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- 変形性股関節症
- 股関節
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減って、痛みや動きの制限が起こる進行性の関節疾患です。 初期には歩き始めや立ち上がりの際に違和感を覚える程度ですが、進行すると階段の昇降や長時間の歩行が困難になるケースもあるため注意しなければなりません。 とはいえ、早期に発見して適切な治療や生活改善を行えば、症状の悪化を抑えながら日常生活の質を保つことも可能です。 本記事では、変形性股関節症の原因や症状、治療法、セルフチェック方法を詳しく解説します。 股関節の痛みや違和感が気になっている、もしくは予防したい方は、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ぜひ公式LINEにご登録いただき、股関節の危険度診断や症例をチェックしてみてください。 変形性股関節症とは|どんな痛みなのか 変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減ることで炎症が起こり、関節の動きが悪くなる疾患です。 加齢や関節の使い過ぎなどによる「一次性変形性股関節症」と、生まれつき股関節を構成するカップ状のくぼみ「寛骨臼(かんこつきゅう)」の受け皿が浅いことが原因の「二次性変形性股関節症」があります。(文献1) 初期には立ち上がりや歩き始めに股関節が痛み、休むと改善しますが、進行すると安静時にも痛みを感じるようになるのが特徴です。 とくに、階段の昇り降りや長時間の歩行が困難になりやすく、ひきずり足歩行になるなど日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。 また、股関節の可動域が狭くなり、「靴下を履く」「足の爪を切る」といった動作も困難になります。 痛みの感じ方は個人差がありますが、鈍く重い痛みや刺すような痛みが見られるのが一般的です。 変形性股関節症の原因 変形性股関節症の発症には、以下のような原因が考えられます。 加齢で軟骨がすり減る 体重増加で股関節に負担がかかっている 遺伝が要因で発症する なかでも、加齢に伴う関節軟骨のすり減りは、発症の大きな要因のひとつです。 股関節は体重を支える重要な関節であり、長年酷使されて軟骨が摩耗し、関節の滑らかな動きが失われていきます。 さらに、体重の増加による股関節への負担増大や、関節への圧力が増すことで軟骨の損傷が進行するのです。 とくに、肥満傾向のある方は、発症リスクが高まる傾向があります。 日常生活での姿勢や歩き方も、股関節への負担を左右する要素です。 生まれつき股関節が脱臼しているなど、遺伝的な要因によって変形性股関節症を発症するケースも見逃せません。 家族に同様の疾患がある場合は、とくに注意が必要です。 そのほか、股関節や膝に負担が大きな過重労働をしていたり、日常的に激しいスポーツをしていたりすると、変形性股関節症の発症要因になります。 変形性股関節症の原因と治し方については、以下の記事でも詳しく紹介しています。 変形性股関節症の主な症状 変形性股関節症では、初期の段階から股関節に違和感や痛みが生じるのが特徴です。 関節軟骨がすり減って関節の滑らかな動きが損なわれると、立ち上がりや歩き始めなどの動作時に脚の付け根が痛むようになります。 痛みは休息で一時的に軽減する場合がありますが、病気が進行するにつれて、関節の可動域が徐々に狭くなっていきます。 その結果、「靴下を履く」「足の爪を切る」「正座する」といった日常的な動作が困難になり、階段の昇り降りや長時間の歩行がつらくなるケースも少なくありません。 進行すると、安静にしているときにも痛みを感じるようになります。 さらに、夜に寝ているときに感じる「夜間痛」が現れ、睡眠に影響を及ぼす点も懸念材料です。 股関節の機能低下によって、体全体のバランスがくずれて体をかばうような歩き方になるため、「跛行(はこう)」と呼ばれる肩を前に出しながら足を引きずる歩行が見られるようになります。 上記のように、変形性股関節症を一度発症すると進行して日常生活に大きな支障をきたすようになるため、早期の発見と対応が欠かせません。 以下の記事でも変形性股関節症の症状について詳しく解説しているので、参考にしてみてください。 変形性股関節症の治し方 変形性股関節症の治療は、症状に応じて以下の対処法が検討されます。 保存療法 手術療法 リハビリ 初期段階では、手術せずに進行を抑える保存療法が基本です。 症状が強く、日常生活に支障が出てきた場合には手術療法が検討されます。 また、いずれの治療においても、股関節周囲の機能回復や動作改善を図るリハビリが欠かせません。 では、それぞれの治療法について詳しく解説していきましょう。 手術せず治療するなら「保存療法」 変形性股関節症の初期から中期では、関節の状態を保ちつつ痛みを軽減するべく保存療法が用いられます。主な方法は以下の3つです。 方法 内容 薬物療法 消炎鎮痛薬(NSAIDs)で痛みや炎症を抑える 運動療法(ストレッチ) 関節に負担をかけずに可動域と筋力を維持 生活習慣の見直し 体重管理、正しい姿勢、関節に優しい動作を心がける 保存療法では、痛みを抑えながら関節機能を維持し、進行を遅らせる薬物療法が基本です。 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や湿布薬、必要に応じて関節内ステロイド注射などが用いられます。 運動療法では、水中歩行やストレッチなど股関節に負担の少ない運動がおすすめです。 生活習慣の見直しは、股関節にかかる負荷を減らす重要な取り組みとなります。 とくに、体重管理は予後に大きく影響するため、日頃から注意しなければなりません。 上記の保存療法の組み合わせにより、長期的に関節を守りながら快適な日常生活を目指せます。 以下の記事では、変形性股関節症に効くストレッチや生活習慣、治療法を検討する際のポイントを紹介していますので、参考にしてみてください。 日常生活に支障が出る重症なら「手術療法」 保存療法で症状が改善しない、もしくは日常生活に支障をきたすほど症状が進行している場合には、手術療法が検討されます。 代表的な手術には、「骨切り術」と「人工股関節置換術」の2種類があります。(文献2) 骨切り術は関節を温存できるため、自分自身の骨を活かせるのが大きなメリットです。 ただし、リハビリに時間がかかる傾向があります。 人工股関節置換術は、傷んだ股関節を人工関節に置き換えて痛みを大幅に軽減させる手術方法です。 比較的リハビリ期間が短く、社会復帰を目指しやすい治療法とされています。 どちらかを選択する際は、股関節の状態や患者の年齢・職業、生活環境などさまざまな点を考慮しながら、医師と相談しましょう。 人工関節手術のリスクについては、以下の記事でも詳しく解説しています。 手術後の「リハビリ」も大切 手術療法を受けたあとは、リハビリが重要です。 リハビリは、関節の可動域を回復し、筋力を強化して再発を防ぐ目的で行われます。 術後数日以内から歩行訓練や関節の動きを促す運動を開始し、日常生活に必要な動作を徐々に回復させていく方法が一般的です。 太ももやお尻、腹筋など股関節周辺の筋力強化も、股関節の負担軽減には欠かせません。 術後の状態に適した、無理のない筋力トレーニングや体操も取り入れていきましょう。 適切なリハビリの継続は再手術のリスクを減らし、長期的な機能維持につなげるために大切です。 変形性股関節症の治し方については、以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 人工関節手術を避けたい方の選択肢「再生医療」 変形性股関節症の治療では人工股関節置換術が選択される場合がありますが、手術への不安や身体への負担を理由に避けたいと考える方も少なくありません。 手術をしない新たな選択肢として注目されているのが再生医療です。 治療法の一つ「幹細胞治療」では、患者様から採取した幹細胞を培養して股関節に注入します。 幹細胞の「分化能(さまざまな細胞に変化する性質)」を活かした治療法です。幹細胞は米粒2~3粒程度の脂肪から採取できるため、体の負担は大きくありません。 治療の選択肢を広げたい、もしくは人工関節を入れるような大がかりな手術を避けたい場合は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性股関節症に対する再生医療の症例を紹介しています。再生医療について知りたい方は、ぜひご覧ください。 変形性股関節症でやってはいけないこと 変形性股関節症では、股関節に負担をかける動作を避けなければなりません。 以下の点に注意するように心がけましょう。 長時間立ち続けない 重い荷物を持ち運ばない 膝を深く曲げない 正座やあぐらを組まない 長時間立ち続けると関節に大きな圧力をかけ、軟骨の摩耗を促進するので控える必要があります。 同様に、重い荷物の持ち運びも股関節への負担が増し、炎症や痛みを悪化させる原因になるため注意しましょう。 また、買い物や移動の際はできるだけ荷物を分けて持つ習慣を心がけるほか、キャリーカートの使用もおすすめです。 さらに、膝を深く曲げる動作は股関節の可動域を超えて負荷を与えやすく、関節内の圧力が急激に上がるため避けましょう。 とくに、正座やあぐらの姿勢は、股関節を大きく開いたり曲げたりするため、軟骨や周囲組織へのストレスが強くなります。 関節変形を進行させる可能性があるため、なるべく椅子に腰かけるようにしてください。 日常生活の中で上記のような動作を意識的に避ければ、痛みを抑えながら関節の状態をより良く保つことにつながります。 変形性股関節症でやってはいけないことについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。 変形性股関節症の症状セルフチェック方法 変形性股関節症を早期発見するためには、次のような症状や状態がないかセルフチェックしてみましょう。 運動したあと、太ももの付け根が痛い 寝ているときに、股関節が痛い 階段を上りづらい 車を乗り降りで太ももの付け根が痛い 歩く際に体が左右に揺れている 歩きはじめに、太ももの付け根が痛い 寝返りをうつと、太ももの付け根が痛い ズボンやスカートの丈に左右差がある あぐらをかくのがつらい 靴下が履きづらい 正座しにくい 足の爪が切りにくい 日常生活で感じる違和感や痛みの有無をまずチェックし、気になる症状がある場合は、専門医の診察を受けましょう。 変形性股関節症の進行スピードは原因や体重、生活環境などによって異なりますが、一度進行がはじまると一気に軟骨が減っていく恐れがあります。 悪化させないためには、少しでも早く発見することが大切です。 まとめ|早期に治療をはじめて症状をコントロールしよう 変形性股関節症は、初期の段階で適切に対処すれば進行を遅らせ、日常生活への影響を最小限に抑える効果が期待できます。 痛みや動きの制限、歩行時の違和感など小さなサインも見逃さず、早めに整形外科を受診することが重要です。 また、正しい姿勢や動作の工夫、体重管理も大切です。 早期治療と日々のセルフケアで、長く快適に動ける体を守っていきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、PRP療法や幹細胞治療などの再生医療による治療を行っています。 公式LINEでは、再生医療に関する情報や簡易オンライン診断をご利用いただけます。 ぜひ登録してお試しください。 参考文献 (文献1) 手術・治療|あいちスポーツ・人工関節クリニック (文献2) 変形性股関節症|済生会
2025.08.31 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
「立ち上がりや運動時に腰の横や太ももの付け根付近に違和感がある」 「腰の横や太ももの付け根付近の痛みを改善したい」 腰の横や太ももの付け根にある骨の出っ張りは、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)と呼ばれます。痛みや違和感があるものの、原因がわからず受診をためらっていませんか。 本記事では上前腸骨棘の痛みについて現役医師が詳しく解説します。 上前腸骨棘の位置と役割 上前腸骨棘に痛みが出る原因 上前腸骨棘の痛みに対する治療法 上前腸骨棘の痛みを再発させないための予防法 記事の最後には、上前腸骨棘に関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 腰や太もも付近の症状が気になる方や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 上前腸骨棘の位置と役割 項目 内容 位置 骨盤の前側・左右にある出っ張り 触れ方 腰に手を当てたとき、人差し指があたる部分 付着する筋肉 縫工筋、大腿筋膜張筋 関係する靱帯 鼠径靱帯(そけいじんたい) 主な役割 股関節や膝関節の動きの補助、下肢の安定、歩行や姿勢の維持 上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)は、骨盤の前側に左右対称にある骨の出っ張りです。腰に手を当てたときに人差し指が自然に触れる場所で、自身でも容易に確認できます。この部位には縫工筋(ほうこうきん)や大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)といった筋肉や、鼠径靱帯(そけいじんたい)が付いており、股関節や膝の動き、身体の安定に関係しています。 また、医療では骨盤の位置を確認したり、痛みの場所を見極めたりする目印にもなります。スポーツや日常動作での使いすぎや負担により、ここに痛みが出ることもあるため、違和感を覚えた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 上前腸骨棘に痛みが出る原因 痛みが出る原因 詳細 過度の負荷・スポーツ外傷による急性・慢性障害 ダッシュ・ジャンプ・切り返し等による筋肉の強い収縮や繰り返し動作による筋付着部炎・裂離骨折・疲労骨折 骨盤・股関節の構造不良・神経圧迫による関連痛 骨盤や股関節のアライメント不良、筋力バランスの崩れ、神経や周囲組織の圧迫による関連部位の不快感・広範な症状 まれな原因:骨疾患・腫瘍などの警戒すべき病変 骨腫瘍・感染症・炎症・悪性疾患などによる器質的な異常や進行性病変 上前腸骨棘に痛みが出る原因は、大きく3つに分かれます。ひとつはスポーツや日常動作での負荷が蓄積し、筋肉の付着部に炎症や裂離が起こるケースです。とくに走る・ジャンプする動きによる発症が多く見られます。 骨盤や股関節の歪み、神経の圧迫が関与する場合、周囲の筋肉にも影響を及ぼし、広範囲にわたって痛みや違和感が生じることがあります。 そしてまれに、骨の腫瘍や感染症などが潜んでいることもあります。症状が長引く場合は放置せず、速やかに医療機関へ相談することが重要です。 過度の負荷・スポーツ外傷による急性・慢性障害 原因 具体的な障害・症状 成長期・筋付着部のオーバーユース アポフィサイト(筋付着部炎症)、慢性的な違和感 急激な筋収縮・繰返し動作 裂離骨折・疲労骨折、歩行困難、違和感 直接打撲・転倒などによる外傷 ヒップポインター(打撲)、鋭い痛み、腫れ、皮下出血 上前腸骨棘は太ももの筋肉に付着するため、過度な運動や反復動作、急激な筋収縮、直接の打撃で大きな負担がかかりやすい部位です。 成長期は骨が柔らかいため筋肉の引っ張りで炎症や裂離骨折が起こりやすく、サッカーや陸上など激しいスポーツでは繰り返しの負荷による慢性障害も目立ちます。また、外傷で起きるヒップポインターでは歩行や運動に障害が生じることがあります。違和感が出たら早めのケアが重要です。 以下の記事では、スポーツ外傷による急性・慢性障害について詳しく解説します。 【関連記事】 足の甲の痛みは疲労骨折かも?ランニングの注意点や治し方を解説 肉離れの応急処置を医師が解説|治療・予防方法もあわせて紹介 骨盤・股関節の構造不良・神経圧迫による関連痛 原因 具体的な痛みの理由・症状 骨盤や股関節の構造不良 特定部位への負担集中、筋肉や腱の過剰な引っ張りや使いすぎ、炎症や違和感の発生 神経圧迫による関連痛 神経の圧迫や刺激により、障害部位とは離れた場所への関連痛、信号伝達の混乱 骨盤や股関節の構造や可動性に異常があると、歩行や立位、走行時に上前腸骨棘へ過剰な負担がかかりやすくなります。股関節の可動域制限や骨盤の傾斜は、筋や腱の過緊張や使いすぎを引き起こし、炎症や違和感の原因です。 また、骨盤周囲の神経が圧迫・刺激されることで、実際の障害部位とは異なる上前腸骨棘周辺に関連痛として痛みが生じることがあります。これは神経の信号伝達異常により起こる違和感であり、正しく治すためには身体のバランスや神経の働きを確認することが大切です。 まれな原因:骨疾患・腫瘍などの警戒すべき病変 原因 主な特徴 注意が必要な場合 スポーツ・外傷 急激な動きや外傷による裂離・疲労骨折、筋肉の炎症が多い。10代の成長期に頻発し、ジャンプやダッシュ時に発生しやすい 安静や通常治療で改善しやすい 警戒すべき骨疾患・腫瘍 まれに骨腫瘍(良性・悪性)、骨の感染症、骨粗しょう症による骨の異常が原因となる 骨自体がもろくなったり、腫瘍が神経や組織を圧迫し、痛みや腫れを引き起こすことがある。痛みが長く続く・夜間や安静時も強い、全身症状(発熱・体重減少)、しこりや腫れに触れる場合は要検査 上前腸骨棘の痛みは、スポーツやケガによる筋肉の炎症や骨の損傷が多くの原因ですが、まれに腫瘍や感染症などの骨の病気が隠れている場合があります。 こうした病変は骨を弱くしたり、神経を圧迫したりして痛みを引き起こすことがあります。通常のスポーツ障害とは異なり、安静にしても痛みが治らない、腫れやしこりがある、発熱や体重減少といった全身症状がみられる場合は要注意です。 原因がはっきりしない慢性的な痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診し、レントゲンやMRIなどの画像検査を受けることが大切です。 以下の記事では、骨疾患・腫瘍などの症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 脊髄腫瘍になると歩けない?歩行ができない原因やメカニズムを医師が解説 脊柱管狭窄症の重症度分類を解説|診断方法と治療方法もあわせて紹介 上前腸骨棘の痛みに対する治療法 治療法 詳細 保存療法 安静保持、患部冷却、固定、松葉杖や装具使用、ストレス軽減、自然治癒の経過観察 運動療法・リハビリテーション 可動域訓練、筋力強化、ストレッチ、体幹・股関節周囲の筋柔軟性向上、段階的な運動再開 薬物療法 消炎鎮痛薬、湿布、炎症や不快感の緩和、必要に応じた内服や外用薬の処方 手術療法(重症例の場合) 骨片固定、スクリュー挿入、損傷部修復、術後の骨癒合・異所性骨化切除 再生医療 幹細胞治療、自己血注入、難治例での組織修復や機能回復の選択肢 上前腸骨棘の痛みに対する治療法は、症状の程度や原因に応じて複数の選択肢があります。多くの場合、安静や冷却、装具の使用などを含む保存療法で十分な改善が見込まれます。 症状の軽減後は、柔軟性や筋力の回復を目的としたリハビリを行い、再発防止に努めます。必要に応じて、薬物療法による症状のコントロールも行います。重症の場合には、手術や再生医療が検討されることもあり、患者様の状態に合わせた適切な治療が重要です。 保存療法 治療法 詳細 安静の確保 運動や活動を控え、患部への負荷を回避、組織回復の促進 アイシング(冷却) 炎症や腫れの軽減、1日数回・10〜15分の冷却による局所の炎症反応の抑制 痛み止めの薬の使用 消炎鎮痛薬の処方、炎症の進行抑制と不快感のコントロール 歩行や運動の再開時期の管理 骨癒合の確認後に段階的再開、スポーツ復帰は医師の判断と許可 リハビリやストレッチ 筋肉柔軟性・筋力の回復、関節可動域の確保、再発予防のための機能改善 上前腸骨棘の痛みが比較的軽度で、日常生活に大きな支障がない場合は、安静を中心とした保存療法が基本となります。無理な動作や痛みの出る姿勢を避け、患部への負担を減らすことが回復への第一歩です。 アイシングによる炎症の抑制や、必要に応じたサポーターの使用も効果的です。多くの場合、こうした保存的な対応だけで痛みの改善が期待できますので、焦らず治療を続けることが大切です。 運動療法・リハビリテーション 治療法 詳細 ストレッチ 股関節や太ももの筋肉の柔軟性向上、筋緊張の緩和 筋力トレーニング 体幹・大殿筋・太もも周囲の筋力強化による骨盤安定 可動域訓練 股関節・膝関節の動きの回復、柔軟性の改善 歩行訓練・動作指導 正しい歩き方・立ち上がり方による患部への負担軽減 姿勢・骨盤アライメント調整 骨盤の傾きや動作のクセを修正し、再発を予防 上前腸骨棘の痛みに対する運動療法・リハビリテーションは、痛みの軽減だけでなく、再発予防や早期の社会・スポーツ復帰に重要です。股関節や太もものストレッチ、体幹や下肢の筋力トレーニングにより、柔軟性と安定性を高めます。 また、歩行や動作の指導、骨盤や姿勢のバランス調整を通じて、日常生活での負担を軽減します。医師や理学療法士の指導のもと、段階的に無理なく行うことが大切です。 薬物療法 治療法 詳細 NSAIDs(内服薬) ロキソニン、イブプロフェンなどによる痛みと炎症の軽減、日常動作の改善 NSAIDs(外用薬) 湿布や塗り薬による局所的な鎮痛・消炎、内服に抵抗がある方にも適応 ステロイド注射 保存療法で改善が乏しい場合の強力な抗炎症処置、1~数回で症状軽減 局所麻酔+ステロイド注射 痛みの診断と治療を兼ねた神経ブロック、神経や炎症の関与を評価 その他の注射療法 局所麻酔のみの注射やラジオ波治療など、専門的な疼痛管理法 痛みが強く日常生活に支障がある場合、消炎鎮痛薬の使用は炎症や不快感の軽減に効果的です。内服薬(ロキソニンやイブプロフェンなど)は体内から炎症を抑え、湿布や塗り薬は直接患部に貼付し局所的な改善が期待できます。 また、他の保存的治療で十分な効果が得られない場合、医師の判断でステロイドや局所麻酔を用いた注射が行われることもあります。 薬物療法によってリハビリテーションや日常動作が行いやすくなりますが、薬剤のみでは根本的な回復にはつながりません。根本的な改善には運動療法や姿勢の見直しなどとの併用が不可欠です。 手術療法(重症例の場合) 治療法 内容 骨片の整復・固定 ずれた骨片を元の位置に戻し、スクリューやプレートで固定 手術方法の工夫 筋肉を極力傷つけないアプローチの選択 術後のリハビリ 早期からの歩行訓練・運動再開、段階的な負荷の調整 合併症への注意 骨癒合の経過観察、神経症状の確認、異所性骨化への対応 手術療法の適応 骨片の大きなずれ、神経圧迫、早期復帰の希望がある症例 上前腸骨棘の痛みは多くの場合保存療法で改善しますが、骨片のずれや神経圧迫、構造異常がある場合には手術が検討されます。 手術では骨片を整復・固定し、低侵襲な術式と早期リハビリで機能回復を図ります。骨癒合の進行状況や神経症状、異所性骨化の有無は、術後の経過として定期的に確認が必要です。手術の適応は診察と画像検査に基づいて慎重に判断されます。 再生医療 有効な理由・注意点 詳細 筋・腱付着部の治癒促進 PRP(多血小板血漿)の成長因子が炎症・損傷部位の治癒促進、腫れや違和感の軽減、幹細胞療法は、腱や靱帯、骨の再生や機能回復を促進 保存療法で十分な改善が得られない慢性の違和感に有効 保存療法や薬物療法で改善しない長期の炎症や腱障害に対し、再生医療が組織修復力を高める補助療法として有効 拒絶反応などのリスクが比較的低い 患者様自身の血液や細胞を利用するため、免疫的な負担や拒絶反応がほとんどない 適応とタイミングの注意 軽症や急性期では保存療法の優先、再生医療は補助的選択肢。骨片や構造異常には整形外科的治療の適応 再生医療は、筋や腱の付着部の修復を促進する目的で行われる治療法です。PRP(多血小板血漿)や幹細胞を用いることで、炎症の軽減および組織再生が期待されます。 とくに、保存療法で十分な改善が得られない慢性痛に対して、有効な補助的治療として位置づけられています。自己血液や骨髄由来の細胞を使用するため、比較的身体への負担が少ないのが特徴です。 なお、軽症や急性期にはまず保存療法を優先し、再生医療はその後の選択肢として検討されます。骨折や構造的異常が明らかな場合は、整形外科的治療が優先されます。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 上前腸骨棘の痛みを再発させないための予防法 予防法 詳細 注意点 日常での姿勢ケアと生活習慣の改善 骨盤の傾きや体のゆがみを整えるための正しい姿勢の意識 長時間の座位や片寄った体重のかけ方の習慣化に注意 運動量・運動強度の適切な管理 無理のない運動スケジュールと休息の確保 疲労の蓄積や急な運動再開によるオーバーユースの回避 ストレッチ ・ 筋力強化で付着部の柔軟性と安定性を維持 股関節や体幹の柔軟性確保と骨盤周囲筋の強化 違和感が残る状態でのトレーニング実施の回避 上前腸骨棘の痛みは、日常生活や運動習慣の工夫によって、再発を効果的に予防できます。 姿勢の乱れ、過度な運動負荷、筋力・柔軟性の低下は、再発リスクを高める主要な要因です。再発を防ぐには、正しい姿勢の保持と、適切な運動管理、筋肉の柔軟性と安定性の維持が不可欠です。 日常での姿勢ケアと生活習慣の改善 予防ポイント 詳細・工夫 正しい座り姿勢 骨盤に体重を乗せて背すじを伸ばし、中立姿勢を維持。サポートのある椅子や机の高さ調整を活用 姿勢チェック・動く習慣 30分ごとに立ち上がる。ストレッチや軽体操で筋緊張の分散、同じ姿勢の連続回避 前もものストレッチ 大腿直筋・大腿筋膜張筋など股関節前面の筋肉を中心に、日常的にストレッチを取り入れる 腹筋・お尻の筋強化 腹横筋や大殿筋を意識して動かすことで、骨盤の中立と筋バランスの保持 生活習慣の工夫 日常的な体勢・姿勢への意識、動きやすい環境づくり、骨盤・股関節周囲の筋グループのバランス維持 上前腸骨棘の痛みを再発させないためには、日常生活の中で骨盤のアライメント(骨の位置関係)を整えることがポイントです。 長時間同じ姿勢が続くと、骨盤が前後に傾き、筋肉のバランスが崩れやすくなります。その結果、上前腸骨棘周囲の筋や靱帯に余計な負担がかかり、再発のリスクが高まります。 予防のポイントは、正しい姿勢の維持とこまめな動きです。椅子に座る際は、骨盤にしっかり体重を乗せて背筋を伸ばし、安定した姿勢を意識しましょう。また、30分に一度は立ち上がって軽いストレッチや体操を取り入れることで、筋肉のこわばりを防ぎます。 さらに、前ももの筋肉(大腿直筋)の柔軟性を保つストレッチや、腹筋・お尻の筋肉(腹横筋・大殿筋)を意識的に使うことで、骨盤のバランスが整い、患部への負担を軽減できます。こうした習慣の積み重ねが、再発を防ぐ上で非常に効果的です。 運動量・運動強度の適切な管理 上前腸骨棘の痛みを再発させないためには、運動量と運動強度の適切な管理が非常に重要です。骨折や炎症が治りかけている時期は、骨や筋肉が完全に回復していないため、過度な運動は再発や悪化のリスクを高めます。とくに急激な負荷増加や無理なトレーニングは、筋や腱の付着部に再びストレスを集中させる原因です。 運動再開時は医師の診察や画像検査で回復の程度を確認した上で、軽いストレッチやジョギングから始め、段階的に強度を上げていくことが重要です。フォームや道具の見直し、十分な休息の確保も含めて、無理のない範囲で継続することが、再発予防につながります。 ストレッチ ・ 筋力強化で付着部の柔軟性と安定性を維持 上前腸骨棘の痛みを再発させないためには、ストレッチと筋力強化を組み合わせたアプローチが有効です。股関節周囲の筋肉の柔軟性を高めることで、付着部への過度な牽引ストレスを軽減し、炎症の再発を防ぎます。 また、体幹や骨盤周囲の筋肉を強化することで関節の安定性が向上し、運動時の負担を均等に分散できます。柔軟性と安定性を両立することで、日常動作やスポーツ時の再発リスクを効果的に軽減できます。 上前腸骨棘の痛みは放置せずに医療機関を受診しよう 違和感や不快感が数日〜数週間続く場合や、動作のたびに繰り返し出現するときは、早めに整形外科などの専門機関で相談しましょう。 放置すると慢性化やほかの部位に負担がかかる可能性もあります。画像検査を用いた評価により、筋肉・骨・神経のどの部位が関与しているかを確認でき、適切な対処が可能となります。 上前腸骨棘の痛みにお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、上前腸骨棘の痛みに対するアプローチのひとつとして再生医療をご提案しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 上前腸骨棘に関するよくある質問 上前腸骨棘の痛みが出やすい年齢やスポーツはありますか? 上前腸骨棘の痛みは、10〜18歳の成長期の子どもや中高生に多く、とくに14歳前後がピークです。 短距離走やサッカーなど、急な筋収縮を伴う競技で起こりやすく、成長途中の柔らかい骨が筋肉に引っ張られることで裂離骨折が生じることがあります。 上前腸骨棘の痛みはどのように診断しますか? 上前腸骨棘の痛みの診察では、まず問診により痛みの発生状況や部位、運動歴、年齢を確認し、成長期のスポーツによる裂離骨折の可能性を評価します。 患部の圧痛や腫れを触診で確認し、必要に応じてレントゲンや超音波、MRI、CTで骨・筋肉・関節・神経の状態を評価し、正確な診断と治療方針の決定につなげます。 以下の記事では、上前腸骨棘の痛みに関連する仙腸関節炎について詳しく解説しています。
2025.07.31 -
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人工関節手術。それは、痛みや動きの制限からの解放、そして活動的な人生への回帰を約束する希望の光です。日本では年間約20万件もの人工関節手術が行われており、多くの人々がこの手術によって人生の質を向上させています。しかし、手術後のリハビリや仕事復帰、日常生活における注意点など、気になる点も多いのではないでしょうか? この記事では、人工関節手術後のリハビリテーションから仕事復帰、そして日常生活の注意点まで、整形外科医師が詳しく解説します。具体的なリハビリの段階や内容、痛みの管理、合併症の予防、そして職場復帰支援制度の活用方法まで、網羅的にご紹介します。 手術を控えている方、手術後の方、そしてそのご家族の方々にとって、きっと有益な情報となるでしょう。さあ、人工関節手術後の明るい未来への扉を開きましょう。 人工関節手術後のリハビリと仕事復帰までの流れ 人工関節手術は、激しい関節痛や動きの制限を改善し、より快適な生活を送るための重要な一歩です。手術を受ける決断は大きなものですが、その先には、リハビリテーションを通じて少しずつ身体の機能を取り戻し、再び活動的な日々を送る未来が待っています。 この手術は、まるで身体に新しい部品を組み込むような大がかりなものです。術後の経過は人それぞれとなります。焦らず、一歩ずつ、着実に進んでいきましょう。リハビリテーションと仕事復帰までの道のりについて、一緒に確認していきましょう。 リハビリテーションの段階と内容 リハビリテーションは、手術直後から始まります。初期のリハビリは、ベッドの上でできる簡単な運動からスタートし、徐々に難易度を上げていきます。術後のリハビリテーションは、術後の回復を促進し、合併症を予防するために非常に重要です。 術後早期(術後1日目~): この時期は、手術の侵襲による身体への負担が大きいため、安静が最優先されます。しかし、安静にしすぎることで血栓症や肺炎などの合併症のリスクが高まるため、ベッド上でもできる運動が推奨されます。具体的には、足首の運動、深呼吸、寝返りなどです。これらの運動は、血液循環を促進し、呼吸機能を維持するのに役立ちます。 術後1~2週間: 痛みが徐々に軽減し始め、より積極的なリハビリテーションが開始されます。ベッド上での運動に加えて、座位、立位、歩行練習などが行われます。この段階では、関節可動域の拡大と筋力強化を図ることが目標です。理学療法士の指導のもと、杖や歩行器などの補助具を使用しながら、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。 術後2~4週間: 歩行が安定してくると、日常生活動作の練習が中心となります。歩行器や杖を使った歩行練習、階段昇降、トイレへの移動、着替えなど、日常生活に必要な動作を繰り返し練習することで、自宅での生活にスムーズに戻れるよう準備していきます。 術後1~3ヶ月: この時期になると、さらに積極的なリハビリテーションプログラムが組まれます。自転車エルゴメーターや水中歩行など、関節への負担が少ない運動を取り入れながら、関節可動域の維持・拡大、筋力強化を図ります。また、退院後の生活を見据え、趣味や軽い運動なども徐々に再開していきます。 リハビリテーションの内容は、一人ひとりの状態に合わせて調整されます。年齢、手術前の活動レベル、合併症の有無など、様々な要因が考慮されます。理学療法士などの専門家と相談しながら、無理なく進めていきましょう。最新の研究では、Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)というプログラムが注目されており、術前から術後の包括的な管理を行うことで、より早期の回復と社会復帰を目指しています。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 痛みの管理と合併症の予防 人工関節手術後は、痛みや腫れが出ることがあります。これは手術による組織の損傷や炎症反応によるもので、自然な経過です。しかし、痛みを我慢しすぎると、リハビリテーションへの意欲が低下し、回復が遅れてしまう可能性があります。 痛みの管理には、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法としては、痛み止め(鎮痛剤)や消炎鎮痛剤が処方されます。医師や看護師の指示に従って、正しく服用しましょう。非薬物療法としては、冷却や温罨法、マッサージなどがあります。 人工関節手術後の合併症として、感染症、血栓症、脱臼、人工関節の緩みなどが挙げられます。感染症は、手術部位に細菌が侵入することで起こります。血栓症は、手術後に血栓(血液の塊)ができて血管を詰まらせてしまうことです。脱臼は、人工関節が本来の位置からずれてしまうことです。人工関節の緩みは、人工関節が骨にしっかりと固定されなくなってしまうことです。 これらの合併症を予防するために、清潔を保ち、医師の指示に従った予防策を講じることが重要です。定期的な創部の観察と消毒、弾性ストッキングやフットポンプの使用、早期離床と適度な運動などが有効です。 仕事復帰までの期間と流れ 仕事復帰までの期間は、仕事内容や回復状況によって大きく異なります。事務職であれば術後数週間で復帰できる場合もありますが、肉体労働など身体に負担のかかる仕事の場合は、数ヶ月かかることもあります。 仕事復帰までの流れとしては、まず主治医との相談が重要です。現在の身体の状態やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法について話し合います。職場の上司や同僚との連携も大切です。仕事復帰に向けて、職場環境の調整(勤務時間、業務内容など)が必要となる場合もあります。必要な場合は、産業医への相談も検討します。 焦らずに、自分のペースで復帰を目指しましょう。復帰後も、定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行うことが重要です。 職場復帰支援制度の活用 仕事復帰に向けて、さまざまな支援制度を活用することができます。傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合に、生活費の一部を補填する制度です。高齢者の医療の確保に関する法律は、75歳以上の方の医療費自己負担割合を軽減する制度です。障害年金は、病気やケガによって障害が残った場合に、生活を保障するための制度です。 これらの制度は、経済的な不安を軽減し、安心してリハビリテーションに専念するために役立ちます。必要に応じて、主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。 人工関節手術後の生活と注意点 人工関節手術は、痛みや動きの制限から解放され、活動的な生活を取り戻すための大きな一歩です。 しかし、手術を受けた後も、新しい関節と長く付き合っていくためには、日常生活での注意点と工夫が欠かせません。 まるで身体に新しい相棒を迎えたように、その特徴を理解し、適切に扱うことで、より快適で安心な生活を送ることができるでしょう。 日常生活の注意点と工夫 人工関節は、自分の骨と完全に一体化しているわけではありません。そのため、過度な負担や不適切な動きは、人工関節の寿命を縮めたり、脱臼などの合併症を引き起こす可能性があります。日常生活では、以下の点に注意しながら、人工関節を大切に扱いましょう。 1. 人工関節への負担を減らす工夫 重いものを持つ: 買い物かごやリュックサックなどを活用し、片側だけに負担がかからないようにしましょう。どうしても重いものを持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げて腰を落とした姿勢で、両手で持ち上げるようにしてください。 無理な姿勢: 中腰での作業や、足を組む、あぐらをかくといった姿勢は、人工関節に負担をかけるだけでなく、脱臼のリスクも高めます。なるべく避け、どうしても必要な場合は時間を短くし、休憩を挟むようにしましょう。 同じ姿勢を長時間続ける: デスクワークや車の運転など、同じ姿勢を長時間続ける場合は、1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチをする、足を動かすなど、血行を促進し、関節の柔軟性を保つように心がけましょう。 和式トイレ: 和式トイレは、股関節を深く曲げる必要があるため、人工関節に大きな負担がかかり、脱臼のリスクも高まります。可能であれば、洋式トイレを使用するか、和式トイレに補助具を設置するなど、工夫しましょう。 入浴: 入浴は、血行を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果があるため、積極的に行いましょう。ただし、滑りやすい場所なので、手すりや滑り止めマットなどを設置し、転倒防止に十分注意してください。また、湯船の出入りは、ゆっくりと行い、急な動作は避けましょう。 2. 転倒防止 転倒は、人工関節に大きな衝撃を与え、破損や脱臼の原因となる可能性があります。家の中だけでなく、外出先でも転倒のリスクを意識し、予防策を講じることが重要です。具体的には、床に物を置かない、段差に注意する、滑りにくい靴を履く、階段では手すりを持つ、など、基本的なことを徹底しましょう。夜間は足元を明るくし、必要に応じて杖や歩行器を使用することも有効です。 3. 感染症の予防 人工関節は、感染症に弱いため、傷口のケアや衛生管理には特に気を配る必要があります。傷口は清潔に保ち、医師の指示に従って適切な処置を行いましょう。また、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、人工関節に感染が波及するリスクがあるため、手洗いやうがい、マスクの着用など、感染予防を徹底することが大切です。歯科治療を受ける際も、人工関節手術を受けたことを必ず伝え、抗菌薬の予防投与が必要かどうか相談しましょう。 スポーツや趣味の再開時期 人工関節手術後、日常生活動作が問題なく行えるようになったら、スポーツや趣味の再開を検討することができます。人工膝関節全置換術(TKA)と人工股関節全置換術(THA)を受けた患者さんには、フォーマルな監督下での活動プログラムだけでなく、非監督下での活動も推奨されています。これは、ご自身のペースで、日常生活の中で身体を動かすことが重要であるということです。 しかし、すべてのスポーツがすぐに再開できるわけではありません。激しい運動や、関節に大きな負担がかかる運動は、人工関節の寿命を縮めたり、合併症を引き起こす可能性があります。再開する際は、必ず主治医に相談し、許可を得てから行うようにしましょう。 許可される運動(例): ウォーキング、水泳、サイクリング、ゴルフ、卓球など。これらの運動は、関節への負担が比較的少なく、筋力や柔軟性を維持・向上させる効果があります。 禁止される運動(例): ジョギング、サッカー、バスケットボール、スキー、スノーボードなど。これらの運動は、関節への衝撃が大きく、人工関節に負担がかかりすぎるため、避けるべきです。 スポーツや趣味を再開する際には、以下の点に注意しましょう。 痛みが生じる場合は、無理せず中止する 徐々に運動強度や時間を増やしていく 適切なウォーミングアップとクールダウンを行う 定期的に主治医の診察を受け、経過観察を行う 手術前の活動レベルに回復するには個人差がありますが、焦らず、医師の指示に従いながら、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。 まとめ 人工関節手術後、仕事に復帰するには、リハビリテーションと日常生活の注意点、そして職場復帰支援制度の活用が重要です。 手術後は、段階的なリハビリを通して身体機能の回復を目指します。 日常生活では、人工関節への負担を減らす工夫や転倒防止、感染症予防を心がけ、スポーツや趣味の再開は医師と相談の上、徐々に進めていきましょう。 仕事復帰までの期間は仕事内容や回復状況によって異なり、職場との連携も大切です。 焦らず、自分のペースで復帰を目指し、様々な支援制度を活用しながら、快適な生活を取り戻しましょう。 再生医療の無料相談受付中! リペアセルクリニックは「股関節の痛み」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 参考文献 Soffin EM, Wainwright TW. "Hip and Knee Arthroplasty." Anesthesiology clinics 40, no. 1 (2022): 73-90. Šťastný E, Trč T, Philippou T. "[Rehabilitation after total knee and hip arthroplasty]." Casopis lekaru ceskych 155, no. 8 (2016): 427-432. Fortier LM, Rockov ZA, Chen AF, Rajaee SS. "Activity Recommendations After Total Hip and Total Knee Arthroplasty." The Journal of bone and joint surgery. American volume 103, no. 5 (2021): 446-455. Wainwright TW, Gill M, McDonald DA, Middleton RG, Reed M, Sahota O, Yates P, Ljungqvist O. "Consensus statement for perioperative care in total hip replacement and total knee replacement surgery: Enhanced Recovery After Surgery (ERAS(®)) Society recommendations." Acta orthopaedica 91, no. 1 (2020): 3-19. Canovas F, Dagneaux L. "Quality of life after total knee arthroplasty." Orthopaedics & traumatology, surgery & research : OTSR 104, no. 1S (2018): S41-S46.
2025.02.11 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
股関節が左だけ(片側だけ)痛いと、日常生活に支障が出るだけでなく、原因がわからず不安になる方も多いでしょう。 とくに女性は骨格やホルモンの影響により、股関節に負担がかかりやすく、左右どちらかに痛みが集中するケースが少なくありません。痛みの背景には、生活習慣や姿勢のクセだけでなく、疾患が隠れている可能性もあります。 この記事では、女性に多い片側の股関節痛の原因や考えられる病気、治療法やセルフケアについて解説します。片側だけの股関節の痛みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。 なお、股関節の痛みの原因が疾患の場合は、再生医療が治療の選択肢となる場合があります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 「手術を伴わない治療法が知りたい」とお考えの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 女性に股関節の痛みが多い主な原因 女性は骨格やホルモンなどの影響により、股関節にかかる負担が男性より大きくなりやすい傾向があります。以下では、とくに女性に影響しやすい原因を4つの観点から解説します。 骨格構造による影響(臼蓋形成不全) 女性ホルモンによる影響 生活習慣の影響 疾患の影響 骨格構造による影響(臼蓋形成不全) 股関節痛は、日本人女性に多い臼蓋形成不全が関係している場合があります。 臼蓋形成不全とは、股関節の受け皿である骨盤のくぼみが浅く、大腿骨の先端のボール状の部分が安定しにくい状態を指します。この骨格の構造上の特徴により、動作中に違和感や痛みを感じやすくなるのが特徴です。 とくに女性は出産に対応するため骨盤が広く、臼蓋形成不全が起きやすいとされます。初期の症状は軽度ですが、進行すると歩行や日常動作に影響を及ぼすことがあります。 女性ホルモンによる影響 女性ホルモンの変化は、股関節痛の大きな原因の一つです。 妊娠中はリラキシンというホルモンの分泌により、骨盤の靭帯が緩み、股関節が不安定になりやすくなります。その結果、出産後もしばらく片側の股関節に痛みが残ることがあります。 また、更年期では女性ホルモンの分泌が減少し、骨密度が下がることで股関節にかかる負荷が増加します。骨がもろくなることで、炎症や変形性股関節症のリスクも高まります。 生活習慣の影響 生活習慣は股関節痛を引き起こす重要な原因の一つです。長時間の立ち仕事やデスクワークは、特定の筋肉や関節に負荷をかけ、左右のバランスを崩しやすくします。 とくに片側に重心をかける立ち方や、足を組む座り方は股関節の片側だけに負担が集中しやすくなります。さらに運動不足も股関節の痛みが生じる要因です。運動不足により股関節を支える筋力が低下すると、関節が不安定になり痛みが生じやすくなります。 こうした習慣が積み重なることで、股関節痛が現れる場合があります。 疾患の影響 股関節痛は特定の疾患が原因となる場合があります。 代表的なものに、関節軟骨がすり減る変形性股関節症があります。とくに臼蓋形成不全を背景に持つ女性は、加齢とともに発症リスクが高まります。(文献1) また、関節内の炎症が生じる関節リウマチや、骨への血流が滞る大腿骨頭壊死も股関節痛を引き起こす要因です。 疾患によって痛みの特徴や進行スピードが異なるため、症状の正しい理解が大切です。 股関節の左右片側に痛みが起きる原因・疾患について 股関節の痛みが考えられる原因・疾患については、以下のようなものがあります。 リウマチの影響 大腿骨頭壊死 滑膜炎・滑液包炎 脊椎や骨盤からの関連痛 筋肉の問題が引き起こす痛み ここでは代表的な原因を、詳しく具体的な例を交えて解説します。 リウマチの影響とその症状 リウマチは、体の免疫システムが誤って自分の関節を攻撃してしまう病気です。主に関節の変形、腫れや痛みを伴います。 両方の股関節が同時に痛むことが多いですが、片側だけが痛む場合もあります。 朝起きた時に、股関節がこわばって動かしにくいといわれる方が多いです。痛みは、日中活動するうちに徐々に楽になりますが、夜にかけて炎症が増すことが多く見られます。 リウマチでは、関節の進行性変化が特徴で、重症化すると、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。 リペアセルクリニックは「股関節」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。 大腿骨頭壊死の特徴的な症状 大腿骨頭壊死は、太ももの骨の先端部分である大腿骨頭への血流が滞り、壊死することで発症します。 初めの頃は、何も症状が出ないことがよくありますが、重症化すると、歩くのがつらくなります。特に、足の付け根である鼠径部に痛みが出やすいです。 原因として、長期のステロイドの内服、頻繁な飲酒、外傷などが原因で発症することがあります。病状は徐々に進行していくので、注意が必要です。 MRI検査で壊死範囲や進行度を診断し、治療法を選択します。末期になると、人工関節置換術などの手術が必要になることもあります。 滑膜炎・滑液包炎の診断基準 滑膜炎は、関節を包む滑膜に炎症が起こる病気です。滑液包炎は、関節のクッションの役割を果たす滑液包に炎症が起こる病気です。 これらは股関節に痛みや腫れ、熱感を引き起こします。 小児期には、一過性滑膜炎、化膿性股関節炎、ペルテス病などの股関節の病気がよく見られます。 これらの病気は似たような症状を示すことが多いです。特に小さいお子さんの場合、うまく症状を伝えられないため、診断が難しくなることがあります。 安静、消炎鎮痛剤、冷却などで治療します。重症の場合は、関節内にステロイド薬を注射することもあります。 とくに、細菌感染が原因となる化膿性股関節炎は、早期の診断が大切です。 脊椎や骨盤からの関連痛の可能性 股関節の痛みは、必ずしも股関節自体に問題があるとは限りません。 たとえ、他の場所に病変があっても、その痛みが股関節に広がり、あたかも股関節が痛むように感じることがあります。これが関連痛です。 そして、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった腰の病気が原因で、股関節だけでなく、腰から足にかけても痛みやしびれを感じることがあります。 筋肉の問題が引き起こす痛み 股関節周囲の筋肉のトラブルも、股関節痛の原因となります。 中殿筋、小殿筋、腸腰筋、大腿四頭筋といった足を動かすための筋肉に問題があると、股関節の痛みが出ます。動かす時に痛みが出て、該当する筋肉を外から押すと、痛みを感じます。 左だけ痛いときに考えられる生活習慣とクセ 日常生活での姿勢や動作のクセは、股関節に片側だけ負担をかける原因になりやすいです。以下では、とくに影響しやすい生活習慣やクセの例を解説します。 足を組む・片足重心など左右差のある姿勢 荷物の持ち方・座り方の偏り 歩き方・体幹バランスのアンバランス 足を組む・片足重心など左右差のある姿勢 足を組む習慣や片足に体重をかける立ち方は、股関節の左右バランスを崩す大きな原因の一つです。 左右どちらか一方に負担が集中すると、筋肉や靭帯、関節にかかるストレスが偏り、股関節の動きにも歪みが生じます。その結果、負担が大きい側の股関節だけに炎症や痛みが現れやすくなります。 とくにデスクワークで足を組む時間が長い場合や、立ち仕事で無意識に片足重心になる場合は注意が必要です。 荷物の持ち方・座り方の偏り 荷物の持ち方や座り方の偏りも、片側の股関節に慢性的な負担をかける原因です。 いつも同じ肩にバッグをかけたり、椅子に座るときに片方の臀部に体重をかけたりすると、骨盤や股関節の左右バランスが崩れやすくなります。 その結果、負担が集中した側の股関節に炎症や違和感が現れやすくなります。無意識に続けている日常の習慣が、長期的な痛みにつながることも少なくありません。 歩き方・体幹バランスのアンバランス 股関節の片側だけに痛みが出る背景には、歩行のクセや体幹バランスのアンバランスが関わることがあります。骨盤の傾きや左右差のある歩き方は、股関節にかかる負荷を偏らせる要因です。 さらに体の軸を支える筋肉が十分にはたらいていないと、重心を安定させるのが難しくなり、股関節への負担が増すことがあります。 このような習慣や筋力の偏りが積み重なることでも、慢性的な痛みにつながる場合があります。 股関節痛の鑑別診断方法 股関節の強い痛みは、まさに日常生活の大きな壁となって立ちはだかります。原因を見つけるには、鑑別診断が欠かせません。 股関節痛を引き起こす原因はさまざまで、その一つ一つを見極めることが、痛みからの解放への第一歩です。 症状に基づく鑑別ポイント 股関節痛を鑑別するには、痛みの種類や症状の特徴を細かく分析することが重要です。 単に「痛い」というだけでなく、安静時なのか、鈍いのか、キリキリ痛むなどといった情報を医師に伝えることで、原因を特定するための手がかりとなります。 変形性股関節症の初期症状は動作時に現れて、反対に、安静時痛があれば、変形が進行している可能性も考えられます。また股関節の動きが悪くなるという情報も大切です。 その他、発熱、腫れ、皮膚の発赤などの症状も、感染症や炎症性疾患の可能性を示唆するサインかもしれません。 左右の股関節痛の違い 左右どちらか一方の股関節だけが痛む場合、その原因を探る上で左右差は重要な手がかりとなります。 例えば、右側が痛い場合、右側に体重をかけることが多かったり、いつも同じ脚側の足を組む、といった習慣が原因かもしれません。 反対に、左側だけが痛む場合、内臓疾患が隠れている可能性も視野に入れる必要があります。 例えば、大腸憩室炎(大腸の壁にできた袋状のくぼみの炎症)や尿管結石などは、左側の股関節痛を引き起こすことが知られています。股関節痛の原因が股関節自体にあるとは限らないことを覚えておきましょう。 レントゲンやMRIで病気を精査して鑑別します。 痛みの部位ごとの症状 股関節痛といっても、痛い場所によって原因疾患が異なる場合があります。 足の付け根から太ももの前面にかけて痛みがある時は、変形性股関節症や大腿骨頭臼蓋インピンジメント症候群といった病気が疑われます。 変形性股関節症は、軟骨がすり減ることで発症し、後者の大腿骨頭臼蓋インピンジメント症候群は、骨頭に余分な骨が存在して、結果として股関節の動きが制限されることで発症します。 股関節の外側が痛む場合、大転子痛症候群や腸脛靭帯炎など筋肉の炎症の可能性が高くなります。 大転子痛症候群は大腿骨の大転子と呼ばれる部分に付着する筋肉や腱が炎症を起こす病気で、腸脛靭帯炎は太ももの外側を走る腸脛靭帯と呼ばれる組織が炎症を起こす病気です。 股関節の後側が痛む場合は、坐骨神経痛やハムストリングの損傷などが考えられます。ハムストリングは太ももの裏側にある筋肉群のことで、スポーツなどで損傷することがあります。どの部分が痛むのかを把握することが大切です。 股関節が左右どちらかだけ痛いときの治療法 股関節の片側だけに痛みがある場合は、症状の程度や原因に応じて以下の治療法が選択肢となります。 保存療法(薬物・理学療法) 手術療法 再生医療(PRP・幹細胞) 保存療法(薬物・理学療法) 保存療法は、股関節痛の症状を軽減するための基本的な治療法です。 保存療法には以下の種類があります。 痛み止めの内服(鎮痛薬・消炎鎮痛薬) 物理療法(温熱・低周波など) ストレッチや筋力強化 痛みや炎症をコントロールすることで日常生活の負担を軽減し、ストレッチや筋トレで関節周囲の柔軟性や筋力を保つことが可能です。 ただし、変形や損傷そのものを治す効果は限定的なため、根本的な改善には別の治療が必要になる場合があります。 手術療法 手術療法は、保存療法で十分な改善が得られない場合や症状が進行したケースで検討されます。主な手術療法の選択肢は以下の2つです。 人工関節置換術 骨切り術 人工関節置換術は損傷した関節を人工物に置き換え、痛みの軽減と可動域の回復を目指します。骨切り術は骨の角度を調整して関節への負荷を分散させる方法です。 症状や年齢、生活スタイルに応じて適切な手術を選択します。いずれも根本的な改善を目的とした手段のため、長期的な関節機能の維持につながる可能性があります。 再生医療(PRP・幹細胞) 再生医療は自分の細胞を用いて痛みの原因にアプローチすることを目的とした治療法で、PRP療法や脂肪由来の幹細胞治療が代表的な選択肢です。治療は注射や点滴で行うため、手術や入院を必要としません。 そのため、変形性股関節症などの疾患で手術に不安を感じている方は、再生医療による治療をご検討ください。 再生医療専門のリペアセルクリニックでは、専門スタッフがメール相談やオンラインカウンセリングで丁寧に症状を確認し、一人ひとりに合わせた治療法を提案しています。 股関節の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 お問い合わせ前に再生医療について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 股関節が左右どちらかだけ痛い女性はストレッチ等のセルフケアも大切 股関節片側の痛みには、自宅で行えるストレッチや筋力トレーニングが役立ちます。とくに股関節周囲の柔軟性を高めることで左右差の負担を減らせます。(文献2) ハムストリングスストレッチ:仰向けで片膝を胸に引き寄せ、もも裏を伸ばす 臀筋ストレッチ:座って片足を反対側にクロスし体をひねる 股関節外旋筋ストレッチ:床で足を開き前屈して外旋筋を伸ばす 大腿四頭筋ストレッチ:立った状態で片足を後ろに引き、太もも前を伸ばす 筋力トレーニング(スクワット):膝がつま先より前に出ないよう腰を落とし、臀筋と大腿四頭筋を鍛える 継続することで左右バランスが整い、日常生活での片側への負担を軽減しやすくなります。 放置してはいけない股関節痛のサイン 股関節の痛みが日常生活に影響する場合や安静時にも違和感が続く場合は、放置してはいけません。以下では、見逃すと症状が悪化しやすい股関節痛の兆候を解説します。 夜間痛・安静時痛が続く場合 歩行困難・可動域制限が進む場合 放散痛やしびれ・神経症状を伴う場合 これらの症状に該当する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 夜間痛・安静時痛が続く場合 夜間や安静時に股関節の痛みが続く場合は、関節の炎症や疾患の進行が考えられます。 寝ている間に痛みで目が覚める、安静にしても違和感や鈍い痛みが消えない場合は、早めに整形外科などの専門医を受診しましょう。 痛みを放置すると症状が悪化し、日常生活や歩行のしやすさにも影響が出る可能性があります。また、長引く痛みは関節の可動域低下や筋力低下を招くこともあり、注意が必要です。 歩行困難・可動域制限が進む場合 股関節の動きが制限され、痛みで歩くのが困難になる場合は、変形性股関節症や骨頭壊死が疑われます。 これは関節軟骨や骨の変形によって、正常な可動域が保てず、歩行時に片側の股関節に負荷が集中するためです。 歩行時に痛みや動かしにくさが増す場合は、早めに整形外科で診察を受けることが大切です。進行した症状は、日常生活の動作や生活の質にも影響を及ぼす恐れがあります。 放散痛やしびれ・神経症状を伴う場合 股関節の痛みが太ももや足先まで広がる、いわゆる放散痛がある場合は、単なる関節のトラブルではなく神経が関与している可能性が高まります。 とくに腰椎疾患や坐骨神経痛など、神経系の影響が疑われるケースです。痛みやしびれが進行すると歩行や立ち上がり、日常生活のさまざまな動作にも支障をきたすことがあります。 そのため、早めに整形外科で精密な検査を受け、原因を特定することが重要です。 まとめ|股関節が左右どちらかだけ痛む女性は症状に応じた治療を受けましょう 股関節が左右どちらかだけ痛む場合、原因は骨格構造や女性ホルモン、生活習慣の偏りなどさまざまです。悪化を防ぐためにも、痛みを放置せずに適切な診断を受けることが重要です。 自宅でのストレッチや筋力トレーニングも症状の軽減に役立ちますが、疾患が原因の場合は専門的な治療が必要となります。 股関節の痛みが疾患に起因する場合の治療法は、主に保存療法・手術・再生医療の3つです。 リペアセルクリニックでは手術を行わない再生医療として、幹細胞治療やPRP療法を提供しており、一人ひとりにあわせた治療方針を提案しています。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。股関節痛について気になる症状がある方は、ぜひ公式LINEで紹介している症例の確認や簡易オンライン診断をお試しください。 参考文献 (文献1) 変形性股関節症の最新治療|独立行政法人国立病院機構 東京医療センター (文献2) 股関節に症状のある方に|労働者健康安全機構
2025.02.07 -
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妊娠出産で骨盤がゆるむと、陰毛の生え際あたりにある恥骨に負荷がかかりやすいです。場合によっては、左右の恥骨をつなげている軟骨と靱帯が伸びて「恥骨結合離開」を起こします。 痛みをなんとかしたくても、育児中だとなかなか病院にも行けず、妊娠中や授乳中だと薬を飲んで良いか悩むこともあるでしょう。 この記事では恥骨結合離開の原因や症状、検査方法、治療方法について解説します。自宅でケアするポイントや、自然に治る可能性があるのかもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。 恥骨結合離開は妊娠・出産時に発症しやすい 恥骨結合離開は、恥骨結合部分が過度に広がる状態です。 そもそも恥骨結合は骨盤の一部分で、左右の恥骨が軟骨と靱帯でかたくつながっています。おへそからまっすぐ下がっていくと、陰毛の生え際のあたりにかたい骨が触れますが、恥骨結合があるのはこのあたりです。 妊娠・出産の際に、ホルモンの影響で靱帯がゆるんだり、恥骨結合に圧力がかかったりすると、恥骨結合が引き伸ばされて隙間が広がることがあります。この状態が恥骨結合離開で、痛みが起きたりうまく歩けなかったりといったさまざまな症状が現れます。 恥骨結合離開の関連症状| 恥骨結合炎について 恥骨結合離開と似ている症状に「恥骨結合炎」があります。恥骨結合炎とは、恥骨結合に負担がかかって炎症が起きている状態です。恥骨結合炎が悪化して恥骨結合離開に至るケースもあります。 恥骨結合離開は妊娠・出産に関連して起きることが多い一方、恥骨結合炎は、スポーツによって強い力が加わり発症することも少なくありません。手術の合併症として起こることもあります。 両者の違いをまとめると以下のとおりです。(文献1、文献2) 恥骨結合離開 恥骨結合炎 主な原因 ・妊娠に伴うホルモンバランスの変化 ・出産時の恥骨への圧迫 ・恥骨への運動ストレス ・恥骨結合にねじれる力がかかる ・恥骨に付着している筋肉により強く引っ張られる 恥骨結合の距離 10mm以上 変化がない、または10mmより短い 恥骨結合離開になる方の割合は多くありません。妊娠中や産後に恥骨が痛む場合は、恥骨結合炎の可能性もあります。 恥骨結合離開の原因 ここでは恥骨結合離開の原因について確認しましょう。原因を知ることで、どんな対策ができるかも見えてきます。 妊娠・出産によるホルモン分泌で骨盤が緩むため 妊娠中に増えた体重が恥骨結合へ余計な負荷をかけるため 妊娠中の運動不足により筋力が低下するため 出産時に恥骨周辺が圧迫されるため 一つずつ解説します。 妊娠・出産によるホルモン分泌で骨盤が緩むため 妊娠中はホルモンの一種であるエストロゲンとリラキシンが、妊娠の維持や出産の準備のために分泌され骨盤がゆるみます。骨盤がゆるむと恥骨結合に負荷がかかりやすくなり、痛めてしまうことは多いです。 骨盤が不安定ななかで、子どもを抱っこしたり無理な姿勢で育児したり、痛みを我慢して家事をしていると、恥骨結合や恥骨にくっついている筋肉に疲労がたまります。悪化すれば恥骨結合炎を発症したり、恥骨結合離開に進展したりする可能性もあります。 妊娠中に増えた体重が恥骨結合へ余計な負荷をかけるため 恥骨結合があるのは、上半身の重みがかかりやすい位置です。妊娠中に体重が増えると、それだけ恥骨結合の負担も増えます。 また、赤ちゃんの重みでも恥骨結合に負荷がかかります。骨盤および骨盤の周りの筋肉で子宮を支えているため、赤ちゃんが大きくなるほど痛みが出やすいです。 左右に傾いた姿勢や、前かがみの姿勢では恥骨への負荷が大きくなります。片足に体重を乗せる、足を組むなどの姿勢は避け、背筋を伸ばすと痛みが緩和されるでしょう。 妊娠中の運動不足により筋力が低下するため 身体が重くなる妊娠中は、歩くのも面倒になりがちです。しかし運動不足による筋力低下も、恥骨結合離開のリスクとなります。 とくに骨盤の下側を覆う骨盤底筋群や、脇腹から骨盤につながる腹横筋は、妊娠中にも骨盤を支えている大切な筋肉です。これらの筋力が弱まりすぎると、体重や赤ちゃんの重みが骨盤に集中し、恥骨結合にも過剰な負担がかかってしまいます。 対策として、お腹が大きい状態でできる運動には限りがありますが、無理のない範囲で筋力を維持しましょう。 出産時に恥骨周辺が圧迫されるため 出産時に骨盤が広がり、赤ちゃんの頭や体が出てくる際、恥骨周囲が直接圧迫されて恥骨結合離開となるケースがあります。 恥骨結合離開のリスクが高いとされるのは、初産の場合や双子の場合です。(文献1)また、小柄な方や骨盤がせまい方は、恥骨結合に無理な力がかかりやすく発症しやすいといわれます。赤ちゃんが標準より大きい場合も、出産時に骨盤が広がり過ぎて、恥骨結合が引き伸ばされてしまうことがあります。 妊娠時に筋力が弱まった骨盤まわりに、出産で大きな力がかかり恥骨結合離開となるケースが多いです。妊娠時から筋力維持のための運動や姿勢を意識し、対策しておきましょう。 恥骨結合離開の主な症状 ここでは恥骨結合離開の主な症状について説明します。 恥骨まわりや股関節が痛む 思ったように歩けない 痛くて横向きの寝方・寝返りができない 脚の内側に力が入らない 順番に確認していきましょう。 恥骨まわりや股関節が痛む 恥骨結合離開では、恥骨まわりに強い痛みを感じます。(文献1)じっとしていても痛む場合が多く、押すと痛みが増すのが特徴です。 また股関節や内ももには、恥骨から筋肉がつながっており、炎症が広がって痛みを感じることがあります。歩いたり前かがみになったりする動作、立ち上がり動作、太ももを閉じるような動作でとくに痛みが増すため、動作に注意しましょう。 思ったように歩けない 恥骨にはお腹や太ももの筋肉がくっついています。恥骨結合離開になると、痛みがひびいて筋肉を動かせなくなったり、骨盤が安定しなかったりして、いつものように歩けなくなります。 妊娠中に骨盤痛があると早く歩けないほか、片足を地面から離すのがつらく、短い歩幅でちょこちょこした歩き方になりやすいです。(文献3) 痛くて横向きの寝方・寝返りができない 横向きに寝ると骨盤の片側が圧迫され、恥骨結合にも負担がかかって痛みが強くなることがあります。どうしても横向きで寝るときは、足の間にクッションなどをはさんで骨盤がねじれないようにすると、痛みがやわらぎやすいです。 また、恥骨結合部分が痛くて寝返りができない方もいます。そもそも寝返りを打つときは、骨盤にくっついている腹筋や足の筋肉に力を入れて、体全体を連動させて動かします。そのとき、骨盤にも力が加わるため、恥骨結合が痛むのです。 脚の内側に力が入らない 脚を内側に閉じる筋肉は恥骨に付着しています。動かそうとすると恥骨が引っ張られて強い痛みが起き、うまく力が入りません。 そもそも恥骨結合がゆるんでいると、骨盤も不安定になっています。これにより筋肉の力がうまく伝わらないことも、脚に力が入らない一因です。 恥骨結合離開の検査方法 妊娠中や出産後に恥骨結合離開を疑うときの、診察と検査についてまとめました。主要な検査はレントゲン撮影です。妊娠・授乳中に行って良いのかも解説します。 触診 痛みの正確な位置や痛みの程度を確認するため、医師が患部を触って診察します。どのような動作で痛みが増すか、体重をかけたときはどうかなども確認します。 痛い部分を触られるのはつらいですが、正しい診断のために必要な診察です。少しの間がんばりましょう。 レントゲン・MRI検査 恥骨のあたりに痛みがある場合、骨の状態や炎症の具合をみる検査を行います。 レントゲン MRI レントゲンはかたい骨がうつりやすいため、恥骨がどれくらい離れているかが見やすく、恥骨結合離開の診断によく使われます。 MRIはやわらかい組織をうつすのが得意で、骨以外の靱帯や筋肉などの炎症も分かりやすいのが特徴の一つ。時間のかかる検査のため、より精密に検査したい場合に行われます。 妊娠中・授乳中にレントゲン・MRI検査はできる? レントゲン検査は放射線を照射するため、妊娠中や授乳中に検査しても良いのか不安ではないでしょうか。 レントゲン撮影は放射線被ばく量が少ないため、妊娠中も授乳中も可能です。(文献4) 少量の放射線は空気中や大地、食物に含まれており、わたしたちは日頃から少量の被ばくをうけています。自然の被ばく量とレントゲンの被ばく量を比較してみましょう。(文献5) 空気中から 大地から 宇宙から 食物から レントゲン(胸) 被ばく量 0.48mSv/年 0.33mSv/年 0.3mSv/年 0.99mSv/年 0.06mSv/回 レントゲンの被ばく量の少なさがわかります。 帝王切開などの手術の事前検査でレントゲンを撮影したり、身長の低い方・胎児が大きい場合に産道を赤ちゃんが通れるか骨盤計測するためにレントゲンを撮ったりする場合もあります。また、放射線は母乳に影響しないため授乳中も検査ができます。 安心してレントゲン検査を受けてください。 また、MRI検査は磁気を利用した検査で、通常のMRI検査は胎児に影響しません。 ただし、造影剤を用いるMRI検査は胎児に影響がでる報告があり妊娠中は行えません。妊婦さんにMRIが必要なときは、造影剤を使わず検査可能なのでご安心してください。 恥骨結合離開の治療法 妊娠中や育児中でもできる治療やケアを紹介します。妊娠中や授乳中は飲める薬が限られるので、自分でできるケア方法を知っておくと便利です。 痛み止め・炎症止めの薬の服用 患部の冷却 安静 骨盤ベルトの装着 ストレッチや散歩 病院での治療や自宅でできるケア方法をまとめたので、ぜひ参考にしてください。 痛み止め・炎症止めの薬の服用 恥骨結合離開の一般的な治療は、投薬や冷却、注射などです。妊娠中や授乳中は痛み止めが飲めないわけではありません。 しかし、種類が限られるため、なるべく受診して医師に処方してもらいましょう。妊娠中や授乳中に飲める痛み止め成分はアセトアミノフェンです。 アセトアミノフェンが主成分の市販薬もありますが、市販薬はほかの成分も含まれているため必ず薬局の薬剤師やかかりつけの医師に相談しましょう。 患部の冷却 痛みが強い・炎症が強い場合は冷やすのも効果的です。保冷剤などをタオルで巻き、冷やしてみてください。 市販の冷湿布は妊娠中・授乳中に使えない成分が含まれているものがあります。湿布の成分は皮膚を通してからだに吸収されるため、おうちにある湿布を安易に貼らないようにしましょう。 湿布を使いたい場合は薬剤師に相談するか、病院を受診して処方してもらいます。 安静 なるべく動かずに安静にすることも恥骨結合離開で大事な治療の一つです。 育児中は安静を保つことが難しい状況ですが、痛みが強い場合は無理をしないようにしましょう。 子どもが寝ているときになるべく一緒に休息をとったり、ネットスーパーを利用して外出を減らしたりするなど、できるだけ家で過ごす工夫をすることが大切です。 骨盤ベルトの装着 骨盤ベルトを日頃から使い、骨盤を安定させると痛みの軽減につながります。 妊娠中は出産に向けてすこしずつ骨盤がひらき、胎児が大きくなることで恥骨への負担が増えます。出産後も骨盤はすぐ元にもどらないため、ベルトで骨盤を安定させましょう。 骨盤ベルトは産婦人科のある病院や助産院で購入できる場合があるので、恥骨の痛みを感じたらはやめに助産師や医師に相談してください。 市販の骨盤ベルトを選ぶ場合は、「妊娠中から産後まで使える」と書いてあるなど、妊産婦向けの商品を選んでくださいね。 ストレッチや散歩 痛みが強い急性期は、痛み止めの内服や冷却をして安静にするのが基本ですが、痛みが慢性化している場合は軽い運動が効果的です。再発予防にもなるため、医師の診察で軽い運動の許可が出たら少しずつ行いましょう。 マタニティヨガや産後ヨガなど痛みの出ない範囲で行うと良いでしょう。ベビーカーを使い、お子さんとお散歩するのもおすすめです。 恥骨の痛みに効果的なストレッチは、以下の記事でも紹介しているので参考にしてください。 恥骨結合離開はいつ治る?治療しなくても治る可能性があるかも紹介 恥骨結合離開は、骨盤ベルトや安静によって6週間ほどで安定し始め10ヶ月時点で自覚症状が無く経過良好という報告があります。(文献1)また、恥骨結合離開を含む骨盤の痛みは、通常は産後3カ月以内に自然に回復するといわれています。(文献3) 一方で、恥骨結合の開きが大きかったり、恥骨結合以外の部分も傷ついていたりする場合は、なかなか改善が見られません。産後1〜2年が過ぎても10人に1人は骨盤痛が続いているとの報告もあり、個人差が大きいです。(文献3) 恥骨結合離開は、早めに治療すれば早めの改善が期待できます。症状が強ければ、我慢せず産婦人科で相談してください。必要に応じて整形外科を紹介してもらえるでしょう。 恥骨結合離開で現れる可能性のある後遺症 恥骨結合離開になった後、残る可能性のある症状について説明します。 まずは痛みです。恥骨周辺に慢性的な痛みが残る場合があるほか、歩くときや立ち上がるときに痛みを感じる方や、くしゃみや咳で痛みが響く方もいるでしょう。 次に運動機能への影響です。恥骨結合の不安定さが残れば、寝返りをしにくい、長い時間歩けないなどの症状が残るかもしれません。子どもを抱っこしたり重いものを持ったりするときに、不安定さを感じる場合もあります。 これらの症状は、次回の妊娠・出産で負荷が増したときに、再発のリスクが高まります。月経前に恥骨結合が緩んで痛みが出る場合や、更年期の体の変化にともなって痛みが出る場合もあるでしょう。 恥骨結合離開を予防するために産後の生活で気を付けること 産後は赤ちゃんの抱っこやお世話・授乳時に無理な姿勢をとりやすく、恥骨結合離開が悪化することもあります。 出産後、育児中の恥骨結合離開との付き合い方についてまとめました。 赤ちゃんの抱っこ 出産後は赤ちゃんを抱っこすることが多いですよね。 抱っこするときは前かがみの姿勢になりやすいですが、前かがみは恥骨に体重がかかるため負荷がかかります。床など低い位置から赤ちゃんを抱っこするときは、なるべく背筋をのばし、片膝を立てて抱き上げましょう。 また、抱き上げたあとも、左右どちらかに体重がかからないよう注意し、片方の腰の骨に赤ちゃんを乗せる抱き方もひかえます。 抱っこして歩くときはなるべく骨盤ベルトを使用してくださいね。 授乳などお世話の姿勢 授乳時も前かがみになりやすいため、なるべく前かがみにならないよう床ではなく椅子に座り、授乳クッションを使いましょう。 オムツ替えやお着換えなどのお世話も前かがみになりやすいですが、オムツ交換台を使用すると腰の負担が減ります。オムツ交換台は転落に十分注意しながら使ってみてください。 恥骨結合離開とうまくつきあって再発を予防しよう! ここまで、妊娠・出産における恥骨結合離開の原因や検査、ケアや注意点を紹介しました。 妊娠や出産で骨盤まわりは変化しますが、痛みがでやすいなかでの妊婦生活や育児は大変ですよね。どうしても姿勢がくずれてしまったり、慌ててしまって腰や恥骨に負荷がかかったりすることはよくあります。しかし、お母さんが健康でいることも大切なことです。 痛みがあるときはなるべく安静にし、しっかりケアしてください。痛みが強ければ、我慢せず病院へ行きましょう。また、痛みがひいても姿勢に気を付け、ヨガなどのストレッチや散歩を習慣にして再発を予防しましょう。 参考文献 (文献1) 高須厚ほか.「創外固定で治療した出産に伴う恥骨結合離開の1例」『中部日本整形外科災害外科学会雑誌』62(2), pp.379-380, 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/chubu/62/2/62_379/_article/-char/ja/ (最終アクセス:2025年3月19日) (文献2) 医学書院医療情報サービス「恥骨炎(恥骨結合炎)」医学書院, 2025年3月3日 https://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/reference/sei_04260-08/4260/sei_04260-08_a023z0005/ (最終アクセス:2025年3月19日) (文献3) 坂本飛鳥ほか.「妊娠・産後の骨盤痛が歩行に及ぼす影響:システマティックレビュー」『Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy』10(1), pp.1-8, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hppt/10/1/10_1/_pdf (最終アクセス:2025年3月19日) (文献4) 日本医学放射線学会ほか5機関「「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」についてのQ&A」平成23年6月8日 https://www.jsog.or.jp/news/pdf/Q&A_20110608.pdf (最終アクセス:2025年3月19日) (文献5) 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成26年度版)第1章 放射線の基礎知識と健康影響 8身の回りの放射線」環境省ホームページ https://www.env.go.jp/content/900413502.pdf (最終アクセス:2025年3月19日)
2024.11.13 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
「股関節唇損傷はどのくらいで治る?」 「早く治す方法はない?」 股関節唇損傷と診断された方、すでに治療中でも症状が長引いている方の中には、どのくらいで治るのか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。 結論、股関節唇損傷の治療期間は、保存療法で約3ヶ月、手術療法で約2〜3週間程度が目安となります。 しかし、術後のリハビリテーション期間や治療リスクから「手術はしたくない」という方も少なくありません。 当院リペアセルクリニックでは、手術せずに股関節唇損傷の改善を目指せる再生医療をご提供しています。 今まで、保存療法で改善が見られない場合には、手術による治療以外に選択肢がありませんでしたが、近年では再生医療による治療で手術せずに早期回復を目指せます。 「股関節唇損傷の痛みを早くなんとかしたい」「早く治したいけど手術はしたくない」という方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。 \再生医療に関する無料相談はこちら/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00) 股関節唇損傷はどのくらいで治るのか?治療期間の目安 股関節唇損傷と診断された際、どのくらいで治るか治療期間の目安を紹介します。 日常生活に復帰するまでの期間 スポーツ復帰までの期間 治療期間の目安を参考にして、症状回復へ向けた療養プランを立てましょう。 日常生活に復帰するまでの期間 個人差はあるものの、股関節唇損傷を発症した場合、日常生活への復帰は保存療法では約3カ月、手術療法では約2〜3週間になります。症状が軽度の場合は、数週間で回復する方もいます。 保存療法では、痛みを引き起こさない動作や日常生活の仕方を覚えるのが大切です。なかには日常生活に復帰してから痛みを再発したという声もあり、適切な動作の獲得が求められます。 一方、手術療法では手術・入院は3日ほどで、リハビリテーションを含めると2〜3週間必要です。手術後に関節の癒着や可動域制限を引き起こさないように、術後早期からリハビリテーションを実施するのが重要です。 スポーツ復帰までの期間 股関節唇損傷を発症した場合、競技復帰までの期間は競技レベルや怪我の重症度、実施した治療方法などで異なりますが、約3〜6ヶ月かかります。 スポーツ復帰は日常生活とは異なり、負荷のかかる動作や瞬発的な動きが必要になります。再発を防止するためにも、より股関節の安定化・柔軟性に着目した運動療法や競技特異的なリハビリテーションが必要です。 股関節唇損傷の主な治療法 股関節唇損傷の治療法には、保存療法と手術療法の選択肢があります。ど ちらを適用するかは、症状の重症度によって異なりますが、一般的には保存療法が選択されるケースがほとんどです。 保存療法にはさまざまな治療プランがあるため、症状を見ながら適切な治療を行います。 股関節唇損傷の主な治療法は、以下の通りです。 安静 薬物療法 リハビリ療法 注射治療 体外衝撃波治療 手術療法 再生医療 各治療法の特徴を以下で解説するので、参考にしてください。 安静 股関節唇損傷になったら、まずは股関節に負担がかからないようベッド上で過ごし症状の悪化を防ぐことが重要です。早期回復へ向けて日常動作を制限するのも、治療の1つとなります。 股関節唇損傷の痛みを誘発する日常動作は、以下の通りです。 しゃがみ込む あぐらをかく 深いソファや床に座る 車の乗り降りやいすから立ち上がる際は、手をそえたり手すりを使用したりして股関節への負担を軽減するのも効果的です。股関節唇損傷はできる限り股関節への負担を与えず安静に過ごすことで、痛みの軽減が期待できます。 薬物療法 薬物療法とは、薬を投与して症状の緩和を目指す治療法です。股関節唇損傷では、日常生活に支障をきたさないよう痛みや炎症を抑える薬物療法が行われます。 消炎鎮痛剤には、主にロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や湿布が処方されます。なお、薬物療法は症状の緩和を目的に行われる治療法で、リハビリ療法と併用するケースがほとんどです。 痛みが軽減される理由には薬物療法の影響が考えられるため、再発しないよう股関節への負担がかかりやすい動作は避けましょう。 リハビリ療法 股関節唇損傷では股関節の安定性や衝撃吸収能力が低下するため、筋トレや柔軟性を高めるストレッチが効果的です。誤った筋トレやストレッチは股関節への負担が増し、症状を悪化させる可能性があります。 そのため、関節唇損傷では理学療法士の指導を受けながら、適切な筋トレやストレッチを実施することが大切です。股関節唇損傷で実施される主なリハビリ療法は、以下の通りです。 股関節の安定性を高める筋トレ 外旋筋群の筋トレ 中殿筋・小殿筋の筋トレ 股関節の柔軟性を高めるストレッチ 殿部のストレッチ ハムストリングスのストレッチ 股関節周囲の筋力や柔軟性が向上すると、股関節唇損傷の予防にもつながります。関節唇損傷を発症した際はリハビリ療法で体幹機能や骨盤可動性を改善し、股関節の負担を減らしましょう。 注射治療 注射治療とは、股関節内への痛み止め注射により症状の回復を図る治療法です。痛みが強い場合、ヒアルロン酸注射やステロイド注射を実施し、症状の緩和を図ります。 ステロイド注射では直接股関節に注射し、抗炎症作用により痛みの改善を目指します。ただし、股関節唇損傷の症状が進行すると効き目を感じられなくなる場合もあるため注意が必要です。 また、ヒアルロン酸注射は、股関節の変形により摩擦が生じて炎症や痛みを発症した場合に実施します。潤滑性を高められるため症状の回復が見込めますが、定期的な注入が必要です。 体外衝撃波治療 体外衝撃波治療とは特殊な圧力波を患部に照射し、自然治癒力を高める治療法です。痛みや炎症の軽減が期待できるだけでなく、損傷した組織の修復促進効果が期待できます。 体外衝撃波治療は、大きく2種類に分類されます。 種類 治療の特徴 拡散型 広範囲に照射 集束型 患部にのみピンポイントで照射 股関節唇損傷では、ピンポイントで照射できる集束型を行うケースが一般的です。 手術療法 手術療法は、保存療法で痛みの緩和が見込めない場合に検討されます。 股関節唇損傷の主な手術は、以下の通りです。 手術 手術の特徴 股関節鏡視下手術 臀部から大腿の側面に穴を空け、内視鏡で観察しながら手術を行う 関節唇修復術と関節唇再建術の2つの術式が用いられる 大腿骨と下前腸骨棘の骨棘切除 先天的な形態異常により、大腿骨頭の変形や下前腸骨棘の骨棘がみられる場合は手術で骨を切除する 股関節鏡視下手術には2種類あります。 関節唇修復術 関節唇が十分残っている場合に実施 損傷している関節唇を寛骨臼から一旦はがし、正しい形にして固定する手術 関節唇再建術 関節唇が欠損している場合や縫合不能な断裂に実施 関節唇の除去後、大腿から腸脛靭帯を採取し、関節唇の代わりに固定する手術 手術療法は負担が大きいため、最終的な治療法として提案されるケースが一般的です。 再生医療 保存療法で症状の回復が見込めない場合は、再生医療を検討するのも手段の1つです。再生医療における治療法の1つとなる幹細胞治療では、採取した幹細胞を培養して股関節に注入します。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身から米粒2~3粒程度の脂肪を採取し、幹細胞を培養、投与します。幹細胞は冷凍せず、投与の度に採取するのが特徴です。 また、再生医療は手術・入院が不要です。手術を避けたい場合に適した治療法が再生医療といえます。 当院リペアセルクリニックでは、手術せずに股関節唇損傷の改善を目指せる再生医療をご提供しています。 「股関節唇損傷の痛みを早くなんとかしたい」「早く治したいけど手術はしたくない」という方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。 \再生医療に関する無料相談はこちら/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00) 手術療法と保存療法のメリット・デメリット 股関節唇損傷の手術療法と保存療法のメリットとデメリットは、以下の通りです。 メリット デメリット 手術療法 関節唇の修復・再建が可能 短期間での復帰が可能 約数十万円と高額な費用がかかる 身体への侵襲がある 保存療法 身体への侵襲がない 通院での治療が可能 復帰まで時間がかかる 関節唇自体が修復するわけではないため、再発の可能性がある 保存療法は、普通に生活するには問題ないケースがほとんどです。一方で、スポーツ選手など、今後も激しく股関節を使う方は手術療法での治療を検討するのも手段の1つになります。 股関節唇損傷の予防法 予防するためには股関節の柔軟性向上と安定性強化が必要になります。股関節への負担を減らすためには日常動作を改善したり、股関節周囲筋を鍛えたりして安定性を強化することがポイントです。 また、スポーツではあらゆる方向からさまざまな力が瞬間的に加わります。そのため、競技特異的なトレーニングにより股関節周囲筋を動作の中で活用する訓練を実施しましょう。 活動中に股関節が痛む際は、再発しないよう無理せずプレイを中断することが大切です。また、運動前にはストレッチやウォームアップを行い、終わったあとはクールダウンとストレッチを実施して股関節の負担をできる限り軽減させましょう。 まとめ|股関節唇損傷がどのくらいで治るか把握したうえで治療計画を立てよう 股関節唇損傷を発症した際、どれくらいで治るか不安を感じる方もいますが、日常生活への復帰は保存療法で3ヶ月ほどになります。 手術療法では2~3週間程度必要で、術後早期からリハビリテーションを実施することが大切です。 スポーツ復帰までは3~6ヶ月程度が目安になります。いずれも競技レベルや重症度などにより異なりますが、再発しないためにも医師と相談しながら症状回復へ向けた治療を行いましょう。 関節唇自体は自然治癒することはないため、手術により修復するか保存療法で痛みと炎症を抑える方法を実施します。手術を避けて治療を受けたい場合は、再生医療もご検討ください。 当院リペアセルクリニックでは、手術せずに股関節唇損傷の改善を目指せる再生医療をご提供しています。 今まで、保存療法で改善が見られない場合には、手術による治療以外に選択肢がありませんでしたが、近年では再生医療による治療で手術せずに早期回復を目指せます。 「股関節唇損傷の痛みを早くなんとかしたい」「早く治したいけど手術はしたくない」という方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。 \再生医療に関する無料相談はこちら/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00)
2024.10.11 -
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肩関節唇の損傷は、野球やテニスのような腕を上から振り下ろすオーバーヘッドスポーツで起こりやすい疾患です。 肩関節唇損傷から回復して競技が継続できるか、将来的に症状は改善するのか不安に思っている方はいるのではないでしょうか。適切な治療により症状は改善し、リハビリテーションにより肩関節の安定化を図ることで競技復帰も望めます。 この記事では、肩関節唇損傷のリハビリテーションや再発予防の方法について解説します。怪我から早く競技復帰したいと考えている方は、ぜひご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」では、肩関節への再生医療を行っています。肩関節唇損傷にも有効な場合がありますので、気になる方はお気軽に当院へご相談ください。 肩関節唇損傷とリハビリ方法 肩関節唇損傷とは、肩関節を安定させる機能をもつ関節唇の損傷です。原因となるのは、オーバーヘッドスポーツ、肩の過剰な使用、脱臼などです。とくに、野球やテニスなど投球動作を伴うスポーツをしている人は、上方の関節唇を損傷しやすい傾向があります。上方関節唇には上腕二頭筋につながる腱が付着しており、投球動作による負荷がかかりやすいのです。 肩関節唇損傷の主な症状は、肩の痛み、不安定感、可動域制限などです。安静により痛みは治まることが多いですが、肩の不安定感を軽減するにはリハビリテーションが欠かせません。具体的には関節可動域訓練や筋力トレーニング、肩に負担をかけない動作の習得などを行います。また、関節唇は再生しないため、重症例では手術が必要です。 肩関節唇損傷のタイプ 肩関節唇損傷は、大きく二つのタイプに分けられます。 一つめはBankert(バンカート)損傷です。前下方の関節唇を損傷するタイプで、肩関節の不安定さを感じやすいのが特徴です。肩関節の脱臼に伴って起きることも多く、繰り返す場合は手術が必要となります。(文献1) 二つめはSLAP(スラップ)損傷です。上方の関節唇を損傷するタイプで、オーバーヘッドスポーツで起きやすいです。Bankert損傷と比べ、リハビリテーションで症状が改善する場合も多い特徴があります。(文献2) SLAP損傷は、損傷の程度に応じてさらに4タイプに分類されます。(文献3) タイプⅠ 上方関節唇に毛羽立ちが見られるが、関節窩から剥がれてはいない タイプⅡ 上方関節唇および上腕二頭筋付着部が関節窩から剥がれている タイプⅢ 上方関節唇のバケツ柄断裂を認めるが、上腕二頭筋付着部は損傷していない タイプⅣ 上方関節唇のバケツ柄断裂が上腕二頭筋長頭腱にも及んでいる 肩関節唇損傷の検査方法 肩関節唇損傷の検査方法は、身体診察や画像検査です。身体診察では医師が患者様の肩を回したり、腕に力を入れてもらったりして、肩の痛みや引っかかり感が起きるかテストします。 画像検査はレントゲンやMRIを行います。レントゲン検査では、脱臼に伴う骨の欠けや、肩関節の不安定化による変形といった骨の異常を確認可能です。MRI検査では、レントゲンに写らない関節唇の剥離や断裂の状態、炎症の有無などをチェックします。 しかし、画像検査では診断が難しいケースも存在します。この場合は、関節鏡手術の際に関節唇を直接見て、初めて正確な診断が可能です。 肩関節唇損傷の治療方法 肩関節唇損傷の治療は、保存療法と手術療法に大別されます。 保存療法で最初に行うのは、痛みを抑えるための鎮痛薬の投与や安静の確保です。痛みが治まれば、肩関節の安定性を高めるためのリハビリテーションを行います。 手術療法では、主に関節鏡を用いて、関節唇の修復や再建を行います。術後は早期からのリハビリテーションが大切です。保存療法と手術療法のメリット・デメリットを以下にまとめました。 治療法 メリット デメリット 保存療法 身体への侵襲がない 通院での治療が可能 関節唇自体が治るわけではない 再発や脱臼の可能性がある 治療が長期間にわたる 手術療法 術後の回復が早(目安:約1カ月で日常生活に戻れる) 脱臼のリスクが低い 身体への侵襲がある 治療費が高額 (目安:約30万円) それぞれの具体的な治療内容を見ていきましょう。 保存療法 軽症例では保存療法を実施する場合が多いです。保存療法では、薬物療法やリハビリテーションを行います。具体的には以下で解説します。 薬物療法 発症直後で痛みが強い場合には、ロキソニンやボルタレンなどの消炎鎮痛薬の内服やヒアルロン酸の関節内注入を行い安静にします。それでも痛みが軽減しない場合はステロイドを注射します。そして、痛みや炎症が落ち着いてきたらリハビリテーションを開始する流れです。ただ、可動域訓練やリラクゼーションは拘縮予防のために多少痛みがあっても実施する場合があります。 リハビリテーション リハビリテーションでは、肩関節周囲のリラクゼーション・可動域の改善・筋力強化を行います。(文献4) 肩関節唇損傷では、肩後面の組織が硬い場合が多いため、後面の組織を中心にリラクゼーションを実施します。また、痛みにより筋肉が反射的に緊張しやすく、可動域制限になりやすいため可動域訓練が大切です。 さらに、肩関節の安定性を高めるために腱板筋群の筋力強化を行います。テニスや野球の投球動作では、腱板筋群に大きな負荷がかかるため、負荷に耐えられるように筋力強化が必要です。 手術療法 手術療法は、重症例や脱臼を繰り返してしまう方に適用されます。主流となっているのは全身麻酔下での関節鏡手術です。皮膚に小さな穴を3カ所ほど開け、関節鏡(カメラ)や手術器具を挿入して行います。 入院は数日〜10日間程度であり、術後2〜3週間はリハビリ以外では装具で肩関節を固定します。手術方法はさまざまですが、代表的な手術方法を2つ紹介します。 鏡視下デブリードマン 鏡視下デブリードマンは、関節唇の損傷部分を取り除く手術です。(文献5)関節鏡で確認しながら、関節唇の毛羽立った部分や、伸びたり剥がれたりして挟まれそうな部分を除去します。これにより、痛みや引っかかりといった症状の軽減が期待できます。 鏡視下関節唇修復術 鏡視下関節唇修復術は、アンカーと呼ばれる糸のついたビスを使って、関節唇を元の位置に縫い合わせる方法です。上腕骨頭への処置を同時に行うこともあり、以下の3つの術式が代表的です。(文献1)(文献6) 手術方法 内容 適応するケース バンカート法 アンカーを肩甲骨に打ち込み、関節唇を縫合 関節唇が剥がれている基本的なケース ブリストウ法 アンカーでの固定に加え、肩甲骨の一部を移植して縫合 より強い固定が必要なケース レンプリサージ法 上腕骨頭のへこみ部分にアンカーを打ち込み、関節包・腱板を縫い込む 脱臼により上腕骨頭にへこみができているケース(バンカート法と併用可能) 肩関節唇の損傷を治療した後の注意点 保存療法では、関節唇自体が治るわけではないため肩関節の緩さが少なからず残りやすいです。そのため、肩関節を過度に動かすと脱臼や再び症状を再発する可能性があり、肩のリハビリテーションをしっかり行うのが大切になります。 一方、手術療法では、範囲は狭いものの関節包など深部への侵襲があるため、組織が癒着して可動域が制限されないように術後早期からリハビリテーションが必要です。1カ月ほどリハビリを行うと通常の生活レベルに戻れますが、スポーツ復帰には3〜6カ月必要です。 肩関節唇損傷のリハビリ方法 肩関節唇損傷のリハビリテーションは、スポーツに復帰するために重要です。手術を受けた場合の復帰までの期間や、具体的なリハビリテーション内容を以下に紹介します。 1.術後~1カ月(炎症管理) 術後初期では、痛みや炎症が残存しているため、まずは安静や消炎鎮痛薬により改善を図ります。夜間に肩を動かさないように、術後2週間ほどは装具を着用します。ただ、癒着予防のためにリハビリは手術翌日から開始する場合が多いです。この時期にたくさん筋トレしてしまうとより悪化してしまうため運動量や負荷には注意です。 2.術後1カ月~2カ月(可動域向上・筋力強化) この時期では、とくにテニスや野球の投球動作で必要な肩関節外旋・外転可動域の向上を目指します。可動域が狭いと肩関節に負担がかかりやすいです。また、スポーツ復帰を目指す場合、全身の心肺機能を戻すのも大切なので、有酸素運動など持久力トレーニングも実施します。肩の筋力トレーニングは低負荷から実施し、段階的に難易度を上げていきましょう。 3.術後2カ月~3カ月(動作練習) 筋力トレーニングの負荷を上げつつ、スポーツに特化した動作練習を行っていきます。スポーツ中には、予測不能な外力が加わる場合や瞬発的な動作が多いため、素早い動作にも対応できる身体づくりが大切です。とくに、受傷のきっかけとなった動作を入念にチェックし、再発を防止しましょう。 肩関節唇損傷の再発を予防する方法 肩関節唇損傷の再発を予防するには、腱板筋群のトレーニングや肩後面のストレッチが大切です。(文献4) 以下に具体的な内容を解説します。 腱板筋群のトレーニング 腱板筋群は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋で構成されており、肩関節の安定化に必須の筋群です。投球動作の繰り返しにより、腱板筋群は大きなストレスを受けるため、これらの筋群が弱化しやすくなります。そのため、練習時間の制限や投球動作の回数制限を設けて練習しましょう。具体的な腱板筋群のトレーニングを以下に記載します。 <やり方> イスに座り、わきをしめて肘を90度に曲げる わきをしめたまま腕を外に開く 負荷はチューブなどを用いて行い、低負荷・高回数で実施します。腱板筋は小さい筋肉であり、負荷が高いと間違った動作になってしまうため気をつけましょう。 肩後面のストレッチ テニスや野球などの投球動作を頻繁に行うスポーツでは、肩後面の棘下筋・大円筋・小円筋・三角筋が硬くなりやすいです。すると、上腕骨頭の動きがぎこちなくなり、腱板筋群が作用しづらくなります。結果、肩関節への負担が増加します。そのため、肩後面のストレッチにより肩の滑らかな動きを獲得するのが大切です。具体的なストレッチの方法を以下に記載します。 <やり方> 両手の甲を脇腹につけます 肘を前方に向けるように閉じていきます 肩の後面が伸びているのを意識します 肩をすくめたり体幹だけを回したりしないように、肩後面が伸張されているのを意識して実施しましょう。 肩関節唇を損傷した際の治療・リハビリ・再発防止に関するQ&A ここでは肩関節唇損傷に関するよくある質問に回答します。 肩関節唇を損傷した際に放置するのはNG? 痛みや違和感を自己判断で放置するのはやめましょう。痛いからと安静にしすぎると、肩関節がだんだん固まってしまうことがあります(拘縮)。安静が必要な場合もある一方、多少の痛みがあっても可動域訓練やリラクゼーションを行った方が良い場合もあるのです。 また、痛みが落ち着いたからといって以前と同じように肩を使えば、再び関節唇を損傷したり、肩関節を脱臼したりするかもしれません。必ず医師の判断のもとで治療を受けましょう。 肩関節唇損傷のリハビリ期間はどれくらい必要ですか? 手術を受けた場合のリハビリ期間は、日常生活レベルに戻るまでに1カ月、スポーツへの復帰までに3〜6カ月が目安です。 また手術をせずに保存療法を行う場合は、スポーツに復帰するまで短くて2〜3カ月、長くて6カ月ほどが目安です。ただし、保存療法でよくならない場合は、手術が必要になることもあります。 なお、実際のリハビリ期間には個人差があります。リハビリが不十分だと再発の可能性が高まるので、焦らず進めていきましょう。 肩関節の手術後に痛みが出た場合は再生医療を適用できますか? 手術の種類によって異なりますが、関節唇損傷や腱板断裂の手術であれば、術後に再生医療を適用可能です。また、腱板断裂で縫合術を受けた場合は、術後に幹細胞治療を受けることで再断裂を予防できます。 再生医療とは、患者様から採取した幹細胞や血小板を活用する治療法の一つです。 幹細胞には、さまざまな細胞に分化する性質があります。また、血小板には止血に関与するほか、成長因子を含んでいることが知られています。 競技を継続できるように肩関節のケアを行いましょう 肩関節唇損傷は、テニスや野球などオーバーヘッドスポーツで発症しやすい疾患です。関節唇は、肩の安定化に欠かせない組織であり、再生もしないためリハビリテーションによる訓練が大切になります。 また、投球フォームによっては肩後面の組織が硬くなりやすいことや腱板筋群が弱化しやすいため、入念にトレーニングやストレッチを行います。スポーツの実施前後で行うことで肩の柔軟性や筋力を保てるでしょう。 今回ご紹介したストレッチや筋力トレーニングにより、可動域向上・筋力向上を目指せるため、再発予防のためにも毎日ケアしましょう。 なお、肩関節唇損傷は再生医療で治療できる場合があります。再生医療は手術の必要がなく、患者様への負担が少ない治療方法です。気になる方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター「反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)」霞ヶ浦医療センターホームページhttps://kasumigaura.hosp.go.jp/section/seikei_hanpukukatakansetudakyu.html(最終アクセス:2025年2月20日) (文献2) 独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター「投球障害肩(とうきゅうしょうがいかた)~主に思春期以降~」霞ヶ浦医療センターホームページhttps://kasumigaura.hosp.go.jp/section/seikei_toukyusyougaikata.html(最終アクセス:2025年2月20日) (文献3) Zahab S. Ahsan, et al. (2016). The Snyder Classification of Superior Labrum Anterior and Posterior (SLAP) Lesions. Clinical Orthopaedics and Related Research, 474(9), 2075–2078. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4965366/(最終アクセス:2025年2月20日) (文献4) 原正文.「投球障害肩のリハビリテーション治療」『日本リハビリテーション医学会誌』55(6), pp.495-501, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/55/6/55_55.495/_pdf(最終アクセス:2025年2月20日) (文献5) 保刈成ほか.「上方関節唇損傷に対する鏡視下デブリードマンの術後成績の検討」『肩関節』21(2), pp.321-325, 1997年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/21/2/21_321/_pdf(最終アクセス:2025年2月20日) (文献6) 地方独立行政法人 芦屋中央病院「反復性肩関節脱臼に対する鏡視下手術」芦屋中央病院ホームページ https://www.ashiya-central-hospital.jp/wp-content/uploads/2019/03/6cfeb048e18c00d509db2dac9e315fba.pdf(最終アクセス:2025年2月20日)
2024.10.09 -
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大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。 また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? 痛みの改善方法が分からない 症状を悪化させる原因を知りたい ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、 股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状 です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は下記4つです。 転倒やスポーツなどによる外傷 大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 関節リウマチや痛風などの疾患 外傷や内部の炎症性疾患が大転子滑液包炎を引き起こす要因です。 現在、股関節の疾患に対する治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」 が注目されています。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の症状 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 下記の記事では、股関節の疾患についてまとめています。ほかの病気もチェックしたい方は、あわせてご覧ください。 大転子滑液包炎が発症する原因3つ 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の3つがあります。 大転子を動かす激しい運動 長時間の立ち仕事 肥満体型 それぞれ以下で詳しく解説します。 大転子を動かす激しい運動 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 階段の上り下りや、登山といった関節の動きが活発な動作も、大転子滑液包に負担をかけるため、大転子滑液包炎になる要因のひとつです。 長時間の立ち仕事 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 肥満体型 生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 肥満傾向の方は、体重を少し落とすだけでも痛みや症状の進行を抑えられるでしょう。 また、大転子滑液包炎は「PRP療法(再生医療) 」でも治療できます。PRP療法(再生医療)とは、血液に含まれる血小板の力を利用して傷ついた組織を修復する医療技術です。身体に負担の少ない治療法として、今注目されています。 「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎はどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療専門の『 リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。実際の治療例をお見せしながら、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 大転子滑液包炎の診断方法 大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 問診 身体所見の確認 MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の3つです。 保存的治療 手術療法 PRP療法(再生医療) それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 PRP療法(再生医療) 「PRP療法(再生医療)」とは、患者さまの血液に含まれる血小板の治癒力を利用して、傷ついた組織を修復する医療技術です。 注射を打つだけなので、日常生活や仕事への影響はありません。普段どおりの生活を送りながら、早期回復を期待できます。 弊社『リペアセルクリニック』は、再生医療専門のクリニックです。国内での症例数は10,000例以上に及び、多くの患者さんの治療に携わってきました。 大転子滑液包炎は再生医療の治療対象です。弊社では無料相談を受け付けていますので、詳しい治療法や効果を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の予防法 大転子滑液包炎の予防法を解説します。主な予防法は以下の3つです。 ストレッチ 適度な運動 規則正しい生活習慣 順番に見ていきましょう。 ストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、 特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めること が重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 適度な運動 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 スクワット 足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 規則正しい生活習慣 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 定期的な運動習慣 バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子に関するよくある質問 最後に大転子に関するよくある質問と回答をまとめます。 大転子が痛いと感じたら何科を受診すればいい? 整形外科を受診しましょう。痛みを放置すると症状が慢性化するリスクがあるので、股関節周りに痛みや違和感を感じたら、なるべく早く病院を受診するのがおすすめです。 股関節が突然痛くなり歩けなくなりました。考えられる原因はなんでしょうか? 歩けないほど股関節に痛みが出る原因として考えられるのは、下記の外傷や疾患です。 骨折 大転子滑液包炎 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、骨の変形によって痛みがともなう疾患です。変形性股関節症も「再生医療 」の治療対象です。 まとめ|大転子が痛いと感じたら大転子滑液包炎の可能性あり 大転子滑液包炎は、ランニングやサイクリング、階段の上り下りなど、趣味のスポーツや日常の動作を繰り返す過程で発症します。 症状が悪化すると、歩いたり、横を向いて寝たりする際に強い痛みを感じます。症状の悪化を防ぐためにも、大転子に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。 現在、大転子滑液包炎の治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
2024.07.18 -
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「人工股関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」 「痛みの原因がわからず不安」 人工股関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。 そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。 そこで今回は、人工股関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。 人工股関節置換術後の痛みが生じる原因 まず人工股関節置換術後に痛みが生じるのは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる状態です。 人工股関節置換術後、痛みは多くの場合数週間から3カ月程度で回復します。 しかし、痛みが気になる方や長引いている方は、主に以下の原因から生じている可能性があります。 手術による損傷 リハビリ不足 感染(合併症) 人工関節の耐久性の問題 それぞれ詳しく解説していきます。 原因1:手術による損傷 人工股関節置換術後に生じる痛みの原因は、手術による損傷が代表的な理由です。 人工股関節置換術は、患部の股関節の骨を削る工程があるため、体への負担がかかる治療法です。骨を削るだけでなく、人工関節の埋め込みに伴い、筋肉や血管などを傷つけてしまいます。 手術をしている最中に神経が引っ張られて損傷し、足の感覚が鈍くなる症例も認められています。 多くの場合、手術による損傷は一時的で回復する傾向にはありますが、長引いている方は早めに担当医師に相談しましょう。 以下の記事では、人工関節における年代別のリスクも取り上げているので、あわせてご覧ください。 原因2:リハビリ不足 人工股関節置換術後に痛みが生じる原因には、リハビリ不足もあげられます。人工股関節置換術後のリハビリは、関節の動きを改善するだけでなく、筋力強化が主な目的です。 リハビリが不足していると、筋肉や靭帯への負荷がかかります。無理に歩くと人工関節周辺にかかった負担が炎症につながってしまうのです。逆に早く痛みを改善しようと、無理なリハビリをおこなってしまうのも注意が必要です。 原因3:感染(合併症) 人工股関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。 痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続いたり、強くなったりする方は注意が必要です。 感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感、発熱、倦怠感を伴う場合もあります。 なお、以下の危険因子(特定の病気や状態を引き起こす可能性がある要因)がある方は感染症にかかるリスクが高いため、注意してください 肥満 糖尿病 関節リウマチ 心血管障害など 人工股関節置換術後に痛みだけでなく、感染を疑わせる症状を伴う場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 高齢者の方は、危険因子以外に注意しておきたい手術のリスクがあるため、以下の記事もあわせてご覧ください。 原因4:人工関節の耐久性の問題 人工関節の耐久性も術後に痛みを感じる原因の1つです。 人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。しかし、日常生活において過度に負担をかけていると、耐久性に問題が生じてしまいます。 術後は3カ月、6カ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。 人工関節への負担を抑えるために、杖のような生活支援用具を使用した生活がおすすめです。 さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどの実施をおすすめします。 ジョギングや器械体操、シングルテニスなどを含め、走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。 人工股関節置換術後の注意点について以下の記事で詳しく解説しているため、合わせてご覧ください。 人工股関節置換術後の痛みに対処する方法 人工股関節置換術後の痛みが気になる方には、以下の方法で対処しています。 薬物療法 リハビリ 再手術 それぞれ詳しく解説していきます。 薬物療法 人工股関節置換術後の痛みに対処するため、まずおこなわれるのが薬物療法です。 主に、炎症を抑えるためにロキソニンのような痛み止めを処方します。ただし、薬物療法の場合は根本的な解決を目的にしているわけではないため注意してください。 また、薬によっては胃腸障害や眠気などの副作用が伴うケースがあります。長期間使用すると、効果が薄れてしまうため、あくまで一時的な対処と覚えておきましょう。 リハビリ 人工股関節置換術後の痛みには、適切なリハビリも重要です。 効果的なリハビリは、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。 具体例をあげると、以下のようなリハビリを実施しています。 種類 内容例 関節可動域訓練 下肢の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ 筋力増強訓練 踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 歩行練習 平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き バランス訓練 足踏み運動 日常生活動作の訓練 階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 複数の運動を組み合わせ、患者様の状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。 再手術 人工股関節置換術後の痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。 インプラントの緩み 感染 関節の不安定性 周囲組織の炎症や損傷 診断により原因を特定し、必要に応じて再手術を検討します。 再手術では、緩んだインプラントの交換や、感染組織の除去、位置の修正などを行うことで、多くの場合症状の改善が期待できます。一方で、回復そのものに時間がかかってしまう点には注意が必要です。 人工股関節置換術前の再生医療も1つの選択肢 人工股関節置換術後の痛みは、薬物療法・リハビリ・再手術で対処しますが、そもそも術後の痛みを発症させないために、人工股関節置換前の再生医療も選択肢の1つとなります。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。手術と比べて体への負担が少なく、軟骨の再生や炎症の軽減により、痛みの改善が期待できます。 手術を受けるには入院期間や回復期間が必要で、手術に伴うリスクも考慮する必要があります。対して再生医療は、そのような手術のリスクを避けながら、痛みの軽減と関節機能の改善を目指す新しい治療選択肢です。 再生医療について、より詳しい情報は以下のページでご紹介しています。ぜひご覧ください。 ※再生医療は人工関節置換術後に実施できません。あくまでも人工関節置換術前の選択肢としてご考慮ください。 まとめ・人工股関節置換術後の痛みが気になったら早めの受診を! 今回は人工股関節置換術後の痛みを感じる原因や対処法について解説しました。 人工股関節置換術後の痛みの原因として、手術による損傷やリハビリ不足などがあげられます。 痛みを早く解決するために無理なリハビリをするのはおすすめできません。症状の改善には、専門医による適切な指導のもとでリハビリを進めることが大切です。 また、人工関節の不安定性や炎症が痛みの原因の場合は、再手術が検討されます。「手術を避けたい」「人工股関節置換術後の痛みを避けたい」とお考えの方は、人工股関節置換術前の再生医療も1つの選択肢になることも覚えておきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では幹細胞を用いた再生医療を行っています。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、ぜひお気軽にご相談ください。 人工股関節置換術後の痛みの原因が知りたい方からのよくある質問 そもそも人工股関節置換術後の痛みはいつまで続くの? 人工股関節置換術後の痛みは、手術した日とその翌日をピークに、1週間程度続きます。痛みは次第に回復し、手術後に処方された痛み止めを徐々に減らしていきます。 術後のつっぱり感も多くの場合、半年程度で回復しますが、長期的な健康維持が大切です。 なお、仕事の完全復帰や旅行、スポーツなどを考えている方は6カ月〜1年程度と考えてください。 無理をしてしまうと、痛みが続く期間が伸びる可能性があるため、定期的な受診をおすすめします。 以下の記事では人工関節置換術について、知っておきたいポイントを網羅的に解説しています。 人工股関節置換術後にやってはいけないことは? 人工股関節置換術後、やってはいけない姿勢や動きがあります。 たとえば、横座りやあぐら、足組みなどがあげられます。和式トイレの使用や前傾姿勢も、脱臼の可能性があるので、控えてください。 また、人工股関節置換術後は適度な運動が推奨されていますが、野球やテニスのような関節の動きが多いスポーツは避けましょう。 日常生活でも階段の利用は控え、立ちっぱなしの時間が長くならないよう、座ってできる作業をおすすめします。 転倒にも注意が必要なため、術後はとくに杖やストックを使って歩くのがおすすめです。 ※上記はあくまでも人工股関節置換術後の禁忌行為です。術式によってやってはいけないことは異なります。 自宅でできる予防法はある? 自宅で簡単に行える予防法は、以下のようなエクササイズです。 エクササイズ 内容 目的 足関節ポンプ運動 仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する 浮腫の軽減 ストレートレッグレイズ 手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する 太もも前面の筋力強化 膝の屈曲・伸展運動 椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする 太もも前面の筋力強化 上記のエクササイズを毎日行うと、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。 しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。 なお、エクササイズだけでなく、日頃の感染予防も大切です。手術した部位を清潔に保てるよう、定期的な受診や抗菌薬の服用が主な予防法です。 発熱や腫れ、痛みが生じた場合は速やかに担当医に相談してください。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。
2024.07.17 -
- 股関節、その他疾患
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シンスプリントは、主にランナーやアスリートの間でみられる症状で、すねに痛みを引き起こす状態です。 オーバートレーニングや不適切な運動などが原因で、すねの骨に過度のストレスがかかると周りにある骨膜が炎症を起こします。 すねの痛みを抱えている方のなかには、「シンスプリントにストレッチは効果的なのか」「どのような治療法があるか」など、疑問を持っている方もいるでしょう。 今回は、シンスプリントに効くストレッチ方法のほか、治療法や具体的なリハビリテーションの方法を解説します。スポーツへの復帰時期についても詳しく解説するので、健康的な身体を維持するための参考にしてください。 シンスプリントの予防にはストレッチが効果的 シンスプリントの予防には、ストレッチをして筋肉や腱を柔軟に保つことが大切です。 シンスプリントは、運動時にすねの筋肉や腱に負担がかかることによって、痛みを引き起こします。初期症状の場合は主に運動中に痛みが現れ、重症化すると立っているときや安静時にも痛みを感じるようになります。 シンスプリントには、とくにふくらはぎや足裏、足首などのストレッチが効果的です。筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めることで、筋肉の疲労が溜まりにくくなり、シンスプリントの発生リスクを減らせます。 シンスプリントの原因について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。 シンスプリントに効くストレッチ方法 シンスプリントに効くストレッチ方法として、以下の5つが挙げられます。 ふくらはぎ(ヒラメ筋・腓腹筋・後脛骨筋)のストレッチ 脛(すね)のストレッチ 足裏をほぐすストレッチ 足首まわりのストレッチ 股関節のストレッチ 以下で、それぞれのストレッチ方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 ふくらはぎ(ヒラメ筋・腓腹筋・後脛骨筋)のストレッチ ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチは、シンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。 ヒラメ筋のストレッチ方法は、アキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばします。この時、後ろ足の膝は曲げておこなうことが大切です。 このとき、後ろ足の膝を伸ばしておこなってしまうと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまうので注意してください。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチすると効果的です。 すねのストレッチ すねのストレッチも、シンスプリントの予防につながります。すねの前側に位置している前脛骨筋(ぜんけいこっきん)は、長時間の歩行などで硬くなりやすい筋肉です。 前脛骨筋のストレッチ方法は、まず椅子に座って片足を椅子の横に出します。出した足を少し後ろに引き、足の甲が床に触れる状態にします。そして、足の甲を床に押しつけるように体重をかけながら、ゆっくりと30秒ほどキープしてください。 片足ずつ、両足の前脛骨筋を伸ばしましょう。前脛骨筋をほぐすとシンスプリントによるすねの痛みを軽減できます。 足裏をほぐすストレッチ シンスプリントの予防には、足裏をほぐすストレッチも効果的です。足裏の筋肉が硬くなると、歩行時やランニング時に足首やすねに負担がかかりやすくなります。 足裏をほぐすためには、テニスボールのような硬めのボールを使用する方法がおすすめです。テニスボールを床に置き、足裏をボールの上に乗せて、体重をかけながら前後に転がします。両足とも1回40秒を目安におこないましょう。 体重を乗せた際、足裏に強い痛みが出る場合は、ストレッチを中止してください。 足首まわりのストレッチ 足首の筋肉や腱をほぐすと、足元の安定性が高まり、シンスプリントの予防につながります。 足首まわりのストレッチ方法は、踏み台や低めの椅子にかかとが出るように片足を置きます。そのまま、かかと側に体重をゆっくりとかけ、足首の後ろ側(アキレス腱周辺)が伸びる感覚を確認してください。1回40秒を目安に、反対の足も同様にストレッチしましょう。 なお、転倒しないように手すりや壁に手をかけておこなってください。 股関節のストレッチ シンスプリントの予防には、ストレッチポールを使った股関節のエクササイズも効果的です。股関節の柔軟性が低下すると、下半身全体に負担がかかりやすくなり、シンスプリントの痛みの原因になります。 股関節まわりの柔軟性を高める方法として、ストレッチポールを使った骨盤スライド運動があります。仰向けに寝転がり、両膝を曲げて足を床につけてください。骨盤を左右に揺らすように動かすと、骨盤の位置を整えて股関節の安定につながります。 腰が床と水平に動くように意識しながら、10〜20回ほど左右にスライドします。股関節の動きが良くなると、シンスプリントの予防につながります。 シンスプリントの治療法 シンスプリントの原因はオーバートレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などであるため、症状に対する適切な治療が不可欠です。 シンスプリントの治療法は、痛みの程度に応じて以下の治療をおこないます。 保存療法 薬物療法による疼痛緩和 リハビリテーション 再生医療 それぞれ詳しく解説します。 保存療法 シンスプリントの治療は、保存療法が一般的です。シンスプリントによって痛みや腫れが現れている場合は、安静にして、疲労した筋肉や骨を休める必要があります。痛みを我慢して運動を続けていると、症状が悪化したり、最悪の場合は疲労骨折したりする可能性がある点に注意してください。 また、安静にすると同時にアイシングをして痛い部分を氷などで冷やすことも重要です。アイシングすると、腫れを抑えられるほか、痛みの軽減も期待できます。 ただし、アイシングする際は、以下に注意しましょう。 氷を袋に入れて患部を冷やす場合は、タオルを間に挟む 1回に冷やす時間は15~20分程度にする アイシングの際、短時間で急激に冷やそうとタオルを挟まず長時間あて続けると、凍傷になる可能性があります。 なお、1回アイシングをした後は、時間を空けてから再度行うことができます。特に怪我や炎症の初期(24〜48時間以内)は、定期的なアイシングが効果的です。 薬物療法 シンスプリントの治療法の一つが、薬物療法です。 薬物療法は主に疼痛緩和を目的におこなわれます。痛みが強く日常生活に支障をきたす場合には、整形外科で医師に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用を相談してみましょう。 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に限らず、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもと用法用量を守って使用する必要があります。 しかし、薬物療法は痛みを一時的に和らげるためのもので、腫れや炎症といった根本的な問題が解決するわけではありません。 なぜなら、シンスプリントの原因には、過度なトレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などが関与しているからです。このため、薬物療法に併せて原因に対する根本治療も重要です。 リハビリテーション 薬物療法と並行して、痛みの予防や再発防止に向けたリハビリテーションに取り組むことも大切です。シンスプリントに対するリハビリテーションには、主に以下の目的があります。 筋肉や関節の柔軟性の向上 筋力強化 シンスプリントの痛み軽減・再発防止 リハビリテーションは自宅で取り組めるメニューから、歩行姿勢やランニングフォームの改善までさまざまです。 歩行姿勢やランニングフォームを改善する際は、理学療法士をはじめとする専門家の指導のもと、正しい運動方法を習得する必要があります。 また、リハビリテーションは正しい方法でおこなわなければ、痛みが増悪する可能性がある点にも注意してください。 再生医療 保存療法で症状が改善しない場合は、再生医療も治療選択肢として挙げられます。 再生医療では、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。 再生医療は手術を必要とせず、スポーツによる怪我に対しても実施されています。 スポーツ外傷に対する再生医療については、以下のページで詳しく解説しています。 シンスプリントのリハビリテーションに取り組むポイント シンスプリントのリハビリテーションに取り組むポイントとして、以下の2つが挙げられます。 筋肉強化を図る テーピングやサポーターを活用する それぞれ詳しく見ていきましょう。 筋肉強化を図る シンスプリントにはストレッチも効果的ですが、リハビリテーションにおいては筋力強化を図ることも大切です。 ここでは、ふくらはぎの筋力トレーニングと足指でタオルを引き寄せる運動について解説します。 ふくらはぎの筋力トレーニング ふくらはぎの筋力トレーニングには、ゴムチューブを用いた低負荷の運動がおすすめです。まず足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。 最初は低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると、筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 足指でタオルを引き寄せるトレーニング 足指でタオルを引き寄せるトレーニングは、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でつまんだり離したりを繰り返して、手前に引き寄せる運動です。 この運動では、すねの内側深部にある長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)と長趾屈筋(ちょうしくっきん)が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 テーピングやインソールを活用する 筋力トレーニングのほかに、テーピングやインソールを使用して痛みの軽減を図ることも可能です。 テーピングは、筋肉や靭帯に適度な圧力を加えて安定化させ、痛みの軽減や再発防止といった効果があります。 とくに、ランニングやスポーツをする際の足への負担を軽減するのに役立つため、スポーツ選手にとってテーピングは欠かせない存在です。 シンスプリントに対するテーピング(伸縮性)の巻き方は、以下の通りです。 1本目:外くるぶしから足裏を通って引っ張り上げながら膝下まで張る 2本目:1本目と同様に、数cmずらして貼る 3本目:痛い部分の上をテーピングで1周巻く(大体すね下1/3付近) 4本目:数cmずらして1本目と同様に1周巻く また、自分の足に合ったインソール(中敷)の使用もシンスプリントの痛みの予防に効果的です。足のアーチが崩れるとバランスをとる際に筋肉に余計な負担がかかるため、アーチをしっかり支えるインソールが重要になります。 足のアーチを支えるインソールは数千円と高額ですが、痛みの予防につながるほか、自分の足を守るための装具であると考えると、決して高い買い物ではありません。 ただし、テーピングやインソールの活用だけでシンスプリントが完治するわけではないので注意しましょう。 シンスプリント発症後にスポーツ活動を再開するタイミング シンスプリントがある場合の日常生活での注意点やスポーツ活動を再開するタイミングについては、以下に示す痛みの段階(Walsh分類)を参考にするとよいでしょう。 分類 内容 Stage 1 運動後にのみ疼痛あり Stage 2 運動中に疼痛あるが、スポーツ活動に支障なし Stage 3 運動中に疼痛あり、スポーツ活動支障あり Stage 4 安静時にも慢性的な持続する疼痛あり Stage1〜3の場合、痛みによる日常生活への影響は少ないケースがほとんどです。しかし、Stage4の場合は痛みの増悪を防ぐためにも、安静にしなければいけません。 また、スポーツ活動を再開するタイミングの目安は以下の通りです。 症状が軽度の場合:約2週間 症状が重度の場合:2〜3カ月 ただし、いきなり激しい運動をすると、再度シンスプリントを発症する可能性もあるため、初めはウォーキングなど低負荷な運動から始めましょう。 疲労骨折後のスポーツ活動再開のタイミングについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
2024.07.11 -
- 股関節、その他疾患
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股関節唇損傷は、骨盤と太ももの骨が接続する股関節の部分で、関節のふちを囲むクッションのような役割をする「股関節唇(こかんせつしん)」という組織が裂けたり傷ついたりすることで起こる病気です。 安静に過ごす保存治療により症状緩和が期待できますが、股関節の可動域が狭くなってしまう可能性があります。可動域が狭くなると痛みを感じる原因となるため、ストレッチを取り入れるのが効果的です。 本記事では、股関節唇損傷の症状改善に役立つストレッチを5つ紹介します。 筋力強化トレーニングや回復をサポートする栄養もまとめているので、股関節唇損傷の症状改善へ向けた治療法が知りたい方は参考にしてください。 股関節唇損傷のリハビリにおけるストレッチの効果と重要性 股関節唇損傷の初期治療では、一般的に股関節への負担を軽減するため安静に過ごす保存治療を行います。 しかし、この安静期間が長引くと股関節の可動域が狭くなり、周囲の筋肉の動きも制限されてしまいます。 そこで回復段階では、股関節の可動域を広げるためのストレッチが効果的です。ストレッチは、痛みの軽減にもつながります。 股関節唇損傷に効果的なストレッチ方法 股関節唇損傷に効果的なストレッチ方法は、以下の5つです。 腸腰筋ストレッチ 大腿四頭筋ストレッチ 内転筋ストレッチ 外転筋ストレッチ お尻のストレッチ 柔軟性の維持や可動域を広げるために、ストレッチを取り入れましょう。 ただし、ストレッチを行う際に痛みがある場合は、無理をしないでください。 腸腰筋ストレッチ 腸腰筋(ちょうようきん)とは腰から脚の付け根に位置する筋肉の総称で、インナーマッスルの一種です。腰筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 床に仰向け状態になる 片膝を立てる 立てた膝を抱えながらお腹につけるように引き寄せる 30秒ほどキープする 1~4の動作を5回ほど繰り返す 膝を引き寄せる際は、反対側の脚が浮き上がらないよう注意します。また、背中を丸めると効果を得られにくくなるため、背筋を伸ばした状態で行うことを意識するのもポイントです。 大腿四頭筋ストレッチ 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とは、太ももの前側に位置する筋肉です。 大腿四頭筋が衰えると、股関節だけでなく膝関節も弱くなってしまい変形性膝関節症の原因になるため、可動域を広げて予防するのが重要です。 大腿四頭筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 立った状態で片方の手を壁につける もう片方の手で片足首を持ち、かかとをおしりに近づける 持ち上げた膝を後ろにゆっくり引く 太ももの前面が伸びる部分で30秒ほどキープする 1~4の動作を3回ほど行う バランスを崩さないよう、片手をしっかり壁につけるのがポイントです。体勢が不安定な場合は、横向きになって寝転がった状態で行いましょう。 内転筋ストレッチ 内転筋(ないてんきん)は股関節の付け根から太ももの内側にかけてある筋肉で、内ももと呼ばれる部分です。 股関節唇損傷を発症すると硬くなりやすい筋肉となるため、しっかりストレッチしましょう。 内転筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 いすに座って片脚を広げる 背筋を伸ばしたままお辞儀をするように上半身を軽く倒す 30秒ほどキープして上体をゆっくり起こす 2~3の動作を5回ほど行い、反対側の脚も行う 股関節部分の筋肉が硬いと痛みを伴いやすいため、無理のない範囲で行うのがポイントです。 外転筋ストレッチ 外転筋(がいてんきん)は股関節の付け根から太ももの外側にかけてある筋肉で、外ももと呼ばれています。 ストレッチにより股関節の可動域が向上するため、股関節唇損傷のリハビリに取り入れると効果的です。 外転筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 横向きの状態で寝る 下側の脚を上げ、ゆっくり下ろす 上げ下げを10回ほど繰り返す 体の向きを変えて、反対の脚も同様に行う 外転筋のストレッチをする際は、一つひとつの動作をゆっくり行うことが大切です。 お尻のストレッチ 股関節周囲筋群の柔軟性を高めるには、お尻のストレッチもおすすめです。お尻の筋肉が硬いのも、股関節の可動域が狭くなる要因になります。 お尻のストレッチのやり方は、以下の通りです。 仰向け状態で寝る 片膝を立て、反対側の脚と交差させる 立てた膝を横にゆっくり倒す 30秒ほどキープしてもとの体勢に戻す 10回ほど繰り返したあとに反対側を行う 片膝を倒して体をひねる際は、肩が床から離れないようにしましょう。肩が浮いた状態だと、ストレッチによる効果を得られにくくなるため注意が必要です。 また、膝を倒すときは無理に倒さず、気持ち良いと感じる程度の姿勢をキープするのがコツです。 股関節唇損傷に効果的な筋力強化トレーニング 股関節唇損傷では股関節の安定性や衝撃吸収能力が低下するため、ストレッチだけでなく筋力強化も大切です。筋力強化トレーニングにより、骨盤から股関節周辺の安定性や筋力が強化されるため、痛みの緩和につながります。 効果的な筋力強化トレーニングは、以下の3つです。 膝立て運動 伏せ運動 アンクルポンプ やり方とポイントを以下で解説するので、参考にしてください。 膝立て運動 膝立て運動はベッドで行える筋力トレーニングとなるため、寝る前など手軽に取り入れられます。 やり方は、以下の通りです。 仰向けの状態で寝る 片脚を立てる 立てた方の脚を伸ばす 2~3の動きを10回ほど繰り返す 一つひとつの動作をゆっくり丁寧に行うことが大切です。脚の曲げ伸ばしがスムーズに行える場合は、立てた脚と反対側の脚を真っすぐ上げて30秒ほどキープするトレーニングに挑戦してみましょう。 伏せ運動 伏せ運動も膝立て運動と同様に、ベッドで行える筋力トレーニングになります。やり方は、以下の通りです。 うつ伏せ状態で寝る 膝を伸ばした状態で片脚をゆっくり上げ、下ろす 上げ下ろしを10回ほど繰り返し、反対側の脚も行う 伏せ運動をする際は、骨盤が浮かないよう注意しながら行いましょう。また、無理のない範囲で脚を上げるのがポイントです。 アンクルポンプ アンクルポンプでは、血液循環や筋力の回復が期待できます。やり方は、以下の通りです。 脚を伸ばした状態で床に座る 片膝を立てる 足首を上下に伸ばす 10回ほど繰り返し、反対の足首も行う 痛みがない範囲内で、ゆっくり動かすことがアンクルポンプのポイントです。アンクルポンプは股関節唇損傷の手術を行った際、早期からはじめられるトレーニングになります。血液の循環が悪くならないよう、取り入れましょう。 股関節唇損傷におけるリハビリ期間の目安 股関節唇損傷におけるリハビリ期間は、3ヶ月ほどが目安になります。手術をした場合、術後に関節の癒着や可動域制限を引き起こさないよう、術後早期からのリハビリテーション実施が大切です。 また、術後1ヶ月~3ヶ月までの期間は、修復した組織へ徐々に負荷をかける筋力トレーニングを行い、筋力の回復を目指します。 体幹の筋力や骨盤、肩甲骨などの柔軟性を高めるのも股関節の負担を減らすのに重要です。そのため、無理のない範囲でストレッチや筋肉トレーニングをリハビリに取り入れましょう。 股関節唇損傷のリハビリ期間中にやってはいけないこと 股関節唇損傷のリハビリ期間中にやってはいけないことは、以下の通りです。 激しい動作や無理な体勢 長時間の座位や立位 股関節への過度の負荷 つま先立ちや深い屈曲 股関節に負担をかける行動は、股関節唇損傷の再発を誘発する要因となるため注意が必要です。また、筋力トレーニングの一環としてスクワットを取り入れるのは股関節への負荷がかかり、逆効果となります。 主治医からの指示によっては、移動する際に補助器具を使用したり、手すりを使ったりなどの工夫が必要です。股関節唇損傷の症状緩和を目指す場合は、股関節に負担がかかる動作は避けましょう。 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養は、以下の通りです。 栄養素 期待できる効果 食品 タンパク質 筋肉や靭帯の修復を促す 赤身肉 卵 大豆食品 など オメガ3脂肪酸 炎症を抑える働きが期待できる 大豆 青魚や青魚から取れる魚油 くるみ など ビタミンC 組織の修復を助ける オレンジ いちご ブロッコリー など 筋肉や靭帯の修復や炎症を抑えるなどの働きが期待できる食品を積極的に摂取すると、股関節唇損傷の回復に役立つ可能性があります。 筋力トレーニングやストレッチとあわせて、栄養も意識した食生活を心がけましょう。 股関節唇損傷がリハビリで改善しない場合の治療手段「再生医療」 再生医療は、股関節唇損傷がリハビリで改善しない場合の治療手段の一つです。治療法の一つとなる幹細胞治療では、採取した幹細胞を培養して股関節に投与します。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身から米粒2〜3粒程度の脂肪を採取し、幹細胞を培養、投与します。幹細胞は冷凍せず、投与のたびに採取するのが当院の特徴です。 また、再生医療は入院が不要のため、手術を避けたい方に適した治療法といえます。 当院では、無料のメール相談を受け付けておりますので、股関節唇損傷のリハビリに関する悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 まとめ|股関節唇損傷の症状回復へ向けてストレッチを実践しよう 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすると引き起こされます。安静に過ごすことが治療の一つになりますが、股関節の可動域が狭くなり、周囲の筋肉を動かしにくくなるためストレッチを取り入れるのがおすすめです。 股関節唇損傷を発症した際は、自宅でできるストレッチや軽い運動により回復をサポートできる可能性があります。 また、ストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリで回復が見られない場合は、再生医療を検討するのも手段の一つです。整形外科医や理学療法士などに相談しながら、社会生活への早期復帰を目指すリハビリを実施しましょう。
2024.07.03 -
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恥骨結合炎とはどんな病気? 恥骨結合炎になったら、何科を受診すればいいの? おへそのあたりが痛む病気として「恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)」という病名を目にすることもあるかもしれません。 聞きなれない病名で不安になる方や、何科を受診すべきか悩む方もいるでしょう。 恥骨結合炎は歩いた後や運動後におへそあたりに感じる痛みが特徴の病気です。 恥骨に起きる炎症であるため、整形外科で治療を行うのが一般的です。 本記事では、恥骨結合炎の原因や症状、予防方法まで詳しく解説します。運動後におへそあたりに痛みを感じやすい人はぜひ最後までチェックしてみてください。 恥骨結合炎はおへその下あたりに起きる炎症!更年期やがんとの関係はない 恥骨結合炎(ちこつけつごうえん)は骨盤の一部である恥骨に起きる炎症です。 おへそから下に向かって触っていったときに陰毛付近で触れられる骨で、その周囲に痛みを感じます。 女性に多く妊娠や出産を期に発症することがありますが、婦人科系のがんや更年期障害と関係ありません。 そのほか、サッカーなど内ももの筋肉に負担がかかるスポーツや、尿道カテーテルや帝王切開などの術後感染によって発症する可能性もあります。 恥骨結合炎の3つの症状 恥骨結合炎には以下の症状があります。 恥骨部・鼠径部(そけいぶ)・下腹部の痛みや違和感がある いつものように歩けない・走れない 発熱がある ひとつずつ見ていきましょう。 恥骨部・鼠径部(そけいぶ)・下腹部の痛みや違和感がある 代表的な症状は恥骨部や鼠径部(足の付け根)・下腹部の痛みです。 ランニングなどの運動後や股関節周りの筋肉が強く働いたあとに痛みます。 最初は違和感や鈍い痛みですが、悪化していくと刺すような鋭い痛みで激痛となることも珍しくありません。 症状が重くなると、かがんだり立ち上がるといった日常的な動作でも痛むようになり、安静にしていても痛みが続きます。 いつものように歩けない・走れない うまく力が入らずいつものように歩けない・走れないといった症状も特徴です。 恥骨結合からお腹や内ももとつながる筋肉もいっしょに炎症を起こすため、痛みにより歩く・走ることが難しくなるケースもあります。 発熱がある 感染を起こしている場合は、身体が病原菌と戦うため発熱します。 感染を起こしていない場合は発熱はありませんが、恥骨部が痛くて熱も出てきた場合はかならず病院を受診しましょう。 恥骨結合炎(恥骨炎)の3つの原因 恥骨結合炎の原因は大きくわけて以下の3つです。 スポーツ 妊娠・出産 感染症 恥骨は陰毛のあたりで左右から向かい合い、中央で軟骨をはさんで合流する骨です。 この合流した部分を恥骨結合といい、スポーツや妊娠出産・感染症で炎症をおこすと恥骨結合炎になります。 原因を1つずつみていきましょう。 サッカーやランニングなどのスポーツ 恥骨結合炎を起こしやすいスポーツは以下のとおりです。 ランニング サッカー(ボールを蹴る動作) ジャンプ ランニングやサッカー、ジャンプは恥骨のあたりに体重がかかりやすく、反復する運動なので恥骨結合に負荷がかかります。 たとえば、1回や2回同じ場所を軽くぶつけても平気ですが、一定のリズムで何度もぶつけると赤くなり、痛みを感じるでしょう。 この状態が恥骨のあたりで起こり続けると、恥骨結合や恥骨結合にくっついている周りの筋肉に炎症を起こします。 妊娠・出産 女性は妊娠・出産時に恥骨結合炎を起こしやすいです。 骨盤がゆるむ妊娠後期 骨盤を赤ちゃんの頭が通る出産時 骨盤が不安定な出産後 妊娠後期では、産む準備のために出るホルモンで骨盤がゆるみ、赤ちゃんの頭が骨盤内におさまるため恥骨が圧迫されます。 赤ちゃんの頭が産道を通る出産時も、恥骨が強く圧迫されるので痛みがでやすいでしょう。 出産後、ゆるんだ骨盤は自然にもどりますが、すでに妊娠や出産で疲労がたまっている恥骨部は、赤ちゃんの抱っこなどの育児で炎症が起きやすい状態です。 妊娠後期から出産後まで恥骨のあたりが痛む場合は、はやめに助産師や医師に相談してください。 感染症 まれですが、感染症により化膿性の恥骨結合炎を起こします。 術後に感染する(術後感染) 尿道カテーテルを通して感染する(尿路感染) 日常生活での感染 泌尿器科や婦人科(帝王切開など)の術後感染や、尿道カテーテルなどで尿路感染を起こすと、骨盤内で炎症が起き恥骨結合炎になるケースがあります。 また、手術をしていなくても、健康な人が保菌している黄色ブドウ球菌や水まわりに常在する緑膿菌に感染することで化膿性恥骨結合炎を起こす可能性があることを頭に入れておきましょう。 恥骨結合炎の診断方法 恥骨結合炎の診断は以下の3つでおこないます。 触診 MRI検査 レントゲン検査・CT検査 それぞれ解説します。 触診 医師が実際に痛いところとその周辺を触り、痛みの正確な位置や痛みの程度を確認します。 痛いところを触られるのはつらいと思いますが、正しい診察のために触診は必要な検査なので、少しの間がんばりましょう。 MRI検査 MRI検査は、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)のことで、磁石と電磁波をつかって体内の組織を画像化します。 健康な組織と炎症(病変化)している部分とではコントラストが大きく違って写されるので、痛みの原因や場所をつきとめるために必要な検査です。 大きな筒状の機械に20分~1時間ほど入るため、閉所恐怖症の方は医師につたえましょう。 また、MRIは強い磁力があり、体内に金属が入っている場合は検査ができないため、事前に医師に相談してください。 レントゲンやCT検査 MRIは時間のかかる検査のため、素早く撮影できるレントゲンやCT検査をおこないます。 レントゲンやCTはX線をつかった検査で、骨の異常や炎症している部分の撮影が可能です。 また、レントゲンやCTは、MRIと違って金属が入っていても検査できます。 恥骨結合炎における2つの治療法 恥骨結合炎の主な治療法は以下の2つです。 安静・服薬などの内科的治療 内視鏡・カテーテルによる外科的治療 それぞれ解説します。 安静・服薬などの内科的治療 恥骨結合炎の治療では、手術をしない保存的な治療がメインです。 安静にする 痛み止めや炎症止めの薬を飲む マッサージやストレッチをする リハビリをする 炎症がおさまるまでは薬を飲んだり、冷やして安静にしましょう。 傷ついた筋肉や痛みをかばうためにほかの筋肉も疲労しているので、痛みがひいてきたら医師の指示のもとマッサージやストレッチをおこないます。 3週間ほどは運動を制限しながらのリハビリで筋肉を強化し、すこしずつ運動量を増やして数か月でスポーツができるまでに回復可能です。 ただし、恥骨結合炎は再発しやすい病気なので、無理をせず医師の判断のもと治療しましょう。 内視鏡・カテーテルによる外科的治療 恥骨結合炎は保存的治療がメインですが、外科的治療という選択肢もあります。 具体的に、2つの治療方法をご紹介しましょう。 内視鏡的恥骨結合掻把(ないしきょうてきちこくけつごうそうは) 運動器カテーテル治療 恥骨結合炎の重症例ではお腹をひらく開腹手術が一般的ですが、最近では内視鏡をつかってお腹をきらずに手術をおこなう内視鏡的恥骨結合掻爬がおこなわれます。 そのほか、手術適応ではないけれど再発を繰り返すケースに対して、運動器カテーテル治療も要注目です。 運動器カテーテル治療とは、足の付け根や手首などの結果から0.6mmほどのカテーテルを入れ、病変部位の細かい血管を減らす治療のことです。 炎症が起こると、その周囲に細かい異常な血管がたくさんできますが、カテーテルで異常な血管をなくすことで痛みや炎症をおさえます。 まだ新しい治療方法のため保険適用ではありませんが、いま注目されている治療法です。 また、恥骨結合炎をはじめ、歩行時や運動後の下腹部の痛みが気になる方は、当院「リペアセルクリニック」の「メール相談」や「オンラインカウンセリング」もご活用いただければ幸いです。 恥骨結合炎で受診すべき3つの目安!受診すべき診療科もご紹介 恥骨結合炎を疑ったときに受診すべき基準は以下に挙げる3つです。 歩行やスポーツで下腹部の痛みがある 下腹部の痛みと発熱がある 排尿時・月経時の痛みが強い なお、スポーツや下腹部の痛みでは整形外科へ、排尿時には泌尿器科・月経時には婦人科へ受診してください。 それぞれの理由をみてみましょう。 歩行やスポーツで下腹部の痛みがある 歩行やスポーツをした後に感じる痛みは、恥骨結合炎の特徴的な症状です。 これは運動により、恥骨や周囲の筋肉に繰り返し負担がかかるためです。この場合は骨・筋肉の痛みであるため、整形外科を受診しましょう。 歩行やスポーツ時の下腹部の痛みが気になる場合は、当院「リペアセルクリニック」でもご相談が可能です。 恥骨結合炎なのか判断がつかず悩んでいる方は、ぜひ「メール相談」や「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 下腹部の痛みと発熱がある 帝王切開や尿道カテーテルの術後、あるいは風邪を引いた後に下腹部の痛みと発熱を伴う場合などは、感染による恥骨結合炎の可能性があります。 薬による治療が必要なため、可能な限り早い受診がおすすめです。 発熱が伴う場合でも、恥骨結合炎が疑われる場合は整形外科を受診してください。 排尿時・月経時の痛みが強い 恥骨結合炎は恥骨に負担がかかったときに生じる痛みが特徴の病気であるため、排尿時や月経時に痛みが出ることはあまりありません。 そのため、排尿時や月経時に痛みが強くなる場合は恥骨結合炎以外の病気の可能性があります。 排尿時の痛みがあれば泌尿器科へ、月経時の痛みが強いときには婦人科を受診してみてください。 恥骨結合炎と似ている病気 恥骨結合炎に似ている病気もあるため、症状や痛みの具合だけで自己判断しないようにしましょう。 恥骨結合炎とよく間違えられる病気は以下のとおりです。 グロインペイン症候群 恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい) 子宮筋腫・子宮内膜症 膀胱炎・尿道炎 本章を参考にしつつ、該当する症状がある場合は早めに受診することをおすすめします。 グロインペイン症候群 グロインペイン症候群は鼠径部痛症候群ともいわれ、恥骨結合炎と症状が似ており間違えられやすい病気です。 鼠径部(そけいぶ)は足の付け根あたりを指しますが、グロインペイン症候群では足の付け根、下腹部、睾丸のうしろ、内ももが痛みます。 痛みの場所もですが、サッカー選手に多く見られることも恥骨結合炎と似ている特徴です。 恥骨結合炎と違うのは恥骨部分の炎症がないことで、グロインペイン症候群の治療では股関節だけを動かさないような運動の仕方や筋力強化のためのリハビリが主な治療となります。 炎症が起きている場合は運動制限が必要なので、似た症状でも治療内容が異なることを頭にいれておきましょう。 恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい) 恥骨結合炎と間違えられやすい病気に恥骨結合離開があります。 症状は恥骨結合炎と同じく恥骨部の痛みですが、時折、痛みが非常に強くなるために、正常に歩行することが困難になるケースもある病気です。 通常は運動しただけで離開することはありませんが、事故などの外圧や出産などで左右からのびた恥骨を結合させている軟骨が離れてしまいます。 腰を強く強打したあとに痛み出した・出産後に強い痛みがある場合は医師に相談しましょう。 子宮筋腫・子宮内膜症 子宮筋腫・子宮内膜症は下腹部の痛みを伴うため、恥骨結合炎と間違えやすい病気です。 これらの病気は本来子宮内に存在する組織が子宮外で異常発育するために生じる病気で、恥骨へ痛みが波及します。 とくに月経時、子宮内膜が剥がれるときの強い痛みが特徴であり、恥骨結合炎のように運動後の痛みはあまりありません。 痛みを感じる部位は似ていますが、痛みを抑えるお薬の内容が大きく異なるため注意してください。 月経時に下腹部や恥骨の痛みを強く感じる場合は、婦人科に相談しましょう。 膀胱炎・尿道炎 膀胱と尿道は恥骨の後ろにある臓器であるため、膀胱炎・尿道炎も恥骨付近へ痛みを生じさせます。 しかし膀胱炎や尿道炎は排尿時の痛みが主であるため、運動時に痛みを感じる恥骨結合炎とは見分けやすいでしょう。 これらの病気はなんらかの原因で細菌が膀胱・尿道に入り込むために生じます。 排尿時の痛みや血尿・尿の色が本来と大きく異なるといった症状が特徴であり、内服治療が必要です。このような症状がみられたときには泌尿器科への受診をおすすめします。 恥骨結合炎の予防に効果的なストレッチ5選 恥骨結合炎は再発しやすく、一度症状が出ると治るのに時間がかかるため、日頃から予防したいですよね。 恥骨にくっついている筋肉は、大内転筋・小内転筋・長内転筋・薄筋・恥骨筋・腹直筋などで、内ももや股関節まわり・下腹部にあります。 これらの筋肉をほぐすストレッチで予防しましょう。 また、以下の記事でも恥骨結合炎のストレッチについて解説したいるため、気になる方はぜひご覧ください。 ただし、炎症が強い場合や痛みがあるときは自己判断でストレッチせず、かならず医師の診察を受けてください。 内もも・股関節のストレッチ(1) 1. 床にすわり、足の裏どうしを合わせて股関節をひろげます。 2. 手は両足のつま先をそっとつつみ、上半身を前へたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 背中が曲がらないように気をつけましょう。 内もも・股関節のストレッチ(2) 1. 大内転筋ストレッチの姿勢から、両足をすこし前に出します。(ダイヤの形) 2. 手は両足のつま先をつつみ、上半身を前へたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 両足の位置は少し調整し、気持ちの良いところでおこなってくださいね。 内もも・股関節のストレッチ(3) 1. 長内転筋ストレッチの姿勢から両足を伸ばしひらきます。(開脚している状態) 2. 手は前につきゆっくり上半身を前にたおします。 3. ゆっくり3回ほど呼吸します。(約20~30秒) 上半身を前にたおすときに、つま先が上になるように気をつけましょう。 お腹のストレッチ(1) 1. うつ伏せになり、足を肩幅ほどにひらきます。 2. 両手を肩の横につき、気持ちの良いところまで肘を伸ばします。 3. ゆっくり5回ほど呼吸します。(60秒前後) 目線はななめ上または正面に向け、無理せずおこないましょう。 お腹のストレッチ(2) 1. 手のひらと両膝を肩幅程度にひらき床につけ、よつんばいの姿勢になります。 2. 息を吐きながら背中を丸めおへそを見ます。 3. 息を吸いながら背中を反らし天井を見ます。 4. ゆっくり5回ほど呼吸しながら繰り返します。(60秒前後) 天井を見るときに顎が上がると首を痛めやすいので顎をひいておこないましょう。 恥骨結合炎には負荷の少ないトレーニングもおすすめ 負荷の小さいトレーニングであっても、恥骨結合炎の予防に効果的です。 恥骨結合炎は恥骨付近の筋肉が炎症を起こして発症する可能性があるため、内股や下腹部の筋力強化がおすすめです。 また、肥満でも体重の重みが恥骨に負担を与えるため、肥満改善も有効といえるでしょう。 もし恥骨結合炎を繰り返している方や予防したい方は、負担の小さいトレーニングをおすすめします。詳しい内容は以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。 恥骨結合炎で注意すべき生活習慣2選 恥骨結合炎は数週間~数か月と完治まで時間がかかり、再発もしやすい病気のため、日常生活に気をつけなくてはいけません。 骨盤に負担がかかる姿勢や動作 体重のコントロール 恥骨結合炎の治療・予防に重要な2つの注意点をまとめました。 骨盤に負担がかかる姿勢や動作 恥骨に負担がかかりやすいのは、体重が前にかかる・体重が左右に偏るときです。 前傾姿勢にならないように注意するのと、片方の足に体重をかけて立たないようにしましょう。 落ちたものを拾いたいときなどは、なるべく膝を曲げ体重が前にかからないようにします。 ベッドから起き上がる動作は下腹部・恥骨に力がかかるため、まず横向きになり、手で床を押しながら起き上がりましょう。 敷布団は起床時にに立ち上がる動作がどうしても負担になります。可能であればベッドを使用をおすすめします。 また、ビーズクッションなどの柔らかいソファは立ち上がる動作が負担になるので使用は控えましょう。 体重のコントロール 体重がかかると恥骨への負担が大きくなるため、肥満の場合は体重を落とすことも考えます。 とはいえ恥骨結合炎の治療中は運動は制限されるため、食事内容や量を見直しましょう。 肥満ではなくてもスポーツをしていて恥骨結合炎になった方は、運動を制限する治療期間中の消費カロリーが大幅に減ります。同じように食べていると体重が増えてしまうため、注意しましょう。 まとめ|恥骨結合炎はおへそ下に痛みを出す病気!悩んだら整形外科を受診しよう 恥骨結合炎は恥骨や周囲の筋肉の炎症によって痛みを生じる病気で、運動や出産が原因と考えられています。股関節周囲のストレッチやトレーニングが効果的で、適切な治療をすれば治る病気です。 しかし完治まで長い時間がかかり再発しやすい病気のため、日頃からストレッチをしたり、恥骨に負担をかけないよう動作に気をつけて過ごしましょう。 また、恥骨の痛みがなかなか治らない場合は似ているほかの病気も考えられるため、自己判断せず病院への受診をおすすめします。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは恥骨結合炎にも適応可能な再生医療へ取り組んでいます。従来の治療とは異なり、体への負担も少なく再発予防にも効果的です。 もし気になる方がいれば、お気軽に当院の「メール相談」や「オンラインカウンセリング」をご利用ください。 この記事が少しでも皆様の参考になれば幸いです。 恥骨結合炎についてよくある質問 恥骨結合炎はどんな症状がある病気ですか? 恥骨結合炎は歩行や運動によって恥骨や周囲の筋肉に炎症が生じ、下腹部に感じる痛みが特徴の病気です。 サッカーなど股関節を大きく動かすスポーツや妊娠・出産が原因で生じやすいと考えられています。 恥骨結合炎は何科を受診すれば良いですか? 恥骨結合炎は恥骨や周囲の筋肉に生じる炎症であるため、整形外科を受診してください。 しかし恥骨結合炎と似た病気で整形外科の病気ではない可能性もあります。 もし排尿時の痛みが強い時は泌尿器科へ、月経時の痛みが強いときには婦人科への受診がおすすめです。
2024.07.01