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腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: ・肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする ・腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: ・肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする ・腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: ・腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます ・肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: ・背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: ・患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: ・患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 \クリックで電話できます/ メール相談 オンラインカウンセリング まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
公開日:2024.10.23 -
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腱板損傷|発症後、段階別の注意点とリハビリについて 腱板とは肩に付いている筋肉(腱)のことで「棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋」の4つからなります。腱板損傷では、これらの筋肉のいずれかが損傷し、あるいは複数の筋肉が断裂している状態です。 損傷の程度は筋肉の一部分が損傷している「部分断裂」と、完全に切れてしまった「完全断裂」とに分けられます。腱板が完全に断裂したり、損傷が広範囲に及ぶと、自分の力では腕が挙げられなくなる場合もあります。 そうなると日常生活や仕事に支障をきたし、痛みもなかなか軽減しないことが多くあります。 腱板の損傷は、断裂の範囲が小さいと修復も期待できますが、完全断裂や広範囲の断裂の場合は、時間の経過とともに断裂の範囲が広がることがありますので、手術が適応となります。 しかし、その反面、部分断裂で損傷の範囲が狭ければ、「リハビリで症状の改善を期待する」ことも可能になります。 腱板損傷の急性期(発症直後)に注意したいこと 治療は、診断によっては手術をせずに行うことが可能です。また、患者様が手術を希望されない場合にも、保存療法(手術をしない治療法)を行い症状の改善を目指すことになります。 腱板損傷における保存療法の目的は、疼痛(痛み、不快な感覚)の除去や、損傷していない肩関節の機能を引き出して、挙上運動(肩甲上腕リズム)を再建することです。リハビリは、その症状に合わせて進める必要があります。 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、関節を動かすと疼痛を助長させてしまうことがあります。そのため、無理な動きができないよう三角巾などを用いて患部の安静がとれるように固定します。 また、損傷した腱板の筋緊張が強いと断裂した腱板を牽引してしまい、疼痛を誘発することがあります。このような時は筋緊張を和らげるためのリラクセーションを実施すると効果的です。 ただ注意したいのは筋緊張が強くなっていることで患部が固定されている状態もあります。そのような場合、患部をリラクセーションさせると、反対に疼痛を増悪してしまう可能性があるので注意が必要です。そのような時は、アライメントを評価した上で自然に筋緊張が緩和されるポジションを探し、リハビリでは無理せず他の部位の機能改善に取り組みましょう。 腱板損傷における保存療法の目的 ・疼痛(痛み、不快な感覚)の除去 ・損傷していない肩関節の機能を引き出す ・挙上運動(肩甲上腕リズム)を再建する 急性期以降で注意すべきこと 急性期以降の時期では、肩甲骨に対して上腕骨頭を引きつけるポジションを保持するために、肩甲上腕関節(肩甲骨と上腕骨からなる肩関節の1つ)の可動域獲得と筋機能の改善を中心におこないます。 腱板は隣り合っている腱との組織的なつながりがあるため、損傷した腱以外の腱板筋により代償することが可能です。最初は自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じることなく運動することができるようになれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツに例えると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要することがあります。 ただ、このリハビリを焦っておこなうと肩甲骨の過剰な上方回旋のみの運動(肩甲骨の運動だけで挙上する代償動作)となってしまい、肩甲上腕関節の運動を得られるのに非常に時間がかかることがあります。 受傷後、長期間が経過してしまっていたら 受傷後、長期間が経過している場合は、関節包が硬くなることによる伸張性の低下や、疼痛によって動かさない状態が続き拘縮が存在することが多いです。 基本的には五十肩といわれる肩関節周囲炎の症状と同様に、まずは関節拘縮の除去をおこない、可動域が広がった部分の腱板機能を改善します。 リハビリと代償動作 肩関節を動かすために重要な働きをする腱板が障害を受けると、肩甲骨に骨頭を引きつける機能が損なわれた状態のままで上肢の運動ができるようにしなければなりません。そこでリハビリでは肩関節の求心性(肩甲骨に骨頭を引きつける力)を補償する機能を獲得し、その機能を維持する必要があります。 腱板断裂の症例の多くは肩峰下を上腕骨の大結節が通過するときに疼痛を訴えることが多いので、どのようにして大結節を肩峰下へ通過させるかがリハビリをおこなう上でのポイントとなります。専門的な内容でおわかりにくいかもしれませんが、腕を上げると痛みが出る場合、代償運動により、日常生活レベルでは挙上が可能となる方法をご説明しています。 方法1 ⚪️ 肩甲骨の関節窩に対して上腕骨頭が上昇して肩峰下で接触する ⚪️ 接触した点を支点として、肩甲骨に対して上腕骨を動かす 方法2 ⚪️ 上腕骨の運動よりも先に肩甲骨の下方回旋をさせ、ある程度、肩甲上腕関節の角度を作る ⚪️ 肩甲上腕関節の角度を保ったまま固定した後、肩甲骨の上方回旋をさせる ⚪️ 関節窩が上方を向いてから肩甲骨に対して上腕骨を動かす ※代償動作とは ・本来の動きに必要な機能ではない、別の機能が補助又は代わりに、その動きを行うこと。 ・代償動作による見かけ上の角度に注意。リハビリの評価は、代償動作に気を配る必要がある ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 最新の再生医療なら腱板損傷は、手術をせずに改善することができます リハビリの準備/MRIでの検査 腱板損傷に限らず、リハビリで効果を発揮させるためには、まず治療前の状態を把握する必要があり、そのためには、どこの腱板が損傷しているのかを判断する必要があります。 確実に損傷部分を判断するには、M R I検査による画像診断が最も優れています。M R I検査では、損傷の部位や範囲を確認することができるため、手術の適応判断にも役立ちます。 ところが、M R I検査は大掛かりな装置が必要であり、また検査にはある程度の時間も必要です。そこで素早く簡易に腱板損傷を評価する方法として、徒手検査法というものがあります。 この方法は、それぞれの筋肉が作用する方向に関節を動かしたり、 抵抗運動を加えることで損傷している腱板をチェックするテスト法です。 このテスト法には棘上筋(外転)テスト、棘下筋・小円筋(外旋)テスト、肩甲下筋(内旋)テスト、ドロップアームサイン(Drop arm sign)などがあります。 リハビリの準備/可動域の計測 リハビリを始める前には、可動域、肩の稼働状況を計測(評価)をしておく必要があります。 肩関節は球関節であり多方向に動くため、可動域を調べるため、それぞれのポジションで計測する必要があります。 特に内外旋は下垂位(腕を下に下ろした位置からの計測)だけでなく、外転(側方挙上)90°と屈曲(前方挙上)90°の位置による計測を加えると、より詳細な評価ができます。 ただし、可動域の検束(評価)をする上で注意しなければならないのが、※代償動作による「見かけ上」の角度に惑わされないということです。急性期の腱板損傷では疼痛性の、慢性期では筋性の可動域制限が発生することがあります。 この場合、可動域制限以上に腕を動かそうとして、体幹を傾ける代償動作がよく見られます。 体幹を後ろに反らせたり側方に傾けると、「見かけ上」、よく動かせているように見えても、実際のところ正確な関節可動域の評価ができませんので、可動域を評価する際は代償動作に注意をして計測を行うことが必要です。 また可動域の評価は、リハビリの進捗状況を客観的に把握することができるため、定期的に計測するようにすべきです。 可動域制限に対するリハビリ(運動療法) 腱板が断裂した症例では、肩甲上腕関節に著明な可動域制限をきたすことは少なく、代償動作の反復による筋性の制限や疼痛逃避による制限を認めることが多いです。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理のなくストレッチをおこないましょう。 腱板筋のトレーニング(リハビリ) 疼痛誘発テストをおこない、機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れた時の痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされた時の痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、他の腱板に対する運動をおこなうようにします。 運動をする際は腱板のどの筋を働かせるかを考えて、目的に合ったトレーニングの方法を選択する必要があります。 ただし、腱板筋のトレーニングは筋の収縮再学習としておこないますので、肩甲胸郭関節(肩甲骨と胸郭からなる肩関節の1つ)の運動が起こらない範囲で、なおかつアウター筋が優位に働かないよう低負荷で実践しなければなりません。 また筋肉によっては内外旋のトレ-ニングとして運動をすることがありますが、あらゆる挙上角度での肩甲上腕関節の求心位を保つために、いろいろな角度での内外旋運動をおこなう必要があります。 まとめ・腱板損傷|発症後、段階別の注意点とリハビリについて 腱板損傷では受症してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 リハビリのプログラムを作成する時は、一つの機能にこだわらず、残存している色々な機能を活用しましょう。肩の痛みや腱板損傷の場合、リハビリは非常に大切です。 リハビリ、ストレッチ、トレーニングなどは、すべて無理のないプログラムを専門医の指導の下、行っていただくのが理想です。 ただ手術を勧められ迷われていたり、前向きな治療をお考えなら最新の「再生医療」という選択肢もございます。 動画を含めた詳しいご説明もございますのでご参考になさって下さい。。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=1FgvN_eZLUW2EDC7 ▼腱板を痛めたらお読みください 腱板損傷(腱板断裂)でやってはいけない動作や運動
公開日:2024.10.07 -
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肩が痛い時、ほとんどの人は四十肩や五十肩かな?と思われるでしょう。確かに、肩が痛い場合四十肩や五十肩と診断される方は多くおられますが、実はその肩の痛みは肩腱板断裂(損傷)であったということはよくあります。 四十肩・五十肩はリハビリなどの保存療法でも治療はできます。しかし、肩腱板断裂は放置していて痛みが取れたとしても、断裂したところが自然に治っているわけではありません。一度切れた腱板は元に戻ることはないので注意が必要です。 この記事を読むとわかること ・四十肩、五十肩と肩伴板断裂(損傷)の違い ・腱板断裂は放置していいのか? ・治療や予防方法 肩腱板断裂とは 肩腱板とは、4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)のことを言います。これはインナーマッスルで肩の関節の安定を保つ役割があります。肩の表面にある三角筋はアウターマッスルで、腕を動かすための強い力を発揮します。 4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)が切れることを肩腱板断裂といいます。インナーマッスルである腱板が切れることで痛みが出たり、腕が上がらなかったりする症状が現れるのです。 肩腱板断裂の症状 四十肩・五十肩の痛みの場合、徐々に痛みが出てくることが多く、症状が進むと腕(手)を動かす時や腕をあげるときに動かしにくいなどが特徴です。しかし、肩腱板断裂の場合は、腕の上げ下げの時に引っかかり、音が鳴る感じがして痛みが出る、夜間寝ていてもズキズキ痛む、片方の腕で支えないと怪我した方の腕が上がらないことが特徴となります。では、どうしてそのような症状の違いがあるのでしょうか。その鍵は次の原因にあります。 肩腱板断裂の原因 四十肩・五十肩との違い(比較) まず四十肩・五十肩の原因ですが、肩関節は肩の周りの筋肉によって支えられており、その筋肉のバランスが崩れることによって徐々に炎症を起こし痛みが出ます。その筋肉のバランスが崩れる大半の年代が40~50代です。筋肉のバランスが崩れてきて関節に炎症を起こし、痛みが出て動かさなくなる。その結果、関節が固くなると『拘縮(文献①)』になります。機械を使わなくなると鉄が錆びて動きにくくなるのとよく似ています。 一方、肩腱板断裂は、腱板の断裂によって痛みが出ます。腱板が切れる原因には、怪我やスポーツなどによる外傷性のものと、加齢とともに弱くなって断裂する非外傷性(変性断裂)によるものがあります。腱板という筋肉が断裂してしまうので比較的急な痛みが出ることが多くみられます。 ただし、肩腱板断裂をそのまま放置していると、痛みのため関節を動かさなくなることで拘縮を起こすと、四十肩・五十肩とよく似た症状も重なります。 症状の違い(比較) 四十肩・五十肩と肩腱板断裂との痛みの比較ですが、よく似た症状もありますが主に次のような違いがあります。 肩腱板断裂 ・転倒して手をついたら肩に激痛が走る ・荷物を持つときに音が鳴って痛みが出る ・腕を上げるときに肩にゴリゴリ感や引っかかり感がある ・ズキズキと夜間痛がある。特に痛い方の肩を下にしたときに痛みが強くなる ・腕が自力で上がらない。痛くない方の腕で支えると痛い方の腕は上がる 四十肩・五十肩 ・手を背中に回したり、後ろに回すと痛い ・腕の動きが悪い ・肩から腕にかけて痛みや痺れがある ・夜間痛がある 具体的に肩のどこが痛くなるの? 腕を上げるとき、写真の赤いところがよく痛く感じます。 そのほか、寝ているときに肩から腕にかけて痛みが広がることもよくあります。 外来診察していると『他の病院で四十肩・五十肩と診断されて治療していたが一向に痛みが治らない。そこで他の病院でMRI検査をしてみると、肩腱板断裂と診断された』とよく聞く機会があります。なぜそのようなことが多く起こるのか、理由は次のようになります。 加齢による非外傷性(変性断裂)では、少しずつ時間をかけて腱板が切れた場合は痛みが出にくくなり、腱板断裂していても気づかないことがよくあります。実際、痛みのない健常者の肩のMRIを撮影したところ約60%の方に腱板断裂が見られたという論文発表もされています。(文献②) つまり、痛みのない非外傷性(変性断裂)の方が、気づかないうちに徐々に肩の炎症を起こします。そして四十肩・五十肩のような拘縮の症状が出てきて、病院でMRIの検査をしてみると怪我した覚えがないのに肩腱板断裂と診断されたということになるのです。 肩腱板断裂は放置してていいの? 痛みがなかったり、軽い痛みはあるが日常生活に問題がない場合 一度切れた腱板は自然に元には戻ることはありません。ただ、切れていても痛みがなかったり、注射や薬、リハビリで痛みが治ることもよくあります。痛みがなく日常生活に支障がなければ手術をしないのが一般的な治療方針です。しかし、先ほども言ったように痛みがなくても治っているわけではありません。それどころか、年数が経つにつれて断裂部が拡大していきます。断裂部が拡大するにつれて手術の成績も悪くなっていきます。 ではどうして腱板断裂の手術はしないのでしょうか。それは、手術の成功率があまり高くないところにあります。日常生活に問題のない患者様を手術することにしたものの、術後の後遺症で痛みに悩んでしまうことになる可能性があるのです。 では、術後の後遺症とはどのようなものがあるのでしょうか。 術後の関節拘縮 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 腱板の再断裂 腱板の手術の難しいところは、腱板を糸で結ぶとその糸により腱板が裂かれてしまい再断裂を起こすところです。再断裂の確率は20〜30%、大きな断裂では40〜60%と言われています。(文献③)そのほかにも、骨にアンカーという釘を打ち込むのですが、それによって骨折が生じたりアンカーが外れてしまうこともあります。もちろん、神経障害や感染症の可能性も考えなければいけません。 このような術後の後遺症や合併症があることで、医師としても痛みのない腱板断裂に対しては積極的には手術はお勧めしていないのが現状です。 それに代わる新しい治療の選択肢として肩腱板断裂に対しての幹細胞治療が今注目を集めています。詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。 ▶手術をすすめられていましたが、幹細胞治療で完治した実際の症例 痛みが強くて日常生活が辛い方、早くスポーツ復帰したい方 一般的に手術適応となります。しかし、術後の再断裂などの後遺症を考えて新しい幹細胞という再生医療も選択肢の一つとなります。 肩腱板断裂になりやすい人 中高年以上の人 加齢によって腱板が変性していき少しの外力で切れてしまいます。草抜きや荷物の上げ下げやちょっとした転倒で手をついても断裂しやすくなります。 スポーツする人 野球やテニス、ゴルフなど、腕を上げる動作を繰り返すことによって断裂します。 現場作業員の方 壁の塗装や壁紙はり、荷物の上げ下ろしなど繰り返す動作の継続により断裂を起こします。 肩腱板断裂の痛みを和らげる方法 肩甲骨・胸郭のリハビリトレーニング 肩を動かすときには、肩甲骨の動きや胸郭の動きが連動しています。肩甲骨や胸郭の動きが柔軟になることで、肩腱板への負担が軽くなります。 肩関節の可動域リハビリトレーニング 肩関節周りの筋肉をストレッチすることで関節の可動域を増やします。 肩腱板断裂の時の寝方の注意点 痛い方の肩を下にすると痛みが増しますので、できれば仰向きに寝て写真①のように肩の位置より肘が下がらないように肩甲骨や腕の下にタオルを引きます。また、写真②のように枕やタオルを抱いて肩関節を安定させると痛みが和らぎます。 腱板損傷の4つの検査方法 診察をする上で、腱板が損傷しているかどうか、また損傷している場合はどの程度の損傷かを調べなければなりません。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) 例えばどのような動きで痛みが出るのか、どの程度の痛みが出るのか、筋力はどうかなどをチェックします。また腱板損傷を疑う場合におこなうテスト法として、ドロップアームテストがあります。 ドロップアームテストとは、検査をする人が支えながら90度まで外転(横方向への挙上)させていき、支えを外した状態からゆっくりと腕を下ろしていく。 自力で腕を支えられずに、急に腕が落ちるようであれば腱板の損傷を疑う。 また、小指を上にして斜め方向に腕を上げるときに肩に痛みが出る。 レントゲン検査 肩関節の痛みによる診断では、まず始めにレントゲンを撮られることがあります。 レントゲンは主に骨の状態を確認できる画像診断ですので、骨折の診断にはとても有効です。ところがレントゲンでは腱板が映らないため、損傷の程度を確認できません。 ただし腱板が断裂すると、関節の隙間が狭くなることがあり、また肩関節に骨棘(骨の端がトゲのようにとんがっている状態)が見られると、肩を動かした時に骨棘がある部分で炎症を起こす可能性があります。 このように、レントゲンで腱板自体を把握できませんが、関節の状態から腱板損傷の推察をすることはできます。 超音波検査 超音波検査は、腱板の断裂の程度や炎症の有無、石灰(カルシウムの塊)の沈着などの判断が可能です。超音波検査では、筋肉と筋肉の間にある筋膜や、滑液包に注射ができます。 また関節を動かしながら観察を行うことで筋肉の動きも見ることができ、患者様と一緒にモニターを確認することで、よりわかりやすい説明ができます。 M R I検査 腱板損傷の診断にはMRIでの検査が最も有効です。 MRIではレントゲンでは写らない腱板の描写が可能で、骨や関節包など腱板の周りの組織まで読み取ることができます。腱板損傷が起っている場合は、損傷している部位だけでなく、どれくらいの範囲まで損傷しているかを確認しなければなりません。 腱板損傷の治療法(保存療法、手術療法、再生医療) 腱板断裂の治療法には、手術をしない「保存療法」と、文字通り手術で治療する「手術療法」に分けられます。 腱板の損傷では筋肉と比べて血行が悪く、自然治癒が難しい疾患です。それに加えて、肩を動かす(筋肉が収縮する)と損傷した部分が広がる方向に力が加わり、むしろ断裂部分が広がることも多いです。 このように腱板損傷は保存治療をおこなっても、時間の経過とともに症状が悪化することもあり、保存療法の限界があります。また患者さん自身がどの程度の回復を望んでいるかによっても治療方針がわかれます。 痛みが収まり、しっかりと腕が挙がらなくても日常生活が送れる程度まで回復すれば良い方にとっては保存療法から取り組むと良いでしょうし、スポーツや仕事をしていて復帰のためにしっかりと治したい方は手術や、新しい治療として注目されている再生医療を選択する方が良いでしょう。 腱板損傷の治療:保存療法(リハビリ、痛みを抑える薬物療法) 痛みが強い時期の治療としては、薬物療法などで痛みを抑えることを第一に取り組みます。痛み止めの飲み薬や湿布薬などもありますが、強い痛みに対しては注射による治療が効果的です。 特にステロイドによる注射は高い治療効果をもたらしますが、頻繁にステロイドを投与すると腱が脆くなることがあり、またそれ以外にも様々な副作用があります。 ある程度痛みが軽減してきたら、肩関節が拘縮しないようリハビリに取り組みましょう。ストレッチなどで筋肉をほぐし、血流改善を促します。肩関節は肩甲骨の動きも大きく関わっているため、ストレッチや体操をする際は腕を動かすだけでなく、肩甲骨も意識して動かしてください。 また筋力トレーニングも効果的ですが、方法を誤ると同じ動作でも違った筋肉に刺激を送ることになるので気をつけましょう。最初に説明したように腱板は深層にある筋肉であり、腱板を鍛えるためには強い負荷は必要ありません。 なぜなら強い負荷をかけたトレーニングでは、ターゲットである腱板よりも表層にある三角筋などが優位に働くからです。そのため腱板の筋力トレーニングをするときは、軽めの重りやゴムチューブなどを使い、軽い負荷でたくさんの回数をおこなうように心がけましょう。 腱板損傷の治療:手術療法 腱板損傷の手術では、主に関節鏡視下術がおこなわれます。関節鏡視下術とは、1〜2cmほどの小さな穴から内視鏡と言われるカメラや手術器具を挿入し、断裂した腱板を元の骨の位置に縫い付ける術式です。この関節鏡を使った手術では傷口を大きく開かないため、体への負担が少なく感染率も低いです。 ただし手術を受けたからといって、すぐに元の状態に戻るわけではありません。手術をしても腱板に負荷がかかると再断裂をする恐れがあるので、しばらくは装具や三角巾を使って安静にする必要があります。 そして3週間から6週間が経つと腱板の接合部分が安定してくるので、徐々にリハビリを開始していきます。重症度にもよりますが目安としては、不便なく日常生活が送れるまでに約2〜3ヶ月、スポーツや重労働ができるまでには約6ヶ月かかります。(文献④) 腱板損傷に対する第三の選択肢、手術を避ける再生医療について 腱板の損傷部分に関しては、自然治癒の可能性は低いと言われています。その為、痛みが強く保存療法でのコントロールが効きづらい場合には、一般的に手術を選択される医療機関が多いと思われます。 一旦断裂した腱板を縫い合わせる手術を実施したとしても、腱板が元の正常の状態に戻るわけではありません。そのため、縫い合わせた腱板は時間の経過と共に再度損傷していき、縫合部分が徐々に裂けてしまい、最終的には腱板が再断裂をしてしまうことが少なくありません。 また、手術を受けた際に関節を切開して出来た傷口が癒着し、組織同士がくっついて肩関節の動きを阻害してしまいます。そうなると本来の肩関節の動きを取り戻せず、五十肩(肩関節周囲炎)のような痛みを生じてしまいます。 このような状態を防ぐ為に有用な選択肢であるのが再生医療です。一般的には再生の可能性が低いと言われている腱板に再生医療では幹細胞を投与することで、損傷部位に幹細胞が行き渡り、腱板が再生されていきます。 幹細胞治療で再生された腱板は、縫合術のように糸で縫い合わせているわけではないので、再断裂を起こす確率は極めて低いです。また入院や装具で安静にする必要がないため、拘縮を起こすことなく痛みや可動域制限が解消されます。 さらには手術をされた方にも再生医療は有効とされています。手術を受けた場合の最大のリスクは腱板縫合部分の再断裂です。そこで手術により縫い合わされた腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えられるだけでなく、手術を受けた際の傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 ▶こちらの動画でも詳しく解説しています。是非ご覧ください。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=1FgvN_eZLUW2EDC7 まとめ 腱板損傷は明らかな原因が元で発症することもあれば、加齢による変性などで発症することもがあります。特に50歳代以上では発症率が高く、身近に起こり得る疾患と言えます。 しかし、損傷の程度によっては保存療法が功を奏せず、時間の経過とともに断裂が広がり手術となることもある疾患です。手術になるような損傷を起こさないためにも原因を知って、まずは予防に努めましょう! そして、少しでも肩に違和感を感じたら、医療機関を受診するなどして腱板損傷が拡大しないよう早めの治療に取り組みましょう。以上、腱板損傷の症状と治療法、併せてその原因と予防方法ついて、記させて頂きました。 参考にしていただければ幸いです。 ^①Sasanuma H, Sugimoto H, Iijima Y, Kanaya Y, Saito T, Takeshita K.Blood flow evaluation by dynamic magnetic resonance imaging of symptomatic rotator cuff tears and frozen shoulders. J Shoulder Elbow Surg. 2018 Dec;27(12):e372-e379. doi: 10.1016/j.jse.2018.05.042. Epub 2018 Aug 13. PMID: 30111504. ^②Moosmayer S, Tariq R, Stiris M, Smith HJ. The natural history of asymptomatic rotator cuff tears: a three-year follow-up of fifty cases. J Bone Joint Surg Am. 2013 Jul 7;95(14):1249-55. doi:10.2106/JBJS.L.00185. PMID: 23864172. ^③Saito K, Kenmoku T, Hirota K, Matsui H. Long-term prognoses of patients with and without re-rupture after arthroscopic rotator cuff repair. J Phys Ther Sci. 2021 Jun;33(6):460-465. doi: 10.1589/jpts.33.. Epub 2021 Jun 18. PMID: 34177109; PMCID:PMC8219605. ^④Gallagher BP, Bishop ME, Tjoumakaris FP, Freedman KB. Early versus delayed rehabilitation following arthroscopic rotator cuff repair: A systematic review. Phys Sportsmed. 2015May;43(2):178-87. doi: 10.1080/00913847.2015.1025683. Epub2015 Mar 22. PMID: 25797067. ▼以下の肩腱板損傷の記事も参考にされませんか。
公開日:2024.10.07