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日常生活の中で、首こりを感じることはありますか? 「首まわりが張っている」 「首の辺りが重く疲労感がある」 このような感覚は、首こりの症状の可能性が高いです。 首こりは、頭痛やめまいを引き起こす原因となり、ひどくなると日常生活に影響をおよぼします。 今回の記事では、首こりの解消や予防、首こりに関連する症状を解決するための方法を詳しく解説します。 首こりに悩んでいる方や、すでに日常生活に影響が出ている方は、ぜひ最後までお読みください。 首こりに正しく対処し、上手に解消しましょう。 首こりの原因 首こりは、首まわりの頭を支える筋肉に、過度な緊張や負担がかかった場合に生じます。 首こりの原因は、日常生活のなかにあり、考えられる要因としておもに以下の3つがあります。 ・不適切な姿勢 ・ストレスと筋肉の緊張 ・長時間のパソコン作業 首こりに悩む方で、思い当たる方もいるでしょう。 では、この3つがなぜ首こりの原因になるのか、それぞれ解説します。 不適切な姿勢 長時間の不適切な姿勢は、首周囲の筋肉に負荷がかかります。たとえば、日常生活の中でスマートフォンやタブレットを操作する場合、少しうつむくような姿勢で操作していませんか?成人の頭の重さは約 4〜6kgあります。 首周囲の筋肉や骨でその重さを支えていますが、頭が前に傾けば傾くほど、首にかかる負担は大きくなるのです。たとえば、スマートフォンを操作するために首を約30度前に傾けたとします。その場合、約18㎏の負荷が首にかかるとされています。 18㎏は5歳くらいの子どもの体重とほぼ同じです。その重さを支えるのは、かなりの負担が首にかかっている状態といえます。 もともと人間の首は、重い頭を支えるためにゆるやかなカーブをしており、その姿勢が首に負担が少ない姿勢です。 しかし、頭が前に傾いた姿勢が長く続くと、「ストレートネック」と呼ばれる状態を引き起こします。「ストレートネック」とは、うつむいた姿勢を続けることで首のカーブが直線に近く、伸びてしまった状態です。スマートフォンやタブレットを操作している姿勢は、このような姿勢になる場合が多いです。 そのため、「スマホ首」とも呼ばれています。 日常生活でスマートフォンの操作時間が長い方や、うつむいた姿勢で長時間作業する職業の方は、首こりになりやすいでしょう。 不適切な姿勢になりやすいのはそれだけではありません。身体に合わない寝具も影響します。 特に、合わない枕は寝ている間に知らず知らず首に負荷がかかっている可能性があります。枕は、高さや柔らかさなど、自分の身体に合ったものを選びましょう。 ストレスと筋肉の緊張 現代は、ストレス社会と呼ばれるほど、何かしらのストレスを感じながら生活している方が多いでしょう。 しかし、過剰なストレスは、心だけでなく身体にも緊張を与えます。 ストレス状態が続くと、自律神経が乱れ、筋肉の緊張を引き起こします。自律神経とは、血圧や呼吸数などを調整し、自律的に身体の中のバランスを整える役割です。その自律神経が乱れると身体のなかのバランスが崩れ、全体的に血行が悪くなります。 首周囲の血行も悪くなるため、首こりの症状を引き起こします。ストレスはため込むまえに、上手く解消しましょう。 長時間のパソコン作業 長時間のパソコン作業は、以下のことが影響し、首こりの原因となります。 ・同一の姿勢 ・眼精疲労 ・パソコン作業に向かない環境 新型コロナウイルスの拡大で、テレワークの活用が進みました。そのため、今までオフィスで仕事をしていた方も、自宅で仕事をする機会が増えたでしょう。 しかし、自宅でのテレワークは、パソコン作業に向かない机やイスを使っておこなっている方も多く、整った環境ではない可能性が高いです。 パソコン作業に向かない机やイスは、姿勢が悪くなり、気づかないうちに身体に負担がかかっています。また、長時間のパソコン作業は、同じ姿勢で座っている時間が長くなるため、首周囲だけでなく、肩や腰の筋肉も凝り固まるでしょう。長時間ディスプレイを見続けると、目の筋肉が疲れるために、眼精疲労を引き起こします。見えづらさを感じると、姿勢が悪くなりがちなため、首こりの原因となります。 効果的な解消法 日常生活のなかで、首こりを感じている方は、適宜解消していきましょう。 「時間がなくてなかなか運動の時間が確保できない」 そんな方のために、ここでは簡単で効果的なストレッチやマッサージの方法を紹介します。 ストレッチで筋肉をリラックス 血行不良を解消するため、ストレッチで筋肉をほぐしてみましょう。ストレッチは、身体をリラックス状態にし、血行改善効果があります。血行が良くなれば、首周りの筋肉もほぐれ、首こりによる症状が緩和するでしょう。 <肩のストレッチ> 背筋をのばしてイスに座る 腕の力は抜く 息を吸いながら両肩を持ち上げる 息を吐きながらストンと肩をおろす 2~3回繰り返す <首のストレッチ> 背筋をのばし肩の力を抜く 首を前に倒しゆっくり右にまわす ぐるっと一周まわしたら今度は左にまわす 左右10回程度おこなう <肩甲骨のストレッチ> 両肘を曲げて肩より上に肘をあげる 両手は軽くにぎり鎖骨のあたりにもってくる 両肘を下げないようにしながらゆっくり後ろへ引く 肩甲骨をギュッと寄せように意識する そのまま両肘を下げ力を抜く 5回程度繰り返す これらのストレッチは、座ったままでもできる簡単なストレッチです。作業の合間や首こりや肩こりを感じたときなどにやってみましょう。また、隙間時間を利用し、一日のなかで定期的におこなえば、凝り固まる前に解消できるでしょう。 ただし、体調や自分の首や肩の動かせる範囲内で無理せずおこなうことが大切です。無理をすると、筋肉や関節を傷めてしまう可能性があります。ゆっくりと無理をせず、気持ちいいと思える力加減でおこなうのがポイントです。 マッサージ技術の活用 マッサージをすると、凝り固まった筋肉をほぐし血行が良くなるため、首こりの解消に良いでしょう。首こりで悩む方の中には、マッサージや整体院、鍼灸院に行きたいと考えている人も多いです。しかし、時間がなくてなかなかそのような場所へ行けない場合、自宅で簡単なマッサージをするのがおすすめです。 <胸鎖乳突筋マッサージ> 胸鎖乳突筋とは、首の横に耳の後ろ辺りから鎖骨辺りまで繋がっている筋肉です。 場所が分からない場合、顔を横に向けると浮き出てくるためわかりやすいでしょう。 耳の後ろ側に人差し指・中指・薬指を縦方向に押し当てる 首を横に傾けながら20秒程上下にさする 揉みほぐすイメージで指で胸鎖乳突筋をつまむ つまむ位置を徐々に下へ移動する 反対側も同様におこなう 胸鎖乳突筋の近くには、頸動脈もあるためマッサージをおこなう際には注意しましょう。痛みや苦しさを感じた場合は、すぐにマッサージを中止してください。 <頸椎マッサージ> 頸椎周囲には、肩や背中につながる筋肉があります。この筋肉が凝り固まると、首こりだけでなく、肩こりや背中の痛みにもつながります。 無理をせず、気持ちいいと感じる程度の力加減でおこないましょう。 日常の運動と活動 ストレッチやマッサージをするだけでなく、首こりを感じたら適宜運動も取り入れてみましょう。日常的に運動をしていると首こりが生じる前に解消でき、また、予防にもつながります。 以下のような全身運動は、身体の筋肉を動かすため血流がよくなり、首こりの解消や予防におすすめです。 ・縄跳び ・水泳 ・ヨガ 縄跳びは縄を準備するだけで、手軽に始められます。水泳は、腕を大きく動かす動作があるため首こりには効果的です。しかし、プールがある施設を利用しなければ水泳はできないため、時間がない方には向かないでしょう。 ヨガは、スタジオに通う場合と自宅内でオンラインでおこなう場合と、ライフスタイルにより選べます。お金をかけたくない場合は、自宅で動画サイトを見ながらヨガをするのも良いでしょう。適度な運動習慣は、首こりの解消だけでなく、健康の維持増進にもつながります。 適度に身体を動かす習慣があると、脳の活性化や疲労回復の効果もあり、仕事の効率アップも期待できます。また、運動にはストレスホルモンを下げる働きがあるとされています。イライラしやすかったり寝つきが悪かったり、ストレスがうまく発散出来ていない方は、運動で発散してみるのもいいでしょう。 ストレスが溜まった状態は首こりの原因になるため、適度に運動し首こりの解消や予防に役立てましょう。 首こりに関連する症状 首こりは、めまいや吐き気、腕の重だるさ、やる気が出ないなど、心身にさまざまな症状があらわれます。 以下の症状は、首こりがひどくなるとあらわれる主な症状です。 ・頭痛 ・目の疲れ ・自律神経の不調 これらの症状は、首こりの関連症状だと考えられます。 首こりに関連する3つの症状を、それぞれ解説していきます。 頭痛との関連 「頭全体が締め付けられる痛みがある」 「頭痛が続いていてつらい」 このような頭痛持ちの方のなかには、首こりが原因の場合があります。首こりが原因で引き起こされている場合、「緊張型頭痛」と呼ばれる頭痛です。首周囲の筋肉や肩、肩甲骨周りの筋肉が緊張するため、血流が悪くなります。 頭に向かう血流にも悪影響をおよぼし、頭痛を引き起こします。 40°のお湯に10分程度ゆっくりと入浴する 首周囲をホットパックや温めたタオルなどで温める これらの方法は、首周囲の血流が改善する効果がある方法です。首周囲の筋肉の緊張をほぐし、血流を改善すれば、頭痛がよくなる可能性があります。ただし、「片頭痛」の場合、血流が良くなると痛みが悪化するので注意が必要です。 目の疲れ パソコンやスマートフォンの操作は、同一の姿勢でおこなう場合が多く、液晶画面を見ている時間が長いと目の疲れも感じるでしょう。目の疲れは「眼精疲労」とも呼ばれ、首こりの原因や自律神経のバランスを崩します。1日6時間以上、ディスプレイを見ている時間がある方は、目の疲れを引き起こし、首こりにつながる可能性があります。 また、ディスプレイを見続けた目の疲れは、VDT症候群(Visual Display Terminals Syndrome)と呼ばれ、目の疲れを取るケアが必要です。 VDT症候群とは、パソコンやタブレットなどディスプレイを見ながら作業をする時間が長くなることで発症しやすくなります。目の疲れを感じたら、以下のような目のケアをおこないましょう。 ・目薬をさす ・適度な休憩をとる ・ホットパックで目元を温める これらの方法は、目の疲れを緩和します。 目元をホットパックで温める方法は、ホットアイマスクやお湯で濡らしたタオルを目に2分ほど当てましょう。 目の疲れがとれれば、首こりの軽減につながるでしょう。 自律神経の不調 首こりがひどくなると、自律神経に影響を与え、副交感神経の働きが低下することがわかっています。そもそも、自律神経とは、身体の中のさまざまな働きを自動的に調整しバランスを維持する神経です。 自律神経には、以下の2種類があり、それぞれ違う役割があります。 ・交感神経・・・起きているときや活動するときに優位 ・副交感神経・・・夜間やリラックスしているときに優位 首こりによって自律神経が乱れると、以下のような症状があらわれます。 ・頭痛や頭重感 ・めまい ・不眠 ・イライラ ひどくなると自律神経失調症を引き起こす可能性があります。首こりは、放っておくとさまざまな関連症状をもたらします。放置せず、できることから取り組み、対処しましょう。 予防と長期管理 首こりは、日常生活の中で少し意識して行動するだけで、予防できます。さまざまな症状があらわれ、不調をきたすまえに、首こりを予防しましょう。首こりの予防は、一度だけではなく、長期的な管理が大切です。毎日過ごす日常生活の中で、自分ができることから取り入れてみましょう。 正しい姿勢の維持 正しい姿勢の維持は、身体全体のバランスが良くなるため、首こりだけでなく肩こりや腰痛の予防にもなります。姿勢が悪い状態とは、多くの方が猫背をイメージするでしょう。 しかし、猫背を直そうと、無理に胸を張ったり背筋を伸ばすようにしたりしていませんか?正しい姿勢ができているかは、以下のような確認方法があります。 壁に背中を向け立つ かかと・おしり・肩・頭を順番に壁につける 腰の辺りと壁の間に手のひらを差し込む 手のひら1枚分が入る隙間があるのが理想ですが、それ以上に隙間が開いている人は「反り腰」という状態です。また、肩が壁につかない方は、巻き肩の状態です。1か所でも壁につけられない部位があれば、姿勢が悪い状態といえます。立ったときに、耳や肩、腰、膝、くるぶしが一直線になる状態が、正しい立ち姿勢です。 座ったときには、イスに深く腰かけて骨盤がまっすぐ立つように座ります。足の裏をしっかり床につけ、膝と股関節が90°になるようにすると、骨盤が立ちやすい座り方です。 姿勢が悪い状態は、毎日の生活習慣が影響しているため、すぐに改善することはできません。しかし、正しい姿勢を維持することを意識して生活するだけで、徐々に正しい姿勢が身についてきます。 正しい姿勢は、身体の不調を予防するだけでなく、代謝を上げたりスタイルを良く見せたり、メリットがたくさんあります。正しい姿勢の維持は、毎日の積み重ねが大切です。 日常生活の中で、正しい姿勢を意識するよう心がけてみましょう。 職場の環境設定 オフィスでは、適切な明るさ、適切な机やイス、ディスプレイの適切な位置や明るさなど、職場環境が整えられている場合が多いです。 厚生労働省からガイドラインも出されているため、VDT作業(Visual Display Terminals)のための環境設定は重要といえます。しかし、テレワークや在宅ワークなど、環境が整っていない場所で作業をしている方もいるでしょう。そのような場合、スペースの問題でディスプレイと近くなってしまったり、机やイスが合わず姿勢が悪くなってしまったりします。 <VDT作業のための正しい環境設定> ・明暗の変化が著しくない室内で机上は300ルクス以上が目安 ・ディスプレイやキーボード、マウスは適宜動かせるようにする ・机の高さは作業者に合ったものにし、イスは高さが調整できるものにする ・ディスプレイは、目から40cm以上離し目と同じ高さかやや下に位置する 300ルクスとは、新聞が読める程度とされており、蛍光灯を使用した少し古い事務所のようなイメージです。ちなみに、デパートの売り場が約500ルクス~700ルクス程度のため、300ルクスは少し暗めの印象でしょう。これらの項目を満たした環境が理想的ですが、自宅では広さや間取りにより限界があります。 しかし、できる範囲で適切な環境設定をすれば、首こりや腰痛などの身体の不調の予防につながります。また、疲れにくくなり作業がしやすくなるため、作業効率も良くなると考えられます。 定期的な運動とストレッチのルーチン 定期的な運動やストレッチは、首こりの予防に効果的です。しかし、「忙しいから時間がとれない」や「毎日疲れて運動なんてできない」と考えている人も多いでしょう。 「毎日ストレッチを頑張ろう」と決意しても、なかなか続けるのは難しいです。 対策としては、定期的な運動スケジュールを立て、ルーティン化することで、長く続けていきやすいでしょう。 <運動に対するモチベーションを維持し継続する方法> 無理のない程度に運動をする日を設定 設定した日に運動やストレッチができたらカレンダーに印をつける 慣れてきたら運動する日を増やしてみる カレンダーに印をつけることで、「できた」という事実が視覚的にわかります。体調や忙しさによってできない日はありますが、徐々にカレンダーにつく印が増えていくと、頑張っている、取り組めていると実感でき、達成感を味わえるでしょう。 モチベーションが上がらない場合は、「印が何個ついたらご褒美」と設定するのもいいでしょう。まったく運動習慣がなかった方が、急に毎日運動をすることは難しく、身体にも負担がかかります。 そのような方は、散歩や軽いウォーキング、軽いストレッチを週に数回から始めてみましょう。 <忙しい人が運動習慣をつける方法> 忙しくて時間がなく、まとまった運動の時間を確保するのが難しい方もいます。 ・普段自転車で行くところを歩いていく ・通勤中、職場の一駅前で降りて歩いてみる ・なるべく階段を使う そのような時間もとれない方は、日常生活行動の中で「ながら運動」をしてみましょう。 ・歯磨きをしながらかかと上げや足上げをする ・テレビを見ながらストレッチをする ・家事をしながら首回しをする 運動に対して気が進まず、始めるのにハードルが高い方もいるでしょう。しかし、適度な運動習慣がある方は、首こりの解消や予防だけでなく、ストレスの解消や健康的な生活にもつながります。ぜひ適度な運動習慣をつけることをおすすめします。 結論 首こりは、姿勢の悪さやストレス、長時間のデスクワークで生じます。首こりを放置すると、頭痛や目の疲れ、自律神経の乱れを引き起こし、身体全体の不調を感じる原因となります。首こりは、ストレッチや運動で解消できます。首まわりに常に張りや痛みを感じている方は、早めに首こりを解消しましょう。 いくつか試してもなかなか首こりが解消しない場合は、別の疾患も考えられるため、一度受診をしておくと安心です。 首こりの原因によって受診する診療科は異なりますが、まずは整形外科を受診するとよいでしょう。正しい姿勢を心がけ、運動習慣を生活の中に取り入れていけば、首こりの解消や予防だけでなく、肩こりや腰痛の対策にもなります。 まずは、自分が出来そうな運動やストレッチから始めてみましょう。 参考文献 「兵庫医科大学保健管理センターだより」 「筋肉の緊張をほぐし、ゆるめるトレーニングで体をリラックス」 「肩こり解消のためのマッサージと首コリ・ストレートネックの解消法」 「肩こりにおすすめ!肩甲骨ストレッチ」 「肩凝りの定義およびメカニ ズム」 「テレビで大きな反響を呼んだ“こり”解消の簡単セルフケアを紹介 日本人を襲う「肩こり」と「首こり」のメカニズム」 「とつか区簡単にできる1分スッキリ体操(首こり・肩こり解消編)」 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」
公開日:2024.10.07 -
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むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意したいこと むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意することは大きく分けて3つ有ります。今回は、この3つの注意点に対して詳しく解説していきます! 早く治すための注意点 ・受傷したらすぐに病院へ行きましょう ・急性期(症状で変わりますが受傷から約2週間くらい)は安静に しましょう ・急性期を過ぎたら痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしていきましょう むち打ち症(頚椎捻挫)とは? むち打ち症について解説していきます。むち打ち症は正式には頚椎捻挫といい、自動車の追突事後やスポーツ中の衝突により首が過剰に動き、首の筋肉や靭帯に損傷が起こることです。それらの症状について詳しく見ていきましょう。 むち打ち症の主な症状 ・首や腕の痛み ・腕の痺れ・頭痛 ・耳鳴り・吐き気等 ・足の感覚異常 ①首や腕が痛い(頚椎捻挫型) 自動車の交通事故やスポーツでの衝突の際に首の周りの筋肉や靭帯が引き伸ばされ、首周 りの組織(軟骨や椎間板)に損傷が生じてしまいます。首や腕の痛みの他に肩こり、頭痛 などもこの症状に含まれます。 ②腕の痺れ(神経根症状型) 自動車の交通事故やスポーツの衝突により首のから出ている神経が圧迫され脳からの指令 が伝わらなくなり、手指、手、腕の痺れや筋力低下が起こります。 ③頭痛・耳鳴り・吐き気等(バレ・リーウー型) 首の痛みと共に、頭痛・耳鳴り・吐き気・難聴・視力低下・飲みにくい等の症状が起こる タイプです。自動車事故やスポーツの衝突により自律神経の働きに異常が生じて起こるも のです。事故後の安静(急性期の対応)が不十分だと起こりやすいと言われています。 ④足の感覚異常(脊髄型) 足の痺れや感覚異常が、首の症状よりも強く起こるタイプです。自動車事故やスポーツの 衝突により脊髄が損傷されるため、足の症状と場合によっては排尿や排便がしづらくなる こともあります。 むちうち症(頚椎捻挫)の対処方法 受傷してしまった後の対処方法について解説します。 ①受傷後、すぐに病院に行くことをおすすめします。 受傷してしまった直後は あまり症状を感じていなくても時間が経ってから急速に症状が出現してくる事も有りま す。また、受傷後すぐ(急性期)は首に負担をかけないことが望ましいため、場合によっ ては頚椎カラー(首を固定するもの)の装着が必要なこともあります。 その他鎮痛剤の処方をしてくれることもあるため、まずは病院を受診しましょう。 ②受傷後2週間ほどは激しい運動は控えましょう 先ほども解説した通り首の筋肉や靭帯に損傷が起こっている状態の為、この時期は症状が軽いケースでも安静にする事が大切です。むやみに動かし過ぎると症状を長引かせる原因になることもある為注意しましょう! ③痛みが落ちつけば痛くない範囲で動かそう 今 まで解説してきたことも大事ですが、これから紹介することがとても大切になってきます。痛みが落ちつき痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしましょう。 実はこの頚椎捻挫(むちうち症)でとても多いのが、受傷から6ヶ月以上経っても 『強い痛みは無いけど首や肩周りが突っ張る』『なんとなくスッキリしない』といった、 慢性症状が残ってしまうケースです。 何故、慢性化してしまうかというと、自動車事故やスポーツ中の衝突により起こった筋肉の緊張した状態が治っていないからです。筋肉や靭 帯の損傷は安静にする事で治りますが、筋肉の緊張状態は安静にしていることでどんどん 固まってしまい緊張状態が強くなってしまいます。 その為、適切に動かしていくことが大切です。基本的に首や肩周りの筋肉が緊張している状態にある時は肩がすくんでいて巻き肩になっていて、顔が前に出て、顎が上がっている状態のことが多いです。 デスクワーク やスマホを見る習慣が多い現代人のほとんどがこういった姿勢となってしまっています。 この姿勢を治すためには肩甲骨や胸椎(両方の肩甲骨の間にある背骨)を動かすような体 操や顎を引く運動、胸の前の筋肉をほぐすストレッチをすることが大切です。 こうした運 動やストレッチをしておくことで症状の慢性化を防ぐことができます。 病院受診時の流れ 次に一般的な病院での受診時の流れについて解説していきます。 まず、病院といってもどんな病院に行けば良いのか疑問に思う方もいるかと思いますが、一般的には整形外科で す。また整形外科といってもリハビリテーション専門のスタッフ(理学療法士や作業療法士)がいない整形外科もある為、できれば理学療法士や作業療法士のいる整形外科へ行くのがおすすめです。 ①診断(以下を聴取します) ・医師の診断、レントゲンやMRI撮影を行う ・骨折や脱臼、脊髄への影響等を確認 ・身体所見(首の可 動範囲、痛み、筋力、感覚異常)を。 ②安静 ・患部の安静 ・投薬 症状が軽度であれば投薬や患部の安静 ・症状が強い場合は頚椎カラーをして患部の安静をサポート ・どちらにせよ患部の安静をして急性期症状を落ち着かせる必要がある ③リハビリテーション ・骨折や脱臼がない場合 ・早期からリハビリテーションで痛みがない範囲で動かす ・医師からの指示で理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションを実 ・理学療法士や作業療法士が在中していない場合、温熱療法や牽引療法、電気治療も処方 まとめ・むち打ち症(頚椎捻挫)を早く治すために注意したいこと ここまで頚椎捻挫(むち打ち症)解説してきましたがいかがでしたか。 おさらいになりますが、まずはむち打ち症(頚椎捻挫)を受傷してしまったら、直ぐに病院を受診して下さい。受傷直後は興奮状態で痛みを感じないこともありますが数日経ってから症状が出る場合もありますので早めの受診をおすすめ致します。 次に患部の痛みが落ち着くまでは安静を心がけましょう。首まわりの組織が損傷している事もある為、無理に首を動かすと組織の回復を遅らすこともあり、仏痛緩和を阻害してしまう原因となってしまいます。 最後に患部の痛みが落ち着いてきたら痛みの出ない範囲で首や肩甲骨周りを動かしていきましょう。 動かさない期間が長くなってしまうと筋肉が固まってしまい、首や背中の重だるさや 頭痛の原因となってしまい、慢性化することもある為、十分気をつけましょう。むち打ち症は、頚椎捻挫 といい、誰にでも起こる可能性がある怪我な為、この記事を読んで適切な対応を取ることの手助けになれれば幸いです. ▼以下も参考にしていただけます むちうち症(頚椎捻挫)の治療期間と治療方法について
公開日:2024.10.07 -
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むちうち症(頚椎捻挫)は、交通事故やスポーツ中の事故などにより、首の周りの筋肉や靱帯に急激に力がかかったことで痛みが生じる状態をいいます。 軽症なものであればネックカラーを装着しての安静処置やリハビリなどで徐々に軽快してきます。しかし、重症なものだと慢性的な痛みと長期間付き合っていく状態になりかねません。 そこで本記事では、むち打ち(頚椎捻挫)の治療方法と治し方を中心に、完治期間についても医師の観点から解説します。 むち打ち症(頚椎捻挫)の症状 むち打ち症の症状は、首を動かしたときの痛み・頭痛・倦怠感(だるさ)・耳鳴り・やめまい・手や腕のしびれと多岐にわたります。 中でも代表的な症状は首を動かしたときの痛みです。筋肉や靱帯に不自然な強い力がかかったことで炎症し痛みが生じます。 頭痛は脳が強く揺さぶられたことによる脳振盪症状や、頭・首・背中につながっている僧帽筋という筋肉が損傷し、全体の痛みを頭痛として捉えることもあります。 倦怠感や耳鳴り、めまいといった症状も脳振盪が原因とされ、首の損傷がさまざまな症状を引き起こします。 むち打ち症(頚椎捻挫)4つのタイプ 上記のとおり、むち打ち症には4つのタイプがあります。 最も多いのは捻挫型で、首や肩の痛み・動かしづらさを発症します。頚椎捻挫の約80%程度がこのタイプです。 神経根型は、腕や手のしびれや痛みが出現するタイプです。頸髄の神経根が筋肉や骨で圧迫されることで発症します。首を動かしたり、咳やくしゃみをしたりすると、強い痛みやしびれが出現します。 脊髄型は、下肢のしびれや知覚異常などを引き起こすタイプです。 頚椎捻挫だけでなく、脊椎椎間板ヘルニアなどが合併した場合に分類される傾向にあります。重度の場合、歩行障害や排尿困難・排便困難といった膀胱直腸障害を発症します。 Barre-Lieou型(バレー・リュー型)は首の痛みだけでなく、めまい・耳鳴り・難聴・視力障害などさまざまな症状が起こるタイプです。不眠症や不安症といった精神的な症状が合併するケースもあります。 むち打ち症(頚椎捻挫)の治療方法 交通事故やスポーツで強い衝撃が首にかかって頚椎捻挫を起こした場合、まずは意識障害や嘔吐・手足のしびれや麻痺、下半身の症状がないかを確認します。 意識障害や嘔吐がある場合、脳にも強く力がかかって調子が悪くなっている可能性があるため安静にし、必要に応じて脳神経外科の受診をします。 手足のしびれや麻痺・下半身に症状がある場合は、頚部に強い力がかかって骨の変形や骨折もありえますので、首をなるべく動かさないようにして、安静にして病院を受診します。 病院を受診した場合、まずは骨折がないかレントゲンやCTを行い確認します。もし骨折や変形があれば医療機関で治療を行い、骨折や変形がなければ、頚椎捻挫と診断されます。 頚椎捻挫は炎症が重症にならないよう、受傷直後から1〜2日程度は冷やして安静にすることが大切です。 急性期(受傷時)の治療 ・安静を保つ ・炎症が重症にならないように注意 ・冷やして安静にする(受傷直後から1~2日程度) 急性の炎症が落ち着いたら、筋肉の萎縮や硬直を防ぐためにも少しずつ動かしていきましょう。最初はストレッチや可動域訓練から始め、マッサージや軽い運動を行います。また、並行して痛み止めの内服や湿布薬を使用していきます。 急性期後の治療 ・ストレッチ(可動域訓練) ・マッサージ ・日常的な普段通りの生活 ・痛み止め(内服) ・湿布薬 ・牽引療法や温熱療法 ・ハビリテーション 急性期後は整形外科クリニックなどで、牽引療法や温熱療法や通院リハビリテーションを行うケースもあります。慢性化する場合は、さらに鍼治療・漢方薬・精神療法・認知行動療法といった、補完的な治療も必要です。 また、癒着した筋膜に生理食塩水を注入するハイドロリリースや、神経根に対して局所麻酔を投与してしびれや痛みを軽快する神経ブロックなどもペインクリニックなどで検討されます。 むち打ち症(頚椎捻挫)の完治期間 症状が軽快するまで通院を行うことが一般的です。軽症であれば1カ月弱で改善しますが、数カ月通院を必要としたり場合によっては慢性化するケースもあります。 特に交通事故やスポーツ外傷の場合は保険も関わってきますから、医師とよく相談し、必要に応じて積極的な通院が必要です。 軽いものであれば自然に軽快しますが、むち打ち症(頚椎捻挫)が完治しないうちにまた強い衝撃が加われば頚椎捻挫が重症化する可能性もあります。 とくにスポーツ外傷では軽快するまでむち打ち症になりかねない激しい運動への復帰は控えましょう。 もし、むち打ち症(頚椎捻挫)後、症状がこれ以上改善しない場合は、症状固定と判断され、行為障害診断書を発行したのち後遺障害等級の認定を受けることも検討する必要があります。 後遺症は以下の通りです。 多くの場合、14級や12級で認定します。 むち打ち症(頚椎捻挫)後遺障害等級 1級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に要介護 2級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護 3級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、生涯働けない 5級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特とくに軽易な労務以外働けなくなった 7級 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外働けなくなった 9級 神経系統の機能または精神に障害を残し、就ける仕事の程度が制限された 12級 局部に頑固な神経症状を残す 14級 局部に神経症状を残す *症状固定となると、治療費、休業補償などは打ち切られますが、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料などが受け取れるようになります。弁護士や保険会社とよく相談の上、医師に認定を相談してみてください。 *症状固定とは ケガや病気を治療する上で治療を続行したとて現在の症状以上の改善を見込むことが難しいと判断された状態を指します。 まとめ|むち打ちを早く治すなら医師の指示を守ろう むちうち症(頚椎捻挫)は交通事故やスポーツ外傷で起きてしまうことが多いです。慢性化して日々痛みに悩まされることにもなりかねません。 また、むち打ち症には4つのタイプがあり(捻挫型、神経根型、脊髄型、Barre-Lieou型)、それぞれ異なる症状を示します。 治療方法としてはまず安静にし炎症を抑えることが重要です。その後ストレッチやマッサージ、湿布薬の使用などを行い、必要に応じて整形外科での治療を受けましょう。 治療期間は症状の重さによって異なりますが、一般的には数週間から数カ月かかることがあります。慢性化した場合は、補完的な治療や後遺障害の認定を受けることも考えねばなりません。 むち打ち症状を疑う場合は最寄りの整形外科医を受診するか、当クリニックにご相談ください。ちょっとした悩みでも真摯に対応いたします。 文献 病気がみえる11:運動器・整形外科 須田万勢、小林只 痛み探偵の事件簿 炎症?非炎症?古今東西の医学 厚生労働省 身体障害者手帳HP
公開日:2024.10.07 -
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減圧症による脳障害:その症状と後遺症に対する治療法を解説します ダイバーや潜水を仕事にしている方にとって気をつけなければいけない減圧症。重症になると脳障害を起こすことはご存知でしょうか。 減圧症による脳障害は適切な治療で回復することが多いです。しかし、一部の患者さんでは治療を行っても後遺症が残ってしまいます。後遺症はダイビングや潜水作業のみならず日常生活にも支障をきたす可能性がああります。 本記事では減圧症による脳障害で起こる症状、およびその「後遺症と治療法について解説」していきます。ぜひ最後までお読みください。 減圧症とは 血液や組織に出現した気泡が血液の流れを阻害したり、直接的に組織・臓器にダメージを与えたりするのが減圧症のメカニズムです。 高い圧のかかる場所では窒素などの気体が血液や組織中に溶解してしまいます。低い圧の場所に移動すると、これらの気体が溶けきれなくなります。これが減圧症の原因となる気泡です。 体にかかる圧が急激に減少する場合に起こることが「減圧症」という名前の理由です。代表的なケースは潜水から急浮上するときであるため、「潜水病」とも呼ばれます。 減圧症の重症症状 減圧症は重症度別に軽症のⅠ型と重症のⅡ型の2つに分けられます。 Ⅰ型では肘や肩などを中心とした関節痛、皮膚の発赤や痒み、疲労感などの軽い症状が多くみられます。 一方、重症度の高いⅡ型では次のような重篤な症状を認め、時に命にも関わります。 脳の損傷 ・頭痛 ・意識障害 ・痙攣 ・片麻痺 脊髄の障害 ・肢麻痺 ・排尿障害 内耳の障害 ・めまい ・吐き気 肺の障害 ・呼吸困難 ・咳 なお、同様に急激な減圧により起こる動脈ガス塞栓症という病気もあります。こちらは圧変化により肺の一部が破れ、その気泡が血液内に入り臓器血管を閉塞してしまうことで起こるものです。肺が破れる気胸などとともに心筋梗塞や脳梗塞をきたします。 動脈ガス塞栓症は減圧症との区別がつきにくく、同時に起こることもあるため注意が必要です。治療方針は一緒であるため、とくに重症例では動脈ガス塞栓症も合併している可能性を念頭に置きます。 減圧症による脳障害の症状 気泡が脳実質に障害を起こしたり、脳の小さな血管の血流障害を起こしたりすることで脳障害をきたします。 症状は障害を受けた脳の部位により多種多様です。 例えば、次のようなものが挙げられます。 脳障害の症状例 ・記憶障害 ・ふらつき(失調) ・まぶたや指の震え ・片麻痺症状 ・いつもと異なる異常な言動 ・意識障害 通常の脳梗塞と異なり、早期に適切な治療を行えば症状を残さずに回復する可能性があります。しかしながら広範囲のダメージを受けてしまうと、後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることすらあります。 減圧症が起こった場合の治療 減圧症発症時は、100%の酸素投与とともに、全身状態を落ち着けることが必要です。全身状態により、輸液・昇圧薬投与・人工呼吸など必要な処置を行います。 同時に、発症の早いうちに再圧療法が必要です。治療ができる医療施設は限られているため、専門施設へ紹介をされて搬送されることになります。 再圧療法とは、高い濃度の酸素と高い圧をかけることができる特殊な装置を用いる治療です。気泡を再び血液や組織中に溶け込ませるとともに、酸素を投与して血流障害が起こっている組織の回復を目指すものです。 基本的には初回の治療で完治を目指すことが原則です。ただし、神経症状が残ってしまった場合は追加治療を行います。 後遺症の可能性と治療について 前述のように、一般的な脳梗塞と違って適切な治療で症状が改善することが多いです。しかし、脳の広範囲にダメージが起こった場合や適切な治療時期を逃してしまった場合などは、障害を残すことがあります。 麻痺や失調・高次脳機能障害などが固定化してしまった場合は、リハビリテーションを行う必要があります。時間をかけて徐々に機能回復できる場合もありますが、不便さが残る可能性も高いです。 減圧症について気になるQ & A 減圧症(潜水病)に関してよくお聞きする質問を以下に記しました。 Q:減圧症を起こさないために注意すべきことは? 潜水当日の体調不良は減圧症のリスクを高めるといわれています。体調を万全に整えておきましょう。 急激な浮上を行ったり、1日に何回も潜ったりすると窒素が気泡化しやすくなるため、手順を守って過剰に潜ることは避けるべきです。 また、潜水直後に飛行機に乗ることは危険です。上空は圧が低いので、より減圧症が発症するリスクが高くなるからです。 Q: 減圧症と減圧障害の違いはなんですか? 減圧症は圧の急激な変化により窒素などの気泡が生じて組織障害をきたす疾患です。減圧障害とは、減圧症と動脈ガス塞栓症の2つの状態を合わせたものです。 とくに脳障害をはじめとした重症例ではこの2つの病態の鑑別が難しいことも多くあります。また、基本的な初期対応も同じです。そのため、近年では2つを合わせた「減圧障害」の呼び方がより一般化してきています。 まとめ・減圧症による脳障害|症状と後遺症、治療法について 減圧症の脳障害は重篤で、後遺症が残ってしまう可能性もあります。ひとたび後遺症が残ると、根気強いリハビリが必要です。 ダイビングや潜水に関わるお仕事をされている場合はしっかりと減圧手順を守るとともに、「おかしいな」と思ったらすぐに受診をしましょう。 なお、当院では最新治療の一つとして注目されている幹細胞治療を用いて、脳卒中など脳の障害による後遺症の治療を行っています。減圧症による脳障害の後遺症でお困りであれば、再生医療専門の当院にぜひ一度ご相談ください。 ▼以下もご覧いただけます 減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説! 参考文献 高谷陽一. 医学のあゆみ 276(4): 291-294, 2021. 梅村武寛, 堂籠博. 日本医事新報 (5120): 40-41, 2022. 工藤大介. 日本医事新報 (5062): 78-79, 2021. 日本高気圧環境・潜水医学会. 減圧症に対する高気圧酸素治療(再圧治療)と大気圧下酸素吸入. 2018年9月28日 土居浩, 朝本俊司, 荒井好範. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2020; 55: 26-33. 鈴木直子.柳下和慶, 外川誠一郎, 山見信夫, 岡崎史紘, 芝山正治, 椎塚詰仁, 山本和雄, 眞野喜洋. 日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 2012; 50: 1-9. 合志 清隆, 森松 嘉孝, 玉木 英樹, 村田 幸雄, 合志 勝子, 石竹 達也, 井上 治. 医学のあゆみ 263(3): 261-262, 2017. 小濱正博 レジデントノート 8(5): 667-674, 2006.
公開日:2024.10.07 -
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減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 減圧症は、急激な高気圧から低気圧への移動時に生じる症状の総称です。減圧症は、潜水や高地登山など、急激な気圧の変化が起こる状況で発症することがあります。 この記事では、減圧症対策として、その原因や予防するためのポイントを6つに分け、わかりやすく解説します。 減圧症の原因 減圧症のメカニズムとしては、身体の周囲の気圧が急激に低下することで、体内の血液や組織に溶け込んでいる窒素ガスが血液や皮膚・筋肉・臓器などの組織の中で気泡を作り、血流障害や組織の破壊を引き起こすというものになります。 潜水における減圧症 潜水中に吸い込んだ空気中の窒素は血液や組織に取り込まれますが、水圧が高いところではその量が増えていきます。すると、窒素は急速にそして過剰に血液や組織に溶け込みます。その状態で急速に水面に浮上すると、周囲の水圧が低下するために血管内や組織内で窒素の気泡が形成されます。 この気泡が、血管を詰まらせて血流を阻害したり、組織を破壊したり、炎症反応を引き起こすことで、さまざまな障害や症状を引き起こすのです。 減圧症は潜水後に起こることが多いので、潜水病とも呼ばれます。 減圧症の影響 減圧症では、水面に浮上した後に倦怠感や疲労感、食欲不振、頭痛などの初期症状が現れることがあります。そして、徐々に他のさまざまな症状も現れてきます。 減圧症には、以下の2つのタイプがあります。 症状(Ⅱ型は、Ⅰ 型よりも重症です) ・ Ⅰ型:皮膚や筋肉の症状(ベンズ)のみ ・Ⅱ型:呼吸・循環器症状(チョークス)や中枢神経症状を伴うもの 減圧症では、脊髄損傷も起こりやすいとされています。 その他には、脳障害、呼吸器系の障害(肺塞栓など)、循環器系(心不全や心原性ショックなど)もあります。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害もあります。この骨障害は、肩関節や股関節によく起こります。特に、大腿骨頭壊死が起こると、歩行障害などの影響がでたり、重症な場合には手術が必要となることもあります。 減圧症の治療の応急処置としては、100%酸素吸入を行っていきます。そして、専門医療機関では、高気圧酸素療法が行われます。 減圧症の予防ポイント6つ! ダイビング時だけでなく、登山時にも引き起こされることがあります。減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説します。 ①潜水前の注意 減圧症は、以下に述べるような要因があるとそのリスクが増大します。 以下のようなリスクがないかどうか、潜水前にチェックしておくことが大切です。 ここにあげたようなリスクがある方については、医師に事前に潜水をしてよいか、確認をしておく方がよいでしょう。また、潜水前には、適切な訓練と手順を確実にチェックし、それを守ることが必要です。 リスクを避けるためのチェック項目 ・卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 ・疲労 ・肥満 ・高齢 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 また、浮上の速度は15〜30cm/秒を超えないようにします。さらに、水深3~4mの地点で3~5分間の安全停止をすることも、圧力の平衡を保つために推奨されています これに関しては、米国海軍潜水マニュアル(United States Navy Diving Manual)といった正式なガイドラインなどを参考にして、浮上したりすることで減圧症の予防につとめましょう。 ③潜水後の注意 ダイビング後12〜24時間以内は飛行機に乗らないようにしましょう。 潜水活動を行った後に飛行機に乗るような場合には、12〜24時間は海抜0の場所にとどまり、一定期間の休息後が望ましいとされています。 ダイビング後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まることが知られているのです。 ④高地登山の適切な計画 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、それによって減圧症が引き起こされることがあります。 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。適切な装備の使用や体調管理も欠かせません。 ⑤十分な水分摂取 どの状況においても、十分な水分摂取が重要です。 水分不足は体調不良を引き起こしやすくなりますので、こまめな水分補給を心掛けましょう。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山など、特定の状況における活動前には、専門の医師や指導者に相談し、適切なアドバイスを得ることが賢明です。 以上のポイントを守ることで、減圧症のリスクを最小限に抑え、安全にダイビングをしたり登山をしたりすることが可能となるでしょう。 まとめ・減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 今回の記事では、減圧症の原因やメカニズム、予防法について詳細に解説しました。 しかしながら、適切な予防法をとっていても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションを行ったり、場合によってはステロイドなどの薬物治療が行われることが一般的です。しかしながら、こうした方法は根本的な治療法ではありませんでした。 そこで当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられており、今後に期待が持てる治療の一つと言えます。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE ▼減圧症のセルフチェックは以下です 減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご紹介 参考文献 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 潜水時の予防措置および潜水障害の予防 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
公開日:2024.10.07 -
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減圧症(潜水病)軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご説明 潜水病、または減圧症は、潜水中に急激な水圧の変化にさらされた際に発生する症状です。軽度の場合、自然治癒が見込まれることがあります。ただし、症状をきちんと知って早期に対応することが重要です。 今回の記事では、軽度の減圧症の症状と、そのチェック方法、また重症な減圧症症状について解説していきます。 減圧症とは 減圧症は、減圧障害(decompression illness)の一つです。 減圧障害は、ダイビングなどで急激な気圧環境の変化により体液中に増加した溶解ガスが、代謝されない不活化ガスとして組織や血管内で気泡化した結果、組織障害や循環障害をおこす減圧症(decompression sickness,DCS)と、減圧により生じた肺胞障害をきたし、肺胞ガスが血液に流入し塞栓症をおこす動脈ガス塞栓症(arterial gas embolism,AGE)に分類されています。 なお、減圧症は潜水後に発症することが多いために、潜水病と呼ばれることもあります。関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害といった症状が代表的なものです。 減圧症は、軽度な症状を呈するI型減圧症、重症のII型減圧症の二つがあります。ここから、それぞれについて述べていきます。 潜水病|軽度の場合、その症状とチェックリスト それでは、軽度の潜水病の症状についてより詳しく解説していきます。 軽度の潜水病では、以下のチェックリストに記載したような症状が現れます。ご自分でチェックいただけ、その際の対応方法 ☑症状セルフチェックリスト ▢関節や筋肉の痛み ▢皮膚発疹やかゆみ ▢疲労感 ▢吐き気や頭痛 ▢注意力散漫 上記の症状が現れた場合、以下のように対応していきます。 チェックリストで対応が必要な場合 1. 症状の把握:上記の症状が自身に当てはまるか確認する 2. 早期対応:症状が出たら、すぐに潜水を中断し、水の中から上がります 3. 酸素の供給:酸素を吸入することが症状の軽減や悪化予防に役立ちます 4. 医療機関を受診:症状が持続する場合は、医療機関を受診し、専門医の診断・治療を受ける ダイバーや潜水士などが皮膚のかゆみや発疹、疲労だけを訴えている場合は、フェイスマスクを着用し、100%の酸素を吸うことが応急処置として推奨されています。 減圧症の初期対応が他の救急疾患と異なる点は、この100%酸素療法が勧められていることです。軽度の場合はこれらの対応で改善することが期待されます。 一方、重症な場合には次に述べるような問題が起こります。 重症の減圧症の症状 重度の減圧症になると、呼吸・循環器症状や脳障害や脊髄損傷による中枢神経症状を伴います。これらは、脳型減圧症や脊髄型減圧症とも呼ばれます。 脳型減圧症 脳型減圧症による神経障害の発症機序としては、減圧後に血管内あるいは組織内に生じた気泡により血流障害、または直接的な組織障害が生じることが原因とされています。その詳細はまだ明らかではない部分もあります。 脳型減圧症になると、脳卒中に似ている症状が現れます。つまり、減圧症の症状の一つとして脳の中で気泡が出来てしまう場合に、頭痛、錯乱、発話困難、複視といった症状も出てくるのです。 脊髄型減圧症 脊髄型減圧症は、II型減圧症の中で最も多いとされています。 脊髄型減圧症の症状としては、腕や脚にしびれや痛み、筋力の低下、またはこれらが組み合わさったものがあります。これらの痛みやしびれなどは、放置しておくと数時間で治らない麻痺にまで進行してしまう場合があります。 また、脊髄損傷と同様に、排尿や排便が制御できなくなる、膀胱直腸障害が現れることもあります。腹痛や背部痛も症状として挙げられます。 呼吸器の減圧症 チョークス(呼吸器の減圧症)はまれなのですが、深刻な症状が現れます。 この肺の症状として、具体的には息切れや胸痛、咳嗽などがあります。こうした症状は、肺水腫(はいすいしゅ)といって、肺が水浸しになり、酸素と二酸化炭素の交換ができなくなる現象が起こってしまうことから生じます。 また、肺の血管に多量の気泡による塞栓(そくせん)が生じるために、細かな血管などが詰まってしまい、その結果血液を身体に十分に届けることが出来なくなってしまい、死亡につながることもあります。 減圧性骨壊死 減圧症の長期的な症状として、減圧性骨壊死があります。 この骨壊死は気圧が高い場所に長時間滞在したり、短い間隔で潜水したりすることにより起こってしまうことがあります。 骨壊死が起こる部位としては、肩関節面や股関節面などがあります。減圧性大腿骨頭壊死が起こると、生活の質が下がる原因となり、場合によっては手術が必要となることもあります。 減圧症の治療 減圧症の治療は、まずは100%酸素投与が基本となります。また、脱水に陥っていることが多いため、口から飲める場合には経口補水液を飲ませます。もし飲水が難しい場合には、点滴で輸液といって水分や電解質を補う治療をしていきます。 そして、専門の医療機関で高圧酸素療法を行っていきます。 減圧症を疑う場合には、早急に治療を開始することが大切になります。もしも重症の減圧症の症状が出てしまい、潜水後に意識障害や呼吸困難に陥っている場合や、心肺停止に陥った場合には、心臓マッサージや人工呼吸などの救急対応をすることも必要です。 まとめ・減圧症(潜水病)軽度なら自然治癒も!症状をセルフチェックする! 今回の記事では、減圧症の症状について、軽度なものから重症なものまで詳細に解説しました。 軽度な症状のチェックリストに当てはまる場合には、早めに酸素吸入を行うと軽度の症状であれば治ることもあるのですが、重症の場合には完全には麻痺などの症状が治らない場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、これまで根本的な治療法がありませんでした。そこで当院では、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。 この治療は、幹細胞を脊髄に直接注入するというものです。今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も複数いただいています。 減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 ▼減圧症に際し、以下も参考にされませんか 減圧症の治し方と後遺症の最新治療法!医師が解説! 参考文献 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 減圧障害の最善の対処法は何か? -初期対応の酸素吸入と高圧酸素治療 について-J UOEH(産業医科大学雑誌).2021;43(2):243-254 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p454 比較的若年の潜水漁漁師にみられた 減圧性骨壊死.産衛誌.2017; 59(2): 59-62
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について はじめに もやもや病という病名を聞いたことがあるでしょうか?正式には、「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳の血管が閉塞もしくは狭窄することによって引き起こされる脳に起こる疾患です。もやもや病には、脳の血液供給の大事な一部を担う、内頚動脈や中大脳動脈とよばれる血管が関与しています。 この記事では、もやもや病の病態や症状、治療などについて詳しく解説します。もやもや病について正しく理解を深めましょう。 もやもや病とは? もやもや病は、脳に血液を送るための重要な血管である「内頚動脈」が、狭くなったり詰まったりすることで起こる疾患です。このようになると足りない血液を補おうと、細い血管が脳内に異常に発達していきます。画像検査では、この細い血管がまるで「もやもやした煙」のように見えます。これが「もやもや病」という名前の由来です。 もやもや病は、10歳以下の小児で症状が現れる場合と、30〜40歳代の成人で現れる場合の2つのパターンが多く見られます。 ウィリス動脈輪の構成について まず、もやもや病の原因となる、ウィリス動脈輪について解説します。 ウィリス動脈輪は、脳内に形成されている血管経路であり、その名の通り、輪になっています。内頚動脈と椎骨・脳底動脈という重要な血管から流れた血液を脳内に供給するため、重要な役割を担っています。その一部が閉塞もしくは狭窄すると、脳の特定の部位への血流が不足してしまうため、非常に重要な血管経路です。 もやもや病では、このウィリス動脈輪のなかで、内頚動脈から中大脳動脈・前大脳動脈が分岐する部分に狭窄が起きます。どうしてその部分が狭窄してしまうのかは、はっきりとはわかっていません。 ウィリス動脈輪の狭窄が起こることで、中大脳動脈や前大脳動脈から供給を受けている脳細胞への血流が低下します。私たちの体は、この血流を補おうとして、小さな新しい血管(側副血行路)を形成します。この側副血行路が、MRIや血管造影で、もやもやとした陰影として見られるため、もやもや病と呼ばれるようになりました。 もやもや病の症状|もやもや病は何が危険? ここからはもやもや病の症状について詳しく解説していきます。 もやもや病で形成された側副血行路は、細い血管であるため不足した脳への血流を十分には補うことができません。 小児では、熱いものをフーフーと冷ましたり、楽器を吹いたりした際に症状を発症することが多いです。これは、過呼吸になることで、脳の血管が収縮し、血流を十分に送ることができなくなるからです。そうすると、一時的に脳への血流が不足し、脱力発作やけいれん、意識障害などを引き起こします。 小児の症状 ・脱力発作 ・けいれん ・意識障害 成人でも、小児と同じように一時的な脳虚血の症状で発症することもあります。具体的には、手足がしびれる、うまく手足を動かせない、言葉が出にくいなどがあげられます。 成人の症状 ・手足がしびれる ・うまく手足を動かせない ・言葉が出にくい しかし、もっと怖いのは一時的な症状ではなく、「脳梗塞」や「脳出血」を起こしてしまう可能性があるということです。 成人では、ウィリス動脈輪のうち閉塞していない椎骨・脳底動脈への血流が増え、その負荷によって椎骨・脳底動脈に動脈瘤が形成されるケースがあります。その動脈瘤が破裂してしまうと、脳出血やクモ膜下出血を突然発症する可能性があるのです。これらは成人のもやもや病の発症パターンの半分を占めます。 また、細く脆いもやもや血管が閉塞してしまうと、脳梗塞を引き起こします。小児のように一過性の虚血発作であればよいですが、そのまま血流が回復せず脳細胞が死んでしまうと、長期的に続く麻痺や機能障害が残ってしまいます。 もやもや病の危険性 ・脳梗塞 ・脳出血 ・くも膜下出血 もやもや病の治療と予後について もやもや病は、患者さんの年齢やどんな症状で発症したか、また症状の重さなどによって、治療法や予後が異なります。症状が軽度である場合は、小児では、慎重な経過観察を行いながら、内科的な薬物療法などを行う場合が多いです。 また、脳血流を改善させるための手術もあります。浅側頭動脈という頭蓋骨の外側にある血管と中大脳動脈を直接吻合する血行再建手術です。バイパス術ともよばれます。この手術を行うことで、脳梗塞や脳出血のリスクを減らすことができます。 ただし、脳梗塞や脳出血で発症してしまうと、重篤な後遺症を残す可能性もあります。後遺症が残った場合には、リハビリテーションを重点的に行い、併せてこれ以上脳出血や脳梗塞を繰り返さないように、薬物療法を行います。 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)についてのQ&A Q . どのような検査をすればわかりますか?人間ドックで調べられますか? A . 血管造影という造影剤を用いた方法でもわかりますが、最近はMRAと呼ばれる造影剤を使わない検査で、もやもや血管を確認することができます。 MRAはMRIの一種で、電磁波を当てて脳の血管を立体画像として書き出すことができる検査です。通常の人間ドックでは行われない場合もありますので、心配な場合は脳ドックを受けることをおすすめします。 Q . もやもや病になりやすい人はいますか? A . もやもや病は日本を含む、東アジア諸国に多いといわれています。 また、15〜20%の方では血のつながった家族に、もやもや病の方がいて、遺伝する可能性があるといわれているため、家族にもやもや病の人がいる方は、脳ドックなど受けてみると良いでしょう。 まとめ・もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは|その症状と治療法について 今回は、もやもや病について解説しました。 脳梗塞や脳出血で発症した場合は、命に関わる可能性がある非常に怖い病気です。ですが、早期発見できれば、重篤な後遺症を残さず社会復帰できる可能性も高くなります。 どのような症状が危険信号なのかを知っておくことで予防できますので、是非みなさんも、もやもや病についてご理解頂ければ幸いです。 ▼モヤモヤ病については、以下もご参考にしていただけます もやもや病による性格変化とは?高次機能障害について解説
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント もやもや病とは、脳の重要な血管である内頸動脈が細くなり、代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 この記事では、もやもや病の大人と子どもの違いや注意すべきポイントについて述べていきます。 もやもや病とは? もやもや病は、脳の血管に生じる病気で、脳の中の内頸動脈という重要な血管の終末部が徐々に細くなっていきます。人口10万人あたり3〜10.5人程度いると考えられており、日本人に多く見られます。 脳血管は脳に酸素や栄養を供給していますが、血管が細くなるにつれて脳の血流が足りなくなり、その足りなくなった血流を補うために、周囲に異常な血管(もやもや血管)が網のように出現します。このため、もやもや病では、脳血流不足による脳の虚血(きょけつ)や、異常に発達した細い血管が切れることで脳出血が起こります。 もやもや病の原因ははっきりしていませんが、ある特定の遺伝子を持つ方で発症しやすい傾向があるようです。 もやもや病の症状は大人と子どもでは異なる?注意すべきポイントは? もやもや病の症状は大きく分けると、脳虚血(脳血流が不足すること)、脳出血となります。その他にも、頭痛やけいれんといった症状がでることもあります。 さらに大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 子どもの症状 子どもの場合は、脳虚血症状がほとんどで、脳出血はまれとされています。 脳虚血症状としては、手足が動かしづらい、言葉がうまく出ない、手足や顔面が痺れる、などの症状が急に起こります。 特に、子どものもやもや病では、呼吸が激しくなること(過呼吸:かこきゅう)によって、この発作が起こりやすくなることが知られています。過呼吸となる場面としては、うどんなどの熱い食べ物を「フーフー」と吹く、リコーダーや鍵盤ハーモニカを吹く、または歌を歌ったり、大笑いしたりすること、激しく泣くことなどがあります。 こうした行動などによる一過性脳虚血発作は、自然に治りますが、脳梗塞の前触れなので、軽視してはなりません。特に、小さな子どもほど進行が早く、脳梗塞になる危険性が高いので、注意が必要です。 大人の症状 一方、大人の場合は、脳の血流不足を補うための側副血行路が破れて出血する、脳出血が起こることが多いです。 脳出血は、もやもや病による死亡や後遺症の最大の原因とされています。 もやもや病の検査や治療法は? ここでは、もやもや病の検査や治療法について解説します。 もやもや病の検査 もやもや病かどうかを検査する方法としては、MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影)、脳血管造影検査(カテーテル検査)、脳血流検査、の3つが代表的です。 検査方法 ・MRI(磁気共鳴画像診断)、MRA(磁気共鳴血管造影) ・脳血管造影検査(カテーテル検査) ・脳血流検査 いずれの検査も、安静にして行う必要があるので、小さな子どもの場合には、眠たくなる薬を使う場合が多いです。 もやもや病の治療 もやもや病の治療の目的は、脳梗塞や脳出血を防ぐこととなります。 治療法としては、薬による治療と、脳血流量を増やすためのバイパス手術があります。 薬による治療 ・薬による治療は、抗血小板薬で血液が固まるのを防ぐ方法があるが効果に限界がある。 バイパス手術 ・バイパス治療については、虚血型もやもや病の場合に、脳梗塞を予防する効果が認められています。 ・バイパスの治療には、頭皮の血管を脳血管に直接つなぎ合わせる「直接バイパス」 ・頭皮に血管をつけたまま血流豊富な組織として脳の表面に接触させて、新たな血管が生えるのを待つ「間接バイパス」 ・これらを組み合わせる手術があります。 ・大人の手術では、「直接バイパス」のみ、または間接と直接を組み合わせた「複合血行再建術」が行われます。 ・子どもの手術は、「間接バイパス」のみ、 もしくは「複合血行再建術」が行われ予後の改善効果がそれぞれ報告されています。 もやもや病についてよくある質問 Q:「もやもや病」の人はすべて手術をするのですか? A 症状が多発していない患者さんの場合は、すぐに手術をする必要はありません。 しかし、脳虚血症状がすでにある人や、脳血流検査での血流低下が認められる方、あるいは過去に頭蓋内出血の既往がある方に対しては手術を勧めるのが一般的です。 また、子どもの場合は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術適応は広く考えられています。 これらの観点を元に、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者さんの状況を総合的に検討・判断して手術適応が決まります。 Q:子どもの「もやもや病」の予後はどのようになっていますか? A 子どものもやもや病の場合は、ほとんどが脳虚血発作なので、大きな脳梗塞が起こる前に、バイパス手術を受けることができれば、その後脳梗塞を発症することは少ないとされています。 社会生活については、8割以上の子どもたちが通常の生活を送ることができます。一方、2割弱は普通学級への就学困難、もしくはその後の就職が困難になってしまうようです。 診断が遅れ、手術治療を受ける時点ですでに脳梗塞が起こってしまっていると、その後の社会生活に支障が出てしまう可能性がありますので、早期診断と適切なタイミングでのバイパス手術がとても重要です。 まとめ・もやもや病の症状、大人と子どもでの違いや注意すべきポイント 今回は、子ども・大人のもやもや病の違いについて解説しました。 脳梗塞や脳出血をきたす前に、もやもや病の診断・治療を受けることが大切です。脳梗塞や脳出血後の後遺症に対しては、機能回復のためのリハビリテーションが行われますが、再生医療を組み合わせることで、身体機能の改善効果の向上が期待できます。 この記事がもやもや病の大人と子どもの違いについての理解を深めるのに役立てば幸いです。 参考文献 もやもや病…ここまできた診断・治療 日本小児神経外科学会|小児もやもや病 ▼もやもや病の情報、以下も参考にされませんか もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と予防策について解説
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病の後遺症による性格変化とは?高次機能障害について解説 もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなり、そのかわりにバイパスとなる細い血管が発達することにより起こる病気です。 細い血管は検査で見ると「もやもやと煙が立ち上るよう」に見え、この所見が診断基準にも必須の項目となっています。この「もやもや血管」が収縮してしまうと、脳に十分な血液が行き届かなくなります。その結果、意識障害や脱力、てんかん、頭痛などの症状を発作的に繰り返すのです。 また、細い血管は詰まったり破れたりしやすいため、脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)を起こしてしまうこともあります。脳卒中の後遺症というと、麻痺や感覚障害が思い浮かぶかもしれません。しかし、一部の患者さんでは、麻痺などがなくても、生活や仕事に差し障る後遺症を残すことがあります。それが「高次脳機能障害」です。 本記事では、「もやもや病の後遺症」としての高次脳機能障害について、どのようなことが起こるのか具体例を交えて解説していきます。 高次脳機能障害とは? 「高次脳機能」とは、さまざまな情報をもとに、高度で複雑な処理をする脳の機能のことです。 大脳をその機能別に見てみると、運動や感覚などを司るはっきりとした機能がある「一次野」と、それ以外の「連合野」に区分されます。連合野は特に人間で大きく発達した部分で、高次脳機能に関わるところです。情報をもとに考えたり、感じたり、何かの行動に移したりということを可能にしています。 この連合野がなんらかの原因で傷つくとどうなるでしょう。複雑な処理の過程で支障が起こります。例えば、記憶や行動、物事を実行する能力の障害など、損傷部位に応じて多彩な症状をきたします。その結果、日常生活や社会生活を送る上で制約を受けている状態が「高次脳機能障害」です。 もやもや病と高次脳機能障害 もやもや病は、もやもや血管が詰まったり破れたりすることで、脳卒中をきたします。それだけでなく、明らかな脳卒中のエピソードがなくても、血液の巡りが悪いため、脳にダメージが蓄積されていくリスクもあるのです。このようにして、脳の連合野にダメージを受けると、高次脳機能障害を認めます。 どのような症状が出るかは、障害部位によって変わってきますが、もやもや病では「前頭葉の障害」が起こることが多いです。 前頭葉の働きと高次脳機能障害 もやもや病で障害を受けやすい前頭葉は、大脳の前の部分に位置します。前頭葉にある、「前頭連合野」は、ヒトで特に発達している部分です。本能や激しい感情の動きをコントロールして、思考力・創造性・社会性を発揮するための機能を果たす役割があります。単に欲求に従うのではなく、状況を見極めて判断し、意味のある行動を起こすという「人間らしさ」に関わる場所なのです。 具体的に前頭連合野の障害による高次脳機能障害の症状を見ていきましょう。 〈前頭連合野の障害による高次脳機能障害の例〉 記憶障害 ・作業記憶(ワーキングメモリー)が障害されます。 ・作業記憶の障害は、何かを行うときに一時的においておく「記憶の引き出し」が使えません。 ・聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す。 ・買い物を頼まれても何を買えばいいか忘れてしまう。 注意障害 ・注意障害があると、気が散りやすくなり、一つの物事に集中できません。 ・ちょっとした周りの変化が起こるとそちらに気をとられ、動作が止まってしまいます。 社会的行動障害 ・自分の感情をうまくコントロールできなくなります ・突然かっとなり怒りだすなど感情の振れ幅が大きくなります。 ・ギャンブルにのめり込みやすくなるなど、欲求がうまく抑えられません。 ・逆に、人や物事に興味がなく、自発性がなくなることもあり社会生活上で問題になります。 遂行機能障害 ・物事を順序立てて行うことができなくなります。 ・段取りが悪くなり、優先順位をつけることができなくなります。 ・臨機応変に行動することができず、ちょっとしたトラブルにも対応することができません。 このように、前頭葉の障害による高次脳機能障害が起こると、無責任で怒りっぽくなったり、意欲や興味がなくなったりと、まるで性格変化をしたようになってしまいます。 もやもや病による高次機能障害についてよくあるQ & A Q1.高次脳機能障害は完治しますか? 脳に傷がある状態なので、完全に治すことは難しいです。しかし、得意なこと、苦手なことを考えた上で工夫をしていくことにより、より生活をしやすいようにしていくことはできます。根気強いリハビリが大切です。 Q2.脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか? 脳卒中では一般的に、発症直後の急性期を過ぎたあと、回復期リハビリテーション病棟というところに移ってリハビリを続ける方が多いです。回復期リハ病棟では、脳血管障害の入院期間は一般的に150日となっています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院が可能です。 この期間全部を使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺などと違って一見して分かりづらく、周りの理解が得られにくいことが多いです。社会復帰のためのリハビリや環境整備のためにしっかり時間をかけていくことが必要です。 まとめ・もやもや病の後遺症、性格変化とは?高次機能障害について もやもや病による後遺症のうち、高次脳機能障害は外見では分かりにくいものです。 しかし、社会生活を送る上で大きな支障をきたしてしまいます。苦手なことをカバーするための訓練を行うとともに、周囲が理解し、支援を続けていくことが必要です。当事者や家族のみで悩まず、。 もやもや病の方で上記のような症状があり、日常生活に困っているときは、まずは地域の高次脳機能障害支援のための拠点機関に相談してみる必要があります。 リハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどが該当します。地域の自治体のホームページなどでも情報提供されていることが多いため、一度専門機関で相談をされることをおすすめします。この記事がご参考になれば幸いです。 ▼もやもや病の後遺症については以下でも解説しています もやもや病による後遺症|社会復帰や運転への影響について 〈参考文献〉 中川原. BRAIN NURSING. 31(11), 32-34, 2015. 冨永ら.脳卒中の外科. 46 (1), 1-24, 2018. 中村. 日本臨牀 80(増刊号1), 386-390, 2022. 平岡. 日本臨牀 80(増刊号1), 592-596, 2022 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 坂井. 標準解剖学第1版, 医学書院. 2017.
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は脳卒中を引き起こす脳血管の病気です。この病気は長きにわたって、原因不明の難病とされていました。しかし、一部では家族内で複数人のもやもや病患者さんがいることがわかっており、遺伝が関与する可能性が考えられています。 本記事では、家族性に発症するもやもや病について解説していきます。 もやもや病とは もやもや病患者さんでは、内頸動脈終末部という脳の主要な血管が徐々に狭窄を起こします。足りない血液を補うため、代わりに細い血管が多く発達します。MRA(磁気共鳴血管撮影法)や脳血管造影などの画像の検査では、このような細い血管がもやもやとした煙のように描出され、これがもやもや病という名前の由来です。 細い「もやもや血管」のせいで脳は血流不足を起こしやすくなります。脳に血が回らなくなる「脳虚血」の状態になると、再発性の脱力や手足の痺れ、てんかんなどを認めます。また、もやもや血管は高い血圧によるストレスで破れやすいです。そのため、一部の患者さんでは脳出血を起こします。 もやもや病はどんな人に発症する? もやもや病の患者さんは、人口10万人につき3〜10.5人ほどいるとされています。女性患者さんが男性の約2倍ほどです。 小児での発症 発症する年齢は最多が小児期で、5〜10歳頃が多いとされています。 子供の場合は、脳虚血発作を認めることが多いです。発作は、息を大きく早く吸ったり吐いたりする「過呼吸」により誘発されやすくなります。これは、二酸化炭素が減り、脳の血管が収縮しやすくなるためです。例えばハーモニカなどの楽器の演奏や、熱いラーメンをふーふーと冷ますことがリスクになります。また、痛み止めの効かない頭痛や、てんかんを起こすこともあります。 成人での発症 小児期以外で発症が多いのは、30〜40歳の成人です。 大人の場合は、半数は脳虚血の症状をきたしますが、残りの半分程度は脳出血で発症すると言われています。また、MRIの普及により、症状がなくても、脳ドックなどの機会に血管の異常が判明する患者さんも増えてきています。 家族性もやもや病 実は、もやもや病の10〜20%の方で、家族内の発症が認められているのです。そして、家族性もやもや病の一部では、「表現促進現象」を認めることがあります。表現促進現象とは、次の世代にうつるにつれて、発症年齢が早くなり、また、より重症化しやすくなることです。 もやもや病と関連した遺伝子とは? もやもや病は、発症に人種差があることもわかっています。この病気が発見されたのは日本でした。その後の報告でも、東アジアでは他の地域よりも多いことが判明しています。 家族内での発症や人種での違いがあることから、もやもや病の発症には、遺伝的な因子があるのではないかと考えられていました。 そして、近年、「RF213」という遺伝子に「遺伝子多型」があると、もやもや病が発症しやすくなるということが判明しています。 遺伝子多型 私たちの体を構成する細胞は23組46本の遺伝子を持っています。遺伝情報を構成するDNAは、塩基・リン酸・糖という3つの部品からなる「ヌクレオチド」が繋がってできたものです。このうち、塩基にはアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類があります。4種類の塩基の並びで遺伝情報が決まっています。 遺伝情報は、ヒト同士であればほとんどの部分は同一です。しかし、わずかに塩基配列のバリエーションが違う部分があります。この塩基配列の違いを遺伝子多型と呼びます。遺伝子多型があっても、個人間の差がないことも多いです。しかし、一部の遺伝子多型は、個人の特徴を決定づける肌や髪の色の違い、さまざまな体質の違いなどとなって現れます。 RF213遺伝子多型p.R4810K RF213遺伝子は、23ペアのうち17番目の染色体にある遺伝子です。もやもや病の日本人患者さんのRF213遺伝子を調べると、8〜9割もの患者さんにおいて「p .R4810K」という遺伝子多型があることがわかりました。このことから、RNF213遺伝子多型が、もやもや病の発症と大きく関わっていることが推察されます。 しかし、このp .R4810Kという遺伝子多型は、健常な日本人の1〜2%も持っていることがわかっています。つまり、RF213遺伝子多型を持っている人のごく一部がもやもや病を発症しているに過ぎないのです。 現在では、もやもや病の発症には、このような遺伝的な背景に加えて、何かしらのきっかけがあって起こるのではないかと考えられています。 もやもや病の遺伝についてよくあるQ&A Q , もやもや病の患者がいる家系なので子供の発症が心配です。画像検査は何歳からできますか? A ,結論から言うと、何歳から可能かは、お子さんの状況や、病院によって異なってきます。 外来で検査が可能なのはMRAという検査です。磁気を使って脳や血管の状態を調べるため、体への負担は大きくありません。ただし、じっとしていないと撮影は難しいです。狭い機械に入らなければいけないため怖がってしまう子もいます。場合によっては鎮静剤を使って眠った状態で検査をしないといけません。 その一方で、お子さんの場合は、早めに適切な対処をすると予後も良いことがわかっています。検査するかどうか、いつするのかについては病院に相談されることをお勧めします。 Q , もやもや病が心配なので、遺伝子検査はできますか? A , 残念ながら現時点で、RNF213遺伝子の多型を通常の診療で検査することはできません。そもそも、この遺伝子多型を持っているから発症するのではなく、あくまで「もやもや病を起こしやすい」遺伝子多型です。診断は遺伝子の検査ではなく、血管の画像の検査を中心に行います。 まとめ・もやもや病は遺伝するのか?家族性もやもや病、遺伝との関係 もやもや病は一部で家族性に発症を認めます。発症と関連した遺伝子も見つかっています。しかし、絶対に遺伝するわけではなく、発症についてはまだわかっていないことも多い病気です。過剰に遺伝を心配し過ぎる必要はありませんが、気になることは専門医としっかり相談をしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 中川原. Brain Nursing. 31(11): 1064-1066, 2015. Koganebuchi K, et al. Ann Hum Genet. 85(5):166-177, 2021. 公益財団法人循環器病研究振興財団 知っておきたい循環器病あれこれ117 もやもや病…ここまできた診断・治療 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/47.最終閲覧2023年7月3日. 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22).https://www.nanbyou.or.jp/entry/209.最終閲覧2023年7月3日 小児慢性特定疾病情報センター 対象疾病 39.もやもや病. https://www.shouman.jp/disease/details/11_15_039/. 最終閲覧2023年7月5日 ▼モヤモヤ病の原因など、以下のページも参考にされませんか もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について解説します もやもや病は脳血管の異常により起こる、原因不明の難病です。 もやもや病は脳梗塞をまねく可能性があり、その先の社会生活に大きな影響を及ぼすことがあります。しかし、上手にリスクに対応できれば、脳梗塞を起こす可能性を少なくすることができます。 この記事では、もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と、予防策を中心に解説をしていきます。 もやもや病ってどんな病気? もやもや病は、一時的に脳内に充分な血液がめぐらなくなる「脳虚血発作」をきたします。 発作時には、麻痺や手足のしびれを起こしたり、うまく言葉がしゃべられなくなったりします。病気が進行すると、てんかんを起こしたり、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血を発症したりすることもあるのです。 脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる状態です。 この発作は、生活上の注意で避けられることも多くあります。ひとたび脳梗塞が起こると、梗塞部の脳細胞は死んでしまいます。結果、麻痺・言葉の障害や、記憶・注意・感情などに関連する高次脳機能障害といった後遺症をもたらします。 子供と大人での発症の違い もやもや病の発症年齢には、10歳くらいまでと、30〜40歳代の2つの山があります。 子供の場合は、脳虚血の症状で発症することが多いです。 一方、大人では脳虚血の他に、細い血管が破れる出血で発症することもあります。 最近では、自覚症状がないまま、人間ドックなどで、もやもや病が見つかる人も増えています。長年の頭痛の原因が、もやもや病であった、ということもあるようです。 なお、この病気は法律の定める指定難病の一つです。画像検査で診断が確定したうえで、一定以上の重症度と考えられる方には、申請により医療費の補助がおります。 もやもや病による脳梗塞を防ぐには? もやもや病による脳梗塞を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、前ぶれである脳虚血発作を繰り返さないようにすることです。 〜子供の場合〜 子供の場合、脳虚血発作の多くは過呼吸、つまり激しく息を吸ったり吐いたりすることで起こります。過呼吸により二酸化炭素が体から出ていくと、脳内の血管が縮みます。そうなると、脳の血のめぐりが悪くなり、発作を起こすのです。 脳虚血発作を繰り返している方は、日常生活では、この過呼吸状態を避ける必要があります。 具体的には、次のようなことが挙げられます。 過呼吸につながる行動 ・激しく泣く ・大声で笑う ・息が切れるような運動をする ・笛やハーモニカ、鍵盤ハーモニカなどを演奏する ・大きな声で応援をする ・熱いものを「ふーふー」と冷ます こういったことを制限すると、保育園・幼稚園や学校での生活に大きく影響してしまうことになります。保護者や学校の先生など、周囲の大人の理解と協力が必要になります。 また、脱水も脳の血のめぐりが悪くなってしまう原因になります。嘔吐や下痢・高い熱の時は、こまめに水分をとることを心がけてください。暑くなる季節には、熱中症を予防することも重要です。 〜大人の場合〜 大人の患者さんでも、発作を引き起こす行動があれば回避する必要があります。 加えて、脳梗塞の一般的なリスク管理が必要です。高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの方は、しっかり治療を受けてください。肥満であれば体重を減らす必要があります。タバコを吸っている方は禁煙をしてください。アルコールの飲み過ぎは、脱水につながるので気をつけましょう。 脳梗塞のリスク管理 ・生活習慣の見直し ・体重の管理 ・禁煙する ・アルコールを飲みすぎない 患者さんの状況によっては、血液をさらさらにするお薬を処方されることがあります。発作を繰り返す場合には、脳の血液の流れを改善するための手術を考えます。ひとりひとり、必要な治療は異なります。どのような治療をどのようなタイミングで行うのか、担当の医師ともよく話し合いましょう。 もやもや病と脳梗塞の関係についてよくあるQ & A Q, 発作が起こったときはどすればよいですか? A, まずは、状況を把握することが重要です。麻痺やしびれなどの症状を確かめましょう。そして、ゆっくり息ができるように休みましょう。 落ち着いたら、どのような状況でどのような発作が起こったのか確認しておくことも大切です。いつもより麻痺・しびれなどが長く続く、意識の状態が悪いなど、「なにかおかしい」と感じた場合は、医療機関を受診しましょう。 Q, この病気の治療や経過の見通しは? A, 脳梗塞・脳出血などを起こしてしまうと、たとえ命にかかわらなかったとしても、運動や言葉の障害や、記憶障害などの高次脳機能障害を残してしまうことがあります。そうなると、社会生活に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。 一方で、適切な管理・治療を受けた方の多くは、最終的には日常生活の制限なく安定して過ごすことができます。そのためにも、定期的に通院し、必要な治療のタイミングを逃さないことが大切です。 まとめ・もやもや病がまねく脳梗塞は、リスクの要因(因子)と予防方法を知って治療のタイミングを逃さないことが大切! 「脳の病気」「難病」といわれると、とても心配になると思います。しかし、適切なタイミングで適切な治療を受けることで、最終的には病気のない人とほぼ変わらない生活を送ることができるようになった患者さんが多くいらっしゃいます。生活上の注意点を守りながらきちんと通院し、担当医と治療方針を相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 冨永ら.もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版).脳卒中の外科 46 (1), 1-24, 2018 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/47 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/209 ▼モヤモヤ病の情報:以下もご覧になりませんか もやもや病の初期症状かもしれません|特徴やサインを知って早期発見を!
公開日:2024.10.07 -
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もやもや病を大きくわけると「虚血型」と「出血型」の2種類があります。発症した種類によって初期症状は異なります。 本記事では「虚血型」と「出血型」の違いを明確にした上で、それぞれの初期症状を詳しく解説します。 もやもや病は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を発症する可能性がある怖い病気です。この記事を参考にして初期症状のサインを知り、もやもや病の早期治療につなげていきましょう。 もやもや病の初期症状サイン【チェックリストあり】 もやもや病の初期症状を見る前に、もやもや病の特徴を理解しましょう。 もやもや病とは、脳に血液を送るための血管である「内頚動脈」が、徐々に細くなったり、詰まったりして、脳の血液不足を引き起こす原因不明の病気です。 不足した血液を補うために、細い血管が脳内に異常に発達していきます。血管を造影すると、細い血管が「もやもやした煙」に見えることから「もやもや病」と名付けられました。 もやもや病には、血管が狭くなるのが原因で血液不足を起こす「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血する「出血型」の2種類があります。 それぞれの初期症状のサインを見ていきましょう。 虚血型の場合 虚血型は、脳内の血管が細くなったり、詰まったりして血液不足を起こしている状態です。虚血型の場合、以下のような初期症状が現れます。 ▢頭痛 ▢けいれん ▢意識障害 ▢言語障害 ▢手足の麻痺 ▢手足のしびれ 虚血型は、血管の狭窄が進行すると脳の組織への血流が完全に途絶え、脳梗塞を発症するリスクがあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。疑われる初期症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。 また、血流不足は脳の前頭葉にダメージを与え、高次脳機能障害を引き起こす可能性もあります。前頭葉には感情をコントロールする働きがあるため、高次脳機能障害を発症すれば、性格変化の症状が現れるケースもあります。 もやもや病から発症する高機能障害については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 出血型の場合 出血型は、細かい血管の増加が影響して出血を起こす状態です。出血すると、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。初期症状は、出血の種類によって異なります。 たとえば、くも膜下出血の場合の初期症状は以下のとおりです。 ▢頭痛 ▢めまい ▢吐き気 ▢視力低下 ▢意識障害 脳出血やくも膜下出血は、運動や感覚の麻痺といった後遺症を残す可能性がある病気です。症状が深刻化する前に初期症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。 くも膜下出血や脳出血を含む脳卒中の治療法の1つに「再生医療」があります。身体のしびれや麻痺、言語障害といった後遺症も治療対象です。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 もやもや病の初期症状が現れたら早期に病院を受診する 血管が詰まって脳梗塞を起こした場合や、増加した血管から出血を起こした場合は、手足の麻痺や、言語の障害、脳機能障害などの後遺症が出ることもあります。そのため、早期に診断して専門の病院で治療を受けることが大切です。 以下の記事では、もやもや病が引き起こす脳梗塞のリスクについて解説しています。予防策も紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 適切な治療や管理を受けている場合には、約7割程度の方は症状的に安定して生活を送っていると推計されています。 脳の血管の狭窄は、最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない方もいれば、徐々に進行していく方もいるといわれています。従って、定期的にMRIなどによる画像検査が必要です。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。 「内科的治療」では、詰まりかけている血管の血液の流れを改善する際に、抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)、出血の予防を図るときは、血圧・脳圧をコントロールする薬を投与します。ただし、病院によって使用する薬が異なる可能性があるので、内科的治療を進める際は、事前に担当医に確認しましょう。 内科的治療を実施しても効果が不十分な場合や、根本的治療を目指す場合は、外科的治療を検討します。 もやもや病における「外科的治療」は、血行再建術(バイパス手術)です。バイパス手術は主に、頭皮の血管と脳表面の血管を直接つなぐ「直接再建術」と、血流が多い側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて接着する「間接血行再建術」の2種類があります。 以下の記事では、もやもや病の手術についてさらに詳しく解説しています。入院期間や手術の成功率なども紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 まとめ|もやもや病の初期症状を感じたら早急に専門家の受診しよう もやもや病の初期症状は、明らかに違和感を感じるような症状もあれば、風邪の症状と混同してしまうような症状もあります。 もやもや病は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血といった脳卒中を引き起こす可能性のある病気です。なるべく初期症状の段階で病院を受診し、早期治療するのが望ましいといえます。 「なんかいつもの体調不良と違う…」「こんな症状初めて!」などの違和感を覚えたら、もやもや病の可能性も視野に入れて病院の受診を検討しましょう。 もやもや病から発症する脳卒中の治療には「再生医療」が効果的です。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、損傷した脳細胞の機能回復を促進します。 脳卒中の後遺症も治療対象なので、具体的な治療法や効果が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 もやもや病に関するよくある質問 最後にもやもや病に関するよくある質問と回答をまとめます。 もやもや病で手術を受けた方がいい場合は? 内科的治療を試しても効果が見られない場合や、現時点で脳梗塞や脳出血の発症リスクが高いと診断された場合は手術を受けたほうが良いといえます。手術は脳梗塞や脳出血の予防にもつながります。 子どもが発症した場合、年齢が低いほど、脳梗塞や脳出血などの重篤な症状を出しやすいとされているため、診断がついた時点で手術を検討するのが良いでしょう。 もやもや病が遺伝する可能性はありますか? 現在でも詳細な原因は不明であり、必ずしも遺伝する病気というわけではありません。 最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されていますが、病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではないとされています。この遺伝子は、もやもや病がない一般の方にもみられる遺伝子ですので明らかな原因とは言えません。 家族内でもやもや病がみられる家族性のもやもや病は10〜20%であり、遺伝子以外に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。(文献1) 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。具体的な情報が知りたい方は、参考にしてみてください。 もやもや病の初期症状は子どもと大人で違いますか? 子どもと大人は同じ初期症状もありますが、発症しやすいもやもや病の種類が異なるため、症状に違いが見られる場合があります。 たとえば、子どもは虚血型のもやもや病を発症しやすいと言われており、虚血型の初期症状は手足のしびれや麻痺、言語障害などです。 大人は、出血型のもやもや病を発症しやすく、初期症状では頭痛やめまい、意識障害などを生じます。 ただし、子ども・大人どちらとも「虚血型」と「出血型」を発症する可能性はあるので、年齢に関わらず初期症状の知識を広く理解しておきましょう。 以下の記事では、もやもや病における大人と子どもの違いをまとめています。違いを見分ける上での注意点も解説しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 【参考文献】 文献1:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
公開日:2024.11.06