一過性脳虚血発作は、脳梗塞や脳出血の前触れともいわれています。症状が現れてすぐに消えた場合でも、放置せずに医療機関を受診しましょう。 脳腫瘍 その名のとおり脳に発生する腫瘍で、脳そのものにできる「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から転移した「転移性脳腫瘍」にわかれます。 症状は、手足のしびれや麻痺、頭痛、吐き気などです。視野が狭くなったり、視力が低下したりといった眼科症状が見られる場合もあります。 脊髄(脊椎)神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脊髄(脊椎)神経系の病気は、主に以下のとおりです。 変形性頚椎症 頚椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 後縦靱帯骨化症 変形性頚椎症 頚椎(首部分の背骨)内の椎間板の高さが減ったり、椎骨(背骨の一部)に骨のとげができたりするといった変化が生じる病気です。 首や肩が痛むほか、手の神経が圧迫されることにより、手のしびれも出てきます。 頚椎椎間板ヘルニア 頚椎をつないでいる椎間板が変形して飛び出し、脊髄や神経根が圧迫される病気です。 手や腕、首、肩にしびれや痛みが生じたり、足のもつれや歩行障害などが出たりします。首を動かすと痛みが強くなります。 以下の記事で、頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を解説していますので、あわせてご覧ください。 脊柱管狭窄症 腰椎(腰部分の背骨)の変形により神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される病気です。50代から80代の方に多いとされています。 手足のしびれ以外には、間欠性跛行や膀胱直腸障害などの症状が見られます。 間欠性跛行や膀胱直腸障害といった症状については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 後縦靱帯骨化症 頚椎の後ろにある、背骨を安定させる靱帯(後縦靱帯)が骨のように硬く変化して脊髄を圧迫するもので、厚生労働省が定める指定難病の1つです。(文献2) 症状としては、肩こりや手のしびれ、こわばり、痛みなどがあります。病気が進行すると、箸が使いにくい、字が書きにくいといった症状も出てきます。 末梢神経系の病気 手足のしびれを引き起こす末梢神経系の病気としてあげられるのは、手根管症候群や足根幹症候群などです。 手根管症候群 手根管と呼ばれる手首のトンネル部分で神経が圧迫されて、手指のしびれや痛みが発生する病気です。 中高年の女性に多く、進行すると親指の筋肉が痩せてしまい、ものを掴みにくくなります。 足根管症候群 足根管と呼ばれる内くるぶしのトンネル部分で、神経が圧迫されたり傷ついたりするために、足裏や足首にしびれや痛みが生じる病気です。 足の痛みはピリピリとした感じのもので、立ったり歩いたりしたときや、特定の靴を履いたときに生じます。足の冷えや感覚異常を伴う場合もあります。 内科系の病気 内科系の病気によっても、手足のしびれが生じます。代表的なものが、糖尿病性神経障害や閉塞性動脈硬化症です。 糖尿病性神経障害 糖尿病の合併症の1つが、神経障害です。 神経障害は、高血糖が続いたことで血流が悪くなり、手先や足先まで酸素や栄養を含んだ血液が届きにくくなるために起こります。 神経が障害された結果、手足のしびれが生じます。 閉塞性動脈硬化症 動脈硬化により血管が狭くなる、もしくは詰まるために血流が悪くなる病気です。手足の血管が狭くなったり詰まったりすると、しびれや冷たい感覚が生じます。 足の血管に閉塞性動脈硬化症が起こり、進行すると、間欠性跛行と呼ばれる歩行状態になります。 間欠性跛行とは、歩いているうちに足に痛みやしびれが生じて、休憩すると治まるものです。 その他の原因 ビタミン欠乏や更年期障害、うつ病、精神的ストレスなどが原因で手足のしびれが生じる場合もあります。 手足がしびれる病気の前兆をチェックする方法 手足のしびれはさまざまな病気の前兆として現れることがあります。 しびれの特徴からどのような疾患の可能性があるのかをチェックしましょう。 疾患名 しびれの特徴 脳血管疾患 (脳梗塞や脳出血) 片方の手足だけがしびれる 手足が麻痺する、ろれつが回らない、意識障害がある 変形性頚椎症 全体的に手がしびれる 首の後ろを動かすと手のしびれが悪化する 頚椎椎間板ヘルニア 手足のしびれに痛みを伴うことがある 手根管症候群 手の親指や人差し指、中指がしびれる 手首を酷使したあとにしびれが生じる 手足のしびれと病気の前兆について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 手足がしびれるときに受診する病院 手足のしびれが起きる原因はさまざまです。しびれのために病院を受診する際は、しびれ以外の症状や、現在かかっている病気などから受診する科を決めましょう。 ここでは、3つの科について解説します。 脳神経外科 手足のしびれ以外に、片側の手足が動かない、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどの症状がある場合は、脳梗塞や脳出血の可能性があります。 この場合の受診先は脳神経外科です。脳梗塞や脳出血の場合は、一刻も早い治療が必要なため、救急車を呼んで早急に受診しましょう。 整形外科 手足のしびれ以外に、腰や手足の痛み、間欠性跛行などの症状がある場合は、整形外科を受診しましょう。 受診時には、医師が状況を把握しやすいように、症状がある部位や出現時期などを伝えると良いでしょう。 内科 糖尿病や高血圧、高脂血症といった内科疾患があり、しびれ以外に症状がない場合は、内科(かかりつけ医)を受診しましょう。 とくに糖尿病治療中で手足のしびれが生じている場合は、神経障害を起こしている可能性が高いため、早めの受診が必要です。 手足がしびれる病気の予防法 手足がしびれる病気の種類はさまざまです。ここでは、3種類の病気について予防法を解説します。 脳神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 脳神経系の病気の予防法 脳梗塞や脳出血、いわゆる脳卒中の予防で大切なことは、高血圧の予防・改善です。高血圧の予防・改善には、日常的な減塩を心がけることが効果的です。 また、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病のほか、喫煙、過度な飲酒なども脳血管を痛めます。生活習慣病予防のためにも、バランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。 脳卒中は再発予防も大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の後遺症治療・再発予防として再生医療(幹細胞治療)を行っております。 再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 末梢神経系の病気の予防法 ここでは手根管症候群の予防について解説します。 手根管症候群の予防や悪化防止のために大切なのは、手を酷使しないことです。とくに、手首を曲げる動作は、神経の通り道である手根管を狭くしてしまいます。 パソコン作業が多い方や、工具(ドライバー)を仕事でひんぱんに使う方は、手首を休める時間を意識して取りましょう。 糖尿病や甲状腺機能低下症の方は、手根管症候群を発症しやすいといわれています。定期的に検査を受けて、病状を確認しましょう。その上で、手首のしびれが見られた場合は、放置せずに整形外科を受診してください。 内科系の病気の予防法 内科系の病気の中でも、糖尿病は生活習慣の改善で予防できます。 糖尿病予防の主なポイントは次の通りです。 栄養バランスの良い食事や腹八分目を心がける ウォーキングやサイクリングといった適度な運動を続ける 適正体重を保つ 毎年健康診断を受ける 喫煙者は禁煙を検討する アルコールは適量を守る 糖尿病患者の方は、病気を放置せずに治療を継続しましょう。 再生医療は、糖尿病治療における新たな選択肢です。 糖尿病治療としての再生医療については、以下のページで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 まとめ|手足のしびれの病気が疑われる際は早めに病院へ 手足のしびれを引き起こす病気は数多くありますが、原因がわからないものも少なくありません。 脳血管疾患のように命に関わる病気が原因のこともあるため、手足のしびれが続くときは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中やヘルニア、糖尿病などに対して再生医療を行っています。手足のしびれでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 手足のしびれの病気に関するよくある質問 皮膚の表面がピリピリする原因は? 主な原因は、痛みを伝える神経が損傷されるために起こる神経障害性疼痛や、帯状疱疹などです。 神経障害性疼痛の場合は、痛み止めやブロック注射などの治療があります。帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の内服、もしくは点滴がメインの治療法です。 手足のしびれの治し方は? 原因になっている病気がある場合は、その病気を治療します。同時に、しびれをおさえる治療も行います。 しびれの主な治療法としては、消炎鎮痛剤やビタミン剤の内服があげられますが、病気によっては手術が必要です。 しびれが続くときは、医療機関で適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「一過性脳虚血発作は、早期に完成型脳梗塞を発症する可能性が高い」国立研究開発法人 国立循環器病研究センターホームページ, 2024年9月27日 https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/scd/cvmedicine/tia-torikumi/ (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2)難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」難病情報センターホームページ https://www.nanbyou.or.jp/entry/98 (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.30 -
- 脳出血
- 頭部
俳優の下條アトムさんの訃報で注目された「急性硬膜下血腫」。 脳を覆う膜の下に出血し、血腫ができるこの病気は、実は誰にでも起こりうる身近な危険をはらんでいます。日常生活での転倒や交通事故など、一見軽微な外傷でも発症する可能性があり、特に高齢者は注意が必要です。頭痛や吐き気といった初期症状は他の病気と見分けにくいため、早期発見が困難なケースも少なくありません。 この記事では、急性硬膜下血腫の原因、症状、診断方法、そして治療法や予後まで、詳しく解説していきます。ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ一度、急性硬膜下血腫について理解を深めてみませんか? 急性硬膜下血腫とは?原因・症状・診断 突然ですが、皆さんは「急性硬膜下血腫」という病気を聞いたことがありますか? これは、脳を覆う膜の一つである硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう病気です。実は、俳優の下條アトムさんもこの病気で亡くなられました。 「脳の病気」と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じてしまうかもしれません。しかし、日常生活での転倒や交通事故など、誰にでも起こりうる原因で発症する可能性がある病気なのです。 今回は、急性硬膜下血腫について、原因や症状、診断方法などを分かりやすく解説していきます。 急性硬膜下血腫のメカニズム 私たちの脳は、まるで3層構造のヘルメットのように、「硬膜」「くも膜」「軟膜」という3つの膜で守られています。急性硬膜下血腫は、このうち硬膜とくも膜の間に血が溜まってしまう状態です。 頭の外傷によって、脳の表面にある血管、特に「架橋静脈」と呼ばれる脆い血管が損傷し、出血が起こります。この出血が硬膜とくも膜の間に広がり、三日月のような形をした血腫を形成するのです。 この血腫が脳を圧迫することで、様々な神経症状が現れます。さらに、血腫が大きくなると、脳への圧迫が強まり、生命に関わる危険な状態に陥ることもあります。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 主な原因:頭部外傷(転倒、交通事故など) 急性硬膜下血腫の主な原因は、頭部外傷です。交通事故やスポーツ中の衝突など、強い衝撃が加わることで発症することが多いです。 高齢者の場合、骨が脆くなっていたり、バランス感覚が低下していたりするため、軽い転倒でも急性硬膜下血腫を発症するリスクがあります。若い世代に比べて、高齢者の硬膜下腔は広く、架橋静脈も伸びやすくなっているため、比較的軽い外傷でも架橋静脈が損傷しやすく、急性硬膜下血腫を発症しやすいのです。 また、一度の強い衝撃だけでなく、繰り返し頭部に軽い外傷を受けることでも発症する可能性があります。例えば、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで、何度も頭部に衝撃を受けていると、気づかないうちに急性硬膜下血腫を発症しているケースもあるのです。 気づきにくい症状:頭痛、吐き気、意識障害など 急性硬膜下血腫の初期症状は、頭痛、吐き気、嘔吐など、風邪や他の病気と間違えやすい症状であることが多く、見逃してしまう可能性があります。 また、症状の現れ方には個人差があり、軽微な場合や、数時間から数日経ってから現れる場合もあります。特に高齢者の場合、症状をうまく伝えられないケースもあるため、周囲の人が注意深く観察することが重要です。 意識障害は、初期には軽度で、時間経過とともに悪化していくこともあります。「いつもよりぼんやりしている」「反応が鈍い」などの変化に気づいたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。急性硬膜下血腫は、初期の段階では症状が軽微であるため、発見が遅れてしまうことが少なくありません。しかし、適切な治療を行わないと、意識障害が進行し、最悪の場合、死に至る可能性もあります。 下條アトムさんの事例 俳優の下條アトムさんは、自宅で転倒し、頭を強打したことが原因で急性硬膜下血腫を発症し、亡くなりました。下條さんの事例は、高齢者にとって転倒がいかに危険であるかを改めて私たちに教えてくれました。 高齢者の場合、若い人に比べて骨が脆くなっていたり、バランスを崩しやすくなっていたりするため、転倒のリスクが高くなります。自宅での転倒予防対策を徹底的に行うことが重要です。具体的には、家の中の段差をなくしたり、手すりを設置したり、滑りにくい床材を使用したりするなど、転倒のリスクを減らす工夫をしましょう。 診断方法:CT検査、MRI検査 急性硬膜下血腫の診断には、CT検査とMRI検査が用いられます。CT検査では、硬膜とくも膜の間に三日月型の血腫が確認できます。MRI検査は、CT検査よりも詳細な画像を得ることができ、脳の状態をより詳しく把握するのに役立ちます。 急性硬膜下血腫は一刻を争う病気です。迅速な診断と適切な治療開始のために、これらの検査は非常に重要です。 慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血との違い 急性硬膜下血腫と似たような病気に、慢性硬膜下血腫、くも膜下出血、脳内出血などがあります。これらの病気は、出血の場所や症状、治療法が異なります。 慢性硬膜下血腫:急性と異なり出血がゆっくり進むため、症状が現れるまでに数週間から数ヶ月かかる場合があります。 くも膜下出血:くも膜と軟膜の間に出血が起こる病気です。バットで殴られたような激しい頭痛が特徴です。 脳内出血:脳の実質内に出血が起こる病気です。高血圧が主な原因となります。 それぞれの病気の特徴を理解しておくことが大切です。 急性硬膜下血腫の治療法と予後 下條アトムさんの訃報は、急性硬膜下血腫という病気を多くの方に知らしめるきっかけとなりました。この病気は、頭部外傷により脳を覆う硬膜の下に出血が起こり、血腫(血の塊)ができてしまう深刻な疾患です。 「血腫」と聞くと、すぐに手術が必要なのでは?と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は急性硬膜下血腫の治療法と予後について、患者さんの不安を少しでも和らげられるよう、詳しく解説します。 外科的治療:開頭血腫除去術、穿頭血腫ドレナージ術 急性硬膜下血腫の治療は、大きく分けて外科的治療と保存的治療の2種類があります。外科的治療は、文字通り手術によって血腫を取り除く方法です。 主な手術方法には、「開頭血腫除去術」と「穿頭血腫ドレナージ術」があります。 開頭血腫除去術は、頭蓋骨の一部を切開し、直接血腫を取り除く方法です。血腫が大きく、脳への圧迫が強い場合に有効です。より確実な血腫除去が可能ですが、身体への負担は大きくなります。 一方、穿頭血腫ドレナージ術は、ドリルで頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を入れて血腫を吸引する方法です。開頭血腫除去術に比べて身体への負担が少ないため、高齢者や全身状態が良くない方にも行われます。しかし、血腫が硬かったり、複雑な形状をしている場合は、完全に取り除くことが難しい場合もあります。 どちらの手術方法が適切かは、患者さんの年齢、全身状態、血腫の大きさや位置などを総合的に判断して決定されます。例えば、意識レベルが著しく低下している重症患者さんでは、開頭血腫除去術が選択されることが多いです。これは、開頭することで損傷した脳組織の状態も直接確認できるため、より迅速で適切な処置が可能になるからです。GCSスコアが9未満の昏睡状態の患者さんでは、開頭術が選択されることが多いという研究結果もあります。 保存的治療:経過観察、薬物療法 血腫が小さく、症状が軽い場合は、保存的治療が選択されることもあります。保存的治療は、手術を行わずに、安静、薬物療法、経過観察などによって病状の改善を図る方法です。定期的なCT検査で血腫の大きさや症状の変化を注意深く観察しながら、脳圧を下げる薬や合併症を予防する薬などを用います。 保存的治療は身体への負担が少ないというメリットがありますが、血腫が自然に吸収されるのを待つため、外科的治療に比べて治療期間が長くなる傾向があります。また、症状が急変する可能性もあるため、慎重な経過観察が必要です。 手術のリスクと合併症 どんな手術にもリスクはつきものです。急性硬膜下血腫の手術も例外ではありません。考えられるリスクや合併症には、感染症、出血、脳腫脹、麻酔による合併症などがあります。 高齢者や持病のある方は、これらのリスクが高まる可能性があります。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に話し合い、メリットとデメリットを理解した上で、最終的に患者さん自身が決めることが重要です。 治療期間と入院期間 治療期間と入院期間は、患者さんの状態や治療方法によって大きく異なります。軽症の場合は数週間で退院できる場合もありますが、重症の場合は数ヶ月かかることもあります。また、後遺症が残った場合は、リハビリテーションが必要となり、さらに長期間の入院が必要になる場合もあります。 後遺症(麻痺、言語障害、認知機能障害など) 急性硬膜下血腫では、麻痺、言語障害、認知機能障害などの後遺症が残る可能性があります。後遺症の重症度は、血腫の大きさや脳へのダメージの程度、治療のタイミングなどによって大きく左右されます。 日常生活に支障が出るほどの後遺症が残ってしまう場合もあります。そのため、後遺症を最小限に抑えるためには、早期発見・早期治療が何よりも重要です。 ▼脳梗塞の後遺症について、併せてお読みください。 予後(社会復帰、生活への影響) 急性硬膜下血腫の予後は、意識障害の程度と深く関係しています。意識障害が重症の場合、残念ながら死亡率が高く、社会復帰が困難になることもあります。軽症の場合でも、後遺症が残る可能性があり、日常生活や社会生活への影響は避けられません。 ある研究では、急性硬膜下血腫の死亡率は65%にも達すると報告されています。また、社会復帰できる割合は18%程度と低いという結果も出ています。高齢者や手術前に抗凝固薬や抗血小板薬を服用していた患者さんでは、特に予後が悪化する傾向があります。 急性硬膜下血腫の死亡率 急性硬膜下血腫は、迅速な診断と適切な治療が求められる深刻な病気です。死亡率は高く、早期に適切な治療を行わなければ、命に関わる危険性があります。 特に高齢者では、頭部外傷による急性硬膜下血腫のリスクが高いため、転倒などの事故には十分に注意する必要があります。 少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、予後を改善し、社会復帰の可能性を高めることに繋がります。 まとめ 急性硬膜下血腫は、頭部外傷による脳への出血で、深刻な症状を引き起こす可能性があります。特に高齢者は転倒などで発症しやすく、下條アトムさんの事例からもわかるように、命に関わる危険な病気です。 頭痛や吐き気など、初期症状は分かりにくいため、少しでも異変を感じたらすぐに医療機関を受診することが大切です。CTやMRI検査で診断し、血腫の大きさや症状に応じて手術や保存的治療を行います。後遺症が残る可能性もあり、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。日常生活での転倒予防など、意識して対策を行いましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Vega RA, Valadka AB. "Natural History of Acute Subdural Hematoma." Neurosurgery clinics of North America 28, no. 2 (2017): 247-255. Karibe H, Hayashi T, Hirano T, Kameyama M, Nakagawa A, Tominaga T. "Surgical management of traumatic acute subdural hematoma in adults: a review." Neurologia medico-chirurgica 54, no. 11 (2014): 887-94. Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, Gordon D, Hartl R, Newell DW, Servadei F, Walters BC, Wilberger JE and Surgical Management of Traumatic Brain Injury Author Group. "Surgical management of acute subdural hematomas." Neurosurgery 58, no. 3 Suppl (2006): S16-24; discussion Si-iv.
2025.02.13 -
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- 再生治療
脳卒中の中でも、血管が詰まることで発症する脳梗塞。 一命を取り留めても、麻痺やしびれ、言語障害といった後遺症が残る可能性があり、人生を大きく変えてしまうほどの影響を及ぼすケースも少なくありません。 脳梗塞の後遺症は、発症場所や範囲、治療開始までの時間によって症状の重篤度が大きく異なり、早期の治療開始が後遺症を最小限に抑える鍵となります。 この記事では、脳梗塞の後遺症の種類や症状、そして後遺症と共に生きるための治療法やリハビリテーション、日常生活の工夫、社会支援まで、幅広く解説します。 ご自身やご家族が脳梗塞に直面した際に、少しでもお役に立てれば幸いです。 脳梗塞後遺症の種類と症状 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳の機能が損なわれる病気です。 一命を取り留めたとしても、後遺症が残ってしまう可能性があります。後遺症の症状や程度は、脳梗塞が起こった場所や範囲、そして治療開始までの時間などによって大きく異なります。 一刻も早い治療開始が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。 後遺症の種類や症状を正しく理解することは、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても、その後のリハビリテーションや日常生活の工夫、社会資源の活用を考える上で非常に重要です。 運動麻痺(片麻痺、対麻痺) 運動麻痺は、脳梗塞で最も多く見られる後遺症の一つです。 脳梗塞によって運動機能を司る脳の領域が損傷すると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、手足の麻痺が生じます。 麻痺には、体の片側だけに症状が現れる「片麻痺」と、両側に現れる「対麻痺」があります。 多くの場合、右脳に梗塞が起こると左半身に、左脳に梗塞が起こると右半身に麻痺が現れます。これは、脳の神経線維が交差しているためです。 麻痺の程度は、軽度であれば少し動きにくい、力が入りにくいといった症状ですが、重度になると全く動かせなくなってしまいます。 また、麻痺が続くと、関節が硬くなって動かなくなる「関節拘縮」も起こりえます。 例えば、箸がうまく使えない、ボタンが留められない、歩行が困難になるといった日常生活の動作に支障をきたすだけでなく、寝返りが難しくなることで床ずれのリスクが高まったり、手足のむくみが生じやすくなるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。 ▼脳梗塞の合併症について、併せてお読みください。 脳梗塞後の痙縮に関する研究では、麻痺の重症度が高いほど、後遺症として痙縮(けいしゅく:筋肉が異常に緊張した状態)が生じやすいことが報告されています。 痙縮は、関節の痛みや運動制限を引き起こし、日常生活の質を低下させる一因となります。 麻痺の種類 症状 片麻痺 体の片側の麻痺(右半身もしくは左半身) 対麻痺 体の両側の麻痺 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 感覚障害(しびれ、痛み) 感覚障害も脳梗塞の代表的な後遺症です。皮膚の感覚を司る脳の領域が損傷を受けると、触覚、温度覚、痛覚などを感じにくくなったり、逆に過敏になったりします。 「しびれ」は、感覚が鈍くなる症状で、手足の先端などによく起こります。まるで手袋や靴下を履いているように感じたり、何も触っていないのに何かが触れているような感覚が生じることがあります。 また、損傷を受けた神経が過剰に反応することで、「痛み」を生じることもあります。痛みの程度や種類は人それぞれで、ピリピリとした痛み、ズキズキとした痛み、焼けるような痛みなど様々です。 これらの感覚障害は、日常生活においても様々な困難をもたらします。 例えば、温度感覚が鈍くなると、やけどに気づきにくくなります。 また、触覚が鈍いと、物を持つときに適切な力加減ができず、物を落としてしまったり、逆に握りすぎて物を壊してしまうこともあります。 言語障害(失語症) 脳梗塞によって言語中枢が損傷すると、言葉の理解や発話が難しくなる失語症が起こることがあります。 失語症は、単に言葉が出ないだけでなく、言葉の理解にも影響を及ぼすことがあります。 失語症には、大きく分けて3つの種類があります。 表出性失語: 言葉を発することが難しくなる症状です。 話したい言葉がなかなか出てこなかったり、間違った言葉を使ってしまったり、言葉がつっかえたりします。 受容性失語: 相手の言葉が理解できない症状です。相手が何を言っているのか理解できず、会話が成立しなくなります。 混合性失語: 表出性失語と受容性失語の両方の症状が現れるものです。 失語症はコミュニケーションを大きく阻害するため、社会生活や日常生活に大きな影響を与えます。 高次脳機能障害(記憶障害、注意障害) 高次脳機能障害は、記憶、注意、思考、判断など、高度な精神活動を司る脳の機能に障害が起こることを指します。 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。 注意障害: 集中力が続かなかったり、気が散りやすくなったり、複数のことに同時に注意を払えなくなったりします。 その他にも、計画を立てたり、物事を順序立てて行うことが難しくなる「実行機能障害」、体の片側を認識できなくなる「半側空間無視」、意図した動作ができなくなる「失行」、対象が認識できなくなる「失認」など、様々な症状があります。 嚥下障害 嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。 脳梗塞によって、飲み込むための筋肉や神経がうまく働かなくなると、食べ物が気管に入ってむせてしまったり、うまく飲み込めずに口の中に残ってしまったりします。 嚥下障害があると、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。 誤嚥性肺炎は、命に関わる危険性もあるため、食事の際には細心の注意が必要です。 排尿障害・排便障害 脳梗塞によって、排尿や排便をコントロールする神経が損傷すると、排尿障害や排便障害が起こります。 尿意や便意を感じにくくなったり、逆に頻繁に感じたり、我慢できずに失禁してしまうこともあります。また、尿や便が出にくくなることもあります。 これらの症状は、生活の質を大きく低下させる可能性があります。 後遺症は、単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。 脳梗塞は、後遺症の種類も多岐にわたり、その症状の程度も人それぞれです。 ▼脳梗塞の症状や原因、早めの発見方法について併せてお読みください。 脳梗塞後遺症の治療とリハビリテーション 脳梗塞の後遺症は、患者さん一人ひとりの生活に大きな影を落とす可能性があります。 後遺症の種類や重症度は、脳梗塞が発生した場所や範囲、そして迅速な治療開始の可否によって大きく異なります。 後遺症による様々な困難を少しでも軽減し、より良い生活を送るためには、適切な治療と地道なリハビリテーションが欠かせません。 薬物療法 薬物療法は、脳梗塞の再発予防と後遺症の症状改善を目的として行います。脳梗塞は再発率の高い病気であるため、再発予防は特に重要です。 用いられる薬剤の種類や服用方法は、患者さんの状態や病歴、他の病気の有無などを考慮して決定します。主 な薬剤として、血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)、血小板がくっつくのを防ぐ薬(抗血小板剤)、血液が固まるのを防ぐ薬(抗凝固剤)などがあります。 血栓溶解剤は、発症早期に投与することで閉塞した血管を再開通させる効果が期待できます。 しかし、投与可能な時間は限られており、全ての患者さんに適用できるわけではありません。 抗血小板剤と抗凝固剤は、血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の再発リスクを低下させる薬です。これらの薬剤は、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。 自己判断で服薬を中断すると、再発のリスクが高まる可能性があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。 リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法) リハビリテーションは、脳梗塞後遺症による運動麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの改善を目的として行います。 患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのプログラムを作成し、日常生活の自立を目指します。 理学療法:理学療法では、体の動きや機能の回復を目指します。 筋力トレーニングや関節可動域訓練、歩行訓練などを通して、日常生活に必要な動作の改善を図ります。 作業療法:作業療法は、日常生活動作(食事、着替え、トイレ、入浴など)の改善を目的としています。 患者さんの生活環境や生活スタイルを考慮し、自宅での生活をスムーズに行えるように訓練を行います。 言語療法:言語療法は、脳梗塞によって損なわれた言語機能の回復を目指します。 発声練習や言葉の理解・表現の訓練などを通して、コミュニケーション能力の向上を図ります。 リハビリテーションの効果を高めるには、早期開始と継続が重要です。根気強く取り組むことで、症状の改善や日常生活の自立に繋がる可能性が高まります。 再発予防(生活習慣改善、服薬管理) 脳梗塞の再発を防ぐためには、生活習慣の改善と服薬管理が重要です。 高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は脳梗塞の危険因子となるため、適切な管理が必要です。 バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけましょう。 食生活においては、塩分や糖分、脂肪分の過剰摂取を避け、野菜や果物を積極的に摂ることが大切です。 適度な運動は、血圧や血糖値の調整に役立ちます。また、禁煙は血管の健康維持に不可欠です。 医師から処方された薬は、指示通りに正しく服用しましょう。自己判断で服薬を中断することは危険です。 最新の治療法 近年、脳梗塞後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が注目されています。 本来、人には、損傷したところを修復させる力があります。それを担っているのが、幹細胞です。この幹細胞を利用して、脳梗塞の後遺症の改善が期待できるのです。 リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に特化した再生医療を行なっています。 詳しくはこちらをご覧ください↓ 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「脳卒中の再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Gurková E, Štureková L, Mandysová P and Šaňák D. "Factors affecting the quality of life after ischemic stroke in young adults: a scoping review." Health and quality of life outcomes 21, no. 1 (2023): 4. Wissel J, Verrier M, Simpson DM, Charles D, Guinto P, Papapetropoulos S and Sunnerhagen KS. "Post-stroke spasticity: predictors of early development and considerations for therapeutic intervention." PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 7, no. 1 (2015): 60-7. Andalib S, Divani AA, Ayata C, Baig S, Arsava EM, Topcuoglu MA, Cáceres EL, Parikh V, Desai MJ, Majid A, Girolami S and Di Napoli M. "Vagus Nerve Stimulation in Ischemic Stroke." Current neurology and neuroscience reports 23, no. 12 (2023): 947-962. Wang L, Ma L, Ren C, Zhao W, Ji X, Liu Z and Li S. "Stroke-heart syndrome: current progress and future outlook." Journal of neurology 271, no. 8 (2024): 4813-4825. Zhao Y, Zhang X, Chen X and Wei Y. "Neuronal injuries in cerebral infarction and ischemic stroke: From mechanisms to treatment (Review)." International journal of molecular medicine 49, no. 2 (2022): .
2025.02.10 -
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高次脳機能障害になった場合の治療法には、リハビリがあります。しかし、なかには「リハビリにより症状が回復するのか」「どのような内容なのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。 高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復が期待できます。 今回は、高次脳機能障害のリハビリ効果を解説します。リハビリの流れや内容、世界で注目されている再生医療についても紹介するので、高次脳機能障害の症状でお悩みの方は参考にしてください。 高次脳機能障害のリハビリによる効果 高次脳機能障害はリハビリにより、症状の改善や進行の遅延が見込めます。 「高次脳機能障害のリハビリテーション」によると、リハビリの実施により家事手伝い・何もしていない人の割合が34.2%から20.7%に減少した結果が明らかになりました。 さらに、社会復帰した人は30.6%から43.7%に増加した結果も報告されています。(文献1) これらの結果から、リハビリによって高次脳機能障害の症状が改善し、社会復帰につながる可能性があることがわかります。 そのため、医師や理学療法士の方と相談しながら、個々の状態に合わせた継続的なリハビリに取り組むことが推奨されます。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高次脳機能障害の症状やリハビリ方法に関するお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。 ▼高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 高次脳機能障害のリハビリ方法 高次脳機能障害の症状回復には、それぞれの症状や状態に合ったリハビリが重要です。ここでは、リハビリをする上で押さえておきたいポイントを紹介します。 リハビリの流れ リハビリ期間 以下で詳しく解説するので、高次脳機能障害のリハビリ方法が知りたい方は参考にしてください。 リハビリの流れ 高次脳機能障害のリハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていきます。医学的リハビリの流れは、以下の通りです。 1.リハビリ計画を立てる 高度機能障害に関する診断や評価結果に基づいたリハビリ計画を立てる 2.具体的な目標を設定する 当事者がイメージしやすく、かつ短期間で実現可能な目標を決める 3.リハビリを実施する リハビリ計画と目標設定をもとにリハビリを開始。訓練は段階的に進める 4.結果を判定し、目標の修正 リハビリの評価を定期的に繰り返し、プログラムの妥当性や体勢を見直す 高次脳機能障害のリハビリは漠然と進めていくのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するよう計画を立てていく流れとなります。 ▼高次脳機能障害への対応について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 リハビリ期間 高次脳機能障害のリハビリ期間は、6カ月~1年ほどです。はじめの6カ月間は、症状回復を目的に医学的リハビリを受けます。 6カ月目以降は、必要に応じて生活訓練や機能訓練を実施するのが一般的な流れです。「高次脳機能障害者支援の手引き」によると、リハビリを受けた74%が6カ月、97%が1年でリハビリの成果が得られています。 高次脳機能障害の場合、リハビリ期限となる180日を超えて訓練を受けられるため、訓練期間は6カ月〜1年が目安です。(文献2) 高次脳機能障害のリハビリ内容 高次脳機能障害のリハビリ内容は幅広く、個々の症状によっても異なります。主なリハビリ内容は、以下の7つです。 環境調整 要素的訓練 代償訓練 行動変容療法 認知行動療法 社会技能訓練 調理行動 各リハビリ内容を解説するので、参考にしてください。 環境調整 高次脳機能障害のリハビリの際は、治療環境を整える必要があります。環境調整では、環境が要因となる不成功を減らせるため、当事者に余分なエネルギーをかけず済みます。 環境調整における症状別の対策は、以下の通りです。 症状例 対策 注意障害 気が散りやすい環境とならないよう配慮する 左半側空間無視 ベッドの左側から降りられないよう壁につける 失算 時計をアナログ時計にする 視空間失認 階段に手すりをつける また、症状によって人的環境を整えるのもポイントです。例えば、注意障害の場合は集中力が続かないため、複数の相手と話すのを苦手とします。リハビリでは、複数人ではなく1対1で会話するよう心がけましょう。(文献3)(文献4) 要素的訓練 要素的訓練は注意障害や記憶障害など、症状の改善を目的とする訓練です。高次脳機能障害における症状の回復では、症状別に作業を実践する方法が再構築に寄与すると考えられています。 例えば、相手の話を理解できない失語症の場合は、実際に何かを見せて答えてもらいます。集中力が続かない注意障害であれば、問題集を解いてもらうのが要素的訓練として効果的です。 なお、要素的訓練を実践する際は当事者の意識や周囲の環境、治療方法の適切さが目標達成のポイントとなります。(文献3) 代償訓練 代償訓練とは、症状に対する対処法を身につけるリハビリです。対処法を身につけると、障害を自身でカバーしながら仕事や生活ができるようになります。 例えば、注意障害には以下の対処法があります。 集中が維持できないときに適宜休憩を挟んでもらう 作業時間を長く確保する 工程表を提示する 代償訓練は高次脳機能障害で発症した症状を上手く対処し、社会生活や日常生活で支障をきたさないようにするためのリハビリです。 行動変容療法 行動変容療法は、オペラント条件付け理論に基づいたリハビリです。オペラント条件付け理論とは、行動が報酬を得られる道具と認識させる学習法を指します。 例えば、突然怒り出す行動が減少するよう、当事者が自分の感情を抑えた場合に褒めたり、やりがいを感じさせたりします。当事者が褒められた喜びから、自分の感情を抑えようとする過程をつくるのが行動変容療法です。 突然怒り出した場合は、無視をして自発的に行動するよう促します。すなわち、行動変容療法は褒められる機会を増やし、徐々に怒り出す頻度を減らしていくリハビリ内容です。 認知行動療法 認知行動療法とは物事の見方や考え方、行動を変えて、心の状態の改善を図るリハビリです。高次脳機能障害における怒りやすい・うつなどの症状は、自分でコントロールできない感情に悩まされている場合に起こります。 認知行動療法では、障害や環境、周囲の対応などに対する否定的かつ誤った解釈を修正していきます。診察するときは、当事者の感情を否定せず受け入れながら現状に適応できるよう行動を促すのです。 認知行動療法では感情的に怒る前に一呼吸置いて冷静になれるよう訓練していくため、トラブル回避につながります。 社会技能訓練 社会技能訓練は、高次脳機能障害の方が社会に復帰できるようにするリハビリです。主なリハビリ内容は、以下の通りです。 主な支援 リハビリ内容 就労支援 職業訓練の場となるハローワークや障がい者職業総合センターなどの就労支援機関と連携して、復職の可能性を検討する 万が一、復職が不可と判断された場合は、リハビリで職業能力を高めていく 自動車運転支援 自動車運転に際し、視野欠損や半側空間無視、運動操作能力の有無など運動能力評価や診断、指導を実施する また、グループの中で自分の考えや気持ち、相手に対する要求など社会で人と関わりながら生きていくためのスキルを身につける訓練も、社会技能訓練では実施します。(文献3)(文献5) 調理行動 高次脳機能障害では、調理を題材にしたリハビリを実施しています。調理行動では、調理を行う危険性を認識させる目的があります。 調理は危険をともなう行動となるため、高次脳機能障害の当事者に自身の能力を認識してもらうのが重要です。 「高次脳機能障害者の自立に向けた調理行動振り返り支援システムに基づく認知リハビリテーション」によると、リハビリとして当事者に自身の調理体験映像を見せ、客観的に自分の行動を見る機会を設けた支援を行いました。 客観視により、リハビリに対する意欲向上が見込まれた事例となり、調理行動は高次脳機能障害の訓練に効果的だとわかります。 高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療方法 高次脳機能障害におけるリハビリ以外の治療法には、再生医療があります。再生医療とは、けがや病気などにより、機能障害に陥った組織や細胞などを元通りにするための治療法です。 体の自然治癒力を高め、組織や機能などの修復を行うのが再生医療です。再生医療による治療は早いほど、脳機能の回復が期待できます。 また、再生医療ではヒトの体に存在する幹細胞の修復力を治療に使用しています。細胞の損傷や不足している細胞を代替し、体の機能を修復する役割を幹細胞が担っているのです。 体へ戻す幹細胞は患者の細胞のため、拒絶反応やアレルギー反応などが起こりづらい点も再生医療の特徴です。 以下の動画では、当院で再生医療を受けた方の声を紹介しています。 リペアセルクリニックでは、高次脳機能障害の原因の一つとなる脳卒中の再生医療・幹細胞治療を実施しています。 メール相談やオンラインカウンセリングも提供していますので、再生医療について詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。 まとめ・適切なリハビリを受けて高次脳機能障害の回復を目指そう 高次脳機能障害は適切なリハビリにより、症状の回復効果が期待できます。リハビリでは治療だけでなく、定めた目標到達へ向けて訓練を進めていくため、期間は6カ月~1年ほどが目安です。 高次脳機能障害のリハビリ内容はさまざまで、症状別に訓練が異なります。漠然とリハビリをするのではなく、定期的に評価を繰り返して最終的な目標に到達するのが症状の回復へつながります。 なお、症状の回復へつなげるには、リハビリをできるかぎり早く始めるのが大切です。 医師や理学療法士の指導のもと、個々の症状に合わせたリハビリを行い、高次脳機能障害の症状回復を目指しましょう。 加えて、リハビリで効果が得られない場合には、再生医療もご検討ください。 参考文献 (文献1) J-STAGE「高次脳機能障害のリハビリテーション」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/13/1/13_22/_pdf (文献2) 国立障害者リハビリステーションセンター「第1章 高次脳機能障害 診断基準ガイドライン 」 https://www.rehab.go.jp/ri/event/brain_fukyu/pdf/10.pdf (文献3) J-STAGE「高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療―患者・家族会との連携―」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/58/4/58_58.418/_pdf/-char/ja (文献4) 香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部「高次脳機能障害と暮らす」 https://www.med.kagawa-u.ac.jp/~neuron/summary/performance/pdf/lecture2022_04.pdf (文献5) 京都府 健康福祉部 障害者支援課「京都府高次脳機能障害者支援プラン 」 https://www.pref.kyoto.jp/shogaishien/documents/1327459933391.pdf
2025.02.07 -
- 脳卒中
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高次脳機能障害になった際、余命がどれくらいか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。高次脳機能障害は、脳の損傷や異常により知的能力や行動に影響を及ぼしている状態です。そのため、健常な方に比べると、寿命に差が生じる可能性は十分考えられます。 今回は、高次脳機能障害の平均余命について解説します。高次脳機能障害に関する基礎知識や再生医療の可能性もまとめているので、ぜひ参考にしてください。 高次脳機能障害の平均余命 高次脳機能障害の平均余命は、健常者の平均余命に比べて短い傾向です。ここでは、高次脳機能障害の平均余命を男女別に紹介します。 なお、高次脳機能障害の平均余命に関しては「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の症状を平均としています。 男性の平均余命 東京福祉局と厚生労働省のデータをもとに比較したところ、高次脳機能障害の男性は健常な男性より平均余命が短くなっています。 高次脳機能障害の男性と健常な男性の平均余命は、以下の通りです。 年齢 ※高次脳機能障害の場合、発症年齢 高次脳機能障害の男性 健常な男性 平均余命の差 20歳 42.61年 61.45年 18.84年 30歳 35.59年 51.72年 16.13年 40歳 28.88年 42.06年 13.18年 50歳 20.16年 32.60年 12.44年 60歳 11.56年 23.68年 12.12年 70歳 5.62年 15.65年 10.03年 80歳 2.47年 8.98年 6.51年 高次脳機能障害の男性と健常な男性における平均余命は、約10年以上の差が生じています。 また、80歳で高次脳機能障害を発症した場合でも、約6年ほど異なります。 データを比べた結果、若いうちに高次脳機能障害を発症するほど平均余命は健常時と比較して短くなってしまう可能性が考えられます。 女性の平均余命 東京福祉局と厚生労働省のデータをもとに比較したところ、男性同様、高次脳機能障害の女性は健常な女性より平均余命が短くなっています。 高次脳機能障害の女性と健常な女性の平均余命は、以下の通りです。 年齢 ※高次脳機能障害の場合、発症年齢 高次脳機能障害の女性 健常な女性 平均余命の差 20歳 50.21年 67.48年 17.27歳 30歳 42.58年 57.65年 15.07歳 40歳 35.18年 47.85年 12.67歳 50歳 26.30年 38.23年 11.93歳 60歳 15.84年 28.91年 13.07歳 70歳 7.22年 19.96年 12.74歳 80歳 3.35年 11.81年 8.46歳 高次脳機能障害の女性と健常な女性における平均余命は、約10年以上の差が生じています。また、80歳で高次脳機能障害を発症した場合でも、約8年ほど異なります。(文献1) 高次脳機能障害になった女性の平均余命は男性に比べて長いものの、健常な女性と比較すると短い傾向です。(文献2) 高次脳機能障害の主な症状 高次脳機能障害は、脳の損傷によって「考える」「記憶する」「行動する」といった人間の重要な機能に影響を及ぼします。 高次脳機能障害を発症すると、主に以下の症状が見られます。 新しいことを覚えられない・事実と異なる話をするなどの記憶障害 ミスが多い・集中できないなどの注意障害 寝てばかり・暴力的などの社会的行動障害 自分で計画ができない・優先順位が決められないなどの遂行機能障害 うまく話せないなどの症状 高次脳機能障害はさまざまな症状を引き起こすため、自立した生活が困難になります。また、外見だけでは症状がわかりにくいため、仕事や人付き合いなどの社会活動が困難と感じるケースも少なくありません。 一般的には高次脳機能障害の症状が理解されにくい点から、本人や家族が周囲との関係でストレスを感じる場合もあります。 高次脳機能障害の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 数年後に治った人はいる?高次脳機能障害の回復過程 高次脳機能障害が完治した事例は、2025年1月において確認されていません。高次脳機能障害は、脳の損傷による障害のため、完治するのは難しいとされています。 しかし、リハビリ専門医療機関や地域活動支援センターなどで適切な支援を受けると、症状が回復する可能性があります。また、症状が残っても、支援により日常生活や社会生活を送れるようになるケースが期待できます。 そのため、家族や職場など周囲の方が高次脳機能障害への理解を深め、適切な支援をすることが回復過程においては重要です。 高次脳機能障害は治るのか知りたい方は、あわせて以下の記事をご覧ください。 高次脳機能障害の治療法 高次脳機能障害の治療法は、薬物療法とリハビリの2つに分類されます。各治療法の特徴は、以下の通りです。 治療法 特徴 薬物療法 主に症状の軽減や日常生活における質の向上が目的 症状のコントロールがメインのため、根本的な治療法ではない点に注意 リハビリ 症状の回復をサポートするのが目的 作業療法や理学療法、言語療法を実施 また、高次脳機能障害のリハビリ方法は、症状や患者の状態に応じて異なります。例えば、注意障害がある場合は、集中しやすい環境を整えるリハビリを実施します。 体を動かしたり脳トレを実施したりと、自宅でできるリハビリもあるため、医師に相談の上、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 高次脳機能障害の余命に悩む方への選択肢「再生医療」 近年、高次脳機能障害の新たな治療法として再生医療が注目されています。再生医療は人間が持っている再生力を用いた治療法で、失われた組織や機能の修復を行います。 再生医療で期待できる治療効果は、以下の通りです。 壊れた脳細胞を再生医療で修復し、身体の機能回復を目指す 後遺症に対するリハビリ効果を向上させる 傷ついた血管を修復し再発を予防する 高次脳機能障害の症状でお悩みの方は、治療の選択肢の一つとして再生医療をご検討ください。 以下の動画では、高次脳機能障害に対して再生医療を受けた方の声を紹介しています。 脳の損傷・疾患に対する治療・リハビリは、早期に行うほど予後が良いとされています。 高次脳機能障害にお悩みの方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 リペアセルクリニックでは、無料のメール相談やオンラインカウンセリングを行っています。 まとめ・高次脳機能障害の平均余命を踏まえたうえで適切な治療を受けよう 高次脳機能障害の平均余命は、健常な方と比べて短い傾向です。特に、発症した年齢が若いほど健常な方と比較して、余命は短いと考えられます。 高次脳機能障害を発症すると、記憶障害や注意障害などさまざまな症状が見られます。完治した事例は確認されていませんが、適切な治療法により症状が改善する可能性はあります。 高次脳機能障害の治療法として、薬物療法やリハビリの他に再生医療という選択肢もあります。 再生医療は、人間の体が持つ能力を活かした最新の治療法となるため、高次脳機能障害の症状回復へ向けた一助となる場合があります。 高次脳機能障害に向き合い適切な治療を受け、症状の回復へ向けて行動しましょう。 参考文献 (文献1) 東京都福祉保健局「高次脳機能障害者実態調査結果 第3章 高次脳機能障害者数の推計」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/houkoku4 (文献2) 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/dl/life23-15.pdf
2025.02.07 -
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突然の肩こりや、中々治らない肩こりに悩まされていませんか。 原因が思い当たらない肩こりが数日間続いたり、急に症状があらわれたりすると「ただの肩こりじゃなかったらどうしよう」「脳梗塞の前兆かもしれない」と不安になる方もいるでしょう。 突然の激しい肩こりが、実は脳梗塞の前兆である場合があります。「ただの肩こりだから」と軽視して放置すると病状が悪化する恐れもあるため、早期に医療機関を受診し、原因を的確に見極めることが大切です。 本記事では、肩こりが脳梗塞の前兆になる理由や、その他気を付けるべき症状について詳しく解説します。 最後まで読むことで肩こりから脳梗塞を早期に見つけられる方法がわかり、悪化を防げる可能性が高まるでしょう。 ぜひ本記事を参考に、今の肩こりが脳梗塞の前兆であるかどうかをチェックしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞を用いて脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目指した治療を行っています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付けておりますので、気になる症状がある方はぜひ当院までご相談ください。 「突然の」肩こりは放置厳禁!脳梗塞のリスクもあり 多くの人が肩こりを放置しがちですが「突然の」肩こりは、脳梗塞の前兆の疑いがあるため、注意が必要です。 脳梗塞から起こる肩こりは、首周辺の血流の滞りや神経の麻痺によって引き起こされます。その影響で筋肉が凝り固まり、肩周りの神経の動きが低下するため、肩こりがあらわれる可能性があります。 とくに以下の症状を伴う突然の肩こりの場合は、脳梗塞の前兆であるため注意が必要です。 片側だけ鋭い痛みを感じる 短時間で急速に痛みや肩こりが悪化する 目がかすんだり、見える範囲が狭くなったりする ほとんどの肩こりの場合は単なる筋肉のコリや重労働が原因であり、脳梗塞である可能性は非常に稀です。 しかし、デスクワークのしすぎや重たい荷物を持つといった原因が思い当たらないのに、突然原因不明の肩こりがする場合は注意が必要です。 軽視せずに他の症状が出ていないかを確認し、異変を感じたら自己判断で放置せず早めに医療機関を受診しましょう。 「首の後ろの痛み」も脳梗塞の前兆の可能性あり 肩こりと同様に、突然あらわれる「首の後ろの痛み」も脳梗塞の前兆である疑いがあります。 その理由の一つが、首の後ろを通る血管が損傷する「椎骨(ついこつ)動脈解離」です。 椎骨動脈解離が起こると、頭の後ろから首の付け根にかけて激しい痛みが生じ、めまいや吐き気を伴うことがあります。この状態が進行すると脳梗塞やくも膜下出血へ発展する可能性があります。(文献1) 脳梗塞や椎骨動脈解離はMRIやCTなどの検査でわかる場合が多いため、首の後ろの痛みがあれば早めに受診しましょう。 また、首の後ろの痛みは「くも膜下出血」の疑いもあります。くも膜下出血からくる首の後ろの痛みについて詳しく知りたい方は以下のコラムも参考にしてください。 【要チェック】肩こり以外脳梗塞の前兆4つ 肩こり以外の脳梗塞の代表的な前兆には、以下の症状があります。 痙攣・麻痺 言語障害 視覚障害 歩行困難 違和感のある肩こりがある方は、本章で解説している症状も一緒に出ていないかどうか確認してみてください。 1.痙攣・麻痺 脳梗塞の代表的な前兆として痙攣や麻痺があげられます。 脳梗塞が起こることで血管が詰まり、血流が遮断され、神経の働きが阻害されます。その結果、痙攣や麻痺といった症状が現れるのです。 痙攣や麻痺が脳梗塞によるものかどうかは「突然発症したものか」「片側だけに生じているか」がポイントです。 早期に治療を行うと後遺症が軽くなる可能性が高まります。片側のみや突然の痙攣・麻痺がみられる場合は、迅速に医療機関を受診しましょう。 2.言語障害 脳梗塞の初期症状で知られているのが「ろれつが回らない」「言葉を発するときに言葉が出てこない」といった言語障害です。 言語障害は、会話や言葉を理解する能力に関わる「前頭葉」や「側頭葉」などの脳部分が脳梗塞により損傷を受けることで生じます。(文献2) また「簡単な文章を書けない」「滑舌が突然悪くなった」といった症状も多く見られます。 このような言語障害が「突然」あらわれた場合は脳梗塞の可能性があるため、注意が必要です。 3.視覚障害 「視覚障害」も脳梗塞の初期症状としてあらわれる可能性があります。 脳梗塞で脳の血液の流れが滞り、視覚に関わる脳の部位が損傷すると視覚障害が起こるため、注意が必要です。 脳梗塞による視覚障害として、以下のような症状があげられます。 視野欠損(片側だけ欠けて見える) 複視(物が二重に見える) 突然の視力低下 見え方に突然違和感をもった場合は、早めに脳神経外科へ受診しましょう。 4.歩行困難 筋肉の麻痺による歩行困難があらわれるのも脳梗塞の前兆のひとつです。 脳梗塞により筋肉が無意識に収縮して硬直し、スムーズに体を動かせなくなります。このため、いつも通り歩くのが難しくなり、独特な歩き方となります。(文献3) 脳梗塞による歩行困難として、以下のような兆候が知られています。 歩行困難の種類 特徴 内反尖足(ないはんせんそく) つま先が下を向いたり、足首・足裏が内側に向いたりする 膝関節伸展 膝関節をまっすぐに伸ばして歩く 股関節屈曲 股関節が曲げられなくなる 脳梗塞の前兆のチェック項目については以下の記事で詳しく解説しております。気になる方は、合わせて参考にしてください。 肩こり含む脳梗塞の前兆が治っても油断は禁物!早急の受診が大切 前兆が治まった場合でも、再発リスクは否定できません。「脳梗塞の前兆かもしれない」と感じた症状が軽くなっても、その後すぐに受診しましょう。 症状が消失した場合「一過性脳虚血性発作(TIA)」の可能性があります。TIAは一時的に脳への血流が滞り、短時間のみ脳梗塞の症状があらわれるものの、24時間以内に回復する状態です。 TIAは脳梗塞の前触れ症状ともいわれています。TIAが消失したとしても、その後脳梗塞に発展するリスクが高いため、早急の処置が必要です。 脳梗塞の前兆が治っても放置せず、速やかに受診して専門医の治療を受けましょう。 また、脳梗塞を含む脳卒中のセルフチェックについては以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は合わせてご確認ください。 【今すぐできる】脳梗塞の予防方法3選 突然の肩こりを引き起こす脳梗塞は、日常生活でできる対策をすると未然に発症リスクを下げられます。 本章で紹介する方法を実践し、脳梗塞のリスクを減らしましょう。 1.減塩食を心がける 脳梗塞の予防には「減塩食」が欠かせません。 脳梗塞の大きな要因のひとつは「高血圧」です。塩分を摂りすぎると体内の水分のバランスや血管の負担が増えてしまい、血圧が上がり脳梗塞に発展するリスクがあります。そのため、日頃から塩分を控える食事を心がけることが大切です。 今すぐできる減塩食の対策には、以下の方法があります。 いつもの調味料を減塩タイプに切り替える 加工食品(ハムやソーセージなど)を避ける 揚げ物から蒸し料理・焼き料理へ調理方法を変更する また、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」において、高血圧の重症化予防のために成人の塩分摂取量を、男女ともに1日6g未満に抑えることを推奨しています。(文献4) 減塩を心がけ、脳梗塞の予防に努めましょう。 2.積極的に魚を取り入れる 脳梗塞を予防するもう一つの食事のコツは、積極的に「魚」を取り入れることです。 魚に含まれるEPAやDHAは、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らして血液をサラサラにする効果があります。そのため血栓がつくられるのを抑えるため、脳梗塞の予防につながるでしょう。 とくに以下のような「青魚」は魚類の中でもEPAやDHAを多く含むためおすすめです。 サバ サンマ イワシ 食生活に乱れがあった人は、魚を日々の食事に取り入れてみてください。 また、脳梗塞予防に避けるべき食品については、以下のコラムで詳しく解説しています。詳しく知りたい方は、あわせて参考にしてください。 3.筋トレと有酸素運動を定期的に行う 運動面で脳梗塞予防に効果的なのが、定期的に筋トレと有酸素運動を両方行うことです。 運動を定期的に取り入れることで、高血圧が改善したり血行が良くなったりします。そのため、脳梗塞予防にも効果的です。 また、筋トレと有酸素運動は以下のように得られる効果が異なります。両方取り入れるとより健康により効果をもたらすでしょう。 運動の種類 効果 運動例 筋トレ 基礎代謝量を増やして体脂肪を減らす スクワット 腕立て伏せ 懸垂 有酸素運動 心肺機能を向上させ血の巡りを改善する ジョギング 水泳 ウォーキング 脳梗塞のリスクを下げるためにも生活習慣に合った運動を無理のない範囲で取り入れてみてください。 まとめ|突然の肩こりは脳梗塞の前兆の可能性あり!放置せず早めに受診しよう 何気ない「突然の肩こり」は、脳梗塞の前兆である可能性が否定できません。軽視せずにいつもの肩こりと違いがないか観察して適切な対策をとることが大切です。 とくに麻痺や言語障害など脳梗塞の代表的な症状と一緒にあわらわれた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の後遺症改善・再発予防治療を行っています。 メール相談またはオンラインカウンセリングにて無料相談を受け付けておりますので、気になる症状が出ている方や脳梗塞の後遺症にお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。 脳梗塞の前兆についてよくある質問 肩こりはくも膜下出血の前兆ですか? 突然の肩こりは、くも膜下出血の前兆の可能性もあります。 突然の肩こりや首の後ろの痛みを伴う場合は、血管が破裂しかけている可能性も否定できないため注意が必要です。違和感を感じた場合は、迅速に受診しましょう。 くも膜下出血の原因と症状についてより詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 軽い脳梗塞の前兆はどのような症状ですか? 軽い脳梗塞の前兆の一例は、以下のとおりです。 片側の手足に力が入らない 言葉がスラスラと出てこない 視界の一部が見えにくい 脳梗塞の前兆が軽度だったり一時的なものであると見過ごされるケースもありますが、のちに脳梗塞を発症するリスクが高まります。 予後が大きく変わるため放置せず、早めに受診して適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 弘中 康雄,西村 文彦 ほか「椎骨動脈解離に対する外科治療 ─再出血予防と穿通枝温存を目指した microneurosurgery─」脳卒中の外科(44)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/44/1/44_31/_pdf (文献2) MSDマニュアル「脳の機能障害の概要」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E8%84%B3%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81 (文献3) 川手信行,中島卓也「脳卒中歩行障害の総論|日本義肢装具学会誌 2022(38,3)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/38/3/38_190/_pdf/-char/ja (文献4) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
2025.02.07 -
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健康のために振動(ブルブル)マシンを使用してみたいものの、脳に良くないとの情報を耳にして不安になる方も多いでしょう。過去に脳梗塞になったことがあり、後遺症がなく過ごせている方も心配かもしれません。 体のために運動をしたいと思いつつも、振動(ブルブル)マシンで脳梗塞を再発させてしまったら本末転倒ですよね。 振動(ブルブル)マシンは脳に直接悪影響を与えるわけではないため、脳梗塞後の方も使用可能です。ただし、血行改善により血の塊が脳血管に詰まる恐れがあるため、一度医師に相談してから使用を開始しましょう。 本記事では、脳梗塞になったことのある方へ向けて、振動(ブルブル)マシンを使用する場合の注意点を中心に解説します。記事の内容を参考に、振動マシンを安全に活用し、健康的な体を目指してください。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料カウンセリングを受付中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 振動(ブルブル)マシンが脳梗塞に与える直接的なリスクは少ない 振動(ブルブル)マシンは、脳に直接的な悪影響は及ぼしません。運動したときと同様に血流を改善する作用が期待できるため、健康に良い効果をもたらすでしょう。 ただしすでに血栓ができている状態で振動(ブルブル)マシンを使用すると、血栓が脳まで流れ、脳梗塞を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。 また、以下のような初期症状が出た場合はすぐに使用を中止し、医師に相談してください。 片側の手足の麻痺 ろれつが回らない 歩けない 強いめまい また、振動(ブルブル)マシンを使ってみたいものの、脳梗塞の再発に不安がある場合は医師に相談したうえで適切に使いましょう。 振動(ブルブル)マシンの使用を注意すべき人 脳梗塞後の方に使用はできるものの、以下に該当する人は振動(ブルブル)マシンを使用する際に注意が必要です。 骨の病気の人 高血圧の人 乗り物酔いをしやすい人 本章を参考に、ご自身が当てはまっていないか確認してからマシンを使用しましょう。 1.骨の病気の人 骨の病気を治療している人は、専門医に相談のうえで使用しましょう。 とくに骨粗鬆症の方は、健常人より骨が脆くなっている状態です。振動マシンが骨密度に良い効果をもたらしたとの報告があるものの、振動の強度が大きすぎると骨折リスクが高まるため、注意が必要です。(文献1) 最初から高振動で使用せず、低振動かつ短時間でマシンを使って様子を見ましょう。 また、骨粗しょう症の治療や予防については下記のコラムにて詳しく解説しています。気になる方はあわせて参考にしてください。 2.血圧が高い人 血圧が高いと指摘された方、あるいは高血圧の治療中の方も注意が必要です。 振動(ブルブル)マシンを使用すると、振動による筋肉への刺激で血流が促進されます。これにより、通常よりも血流が速くなる可能性があります。 健康に良い効果をもたらす一方で、突然血圧が上がることもあるため注意が必要です。 ただし、適切な振動(ブルブル)マシンの使用や運動が高血圧を急激に悪化させるわけではありません。適度な使用であれば血圧への影響が小さいため、正しい頻度と時間を守ることが大切です。 高血圧の予防や改善に効果的な食事・運動については以下のコラムにて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 3.乗り物酔いをしやすい人 普段から乗り物酔いをしやすい人も、振動(ブルブル)マシンの連用に注意が必要です。 人は耳にある三半規管により振動をキャッチし、平衡感覚を保つ役割があります。しかし、過剰に揺れを感じると脳へ渡す情報量が過多になり、乗り物酔いの症状があらわれます。 以下のような乗り物酔いの症状があらわれたら、振動(ブルブル)マシンの使用を控えゆっくり休みましょう。(文献2) めまい 嘔吐(吐き気) 蒼白 自動車や船などと同じように、振動(ブルブル)マシンでも乗り物酔いの症状があらわれる可能性があります。自覚のある方は慎重に使用を検討しましょう。 振動(ブルブル)マシンを安全に使用するための注意点 振動(ブルブル)マシンを使用する際の注意点は、以下の3つです。 振動が弱いモードから使用する 長時間の使用は避ける 説明書を確認してから使用する 本章を参考に、適切に振動(ブルブル)マシンを使用して思わぬ事故を防ぎましょう。 1.振動が弱いモードから使用する 初めて振動(ブルブル)マシンを使用する際は、低振動のモードから始め、徐々に負荷を上げていきましょう。 使い始めは弱い振動でも、強く感じる場合があります。突然強い振動で機械を使用すると思わぬけがや体調悪化につながるため、注意が必要です。 転倒が不安な場合は手すりを掴むか、誰かのサポートを受けると安心でしょう。 2.長くても1日1時間までの使用にする 振動(ブルブル)マシンの長時間にわたる使用は、体調不良や血栓リスクを高めます。1日の合計使用時間は1時間以内に控え、短時間ずつ分けて利用しましょう。 過度な長時間の使用で消費カロリーは多くても、乗り物酔いや転倒のリスクが考えられます。 機械の使用で症状が出ないか不安な方は、最初は1日10〜20分程度にとどめておくと安心です。 3.説明書を確認してから使用する 機種によって使用方法や振動の強度、推奨される使用時間が異なる場合があります。説明書をよく確認してから振動(ブルブル)マシンを使用しましょう。 妊婦や高齢者一人きりでの使用など使用が推奨されない機種もあります。誤って使用すると思わぬ体調不良を招く危険性があるため注意が必要です。 説明書はインターネットでも閲覧できる可能性があります。自分が使用できるか不安な方は、購入の前に調べてから検討すると良いでしょう。 まとめ|脳梗塞と振動(ブルブル)マシンの関係性 今回は、振動(ブルブル)マシンと脳梗塞のリスクについて解説しました。振動により脳に直接的なダメージはないものの、血流の変化により血栓が脳血管まで運ばれるリスクがあります。 また、誤った使用は体調悪化や事故の危険性を高めるため、適正使用を心がけましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、人体にある幹細胞を利用し、脳梗塞の再発予防や後遺症の治療を行っております。 無料で「メール相談」または「オンラインカウンセリング」も受付中です。気になる方はぜひ当院までご相談ください。 脳梗塞の振動(ブルブル)マシンについてよくある質問 振動マシーンは血栓予防に効果的ですか? 振動マシーンで血流を改善するため、血栓予防に効果的です。しかし、既に形成された血の塊がある場合、脳血管に届き血流が滞るリスクもあります。 過去に脳梗塞のような血栓が関連する病気にかかったことのある方は、使用する前に医師に相談してください。 脳梗塞になりやすい人の特徴と予防について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 振動(ブルブル)マシンは危険ですか? 適切に使用すると、マシンが体に悪影響を及ぼす可能性は少ないです。危険性が高くないとはいえ、個人の体質によっては体調不良を招くため注意が必要です。 乗り物酔いの症状が出る場合や、血行促進により血圧が一時的に上がるリスクが考えられます。 使用前に自身の持病や体調をチェックし、問題ないことを確認してから使用しましょう。 参考文献 (文献1) Abeer M ElDeeb,Amr A Abdel-Aziem「Effect of Whole-Body Vibration Exercise on Power Profile and Bone Mineral Density in Postmenopausal Women With Osteoporosis|A Randomized Controlled Trial,43(4)」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32868028/ (文献2) MSDマニュアル プロフェッショナル版.「動揺病」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E5%8B%95%E6%8F%BA%E7%97%85/%E5%8B%95%E6%8F%BA%E7%97%85
2025.02.07 -
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BAD(脳梗塞)ってなんだろう? 一般的な脳梗塞と何が違うのかな? この記事を読んでいるあなたは、BAD(脳梗塞)という耳慣れない病気を聞き、とまどっているのではないでしょうか。 「今後どうなるのか知りたい」と思っているかもしれません。 BAD(脳梗塞)はラクナ梗塞の特徴を持ちながら、アテローム性病変が原因で起こる、近年注目されているタイプの脳梗塞です。 本記事では、BAD(脳梗塞)の症状やラクナ梗塞との違い、予後について詳しく説明します。記事を最後まで読めば、病気について一通りの知識が得られ、今度の見通しを立てやすくなるでしょう。 BADとは「脳の細い血管の分岐部が詰まり進行しやすい脳梗塞」 BADとは、「Branch atheromatous disease」の頭文字を取ったもので、脳梗塞の一種です。コレステロールや脂などが溜まってできた「アテロームプラーク」と呼ばれるこぶが、脳の血管が詰まるために起こります。(文献1) BAD(脳梗塞)がよく起こる場所は、脳の主幹動脈からの穿通枝分岐部(太い血管から小さな枝状の血管がわかれる部分)です。英語をそのまま日本語に直すと「分岐アテローム性疾患」となりますが、日本語での病名が付けられていないため「ビーエーディー」と呼ばれています。 また、BAD(脳梗塞)は、脳梗塞を含む「急性虚血性脳卒中」全体の約10〜15%を占めるという報告があります。(文献2) 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)後の治療として再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。壊れた脳細胞を幹細胞治療で修復し、後遺症の回復やリハビリ効果の向上が期待できます。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 BAD(脳梗塞)の症状 BADであらわれる症状の多くは、脳の細い血管が詰まって起こる「ラクナ梗塞」と同じです。代表的な症状を、以下に紹介します。(文献3) 構音障害:ことばの障害 感覚障害:感覚の鈍さやしびれ 運動片麻痺:片方の手足に力が入らなくなる しかし、BAD(脳梗塞)の最大の特徴は、運動片麻痺が進行性に悪化しやすいことです。数日間は、脳梗塞が拡大したり麻痺が進行したりしやすく、後遺症が出やすい傾向もあります。 また、初期症状としてTIA(一過性脳虚血発作)が起こるケースもあります。 BAD(脳梗塞)の原因 BAD(脳梗塞)の原因は、動脈硬化の過程で血管内にできた「アテロームプラーク」です。 アテロームプラークとは、血管の膜に血液中の悪玉コレステロールが入り込んでできたものです。血管を細くして脳への酸素供給を妨げたり、破裂して血小板による血栓生成を引き起こし、脳の血管を詰まらせたりします。 アテロームプラークの危険因子は、以下のとおりです。(文献1) 年齢 性別 喫煙 高血圧 糖尿病 脂質異常症 これらの危険因子を減らすためには、生活習慣の改善が重要です。 具体的には、塩分を控える、運動や食事に気を付けて肥満を防ぐなどが有効です。アテロームプラークを作りにくい生活を心がけ、BAD(脳梗塞)の予防につとめましょう。 脳梗塞の原因については、以下の記事で詳しく説明しています。 BAD(脳梗塞)とラクナ梗塞との違い BAD(脳梗塞)とラクナ梗塞は症状が似ているものの、梗塞する場所や原因が異なります。おもな違いは、以下のとおりです。(文献3)(文献4) BAD(脳梗塞) ラクナ梗塞 梗塞する場所 穿通枝の根元 1本の穿通枝 梗塞の範囲 やや広い 狭い おもな梗塞の原因 アテロームプラーク(動脈硬化も原因) 高血圧による動脈硬化 梗塞の大きさ 15mm以上 15mm未満 特徴 進行しやすいが、比較的再発は少ない 比較的再発しやすい 血管が詰まり脳細胞の機能が失われることは共通しますが、細かな内容が違うといえるでしょう。 BAD(脳梗塞)の診断基準 BAD(脳梗塞)かどうかは、MRIの画像で診断します。(文献5) 細かな基準は梗塞した部分によって異なり、以下とされています。 中大脳動脈(MCA)穿通枝:拡散強調画像で3または4以上の横断面を含む直径15 mm以上の梗塞があること 椎骨脳底動脈穿通枝:脳橋腹面に達し、分枝動脈の主幹動脈の狭窄や閉塞がないこと しかし、「病因不明」と分類されたり、状況によってはラクナ梗塞と診断されたりするケースもあります。 BAD(脳梗塞)の治療 BAD(脳梗塞)は、一般的な脳梗塞の治療法であるt-PA療法の効果が得にくいケースが多く、抗血小板薬がよく使用されます。また、複数の治療薬を併用するケースもあります。 治療効果があらわれにくいケースもあり、BAD(脳梗塞)へ有効性の高い治療法は、今後の研究が待たれる内容です。 一般的な脳梗塞の治療法については、以下の記事で詳しく紹介しています。 BAD(脳梗塞)の予後やリハビリ BAD(脳梗塞)は命を失うケースが少ない反面、運動機能に麻痺が残りやすい特徴があります。 また、病変部位別に神経症状が悪化する確率は以下であったという報告もされています。(文献6) 橋傍正中動脈領域:43.6% レンズ核線条体動脈領域: 30.1% 「運動機能に関する予後は、脳卒中患者における機能障害につかわれる評価(FMA)で予測できる」「高血圧の合併があると神経症状が悪化しやすい」などの報告もあります。 BAD(脳梗塞)は麻痺が残りやすいため、多くの場合で継続的なリハビリが必要となります。 後遺症の改善のために、リハビリを継続的におこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)の予後改善やリハビリの効果アップに効果が期待できる再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。 理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、トレーナーによるチーム体制を取っており、再生医療と並行したリハビリも可能です。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 まとめ|BAD(脳梗塞)を疑われる場合は受診しよう 本記事では、BAD(脳梗塞)の症状や予後・ラクナ梗塞との違いについて詳しく説明しました。 BAD(脳梗塞)は、ラクナ梗塞に似た症状を示す脳梗塞の一種です。梗塞の部位や大きさはラクナ梗塞と異なり、進行性に症状が悪化しやすい傾向があります。 後遺症が出た場合は、退院後も症状に応じたリハビリをおこないましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、BAD(脳梗塞)をはじめとする脳梗塞に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は、失われた脳細胞を修復し、後遺症の改善やリハビリ効果の向上が期待できる治療法です。 早くから治療を始めた方が効果を得やすいため、気になる場合は気軽にご相談ください。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。 BAD(脳梗塞)に関するよくある質問 BAD(脳梗塞)の読み方は? BADは「ビーエーディー」と読むのが一般的です。悪いという英語の「Bad」ではないため、「バッド」という読みではありません。 BAD(脳梗塞)にならないためにできることは何? BAD(脳梗塞)を防ぐには、動脈硬化の原因となる以下の病気の予防・治療につとめることが大切です。 高血圧 糖尿病 脂質異常症 喫煙や肥満、塩分の摂りすぎや運動不足も動脈硬化のリスク因子です。毎日の生活のなかで、できることから少しずつ気を付けてみましょう。 脳梗塞を防ぐ方法については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 北川一夫,Branch Atheromatous Disease の病態と治療,脳卒中 31:550–553,2009https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/31/6/31_6_550/_pdf (文献2) Duan H, Yun HJ, Geng X, Ding Y. Branch atheromatous disease and treatment. Brain Circ. 2022 Dec 6;8(4):169-171. doi: 10.4103/bc.bc_56_22. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10167853/ (文献3) 山本康正,Branch atheromatous disease の概念・病態・治療,臨床神経 2014;54:289-297https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054040289.pdf (文献4) 星野晴彦ら,Branch atheromatous disease における進行性脳梗塞の頻度と急性期転帰,脳卒中 33:37–44,2011https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/33/1/33_1_37/_pdf (文献5) Deguchi I, Takahashi S. Pathophysiology and Optimal Treatment of Intracranial Branch Atheromatous Disease. J Atheroscler Thromb. 2023 Jul 1;30(7):701-709. doi: 10.5551/jat.RV22003. Epub 2023 May 13.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10322737/ (文献6) 徳田和宏ら,Branch Atheromatous Disease の急性期運動機能予後に関連する要因の検討,理学療法学 第 47 巻第 2 号https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/47/2/47_11643/_pdf
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