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- 腱板損傷・断裂
- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
- スポーツ外傷
競技や趣味にかかわらず、ゴルフをプレイしていれば「ゴルフ肩(スイングショルダー)」という症状を一度は耳にしたことがあるでしょう。また、既にゴルフ肩に悩まされている方も多いことと存じます。 そこで本記事では、ゴルフ肩(スイングショルダー)の症状や原因・治療法について当クリニックの医師が解説いたします。すでに悩まれている方、もしくは疑いのある方は、ぜひ最後までご覧ください。 また、個別の症状などについては各自で判断することなく医療機関にてご相談されることをおすすめします。 【左肩が痛む?】ゴルフ肩(スイングショルダー)とは ゴルフ肩(スイングショルダー)とは特定の病名ではなく、日常的にゴルフを行うことにより引き起こされる「肩関節周囲組織の損傷」による症状全般を指します。症状は傷害される部位によって異なりますが、肩関節から肩甲骨周囲の痛みや腕にかけての痺れなどが一般的です。 多くの場合スイングの際に前方に位置する肩に傷害が起きやすく、とく特に右利きのゴルファーの左肩が怪我をしやすいと言われています。 ゴルフ肩(スイングショルダー)に含まれる具体的な疾患名(または症候名)は以下のとおりです。 ゴルフ肩(スイングショルダー)の原因 ゴルフは、クラブをスイングする際の非常に特殊な肩の動きを必要とするスポーツです。左右の肩がまった全く逆の動作をしなければならず、前方の肩はバックスイングの頂点で極端な内転姿勢になり、後方の肩は外転姿勢になるように伸ばされます。 この特殊な動作に加え、非常に重量のあるクラブを振り回し、地面の抵抗なども加わり、肩の障害を引き起こしかねません。 さらにゴルフでは、スイングを行う際にしばしば90°以上の水平および垂直の肩関節の運動を必要とします。 このような複数の動きが組み合わさることにより、肩の傷害の原因となることが指摘されています。頻繁にゴルフを行うことや長時間プレーすることも肩関節の障害のリスクと考えられています。 いずれの肩においても、「肩峰下インピンジメント」と呼ばれる病態が多くのゴルフ肩の原因となります。 ゴルフ肩の検査 ゴルフ肩(スイングショルダー)は病名ではなく一連の状況が起こす症状の総称であるため、その診断は主に症状が発生するに至った経緯と症状の部位によりなされることが一般的です。 しかし、肩関節には骨や筋肉だけでなく神経や靭帯などさまざまな組織が存在するため、これらの傷害を詳細に検討するために関節のMRIを施行するケースもあります。 より高齢のゴルファーの場合には、インピンジメントなどの徴候や関節内組織の傷害だけでなく、肩甲骨と鎖骨のつなぎ目である肩鎖関節の位置関係や形態の変化を調べるためのレントゲン検査を施行します。 また、関節超音波(エコー)検査はさまざまな体勢で施行することができるだけでなく、関節注射などの処置のガイドにもなるため施行されることがあります。 ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療法 https://www.youtube.com/watch?v=kyCLmM6YdvI ゴルフ肩(スイングショルダー)は一般的に専門家によるリハビリテーションが主な治療となることが多く、提供されるリハビリプログラムは専門家によって違います。 肩関節に負担をかけない肩甲骨の運動矯正、肩関節の内外転・内外旋のバランス調整、およびスイングの矯正などゴルフに特化したリハビリテーションが含まれます。 とくにゴルフでは体幹を安定させることとスイング動作における全身運動の改善が不可欠です。一方で、関節唇損傷など、手術による治療などの特殊な治療を要する場合もありますので、まずは専門家に相談しましょう。 なお、当院でも再生医療に注目した診療を実施しているため、まずはお気軽にご相談ください。 【プロセス】ゴルフ肩の完治期間 ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療から競技への復帰は一般的に以下のようなプロセスを必要とします。 STEP1.症状の改善 運動負荷を減らし、状況に応じて消炎・鎮痛を行うなどして症状の改善に努めます。 症状が強いと協調運動に制限が出たり、リハビリテーションがうまく進まなかったりする可能性があるためまずは運動負荷を減らして症状の改善に努めます。 STEP2.筋力と柔軟性の強化 肩関節周囲の筋力と柔軟性を強化し、症状の改善だけでなく再発の予防や競技能力の向上を目指します。 競技前にウォームアップの習慣をつけることが効果的です。 STEP3.軽負荷による競技再開 ゴルフ肩(スイングショルダー)の治療と並行してゴルフの動作に特化(ゴルフ復帰)したリハビリを行います。 手術などの体の負担の大きな治療を要した場合でも、3~4週間以内には患部の腕を使った片手のパッティングを開始できて、ゴルフに特化したリハビリを進められます。 また、症状やリハビリの進行状況に応じてスイングを模した簡単な体のひねり運動を行うことも可能です。 経過後は体幹と全身の協調運動の強化を徐々に再開します。 専門家の指導のもと段階的に競技負荷を強くし、2~3ヶ月目には徐々に競技への復帰を目指します。 まとめ|症状が改善しないゴルフ肩は再生医療も検討してみよう ゴルフ肩(スイングショルダー)の原因や治療について解説しました。ゴルフのスイングによる肩関節周囲組織の傷害は競技特有のものです。 リハビリテーションを含む治療には医師や理学療法士などのさまざまな職種の連携が不可欠となりますので、治療にあたっては、早期に整形外科・専門診療科に相談するようにしましょう。 また、手術を避けるための再生医療も注目されています。 注射だけの幹細胞治療を採用しており、手術や入院なしで当日帰宅が可能です。日常生活に支障をきたすことなく治療に取り組めますので、気になる方は下記のバナーより詳細をご覧ください。
2022.08.15 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板断裂の治療は注射やリハビリなどの保存療法がメインですが「自然に治るのかな?」「放置したらどうなるの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。 結論からいえば、腱板断裂を放置すると治るどころか悪化する可能性があります。 腱板という筋肉は血流が乏しい筋肉であるため、自然治癒が望めないためです。 本記事で腱板断裂を放置するとどうなるか、詳しく解説します。腱板断裂でお悩みの方はぜひ最後までチェックしてください。 ▼腱板損傷のメカニズムを1分で解説! また、現在リペアセルクリニックでは腱板断裂や肩の痛みに対して、つらい痛みからの解放が期待できる再生医療についての情報をLINEにて発信中。 再生医療の専門クリニックとして改善が見込めた症例についても紹介しておりますので、身体への負担を軽減したい方はぜひご登録ください。 腱板断裂を放置するとどうなる? 結論、腱板断裂は放置すると肩の動きが悪くなり、痛みが徐々に増していくことが一般的です。 さらに、断裂が進行することで肩を支える腱板の筋力が低下し、肩関節がスムーズに動かせなくなるため、日常生活での動作が困難になったり肩関節や周囲の組織にさらなる負担がかかったりします。 これによって肩が固まって動きにくくなる拘縮(いわゆる「凍結肩」や「五十肩」に似た状態)を引き起こしたり、痛みが長引く慢性的な症状へと発展してしまう可能性があり、基本的には自然治癒しません。 【進行してしまう可能性のある症状・状態まとめ】 断裂部位が拡大し、症状が悪化する 肩関節機能が低下し、日常生活に支障をきたす 痛みが増していき、次第に日常生活が困難になる 腱板断裂の自然治癒については、以下の記事でも解説しているのであわせてご覧ください。 腱板断裂は放置しても治らない 腱板断裂は放置しても治らないケガです。 腱板断裂が自然治癒しない理由は、腱板へ流れる血流が少ないためです。 もともと腱板の中には血管が少ないため、治癒に必要な栄養素が血流によって届けられず自然治癒が難しいと考えられています。 また、構造的な問題によりちぎれた筋肉が腕の重みで引き離され続けることも理由の1つです。 腱板が断裂した状態を放置すると、さらに断裂部位が広がってしまうことがあります。断裂部位が広がるほど症状も強くなるため、早めに医療機関を受診し、治療を受けましょう。 放置すると日常生活や肩の機能に影響が出ることも 腱板断裂は放置することで、日常生活の動作や肩の機能に影響が出ることもあります。 断裂部位が広がると腱板の筋力が弱くなり、肩の可動域や筋力の低下がみられる可能性があります。夜中も肩の痛みで寝れなくなったり、上に手が上がらないために洗濯物が干せなくなったりするなど、日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。 腱板断裂が悪化すると正常な動作が困難になるため、放置せず早めに病院で治療を受けることが大切です。 また、腱板断裂では避けるべき動作がいくつかあります。詳しくは下記の記事で解説しているため、腱板断裂を疑っている方はチェックして日常生活で気をつけてみてください。 腱板損傷との違いは「完全に切れているかどうか」 腱板断裂と似た怪我として腱板損傷という怪我があります。 そもそも腱板断裂には、筋肉の繊維が完全にちぎれている「完全断裂」と、一部のみがちぎれている「不全断裂」にわけられます。この一部がちぎれている不全断裂を言い換えたものが「腱板損傷」です。 なお。腱板断裂の程度はMRIやCTなど腱板が撮影可能な画像検査をしないとわかりません。詳しくは以下のリンクでご紹介しているため、ぜひチェックしてみてください。 ちなみに当院リペアセルクリニックでは、腱板断裂の治療として幹細胞治療やPRP療法などの再生医療に取り組んでいます。 これらの治療は腱板断裂の程度に関わらず適用可能な治療です。 気になる方は当院リペアセルクリニックにメール相談、もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 腱板断裂を疑うべき症状3選!できるだけ早く受診しよう 腱板断裂を疑うべき症状は、以下に挙げる3つです。 転んだ後から腕が上がらない 痛みで夜寝れない、途中で目が醒める 肩を動かすと痛い・ゴリゴリ音がする これらの症状がある場合には腱板断裂を疑います。そのため、可能な限り早い整形外科の受診がおすすめです。なお、腱板断裂を疑う症状についてはこちらの記事で詳しく解説しています。少しでもご自身に腱板断裂の可能性がある方はぜひご確認ください。 もし腱板断裂の疑いがある場合には、適切な治療が必要です。治療方法の選択は画像診断で腱板断裂の程度を知る必要があるため、まずは整形外科を受診してください。 腱板断裂の主な治療法 腱板断裂の主な治療には、保存療法・手術療法・再生医療の3つがあります。 保存療法:痛みの軽減処置やリハビリを行う 手術療法:関節鏡を使う負担が少ない方法が主流 再生医療:切らない治療法で手術のリスクを回避できる ここでは主な選択肢になる3つについて詳しく解説していきます。 保存療法:痛みの軽減処置やリハビリを行う 保存療法では薬や注射などで痛みを軽減しつつ、リハビリで肩の機能を取り戻す治療を進めます。ヒアルロン酸注射やステロイド注射によって関節の動きを良くしたり、炎症を抑えることが可能で、断裂の程度を問わず有効です。 リハビリでは腱板の筋力強化や肩の可動域を広げる運動が主流です。痛みの程度をみながら理学療法士と二人三脚で治療し、腱板の機能を高めます。なお、詳しい保存療法の内容は以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。 手術療法:関節鏡を使う負担が少ない方法が主流 手術をする場合にはメスで大きく切り開かず、小さな穴から関節鏡で断裂した腱板を縫合する手術方法が一般的です。大きく切開しないため社会復帰が早い点が関節鏡のメリットといえるでしょう。通常全身麻酔で手術をおこなうため、1週間程度の入院が必要になります。 手術後は腱板が癒合しやすいよう負担を減らすために、3〜6週間程度の固定が必要です。徐々にリハビリで動かして肩の機能を取り戻し、3〜6カ月で肩を自由に動かせるようになるといわれています。 一方で腱は柔らかい組織であるため、手術が成功しリハビリしたとしても再断裂というリスクはあり、関節拘縮※といった後遺症が残る可能性もあります。 ※関節拘縮:筋肉・靭帯・関節包などが硬くなり、関節の動きが制限される状態 再生医療:切らない治療法で手術のリスクを回避できる 再生医療、特にリペアセルクリニックが提供している幹細胞を使用した再生医療は、腱板に対して注射だけの負担の無い治療を提供しています。 完全断裂のリスクが低減や術後の関節拘縮の心配がないだけでなく、患者様自身の幹細胞を使用するため、アレルギーや副作用のリスクも少ないです。 また、当院では分化誘導※を用いた再生医療を提供しており、幹細胞が持つ特徴でもある、姿を変える能力の『分化』の性質を活用し、腱板や筋肉といった特定の組織の再生能力を高めることも可能としています。 ※分化誘導とは:様々な姿に変わる幹細胞を骨や神経といった特定の組織に分化するように導くこと 手術を勧められているものの避けたい方や、長期の入院やリハビリができない方は再生医療をご検討ください。 また、現在リペアセルクリニックでは、肩の痛みや腱板断裂において改善効果が見込めた症例の紹介や無料相談を実施しておりますので、ぜひご確認ください。 ▼オンライン診断も実施中! >>公式LINEはこちら まとめ|腱板断裂は放置しないほうが良い!早めの受診がおすすめ 腱板断裂は放置しても自然治癒しない怪我です。 断裂した腱板は放置するとさらに悪化し、痛みが増して日常生活にも支障が出る可能性があります。可能な限り早めの受診がおすすめです。 なお、当院リペアセルクリニックでは腱板断裂に対しても再生医療をおこなっていますので、身体への負担が少ない治療方法をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。 また、腱板断裂に対して再生医療が具体的にどのくらい改善見込みがあるのか知りたい方は、改善症例の紹介をしている当クリニックの公式LINEをご確認ください。 腱板断裂についてよくある質問 腱板断裂を放置するとどうなりますか? 放置しても治りません。 腱板断裂は自然治癒が見込めない怪我として有名です。放置すると断裂した腱板が治らないばかりか、腕の重みによって断裂部位が広がり悪化する可能性があります。そのため、できるだけ早い受診がおすすめです。 腱板断裂は手術しないといけないですか? 手術以外にも保存療法の選択肢もあります。 腱板断裂は自然治癒しませんが、断裂の程度によっては保存療法も可能です。痛みや可動域制限が小さければ、必ずしも手術をしなくても良いといわれています。なお、当院リペアセルクリニックでは保存療法として再生医療をおこなっています。興味があればオンラインでの相談も可能なので、メール相談、もしくはオンラインカウンセリングでお問い合わせください。
2022.07.05 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
肩の痛みや可動域の制限が続くと、「腱板断裂なのか、それとも五十肩なのか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いは、肩の腱(筋肉と骨をつなぐ繊維状の組織)が損傷しているかどうかにあります。しかし、いずれも肩の痛みや可動域の制限といった共通の症状を伴うため、見た目だけでは判別できず自己判断は難しいのが現実です。適切に対処するためには、それぞれの原因や治療法の正しい理解が必要です。 この記事では、腱板断裂と五十肩(四十肩)の特徴や診断方法、治療の選択肢についてわかりやすく解説します。長引く肩の痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肩の痛みでお悩みの方や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いを原因・症状等の観点で解説 腱板断裂は肩の筋肉(腱板)が損傷・断裂する疾患であるのに対し、五十肩(四十肩)は肩関節周囲の炎症によって関節が硬くなる疾患です。 それぞれの違いを簡潔にまとめると以下です。 項目 腱板断裂 五十肩(四十肩) 名称 腱板断裂 肩関節周囲炎 原因 加齢による腱の変性、外傷、反復動作による負荷 肩関節周囲の組織の炎症 原因 肩の動作時の痛み、夜間痛、運動痛 肩の動作時の痛み、可動域の制限 可動域の制限 ある程度腕は上がる 全方向で制限される 筋力の低下 あり 二次的にあり 自然治癒 難しい 可能 腱板断裂とは 名称 腱板断裂 原因 加齢による腱の変性、外傷、反復動作による負荷 主な症状 肩の動作時の痛み、夜間痛、運動痛 可動域の制限 ある程度腕は上がるが、特定の角度で引っかかりや痛みが強くなる 筋力の低下 断裂した腱の機能が失われるため、腕を上げるなどの動作で明らかに筋力が低下する 自然治癒 自然治癒は困難で、放置すると悪化するリスクがある 腱板断裂は、肩の腱板の損傷により発症します。主な原因は加齢による腱の脆弱化に加え、転倒やスポーツによる外傷などです。腱が損傷することで肩の筋力が低下し、腕が上がりにくくなるといった可動域の制限が見られます。 腱板が完全に断裂した場合、自然治癒は非常に難しく、放置すると断裂部が拡大したり、肩関節の機能がさらに悪化したりする可能性があります。(文献1) 五十肩(四十肩)とは(肩関節周囲炎) 項目 五十肩(四十肩) 名称 肩関節周囲炎 原因 滑液包や関節包など肩関節周囲の組織の炎症 主な症状 肩の動作時の痛み、可動域の制限 可動域の制限 痛みと拘縮により肩の可動域が全方向で著しく制限される 筋力の低下 肩を動かせない結果として筋力の低下が起こる 自然治癒 時間がかかるが自然に改善していく傾向がある 五十肩(四十肩)は、肩関節周辺の組織に炎症が起こることで、肩の痛みや可動域制限が生じる疾患です。「四十肩・五十肩」は通称であり、正式な診断名は「肩関節周囲炎」です。 関節包が全体的に硬くなることで、腕を上に上げる・ひねる・背中に回すといったあらゆる方向への動作が困難になります。 自然に改善する傾向がありますが、個人差が大きく数カ月で軽快する方もいれば、2年以上症状が続くこともあります。(文献2) 【関連記事】 腕を上げると肩が痛いのは五十肩(四十肩)?原因や治し方を解説 四十肩・五十肩とは?違いは?医師が徹底解説 腱板断裂と五十肩(四十肩)の疑いがあるときにやってはいけないこと 腱板断裂と五十肩(四十肩)の疑いがあるときは、以下の動作は避けましょう。 高い位置にある荷物を持ち上げたり降ろしたりする動作 首の後ろ側で腕を動かすような姿勢 上半身の筋力を使って重い物を持ち上げる動き 肩を後ろに引いた状態で行う腕の上方向への運動 とくに注意したいのが、肩を大きく動かしたり、無理な体勢で力を入れたりする動きです。たとえば腕を頭より高く上げる動作や、後方にねじるような姿勢は、肩の可動域を超える力が加わり、損傷の悪化を招く恐れがあります。 日常生活では悪化を招く動作を無意識に行うことがあるため、肩に痛みを感じているときは、動作全体を丁寧に見直すことが重要です。 腱板断裂と五十肩(四十肩)のどちらか診断する方法 腱板断裂と五十肩(四十肩)は、いずれも肩に痛みや動かしにくさが出る疾患ですが、原因や治療法は異なります。以下では主な診断方法について解説します。 身体診察 画像診察(X線・MRI・超音波検査) 身体診察 肩の痛みや動かしにくさを感じる際、まず行われるのが身体診察です。身体診察とは、肩の可動域や、腕を上げる際の筋力、痛みの種類などを詳しく確認する診察方法です。 自力で腕を上げようとすると痛くて上がらないものの、他人が支えるとある程度腕が上がる場合は五十肩(四十肩)の可能性が考えられます。 一方で特定の方向へ腕を上げる際に明らかに筋力が低下し、腕を保持できない症状が見られると腱板断裂が疑われます。 画像診察(X線・MRI・超音波検査) 身体診察で疾患が疑われた場合、より確定的な診断のために画像診察が行われます。主な検査方法は以下の通りです。 検査項目 特徴・診断できること X線(レントゲン)検査 骨の状態を確認するのに有効。腱板断裂では、断裂が進行すると骨の変形や骨棘が見られることがあるが、五十肩では骨に異常はない場合が多い。 MRI検査 腱や筋肉など軟部組織の状態を詳細に映し出す。腱板断裂の有無、大きさ、損傷度を正確に診断し、五十肩と鑑別するのに最も有効。 超音波(エコー)検査 リアルタイムで腱の動きや断裂を簡便に確認可能。腱の炎症や水腫も把握でき、初期診断や経過観察に適している。 これらの画像検査結果を総合的に判断して腱板断裂か五十肩(四十肩)かを診断し、適切な治療方針を決定します。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の治療方法 腱板断裂と五十肩(四十肩)は、原因や重症度によって治療法が異なります。ここでは、代表的な保存療法と手術療法について詳しく解説します。 保存療法 手術療法 保存療法 腱板断裂や五十肩(四十肩)の治療は、症状が軽度な場合や日常生活に大きな支障がない場合には、保存療法が第一選択となります。炎症の抑制や可動域の改善を目的として、以下のような療法が用いられます。 消炎鎮痛薬の内服・湿布 注射治療(ヒアルロン酸、ステロイド) 温熱療法や電気治療 リハビリテーション(可動域訓練・筋力強化) 保存療法は五十肩の自然治癒が見込まれるケースや、腱板断裂が小さく筋力の低下が軽微な場合に有効です。 手術療法 保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が重度で日常生活に著しい支障をきたす場合には、手術療法が検討されます。 とくに腱板断裂では、断裂の大きさや筋肉の変性の有無などにより手術適応が判断されます。 術式名 特徴・内容 鏡視下腱板修復術 小さな切開を伴う内視鏡手術。断裂した腱板をもとの位置に縫い付ける。回復が早く、合併症のリスクが少ない。 腱板移植術 広範囲の腱板断裂で縫合が難しい場合に、他部位の筋膜を移植して補強する手術。 リバース型人工関節置換術 重度の腱板断裂によって肩の安定性が失われている場合に、人工関節で可動性と機能を回復する手術。 五十肩(四十肩)では、強い癒着や拘縮が残り保存療法で改善が見られない場合に限り、関節包を切り離す手術が行われることもありますが、そのケースは非常に稀です。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の予後と回復期間 腱板断裂と五十肩(四十肩)は、予後や回復期間にも違いがあります。 五十肩は自然治癒が期待でき、保存療法で数カ月〜1年程度で改善するケースが多いのに対し、腱板断裂は損傷の程度や治療内容によって回復期間が大きく異なります。 以下の表で主な違いをまとめました。 項目 腱板断裂 五十肩(四十肩) 予後 断裂が残ると筋力低下や痛みが残る場合がある 多くは自然に治癒する 回復期間 保存療法:数カ月〜(断裂は残存) 手術療法:数カ月〜1年程度 保存療法:数カ月〜1年程度 五十肩(四十肩)では、最終的に症状が改善するケースが多く見られます。一方腱板断裂の場合、断裂の度合いに応じた治療選択が、その後の肩の状態を左右する重要なポイントとなります。 腱板断裂や五十肩の症状や後遺症にお悩みなら再生医療もご検討ください 腱板断裂や五十肩の症状が長引いている、または回復に不安を感じている方は、新たな選択肢として再生医療も検討してみてください。 再生医療は、患者様自身の脂肪から取り出した幹細胞や血液を利用する治療法で、手術や入院を必要としないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では再生医療に精通した医師が、患者様の状態に応じて個別に治療方針をご提案いたします。再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いを理解して適切に対処しましょう 腱板断裂と五十肩(四十肩)は、似たような肩の痛みを伴いますが、原因や症状、治療法が大きく異なるため、正確な診断と適切な対処が重要です。安易に自己判断せず、専門医による身体診察や画像診断を通じて自身の症状の正しい把握から始めましょう。 症状が長引いたり、改善が見られなかったりする場合には、再生医療の選択肢もあります。当院「リペアセルクリニック」では、再生医療に関する専門的な知識と経験をもとに、患者様の状態に応じた個別の治療プランをご提案いたします。 長引く肩の痛みや機能の低下でお悩みの方は、お気軽にリペアセルクリニックへご相談ください。 (文献1) 腱板断裂(けんばんだんれつ)|独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター (文献2) 五十肩(ごじゅうかた)|独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター
2022.06.10 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板断裂(腱板損傷)とは、肩の関節を安定させるための筋肉(腱板)が傷ついたり、腱組織が断裂して切れていたりする病気です。 腱板は、肩のなかで最も損傷を受ける部位であり、腱板が損傷すると腕の力が入らなくなり、とくに腕を上げようとしたときに痛みを引き起こします。また、夜に激しく痛み、眠れなくなる経験をした方もいるのではないでしょうか。 本記事では、肩に激しい痛みを起こす腱板断裂(腱板損傷)において、やってはいけないことや先端医療による治療について詳しく解説します。 日常生活の動作が原因となることもあるため、どのような動作を避けて安静を保つと良いのか、この記事を参考に取り入れてみてください。 また、現在リペアセルクリニックでは腱板断裂や肩の痛みに対して、つらい痛みからの解放が期待できる再生医療についての情報をLINEにて発信中。 再生医療の専門クリニックとして改善が見込めた症例についても紹介しておりますので、身体への負担を軽減したい方はぜひご登録ください 腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないこと4つ 腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことは、以下の4つです。 頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 首の後ろで腕を動かす動作 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 肩を後方に回した位置で行う上運動 腱板損傷直後は基本的に、肩周囲の安静を保つべきです。通常は三角巾を用いて、腕の動きを最小限にするように配慮します。 安静は急性期における対処法ですが、急性期が過ぎた後も、できる限り避けた方が良い動作があります。 肩を後方に回した位置で行う運動腱板損傷後に避けるべき動作を紹介しますので、一つずつチェックしながら症状を悪化させないようにしていきましょう。 頭上へ重いモノを持ち上げる・下す動作 腱板損傷を発症した後、とくに発症初期は以下のような動作や運動は控えたほうが良いでしょう。 頭上に手を持っていく動作 頭上へ重いモノを持ち上げる動作(重い荷物を上げたり、高所から下すような動作) また、ボールを投げるような動きや、ジムでバーベルを頭の上に持ち上げるなどのウェイトトレーニングは、しばらく行わないようにします。 これらの動きは、肩に過度のストレスを与えるだけでなく、損傷した部位にさらなる傷害と痛みを引き起こす可能性があるのです。 したがって、腱板損傷後は「オーバーヘッドでボールを投げること」「重いボールを上半身の力に頼って投げること」「水泳のクロールや背泳のように、頭上に右手を持ってきて力を入れて引き下げる」ようなストロークを避ける必要があります。 首の後ろで腕を動かす動作 バーベルやバーなどを、頭や首の後ろで上下させる運動も避けるべき動作のひとつです。 この運動は、腱板に過度の負担をかけ、さらなる肩の問題や慢性的な痛みを引き起こす危険性があります。この動作の問題は、肩の「外旋(骨を外側にねじるような運動)」にあります。 頭や首の後ろで上下させる運動では、肩をしっかりと外旋させる必要がありますが、これは肩にとって非常に負担のかかるポジションです。 この動きをすると、関節を構成する組織をさらに損傷してしまい、治癒までの時間が非常に長くなりかねません。 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作 上半身の力を使って重いものを持ち上げる動作も非常にリスク高く、別名アップライトローと呼ばれる動作です。 アップライトローはジムでよく見かけるエクササイズのひとつですが、このエクササイズのメカニズムを見れば、なぜこの動作が腱板損傷後に避けるべき動作であるか、理解できるでしょう。 アップライトローは、上半身を起こした状態で肩を開き、両手に持ったバーベルなどの重りを首元まで引き上げ、持ち上げる動作です。 このエクササイズの問題は、腕を置かなければならない位置にあります。この位置は「内旋」と呼ばれ、アップライトローをするために腕を挙上させると、腱板が肩の骨に挟まれます。これは腱板損傷を引き起こす原因となる動作そのものでもあります。 肩を後方に回した位置で行う上運動 肩を後方に回した位置で行う上運動で避けるべき運動としては、ベンチディップスとも呼ばれるエクササイズが該当します。 具体的には、椅子などに両手をついた状態で腰を座面よりも低い位置まで落とし、肩を後方に回した状態で、主に二の腕に相当する上腕三頭筋に負荷をかける運動です。 ベンチディップスは、腰を落としすぎて上腕が肩と平行な位置以上になってしまうと、肩関節に過度な負荷がかかります。 肘を開きすぎても閉じすぎても、上腕三頭筋に負荷がかかるため、腱板損傷後には避けるべき動作のひとつです。 より詳しく腱板断裂について知りたい方は以下の記事も参考にしてください。 腱板断裂(腱板損傷)が改善しない場合は再生医療 腱板損傷は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着きますが、放置すると悪化する恐れがあり、最悪の場合、完全断裂のリスクがあります。 症状が改善されなければ、手術が必要になることも考えなければなりません。 しかし、近年では身体への負担が大きい手術を回避でき、入院や長期間のリハビリが不要の「再生医療」といわれる先端医療で、損傷した腱板の再生を期待できます。 一般的な腱板損傷の手術では「再断裂」や「関節拘縮」のリスクがありますが、再生医療ではそうした後遺症の可能性について軽減できる点が大きなメリットです。 リペアセルクリニックが提供している再生医療は幹細胞治療と呼ばれるもので、注射だけの日帰り治療で腱板の再生が期待できる治療方法を採用。 長期間の入院はできない方や、身体への負担を出来る限り抑えたい方に向いていると言えます。 現在当クリニックの公式LINEでも、実際に再生医療で腱板断裂の改善が見込めた症例について紹介していますので、再生医療について詳しく知りたい方や手術以外の選択肢を取りたい方はご確認ください。 ▼オンライン診断も実施中! >>公式LINEはこちら まとめ|腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけないことに注意して負担を減らそう! 本記事では、腱板損傷後に避けるべき動作、やってはいけないこと4つをご説明しました。 腱板損傷後は、時間が経てば肩の炎症は徐々に落ち着いていきます。外傷後や症状がなかなか改善しない場合は、どうしても手術を検討しなければなりません。しっかりと安静を保ち、保存的治療に反応すれば、完治も期待できます。 術後も含め、治療の一貫でリハビリを行うこともありますので、もし避けるべき動作についてさらに詳しく知りたい場合は、リハビリの機会などを活用して相談してみることをおすすめいたします。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、腱板損傷をはじめとする肩に関する病気にお悩みの方を対象に、無料相談を実施していますので、お気軽にご相談ください。 腱板断裂(腱板損傷)やってはいけないことのよくある質問 腱板断裂(腱板損傷)を放置するとどうなる? 放置した場合、肩の機能が低下し、別の病気に移行する可能性があります。腱板断裂を放置しても自然に治ることは期待できず、治療やリハビリが欠かせません。 放置をして、症状が進行すると手術による修復が難しいだけでなく、人工関節手術を検討する可能性もあります。 以下の記事で、腱板断裂を放置するリスクなどについて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 腱板断裂(腱板損傷)はどれくらいで治る? 損傷の程度によって異なりますが、日常生活できるまでは2〜3カ月が目安です。 肩周囲に多くの負担をかけるスポーツや重労働の場合は、6カ月を目安としてください。 治療方法によっても回復期間は変わるため、専門医と相談しながら適切な対応が重要です。
2022.06.09 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「腱板断裂の手術後の再断裂の原因って何」 「腱板が再断裂しないか不安」 このような不安を抱える方は多いでしょう。 腱板断裂は断裂の範囲や手術後の負荷などによって再断裂する可能性があります。日常生活から再断裂を予防する意識が大切です。 本記事では、腱板が再断裂する原因や再断裂する確率、再断裂後の治療法について詳しく解説します。 腱板の再断裂を予防する方法も紹介しますので、腱板断裂の手術後の方や再断裂の不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。 腱板が再断裂する3つの原因 腱板が再断裂する主な原因は以下の3つです。 断裂が広範囲 加齢による影響 手術後の過負荷 順番に見ていきましょう。 断裂が広範囲 腱板の断裂が広範囲に及んでいる場合、修復した腱板が再び切れてしまうリスクが高まります。一般的に、断裂範囲が5㎝以上のものを「広範囲断裂」と呼びます。 広範囲断裂では、修復難易度が上がり、手術後の再断裂率が50%に達するという報告もあります。(文献1) また、断裂部分の筋肉に「脂肪変性」という、筋肉が脂肪に置き換わってしまう状態が強く現れると、腱板全体の強度が低下し、再断裂しやすい傾向が認められます。 とくに、肩を外側に回す際に重要な役割を果たす棘下筋の脂肪変性が進行しているケースでは、再断裂のリスクがより高まるとされています。 加齢による影響 年齢を重ねることも、腱板再断裂の一因となる場合があります。 加齢に伴い、腱板組織そのものの修復能力が徐々に低下するため、手術で修復しても治癒に時間がかかったり、強度が十分に回復しなかったりするケースも少なくありません。 さらに、高齢の方は栄養状態が低下している場合があり、これも再断裂リスクを高める要因です。ある研究では、手術前の栄養状態が低いと、再断裂のリスクが約5.6倍に上昇するという報告がなされています。(文献2) 良好な栄養状態を保つことは、腱板の修復を助ける大切なポイントであると考えられます。 手術後の過負荷 腱板の手術を受けた後、肩に過度な負荷がかかることも再断裂を引き起こす原因の1つです。 手術によって腱板は修復されますが、すぐに元の健康な状態に戻るわけではありません。とくに手術後間もない時期は、修復した部分の縫合がまだ不安定な状態にあります。 この時期にリハビリテーションで無理をしたり、日常生活で肩を使いすぎたりすると、修復部分の治癒が妨げられ、再断裂につながる可能性が高まります。 腱板が再断裂する確率【なりやすい時期も紹介】 腱板の手術後、修復した腱板が再び断裂してしまうケースは、一定の確率で起こります。 手術後の再断裂率は約16%であり、断裂が広範囲だった場合、再断裂率は50%にのぼるという報告も見られます。(文献1) 再断裂が起こりやすいのは、手術を受けてから間もない期間です。修復された腱板の強度がまだ十分でない手術後6カ月間は、とくに注意が必要な期間と言えるでしょう。 リハビリテーションの期間の目安としては、日常生活への復帰であれば手術後2〜3カ月程度、スポーツや重労働といった肩へより大きな負担がかかる活動への復帰は、6カ月程度が1つの目安とされています。 もちろん、これは個々の状態や断裂の程度によって異なります。このリハビリテーション期間中は、修復した腱板に過度なストレスをかけないよう、医師や理学療法士の指導をしっかりと守り、焦らず慎重に肩をいたわる生活を心がけることが大切になります。 腱板の再断裂で見られる症状 腱板が再断裂してしまうと以下のような症状が現れます。 肩の痛みと可動域制限 肩の筋力低下 肩を動かしたときの異音 どれも初回の腱板断裂時と似たような症状です。初めて腱板断裂になったときと同様の症状を感じたら、病院受診を検討してみましょう。 肩の痛みと可動域制限 再断裂が起こると、肩の痛みが再び現れる場合があります。この痛みは以下の3種類に分けられるのが特徴です。 安静時痛:じっとしているときもズキズキと続く痛み 運動時痛:肩を動かしたときに鋭く走る痛み 夜間痛:夜間に強くなる痛み とくに夜間痛は、再断裂した側の肩を下にして寝ていると圧迫されて痛みが強くなり、睡眠を妨げることも少なくありません。 運動時の痛みは、腕を高く持ち上げようとしたり、後ろに回したりする動作で顕著になります。このような痛みによって、肩を動かせる範囲(可動域)が狭くなり、生活の中で不便を感じる場面が増える傾向が見られます。 肩の筋力低下 腱板は肩関節を安定させ、腕を動かす重要な筋肉群です。再断裂すると、肩や腕の筋力が弱まり、日常生活で力が入らないと感じるようになります。 具体的には、以下のようなケースが起こりえます。 物を持ち上げようとしても力が入らない 腕を上げた状態でキープするのが難しい 腕全体に力が入らない脱力感を覚える このような筋力低下は、腱板そのものが断裂してうまく力を伝えられなくなるだけでなく、断裂によって肩関節の安定性が損なわれることも要因の1つです。 関節が不安定になると、周囲の筋肉が正常に機能しにくくなり、結果として肩全体の力の低下につながるのです。 肩を動かしたときの異音 腱板が再断裂すると、肩を動かした際に「ゴリゴリ」「ポキポキ」あるいは「ジョリジョリ」といった異音を感じるケースがあります。これらの音は、医学的には轢音(れきおん)と呼ばれます。 この異音が発生する主な原因は、断裂してしまった腱板の断端やささくれた部分が、肩を動かすことによって関節内の骨や組織と擦れ合ったり、引っかかったりするためです。 とくに腕を上げ下げしたり、回したりするような動作の際に、肩の奥で何かが擦れるような、あるいは引っかかるような感触と共に音が聞こえます。 ただし、肩の関節は複雑な構造をしており、異音が発生する原因は腱板断裂だけではありません。 そのため、音がするからと言って必ずしも再断裂を意味するわけではないのですが、他の症状と共に異音が気になる場合は、専門医へ相談しましょう。 腱板が再断裂した際の治療方法 腱板が再断裂した際は以下の治療法が用いられます。 保存療法 手術療法 再生医療 治療方法を知ることで不安の軽減につながります。 保存療法 一般的に、外傷によって腱板断裂を認めた際には、三角巾で数週間安静を保ちます。断裂部そのものが完全に修復治癒する場合はないものの、約7割は症状が軽快すると考えられているのが一般的です。 仮に腱板断裂に加えて肩関節周囲炎を合併し、強い夜間痛を認めた場合には、炎症を抑制する副腎皮質ホルモンと鎮痛作用を有する麻酔剤を肩峰下滑液包に局所的に注射して症状推移を経過観察します。 断裂部以外の健常に残っている腱板機能を活性化させることが重要となります。このような腱板機能をリハビリ訓練する手段は有効と考えられるでしょう。 また、ストレッチ運動で腱板断裂の完全な治癒は期待できませんが、関節の可動域を良好にする、あるいは腱板周囲の筋肉群の緊張を和らげて肩の痛みを軽減させる効果が期待できます。 手術療法 保存療法で肩の痛みや動きが改善しない場合、関節鏡視下手術や直視下手術を検討します。関節鏡視下手術は身体への負担が軽く術後の痛みも少ないですが、断裂が大きい場合は直視下手術が選ばれる場合もあります。 腱板断裂は治療後に再断裂する可能性があり、縫合した糸と組織の摩擦が原因です。再断裂すると損傷が広がり修復は難しく、再手術の精神的負担も大きいため、術後の再発予防は重要になります。 手術方法に関わらず、再断裂を防ぐには術後約1カ月の患部固定が不可欠です。装具で固定するため、日常生活は大きく制限されます。長期固定で肩が固まる関節拘縮が起こりやすいため、防ぐには数カ月のリハビリ継続が大切です。 再生医療 腱板の再断裂に対して再生医療も選択肢の1つです。再生医療は、ご自身から採取した幹細胞を患部に注射する治療法であり、入院が不要です。 糸で縫い合わせる治療ではなく、注射による治療のため再断裂のリスクが少なくなります。また、長期間の固定を必要としないため日常生活への影響も最小限で済みます。 腱板断裂の治療において、再断裂のリスクを抑えたい場合は、再生医療も検討してみましょう。 こちらの動画でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=bKupVfsXpHM 腱板断裂(再断裂)を予防する方法 腱板が断裂するのを予防するには以下の方法があげられます。 手術前の栄養状態を改善する 日常生活で肩に負荷をかけないようにする 専門家指導のもと正しいリハビリをおこなう 難しいことではないので、1つずつ意識していきましょう。 手術前の栄養状態を改善する 手術を受ける前から、体の状態を整えておくことは、スムーズな回復と再断裂リスクの低減につながります。とくに高齢の方の場合、手術前の栄養状態が良好であるほど、手術後の再断裂リスクが低下するという報告もあります。(文献2) 私たちの体は、食べたものから作られています。腱や筋肉といった組織の修復には、タンパク質をはじめ、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素が不可欠なものです。 手術に向けて、日頃から主食・主菜・副菜のそろった栄養バランスの整った食事を心がけ、体に十分な栄養を補給しておくことが大切です。栄養状態を良好に保つことは、手術に備え、回復力を高めるための重要な準備と言えるでしょう。 日常生活で肩に負荷をかけないようにする 腱板断裂は、肩への繰り返しの負担や、一度に大きな負荷がかかることで発生しやすい状態にあります。そのため、初回の断裂予防はもちろん、手術後の再断裂を防ぐためにも、日常生活での肩への配慮が欠かせません。 具体的には、重い物を持つ動作は、肩関節や腱板に大きな負担を強いるため、できる限り避けるべきです。また、腕を急に高く上げる、手を体の後ろに回して物を取る、といった動作も、修復した腱板に予期せぬストレスを与える可能性があります。 日常生活の中で、肩に負荷をかけすぎないよう意識し、無理のない動作を心がけることが予防の第一歩となります。 専門家指導のもと正しいリハビリをおこなう 手術後のリハビリテーションは、肩の機能回復と再断裂予防のために非常に大切になります。 しかし、焦って頑張りすぎたり、自己流で過度なトレーニングをおこなったりすると、修復途中の腱板に負担がかかり、かえって再断裂のリスクを高めてしまう場合も少なくありません。 リハビリは、手術後の時期や肩の状態に合わせて慎重に段階を踏んで進める必要があり、リハビリの内容は以下のように多岐にわたります。 可動域を広げる練習 筋力を回復させるトレーニング 肩の安定性を高める運動 医師や理学療法士といった専門家は、個々の回復状態を評価し、リハビリプログラムを計画・指導してくれます。 その指示にしっかりと従い、正しい方法でリハビリに取り組むことが、回復への着実な方法であり、再断裂を防ぐためのポイントです。 腱板の再断裂の原因を理解して予防しよう 腱板の再断裂は、約16%の確率で発生します。その原因として、広範囲の断裂、加齢による腱板組織の機能低下、手術後の過度な負荷などが挙げられ、とくに広範囲に断裂が及んでいる場合、再断裂率は約50%に達することもあるのです。 再断裂が起こると、肩の痛み、可動域の制限、筋力低下といった、腱板断裂時と同様の症状が現れます。 腱板の再断裂を防ぐためには、専門家の指導に基づいたリハビリと、日常生活で手術した側の肩に負担をかけすぎないように注意が必要です。 万が一、腱板が再断裂してしまった場合、保存療法や手術療法が主な治療法となります。しかし近年では、再生医療も選択肢の1つとして考えられるようになりました。 腱板の再断裂は予防可能なので、原因をよく理解し、再断裂を招かないよう注意深く生活しましょう。 参考文献 (文献1) 北原 博之, 矢部 嘉浩, 乗松 崇宏, 安達 信二, 瀬良 敬祐「鏡視下腱板修復術後の再断裂の検討」整形外科と災害外科 59巻 4号 pp713~716 2010年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/59/4/59_4_713/_article/-char/ja/ (最終アクセス:2025年5月14日) (文献2) 設楽仁「高齢者における肩腱板断裂手術後の再断裂:術前の栄養状態が鍵〜手術前の栄養状態が低いと、再断裂リスクがおよそ 5.6 倍〜」Journal of Bone and Joint Surgery 2024年 https://www.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2024/09/press_R060905.pd (最終アクセス:2025年5月14日)
2022.04.14 -
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「ただの肩こりだと思っていたけど、なかなか痛みが治まらない…」 「何かの病気かもしれない…」 そんな肩の痛みに不安を感じていませんか? 肩の痛みは肩こりや筋肉疲労・加齢によるものが多いですが、病気が関係している場合もあります。 また、肩の痛み(肩こり)はがんの初期症状として起こるケースもあり、痛みが数週間続く場合や、夜間に痛みが強くなる場合は注意が必要です。 本記事では、肩の痛みと病気の関係性、がんによる肩の痛みの特徴について解説し、注意すべき症状のポイントも紹介します。 肩の痛みで悩んでいる方や、病院に行くべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 肩の痛みの原因として疑われる病気 肩の痛みは、多くの場合「単なる肩こり」として片付けられがちですが、実は深刻な病気が隠れている可能性もあります。 とくに、痛みが長引く、夜間痛がある、腕の動きに制限が出る場合は注意が必要です。 広く知られている代表的な病気として、以下の3つがあります。 肩関節周囲炎 肩峰下インピンジメント症候群 腱板断裂 次に、それぞれの病気の原因・検査・治療について解説いたします。 肩関節周囲炎 肩関節周囲炎は、一般的に「四十肩」や「五十肩」とも呼ばれ、肩の関節や周囲の組織に炎症が起こることで痛みや可動域の制限が生じる病気です。 とくに、40〜50代以降に多く見られ、肩を動かすたびに痛みが走ることが特徴です。 肩関節周囲炎の原因 肩関節周囲炎の原因は明確には分かっていませんが、加齢に伴う組織の変性が関与していると考えられています。 肩の腱や関節包(関節を包む膜)が炎症を起こし、組織が硬くなってしまうことで、痛みと動きの制限が生じます。 肩関節周囲炎の多くは以下のような要因が関係しています。 加齢による組織の変化:肩の腱や関節包が硬くなりやすくなる 過度な肩の使用:スポーツや仕事などで肩を酷使することが影響 長期間の不動:ケガや手術後などで肩を動かさない期間があると発症しやすい 糖尿病などの基礎疾患:糖尿病の人は発症リスクが高い 肩関節周囲炎の検査 肩関節周囲炎の診断は、問診と身体診察を中心に行います。 医師が肩の動きをチェックし、特定の動作で痛みが出るかどうかを確認し、以下の検査が行われることがあります。 X線(レントゲン)検査:関節の変形や石灰沈着の有無を確認 超音波検査:腱や靭帯の炎症や損傷を評価 MRI検査:肩腱板の損傷や炎症の程度を詳しく調べる 肩関節周囲炎の治療 肩関節周囲炎の治療は、症状の程度に応じて行われます。 通常、次のような保存療法(手術をしない治療)が中心となります。 痛みのコントロール 消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用 ステロイド注射(炎症が強い場合に有効) リハビリ・運動療法 ストレッチ:肩の可動域を広げる運動 温熱療法:温めることで血流を改善し、筋肉の緊張を和らげる 理学療法:専門家の指導のもとで行うリハビリ 肩峰下インピンジメント症候群 肩峰下インピンジメント症候群は、肩を動かした際に肩の腱板(けんばん)や滑液包(かつえきほう)が肩峰(けんぽう)と衝突(インピンジメント)し、炎症や痛みを引き起こす疾患です。 とくに、腕を上げる動作で痛みが強くなり、スポーツや日常生活に支障をきたすことがあります。 肩峰下インピンジメント症候群の原因 肩峰下インピンジメント症候群の主な原因は、肩関節の構造や動きの異常により、腱板や滑液包が繰り返し圧迫されることです。 具体的には、以下の要因が関係しています。 過度な肩の使用:野球やテニス、水泳など、肩を頻繁に使うスポーツによる負担 肩関節の不安定性:筋力低下や不適切な肩の動作が原因で、腱板への負担が増える 加齢による変化:40歳以上で腱板が弱くなりやすく、衝突が起こりやすい 骨の形状異常:肩峰の形が先天的に鋭利な形をしている場合、腱板が圧迫されやすい 肩峰下インピンジメント症候群の検査 肩峰下インピンジメント症候群の診断では、医師による問診と身体診察が重要で、以下のような検査が行われます。 Neer(ニア)テスト・Hawkins(ホーキンス)テスト 腕を特定の角度に持ち上げた際に痛みが出るかどうかを確認するテスト X線(レントゲン)検査 肩峰の形状や骨の異常を確認し、肩関節の構造的な問題をチェック 超音波検査・MRI検査 腱板や滑液包の炎症・損傷の有無をより詳しく評価 肩峰下インピンジメント症候群の治療 治療は、保存療法(手術をしない方法)が基本となりますが、重症例では手術が検討されることもあります。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静と負荷の軽減:痛みが強い場合は、過度な動作を控える 消炎鎮痛剤(NSAIDs):痛みと炎症を抑える ストレッチ・筋力強化:肩甲骨周りや腱板の筋肉を鍛えるリハビリ ステロイド注射:炎症が強い場合、一時的に痛みを和らげるために使用 ◆手術療法(重症例の場合) 保存療法で改善しない場合、関節鏡を用いた肩峰下除圧術(肩峰の一部を削る手術)などが検討される 腱板断裂 腱板断裂(けんばんだんれつ)は、肩関節を支える筋肉の腱(腱板)が部分的または完全に切れてしまう疾患です。 とくに中高年に多く見られ、肩の痛みや腕の上げづらさが特徴です。 放置すると肩の機能が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。 腱板断裂の原因 腱板断裂の原因は、大きく分けて加齢による変性と外傷の2つがあります。 ◆加齢による変性(変性断裂) 加齢に伴い腱板の組織が徐々に摩耗し、断裂しやすくなることです。 40歳以降になると、腱板への血流が低下することで修復能力が衰え、自然に断裂することもあります。 また、スポーツや仕事で肩を繰り返し使うことによる負担の蓄積も、変性断裂のリスクを高める要因となります。 ◆外傷(外傷性断裂) 転倒して肩を強く打ったり、腕を強く引っ張られたりすることで腱板が急激に損傷し、断裂が発生することです。 とくに、重い荷物を持ち上げる際に過度な負荷がかかると、腱板が損傷しやすくなります。 さらに、野球・テニス・ラグビーなどのスポーツや、交通事故による強い衝撃も外傷性断裂の原因として挙げられます。 腱板断裂の検査 腱板断裂は、問診と身体診察に加え、画像検査によって診断されます。 ◆身体診察 ドロップアームテスト:腕を持ち上げた状態からゆっくり下げる際にコントロールできず落ちてしまうか確認 ペインフルアークサイン:腕を横に上げる際に一定の角度で痛みが出るかを確認 ◆画像検査 X線(レントゲン):骨の変形や肩峰下の狭小化を確認 超音波検査:リアルタイムで腱板の動きを評価し、小さな断裂も発見しやすい MRI検査:腱板の損傷の程度(部分断裂か完全断裂か)を詳細に診断 腱板断裂の治療 腱板断裂の治療は、断裂の程度や患者の年齢・活動レベルによって異なります。 軽度の腱板断裂や、高齢者で手術を避けたい場合には、保存療法が選択されますが、重症の場合は手術療法が検討されます。 ◆保存療法(軽度の部分断裂や高齢者の場合) 安静・負担の軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) リハビリテーション ステロイド注射 ◆手術療法(完全断裂や保存療法で改善しない場合) 関節鏡視下腱板修復術 腱移植術 人工関節置換術 石灰沈着性腱板炎 石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)は、肩の腱板にリン酸カルシウム(石灰)が沈着し、炎症や強い痛みを引き起こす疾患です。 40〜50代の女性に多く見られ、夜間や突然の激しい痛みが特徴です。 石灰沈着性腱板炎の原因 石灰沈着性腱板炎の正確な原因は明確には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。 腱板の血流低下:加齢や血流の減少により、腱板の一部が石灰化しやすくなる 過剰な負荷:肩を頻繁に使う動作が多い人は、腱板に負担がかかり石灰沈着のリスクが上がる 体質的要因:特定の人に起こりやすく、遺伝的な影響も示唆されている 沈着した石灰が周囲の組織を刺激し、炎症を引き起こすことで強い痛みが発生します。 石灰沈着性腱板炎の検査 診断には問診と身体診察のほか、画像検査が用いられます。 X線(レントゲン)検査 超音波検査 MRI検査 石灰沈着性腱板炎の治療 石灰沈着性腱板炎の治療は、症状の程度に応じて保存療法と手術療法が選択されます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静・負担軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) ステロイド注射 リハビリテーション ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 超音波ガイド下洗浄療法 関節鏡視下手術 翼状肩甲骨(翼状肩甲) 翼状肩甲骨(よくじょうけんこうこつ)は、肩甲骨が正常な位置に固定されず、背中から浮き上がる状態を指します。 肩甲骨が翼のように突出することからこの名前がついています。 肩や腕の動かしにくさ、痛み、筋力低下などの症状を伴うことがあります。 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の原因 翼状肩甲骨の原因は、主に神経の障害と筋肉の異常に分けられます。 ◆神経の障害 長胸神経麻痺(前鋸筋の機能低下) 副神経麻痺(僧帽筋の機能低下) 肩甲背神経障害(菱形筋の機能低下) ◆筋肉の異常 筋萎縮や筋力低下 外傷や手術後の影響 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の検査 翼状肩甲骨は、視診・触診と機能検査を中心に診断されます。 ◆視診・触診 肩甲骨が背中から浮き上がっているかを観察 肩を動かしたときの肩甲骨の動きを確認 ◆機能検査 壁押しテスト(Wall Push-up Test) 壁に向かって両手をつき、腕立て伏せのように押したときに肩甲骨が異常に突出するかを確認 筋力テスト:前鋸筋・僧帽筋・菱形筋などの機能を評価 ◆神経検査 電気生理学的検査(筋電図)で神経の損傷の有無を調べる MRIや超音波検査を用いて神経や筋肉の状態を確認することもある 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の治療 翼状肩甲骨の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) リハビリテーション 装具療法 理学療法(電気刺激療法) ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 神経移行術 筋移植術 肩甲骨固定術 反復性肩関節脱臼 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいけんかんせつだっきゅう)は、一度肩関節が脱臼した後に、軽い衝撃や日常動作でも繰り返し脱臼してしまう状態を指します。 とくに若年層のスポーツ選手に多く見られ、肩の不安定感や痛みを伴うことが特徴です。 反復性肩関節脱臼の原因 反復性肩関節脱臼の主な原因は、外傷による関節の損傷と関節の構造的な問題の2つに分けられます。 ◆外傷による関節の損傷 初回の脱臼時に、肩関節の関節唇(かんせつしん)という軟部組織が損傷し、関節が不安定になる(バンカート損傷) 腕を強く後方に引っ張られるような動作で、関節の前方部分が緩み、脱臼しやすくなる スポーツ(野球・バスケットボール・柔道など)や転倒による外傷が原因になることが多い ◆関節の構造的な問題 関節の緩さ(関節弛緩性):生まれつき関節が柔らかい人は、靭帯や関節包が伸びやすく、脱臼しやすい 筋力不足:肩周りの筋力が弱いと、関節の安定性が低下し脱臼しやすくなる 骨の形状異常:関節窩(かんせつか)という肩甲骨側の受け皿が小さい場合、関節がはまりにくく脱臼を繰り返す 反復性肩関節脱臼の検査 反復性肩関節脱臼の診断には、問診・身体診察と画像検査が行われます。 ◆問診・身体診察 過去の脱臼歴、発生状況を確認 肩の不安定感や可動域をチェック 不安試験(Apprehension Test) ◆画像検査 X線(レントゲン)検査 MRI検査 CT検査 反復性肩関節脱臼の治療 反復性肩関節脱臼の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症例・手術を避けたい場合) リハビリテーション 装具療法 生活習慣の改善 ◆手術療法(重症例・保存療法で改善しない場合) バンカート修復術 骨移植術(ラタジェ手術) 関節包縫縮術 肩の痛みとがんの関係性 肩の痛みは通常、肩こりや筋肉疲労、関節の疾患などによって引き起こされますが、まれにがんが原因となる場合もあります。 通常の治療で改善しない長期間続く痛みは注意が必要です。 がんによる肩の痛みの特徴 がんが原因となる肩の痛みにはいくつかの特徴があります。 まず、安静時でも痛みが続くことがあり、通常の肩こりは動かすと痛みが出るのに対し、がんによる痛みは夜間や寝ている間に強くなることがあります。 また、痛みが徐々に強くなり、鎮痛剤が効きにくくなることや、肩だけでなく首、背中、腕にも違和感を感じる場合があります。 しびれや筋力低下を伴うこともあり、これらの症状が現れる場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。 肩の痛みを改善・予防するセルフケア方法 肩の痛みは日常的な動作や姿勢から来ることが多いため、普段からのセルフケアがとても重要です。 本章では、肩の痛みを改善したり予防したりするためのストレッチと入浴を取り入れた方法を紹介します。 ストレッチ 肩の筋肉を柔軟に保つことは、肩の痛みを予防し、すでに痛みを感じている場合にも症状を和らげる効果があります。 肩周りの筋肉を適切に伸ばすストレッチを行うことで、血流が改善され、筋肉の緊張をほぐすことができます。 肩回し運動 肩を前後に回すことで、肩の筋肉をほぐすことができます。 両肩を耳に向かって持ち上げ、肩甲骨を回すようにして前後にゆっくり回します。 10回程度前回しと後回しを繰り返します。 肩甲骨ストレッチ 肩甲骨周りの筋肉をストレッチすることで、肩の可動域を改善し、痛みの軽減に繋がります。 立って、または座って両手を肩に置き、肘を大きく円を描くように回します。 回す方向を変えながら10回程度行い、肩甲骨を意識して動かすようにしましょう。 肩と腕の伸ばしストレッチ 肩の痛みがひどくなる前に、肩と腕を伸ばすストレッチを行うことで、予防効果が高まります。 片手をまっすぐ前に伸ばし、反対の手でその手首を引き寄せます。 肩を意識して10秒間伸ばし、その後反対側も行います。 入浴 入浴は肩の痛みを改善するために非常に効果的な方法です。 お湯の温度や入浴の方法を工夫することで、よりリラックスでき、肩の痛みを緩和できます。 温かいお湯に浸かることで血流が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。 温浴によるリラックス 肩の痛みがある場合は、ぬるめのお湯(38〜40℃程度)にゆっくり浸かると、筋肉がリラックスし、肩こりの改善に効果があります。 お湯に浸かることで、血行が促進され、痛みの原因となる筋肉の緊張が和らぎます。 半身浴 肩だけでなく、全身を温めるために、半身浴を行うのも効果的です。お湯が肩にまで浸かるようにし、肩を温めることができます。 さらに、半身浴は長時間お湯に浸かることができ、肩だけでなく全身の疲労を軽減することにも繋がります。 入浴後のストレッチ 入浴後は筋肉が柔らかくなっているため、さらにストレッチを行うことで効果が高まります。 肩甲骨や腕を伸ばすストレッチを行うことで、筋肉がさらにほぐれ、肩の痛みの予防や改善に繋がります。 肩の痛みで病院を受診すべきタイミングは? 肩の痛みが日常的に発生しても、多くは軽度の筋肉疲労や肩こりが原因です。 しかし、肩の痛みが3週間以上続く、安静時や夜間に痛みが悪化する場合、またはしびれや筋力低下、体重減少、発熱など他の症状が伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。 とくに、肩の痛みが首や背中、腕に広がる場合や、激しい外傷を受けた後は早期受診が必要です。 また、40歳以上の方や、がんや心臓病の既往歴がある場合、肩の痛みが他の疾患のサインとなることもあります。 肩の痛みを軽視せず、適切な診断を受けることで、早期治療が可能となり、症状の悪化を防ぐことができます。 再生医療|肩の痛みに対する治療選択肢 再生医療は肩の痛みに対する新しい治療法として注目されています。 再生医療では、幹細胞を用いて自然修復力を高めます。 PRP療法や幹細胞治療など、患者様自身の血液や幹細胞を用いて肩関節の炎症や軟部組織の損傷にアプローチする治療法です。 再生医療は、手術・入院を必要としないため、治療期間が短い傾向があります。 肩の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|肩の痛みから考えられる病気を理解して適切な治療や検査を受けよう 今回は肩の痛みで疑うべき病気とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などについて詳しく解説してきました。 「肩が痛い」、「肩が上がらない」などの自覚症状があり、日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けましょう。 また、これら整形外科的な治療以外にも、肩の痛みに対しては「再生医療」という新しい治療法も選択肢となります。 再生医療については、以下の動画もあわせてご覧ください。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=YQsu_VT2ZGqSNB2v 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
2022.03.16 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩が痛くて腕が上がらない」 「夜中にズキズキとした痛みで目が覚めてしまう……」 辛い肩の症状に、毎日悩まされている方もいるでしょう。日常生活への支障が出る症状の原因として、肩の腱が切れてしまう「腱板(けんばん)断裂」が疑われます。 この記事では、腱板断裂(損傷)における診断で有効な超音波(エコー)検査の特徴について詳しく解説します。エコー所見や腱板断裂の治療方法についても紹介するので、診察を受けるか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。 腱板断裂における超音波(エコー)検査の特徴 腱板(けんばん)断裂における超音波(エコー)検査は、患者様の負担を抑えつつ正確な診断を行うために有効な検査方法です。 腱板断裂とは、肩の内部にある「腱板」という筋肉と腱の集まりが切れた状態を指します。 整形外科では、初診時にレントゲンを撮影し、症状のある部位や周辺部位に異常がないか確認します。ただし、腱板はレントゲンでは写らない組織であるため、腱板断裂の判断ができません。 診察時に腱板断裂が疑われる場合は、追加で超音波検査やMRI検査を行います。超音波検査の特徴について解説するので、肩の痛みで受診を検討している方は参考にしてください。 プローブを使用する 超音波検査では、皮膚の表面に透明なゼリーを塗り「プローブ」と呼ばれる小さなマイクのような形をした検査器具を肩に当てて検査します。プローブから発せられた超音波は、肩の中の筋肉や腱に反射し、その反射波を受信することで鮮明な画像としてモニターに表示されます。 検査で使うプローブは検査部位に合わせて選ぶ必要があり、肩関節に使用されるのは「リニア型」や小型の「コンベックス型」と呼ばれる種類です。 腱板断裂の場合、超音波検査で筋肉や腱の厚さ、断裂の位置や範囲を正確に確認できます。プローブを動かしながら微妙な位置調整ができるため、小さな断裂や部分的な損傷を見逃さずに観察できる点はメリットです。 体に傷をつけない 超音波検査は、体に傷をつけず負担の少ない検査です。レントゲン検査による放射線被ばくの心配もなく、MRI検査のような強力な磁場も使用しません。 そのため、妊娠中の方や体内に金属がある方でも安心して検査を受けられます。検査に伴う痛みもほとんどなく、患者様への身体的な負担が少ない検査といえます。 超音波検査は、症状の経過観察や治療効果の判定を目的として容易に繰り返し実施できる検査方法です。 リアルタイムで観察が可能 超音波検査では、筋肉や腱の状態をリアルタイムで観察できるのも特徴の1つです。 肩を動かした際に起こる筋肉の伸縮や腱の動き、断裂部の変化などを即座に画像で確認できるため、静止画像ではわからない機能的な診断ができます。 これにより、動作による痛みの原因や断裂範囲を明確に把握できます。治療効果や経過を定期的に診断することで、患者様に適した治療計画を立てるのに役立ちます。 腱板断裂に対する超音波(エコー)検査の手順 腱板断裂が疑われる際に行う超音波(エコー)検査の手順は、以下のとおりです。 ①椅子やベッドに座るか仰向けになり、肩関節を軽く伸ばした状態にする ②肘を曲げる筋肉につながる腱である上腕二頭筋長頭腱(ちょうとうけん)と腱の通る溝である結節間溝(けっせつかんこう)を中心にエコーで確認する ③肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)や腱が付いている小結節付着部を中心に確認する ④プローブを肩の上方へ移動させて腕を上げる筋肉につながる腱である棘上筋腱(きょくじょうきんけん)や、後方へずらして腱全体を確認する ⑤棘上筋腱全体の断面をエコーで調べたあと、腕を外側にひねるための筋である棘下(きょくか)筋腱と付着部を腱の長さに沿って確認する ⑥さらに、肩の後方の骨である肩甲棘(けんこうきょく)の中央で肩後方の筋肉である棘下筋の厚みを両側計測する 腱板断裂の超音波検査では、断裂しやすい部分を重点的に観察し、腱の厚みや断裂の状態などを詳しく確認します。 肩甲下筋腱を調べる際は、患者様に肩を内側や外側にひねっていただき、腱や小結節付着部を確認します。また、棘上筋腱は腱の長さに沿って見るだけでなく、断面からの確認も重要です。 検査自体は10〜15分程度で終了し、ほとんど痛みを感じません。検査後はすぐに日常生活へ戻れるため、安心して検査を受けられます。 腱板断裂(損傷)のエコー所見 超音波(エコー)検査を行うと、腱板の各部位に生じた断裂や損傷の様子が確認できます。腱板は肩甲骨と腕の骨をつなぐ複数の筋肉や腱で構成されており、損傷部位によって画像所見は異なります。 なかでも、腱板断裂(損傷)が多い部位は、棘上筋と棘下筋です。 ここでは、腱板断裂で良くみられるエコー所見を紹介するので参考にしてください。 肩甲下筋腱断裂・損傷 腕を内側にひねる動作や肩関節を安定させる肩甲下筋腱が損傷すると、エコーでは腱の連続性が途切れ、不規則な陰影が映ります。部分的な損傷であれば腱の厚みが減少し、完全断裂の場合は腱が途切れて隙間が見えるのが特徴です。 断裂部分には、炎症による液体が溜まるケースも少なくありません。肩を内外にひねる動作を加えて検査すると、腱の動きが乏しく見えるのが確認できます。 肩甲下筋腱の断裂は、他の腱板筋腱に比べて頻度は低いものの、棘上筋腱断裂や棘下筋腱断裂と合併して発生する症例が多いといわれてます。 棘上筋腱断裂 腕を横に上げる動作において肩関節を安定させる棘上筋腱は、腱板のなかでも損傷を受けやすく、エコーでは断裂部分が鮮明に確認できます。正常な棘上筋腱は連続して滑らかな画像ですが、損傷や断裂があると腱の連続性が途絶え、低エコー(黒っぽく)に映るのが特徴です。 完全断裂になると断裂部の両端に隙間が生じ、腱が骨から離れている様子も観察できます。また、断裂部分には炎症による液体が溜まり、エコー画像で鮮明に写ります。 断裂・損傷部位に限局して、検査時の圧痛を認めた場合、棘上筋腱が疼痛の主な原因になっているケースが多いのも事実です。腱板断裂のなかで、とくに頻度が高いのは棘上筋腱断裂とされています。 棘下筋断裂 腕を外側にひねる動作に関与する棘下筋腱に断裂や損傷がある場合、エコーでは腱の形状が乱れ、途切れて見えます。正常な棘下筋腱は均一で整った線状に映りますが、断裂すると腱が薄くなったり、部分的に欠損したりします。 棘下筋は薄いため、左右を比較するのが重要です。断裂・損傷がある場合、頭側に低エコーに映るのが特徴です。 また、周囲には炎症による液体が貯留しているケースも少なくありません。腕を回しながら検査すると、損傷の程度や機能的な影響をリアルタイムで判断できるため、治療計画を決定する重要な手がかりになります。 棘下筋萎縮 棘下筋が長期間にわたり損傷・断裂したまま放置されると、筋肉が萎縮して薄くなります。エコーでは筋肉のボリュームが減少し、筋線維の模様が消失して白く映るのが特徴です。 棘下筋萎縮は投球動作で発症するケースが多く、進行すると肩の運動能力が低下し、腕を回す動作が難しくなります。エコーによって筋肉の厚さを測定し、正常な反対側の肩と比較すると、萎縮の程度や回復する可能性を把握できます。棘下筋萎縮は、損傷から時間が経過した際に見られる重要なエコー所見です。 腱板断裂の治療方法 腱板断裂の治療方法は、損傷の程度や患者様の年齢・生活スタイルを考慮して決められます。 主に、保存療法・手術療法・再生医療の3つの選択肢があり、症状やライフスタイルに合わせた治療方法を医師と相談して決定します。 それぞれの治療方法について紹介するので、診察を受ける際の参考にしてください。 治療方法に関する詳細は、こちらの記事も参考にしてください。 保存療法 保存療法は、手術を行わずに症状の改善を目指す治療方法の総称です。具体的な治療内容は以下のとおりです。 三角巾を使用して数週間安静にする 内服薬・外用薬を処方する 肩関節内に注射する ストレッチや筋力トレーニング 腱板断裂の治療では、三角巾を使用して肩の安静を保ち、負担を軽減します。痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤の内服薬や外用薬(湿布や塗り薬)が処方されるケースが多くみられます。 また、炎症を抑えるためのステロイド注射や、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射を肩関節内や滑液包内に行う場合も少なくありません。 症状が落ち着いてきたら、理学療法を併用したストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行います。理学療法士による肩関節の可動域訓練や周囲の筋力トレーニング、正しい肩の使い方を習得し、症状の軽減と日常生活を送れるようにするのが目的です。 手術療法 手術療法は、保存療法で十分な効果が得られない場合や、断裂が大きく活動性の高い方、確実な機能回復を望む方などに検討されます。手術療法で検討されるのは、以下4つです。 鏡視下腱板修復術 腱板移植 人工関節置換術 リバース型人工関節置換術 小さな切開でカメラ(関節鏡)を肩関節に挿入し、モニターで確認しながら行う鏡視下腱板修復術は、従来の手術に比べて体への負担が少なく、術後の回復も早いメリットがあります。 腱板断裂が大きく鏡視下で縫い合わせるのが困難な症例では、太ももの裏側や背中から腱を採取し、移植する腱板移植を選択するケースもあります。 ほかにも、人工関節を肩関節に取り付ける人工関節置換術やリバース型人工関節置換術も選択肢の1つです。 手術で腱を修復した後は、断裂の大きさや修復方法に応じた適切なリハビリテーションを行い、機能回復訓練を行うのが重要です。 再生医療 再生医療は、自己の細胞を用いて腱板の自然治癒力を活かす治療方法です。当院「リペアセルクリニック」では、主に以下の治療方法を実施しています。 幹細胞治療 PRP治療 幹細胞治療では、脂肪細胞から採取した幹細胞を培養し、肩関節内に注射して患部に幹細胞を届けます。 一方、血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出して注射するPRP治療は炎症を抑える目的で行われるため、症状に適した治療方法を選択するのが重要です。 どちらの治療方法も自己細胞を使用するため、副作用やアレルギーのリスクも低く、安全性の高い治療として注目されています。 肩の痛みに対する治療方法でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 まとめ|腱板断裂(損傷)で行われるエコー検査への理解を深めよう 肩の痛みや腕の上がりにくさを引き起こす腱板断裂(損傷)に対する超音波(エコー)検査は、迅速かつ安全に診断できる検査方法です。 超音波検査ではプローブと呼ばれる検査器具を使用し、傷をつけずにリアルタイムで腱板の状態を確認できます。 腱板断裂(損傷)の治療方法は、注射やリハビリなどの保存療法、断裂した腱を修復する手術療法、自己細胞を活用する再生医療など多岐にわたります。治療方法を選択する際は、超音波検査を含む精密な診断に基づき、医師と十分に話し合って決定するのが大切です。 本記事を通じて、腱板断裂と超音波検査や治療法への理解を深め、ご自身の状態に適した医療を選択する参考になれば幸いです。
2021.08.18 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板損傷の画像診断|CT、MRI以外、関節の造影検査をご存知ですか 肩関節疾患の診断において、CTや、MRIの飛躍的な進歩にもかかわらず、造影検査は依然として重要な補助診断法の一つです。この造影検査方法には3種類あります。 陽性造影:ヨード製剤を用います。 陰性造影:空気を用います。 二重造影:ヨード製剤と空気の両方を用います。 この3種類の中では、「1)陽性造影」が広く行われています。 動態関節造影と肩峰下滑液包造影 それぞれの方法をご説明します。 動態関節造影 イメージ透視の映像をビデオなどに連続的に記録する方法で、造影剤のダイナミックな移動が観察でき、所見の見落としを防ぐ事もできるので、肩関節造影時に同時に行っています。 肩峰下滑液包造影 主に腱板滑液包面断裂の診断に用いられています。造影剤(ウログラフイン、イソビストなどの水溶性のもの) 5mLと1%キシロカイン5mLを混和した注射器に、23G短針を接続して、立位または座位で透視下にて、肩峰外側縁のやや下方から AHI(acromio-humeral interval:肩峰前下面の骨皮質と上腕骨頭の頂点との間の距離)の中上 1/3を目標にして、肩峰下滑液包内に刺入します。 二重造影では造影剤1mLと空気10mLを注入します。造影剤が腱板内に入り込んだり、腱板滑液包、局所に貯留したりする場合は腱板滑液包面断裂を疑います。 腱板断裂の関節造影について 関節造影について詳しくご説明します。 腱板断裂で疑われる画像所見 造影剤が肩峰下滑液包に漏出すれば、腱板の全層断裂 (full-thickness tear)の診断が確定します。外旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘上筋腱の断裂を疑い、内旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘下筋腱の断裂を疑います。 scapular Y像 腱板の断裂部への造影剤の漏出だけでなく、水平断裂像の描出も可能です。長期間経過した腱板小断裂や腱板不全断裂 (関節包面断裂や水平断裂)の描出は難しいので、他動的に肩関節をよく動かして、関節内圧を上げてから再度調べる必要があります。 動態撮影を併用すると、断裂の大きさや断裂部位がより明らかとなります。また、腱板滑液包面断裂の診断には、肩峰下滑液包造影が用いられます。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます 一般的な肩関節造影法について 以下で詳しくご説明いたします。 前方刺入法 ① 検査前にヨードや局所麻酔薬に対するアレルギー反応の有無について確認します。 ② 透視台の上に仰臥位になって貰います。 ③上肢を体側に接して透視台の上に置いた状態で外旋位になるように体位を調整します。 ④ 烏口突起を中心に広範囲に消毒をします。 ⑤ 1%キシロカイン10mLの入った注射器に21Gスパイナル針を接続。 ➅透視下にて烏口突起先端の1cm尾側で、1cm外側から関節裂隙に垂直に刺入。 ⓻少量の局所麻酔薬を注入して抵抗がないこと、上肢を少し内外旋して針先が関節内にあることを確認。 ⑥ 21Gスパイナル針を留置したまま 造影剤 (ウログラフィン、イソビストなどの水溶性のもの) 10mLと1 %キシロカイン10m Lを混和した延長チューブ付きの注射器に交換。 透視下にて確認しながら、ゆっくり注入します。(注入量は約 20rnLとされています。) ⓻造影は内旋位、外旋位および挙上位の3枚の前後像を撮影。 ⑧肩関節疾患に応じて軸射位像と scapular Y像などの撮影を追加します。 正常の画像所見 内旋位像 肩関節の前方組織が弛緩するので、内側に肩甲下筋滑液包(subscapularis bursa)、内下方に関節包前部 (anterior pouch)、および下方に関節包下部(腋窩陥凹; axillary pouchまたは inferior pouch) が描出されます。 外旋位像 肩関節の前方組織が緊張するので、肩甲下筋滑液包、関節包前部、および関節包下部は縮小します。外側に上腕二頭筋長頭腱腱鞘 (bicipital tendon sheath) が描出されます。 挙上位像 肩関節の下方組織が緊張するので、関節包下部は縮小します。上方に上腕二頭筋長頭腱腱 鞘、内側に肩甲下筋滑液位が描出されます。 軸射位像 関節窩の前縁と後縁に関節唇が三角形の陰影として描出され、前方には肩甲下筋滑液包も描出されます。 scapular Y像 前方に肩甲下筋滑液包、前下方に関節包前部、下方に関節包下部、および後下方に関節包後部 (posterior pouch)が描出されます。 以上、肩腱板損傷の画像診断について、CT、MRI以外の検査方法である関節の「造影検査」についてご説明いたしました。今回は、専門的な内容で難しかったかもしれませんが、ご不明な点があればご遠慮なくお問い合わせください。 少しでも参考にしていただけたなら幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の検査方法もご参考下さい 腱板損傷の診断法、超音波(エコー)による画像検査について
2021.08.04 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: 肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: 肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: 腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます 肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: 背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: 患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: 患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
2021.04.01 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷のリハビリには、損傷を受けていない腱や筋肉の機能向上や患部に負担をかけないための動作改善といった効果があります。 しかし、リハビリを進めていくにあたりいくつか注意点がありますので、症状の悪化を防ぐためにも、リハビリの正しい実践方法を覚えましょう。 本記事では、腱板損傷におけるリハビリの効果や代表的なリハビリプログラムを解説します。 リハビリを通して、腱板損傷の症状を緩和させたい方は参考にしてみてください。 腱板損傷はリハビリだけで治るのか? 腱板損傷の治療において、リハビリで改善が可能かどうかは損傷の程度によって異なります。 リハビリで治る可能性があるケース ・損傷が軽度である(部分断裂) ・痛みや可動域制限が比較的軽い ・年齢や活動レベルによっては保存療法が有効 リハビリだけでは難しいケース ・完全断裂や広範囲の断裂がある場合 ・肩の機能障害が重度である ・筋力低下や夜間痛が強い そもそも、腱板とは肩に付いている4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の総称で、腱板損傷はこれらの筋肉の一部が損傷する「部分断裂」または完全に切れる「完全断裂」に分類されます。 現在、腱板損傷の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。 自分の脂肪などから採取した細胞を培養・増殖させて注射することで、切れた腱を修復し、肩の機能を回復させることを目指す治療法です。 従来の手術と違い、体に負担をかけずに普段の生活を続けながら治療でき、傷跡や術後の後遺症の心配もほとんどありません。 例えば、実際に当院で治療を受けられた60代女性の患者様は、「手術しかない」と診断されていたにもかかわらず、幹細胞治療によって半年後には痛みも軽減し、スムーズに肩が動かせるようになったという回復例もあります。 >>腱板損傷の症例に関してはこちら 現在、リペアセルクリニックでは、腱板損傷に関する再生医療の無料電話相談を受け付けております。 「切らずに治す可能性を知りたい」という方は、ぜひ一度お電話でご相談ください。 再生医療で治療した際の実例は以下の動画でも紹介しています。 https://youtu.be/CFNAS_lUZKM?feature=shared 腱板損傷におけるリハビリの目的や期間 腱板損傷におけるリハビリの目的は、損傷していない筋や腱の機能向上や損傷した部位に負担をかけないための動作改善です。 腱板損傷のリハビリ期間の目安は、日常生活への復帰なら2〜3カ月程度、スポーツや重労働の仕事への復帰であれば6カ月程度です。 個々の状態によっても、リハビリ期間は変わってきます。自身の状態を把握したい方は、以下の記事で紹介している腱板損傷の筋力や痛み確認テストを試してみてください。 腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラム ここでは、腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラムを紹介します。 ・筋力トレーニング ・ストレッチ ・日常生活の訓練 順番に見ていきましょう。 筋力トレーニング 機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 腱板は体の深いところに位置するため「インナーマッスル」と呼ばれます。そのため、腱板損傷のリハビリを目的とした筋トレは、インナーマッスルに焦点を当てたトレーニングが効果的です。 たとえば、腱板を鍛えるトレーニングでは、筋トレ用のゴム製チューブやタオルを活用して、対象部位を効果的に鍛えるやり方が有効です。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れたときの痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされたときの痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、ほかの腱板に対する運動をおこなうようにします。 ストレッチ ストレッチには、腱板の可動域を広げたり、筋肉の緊張状態をほぐしたりする効果があります。 たとえば、肩の上げ下げや肩回しの動きは腱板損傷の回復に効果が期待できます。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理なく進めましょう。 日常生活の指導 腱板損傷の症状を悪化させないために、日常生活における動作の指導もおこなわれます。 以下は、日常生活のなかで腱板に負荷がかかりやすい動作の一例です。 ・衣服の着脱 ・荷物の持ち運び ・寝るときの姿勢 損傷を起こしている部位や症状の程度に応じて、個々に合った動作指導がおこなわれます。 腱板損傷のリハビリでやってはいけない3つのNG行為 腱板損傷のリハビリに取り組む際、やってはいけない行為があります。 ・発症直後に無理をして動かすこと ・焦って負荷をかけすぎること ・リハビリを怠ること 順調な回復を図るためにも、紹介する3つのポイントをおさえてリハビリに臨みましょう。 発症直後に無理をして動かすこと 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、無理に関節を動かすと疼痛を助長させてしまうリスクがあります。そのため、発症直後は三角巾を含む固定具を用いて患部の安静を第一優先しなければなりません。 段階的回復を目指すためにも、リハビリは患部の炎症が落ち着いてから進めましょう。 現在、腱板損傷の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 焦って負荷をかけすぎること リハビリ開始時は、自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じずに運動できれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。 ただし、腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツにたとえると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要する場合があります。 そのため、リハビリは焦らず取り組んでいきましょう。 リハビリを怠ること 腱板損傷を発症してから長期間が経過している場合は、関節包の硬化による筋肉の伸張性低下や、疼痛による関節拘縮を起こすケースが多くなります。 リハビリを怠ると症状が慢性化する可能性があるので、医師の指示に従って継続的にリハビリを実施しましょう。 肩の腱板断裂を放置するリスクについてはこちら▼ まとめ|腱板損傷に効果的なリハビリを覚えて回復を目指そう 腱板損傷では受傷してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。 そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 本記事で紹介した代表的なリハビリのプログラムを中心に、専門医の指導のもと無理のない範囲で進めていきましょう。 もし手術を勧められ迷われている場合は、注射だけで肩腱板の再生を目指す幹細胞治療(再生医療)という選択肢もあります。 この治療は、手術や長期入院を必要とせず、仕事や日常生活を続けながら取り組むことが可能です。 また、ご自身の細胞を使うため、副作用やアレルギーのリスクも極めて低く、自然な形で組織の再生を促す方法として注目されています。 お電話でのご相談も受け付けておりますので、まずは話を聞いてみることから始めてみませんか? 以下の動画でも再生医療の詳しい説明をしているので、治療の進め方や効果が気になる方は参考にしてみてください。 ▼再生医療に関する問い合わせはこちら >>(こちらをクリックして)今すぐ相談してみる https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=bKupVfsXpHM&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Ffuelcells.org%2F&source_ve_path=Mjg2NjY
2021.03.22 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板断裂は腕を上げるたび鋭い痛みがあるため、少しでも痛みを和らげたいという方も多いのではないでしょうか。 本記事では、肩腱板断裂の痛みを緩和する5つの方法と治療法について詳しく解説します。 肩腱板断裂の痛みを和らげるには症状に合わせた対処法が重要となり、自己判断で行うと痛みが悪化するリスクがあるため注意しながら行う必要があります。 もし、現在受けている治療で「痛みがなくならない」「期待した効果が見られていない」という方は、先端医療である再生医療を検討してみてください。 再生医療は、肩腱板断裂による痛みの根本的な改善が期待できる治療法として注目されています。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、肩腱板断裂を手術せずに治療できる再生医療に関する情報や症例を配信中です。 「肩の痛みをとにかく早く治したい」「肩腱板断裂を根本的に治したい」という方向けに有益な情報を公開しているので、ぜひこの機会にご参考ください。 \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ 肩腱板断裂の痛みを和らげる5つの方法 肩腱板断裂の痛みを和らげるには、以下5つの方法があります。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 痛くない範囲でのストレッチ 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える これらは自宅でも実践できる方法ですが、医師の指導のもと症状や生活スタイルに合わせて取り入れていきましょう。 本章ではそれぞれの対処法を詳しく解説していきます。 また、以下の記事では肩腱板断裂が放置では治らない理由を紹介していますので、気になる方は参考にしていただけると幸いです。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 温冷療法は、症状や時期によって温めたり冷やしたりすることで効果的に痛みを軽減する対処法です。 ケガをしてから48時間以内の急性期は冷やすことで炎症を抑制し、それ以降は温めて血行を促進します。 冷却には氷嚢やアイスパックを、温めるにはホットパックや入浴を活用しましょう。 また、寒冷療法は15分以上の連続使用は避けて皮膚を保護するためにタオルを必ず挟むのがポイントです。(文献1) 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 日常生活では、正しい姿勢や腕の使い方を工夫すると肩への負担を大きく軽減できます。 とくに気をつけたいのは以下の3点です。 腕を上げすぎない 同じ姿勢を長時間続けない 重いものを持たない デスクワークでは、肘を机につけて支えると肩の負担を減らせます。 また、パソコン作業時はキーボードを体の正面に置き、マウス操作は肘を開きすぎないよう注意しましょう。 こまめに休憩を取り軽く肩を回すのも効果的です。 痛くない範囲でのストレッチ 痛くない範囲で行うストレッチは、肩周りの柔軟性を保ち痛みの軽減に期待できます。 まずは、壁に手をついて体を少しずつ前に傾けるストレッチから始めましょう。 ここでも痛みが出ない程度にゆっくりと動かし、無理な姿勢は避けます。 1回のストレッチは10秒程度を目安に、1日3回ほど実施するのがおすすめです。 徐々に可動域を広げていくと、日常生活での動きやすさも改善していきます。 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 肩腱板断裂の痛みが夜間に強くなる場合、枕の高さが合っていないのが原因の1つとして挙げられます。 枕が高すぎると肩に負担がかかり、痛みが増す可能性があるためです。 そのため、適切な高さの枕を選ぶと肩が自然な位置に保たれ負担が軽減します。 また、横向きで寝る際は肩を下にせず、クッションで支えると楽になるはずです。 夜間の痛みは睡眠の質を低下させて日中の活動にも影響を及ぼすため、枕の高さを調整して痛みの緩和対策をしましょう。 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える 肩腱板断裂の痛みを一時的に抑えるには、消炎鎮痛剤や湿布も有効です。 薬局で購入できる市販の痛み止めや湿布は、炎症を抑える効果があるためです。 湿布は冷感タイプと温感タイプがあるため、症状に合わせて使い分けましょう。 たとえば、炎症や腫れが強い場合は冷感タイプ、慢性的な痛みや筋肉のこわばりが気になる場合は温感タイプが適しています。 ただし、痛みを緩和する一時的な対策であり根本的な治療ではありません。 したがって、長期間使用する際は症状や治療方針について医師への相談をおすすめします。 肩腱板断裂の主な原因3つ 肩腱板断裂が起こる原因は大きく分けて3つあります。 加齢による腱板組織の老化 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 過度の使用(オーバーユース) 年齢や生活習慣、事故などさまざまな要因で発症する可能性があります。 本章では肩腱板断裂の主な3つの原因を詳しく解説していきます。 加齢による腱板組織の老化 加齢に伴う腱板組織の老化は、肩腱板断裂の最も一般的な原因です。 40代後半から徐々に腱板の組織が弱くなり始め、50代以降で断裂のリスクが高まります。 年齢とともに腱板を構成する組織の弾力性が低下し、血行も悪くなるため、日常生活での些細な動作でも断裂を引き起こすことがあります。 加齢による腱板組織の老化は、定期的なストレッチや適度な運動によって、ある程度の予防が可能です。(文献2) 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 転倒やスポーツで肩を強打した際に腱板が損傷することがあるため、外傷が直接的な原因となるケースも少なくありません。 とくに高齢者は転倒時に受け身が取りづらく、肩に衝撃が集中しやすいためです。 また、重い物を持ち上げた際に腱板が急激に引っ張られて断裂する場合もあります。 したがって、外傷による損傷を防ぐためには、転倒防止の対策や筋力トレーニングが効果的です。 万が一、外傷を受けて肩腱板断裂が疑われる際には、早めに医療機関で診察を受けましょう。 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 過度の使用(オーバーユース)腱板の再断裂 日常的に肩を酷使する動作を続けていると、腱板がダメージを受けやすくなります。 たとえば、テニスや野球などのスポーツや、肩を頻繁に動かす職業や趣味を持つ人は注意が必要です。 腱板に休息が取れない状態が続くと、小さな損傷が断裂につながることがあります。 そのため、適切な休息を取り、筋肉をサポートするストレッチやトレーニングを取り入れると良いでしょう。 肩を労わりながら、長く健康を保つ意識が大切です。 また、腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。 肩腱板損傷の検査方法は4つ 肩腱板断裂が疑われる場合、適切な治療のために正確な診断が必要です。 検査方法は主に以下の4つがあります。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 それぞれの検査には特徴があるため1つずつ詳しく見ていきましょう。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) ドロップアームテストは、診察の初期段階で実施することが多い検査方法です。比較的短時間で検査が可能であり、特別な機器も必要なく実施できるのが特徴です。 腕を横に90度上げた状態でキープし、肩腱板の状態を確認します。健康な場合は同様の姿勢で腕を保持できますが、腱板断裂があると途中で腕が落ちてしまいます。 また、痛みを伴う場合は必ず検査前に医師に伝えましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を確認する基本的な画像診断です。 腱板断裂に伴う骨の変形や、肩峰下の石灰沈着の有無を調べられます。 また、年齢による骨の変化も同時に確認できるため、治療方針を決める重要な情報となります。 レントゲン検査の時間は数分程度で済み、基本的に痛みもほとんどありません。 ただし、軟部組織である腱板自体は直接見ることができないため、他の検査と組み合わせて診断を行います。 超音波検査 超音波検査は、腱板の状態を動きながら観察できる便利な検査方法です。 肩を動かしながらリアルタイムで腱板の様子を確認でき、断裂の有無や範囲を詳しく調べられます。 体への負担が少ない検査なので、高齢者でも気軽に受けられるのが特徴です。 また、検査時に医師と対話しながら痛む部位を直接確認できるため、より正確な診断につながります。 MRI検査 MRI検査は、最も詳細に腱板の状態を確認できる検査方法です。 腱板の断裂の有無はもちろん、断裂の大きさや周囲の組織への影響まで把握できます。 検査は専用の装置の中で、約20〜30分ほど静かに横になっているだけで済みます。 放射線は使用せず痛みもないため、体への負担は最小限です。 ただし「心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳」など、金属を体内に入れている方は検査できない場合があるため、事前に医師に相談しましょう。 また、CTやMRI以外で行う関節の造影検査については以下の記事でも詳細に解説しています。 肩腱板断裂の3つの治療法 肩腱板断裂の治療は症状の程度や年齢、生活スタイルによって選択していきます。 主な3つの治療法は以下のとおりです。 治療法 特徴 保存療法 投薬やリハビリテーションを中心とした非手術的な治療 手術療法 断裂した腱板を修復する外科的な治療 再生医療 幹細胞などを用いた新しい治療 それぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。 保存療法とは、痛みの軽減と肩の機能回復を目指し、投薬やリハビリテーションを組み合わせて進める治療法です。 具体的には、消炎鎮痛剤の服用や温冷療法、ストレッチなどを行います。 治療期間は3〜6カ月程度が一般的で、65歳以上の方や部分断裂でも保存療法が推奨されます。 症状が軽減するまで時間はかかりますが、根気強く続けることで日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 腱板損傷が自然治癒する可能性については、以下の記事もあわせてご覧ください。 手術療法 手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や、完全断裂で症状が重い場合に検討される治療法です。 代表的なのは、断裂した腱板を縫い合わせて肩の機能を回復させる「関節鏡を使った手術」です。 手術後にはリハビリが必要となりますが、しっかり行えば機能が改善する可能性が高まります。 そのため、手術療法はリハビリ期間も含めて医師と十分に相談した上で選択してください。 再生医療 再生医療は、患者さん自身の血小板や幹細胞を利用して、損傷した腱板の修復を促進する治療法です。 従来の手術に比べて身体への負担が少なく回復も早いのが特徴で、手術を避ける選択肢として近年注目を集めています。 また、手術をされた方にも再生医療は有効です。 腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えるだけでなく、傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 再生医療に関する詳細は以下のページでも詳しく解説しています。 また、当院では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。肩腱板断裂の症状でお悩みの方はお気軽にご相談ください。 \クリックして電話をかける/ まとめ|肩腱板断裂の痛みについては専門医に相談してみよう 肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法で和らげることができます。 自宅でできる温冷療法やストレッチ、姿勢の改善から医療機関での治療まで症状に応じた選択肢があります。 ただし、自己判断での過度な運動や負荷は症状を悪化させる可能性もあるので注意が必要です。 まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 早期発見・早期治療が、痛みの軽減と日常生活への早期復帰につながります。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療の提供もしていますので、肩腱板断裂の痛みでお悩みの方はお気軽にご相談ください。 \クリックして電話をかける/ 肩腱板断裂に関するQA 腱板断裂でやってはいけないことはなんですか? 肩腱板断裂で最も避けたいのは、無理に肩を使い続けることです。 腕を頭上に上げる動作や、重いものを持ち上げたり、我慢して運動を続けるのも「やってはいけない動作」だといえます。 また「様子を見れば治るだろう」と放置してしまうのも要注意です。 適切な治療を受けないまま症状が進行してしまうと、より複雑な治療が必要になったり、回復までの期間が長引いたりするケースもあります。 少しでも痛みが気になる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。 また、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけない動作については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 肩腱板損傷はどのくらいで治るのですか? 肩腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。 軽度であれば数週間から数カ月ですが、完全断裂の場合は手術が必要となるため、術後のリハビリも含めると半年から1年ほどかかるでしょう。 したがって、早期発見・早期治療が重要ですので、痛みがあれば我慢せずに早めの受診をおすすめします。 また、肩腱板損傷を放置する危険性については以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてください。(文献2) 参考文献一覧 (文献1) 物理療法系専門領域研究部会_寒冷療法 (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会_「肩腱板断裂」
2021.03.16