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「視界にギザギザが突然現れて不安で仕方ない」 「視界のギザギザした見え方は治るのか知りたい」 閃輝暗点は片頭痛や眼精疲労の一種と誤解されがちですが、脳や眼の重大な疾患の前触れの場合もあります。したがって、原因を特定し、早期に適切な治療を受けることが重要です。 本記事では、閃輝暗点の治し方を現役医師が解説します。記事の最後には、閃輝暗点の治し方についてよくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 閃輝暗点の治し方について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 閃輝暗点の治し方 治し方 詳細 眼に対しての過度な刺激を避ける 明るい画面や強い光を避け静かな暗所で安静に休憩 原因・根本疾患の治療を行う 脳神経外科や眼科での検査・診断による根本疾患の特定と治療 生活習慣の見直しとバランスの良い食事 十分な睡眠・規則的な生活・ストレス軽減・ビタミンやミネラルを含む食事 閃輝暗点に対する薬や手術による根本的な治療法は、現代医学では確立されていません。多くは数分から30分ほどで自然に治まりますが、脳梗塞や脳血管系疾患、片頭痛などの重大な病気が原因となる場合があります。 症状を繰り返す、または長引く場合は、早期に脳神経外科や眼科で検査を受け、根本疾患を特定し治療することが重要です。 予防のためには、強い光や長時間の画面注視を避け、十分な睡眠、規則正しい生活、ストレスの軽減を心がけます。加えて、ビタミンやミネラルを含む栄養バランスの良い食事を取り、不摂生を避けることが有効です。生活習慣の改善は、閃輝暗点の軽減だけでなく、背景疾患の予防にもつながります。 閃輝暗点の見え方や初期症状・治療法についての詳細は、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 【医師監修】閃輝暗点の見え方について解説|片目だけ・初めての症状は危険? 【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説 眼に対しての過度な刺激を避ける 項目 詳細 発症直後の対応 明るい光や画面の刺激を避け、暗く静かな場所で安静 作業・運転中の対応 静かで刺激の少ない場所に移動し、視界が回復するまで再開を控える行動 水分補給 脱水防止のための十分な水分摂取 予防策 長時間の画面作業や強い光の回避、規則正しい生活、栄養バランスの整った食事 閃輝暗点が現れたら、強い光やスマートフォン・パソコンの画面から目を離し、暗く静かな場所で安静にしましょう。回復するまで作業や運転を控えることが重要です。 また、脱水は血流の悪化を招き、視覚異常を引き起こすことがあるため、こまめな水分補給が重要です。予防のためには、長時間の画面作業や強い光への曝露を控えるとともに、十分な睡眠、規則正しい生活、ビタミン・ミネラルを含むバランスの良い食事を心がけましょう。 原因・根本疾患の治療を行う 閃輝暗点を根本的に治す医学的治療法は確立されていません。再発予防の基本は、ストレスや睡眠不足、喫煙、アルコール、過剰なカフェイン摂取などの誘因を避けることです。多くは自然に消失しますが、適切な管理と予防が欠かせません。 片頭痛の前兆として多く見られますが、脳梗塞やTIA、脳腫瘍などの重大疾患が原因のこともあります。とくに頭痛を伴わない初発例、頻発・長時間持続、片眼のみの発症では、早期に脳神経内科または外科で精密検査を受ける必要があります。 原因が片頭痛の場合、β遮断薬やCGRP阻害薬などの予防薬で再発を減らせることがあります。 以下の記事では、閃輝暗点の根本疾患の治療にアプローチできる可能性のある再生医療について詳しく解説しています。 生活習慣の見直しとバランスの良い食事 項目 内容 睡眠リズムの整備 毎日同じ時間に起床・就寝し、6〜8時間の安定した睡眠時間の確保 ストレス軽減 入浴、軽い運動、深呼吸、ストレッチによる自律神経バランスの調整 水分補給 脱水予防のため、こまめな水分摂取 推奨栄養素(マグネシウム) 海藻類、大豆製品、玄米、ナッツ類の摂取 推奨栄養素(ビタミンB₂) レバー、青魚、卵、緑黄色野菜、乳製品の摂取 推奨献立例 玄米ご飯、納豆、みそ汁(海藻入り)、サバのみそ煮による栄養バランス実現 補助的栄養素 オーツ麦、濃色葉野菜、脂肪魚、ベリーの積極摂取 避けたい食品・食習慣 チョコレート、ピーナッツ、赤ワイン、カフェインの摂り過ぎ回避 空腹状態の回避 ナッツやヨーグルトで血糖値低下を防ぐ 規則正しい生活習慣と食事管理は、閃輝暗点の再発予防に重要です。毎日決まった時間に睡眠をとり、ストレスを溜め込まない工夫やこまめな水分摂取を日常に取り入れましょう。食事ではマグネシウムやビタミンB₂を意識し、和食中心の献立を心がけます。 オーツ麦や脂肪魚、ベリーなどもおすすめです。一方で、チョコレートやアルコール、カフェインの過剰摂取は誘因となることがあり、空腹の放置も避けましょう。症状が続く場合や頻発する際は、医療機関での相談が大切です。 以下の記事では、生活習慣の見直しについて詳しく解説しています。 閃輝暗点における即効性のある治し方は存在しない 現在の医学では、閃輝暗点そのものを即効で治す薬や特定の治療法は確立されていません。多くの場合、閃輝暗点は脳血管の一時的な変化により発生し、片頭痛の前兆として現れる視覚症状です。 症状は通常数分で自然に消失しますが、発症時は無理をせず、暗く静かな環境で安静にし、強い光やスマートフォンなどの画面から目を休ませることが大切です。 初めて起こった場合や頻繁に繰り返す場合は、重大な疾患が隠れている可能性もあるため、早期に医療機関を受診し、原因を明らかにすることが重要です。 閃輝暗点が治るツボはない 現在の医学では、閃輝暗点を即効で治す方法も、治るツボも存在しません。片頭痛の前兆として起こる視覚症状で、根本的な治療法も未確立です。 百会や風池、合谷などのツボ刺激による閃輝暗点への効果は、現在のところ医学的根拠はなく、症状が繰り返す場合や初発時は早期受診が重要です。 閃輝暗点が根本的に治る食べ物はないが予防にはなる 現時点では、閃輝暗点を即効で治す食べ物は確認されていません。マグネシウムやビタミンB₂を含む玄米、大豆製品、海藻、アーモンド、緑黄色野菜、乳製品などを日常的に摂取することで予防につながる可能性があります。 これらは発症時に症状を即座に改善するものではなく、バランスの良い食事と規則正しい生活習慣を組み合わせることが再発予防の基本です。 閃輝暗点が現れる重大な疾患 重大な疾患 詳細 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血) 脳の血流障害による症状で、麻痺やしびれ、言語障害を伴うこともある。CTやMRIによる精密検査が必要。早期受診と治療が重大な後遺症防止につながる 眼由来の血管障害(網膜動脈閉塞・網膜症) 網膜の血管が閉塞・障害されることで、片眼の視野欠損や視力低下が起こる。眼科での検査と治療が必須。糖尿病など基礎疾患管理も重要 神経炎・視神経疾患(視神経炎・MS・腫瘍圧迫など) 視神経の炎症や脳の腫瘍圧迫が視野異常を引き起こす。神経内科や脳神経外科での診断と治療、場合によってはMRI検査が必要。症状によっては緊急対応が求められる 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血)は脳の血流障害が原因で、麻痺やしびれ、言語障害を伴うことがあり、CTやMRIによる精密検査が不可欠です。早期の診断と治療が後遺症防止に直結します。 網膜動脈閉塞や網膜症などの眼由来の血管障害は、片眼の視野欠損や視力低下を招き、眼科での迅速な検査と治療、基礎疾患の管理が重要です。また、視神経炎や多発性硬化症、腫瘍圧迫などの神経疾患は視野異常を引き起こし、神経内科や脳神経外科での診断と必要に応じたMRI検査、緊急対応が求められます。 脳血管疾患(脳梗塞・TIA・脳出血) 閃輝暗点は、脳の血管が一時的に収縮・拡張して血流が低下することが原因です。とくに後頭部の視覚野の血流障害で、視界にギザギザやチカチカとした模様が現れます。これらの血管変化は、ストレスや疲労、睡眠不足、飲酒、喫煙、特定の食品などの生活習慣が影響します。 また、脳梗塞やTIA、脳出血などが原因で手足のしびれや麻痺、言語・意識障害を伴う場合があり、初発・頻発・長時間持続や他の神経症状を伴う際は早急な精密検査が必要です。 以下の記事では、脳疾患について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率は?症状や治療を解説 眼由来の血管障害(網膜動脈閉塞・網膜症) 網膜は眼の奥にあり、光を感知する精密な組織です。血流が障害されると視覚情報が正しく伝わらず、視野の欠損や光のちらつきなどが生じます。 網膜中心動脈閉塞では、血栓や塞栓により酸素供給が途絶え、突然の重い視力低下や視野暗黒化が起こります。一過性網膜虚血(アマウロシス・フガックス)では、数分間の血流途絶で一時的な視野欠損や光視症状が出現し、その後自然に回復します。糖尿病性網膜症や炎症性網膜血管障害でも、虚血や出血により視野異常が生じ、閃輝暗点に似た症状として現れることがあります。 これらの障害は片眼のみに症状が出やすく、脳由来の閃輝暗点とは区別が必要です。症状が疑われる場合は、眼底検査や視野検査を含む眼科的評価を早急に受けましょう。 以下の記事では、糖尿病網膜症について詳しく解説しています。 神経炎・視神経疾患(視神経炎・MS・腫瘍圧迫など) 視神経は網膜で受け取った光刺激を脳へ伝える重要な経路です。炎症・圧迫・脱髄などで障害されると、光のちらつきや視野異常など閃輝暗点に似た症状が生じます。視神経炎は代表的な原因です。 脳腫瘍や動脈瘤が視神経を圧迫すると同様の症状が生じ、前交通動脈瘤による圧迫が解除された後に症状が改善した報告もあります。これらは片頭痛による閃輝暗点とは異なり、器質的障害が原因となるため、眼科・神経内科での精密検査が必要です。 閃輝暗点を治すには原因の特定と受診が必須 閃輝暗点は症状だけで軽視すると、命に関わる病気を見逃す危険があります。発症が初めての場合、頻繁に起こる場合、または症状が長引く場合は、速やかに医療機関を受診し、必要に応じて脳MRIや眼底検査を受けましょう。早期診断が、根本的な治療と再発防止につながります。 閃輝暗点の治療についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、閃輝暗点が重篤な脳疾患の兆候である場合も考えられるため、症状や進行度によっては低侵襲な再生医療を提案いたします。初発・頻発・長期化する場合は早急な受診が必要です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 閃輝暗点の治し方に関するよくある質問 閃輝暗点が頻繁に起こる場合はどうすれば良いですか? 初回発症、頻発、症状の持続時間が長い、頭痛を伴わないなど、通常と異なるパターンの場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの重大な疾患を除外するために、MRIやCT検査が可能な医療機関を受診することが推奨されます。 原因となる疾患が進行している可能性もあるため、放置せず、早期に受診して精密検査を受けることが重要です。 以下の記事では、閃輝暗点について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説 閃輝暗点を繰り返すのは病気の前兆?頻発する原因と放置するリスクを紹介 閃輝暗点のセルフチェック方法はありますか? 閃輝暗点とは、視野に光のジグザグ模様や欠損が出現し、通常は数分で自然に消失する一過性の症状です。 症状の経過を記録することがセルフチェックの基本ですが、視野が大きく欠ける、長時間続くなど通常と異なる場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの重篤な疾患が隠れている可能性があります。確定診断は医師の検査が必要なため、不安があれば早めに受診しましょう。 閃輝暗点が片目だけに現れた場合の対処法はありますか? 片眼にのみ閃輝暗点が現れる場合は、網膜血管障害(網膜裂孔・虚血など)や脳血管障害が原因となる可能性があり、緊急性を伴います。放置せず、直ちに眼科または脳神経科を受診し、眼底検査などの精密検査を受けることが重要です。 閃輝暗点は何科を受診すれば良いですか? 閃輝暗点は脳の血流変化に関連することが多く、精密検査のため脳神経内科・脳神経外科(頭痛外来を含む)の受診が推奨されます。 初発、頭痛を伴わない、頻発、しびれや言語障害を伴う場合は脳疾患の除外が重要です。片眼のみの症状は眼疾患の可能性があるため眼科での眼底検査が適しています。受診先に迷う場合は総合診療科でも構いません。
2025.08.31 -
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「視界にギザギザやチカチカしたものが見える」 「網膜や脳の疾患ではないかと心配」 視界に異常が現れる閃輝暗点は、片頭痛の前兆として生じることが多い一方で、眼科的疾患や脳の疾患に伴って現れる場合もあります。放置すると重大な疾患の発見が遅れ、深刻な症状を招く恐れがあるため、速やかな受診が必要です。 本記事では、閃輝暗点の見え方や片目だけに現れる症状について現役医師が詳しく解説します。 閃輝暗点の原因が脳疾患で、その症状によっては、再生医療も治療の選択肢のひとつです。 閃輝暗点の症状に関するお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 閃輝暗点の見え方 見え方 詳細 ギザギザ・光の波動(点やジグザグ模様) 稲妻状やジグザグ模様がキラキラ輝きながら広がる視覚変化 モヤ・暗点(スコトーマ) 視野の一部がかすみ、文字や物の一部が欠けて見える状態 動き・揺れ・揺らぎ 光や模様が波打つように動き、視界全体に広がる現象 形やサイズの異常(歪み) 物の輪郭や文字が波打ち形や大きさが不自然に変わる視界異常 閃輝暗点では、視界にギザギザや光の波動、モヤや暗点、像の揺れ、形の歪みなどが現れることがあります。これらは片頭痛の前兆としてよくみられますが、眼や脳の疾患に伴う場合もあります。 片頭痛の前兆としての閃輝暗点は、多くの場合5分から60分ほど続き、その後に頭痛が始まります。(文献1) 時間の経過とともに閃輝暗点の症状が消えた場合も、繰り返す場合や初めて起こった場合は、早めに眼科や神経内科を受診することが大切です。 閃輝暗点の初期症状や治療法など、包括的な内容に関しては「【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説」をご覧ください。 ギザギザ・光の波動(点やジグザグ模様) 閃輝暗点でよくみられる典型的な症状は、視界の片隅に現れるギザギザした光の線や、チカチカと輝くジグザグ模様です。 白や銀色、虹色に見えることもあり、万華鏡のような複雑な模様を描きながら数分かけてゆっくりと広がり、やがて自然に消失します。脳の視覚野の神経細胞が一時的に過剰興奮することが原因と考えられています。 モヤ・暗点(スコトーマ) モヤ・暗点(スコトーマ)は、脳の視覚中枢である後頭葉(視覚野)の一部に一時的な血流低下が起こり、その領域の神経活動が低下することで生じます。これにより視野の一部がぼやける、または暗く欠けて見える状態になります。 原因は眼の異常ではなく脳の血流変化です。多くは数分かけて光の模様から暗点へ移行し、その後自然に回復します。ただし、症状が1時間以上続く場合、片目のみに生じる場合、強い頭痛、手足のしびれ、言語の障害、意識の低下を伴う場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作、網膜疾患などの可能性があり、速やかな受診が必要です。 動き・揺れ・揺らぎ 閃輝暗点でみられる動き・揺れ・揺らぎは、脳の後頭葉(視覚野)における神経活動が、血流の変動に伴って波のように広がる皮質拡散抑制により生じます。神経の興奮と抑制がゆっくりと伝わることで、視界の光や模様が揺れたり、動いたりして見えます。 血管の収縮と拡張により視覚情報が乱れ、波打つ感覚が生じます。初発時は軽症であっても、脳や眼科的疾患を除外するための受診が必要です。発症時の時間、片目のみか両目か、頭痛やしびれの有無などを記録しておくと診断に役立ちます。 形やサイズの異常(歪み) 閃輝暗点による形やサイズの異常(歪み)は、後頭葉の視覚野での一時的な血流低下が形や大きさの認識を乱すことで生じます。まっすぐな線が波打って見える、人の顔が変形して見えるといった現象も報告されています。 多くは10〜30分で自然に回復しますが、初発や強い症状、長引く場合、頭痛や手足のしびれを伴う場合は眼科または神経内科を受診し、他の脳や眼疾患の可能性にも注意が必要です。 片目だけに現れる閃輝暗点は危険? 状況 詳細 片目だけに症状が出る場合 網膜剥離、眼底出血、硝子体剥離、眼圧異常など眼科疾患の可能性 放置した場合のリスク 視力低下や失明に至る危険 通常の閃輝暗点の作用部位 脳の視覚野の血流変動による両目同時の視覚異常 受診の目安 片目だけの症状は速やかな眼科受診 神経症状を伴う場合 脳梗塞や一過性脳虚血発作など脳血管障害の可能性 緊急時対応 直ちに救急車を要請し、救急医療機関を受診 閃輝暗点は通常、脳の視覚野の血流変動により両目に同じ像が見えますが、片目だけの場合は網膜剥離や眼底出血などの眼科疾患が疑われます。 放置すると視力低下や失明の危険があるため、速やかな眼科受診が必要です。視力低下や視野欠損、激しい頭痛、しびれ、言語障害を伴う場合は脳血管障害の可能性があり、直ちに救急要請が必要です。 閃輝暗点が現れる原因 原因 詳細 血管変動・圧の刺激(脳・眼) 脳や眼の血管の一時的な収縮・拡張による血流の変化 神経伝達物質・自律系の反応 セロトニンなど神経伝達物質の急激な増減と自律神経の影響 生活習慣・嗜好品の影響 ストレス、睡眠不足、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などの誘因 脳の構造異常・基礎疾患 脳腫瘍、脳梗塞、一過性脳虚血発作などの重大な脳疾患の可能性 閃輝暗点は片頭痛の前兆として知られていますが、原因は複数あります。代表的なのは、脳や眼の血管が一時的に収縮・拡張して血流が変化し、視覚情報を処理する神経の働きに影響を及ぼす場合です。 セロトニンなどの神経伝達物質の急激な増減や自律神経の反応も関与します。さらに、ストレス、睡眠不足、カフェインやアルコールの摂取、喫煙などの生活習慣や嗜好品が誘因となることもあります。まれに脳腫瘍や脳梗塞など重大な疾患が原因となる場合もあり、注意が必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の原因を詳しく解説しています。 【関連記事】 更年期と閃輝暗点の関係性|原因・症状・予防法を解説 閃輝暗点を繰り返すのは病気の前兆?頻発する原因と放置するリスクを紹介 血管変動・圧の刺激(脳・眼) 閃輝暗点は、脳の血管が一時的に収縮と拡張を繰り返し、その結果、血流が変化することで起こると考えられています。 とくに視覚情報を処理する後頭葉の血管が影響を受けやすく、収縮により血流が減少すると神経細胞の働きが低下し、続く拡張で血流が急増すると過剰な興奮が生じます。この神経活動の変化が視覚異常として現れます。気圧の変化や疲労、ストレスなどが発症の引き金になる場合もあります。 以下の記事では、閃輝暗点と関係する脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率は?症状や治療を解説 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 神経伝達物質・自律系の反応 原因 詳細 神経伝達物質の変動 セロトニンの急激な増減による脳血管の収縮・拡張 自律神経のバランス乱れ ストレスや疲労、睡眠不足が引き起こす自律神経の機能不全と血管反応の過敏化 脳視覚野への影響 血流変化と神経活動変動による視界のキラキラ・揺らぎ、閃輝暗点の出現 生活習慣の影響 体調管理不良が神経伝達物質や自律神経の乱れを悪化させる要因 注意点 健康な人にも起こる生理的反応であり、症状の強さや片目だけの場合に注意が必要 閃輝暗点は、脳内の神経伝達物質の変動が原因のひとつです。とくにセロトニンが急激に増減すると脳血管が一時的に収縮・拡張し、血流変化が視覚野の神経活動に影響して光や模様が見えます。 自律神経もストレスや疲労、睡眠不足でバランスを崩すと血管反応が過敏になり、症状を悪化させます。健康な人にも起こりますが、初発時や片目だけの症状、強い症状時は受診が必要です。また、生活習慣の改善が再発予防に有効とされています。 生活習慣・嗜好品の影響 原因 詳細 睡眠不足・不規則な生活 自律神経の乱れによる脳血管の過剰な収縮・拡張 過度なストレス・疲労 神経や血管反応の不安定化 嗜好品(カフェイン・アルコール) 血管刺激による収縮・拡張の誘発 食品成分(チラミン) 脳血管収縮を促すアミノ酸由来成分の作用 過度なデジタル機器使用 眼精疲労と自律神経負荷による血流変化 予防のための生活習慣 規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事、水分摂取 閃輝暗点は、睡眠不足や生活リズムの乱れ、ストレスや疲労により自律神経が乱れ、脳や眼の血管反応と視覚野の血流が不安定になることで生じます。 チョコレートやチーズ、赤ワイン、コーヒーなどの成分や長時間のデジタル機器使用は血管や自律神経に影響し、発症を促す可能性があります。そのため、規則正しい生活習慣の維持が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点とカフェインの関係性について詳しく解説しています。 脳の構造異常・基礎疾患 原因・疾患名 詳細 脳腫瘍(例:星細胞腫) 後頭葉への腫瘍による神経圧迫や刺激による視覚前兆の発生 脳血管奇形(例:AVM) 異常血管構造による血流異常と神経刺激による繰り返す視覚前兆やけいれん 脳梗塞・一過性脳虚血発作 脳血管の閉塞や血流障害による視覚野の虚血状態と神経機能障害 視覚野の血流障害(圧迫・浮腫) 腫瘍や血管異常による血流障害(虚血)による視覚情報の伝達異常 てんかん発作 後頭部の神経異常興奮による視覚発作と閃輝暗点類似の症状 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として一時的な血流変化で起こりますが、脳の構造異常や基礎疾患が原因となることもあります。後頭葉の腫瘍は異常な血流により、視覚前兆やけいれんを引き起こします。 腫瘍による圧迫や浮腫は一時的な虚血状態を引き起こし、後頭部のてんかん発作も類似の視覚症状を示します。これらは重大な脳疾患の兆候であり、症状が持続・悪化する場合や頭痛・麻痺を伴う場合は、早急な検査が必要です。 脳膿瘍の手術で起こりうる後遺症について、詳しく解説している以下の記事もあわせてお読みください。 閃輝暗点の症状が初めて現れた際の対処法 対処法 詳細 静かな暗所で安静にする 明かりや音を避け、刺激の少ない場所で横になる状態 症状の持続時間と変化を観察する 発症時刻、症状の変化、関連する随伴症状の記録 重症兆候があればすぐに医療機関へ 視力低下、視野欠損、強い頭痛、めまいなどの出現 運動・言語障害が出たら緊急対応 手足のしびれや麻痺、言葉が出にくい、ろれつの回らない状態 閃輝暗点が初めて現れた場合、その多くは片頭痛の前兆として一過性に生じますが、まれに脳や眼の重大な疾患が原因となることがあります。そのため、症状が出た際には落ち着いて行動することが重要です。 まずは静かな暗所で安静にし、光や音などの刺激を避けます。同時に、発症時刻や症状の変化、頭痛やしびれなどの随伴症状を記録しておくことが、診断の大きな手がかりになります。 視力低下や強い頭痛、視野欠損、めまいがあれば速やかに受診し、手足の麻痺や言語障害を伴う場合は脳血管障害の可能性があるため、直ちに救急要請が必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の内容について詳しく解説しています。 静かな暗所で安静にする 閃輝暗点は脳の視覚野や眼の血流変化で起こり、発症直後は暗く静かな場所で安静にすることが有効です。刺激を避けて休むことで症状が落ち着きやすく、この方法は初期対応として推奨されています。 初めての発症や片目のみ、視野欠損やしびれを伴う場合は速やかに受診し、改善後も眼科または神経内科で原因の確認が必要です。 症状の持続時間と変化を観察する 閃輝暗点は通常、数分で自然に消失します。持続時間や症状の変化を観察することは診断に重要です。症状が長引く場合や暗点が明瞭で、かつ視野欠損が強い場合は、脳梗塞など重大な疾患の可能性があるため速やかに受診します。 発症頻度の増加や症状の性質の変化も精密検査の対象となります。持続時間や変化を正確に記録し医師に伝えることで、原因特定と適切な治療につながります。 重症兆候があればすぐに医療機関へ 内容 詳細 視界異常が長時間続く 視野欠損や暗点が1時間以上持続する状態 片目だけに症状が出る場合 網膜剥離・眼底出血など眼科疾患の可能性 神経症状の出現 手足のしびれや麻痺、言語障害、意識低下 激しい頭痛や吐き気を伴う 脳出血・脳梗塞・くも膜下出血の可能性 初めての強い症状 既往のない重度発作や症状の急激な進行 閃輝暗点は多くは片頭痛の前兆として一過性に現れますが、脳梗塞、脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA)、網膜剥離など命に関わる疾患の前触れとなることもあります。 視野欠損が続く場合や片目だけの症状、激しい頭痛や吐き気、麻痺、言語・意識障害を伴う場合は危険性が高く、速やかな受診が必要です。 運動・言語障害が出たら緊急対応 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として現れる視覚症状ですが、同時に手足のしびれや麻痺などの運動障害や、ろれつの回らない、言葉が出にくいといった言語障害を伴う場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの命に関わる疾患が疑われます。 これらは脳の血流が著しく低下しているサインであり、一刻を争う事態です。放置すると脳の損傷が進行し、後遺症が出る危険が高まります。症状が出た際は自己判断せず、直ちに救急車を呼び医療機関を受診する必要があります。 閃輝暗点の見え方が現れた場合はただちに医療機関を受診しよう 閃輝暗点が初めて現れた場合や片目のみ、通常と異なる症状を伴う場合は重大な病気の可能性があり、自己判断せず直ちに受診してください。早期診断により原因を特定し、必要に応じて適切な治療を開始できます。 閃輝暗点の見え方についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、閃輝暗点の原因となる脳疾患の症状によっては、手術や薬物療法より低リスクな再生医療を提案できる場合があります。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 閃輝暗点の見え方に関するよくある質問 閃輝暗点が現れたものの頭痛がないのですが大丈夫? 頭痛を伴わない閃輝暗点は、必ずしも片頭痛の前兆とは限らず、まれに脳梗塞、脳腫瘍、一過性脳虚血発作など他の脳疾患が原因となることがあります。 頭痛がない場合でも、脳の異常サインの疑いがあります。そのため、早期の受診が重要です。 閃輝暗点に効く即効薬はありますか? 閃輝暗点に即効で効果を示す薬剤は現時点ではありません。多くの場合、症状は数分程度で自然に消失するため、特別な薬剤で速やかに治すことはできません。 片頭痛を伴う場合には、頭痛発作に対してトリプタンなどの治療薬が使用されることがありますが、閃輝暗点そのものを即座に消失させる薬剤はありません。 閃輝暗点は何科を受診すれば良いですか? 閃輝暗点が初めて出た場合は、脳の血流変化による視覚症状の可能性が高いため、脳神経外科または脳神経内科の受診が適切です。これらの診療科では脳の状態を詳しく評価できます。 視覚異常が片目のみに出る場合は眼科的疾患の可能性があるため眼科の受診も検討します。両目に同時に症状が出る場合は脳の異常が疑われるため、脳神経外科や脳神経内科を受診することが推奨されます。 参考文献 (文献1) 片頭痛/片頭痛の治療|一般社団法人 日本頭痛学会
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「突然、視界にキラキラやギザギザした光が見えるようになった」 「視界がおかしい?重い病気の前兆?」 閃輝暗点と呼ばれるこの症状は、片頭痛を伴わないこともあり、不安を抱える方が少なくありません。突然視界に不自然なジグザグ模様やぼやけが現れるのが閃輝暗点の特徴です。 閃輝暗点は重大な疾患の前兆の可能性があります。そのため、原因の早期発見が不可欠です。本記事では現役医師が閃輝暗点について詳しく解説します。 頭痛のない閃輝暗点は危険である理由 閃輝暗点の初期症状 閃輝暗点の原因 閃輝暗点を放置するリスク 閃輝暗点の治療法 記事の最後には、閃輝暗点についてよくある質問をまとめています。ぜひ最後までご覧いただき、症状についての理解を深めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 閃輝暗点について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 閃輝暗点とは 項目 説明 原因 後頭葉の一時的な血流変化とセロトニンの影響 症状の特徴 視界に光の輪やジグザグ模様が現れて消える 発症のきっかけ ストレス・睡眠不足・特定食品や気圧変化 片頭痛との関係 多くは片頭痛の前兆だが頭痛がない場合もある 注意が必要な場合 発症頻度が多い・症状が長引く場合 閃輝暗点は、視界に突然ギザギザした光の波やチカチカした輝きが現れる症状です。片頭痛の前兆として現れることが多く、5分から60分ほど続いた後に頭痛が始まります。(文献1) 原因は、脳の視覚野(後頭葉)における一時的な血流低下と回復で、神経伝達物質セロトニンの変動も関与します。光の模様は万華鏡や稲妻のように見え、視野の一部が欠けることもあります。 誘因として、ストレス、睡眠不足、疲労、特定食品、カフェイン、アルコール、女性ホルモン変動、気圧変化などが知られています。頻発や長引く症状は脳梗塞など重篤疾患の可能性があり、早期の受診が必要です。 閃輝暗点の見え方については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。 頭痛のない閃輝暗点は危険 項目 説明 特徴 視界にキラキラ・ギザギザの光が出るが頭痛はない 多くのケース 脳に異常がなく経過観察で済む場合が多い 注意すべき場合 初めて起きた・40歳以上・頻繁に出る場合 考えられる原因 脳梗塞・一過性脳虚血発作・脳腫瘍・てんかんなど 危険性 脳血管や脳の異常が隠れている可能性 検査の必要性 MRIや脳波検査などで原因を特定 とくに注意するべき人 高血圧・糖尿病など生活習慣病がある方 受診のタイミング 初発・繰り返す・症状が長引く場合は早急に受診 閃輝暗点は片頭痛の前兆としてよく見られる症状ですが、頭痛を伴わない「孤発性閃輝暗点」が現れることもあり、注意が必要です。とくに片頭痛の既往がない方で初めて発症した場合や、症状が長く続く、あるいは頻繁に繰り返す場合には、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳腫瘍、てんかんなどの脳疾患が原因となっている可能性があります。 中高年や高血圧・糖尿病といった生活習慣病をお持ちの方ではリスクがさらに高まるため、放置や自己判断は避け、できるだけ早く神経内科や脳神経外科を受診し、原因の特定が重要です。 閃輝暗点の初期症状 初期症状 詳細 光・模様・ゆらぎ キラキラやギザギザの光の輪や波模様の出現・徐々に広がる・ゆらめき・数分から20分程度の持続 視野欠損・ぼやけ・狭窄 視界の一部が見えにくくなる・暗くなる・ぼやけや狭まる感じ・視野の部分欠損や狭窄の発生 閃輝暗点は、突然視界中央付近に小さな光やチカチカとした輝きが出現することで発症します。光は徐々に拡大し、ギザギザした幾何学模様や波紋状の揺らぎとして知覚され、白色や銀色、時に多彩な色調を呈することもあります。 これらは視界内をゆっくりと移動しながら徐々に広がっていくのが特徴です。進行に伴い、光や模様が現れる部分が見えにくくなる視野欠損や、物の歪みやかすみといった視覚異常が出る場合があります。また、視野が狭くなる視野狭窄を伴うこともあり、重症の場合には一時的な視野欠損が生じます。多くは数分から30分以内に自然軽快しますが、初発や再発時は精密検査が望まれます。 光・模様・ゆらぎ 閃輝暗点の初期症状である、光・模様・ゆらぎは、脳の視覚野(後頭葉)での神経活動と血流変化によって起こります。神経細胞の急激な興奮と抑制の波(皮質拡延性抑制)が視覚野を通過すると、ギラギラやジグザグの光、波打つ模様が出現します。 脳血管の一時的な収縮と拡張による血流変化も関与します。これらは眼ではなく脳に由来し、多くは一過性ですが、初発、高頻度、長時間持続、頭痛を伴わない場合は脳梗塞などとの鑑別が必要です。自然に消えても受診による原因の確認が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点を繰り返す原因について詳しく紹介しています。 視野欠損・ぼやけ・狭窄 閃輝暗点による視野欠損・ぼやけ・狭窄は、後頭葉の血流変化と神経活動異常で生じます。脳血管が一時的に収縮して視覚野の血流が低下し、その後の拡張で回復する過程で視野の欠けやかすみ、狭まりが発生します。 神経細胞の興奮と抑制の波(皮質拡延性抑制)が広がり、視覚情報処理が一時的に阻害されます。脳由来のため両眼に同じ異常が現れ、通常は数分から30分で回復しますが、初発や頻発時は精密検査が必要です。 閃輝暗点の原因 原因 詳細 脳血管・神経物質の急変 脳血管の一時的な収縮と拡張・セロトニン等の神経伝達物質変動 生活ホルモンなど内的リズム乱れ 睡眠不足やストレス・ホルモンバランスの乱れ 食品・気圧など外的トリガー カフェイン・アルコール・チョコレート・気圧変動 片頭痛前兆・稀な重大疾患 片頭痛の前兆・脳梗塞や脳腫瘍などの重大疾患の可能性 閃輝暗点は、脳血管の収縮・拡張や神経伝達物質の変動、睡眠不足やストレス、ホルモン変動など複数の要因で発症します。また、カフェイン・アルコール・チョコレートといった特定食品や気圧変動などの外的刺激も発症の原因です。 多くは片頭痛の前兆として現れますが、稀に脳梗塞や脳腫瘍など重大な疾患の初期症状として現れることがあります。そのため、重大な疾患の前兆と思われる症状や、これまでと異なる症状を感じた際には、自己判断せず速やかに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。 脳血管・神経物質の急変 要因 詳細 脳血管の収縮・拡張 後頭葉の血管が一時的に狭くなったり広がったりする血流変化 血流低下による神経影響 視覚野の神経細胞の活動低下や異常興奮 神経伝達物質の急変 セロトニンなどの急な増減による血管収縮・拡張の誘発 生活習慣の影響 ストレスや睡眠不足、疲労によって血管の反応性が変化 外的・内的トリガー 特定食品、女性ホルモン変動、気圧変化などによる血流・神経活動変化 閃輝暗点は、脳の視覚野(後頭葉)で起こる一時的な血流変化と神経活動異常によって発症します。後頭葉の血管が収縮して血流が減少し、その結果、視覚情報を処理する神経細胞の働きが低下または異常興奮します。 この血管変化にはセロトニンの急激な増減が関与し、結果として視界にキラキラやギザギザの光や模様が現れます。ストレス、睡眠不足、疲労、特定食品、女性ホルモン変動、気圧変化などが誘因となります。目ではなく脳由来の症状であり、生活習慣の改善やストレス管理が予防に有効です。 以下の記事では、重大な疾患のひとつである脳卒中・脳出血について詳しく解説しています。 【関連記事】 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 脳卒中の前兆とは?見逃してはいけない5つのサインとチェックリストを紹介 生活ホルモンなど内的リズム乱れ 原因 詳細 女性ホルモンの変動 月経周期や更年期、妊娠・出産によるエストロゲン分泌の乱れ 脳血管の反応性の変化 ホルモン変動による血管の収縮・拡張しやすさ セロトニンの減少 ホルモンバランスの乱れで神経伝達物質セロトニンの低下 ストレスや睡眠リズムの乱れ 心理的・身体的ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの崩れ 生活習慣の影響 不規則な生活や疲労が内的リズムを乱し閃輝暗点の発症リスクを高める 閃輝暗点は、脳の血管の一時的な変動によって起こる視覚異常です。生活ホルモンの乱れ、とくに女性ホルモン(エストロゲン)の分泌バランスの変化が大きな要因です。月経周期や妊娠、更年期などでホルモンの変動が起こると、脳血管の柔軟性が低下し血管が収縮・拡張しやすい状態となります。 また、ホルモンの乱れは神経伝達物質セロトニンの減少を招き、血管の調整機能に影響を与える要因です。加えて、ストレスや睡眠不足、生活習慣の乱れがホルモンバランスに影響し、閃輝暗点の発生リスクをさらに高めます。これらのため、生活リズムの安定やストレス管理、十分な睡眠が予防に重要です。 以下の記事では、更年期と閃輝暗点の関係性について詳しく解説しています。 食品・気圧など外的トリガー 食品 詳細 チョコレート チラミン含有・脳血管の不安定な拡張誘発 チーズ 発酵食品でチラミン含有・血管拡張作用 ナッツ類 血管反応を促す成分含有 赤ワイン アルコール含有・血管拡張と神経刺激の誘因 カフェインを含む飲料(コーヒー、紅茶等) 血管収縮作用・過剰摂取は血管の不安定化を招く アルコール飲料 血管の収縮と拡張を繰り返し血管機能を乱す 閃輝暗点は、脳の視覚野(後頭葉)の血管が不安定に収縮・拡張することで発症します。特定の食品に含まれる成分はこの血管反応を変化させ、症状を誘発しやすくします。チョコレートやチーズなどの発酵食品に含まれるチラミンは血管拡張を促し、赤ワインやアルコール類は異常な収縮と拡張を繰り返す原因となります。 カフェインを多く含む飲料は血管収縮作用を持ち、過剰摂取で血管機能を不安定にする原因です。これらの食品は直接的に目の異常を起こすわけではありませんが、脳血管や神経活動に影響を与え、発症リスクを高めます。症状が出やすい方は摂取の制限や量の調整が予防につながり、生活習慣の見直しと併せた食事管理が重要です。 以下の記事では、閃輝暗点の原因のひとつであるコーヒーに含まれるカフェインの影響について詳しく解説しています。 片頭痛前兆・稀な重大疾患 分類 内容 片頭痛の前兆 脳血管の一時的な収縮と拡張による血流変動・視覚野の神経活動異常 片頭痛の特徴 視界のギラギラやギザギザの光、のちに脈打つ頭痛や吐き気などの症状 重大疾患の可能性 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)、脳腫瘍などが隠れている可能性 注意が必要なケース 初めての発症、繰り返す症状、頭痛を伴わない場合、生活習慣病や高齢者 推奨される対応 速やかな医療機関受診と精密検査(MRIや脳波検査など) 閃輝暗点は、多くの場合片頭痛の前兆として現れる視覚症状です。脳血管の一時的な収縮と拡張により視覚野の神経活動が乱れ、視界にギラギラやギザギザした光の模様が出現します。その後、拍動性頭痛や吐き気、光や音への過敏といった片頭痛特有の症状が続きます。 頭痛を伴わない場合、初発時、または症状が繰り返される場合は、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳腫瘍など重大な脳疾患の可能性があるため、注意が必要です。とくに高齢者や高血圧・糖尿病など生活習慣病のある方はリスクが高く、自己判断せず速やかに神経内科や脳神経外科で精密検査を受ける必要があります。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 脳梗塞は症状が軽いうちの治療が大切!原因と対策を解説【医師監修】 閃輝暗点を放置するとどうなる? 放置するリスク 詳細 慢性片頭痛への移行リスク 片頭痛の頻度増加・症状悪化・慢性化の可能性 脳梗塞・一過性脳虚血発作の前兆としての可能性 脳血管障害の早期兆候・重大疾患のリスク 眼科的合併症や重大疾患の見逃しリスク 網膜剥離など眼疾患や他疾患の診断遅れ 日常生活への影響が出始める 視野障害による運転や仕事、日常動作の支障 閃輝暗点を放置すると、片頭痛の発作が増えて症状が悪化し、慢性化する恐れがあります。脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)などの前触れの場合は、治療が遅れ重症化する危険もあります。 さらに、網膜剥離などの眼科的疾患や脳腫瘍などの重い病気が原因でも、診断が遅れる可能性があります。視野障害によって運転や仕事、日常生活に支障をきたし、事故や生活の質の低下を招くこともあります。初めて症状が出た時や繰り返す場合は、早急に医療機関を受診することが大切です。 慢性片頭痛への移行リスク 放置することで生じるリスク 詳細 片頭痛発作の頻度増加 頭痛の回数や頻度が徐々に増加 慢性片頭痛への移行 頭痛が継続する慢性化 症状の重症化 頭痛の強さが増し、市販薬の効果減弱 薬物乱用頭痛の発症リスク 不適切な薬の多用による頭痛の悪化 生活・精神面への悪影響 QOLの低下・抑うつや不安の増加 閃輝暗点は片頭痛の前兆となる視覚症状で、放置すると片頭痛発作が繰り返され、慢性片頭痛へ進行するリスクが高まります。慢性片頭痛は3か月を超えて月15日以上頭痛が続く状態で、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。(文献2) 発作が増えると市販薬が効きにくくなり、薬の多用による薬物乱用頭痛を起こすケースもあります。慢性化は脳や神経の痛み感受性を変化させ、痛みのコントロールを難しくし、睡眠障害や抑うつ、不安など二次的被害も招きます。閃輝暗点を自覚したら早期に専門医へ相談し、適切な治療と予防を行うことが重要です。 脳梗塞・一過性脳虚血発作の前兆としての可能性 理由・状況 詳細 脳の血流が一時的に悪くなる症状 後頭葉の視覚野への血流低下と回復による視覚異常 頭痛を伴わない場合の危険性 脳梗塞・TIA・脳腫瘍など重大疾患の可能性の上昇 前兆症状としての視覚障害 脳梗塞やTIAで視覚野が障害される際に現れる初期症状 放置によるリスク 後遺症を伴う脳梗塞の発症・日常生活への重大な支障 早期受診の重要性 MRIなどによる精密検査と血管リスク評価・予防的治療の開始 閃輝暗点は多くが片頭痛の前兆ですが、頭痛を伴わない場合は脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の初期サインの可能性があります。脳の視覚野を栄養する血管が一時的に詰まるか血流が低下すると、脳梗塞と同じ仕組みで視覚異常が起こります。 TIAや脳梗塞は視覚障害や手足のしびれ、言語障害などを伴い、放置で後遺症の危険が高まるため、初発や頻発時は早期受診と検査・予防が不可欠です。 以下の記事では、閃輝暗点が脳梗塞の前兆になる確率について詳しく解説しています。 眼科的合併症や重大疾患の見逃しリスク 危険の種類 詳細 片目のみに出る症状の危険性 網膜剥離・眼底出血・緑内障・ぶどう膜炎・眼内出血・眼感染症など視力障害や失明の恐れ 重大脳疾患の可能性 脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)など命に関わる疾患の初期症状 頻発・症状変化の見逃し 発症パターンの変化や増加に伴う重篤疾患発見の遅れ 放置による結果 視力の恒久的低下・失明・脳の後遺症・生命の危険 必要な対応 眼科・神経内科・脳神経外科での精密検査 閃輝暗点は多くが脳由来ですが、片目のみの場合は網膜剥離、眼底出血、緑内障、ぶどう膜炎などの眼科疾患が疑われます。これらは治療の遅れが視力障害や失明につながる危険があります。 また、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の初期症状として現れることもあり、頭痛を伴わない場合や新たな症状を伴う場合は要注意です。症状の頻発や変化は病状進行や合併症の兆候であり、放置すると視力や生命に関わる重篤な結果を招く恐れがあります。初発、頻発、片目のみの異常時は眼科と脳神経領域での早期精密検査が不可欠です。 日常生活への影響が出始める 理由・状況 詳細 視覚異常による見えにくさ ギザギザ・キラキラした光の模様・視野の欠損やぼやけによる文字や物の識別困難 仕事や運転など日常動作の支障 視覚情報の乱れによる集中力低下・判断ミス・疲労感の増加 精神的負担とストレスの増大 不安やストレスの蓄積・生活リズムの乱れ・精神的負担の増大 頭痛発作との重複による体調不良 片頭痛の前兆として閃輝暗点が現れ、頭痛と吐き気などの体調不良が日常を妨げる 事故リスクの増加 視覚障害による運転や機械操作時の事故リスク上昇 症状の悪化や慢性化の危険性 症状が頻発・長時間続く場合は慢性片頭痛や脳血管疾患の可能性 閃輝暗点は視界にギザギザやキラキラした光、視野欠損が現れ、仕事や運転、家事などに支障をきたします。集中力低下や疲労感、不安やストレスの蓄積で生活の質が低下し、片頭痛発作が続けば影響はさらに大きくなります。 放置すれば慢性片頭痛や脳血管疾患、事故のリスクが高まるため、初発・頻発・症状変化時は早期受診と適切な対策が必要です。 閃輝暗点の治療法 治療法 詳細 過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを控える 精神的・身体的負担の軽減・自律神経の安定 バランスの取れた食事をする 栄養の補給・血管や神経機能の維持・誘因の回避 根本の疾患治療を行う 片頭痛や脳血管疾患に対する専門的な治療と管理 閃輝暗点に直接作用する特効薬はなく、現在の医学では確立した治療法はありません。これは閃輝暗点が症状であり、その背景にある原因疾患や誘因への対応が重要だからです。まず、脳梗塞や神経系疾患、片頭痛などの根本的な病気に対して医師による診断と治療が必要です。 同時に、発症の引き金となる過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを避け、自律神経や血管機能を安定させることが大切です。また、バランスの取れた食事による栄養管理は血管や神経の健康維持に有効です。生活習慣の改善と医療的フォローを組み合わせることで、症状の軽減や発症頻度の低下が期待されます。 過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙などを控える 閃輝暗点は、脳の視覚野を含む後頭葉の血管が一時的に収縮や拡張を起こし、血流が不安定になることで発症します。過度なストレスや睡眠不足、飲酒、喫煙は血管の調節機能を乱し、発症や悪化を招きます。 これらは自律神経や神経伝達物質のバランスを乱し、脳血流を不安定にして発作を繰り返しやすくするため、予防にはストレス管理や十分な睡眠、飲酒・喫煙の制限が重要です。 バランスの取れた食事をする 目的・効果 詳細 脳・血管の健康維持 マグネシウム(海藻・大豆・魚介類・玄米)やビタミンB2(卵・納豆・緑黄色野菜・乳製品)による血流改善・炎症予防 発症リスク低減 血管を不安定にする誘発食品(チョコレート・チーズ・ナッツ・カフェイン・アルコール)の過剰摂取回避 自律神経の安定 栄養バランス改善による睡眠質向上・ストレス耐性向上 栄養不足補完 マグネシウムやビタミンB2のサプリメント活用(過剰摂取は医師・薬剤師に相談) 閃輝暗点は多くの場合、片頭痛の前兆として起こり、脳血管の収縮・拡張や神経機能の異常が関係します。バランスの取れた食事は脳や血管の健康維持に役立ち、症状の予防や軽減に有効です。 とくにマグネシウム(海藻、大豆、魚介類、玄米など)やビタミンB2(卵、納豆、緑黄色野菜、乳製品など)は血管の安定化や炎症抑制に寄与します。一方、チョコレート、チーズ、ナッツ、カフェイン、アルコールは血管の動きを不安定にし症状を誘発する可能性があるため、控えることが望まれます。 栄養バランスの良い食事は睡眠やストレス耐性を高め、自律神経を整えて発症リスクを低下させます。栄養が不足する場合は、医師の指導のもとサプリメントで補うことも可能です。 以下の記事では、バランスの取れた食事について詳しく解説しています。 根本の疾患治療を行う 閃輝暗点は、脳の視覚野で血管の一時的な収縮・拡張や神経活動の異常が起きて生じ、多くは片頭痛の前兆として現れます。症状を直接的に治療する薬剤はないため、原因となる片頭痛や他の疾患を特定し適切に治療・管理することが重要です。 片頭痛が原因なら予防薬やトリプタン製剤で発作を抑えられますが、脳梗塞や一過性脳虚血発作、網膜疾患が原因の場合、精密検査と早期治療が不可欠です。根本疾患を放置すれば再発や重い後遺症の危険が高まるため、医師の診断と治療が必要です。 以下の記事では、原因となる疾患によっては有効なアプローチになり得る再生医療について詳しく解説しています。 閃輝暗点が出たら放置せず早急に医療機関の受診しよう 閃輝暗点は、脳梗塞などの重大な疾患の前兆の可能性があります。放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、後遺症を残す危険性があります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、原因を明らかにすることが重要です。 閃輝暗点の症状にお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、閃輝暗点が脳梗塞や脳腫瘍などによる組織障害の前兆の可能性を踏まえ、損傷組織の回復を促進する再生医療を治療選択肢のひとつとしてご提案しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 閃輝暗点に関するよくある質問 他の眼の病気とどう見分ければ良いですか? 閃輝暗点は脳の視覚野の異常による一過性の視覚症状で、両眼に同時に光のギザギザや波状模様が現れ、数分から30分程度で自然に消失します。 片眼のみの持続する視野欠損や、一瞬の閃光(光視症)は網膜剥離や緑内障などの眼疾患の可能性があり自然には回復しません。また、飛蚊症は黒点や糸くずが常に見え、緑内障発作では痛みや充血、視界のかすみを伴います。症状が閃輝暗点の特徴と異なる場合は、早急な眼科受診が必要です。 以下の記事では、糖尿病と目の関係性について詳しく解説しています。 【関連記事】 糖尿病で失明する原因とは|治療法とあわせて現役医師が解説 糖尿病網膜症は治るのか|治療方法とあわせて現役医師が解説 初めて閃輝暗点の症状が出た場合どの科を受診すれば良いでしょうか? 閃輝暗点が初めて出現した場合は、脳の血流変化や神経活動の異常など中枢性の原因を評価できる脳神経外科または脳神経内科を受診しましょう。 両眼で同時に症状が現れる場合は脳由来の可能性が高く、これらの診療科が適しています。片眼のみの症状では網膜剥離など眼疾患の可能性があるため、眼科の受診も必要です。 以下の記事では、閃輝暗点の見え方について詳しく解説しています。 閃輝暗点がある場合の禁忌はありますか? 閃輝暗点を伴う片頭痛がある場合は、低用量ピル(経口避妊薬)の使用は禁忌です。これは、ピルに含まれるエストロゲンが血液を固まりやすくし、脳卒中や心筋梗塞などの血管障害リスクを高めるためです。 また、喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、ストレスは症状を悪化させる可能性があるため避けることが望ましく、基礎疾患の適切な治療と医師への相談が重要です。 参考文献 (文献1) 片頭痛/片頭痛の治療|一般社団法人 日本頭痛学会 (文献2) 緊張型頭痛|一般社団法人 日本頭痛学会
2025.08.31 -
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「最近、物覚えが悪くなった」 「言葉が上手く話せないと感じる」 高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などで脳が損傷し、記憶・言語・注意・思考・感情の調整など高度な脳機能に障害が生じる状態です。 本記事では、高次脳機能障害について現役医師が詳しく解説します。 高次脳機能障害の症状 高次脳機能障害の原因 高次脳機能障害の治療法 高次脳機能障害と似た症状 記事の最後には、高次脳機能障害についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 高次脳機能障害について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 高次脳機能障害とは 項目 内容 高次脳機能障害とは 脳の病気や外傷で記憶・注意・判断・言葉の働きが低下する状態 主な症状の例 記憶低下、言葉が出にくい、計画困難、感情制御の難しさ 特徴 身体ではなく認知機能や感情の働きに障害が出て外見からはわかりにくく 主な原因 脳梗塞や脳出血、交通事故による頭部外傷 経過と改善 個人差があり、リハビリや支援で改善の可能性がある 高次脳機能障害は、脳梗塞や脳出血、外傷などにより脳の一部が損傷し、記憶力・注意力・判断力・言語機能・感情の調整など、高度な脳の働きに障害が生じる状態です。 主な症状には、新しいことを覚えにくい、会話中に言葉が出にくい、計画的に行動することが難しい、感情のコントロールがしにくいなどが挙げられます。これらは手足の麻痺や感覚異常といった身体症状とは異なり、認知機能や感情の働きに影響が出る点が特徴です。 そのため、外見上は健康に見えても、本人や家族は日常生活で大きな困難を抱えることがあります。症状の現れ方や程度は個人差があり、リハビリテーションで徐々に改善する可能性があります。障害の特性を理解し、適切な対応を行うことが、生活の質の向上につながります。 高次脳機能障害の症状 症状 詳細 記憶障害(覚えられない・思い出せない) 新しい出来事を覚えられない状態や過去の記憶が抜け落ちる状態 言語障害(言葉が上手く話せない) 自分の思いや言葉を適切に表現できない状態 注意障害(集中できない・気が散りやすい) 作業や会話に集中し続けられない状態 遂行機能障害(計画を立てて行動できない) 物事の手順を考えて実行できない状態 社会的行動障害(感情コントロール・対人関係の変化) 感情の起伏や対人関係の維持が難しい状態 高次脳機能障害では、脳の損傷により記憶力・注意力・判断力・言語機能・感情の調整など、日常生活に欠かせない高度な脳機能にさまざまな影響が生じます。 新しい情報を覚えられない、言葉が思うように出てこない、作業に集中し続けられない、計画を立てて実行できない、感情や対人関係のコントロールが難しくなるなど、症状は多岐にわたります。 これらは外見からはわかりにくい場合も多く、本人や家族の生活に大きな負担となります。適切な理解と支援が、症状の改善や生活の質の向上に重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の症状と診断方法や対応の仕方について詳しく解説しています。 記憶障害(覚えられない・思い出せない) 新しい出来事を記憶するためには、情報を注意深く受け取り、脳内で整理し、必要時に呼び出すという一連の過程が必要です。この過程には、主に内側側頭葉の海馬と前頭葉が関与します。 海馬は、情報を覚える・整理する役割を担い、この部位が脳卒中や頭部外傷で損傷すると、新しい情報が正しく整理されず、記憶として定着しにくくなります。 前頭葉は覚える対象を意識し、整理された情報を呼び出す指令を出す働きを持ち、損傷すると注意力の低下や記憶の呼び出し困難を招きます。さらに、びまん性軸索損傷(DAI)などで脳内の神経回路が損なわれると、海馬や前頭葉が保たれていても情報伝達が障害され、記憶形成のネットワークが機能しなくなります。 これらの障害は単独または複合して生じ、覚えようとしても記憶に残らない、思い出そうとしても想起できないといった記憶障害を引き起こします。 言語障害(言葉が上手く話せない) 困りごと 詳細 言いたい単語が頭に浮かぶのに思い出せない(喚語困難) 言葉が口まで出かかっているのに言えない状態 発話がゆっくり・断続的で流暢さに欠ける(非流暢型) 話のテンポが遅く途切れがちな状態 何か言おうとするが違う単語が出てしまう(音韻性錯語) 意図とは異なる単語や音が出てしまう状態 相手の言葉を聞いても意味がつかみにくい(理解障害) 会話内容の理解が難しい状態 失語症に分類される症状 聞く・話す・読む・書くのすべてで障害がある状態 高次脳機能障害による言語障害は、ブローカ野やウェルニッケ野、またそれらをつなぐ神経回路の損傷で起こります。ブローカ野の損傷では言葉が出にくい非流暢型失語、ウェルニッケ野の損傷では意味が理解できない受容性失語、弓状束の損傷では言い間違いが続く伝導性失語が生じます。 これらは構音障害や声帯障害とは異なり、脳の情報処理機能の障害によるもので、多くは記憶や注意、思考の障害を伴うため、適切なリハビリと支援が改善に必要です。 注意障害(集中できない・気が散りやすい) 種類 特徴 容量性注意障害 一度に意識できる情報量が少なくなる状態 選択性注意障害 必要な情報に集中できず周囲の刺激に気を取られる状態 転換性注意障害 ひとつのことに固執して注意を切り替えられない状態 持続性注意障害 集中を長時間保てずすぐに途切れる状態 配分性注意障害 複数作業に注意を分けられずミスや抜けが出る状態 注意障害は高次脳機能障害のひとつで、集中力の維持や必要な情報への注意が難しくなる状態です。前頭葉やその神経回路の損傷が原因となり、情報の選択・切り替え・持続といった機能が低下します。 脳梗塞や頭部外傷でこの部位が損傷すると、集中力が低下し注意が逸れやすくなり、容量性・選択性・転換性・持続性・配分性の各注意障害が単独または複合して現れます。 仕事や学習、日常生活に大きく影響を及ぼしますが、適切なリハビリや生活環境の調整により改善が期待できます。 遂行機能障害(計画を立てて行動できない) 遂行機能障害は、高次脳機能障害のひとつで、目標の設定や計画の立案、行動の順序立てが困難になる状態です。主に前頭葉が関与し、この部位は思考、判断、計画などの機能を担います。 脳卒中や交通事故で前頭葉が損傷すると、段取りが立てられない、作業を途中でやめてしまう、優先順位を決められないといった症状が現れます。 注意力や記憶力の低下、神経伝達物質のバランス異常も影響します。日常生活では、仕事や家事の進行が滞る、約束や期限を守れない、やるべきことを忘れるといった例が見られます。 遂行機能障害は外見からわかりにくいため、適切な理解と周囲の支援、専門的なリハビリテーションが生活の質を保つ上で重要です。 社会的行動障害(感情コントロール・対人関係の変化) 社会的行動障害は、脳損傷によって感情や行動の調整が難しくなり、普段とは異なる言動が現れる状態です。 前頭葉の損傷や、記憶障害・注意障害・遂行機能障害などの影響により、衝動的な行動、場にそぐわない発言、相手の気持ちを理解しにくいなどの症状が生じ、対人関係に誤解やトラブルを招きます。 外見からはわかりにくく、周囲の理解が得られにくい点が特徴です。これは性格や意志の問題ではなく脳の損傷によるもので、周囲の理解と支援、専門的なリハビリが改善に重要です。 高次脳機能障害の原因 原因 詳細 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 脳の血管が詰まったり破れたりして脳組織が損傷を受ける状態 交通事故などによる外傷性脳損傷 頭部への強い衝撃による脳の損傷で、見た目ではわかりにくい損傷も含む 低酸素脳症や感染症などその他の要因 脳への酸素不足や脳炎などの感染症による損傷や影響 高次脳機能障害は、脳の損傷によって記憶・言語・注意・行動などの高度な脳機能に障害が生じる状態で、原因は多岐にわたります。 主な原因には、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、交通事故による外傷性脳損傷、低酸素脳症や脳炎などの感染症があります。これらは脳の組織や神経回路に影響を与える可能性があります。 発症時には早期に医療機関を受診し、適切な診断・治療・リハビリテーションを受けることが、症状の軽減や回復に重要です。 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害 項目 詳細 高次脳機能の働き 記憶、言語、注意力、計画、判断をつかさどる脳の働き 高次脳機能障害が起こる仕組み 脳血管障害で脳の特定部位が損傷し、その働きが低下または消失する状態 脳血管障害の主な症状 記憶障害、言語障害、注意障害、遂行機能障害、感情コントロールの低下 脳梗塞の特徴 脳の血管が詰まり、詰まった先の組織が血液不足となり細胞が死ぬ状態 脳出血の特徴 脳の血管が破れて脳内に血が広がり、損傷部位や範囲によって症状が異なる状態 原因と結果 損傷部位が酸素と栄養を受けられず、高次脳機能に障害が生じる状態 脳は、記憶や言語、注意力、計画、判断、感情の制御など、日常生活に欠かせない高次脳機能を担っています。脳血管障害で脳の一部が損傷すると、その部位の機能が低下または失われ、高次脳機能障害が生じます。 脳血管障害による症状は多岐にわたり、損傷部位や範囲によって重症度が異なります。脳梗塞は血管の詰まり、脳出血は血管破裂で発生し、いずれも早期診断・治療と適切なリハビリが回復に重要です。 以下の記事では、脳梗塞と脳出血の症状について詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞とは|症状・原因・治療法を現役医師が解説 【医師監修】脳出血とは|症状・種類・原因を詳しく解説 交通事故などによる外傷性脳損傷 外傷性脳損傷は、交通事故や転倒、スポーツ中の衝撃などで頭部に強い外力が加わり、脳に損傷が生じる状態です。衝撃によって脳組織が傷ついたり、脳内で出血が起きたりし、その結果、脳の機能に障害が生じます。 脳の損傷部位や範囲によって多様な高次脳機能障害が現れ、とくに交通事故では前頭葉を含む広範囲が損傷しやすく重い障害を招くことがあります。 脳挫傷・脳内出血・びまん性軸索損傷はいずれも高次脳機能を低下させるため、早期診断と適切な治療・リハビリが重要です。 以下の記事では、外傷性脳出血の症状について詳しく解説しています。 低酸素脳症や感染症などその他の要因 状態・要因 詳細 低酸素脳症 脳への酸素供給が不十分となり、脳細胞がダメージを受ける状態(溺水、窒息、心停止、一酸化炭素中毒などが原因) 低酸素脳症で高次脳機能障害が起こる理由 酸素不足により、記憶・注意・判断を担う脳細胞が損傷される状態 症状の特徴 記憶障害、注意障害、感情コントロールの障害などが現れやすい傾向 脳炎や感染症が高次脳機能障害を引き起こす理由 感染による脳の炎症で正常な脳機能が妨げられる状態(ヘルペス脳炎などでは認知や情緒面の障害が特徴) その他の要因 髄膜炎、脳腫瘍、てんかんなどによる脳細胞の損傷と高次脳機能障害発症の可能性 低酸素脳症は、溺水、窒息、心停止、一酸化炭素中毒などにより脳への酸素供給が不足し、脳細胞が損傷する病態です。 高次脳機能を担う部位が障害されると、記憶障害、注意障害、判断力低下、感情コントロールの困難など多様な症状が現れます。とくに記憶障害や注意障害が出やすい傾向があります。 脳炎や髄膜炎などの脳感染症も、脳組織に炎症や損傷を与え、認知機能や情緒面に影響を及ぼします。さらに、脳腫瘍やてんかん発作なども高次脳機能障害の原因となります。これらの障害は損傷部位や範囲によって症状が異なるため、適切なリハビリテーションが回復に不可欠です。 高次脳機能障害の治療法 治療法 詳細 リハビリテーション 記憶や言語、注意力、計画力など低下した機能の改善を目指す訓練や作業療法 薬物療法 集中力や意欲、感情の安定など症状に応じた薬剤を用いた治療 再生医療 幹細胞などを利用し損傷した脳組織の修復や機能回復を促す治療 高次脳機能障害の治療は、症状や原因、重症度に応じて複数の方法を組み合わせて行います。中心は記憶や言語、注意力などの回復を目指すリハビリテーションで、作業療法士や言語聴覚士が訓練を行います。 薬物療法は注意力や意欲低下、感情の不安定さに対して補助的に使用されます。再生医療は幹細胞や成長因子を用いて損傷した脳組織の修復や機能回復を促す新しい治療法です。 しかし、取り扱う医療機関が限られているため、実施には事前の問い合わせと医師による診察が不可欠です。再生医療は単独でなくリハビリなどと組み合わせて行われ、早期かつ継続的な介入により生活の質向上が重要視されます。 リハビリテーション リハビリ内容 有用性 言語療法(ST) 言葉の理解・表現力の改善、会話能力の向上、コミュニケーションの円滑化 作業療法(OT) 日常生活動作(食事、着替え、家事)の能力向上、手先の動作や計画力の改善 認知機能訓練 記憶力、注意力、判断力、遂行機能の強化による生活自立度の向上 理学療法(PT) 基本的な身体の動きやバランスの安定化による活動範囲の拡大 心理的支援・カウンセリング 自信回復、抑うつ・不安の軽減、社会参加意欲の向上 リハビリテーションは、高次脳機能障害の中心的な治療法です。記憶力、注意力、遂行機能、言語能力などを回復させ、日常生活の自立を支援します。 脳には損傷後に新しい神経回路を形成する可塑性があり、リハビリはこの能力を最大限に活用する治療法です。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士、ソーシャルワーカーなど多職種が連携し、症状や生活状況に応じたプログラムを提供します。 効果を高めるには発症早期から開始し、6カ月から1年程度継続することが推奨され、継続的な評価と調整によって機能改善、自信回復、抑うつや不安の軽減、社会復帰の促進が期待できます。 以下の記事では、高次脳機能障害のリハビリ効果について詳しく解説しています。 【関連記事】 高次脳機能障害のリハビリ効果とは?方法や内容をあわせて紹介 高次脳機能障害は回復する?事例やリハビリの重要性を現役医師が解説 薬物療法 理由・特徴 詳細 症状の軽減と生活の質向上 記憶障害・注意障害・感情や行動の問題を和らげる補助療法 神経伝達物質のバランス調整 セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどを整え脳機能をサポートする治療 行動・感情コントロールの支援 衝動性や攻撃性、うつ症状、不安を鎮め落ち着いた状態を保つ治療 リハビリの効果向上 薬物の作用で集中力や安定性を高め、リハビリ訓練への取り組みを後押しする効果 継続的な治療の重要性 症状や状態に合わせ、医師が薬剤を調整しながら数カ月以上継続する治療 薬物療法は、高次脳機能障害に対し脳損傷そのものを治すのではなく、症状を軽減し日常生活の質を高める補助的治療法です。記憶障害、注意障害、衝動性や攻撃性などの感情・行動の問題を緩和し、リハビリテーション効果を向上させます。 治療ではセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスを調整し、注意力や意欲の改善、感情の安定を図ります。たとえば、注意障害にはメチルフェニデートが用いられ、集中力や覚醒度を高めます。抗うつ薬や抗精神病薬は衝動性、不安、うつ症状の緩和に有効です。 薬物療法は認知リハビリや作業療法と併用することで効果が高まり、数カ月以上の継続が推奨されます。薬物療法では、必ず医師の指導のもと実施することが重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の薬物療法とリハビリでの治療法について詳しく解説しています。 再生医療 再生医療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷した脳組織の修復や再生を促し、失われた機能の回復を目指す治療法です。 幹細胞は損傷部位で新しい神経細胞を作り、修復を支援します。これにより脳の自己治癒力が高まり、リハビリ効果も向上します。従来より短期間で症状改善が報告される例があり、幹細胞が分泌する物質は血管修復や保護にも働き、脳卒中再発予防の可能性があります。 ただし、再生医療は実施できる医療機関が限られているため、事前に対応可能かを確認し、適応の有無を診察で判断することが必要です。 脳卒中の後遺症である高次脳機能障害や再発予防に関してお悩みの方は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中に対する再生医療の症例を紹介しています。治療内容の参考にご覧ください。 高次脳機能障害と似た症状 似た症状 詳細 認知症(アルツハイマー型・血管性など) 進行性の認知機能低下と記憶障害が中心の状態 うつ病や統合失調症などの精神疾患 気分の落ち込みや思考・行動の障害を伴う精神状態 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 社会的コミュニケーションや注意集中の困難が持続する状態 脳腫瘍・正常圧水頭症などの脳疾患 脳の腫瘍や脳室の異常による認知や運動機能の障害 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 発作やそれに伴う意識障害、記憶・行動の異常 高次脳機能障害と似た症状は、認知症、精神疾患、発達障害、脳疾患、てんかんなど多岐にわたります。認知症では記憶障害や判断力低下が進行し、うつ病や統合失調症などの精神疾患では意欲低下や感情の不安定さがみられます。 自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害では、社会的コミュニケーションや注意・行動の調整が困難です。脳腫瘍や正常圧水頭症では脳の構造変化や圧迫により記憶・歩行・判断力が障害されます。 側頭葉てんかんなどのてんかんでは、発作に伴い記憶や感情の変化、一時的な意識障害が生じます。これらは症状が似ていても原因や治療法が異なるため、正確な診断が不可欠です。 認知症(アルツハイマー型・血管性など) 項目 高次脳機能障害 認知症 主な原因 交通事故・脳卒中・外傷などによる急性の脳損傷 アルツハイマー病・血管性認知症などによる脳の変性や萎縮 発症の仕方 急に症状が現れる発症 徐々に症状が進行する発症 症状の進行 基本的に進行しにくい状態 時間とともに進行し悪化する状態 主な経過 リハビリによって改善が期待できる経過 根本的な治療は難しく進行を遅らせる支援が中心の経過 主な共通症状 記憶障害、遂行機能障害、注意障害、人格変化などの症状 高次脳機能障害と認知症は、どちらも記憶障害や注意障害、計画力の低下、人格変化など似た症状を伴いますが、原因と経過が異なります。高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などによる急な脳損傷が原因で、症状は突然現れます。基本的に進行せず、リハビリによって改善が見込めます。 一方、認知症はアルツハイマー病や血管性認知症などが原因で脳が徐々に変性・萎縮し、症状が進行していきます。根本的な治療は難しく、薬剤や生活支援で進行を遅らせることが治療の中心となります。 以下の記事では、高次脳機能障害と認知症の違いを詳しく解説しています。 うつ病や統合失調症などの精神疾患 項目 高次脳機能障害 うつ病や統合失調症などの精神疾患 主な原因 交通事故・脳卒中などによる器質的な脳損傷 心理的・社会的ストレス、神経伝達物質バランスの乱れ遺伝的素因など 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 徐々に進行する場合や急性に悪化する場合がある発症 背景メカニズム 損傷部位の神経ネットワーク障害による症状発現 器質的損傷を伴わない脳機能異常や心理社会的要因による症状発現 治療の方向性 原因疾患の治療とリハビリによる機能回復支援 薬物療法や心理社会的支援による症状の安定化と再発予防 主な共通症状 注意障害、意欲低下、感情コントロールの不全、社会的行動の変化 高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中などによる明確な脳損傷を原因として、認知機能や感情の制御が低下する病態です。これに対し、うつ病や統合失調症などの精神疾患は脳の構造的損傷を伴わず、心理社会的ストレス、神経伝達物質の異常、遺伝的要因などが主な背景と考えられます。 いずれも注意力や意欲の低下、感情の不安定さ、対人関係の変化といった共通症状を示し、日常生活や社会生活に大きな支障をきたしますが、その発症機序は異なります。高次脳機能障害は脳の器質的障害による直接的な機能低下であり、精神疾患は脳機能の異常や心理社会的要因による変化が中心です。 症状が類似するため誤診の恐れもあり、正確な診断には医師による詳細な問診、神経心理検査、画像検査が不可欠です。 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 項目 高次脳機能障害 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど) 主な原因 脳梗塞・交通事故・外傷などによる後天的な脳損傷 生まれつきの脳機能の特徴や発達の仕方の違い 発症の時期 成人期・小児期を問わず、脳損傷後に突然発症 幼少期から症状がみられる発達期発症 背景メカニズム 損傷部位の神経ネットワーク障害による情報処理の低下 先天的な脳情報処理の特性による行動や認知の違い 治療・支援 リハビリテーションや薬物療法で機能回復支援 療育・環境調整・必要に応じた薬物療法による適応支援 共通する症状 注意の持続困難、遂行機能障害、社会的行動の変化 高次脳機能障害と発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)は、注意が続かない、計画や段取りが苦手、感情や対人関係の調整が難しいといった共通の症状があります。これらは脳の情報処理や行動調整機能の障害で起こります。 発達障害は先天的で幼少期から症状があり、高次脳機能障害は脳梗塞や事故など後天的損傷が原因です。症状の時期や経過が診断の鍵であり、正確な鑑別には医師の評価が必要になります。 以下の記事では、ブレインフォッグとADHDについて詳しく解説しています。 脳腫瘍・正常圧水頭症などの脳疾患 項目 高次脳機能障害 脳腫瘍・正常圧水頭症 主な原因 交通事故・脳卒中・外傷などによる脳の損傷 脳内の腫瘍形成や脳脊髄液循環障害による脳圧迫 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 腫瘍や液体貯留が進行して症状が徐々に出現する発症 症状発現の仕組み 損傷部位の神経細胞や神経回路の破壊による直接的障害 脳の圧迫や循環障害による二次的な機能障害 主な治療 リハビリテーションを中心とした機能回復支援 外科的治療(腫瘍摘出・シャント手術)による圧迫解除と症状改善 共通する症状 記憶障害、注意障害、感情のコントロール不全 脳腫瘍は脳内に発生する異常な腫瘤であり、正常圧水頭症は脳脊髄液の流れが障害されて脳室に液が過剰にたまる疾患です。いずれも脳を物理的に圧迫し、血液や脳脊髄液の循環を妨げることで、記憶障害、注意力低下、感情の不安定化など、高次脳機能障害に似た症状を引き起こします。 原因は脳細胞の直接的な損傷ではなく、圧迫や循環障害による二次的な機能低下です。治療は腫瘍摘出術やシャント手術などの外科的手段が中心で、圧迫を解除することで症状が改善する可能性があります。高次脳機能障害とは症状や原因が異なるため、医師の診断が不可欠です。 【関連記事】 【くも膜下出血の後遺症】水頭症は寿命がある?症状から治療法まで医師が解説 水頭症による高齢者の認知症は手術で治る?手術しないリスクとは【医師監修】 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 項目 高次脳機能障害 てんかん(とくに側頭葉てんかん) 主な原因 脳梗塞・交通事故・外傷などによる器質的な脳損傷 脳内の異常な電気活動(発作)や潜在的なてんかん性放電 発症の仕方 脳損傷後に突然症状が現れる発症 発作の繰り返しに伴い徐々に症状が現れる場合もある発症 症状発現の仕組み 損傷部位の神経細胞や神経ネットワークの破壊による直接的障害 異常な電気活動やネットワークの乱れによる機能障害 主な治療 リハビリテーション中心の機能回復支援 抗てんかん薬や外科手術による発作コントロール 共通する症状 記憶障害、注意障害、感情のコントロール不全 てんかん、とくに側頭葉てんかんは、高次脳機能障害と同様に記憶障害・注意障害・感情変化を示します。記憶障害は発作時だけでなく非発作時にも現れ、新しい情報を覚えにくい、過去の出来事を忘れやすいなどの症状があります。 注意障害は集中力低下や気の散りやすさ、感情変化は怒りやすさや感情コントロール困難として表れます。これらは異常な電気活動や潜在的なてんかん性放電による脳ネットワークの乱れが原因です。 一方、脳腫瘍や正常圧水頭症では脳の圧迫や循環障害による二次的症状であり、外科手術で改善を図ります。てんかんは抗てんかん薬や手術で発作を抑えるなど治療法が異なるため、正確な鑑別診断が重要です。 以下の記事では、側頭葉てんかんの手術後に起こりうる後遺症について詳しく解説しています。 改善しない高次脳機能障害は当院へご相談ください 高次脳機能障害は、記憶力の低下や注意力の欠如などが現れ、日常生活に支障をきたします。早期発見と治療の継続で改善が見込めます。しかし、症状が進行している状態の場合、改善が困難になることがあります。 改善が見られない高次脳機能障害でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院は、損傷部位の修復にアプローチする再生医療を積極的に提案し、患者様の症状に合う治療方針を策定します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 高次脳機能障害に関するよくある質問 高次脳機能障害の家族の向き合い方を教えてください 高次脳機能障害の患者さんは、日常生活や介護の多くを家族が担いますが、症状は外見からわかりにくく、性格や行動の変化も伴うため、家族の心理的負担は大きくなります。介護を続けるためには、病気の正しい理解が重要です。 症状や経過を知ることで患者さんの行動を病気の一部として受け入れやすくなり、家族会やセミナーの参加も有効です。また、家族自身の心身の健康維持も必要で、心理カウンセリングや相談窓口の活用、同じ立場の家族との交流がストレス軽減に役立ちます。 また、行政や福祉サービス、レスパイトケアを利用して介護負担を分散させることが、患者さんの生活の質向上にもつながります。 以下の記事では、高次脳機能障害の家族の向き合い方について詳しく解説しています。 【関連記事】 高次脳機能障害で怒りやすくなる?家族への適切な対応を紹介 高次脳機能障害への対応の仕方は?介護疲れを軽減するコツを解説 高次脳機能障害患者の家族が抱えるストレスは?対処法や支援制度を現役医師が解説 高次脳機能障害の平均余命はどのくらいですか? 高次脳機能障害の平均余命は、発症年齢や性別によって異なりますが、健常者より短くなる傾向があります。男性では、20歳発症の場合は平均余命が42.61年で、健常男性の61.45年より約18.8年短くなります。 年齢が上がるにつれて差は縮まり、50歳発症では約12.4年、80歳発症では約6.5年の差です。女性も同様で、20歳発症では約17.3年、50歳発症では約11.9年、80歳発症では約8.5年短くなります。 この余命短縮は、脳損傷による高次脳機能障害と、それに伴う身体機能低下や合併症リスクの増加が影響していると考えられます。ただし、適切な医療管理やリハビリテーション、生活習慣の改善によって健康状態を保ち、余命や生活の質(QOL)を高めることは可能です。 平均余命は統計上の目安であり、個々の生活環境や支援体制によって変わるため、医療機関と連携し、長期的な健康管理と社会参加を継続することが重要です。 以下の記事では、高次脳機能障害の平均余命について詳しく解説しています。
2025.08.31 -
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「最近、首がドクドク脈打つような気がする」「家事をしているときふと首が重だるい」 このような首の違和感に、不安を抱えていませんか。とはいえ、症状が軽いと「病院に行くほどではないかも」と受診をためらう方も中にはいるでしょう。 実は、首の血管(頸動脈)に動脈硬化が生じていても、多くは自覚症状がないまま進行します。 とくに、めまいや片側のしびれといった症状があらわれている場合、脳梗塞や動脈硬化などのリスクが高まっている可能性もあり、注意が必要です。 早期に医療機関を受診し、検査を受けることで、動脈硬化の進行を防げる可能性が高まります。 本記事では首の動脈硬化によって起こる症状やチェック方法について詳しく解説します。首の違和感に不安を抱える方は、ぜひご自身の健康チェックにお役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 首の動脈硬化について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 首の動脈硬化の疑いがある症状 首の動脈硬化は、初期には自覚症状が出にくく、多くの場合ゆっくりと進行します。気がつかないうちに重症化しているケースも少なくありません。 そのため、年齢や不規則な生活リズム、脂質の多い食事など生活習慣にリスクがある方は、症状がなくても一度検査を受けておくと良いでしょう。 ここでは、頸動脈の動脈硬化によって起こりやすい代表的な症状を紹介します。 片側の手足にしびれや脱力感が出る 言葉が出づらくなる ふらつきやめまいが頻繁に起こる 少しでも気になる症状がある方は、ご自身が当てはまっていないかを本章でチェックしてみてください。 片側の手足にしびれや脱力感が出る 首の血管が動脈硬化によって狭くなると、脳に十分な血流が届かなくなり、片側の手足にしびれや脱力感があらわれることがあります。これらの症状は、脳梗塞の前触れ症状として見られる代表的な症状です。 脳神経は体の左右を交差してコントロールしているため、異常がある脳の部位とは反対側の手足に症状が出やすくなります。 また、一時的にしびれや脱力感が消えた場合でも、脳梗塞の前触れと言われている「一過性脳虚血発作(TIA)」の可能性があるため注意が必要です。放置すると本格的な脳梗塞に進行するリスクがあるため、症状が一度おさまっても、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。 言葉が出づらくなる 首の血管が動脈硬化によって狭くなると、脳への血流が一時的に低下し「ろれつが回らない」「言葉がうまく出てこない」といった症状があらわれることがあります。 さらに、脳の言語中枢やその周辺に十分な血液が届かなくなると、発声や会話に異常が生じやすくなります。(文献1) たとえば、次のような兆候が見られる場合は注意が必要です。 会話中に突然「言葉が詰まる」「人に言葉をうまく伝えられなくなる」 「ありがとう」といったような、簡単な言葉が急に出てこなくなる 電話中、突然言葉が出なくなる こうした症状は一時的におさまることもありますが、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性もあるため、注意が必要です。少しでも異変を感じたら単なる疲労と軽視せず、早めに専門医を受診しましょう。 ふらつきやめまいが頻繁に起こる 頻繁にふらつきやめまいが起こる場合、首の動脈硬化による血流障害が関係している可能性があります。 とくに以下のような症状が繰り返しあらわれる場合は、注意が必要です。 立ち上がった際にふらつく 歩いている途中にクラッとする 目の前が急に暗くなる これらの症状が目立つ場合は、バランス感覚をつかさどる脳の部分に十分な酸素が届かず、平衡感覚に支障をきたしているおそれがあります。(文献2) めまいやふらつきが頻繁に続くようであれば、早めに専門の医療機関を受診して検査を受けましょう。 首の動脈硬化の症状をセルフチェックする方法 首の動脈硬化は無症状で進行するケースが多いため、セルフチェックでは早期に気が付くのは難しいのが実情です。 しかし、首の血管に違和感がある場合、首の血管が細くなっている、動脈硬化が関わる脳梗塞の初期症状であるなどの可能性もあります。次のような症状が出ていないか、自宅のような落ち着いた場所で確認してみましょう。 頸動脈がポコっと浮き出て見える 拍動が左右で異なる 顔のゆがみがあり、あからさまに左右非対称である ただし、これらの症状があるからといって、必ずしも動脈硬化が原因とは限りません。症状が長引く場合は、別の病気の可能性もあるため、早めに専門医へ相談しましょう。 首の動脈硬化症状が起こる原因 首にある「頸動脈」は、脳へ血液を送る主要な血管です。途中で枝分かれしている部分は、血液の乱流が起こりやすく、コレステロールや脂質の蓄積でできる「プラーク」が形成されやすい構造です。 プラークが血管の分岐部に蓄積すると、血流が妨げられ、動脈硬化が進行しやすくなります。(文献3) さらに放置すると、プラークが大きくなって血管を狭めたり、剥がれたプラークが血流に乗って脳の血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こす可能性があるため注意が必要です。こうしたリスクを防ぐためには、原因を知り、早期に検査や治療を行うことが大切です。 首の動脈硬化が起こる原因として、主に以下の3つが挙げられます。 生活習慣病 喫煙 加齢 これらの要因によって、プラークの肥大化や血管を狭めるリスクが高まります。首の動脈硬化を正しく理解し、日々の生活習慣を見直すきっかけにしてみてください。 生活習慣病 現代でも問題視されている「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの生活習慣病は、いずれも自覚症状が出にくく、気づかないうちに動脈硬化へと進行するリスクがあります。 これらの疾患は、血管に負担やダメージを与えるだけでなく、血中のコレステロール値を上昇させる原因にもなります。その結果、プラークができやすくなり、動脈硬化の発症リスクを高めてしまうのです。 そのため、すでに生活習慣病の診断を受けている方は、専門医のもと、原疾患を適切に治療することが大切です。 なかでも糖尿病は、放置すると腎臓病や緑内障などの合併症を引き起こすおそれがあります。初期段階では症状に気づきにくいケースも多いため、血糖値に不安がある方は早めの対策を心がけましょう。 糖尿病の初期症状や予防法について詳しく知りたい方は、以下のコラムもぜひご覧ください。 喫煙 喫煙は、動脈硬化を進行させる大きなリスク要因です。 タバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、血管の内壁を傷つけ、血管を収縮させる作用があります。これにより血流が悪化し、動脈硬化が促進されやすくなるのです。(文献4) 実際に、喫煙者は非喫煙者と比べて動脈硬化の進行が早く、脳梗塞のリスクが高いことも研究で明らかになっています。(文献5) そのため、動脈硬化の予防には禁煙が有効です。 しかしながら、意思があってもなかなか禁煙ができない方も多くいます。その場合は禁煙外来を利用し、医師のサポートを受けながら禁煙を目指すことをおすすめします。 加齢 年齢もまた、動脈硬化のリスクを高める避けられない要因です。 加齢とともに、コラーゲンやエラスチンといった血管の壁を構成する成分が変化し、弾力性が徐々に失われることで血管が固くなります。(文献6) 加齢による変化は避けられないものの、生活習慣の改善により動脈硬化のリスク予防に取り組むことは可能です。前述のような生活習慣病リスクをできるだけ抑えることで、加齢による血管の老化スピードを緩やかにできます。 今から健康的な生活を心がけ、血管の健康を保つ生活習慣を取り入れましょう。 首の動脈硬化を予防する方法 首の動脈硬化を予防するには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。なかでも、今日から意識できる具体的な対策として、次の2つが挙げられます。 運動習慣をつける 血管プラークを減らす食事を心がける 本章では、これらの習慣を無理なく取り入れるためのポイントをご紹介します。ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。 運動習慣をつける 運動は、血圧やコレステロール値、血糖値などの動脈硬化に関わるさまざまなリスク要因に働きかける効果があります。これらを総合的に改善することで、血管への負担が軽減され、動脈硬化の進行を抑えることが期待できます。 日常生活に取り入れやすい有酸素運動としては、次のようなものがおすすめです。 ウォーキング ジョギング ラジオ体操 階段の上り下り これらを週2〜3回を目安に行うのが理想です。(文献7) また、運動する時間を設けられない場合は「1駅分歩く」「外出の際に少し遠回りする」「歩くスピードを少し上げる」など、普段の動作にひと工夫いれるだけでも効果があります。 無理のない範囲で気持ちよく続けられる方法を見つけて、運動習慣を生活の中に取り入れていきましょう。 血管プラークを減らす食事を心がける 動脈硬化は、血管内にプラーク(脂質の塊)がたまることが原因のひとつとされています。 これを防ぐためには、油分の多い食品を控え、野菜を積極的にとるなど「プラークの蓄積を抑える」食生活を意識することが大切です。 動脈硬化予防に効果的な食生活の例として、以下のような点が挙げられます。 【積極的にとりたい食事の工夫】 食事の工夫 期待される効果 主な食品例 食物繊維を多くとる コレステロールを吸着し、体外へ排出する ごぼう、わかめ、キャベツ 青魚を積極的にとる DHA・EPAが血液をサラサラにし、プラークの蓄積を抑える サバ、イワシ、サンマ 【避けたい食品・控えたい習慣】 食事の工夫 期待される効果 主な食品例 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を控える 悪玉コレステロール(LDL)の増加を防ぐ 肉の脂身、バター、マーガリン 塩分・糖分を控える 血圧上昇や血管ダメージのリスクを軽減する 加工肉、インスタント食品、菓子パン これらの食生活を意識すると、血管プラークの蓄積を抑えて動脈硬化のリスクを軽減できます。ぜひ本記事を参考に、毎日の食事を見直してみてください。 また、脳梗塞の再発予防においても、適切な食事管理が大切です。詳しくは、以下の記事で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。 首の動脈硬化の症状を見逃さず早期に対策をしよう 首の動脈硬化は、初期には自覚症状が少ないものの、進行すると片側の手足のしびれや脱力感、言葉が出づらくなるなどの症状があらわれることがあります。これらの症状は、脳梗塞の前兆である可能性も考えられるため、決して見過ごしてはいけません。 「なんとなく首がドクドクする」「最近よくふらつく」といった軽微な変化も、放置せずセルフチェックを習慣にし、早期に受診するようにしましょう。 脳梗塞は一度発症すると再発リスクが高く、その後は予防的なケアが欠かせません。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による脳梗塞の再発予防を提供しています。メール相談またはオンラインカウンセリングにて、無料相談を受付中です。気になる方はぜひ、当院までご連絡ください。 首の動脈硬化の症状に関してよくある質問 首の動脈硬化の症状が出たら何科を受診すべき? 首の動脈硬化の症状があらわれたら、以下の診療科が適しています。 循環器内科 脳神経外科 脳神経内科 現在通院している病院がある場合は、診療科に関わらず、まずはかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。また、近隣にこれらの診療科がない場合は、総合病院を受診し、適切な診療科を紹介してもらう方法もあります。 めまい・視力低下・手足のしびれなどの神経症状がある場合は、とくに注意が必要です。症状を放置せず、できるだけ早く受診しましょう。 動脈硬化の初期症状は? 動脈硬化は首だけでなく、全身の血管に影響を及ぼす病気です。しかし、動脈硬化そのものには自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行しているケースが多くみられます。 動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞など重大な病気を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。 脳梗塞や心筋梗塞などの前触れとして、以下のような症状があらわれることがあります。 軽いふらつき 耳鳴り 集中力の低下 ただし、これらの症状は動脈硬化に特有のものではなく、他の原因でも起こりうるため、気になる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。 また、血管の状態を調べる検査や、生活習慣病を発見する定期的な健康診断を受けておくことも大切です。自覚症状が少ないからこそ、日ごろの生活習慣を見直しながら、早期発見・早期対策に取り組みましょう。 脳梗塞の前兆についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 参考文献 文献1 言語機能の局在地図|高次脳機能研究 文献2 脳における平衡機能の統合メカニズム|理学療法学 文献3 頸部血管超音波検査ガイドライン|日本脳神経超音波学会ほか 文献4 喫煙と循環器疾患|厚生労働省 文献5 喫煙本数による脳卒中リスク|ファルマシア 文献6 3.加齢による動脈硬化の分子機序|日本老年医学会雑誌 文献7 《健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023 推奨事項一覧》|厚生労働省
2025.07.31 -
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「筋肉がやせてきた」「歩き方が変わってきた」 そんな変化をきっかけに「脊髄性筋萎縮症(SMA)」や「筋ジストロフィー」という病名を初めて目にした人も多いのではないでしょうか。 両者は似たような病名ですが、原因も治療法も異なります。 この記事では、脊髄性筋萎縮症(SMA)と筋ジストロフィーの違いや、見分け方のポイントを解説します。 不安な気持ちが少しでも和らぎ「今できること」が見つかるきっかけとなれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィーについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脊髄性筋萎縮症と筋ジストロフィーの原因の違い 脊髄性筋萎縮症(SMA)と筋ジストロフィーは、どちらも遺伝子の異常によって筋力が低下していく病気ですが「どこに異常があるか」が大きく異なります。 両者の違いは、以下のとおりです。 病名 異常が起こる場所 脊髄性筋萎縮症(SMA) 筋肉を動かすための神経 筋ジストロフィー 筋肉細胞そのもの 本章をもとに、両者の原因の違いを理解しておきましょう。 脊髄性筋萎縮症は神経の障害によって起こる 脊髄性筋萎縮症(SMA)は、遺伝子の異常により筋肉を動かす指令を出す神経に障害が起こり、発症します。 具体的には、脊髄にある「運動神経細胞(脊髄前角細胞)」がうまく働かなくなり、筋肉が使われにくくなってやせていく病気です。 使われない筋肉は少しずつ力を失い、筋力の低下や筋肉の萎縮(やせ細り)を引き起こします。(文献1) 筋ジストロフィーは筋肉そのものが壊れやすくなる 筋ジストロフィーは、遺伝子の異常によって筋肉の細胞が壊れやすくなり、再生が上手くいかなくなる病気です。 その結果、筋肉の変性や壊死が進み、やせて力を失っていきます。 進行すると、筋力の低下や運動機能の障害だけでなく、呼吸や心臓、消化などの内臓機能に影響が及ぶこともあります。(文献2) 脊髄性筋萎縮症と筋ジストロフィーの症状の違い 脊髄性筋萎縮症(SMA)と筋ジストロフィーは、出やすい症状にも違いがあります。 脊髄性筋萎縮症は体幹や手足の筋力低下から始まる 脊髄性筋萎縮症(SMA)はおもに体幹や四肢の筋力低下から始まり、発症時期や進行の速さ、症状の程度はタイプによって異なります。 代表的なタイプは、以下の4種類です。(文献1) 型 発症時期 主な特徴 I型 生後6か月まで 体幹を自力で動かせず、 支えなしに座るのがむずかしい II型 生後7か月~1歳半 座れるが立てない、歩けない III型 幼児期、小児期 歩行できるが筋力低下が進む IV型 成人以降 ゆっくりと筋力が落ちる これらすべてのタイプで共通する症状は、以下の通りです。 筋力低下 筋萎縮(やせ細り) 深部腱反射の減弱や消失 深部腱反射とは、膝の下をゴムハンマーで叩いたときに足がポンと前に出るような、体に備わった自然な反応のことです。 脊髄性筋萎縮症(SMA)は、このような通常みられる反応が出にくくなる症状がみられます。(文献1) 筋ジストロフィーは転びやすさや歩行困難から気づかれる 筋ジストロフィーは、筋肉のはたらきが弱くなり、日常動作に支障が出る病気です。 筋力の低下や歩きにくさ、姿勢の変化などが徐々に現れ、生活の中で気づかれます。(文献2)(文献3) タイプによって進行の速さや現れ方は異なりますが、以下のような症状が見られることがあります。 転びやすくなる 疲れやすくなる 関節がかたくなる 腕を上げづらくなる 心臓の機能に問題が出る 階段の上り下りが難しくなる 背中や腰が曲がりやすくなる 歩いたり走ったりするのが遅くなる 食べ物の飲み込み(嚥下)に問題が出る また、病型によっては、知的障害や発達の遅れ、目・耳の症状など、筋力以外の不調が先に現れることもあります。 代表的な病型は、以下の通りです。 ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型/ベッカー型) 肢帯型筋ジストロフィー 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー 眼咽頭筋型筋ジストロフィー 福山型先天性筋ジストロフィー 筋強直性ジストロフィー それぞれ症状や発症年齢、遺伝のされ方などが異なります。(文献2) 脊髄性筋萎縮症と筋ジストロフィーの診断方法の違い 脊髄性筋萎縮症(SMA)と筋ジストロフィーの症状で気になることがあれば、医療機関での検査が必要です。 それぞれの病気に応じた診断方法があります。 脊髄性筋萎縮症の診断方法 脊髄性筋萎縮症(SMA)の診断では、まず症状や筋力の状態などを医師が確認します。 今出ている症状が、他の病気ではないことを確認するためです。 その上で、SMN1という遺伝子に異常があるかどうかを調べる遺伝子検査が行われます。 また、必要に応じて、筋電図検査や血液検査も実施されます。(文献1) 筋ジストロフィーの診断方法 筋ジストロフィーの診断では、進行する筋力の低下や、病気特有の症状・合併症の有無の確認が必要です。 家族の中に同じような病気の人がいないかも確認します。 検査としては、血液検査や筋電図検査、確定診断のために遺伝子検査をします。(文献2) 筋ジストロフィーは、症状の進行具合や治療法などが病型ごとに変わってくるため、早い段階で正確にタイプを見きわめることが重要です。 脊髄性筋萎縮症と筋ジストロフィーの治療法 どちらの病気も根本的な治療はまだ確立されていません。そのため、症状の進行を抑えるための治療が行われています。 おもな治療法の違いを、以下にまとめました。 脊髄性筋萎縮症(SMA) 筋ジストロフィー 基本的な治療方針 進行を抑える薬の使用とリハビリ 進行を緩やかにするケアとリハビリ 薬による進行抑制 可能なケースが増えている 一部の型のみに限られる それぞれの病気の治療法について、順番に見ていきましょう。 脊髄性筋萎縮症の基本的な治療法 脊髄性筋萎縮症(SMA)では、進行を抑える薬の使用や、生活の質を保つためのリハビリが中心となります。 とくにI型では人工呼吸器が必要になることもあり、呼吸の管理が重要です。 また、栄養面のサポートとして、経管栄養が行われるケースもあります。 いずれの場合でも、現在の機能を長く維持できるよう、医師やリハビリテーションスタッフなどさまざまな専門家との連携が大切です。 近年、脊髄性筋萎縮症に対して世界的に治療薬の研究や臨床試験が進められており、日本国内でも3種類の疾患修飾薬(病気の進行を遅らせたり抑えたりする効果が期待できる薬)が承認されています。 今後も治療の選択肢が広がっていくことが期待されます。(文献1) 筋ジストロフィーの基本的な治療法 筋ジストロフィーでは、呼吸機能や体の機能維持のためのリハビリテーションが基本です。 デュシェンヌ型においては、症状の進行をゆるやかにするステロイド治療が行われています。 また、病気のタイプによっては、心臓のペースメーカーや人工呼吸器を使うこともあります。 在宅での療養生活が長くなるケースも多く、定期的な検査や日々のリハビリが大切です。(文献2) 筋ジストロフィーについては、以下の記事でも詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。 再生医療という選択肢もある 近年では、失われた機能の回復を目指す「再生医療」にも注目が集まっています。 幹細胞を使って傷んだ筋肉や神経を修復する研究が進んでおり、今後の新しい治療法として期待されています。 リペアセルクリニックでは、脳梗塞や脊髄損傷などさまざまな疾患の再生医療を提供しています。 気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。 再生医療については、こちらの記事も合わせてご覧ください。 脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィーの違いを理解して適切な治療を受けよう 脊髄性筋萎縮症(SMA)と筋ジストロフィーは、どちらも筋力が低下していく病気ですが、原因や症状、進み方、治療法に違いがあります。 それぞれに合った適切な治療や支援を受けるためには、まず正確な診断が欠かせません。 「筋肉がやせてきた」「最近ふらつく」「家族の病気が気になる」など、小さな変化でも気になることがあれば、ひとりで抱え込まず、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。 診断がつくことで、進行を抑える治療や生活のサポートにつながる可能性があります。 当院リペアセルクリニックでは、電話相談やオンラインカウンセリングにも対応しています。 受診を迷っている段階でも構いませんので、まずはお気軽にご相談ください。 脊髄性筋萎縮症と筋ジストロフィーに関するよくある質問 脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィーは大人になってから発症することもありますか? どちらの病気にも「成人型」があり、大人になってから発症するケースがあります。 脊髄性筋萎縮症(SMA)の場合は「IV型」が該当し、成人期以降にゆっくりと筋力の低下が進みます。 症状の進行は比較的緩やかで、日常生活に大きな支障が出にくいことも特徴です。(文献1) 筋ジストロフィーでは「筋強直性ジストロフィー」や「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)」などが成人期に発症しやすいタイプとして知られています。(文献4)(文献5) これらは、歩行や筋力だけでなく、全身のさまざまな機能に影響を及ぼすこともあります。 大人の筋ジストロフィーについては、こちらの記事でも詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。 子どもの場合、筋ジストロフィーの初期症状はどのようなものですか? 筋ジストロフィーの中でも、デュシェンヌ型や顔面肩甲上腕型など一部の病型では、子どものころから以下のような動きの変化がみられることがあります。(文献6)(文献7) 転びやすい 走るのが苦手 ふくらはぎが異常に太く見える 床から立ち上がるとき、一度四つん這いになり、手で太ももを押して立ち上がる 目がしっかり閉じられない 腕を上げるのが難しい 日常の中で「あれ?」と思うような動きがあれば、早めに小児科や神経内科で相談してみましょう。 参考文献 (文献1) 脊髄性筋萎縮症(指定難病3)|難病情報センター (文献2) 筋ジストロフィー(指定難病113):病気の解説|難病情報センター (文献3) 筋ジストロフィー(指定難病113):概要診断基準等|難病情報センター (文献4) 筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー(筋緊張性ジストロフィー)(平成22年度)|難病情報センター (文献5) FSHD 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー|神経筋疾患ポータルサイト (文献6) 筋ジストロフィーの症状とリハビリテーションについて|独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 (文献7) 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー|MSDマニュアル家庭版
2025.07.31 -
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「失調性歩行って何?」「ふらつく歩き方は治るの?」「どんな病気が関係しているの?」 このような疑問をお持ちではありませんか。 医師から「失調性歩行」と言われたものの、詳しい説明がなく不安を感じている方もいるかもしれません。 失調性歩行とは、バランスがとりにくく、まっすぐ歩けなくなる歩行障害のひとつです。 本記事では、失調性歩行の症状や原因、リハビリによる改善の可能性について解説します。 診断後の不安を少しでも和らげるヒントとして、参考にしていただけたら幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 失調性歩行について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 失調性歩行の特徴は「歩くときのふらつき」 失調性歩行とは、体のバランスをうまく保てず、ふらつきながら歩く状態を指します。 症状のあらわれ方にはいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。 ふらふら揺れながら歩く 体のバランスを保つのが難しくなり、左右にふらふらと揺れながら歩くのが特徴です。(文献1) 一見すると酔っているように見えるため、「酩酊歩行」とも呼ばれます。 歩いている途中で急に向きを変えようとすると、動きがぎこちなくなり、強くふらつくこともあります。(文献2) 足を大きく広げて歩く 歩くときに足を大きく開いて進むのも、失調性歩行の典型的なパターンです。(文献1) 重心を安定させようとする無意識の反応で、転ばないように下半身を広く使って支えようとするのです。 このとき、ひざを伸ばしたまま大きく踏み出すような歩き方になりやすく、本来のように膝を柔らかく曲げて歩く動きが見られなくなります。 階段の上り下りが難しくなるのも、このようなバランスの崩れが関係しています。(文献2) 失調性歩行を引き起こす主な原因 失調性歩行にはいくつかのタイプがあり、それぞれ背景にある病気や障害が異なります。 歩行障害の詳しい種類や原因は、こちらの記事でも詳しく紹介しているため、合わせてご覧ください。 小脳の障害|脊髄小脳変性症・小脳出血など 小脳は体の動きをスムーズにし、バランスをとる役割をもっています。 ここに障害があると、歩くときに体が左右に揺れ、足がもつれるなどの症状が現れます。 代表的な病気は、脊髄小脳変性症、小脳出血、多発性硬化症などです。(文献3) 脊髄の障害|脊髄腫瘍・脊髄空洞症など 脊髄は背骨の中を通る神経の束で、脳からの指令を体に伝える通り道です。 この部分に異常があると、足の動きや位置の感覚がうまく伝わらなくなり、歩き方がぎこちなくなります。 脊髄腫瘍や脊髄空洞症などが関係していることがあります。(文献4) 前庭の障害|メニエール病・前庭神経炎など 前庭とは、耳の奥にあるバランスを感じ取る器官です。 ここがうまく働かなくなると、立っているときや歩いているときにぐらぐらする感覚が続きます。 メニエール病、前庭神経炎、感染性髄膜炎などが代表的です。(文献4) 大脳の障害|多発性脳梗塞など 大脳は、動きの「司令塔」として働く部分です。 脳内の前頭葉、頭頂葉といった部位に異常があると、筋力に問題がなくても体のバランスが崩れたような歩き方になることがあります。(文献4) 小脳の障害に似た症状が見られることがあり、原因の特定が難しいケースがあることも大脳の障害の特徴です。 また、明らかな麻痺がなくても歩行が不安定になることもあるため、脳全体の状態を丁寧に確認する必要があります。(文献4) これらの病気は、早めに気づいて対応することが大切です。 失調性歩行には専門的なリハビリが効果的 失調性歩行の症状がみられた場合、原因となる障害に合わせたリハビリをすることで、歩行の安定を目指せます。 協調運動を助ける「フレンケル体操」 フレンケル体操は、目で見ながらゆっくりと体を動かすリハビリ方法です。 手足を「どう動かすか」を意識しながら反復練習をして、バランス感覚や動きの調整力を取り戻す目的があります。 たとえば、以下のような動作をします。 椅子に座って床に置いた目印をなぞるように足を動かす 仰向けになり、片脚のかかとを床につけたまま、かかとをゆっくり滑らせるようにしながら膝を曲げ伸ばす 床に平行線を引き、その上を歩く シンプルな動作を自分の目で確認しながら繰り返します。 特別な器具は不要で、ベッドや椅子があれば始められるため、自宅でも取り入れやすい訓練のひとつです。 感覚のずれを補う「重りや包帯」 失調性歩行では、手足の動きと感覚がうまく一致しないことがあります。 自分では足をまっすぐ出したつもりでも、実際にはずれていたり、力を入れすぎてしまったりするのです。 こうした「感覚のずれ」を補う方法として、手足に軽い重りや包帯をつけるリハビリがあります。 重さや圧迫感があることで、手足の位置や動きを意識しやすくなり、「動きすぎ」「力の入れすぎ」といったミスを防ぎやすくなるのです。 重りや包帯の量は状態に合わせて調整でき、歩く・立つ・座るなど、基本動作の安定にもつながります。 体幹の安定性を高める「筋力トレーニング」 筋力や体力が落ちていると、バランスをとる力も弱くなり、ふらつきや転倒のリスクが高まります。 そのため、失調性歩行のリハビリでは筋力をつけることも大切です。 筋力トレーニングには、筋力向上に加えて筋肉の協調性やリズミカルな動作を改善する効果も期待できます。 また、柔軟体操を取り入れて、関節のこわばりを防ぐことも行います。 無理なく体を支える力をつけていくことで、転倒予防や日常生活の自立にもつながるため、継続がカギになるでしょう。 失調性歩行の改善を目指すなら医療機関を受診しよう 失調性歩行には、小脳や脊髄、大脳、耳のバランス器官など、さまざまな原因が関係しています。 原因によって対処法も異なるため、医療機関での検査やリハビリが大切です。 歩き方に違和感があるときや、家族に「おかしい」と言われたときは、迷わず専門の医師に相談してください。 リペアセルクリニックでは「メール相談」や「オンラインカウンセリング」も行っています。 失調性歩行でお悩みの方は当院へお気軽にご相談ください。 失調性歩行に関するよくある質問 失調性歩行はリハビリで改善しますか? 失調性歩行の改善は、原因となる病気や障害によって異なります。 ただし、フレンケル体操や筋トレなどのリハビリを継続することで、歩行が安定し、日常生活の質も向上する可能性があります。 専門の病院を受診し、医師やリハビリスタッフの指導を受けながら継続していきましょう。 小脳が原因の失調性歩行は治りますか? 小脳性の失調は、根本的な治療が難しいこともありますが、リハビリや再生医療などによって歩行の質が改善する可能性があります。 早めに医療機関で相談し、状態に合った対応を始めることが大切です。 小脳梗塞の後遺症の治療や予後については、こちらの記事で詳しく紹介しているため、合わせてご覧ください。 参考文献 (文献1) 歩行障害の種類と原因疾患|Jpn J Rehabil Med (文献2) 失調症のリハビリテーション|リハビリテーション医学 (文献3) 3.小脳失調症の病態と治療―最近の進歩―|日本内科学会雑誌 (文献4) 運動失調に対するアプローチ|関西理学
2025.07.31 -
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「ウェルニッケ脳症の治療をしているのに、歩きにくさの症状が出ている」 「ウェルニッケ脳症を発症した親に記憶障害がある気がする」 このような不安を抱えている方もいるでしょう。 ウェルニッケ脳症は、治療後も運動性失調や眼球運動障害、記憶障害などの後遺症が出ることがあります。とくに、治療の開始が遅れたり、治療が不十分だったりした場合に後遺症が残りやすい傾向です。本人も記憶障害によって混乱している場合があるため、周囲のサポートが欠かせません。 本記事では、ウェルニッケ脳症の後遺症として現れる症状や原因を詳しく解説します。ご家族にできるサポート方法もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ウェルニッケ脳症の後遺症における主な症状 ウェルニッケ脳症の後遺症には、さまざまな症状が見られます。代表的な症状は以下の3つです。 運動性失調 眼球運動障害 記憶障害・作話 1つずつ詳しく見ていきましょう。 運動性失調|ふらつきやまっすぐ歩けない 運動性失調は、ウェルニッケ脳症の原因であるビタミンB1の欠乏によって、小脳や前庭核といった体のバランスを保つ部位が障害されることで現れます。 主な症状は、お酒に酔ったときのようなふらつきや、まっすぐな線をたどって歩くのが難しいといった体幹の失調です。 体幹の失調は、数日から数カ月にわたって続く場合があります。ある報告によると、運動性失調が改善したのは全体の40%であり、残りの60%の方には症状が残ったとされています。(文献1) そのため、長期的なケアやリハビリが必要になるケースも少なくありません。体幹の失調については以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。 眼球運動障害|目の動きに異常が出る ウェルニッケ脳症の急性期に見られる目の動きの異常が、後遺症として残ることがあります。具体的には以下の症状です。 眼振:自分の意思とは関係なく目が動く 麻痺:目の筋肉が部分的に動かなくなる 眼振があると、景色が揺れて見えたり、一点を見つめるのが難しくなったりします。また、眼筋麻痺によって物が二重に見える複視が起き、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。 適切な治療により一部の患者で回復へ向かうとされる眼球運動障害ですが、目の麻痺は改善したものの、約60%の症例で水平方向への眼振が後遺症として残ったとの報告も存在します。(文献1) 回復の程度には個人差があるため、症状が続く場合は主治医や眼科医へ相談しましょう。 記憶障害・作話|物忘れや作り話をする ウェルニッケ脳症の後遺症として、新しいことを覚える機能や過去の出来事を思い出す機能に障害が残る場合があります。ある報告によれば、記憶障害が完全に回復したのは20%にとどまるとの結果でした。(文献1) 数分前の会話を忘れる、新しいことを覚えられないといった「記銘力障害」が慢性化し、「コルサコフ症候群」へと移行する場合があります。 コルサコフ症候群の特徴的な症状の1つが、記憶の空白を埋めるために無意識に創作した話をしてしまう「作話」です。本人は嘘をついている自覚がないため、周囲は戸惑うかもしれません。 また、時間や場所がわからなくなる見当識障害も現れます。これらの症状は本人の混乱や不安を招くため、家族の理解と適切な対応が求められます。 ウェルニッケ脳症で後遺症が出る原因 ウェルニッケ脳症で後遺症が出る主な原因は、治療開始の遅れや、適切な治療を受けられなかった点にあります。そのため、後遺症を残さない、あるいは症状を軽くするためには、早期の診断と治療が重要です。 しかし、たとえ早期に治療を始めても、ビタミンB1の補充が不十分といった適切な治療がおこなわれないと、完全な回復は難しくなります。その結果、認知機能の障害を主症状とするコルサコフ症候群に移行するケースも少なくありません。(文献2) ウェルニッケ脳症を未治療のまま放置した場合、約80%がコルサコフ症候群へ移行するとされています。また、治療をおこなった場合でも、アルコール摂取が原因のウェルニッケ脳症では、16.9%の確率でコルサコフ症候群を発症するとのデータもあります。(文献3) アルコールを多量に摂取する方は、ウェルニッケ脳症だけでなく、肝臓疾患のリスクも高くなります。肝臓疾患については以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。 【関連記事】 アルコール性肝炎の初期症状|進行サインや放置するリスク【医師が解説】 肝硬変で腹水が溜まっているときの余命はどれくらい?予後や治療方法を解説 肝臓疾患の治療方法として再生医療が選択肢の1つです。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 ウェルニッケ脳症の後遺症に対する治療法 ウェルニッケ脳症の後遺症が残った場合、症状の安定や生活の質の維持を目指した治療が必要です。主な治療法は以下の通りです。 食事療法 薬物療法 リハビリ 1つずつ詳しく見ていきます。 食事療法 ウェルニッケ脳症の根本的な原因は、ビタミンB1(チアミン)の不足です。チアミンは体内で生成できないため、食事から摂取する必要があります。体内に貯蔵できる量も、主に骨格筋や心臓、脳、肝臓、腎臓を合わせても約30mgとごくわずかしかありません。 アメリカの国立衛生研究所によると、成人が1日に必要とするチアミンの量は1.1〜1.2mgとされています。もし、食事からまったく摂取しない場合は2〜3週間で枯渇するとの報告があります。(文献1) そのため、後遺症の治療においても継続的なチアミンの摂取が重要です。チアミンは以下の食材に多く含まれます。 豚肉 うなぎ 玄米 全粒穀物 豆類 ウェルニッケ脳症の後遺症の治療では、これらの食品を意識して食事に取り入れましょう。 薬物療法 ウェルニッケ脳症の後遺症がある場合、食事だけでは十分な量のビタミンB1補給が難しいケースも少なくありません。また、アルコールの多飲などで消化管の吸収能力が低下している可能性も考えられるでしょう。 そのため、食事療法と並行してビタミンB1製剤を内服する薬物療法がおこなわれます。医師の指導のもと、1日に100mg程度のビタミンB1製剤の継続的な服用が推奨されています。(文献1) 薬の服用により期待できる効果は以下の通りです。 体内のビタミンB1濃度を安定させる 症状の悪化を防ぐ 残された神経機能の回復をサポートする 治療効果を高めるには、医師の指示に従い、適切な量を服用し続ける必要があります。 リハビリ 運動性失調によるふらつきや歩行の不安定さが残った場合には、継続的なリハビリテーションが必要です。失調に対するリハビリには、以下のような種類があります。 フレンケル体操:正確な動きを反復練習して運動コントロールの改善を目指す 重錘負荷運動:手足に重りをつけて運動の制御能力向上を目指す また、本人が記憶障害を合併している可能性も考慮する必要があります。リハビリの前後で「前回はここまでできた」「今日はこれができるようになった」といった具体的なフィードバックや記録の比較をおこなうと良いでしょう。 これにより自身の状態を客観的に把握できるため、リハビリを続けるモチベーションの維持につながります。 運動性失調に対するリハビリの具体的な方法については、以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。 ウェルニッケ脳症の後遺症患者に対するサポート方法 ウェルニッケ脳症の後遺症とともに生活していく上で、本人の努力はもちろんですが、家族をはじめとする周囲の方々のサポートも必要です。 具体的なサポートのポイントとしては、以下の点が挙げられます。 コミュニケーションを工夫する 安全な生活環境を整える まずはできるところから1つずつ始めていきましょう。 コミュニケーションを工夫する コルサコフ症候群の症状は認知症と似ている点が多いため、認知症の方への接し方が参考になります。大切なのは、作り話などを頭ごなしに否定するのではなく、まずは本人の話に耳を傾けて安心感を与える姿勢です。 たとえば、「はい」か「いいえ」で答えられる短い質問をしたり、選択肢を示したりすると良いでしょう。また、話の内容を一度受け止めた上で「カレンダーを見てみましょうか」と、穏やかに現実の情報を補う対応も役立ちます。 頭ごなしに否定すると本人のストレスが溜まり、不安から再び飲酒に頼るリスクを高めてしまいかねません。 安全な生活環境を整える ウェルニッケ脳症の後遺症である運動性失調や眼振は、体のバランスを崩しやすく、転倒のリスクを高めます。思わぬ事故を防ぐには、本人が安全に過ごせる生活環境を整える必要があります。 たとえば、廊下や階段に手すりを設置したり、屋内の小さな段差をスロープで解消したりする対策が有効です。また、電気の配線コードやティッシュ箱など、つまずきの原因になりそうな物は床に置かないようにしましょう。 本人の自室をトイレや浴室の近くに移動させて、家の中の動線を短くするのも1つの方法です。さらに、転倒時に机の角などで頭を打たないように、クッション性のカバーを取り付けるといった配慮も怪我の防止につながります。 ウェルニッケ脳症の後遺症を理解して献身的なサポートを心がけよう ウェルニッケ脳症の後遺症としては、以下の症状が挙げられます。 運動性失調 眼球運動障害 記憶障害 運動性失調と水平方向の眼振が残存する確率は、それぞれ約60%です。(文献1)また、記憶障害を主症状とするコルサコフ症候群へ移行する可能性は、未治療の場合で約80%、治療後もアルコールが原因であれば約17%にのぼると報告されています。(文献3) 後遺症が残った場合、本人が不安や怪我なく暮らせるように、食事管理やコミュニケーションの工夫、安全な生活環境の整備といった周囲のサポートが必要です。 なお、同じくアルコールが原因となりうる疾患に肝硬変などの肝臓疾患があり、その治療法の1つとして再生医療といった選択肢もあります。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 ウェルニッケ脳症や後遺症に対するよくある質問 ウェルニッケ脳症及び後遺症の予後・死亡率は? ウェルニッケ脳症は、早期に適切な治療がおこなわれれば、症状が改善する可能性のある疾患です。しかし、治療が遅れたり、コルサコフ症候群に移行したりした場合は、予後が良いとはいえません。 ある研究で、ウェルニッケ・コルサコフ症候群の患者様を対象に調査したところ、5年後・10年後の生存率は以下の通りでした。 5年後の生存率 10年後の生存率 男性 67.7% 48.3% 女性 79.0% 62.9% また、同研究では死因の32.6%がアルコール関連だったと報告されています。(文献4) これらの結果から、断酒の継続とアルコールでダメージを受けた他の臓器(とくに肝臓)の治療は、ウェルニッケ脳症の予後に少なくない影響を与えます。 アルコールの多量摂取による肝臓疾患治療の選択肢の1つが再生医療です。 再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。 ウェルニッケ脳症は難病指定されていますか? 現在、ウェルニッケ脳症は国の難病には指定されていません。難病指定とは、以下のような疾患を対象とする制度です。 原因が不明 治療法が確立していない 長期の療養が必要 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏といった原因が明確であり、ビタミンB1の補充のような治療法も確立しているため、この要件には当てはまりません。 ただし、以下のような症状が出ている場合は、同じく目の動きや筋力に異常をきたす難病指定の「重症筋無力症」との鑑別が必要になるケースがあります。(文献5) 眼筋の麻痺 手足の筋力低下 飲み込みにくさ(嚥下障害) 呼吸のしづらさ 主治医の指示のもと適切な検査を受けましょう。 参考文献 (文献1) Wernicke脳症の診断と治療|愛仁会高槻病院 総合内科 (文献2) Wernicke’s Encephalopathyの治療法|日本ビタミン学会学術誌「ビタミン」 (文献3) Hospital Outcomes in Medical Patients With Alcohol-Related and Non-Alcohol-Related Wernicke Encephalopathy|Mayo Clin Proc. (文献4) Incidence and mortality of alcohol‐related dementia and Wernicke‐Korsakoff syndrome: A nationwide register study|Int J Geriatr Psychiatry. (文献5) 指定難病とすべき疾病の支給認定にかかる基準|厚生労働省
2025.07.31 -
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視界にギザギザとした光やキラキラと輝く模様が現れ、徐々に拡大しながら視野の一部が欠けるような症状は「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれ、片頭痛の前兆としてよく知られる現象です。 しかし、閃輝暗点が頻繁に繰り返し起こると、「もしかしたら、何か重篤な病気の前兆ではないか」と強い不安を覚える方もいるでしょう。 本記事では、閃輝暗点が繰り返し発生するメカニズムとその背景にある要因を掘り下げて解説します。また、症状を放置すると生じる潜在的なリスクについても詳しく説明します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。 閃輝暗点が繰り返し起こる場合は要注意!早急な受診がおすすめ 閃輝暗点が一度きりの現象であれば、片頭痛の前兆として経過観察されることもあります。 しかし、閃輝暗点が頻繁に繰り返し起こる場合は、単なる片頭痛だけでなく、脳に起因する重大な疾患の可能性も視野に入れる必要があります。(文献1) とくに、これまで経験したことのない症状を伴う場合や、頭痛を伴わない閃輝暗点が続く際は、速やかに専門医の診察を受けることが重要です。また、両目に閃輝暗点の症状が現れる場合は、脳神経外科や脳神経内科への受診が推奨されます。 一方で、片目のみに症状が限定される際は、眼球自体の病気の可能性も考えられるため、眼科での受診を検討しましょう。適切な診断のもと、治療方針を決めることが大切です。 閃輝暗点の見え方について詳細は、以下の記事もお読みください。 閃輝暗点を繰り返す主な原因 閃輝暗点を繰り返す背景には、さまざまな生活習慣や身体の状態が関係しています。以下では主な原因を詳しく解説します。 ストレス過多・疲労の蓄積 睡眠不足(不規則な生活) カフェイン・ポリフェノール等の特定の食材の成分の摂りすぎ スマホ・パソコンの長時間使用 ホルモンバランスの乱れ 閃輝暗点の初期症状や治療法など、包括的な解説を見たい方は「【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説」をご覧ください。 ストレス過多・疲労の蓄積 閃輝暗点が繰り返し起こる原因の一つとして、過度なストレスや慢性的な疲労の蓄積が挙げられます。 精神的・肉体的なストレスは、自律神経のバランスを大きく崩し、脳の血管の収縮と拡張をコントロールする機能に影響を及ぼし、血流に変化が生じる場合があります。(文献2) その結果、脳の血管が一時的に過度に拡張し、神経の興奮を誘発することで閃輝暗点が発生しやすくなると考えられています。 睡眠不足(不規則な生活) 睡眠不足や不規則な生活リズムは、閃輝暗点を繰り返す大きな要因となりえます。人間の体内時計は睡眠によって調整されており、そのリズムが乱れると自律神経のバランスが崩れやすくなります。 自律神経は血管の収縮・拡張を制御しているため、バランスが乱れることで、脳の血管が過敏になり、閃輝暗点が繰り返し発生しやすくなるのです。 カフェイン・ポリフェノール等の特定の食材の成分の摂りすぎ 特定の食材に含まれる成分の過剰摂取が、閃輝暗点の引き金となる可能性が指摘されています。とくに、カフェインやポリフェノール、チラミンなどがその代表例です。 食材 主な成分・栄養素 誘引のメカニズム・特徴 チョコレート チラミン、カフェイン、テオブロミン 血管を拡張し神経を刺激する チーズ チラミン 血管の収縮と拡張を引き起こす ナッツ チラミン 血管反応を変化させる コーヒー カフェイン 中枢神経を過剰に刺激する 赤ワイン ポリフェノール、チラミン 血管を刺激し神経過敏を促す これらの成分は血管に作用したり、神経伝達物質に影響を与えたりすることで、脳の血管の収縮・拡張に影響を及ぼし、閃輝暗点の発作を誘発する場合があります。 スマホ・パソコンの長時間使用 閃輝暗点が繰り返し起こる原因の一つとして、スマホやパソコンの長時間利用が挙げられます。 画面から放たれる強い光や、反射光などの眩しい光は、目に大きな負担をかけ、眼精疲労を引き起こすだけでなく、脳の視覚処理系に影響を与える可能性があります。また、長時間の集中作業による脳の疲労も、閃輝暗点の発症リスクを高める要因となります。 ホルモンバランスの乱れ 女性の場合、ホルモンバランスの乱れが繰り返す閃輝暗点の原因となる場合があります。とくに、月経周期に伴うエストロゲンの変動は、脳の血管の収縮・拡張に影響を及ぼし、片頭痛やそれに伴う閃輝暗点の引き金となりやすいです。 生理前や生理中、あるいは更年期にはホルモンレベルが大きく変化するため、この時期に症状が現れやすい傾向が見られます。 片頭痛もちの人は閃輝暗点を繰り返しやすい 閃輝暗点は、片頭痛の前兆として現れることが多く、この視覚症状は片頭痛もちの方によく見られます。(文献3) 特徴的なのは、視界に現れるギザギザとした光の模様や点滅が数分から数十分続き、光の消失後に、多くの場合ズキズキとした拍動性の頭痛が始まる点です。 頭痛は日常生活に支障をきたすほど強く感じられることがあります。さらに、頭痛と同時に吐き気や嘔吐を伴うこともあり、普段は気にならない程度の音や光、匂いに対して異常に敏感になる症状を併発する場合もあります。 これらの症状が複合的に現れることは、片頭痛における特徴的なサインの一つといえるでしょう。 閃輝暗点を繰り返す場合は脳の病気(脳梗塞)のリスクがある 閃輝暗点が繰り返し出現する状況は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)など脳の重大な疾患のサインの可能性があります。(文献4) 閃輝暗点のパターンが普段と異なる場合や、以前とは異なる視覚症状を伴う場合は、とくに警戒が必要です。頭痛を伴わない場合でも、脳血管系の問題が関与している可能性は十分に存在します。 さらに、閃輝暗点に加えて、以下の神経症状が同時に現れた場合は、非常に緊急性が高い状態です。 顔の左右どちらかに麻痺がある 片側の手足に力が入らない 感覚が鈍い 言葉が出にくい ろれつが回らない すぐに救急車を呼ぶか、至急医療機関を受診する必要があります。脳の血流に異常が生じている可能性があるため、早期の対応が事態の悪化を防ぐためには不可欠です。 繰り返す閃輝暗点に有効な治療方法はある? 閃輝暗点には特効薬や明確な治療法はありません。 対処法として、下記の対症療法などの実践が一般的です。 片頭痛の治療薬を服用する 生活習慣を改善する 水分補給をこまめに実施する サプリメントを摂取する 安静にする(症状が出た場合) 片頭痛の治療薬を服用する 閃輝暗点が繰り返し起こる場合、片頭痛の治療薬が有効な手段の一つです。 症状が現れた際に服用するトリプタン製剤(例:イミグラン)は、片頭痛発作の進行を止め、その後の頭痛を和らげる効果が期待できます。(文献5) 加えて、症状の頻度が高い方には、塩酸ロメリジンなどの予防薬が処方されることがあります。予防薬を日常的に服用して片頭痛の発作を抑制し、閃輝暗点のリスク低減を目指します。 生活習慣を改善する 繰り返す閃輝暗点を減らすためには、生活習慣の改善が重要です。 過度なストレスは脳の血管に影響を及ぼし、症状を誘発する一因となります。そのため、ストレスを適切に管理し、心身のリフレッシュを図りましょう。 また、睡眠不足や不規則な生活リズムは自律神経の乱れにつながり、脳の過敏性を高める可能性があります。規則正しい睡眠を心がけ、生活リズムを整えることが、症状の軽減につながります。特定の食品成分の過剰摂取も誘発因子となるため、食生活の見直しも有効です。 水分補給をこまめに実施する 閃輝暗点の症状悪化を防ぐためには、こまめな水分補給が重要です。 体内の水分量が不足すると、脱水状態に陥り、血液の循環が悪くなることで脳の血管に影響を与える可能性があります。 その結果、閃輝暗点の発作や症状の悪化を招くことがあります。日頃から意識して水分を摂取して、身体が常にうるおった状態を保ち、症状を軽減しましょう。 サプリメントを摂取する 繰り返す閃輝暗点に対する補助的な手段として、サプリメントの摂取が有効な場合があります。 脳の健康維持や血管機能に寄与するマグネシウムは、片頭痛の予防にも関連が示されており、積極的な摂取が推奨される栄養素です。 また、細胞のエネルギー生成に関わるビタミンB2も、脳の働きをサポートし、閃輝暗点の症状軽減に役立つ可能性が指摘されています。加えて、神経機能に重要な役割を果たす亜鉛も、積極的な摂取が望ましい栄養素の一つです。 安静にする(症状が出た場合) 閃輝暗点の症状が発現した際には、無理をせず速やかに安静にすることが大切です。 強い光や音、動きは症状を悪化させる可能性があるため、できる限り静かで暗い場所へ移動し、目を閉じて横になるなどの対処が推奨されます。 心身を落ち着かせ脳への刺激を最小限に抑えることが、症状の持続時間を短縮し、その後の頭痛の軽減につながります。 閃輝暗点を繰り返す人によくある質問 閃輝暗点が繰り返し現れると、不安や疑問を抱える方も少なくありません。ここでは、繰り返す閃輝暗点に関してよくある質問を解説します。 閃輝暗点が毎日起こる場合は放置すると危険? 片目だけ閃輝暗点を繰り返す場合は? 閃輝暗点が毎日起こる場合は放置すると危険? 閃輝暗点が繰り返し毎日発生する状況は、身体になんらかの異常が生じている明確なサインです。 とくに、過度なストレスや疲労の蓄積が主な原因として考えられます。まず十分な休息を確保し、心身の疲労回復に努めることが重要です。 その上で、閃輝暗点に加えて以下の神経症状が見られる場合は、脳の病気の可能性も視野に入れ、直ちに専門の医療機関を受診しましょう。 激しい頭痛 片側の手足のしびれ 力が入らない 言葉がもつれる 自己判断で放置すると非常に危険なので、早めに医師の診察を受けてください。 片目だけ閃輝暗点を繰り返す場合は? 閃輝暗点が常に片方の視界のみに現れる場合、網膜剥離や眼底出血など、目の病気が原因である可能性があります。 片目だけに異常が生じている際は、失明などの重篤な状態に至る前に、速やかに眼科を受診しましょう。 まとめ|閃輝暗点を繰り返して脳梗塞が不安なら再生医療をご検討ください 閃輝暗点は片頭痛の前兆として現れることが多い症状ですが、頻繁に繰り返される場合は、脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)など脳血管系の疾患の可能性も考えられます。 また、症状が片目のみの場合は目の病気、手足のしびれや言葉のもつれを伴う場合は緊急性の高い脳疾患の兆候も考えられるため、早期の専門医の受診が不可欠です。 近年では、こうした脳血管のトラブルに対する治療法として再生医療への関心が高まっています。 当院リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に対して丁寧にカウンセリングを行い、再生医療(幹細胞治療)を中心とした治療を、症状に合わせてご提案しております。 ご質問・ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 日本医事新報社「一過性脳虚血発作」 https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-5686-9.pdf(最終アクセス:2025年6月12日) (文献2) 日本視能矯正学会「片頭痛発症中に動的量的視野検査を施行し、一過性暗点を記録できた一例」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jorthoptic/46/0/46_046F106/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月12日) (文献3) 日本頭痛学会「片頭痛/片頭痛の治療」 https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_02.html(最終アクセス:2025年6月12日) (文献4) フレーミングハム研究「片頭痛の視覚的随伴症状は晩年では珍しくない」 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9707189/(最終アクセス:2025年6月12日) (文献5) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会「頭痛の診療ガイドライン2021」 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/zutsu_2021.pdf(最終アクセス:2025年6月12日)
2025.06.30 -
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閃輝暗点は視界の一部にキラキラ・ギザギザした光や模様があらわれ、徐々に拡大して視野の欠損を引き起こす症状です。 片頭痛の前兆としてよく知られる閃輝暗点ですが、必ずしも頭痛を伴うわけではありません。(文献1) 閃輝暗点を起こす有力な説としては後頭葉の血流低下が挙げられており、コーヒーの過剰摂取が発症リスクを高めるのではないかと考えられています。 閃輝暗点は眼科系疾患ではなく、脳の機能の一時的変化により引き起こされるため、発症すると脳の病気を心配する方もいるでしょう。 本記事では閃輝暗点とコーヒーの関係について解説するとともに、1日当たりの摂取目安を紹介します。閃輝暗点にお悩みのコーヒー好きの方は参考にしてください。 コーヒーが原因で閃輝暗点を引き起こすことがある コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる作用があり、過剰摂取により閃輝暗点のリスクを高める可能性があります。 一方で、カフェインには抗酸化作用があり、血管機能の改善が見込めるためデメリットばかりではないのも事実です。 はじめに、コーヒーと閃輝暗点および血管機能との関係について詳しく解説します。 閃輝暗点の見え方や初期症状や治療法などについては、以下の記事もご覧ください。 【関連記事】 【医師監修】閃輝暗点の見え方について解説|片目だけ・初めての症状は危険? 【医師監修】閃輝暗点とは|放置によるリスクから初期症状・治療法まで詳しく解説 カフェインが脳血管収縮を助長することで起こる コーヒーが原因で閃輝暗点を起こす理由は、カフェインの過剰摂取により脳の血管収縮が助長されるためです。 コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させ、血液の循環を阻害する作用があります。 閃輝暗点は後頭葉に送られる血流量の減少により発症リスクが増加すると考えられており、カフェインの過剰な摂取は脳の血管を収縮させ、閃輝暗点のリスクを高める可能性があります。 カフェインは神経を鎮静させるアデノシンと似た構造を持つのも特徴です。 カフェインを過剰摂取すると、本来であればアデノシンが結合するはずの受容体にカフェインが結合し、神経の鎮静作用が阻害されます。(文献2) コーヒーを飲み過ぎると睡眠の質が低下すると言われるのは、カフェインの過剰摂取により神経が興奮状態に陥るためです。 睡眠不足も自律神経のバランスを乱して血管の収縮を起こすため、閃輝暗点の発症リスクを高める一因となります。(文献3) クロロゲン酸の抗酸化作用で血管機能の改善が見込める コーヒーにはカフェイン以外にも多くの成分が含まれていますが、なかでもクロロゲン酸には高い抗酸化作用があり、血管機能の改善が見込める点がメリットです。 クロロゲン酸はポリフェノールの一種で、LDLコレステロールの酸化を抑制し、動脈硬化の予防に役立つことで知られています。 クロロゲン酸による血管機能の改善効果は、FMD値(血流依存性血管拡張反応)を調べることで明らかになります。 FMD値に関して462名の高血圧患者を対象に、コーヒー摂取量と血管機能についての評価が行われました。 その結果、コーヒーを摂取した群では非摂取群に比べ、FMD値に有意な増加が見られました。(文献4) カフェインの過剰摂取は血管収縮のリスクを高めますが、1日あたりコーヒー2杯(400ml)程度であれば、むしろ血管拡張作用が得られるとわかります。 閃輝暗点はコーヒー以外のカフェインにも起因する 閃輝暗点はコーヒーだけでなく、カフェインを含むその他の飲料にも起因するため注意が必要です。 カフェインが含まれる主な飲料および含有量の目安は以下のとおりです。(文献5) 飲料 カフェイン含有量(100mlあたり) コーヒー 60mg ほうじ茶 20mg ココア 14mg ウーロン茶 20mg 紅茶 30mg 抹茶 48mg コカ・コーラ 9.5mg エナジードリンク 32~300mg エナジードリンクのなかにはカフェイン含有量が多い商品もあるため、閃輝暗点を起こしやすい方は注意が必要です。(文献6) 眠気覚ましにエナジードリンクを気軽に飲む方もいますが、1本飲むだけでコーヒー2〜3杯分のカフェインを摂取するケースもあるため、何本も飲まないようにしましょう。 エナジードリンクの過剰摂取は閃輝暗点のリスクを高めるだけでなく、糖尿病の発症リスクも増加するため注意する必要があります。(文献7) コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるコツ コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるコツは以下の2つです。 1日に摂取するコーヒーは2杯(400ml)ほどに留める コーヒーの合間に水分を意識的に補給する それぞれについて解説します。 1日に摂取するコーヒーは2杯(400ml)ほどに留める コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるためには、1日の摂取量を400ml(カップ2杯分)程度にとどめるのがポイントです。 1日400ml程度のコーヒーであれば、クロロゲン酸の作用によりFMD値が増加し、血管機能の改善が見込めるとわかっています。 一方、カフェインの過剰摂取は心拍数や血圧を増加させ、心血管疾患のリスクを高めることも示唆されています。 ACCアジアで発表された研究では、1日に400ml以上のコーヒーの摂取が自律神経に重大な影響を与え、心拍数と血圧を徐々に増加させるとわかりました。(文献8) 適量のコーヒーは心身に良い影響をもたらしますが、過剰摂取は健康被害のリスクを高めると覚えておきましょう。 コーヒーの合間に水分を意識的に補給する コーヒーが原因で起こる閃輝暗点のリスクを下げるためには、水分を意識的に補給するよう意識しましょう。 コーヒーに含まれるカフェインは腎臓で行われる水分の吸収を妨げる作用があるため、摂取量が増えると排尿の回数が増加しがちです。(文献9) 排尿の回数が増えると血液中に含まれるカフェインの濃度が相対的に上昇するため、閃輝暗点のリスクを高めやすくなります。 コーヒーを常飲する方は合間に意識的に水分を補給し、血中カフェイン濃度が上がり過ぎないよう注意してください。 コーヒーの利尿作用に悩まされる方には、カフェインを取り除いたデカフェがおすすめです。 コーヒーの飲み方を改善しても閃輝暗点を繰り返すなら脳の病気の疑いあり 上記の対策を講じても閃輝暗点を繰り返す方は、脳の病気の疑いもあると覚えておいてください。 閃輝暗点は片頭痛の前兆としてよく知られていますが、脳梗塞などが原因で発現する例も見られるためです。 閃輝暗点の後に片頭痛の発作が見られない場合、脳梗塞や脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA:transient ischemic attack)の疑いがあると考えられています。(文献10) 一過性脳虚血発作(TIA)を発症すると突然の言語障害や感覚障害など脳梗塞と似た症状があらわれますが、通常は24時間以内に消失します。しかし、症状が消失したからといって安心はできません。一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞に移行する可能性が高いため注意が必要です。 なお、閃輝暗点が脳梗塞の前兆である可能性は低いと考えられているため、過度に心配する必要はありません。 脳の病気が疑われる閃輝暗点が気になるなら早急に受診しましょう 脳の病気が疑われる閃輝暗点をたびたび繰り返す方は、早急に専門の医療機関を受診しましょう。 閃輝暗点の原因の一つである脳梗塞を発症すると、身体の片側のしびれや麻痺、ろれつが回らない、手にしたコップを取り落とすなどの症状があらわれます。 閃輝暗点だけでなく上記の症状が見られる方は、脳神経外科や脳神経内科、神経内科などを受診してください。 脳梗塞の発症から時間が経過するほど脳細胞が破壊され続けるため、一刻も早く専門医による治療を受けることが大切です。(文献11) まとめ|閃輝暗点が落ち着くようにコーヒーの飲み方を調整しよう 閃輝暗点を発症すると視界の一部にキラキラ・ギザギザした光や模様があらわれ、徐々に拡大して視野の欠損を引き起こします。 片頭痛の前兆としてよく知られる現象の一つですが、閃輝暗点の後に頭痛の発作が起きないケースでは、脳梗塞や脳腫瘍、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性も疑われます。 コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる作用があるため、頻繁に閃輝暗点を起こす方は摂取量の調整が必要です。 健康な成人であれば1日に400mgのカフェインを摂取しても問題ないとされますが、妊婦や妊娠の可能性がある女性、授乳中の女性は300mgまでにとどめてください。 閃輝暗点の原因でもある脳梗塞の治療法として、近年になり再生医療への関心が高まっています。 リペアセルクリニックでは脳梗塞の後遺症治療・再発予防に再生医療(幹細胞治療)をご提案しております。ご質問やご相談がございましたら、気軽に無料カウンセリングまでお越しください。 (文献1) 徳島県医師会「閃輝暗点」 https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/1663-2018-11-22-00-41-33(最終アクセス:2025年6月18日) (文献2) 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献3) 溜池山王伊藤眼科「急に視界の一部が見えない:閃輝暗点の原因・症状・対処法」 https://ts-itoeyeclinic.com/diary/scintillating_scotoma/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献4)血管 Vol47 No.2「高血圧患者におけるコーヒー摂取:血管機能に与える影響について」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcircres/47/2/47_1/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年6月18日) (文献5) 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献6)ニューロテックメディカル「コーヒー摂取と閃輝暗点発症の関係性とは」 https://neurotech.jp/medical-information/coffee-intake-and-the-development-of-scintillating-scotoma/#1link(最終アクセス:2025年6月18日) (文献7)NHK「「エナジードリンク」 飲みすぎの危険性とは」 https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/iry20250319.html(最終アクセス:2025年6月18日) (文献8)AMERICAN COLLEGE of CARDIOLOGY「慢性的なカフェイン摂取は活動後の心拍数や血圧に影響を与え、CVDのリスクを高める」(英文による解説)」 https://www.acc.org/Latest-in-Cardiology/Articles/2024/08/14/16/39/Chronic-High-Caffeine-Consumption-Impacts-Heart-Rate-BP(最終アクセス:2025年6月18日) (文献9) ウィスパー「【医師監修】コーヒーと頻尿の関係」 https://www.whisper.jp/article-top/learn-urinary-incontinence/coffee/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献10) 横濱もえぎ野クリニック「閃輝暗点」 https://www.ymc3838.com/scintillating-scotoma/(最終アクセス:2025年6月18日) (文献11) 名古屋徳洲会総合病院「脳梗塞」 https://www.nagoya.tokushukai.or.jp/wp/depts/neurosurgery-2/disease-3/cerebral-infarction(最終アクセス:2025年6月18日)
2025.06.30 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
パーキンソン病は進行性の疾患であり、完治しない病気として知られています。 しかし、遠くない未来、パーキンソン病が「完治する」時代がくるかもしれません。 近年の研究では、パーキンソン病の新たな治療法が模索されています。 iPS細胞を活用した研究や、再生医療による治療など、既存の治療とは異なったアプローチがなされています。 この記事では、パーキンソン病に対する先進医療や研究について紹介します。 パーキンソン病が治る時代は来るのか?治らないとされている理由 パーキンソン病が治らないとされている理由は、根本原因の解明が困難であるからだと言われています。 パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が減少することで発生します。 脳内の細胞の観察は極めて困難であるため、完治するための対策が立てられないのです。 現在は減少するドパミンを補うための薬物療法や手術療法が主流ですが、いずれも症状の緩和が目的です。 ドパミンの減少を止める治療法はいまだ見つかっていません。 パーキンソン病の根本治療を叶える先進医療の研究 パーキンソン病の治療法はさまざまな角度から研究がなされてきました。 その中でも注目を集めているのは、iPS細胞を活用した「再生医療」、L-ドパの効果を補うことが期待されている「遺伝子治療」です。 それぞれのどのような治療なのか解説します。 iPS細胞を用いた研究 パーキンソン病の根本治療を目指す研究の中で、とくに注目されているのがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用したアプローチです。 iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで作られる、あらゆる細胞に変化できる能力を持つ画期的な細胞です。 このiPS細胞を活用し、失われたドパミン神経細胞を体外で作り出して脳内に移植する治療法や、病気のメカニズムを詳しく解明する研究が活発に進められています。 iPS細胞を実際の治療に用いた事例 2025年4月、パーキンソン病の患者の脳にiPS細胞から作り出した細胞を移植する治療法を開発、研究している京都大学の研究チームが行った治験で、同治療の安全性と有効性が示されたという発表がありました。(文献1) この治験は50歳から69歳の男女7名の患者を対象に行われ、ヒトのiPS細胞から作ったドーパミンを作る神経細胞を脳に移植しました。 その結果、すべての患者で健康上の大きな問題は見られなかった上、治験患者のうち6名は移植した細胞からドーパミンが作り出されていることが確認されています。(文献1) iPS細胞を用いたパーキンソン病の病態研究 順天堂大学医学部ゲノム・再生医療センターでは、パーキンソン病患者のドパミン神経細胞からiPS細胞を作製し、その細胞をもとにさまざまな研究を進めています。 iPS細胞を用いることで、原因解明が困難であるとされていた発症のメカニズムの研究や、iPS細胞を用いた薬の効果の検証などを効率的に行うことが可能となりました。 今後パーキンソン病の根本治療法が見つかる可能性もあります。(文献2) 遺伝子治療 パーキンソン病の遺伝子治療とは、特定の遺伝子を脳に注入することで症状の改善を目指す治療法です。(文献3) パーキンソン病の原因であるドパミン減少を補うため、ドパミンを生成する効果のある酵素を脳に送り込み、L-ドパの効果を助ける役割を担います。 L-ドパとは、脳内でドパミンに変換され、パーキンソン病の症状を緩和する代表的な治療薬です。 遺伝子治療によってL-ドパから効率よくドパミンが生成されるようになり、症状が改善することが期待されています。 現状治験段階であるため、実際の治療として確立されるまではまだ時間がかかる治療だといえます。 パーキンソン病を改善するために「今」できること この記事で紹介した先進医療が実際に治療法として浸透するまでにはまだ時間はかかります。 現在できるパーキンソン病の改善策としては、減少したドパミン神経細胞を補う薬物療法や、手術療法が有効です。 そのほか、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、十分な水分補給といった生活習慣の見直しも効果が見込めます。 とくに運動は身体の筋肉の動かしづらさを改善するだけでなく、うつや不安症状を改善する精神ケアの役割も担っています。医師と相談のもと、無理のない範囲で生活に取り入れてみましょう。 パーキンソン病が治る時代は近い?治療の可能性について 現在研究は進んでいるものの、これらの研究が実際の治療に用いられるまでは長い年月が必要です。 一般的には治験を進めて結果が出るまで数年以上かかる場合もありますし、その後医療の現場に浸透してすべての患者に治療が広まるのがいつになるのかはまだわかりません。 その一方、京都大学の研究チームによって行われたiPS細胞を用いた治療は、実際に患者の症状も緩和され、調査の結果安全性、有効性が証明されたと発表されています。 今後新たな治療として、導入される未来も遠くないかもしれません。 症状緩和に期待される再生医療の可能性 https://www.youtube.com/watch?v=2oF89MxTXnY パーキンソン病の完治は現在も困難とされていますが、症状の改善や進行抑制を目指す再生医療技術が着実に進歩しています。 iPS細胞を用いた治療や遺伝子治療といった先進的なアプローチは、根本的な問題に対処する可能性を秘めています。 これらの再生医療技術は、失われた神経細胞の機能を回復させることで、患者の生活の質を大きく向上させることが期待されています。 完治には至らなくても、症状の進行を遅らせ、日常生活をより快適に送れるようになる未来が見えてきました。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|パーキンソン病は「治らない病気」から「治る可能性のある病気」へ変化している パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であるため、完治はできないと言われています。 しかし、近年、根本治療に向けた先進医療の研究が進み、今までとは異なった新たな治療法が模索されています。 注目されているのはiPS細胞による再生医療と遺伝子治療です。とくにiPS細胞を用いた脳内移植の治験では、安全性と有効性が確認されており、今後の実用化が期待されています。 遺伝子治療もL-ドパの効果を高める方法として注目されており、今後の研究が待たれます。 しかし、新たな治療が確立されるのがいつになるのかは不透明です。現在パーキンソン病を患っている人は、薬物療法や運動、食事療法の中で症状の緩和に努めましょう。 治療の実現までは時間がかかるものの、遠くない未来にパーキンソン病は「治る病気」になるかもしれません。 参考文献 (文献1) NHK「iPS細胞を用いたパーキンソン病治療 治験で“有効性” 京都大」NHKニュースウェブ 2025年4月17日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250417/k10014781301000.html(最終アクセス:2025年6月26日) (文献2) 順天堂大学「iPS細胞を用いた再生医療の実現に向けた研究を推進」Juntendo Research 2024年5月20日 https://www.juntendo.ac.jp/branding/report/genome/(最終アクセス:2025年6月26日) (文献3) 厚生労働省「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」2019年(2023年一部改訂) https://www.mhlw.go.jp/content/001077219.pdf(最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30 -
- 頭部、その他疾患
パーキンソン病の人にバナナは良くない、という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。 実は、バナナは摂取するタイミングや量によっては、パーキンソン病の症状の改善を妨げてしまう可能性があるのです。 この記事ではパーキンソン病の人にとってバナナが良くないと言われている理由を解説します。 バナナ以外に気を付けるべき食事のほか、治療中とるべき食事についても紹介しているので、治療中の人やその家族の人はぜひ参考にしてみてください。 パーキンソン病の薬とバナナの同時服用は注意! パーキンソン病の人がバナナを食べてはいけないと言われている理由は、バナナに含まれるビタミンB6が大きく関係しています。 このビタミンB6は、パーキンソン病の人が治療で用いる薬の効果を弱めてしまう危険性があります。 パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が減少することが原因で、手足の震え、身体が動かしづらい、転倒しやすくなってしまうという症状が出る病気です。 そのため、パーキンソン病の治療では「L-ドパ」というドパミンの前駆物質(体内で酵素の作用によりドパミンに変わる物質)として働く薬を用います。 バナナに含まれるビタミンB6は、L-ドパが脳に届く前に体内でドパミンに変えてしまうため、脳に届くL-ドパの量が減ってしまうのです。(文献1) しかし、現在では薬内にL-ドパの分解を防ぐ成分を配合していることも多いため、過剰摂取をしなければそこまで神経質になる必要はありません。 パーキンソン病でバナナ以外にも気を付けたい食事 パーキンソン病の方は、バナナ以外にも注意が必要な食事があります。 しかしいずれも過剰な摂取を控え食事のタイミングに気を付けていれば、食事が原因でパーキンソン病が悪化することはありません。 大量摂取に気を付けるべき食事やそれぞれの注意点について紹介します。 ビタミンB6 ビタミンB6は、大量摂取をするとL-ドパの吸収を妨げる可能性があります。 ビタミンB6はバナナのほか、アボカド、にんにく、かつお、鶏レバーに多く含まれています。 しかし、近年の研究でビタミンB6は50mg以上摂取しなければ影響はないという報告もあります。(文献1) L-ドパには分解を防ぐ成分も入っているため、摂取する量やタイミングに気を付ければ、あまり大きな影響もないといえます。 ビタミン剤などのサプリメントは使用時に医師に相談しましょう。 投薬直後の高たんぱく食 投薬直後の高たんぱく食は、ビタミンB6同様L-ドパの吸収を妨げる可能性があるため注意が必要です。 たんぱく質自体は筋肉をつくる栄養として重要なものであり、パーキンソン病の人も積極的に摂るべきです。 タイミングや量を調整すれば問題ないため、医師に相談しながら食事を組み立ててみてください。 パーキンソン病診療ガイドラインによれば、朝・昼に摂取するたんぱく量を減らし、夕飯時に高たんぱくの食事を行う「蛋白再配分療法」は効果が高いという報告もありました。(文献2) 食べにくい固形食品 パーキンソン病は末期になると咽頭周りの筋肉が動きづらくなり、嚥下障害を併発することがあります。 そのため、飲みこみづらい食べ物や、かみ砕くのに時間がかかる固い食品は避けるべきです。 食事の際はゆっくりよく噛むことを心がけましょう。 パーキンソン病の人がとったほうがいい食べ物 パーキンソン病は身体への影響が大きい病気です。 必要な栄養をしっかり摂り丈夫な身体をつくることが、症状の緩和にもつながります。 この項目では必要な栄養と、その栄養が多く含まれる食べ物を紹介します。 食物繊維が豊富な食事 パーキンソン病の人は便秘になりやすいため、お通じをよくするために食物繊維が豊富な食事をとることが望ましいです。 食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。どちらか一方に偏らず、バランス良く摂取しましょう。 食物繊維が多く含まれている食品 干ししいたけ(不溶性) きのこ類(不溶性) キャベツ(不溶性) りんご、キウイなどのフルーツ(水溶性) わかめ、ひじきなどの海藻類(水溶性) など 水分 パーキンソン病の人は水分不足に陥りやすいと言われています。 パーキンソン病の症状である発汗異常や便秘、嚥下障害により水分をうまく飲み込めなくなってしまうことが原因です。 そのため、普通の人よりも多く水分をとることが推奨されています。 1日1500ml~2000mlの摂取が望ましいです。 たんぱく質 パーキンソン病を患うと、筋肉や関節が動きづらくなり、身体を思うように動かせなくなってしまいます。 末期になると寝たきりになってしまう人や、車いす生活を余儀なくされる人もいます。 要介護の生活を防ぐためには、筋肉量を落とさないことが重要です。 たんぱく質は筋肉をつくる非常に重要な栄養素です。 ただし、薬物治療をしている人は、たんぱく質を摂取するタイミングに注意してください。投薬直後に高たんぱくな食事をすると薬の効果を弱めてしまう可能性があります。 たんぱく質が多く含まれる食品 鶏肉、豚肉をはじめとする肉類 魚介類 大豆製品 チーズなどの乳製品 など ビタミンD・カルシウム パーキンソン病患者は身体動作の困難さが原因で体重減少、骨粗しょう症のリスクも高まることがわかっています。 重症度が上がるほど骨密度は低下してしまうため、骨を作る上で欠かせないカルシウム、ビタミンDは積極的に摂りましょう。 カルシウムが多い食べ物 牛乳 チーズ 小松菜 しらす干し 豆腐 干しえび など ビタミンDが多い食べ物 鮭(焼き) サンマ(焼き) しらす干し 卵 干ししいたけ など しらす干しはカルシウム、ビタミンDどちらも一度に摂れます。 抗酸化物質 パーキンソン病の原因であるドパミン神経細胞の減少には、酸化ストレスが関連しているといわれています。(文献2) 抗酸化物質は酸化ストレスを抑制する効果があるため、ドパミン神経細胞の減少を防ぐ効果が期待できます。 抗酸化作用のある主な栄養はビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、ミネラルなどです。 抗酸化物質を多く含む食べ物 パプリカ、ブロッコリー、トマト、ほうれん草などの緑黄色野菜 いちご、ブルーベリーなどのベリー類 アーモンドなどのナッツ類 緑茶 赤ワイン など パーキンソン病に対する再生医療について パーキンソン病の症状を緩和する治療法には、再生医療という選択肢があります。 再生医療とは、「幹細胞」という治癒力が高く、培養が可能な細胞を用いて損傷した患部を治療する方法です。 2025年、京都大学の研究チームがiPS細胞から作製したドパミン神経細胞を脳に移植する治験を実施しました。その結果、7名のうち6名の人がドパミンが脳内で生み出されており、筋肉のこわばりなどの症状も改善されたといいます。 再生医療を用いることで失われた神経細胞を補うことが期待されており、進行性で治療が難しいとされてきたパーキンソン病に対して、新たな希望をもたらしています。 パーキンソン病の症状にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 まとめ|パーキンソン病では食事内容と薬の相互作用に注意!医師に相談のもと食事管理をしよう パーキンソン病の人にとってバナナが良くないと言われている理由は、バナナに含まれるビタミンB6が、薬を体内で分解してしまい効果を弱めてしまうためです。 しかし、近年では薬の研究も進み、分解を防ぐ成分も配合しています。ビタミンB6を投薬の直後に摂らない、大量摂取しないという注意をしていれば、特に大きな問題はありません。 ビタミンB6のほか、投薬直後の高たんぱくな食事も薬を分解する危険性があるため控えましょう。 一方、過剰な栄養制限はパーキンソン病を重症化させる原因にもなります。丈夫な身体づくりはパーキンソン病の症状緩和に有効です。 便秘に効果のある食物繊維、筋肉をつくるたんぱく質、骨を丈夫にするカルシウムやビタミンDのほか、たくさんの水分を摂ることを心がけましょう。 パーキンソン病の症状にお悩みの方は、再生医療による治療もご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、お客様の症状・状況にあわせたご提案をしております。お気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 佐藤陽子ほか.「レボドパの薬効に影響を与えるビタミンB6摂取量に関する系統的レビュー」『食品衛生学雑誌』58(6), pp.257-266, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/58/6/58_268/_pdf(最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」p215 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_27.pdf(最終アクセス:2025年6月24日)
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