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肩の痛みがなかなか治らない 運動中や夜に肩が痛む 肩は上がるのに痛みがひかない 当クリニックでは、上記のような相談を受けるケースが頻繁に発生しており、多くの方が「肩の痛み」に関するお悩みを抱えている印象を受けます。 そこで本記事では、肩の痛みの代表的な原因である「腱板断裂」についてご紹介いたします。 原因や症状、治療法までを医師が詳しく解説しているので、腱板断裂を疑う痛みを発症中の方は最後までご確認いただき、症状の改善へ繋げていただけると幸いです。 腱板断裂とは!その原因や症状、治療法について 腱板断裂とは、上腕骨と肩甲骨をつないでいる腱組織が断裂して切れてしまう状態を指しています。 肩に強い痛みを自覚するところは、いわゆる「四十肩や五十肩」に類似していますが、それらの疾患は自然に軽快するケースが大半です。一方で、腱板断裂は肩に力が入りにくく、痛みが長期的に継続するために適切に治療する必要があります。 今回は、腱板断裂とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説します。 腱板断裂の原因 一般的に肩の痛みを引き起こす疾患には色々なものがありますが、整形外科領域で広く知られている代表的な病気に「腱板断裂」が挙げられます。 腱板断裂では腱板の老化などが影響して中高年の方々が多く罹患する傾向にあり、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの腱から構成される腱板の断裂で肩の痛みを自覚します。 本疾患は腱板組織が年齢を重ねるごとに脆くなってくるために発症するパターンが最も多く、それ以外にも外傷によるものが半数、あるいは肩の使いすぎが原因となっている症例も少なからず存在します。 外傷では、転んで肩を強打したケースのみならず手を軽く突いただけでも肩関節部に相対的な負担がかかって腱板部が損傷、あるいは断裂を引き起こすことがあります。 そして、例えば野球のピッチャーが投球動作を繰り返す、力仕事に長年従事されてきた人なども肩関節のオーバーユース(使いすぎ)によって比較的、腱板損傷を発症する例が多くあります。 腱板断裂、原因の一例 加齢 使いすぎ 外傷(外的な衝撃) スポーツ いずれもオーバーユース(使いすぎ)が原因 腱板断裂の症状 40歳以上の男性で特に右肩に発生しやすい腱板断裂は、運動時における肩の痛みや夜間痛を訴えやすいのですが、肩の挙上(腕を上げる動作)自体は可能であることが多いとされています。 一般的に、本疾患が四十肩や五十肩と異なる点としては、肩関節が拘縮して関節部の動きが固くなることがあり、肩関節を挙上しようとすると力が入りにくい、あるいは挙上時に肩の部分でジョリジョリという軋轢音が聞こえることもあります。 腱板断裂は通常では肩関節に存在する腱板組織が裂けて起こりますが、ほとんどの場合、断裂を引き起こした初期の段階では断裂部の範囲は小さいと考えられています。 ところが、症状を放置すると次第に断裂部が大きくなり、病状が悪化して日常生活に支障をきたす恐れがあります。発症初期の段階で早期受診を心がけることが大切です。 ▼こちらも併せてご覧ください 腱板損傷の判断で使う評価テストとは? 腱板断裂の治療方法 腱板断裂の治療方法について、その症状に応じてリハビリによって治療する「保存療法」と、保存療法での改善が目指せない場合の「手術療法」があります。そして近年、先端治療として注目を集める「再生医療」と言われる第三の選択肢があります。それぞれ解説してまいります。 1.保存療法 腱板断裂では、診断が遅れてしまうと症状が進行したり、改善が難しくなってしまうことがあるため、肩を痛めたと自覚した際には、早期に整形外科をはじめとした医療機関の受診に踏み切ることが重要です。 一般的に、外傷によって腱板断裂を認めた際には、三角巾で数週間安静を保持します。断裂部そのものが完全に修復治癒することはないものの、約7割は症状が軽快すると考えられています。 仮に腱板断裂に加えて肩関節周囲炎を合併し、強い夜間痛を認めた場合には、炎症を抑制する副腎皮質ホルモンと鎮痛作用を有する麻酔剤を肩峰下滑液包に局所的に注射して症状推移を経過観察します。 腱板を構成する腱組織すべてが一気に断裂することはほとんど無いと言われています。断裂部以外の健常に残っている腱板機能を活性化させて強靭化することが重要であり、このような腱板機能をリハビリ訓練する手段は有効です。 また、ストレッチ運動で腱板断裂が完全に治癒することは期待できませんが、関節の可動域を良好にする、あるいは腱板周囲の筋肉群の緊張を和らげて肩の痛みを軽減させる効果があります。 2.手術療法 万が一、保存的な療法で肩関節部における痛みといった症状と運動機能の障害が改善しない場合には、関節鏡視下手術や直視下手術などの根治的治療策が考慮されます。 前者の関節鏡視下手術の方がより低侵襲(身体的に少ない負担)で患者さんに優しく、術後の痛みが少ないと考えられていますが、大きな断裂になると、それでは縫合処置が困難であることも指摘されていますので、後者の直視下手術を選択する場合があります。 腱板断裂に関しては治療後再断裂のリスクも懸念されています。これは縫合した糸が筋肉や腱板と擦れることで引き起こされます。もしも再断裂を起こすと損傷範囲が大きくなり、修復がさらに難しくなるだけでなく、もう一度手術を受けなくてはいけないという精神的な苦痛も与えることになりますので、術後の再発防止には慎重に取り組む必要があります。 再断裂防止にはいずれの手術や加療を選択したとしても、術後は約1か月間にわたる患部固定が必要です。術後の固定には患部へのストレスを軽減させる装具を使用します。装具は脱着が可能ですが、基本的には患部を動かさないために装具を装着して生活しますので、日常生活動作に大きく制限がかかります。 さらに固定期間が1ヶ月に及ぶと、関節周囲の組織に癒着が起こり、肩が動かしにくくなる「関節拘縮」が生じることも多いです。関節拘縮を防ぐためには、数か月に及ぶ肩関節部の機能訓練、リハビリの継続が最善です。 3.手術に代わる新たな治療法(手術がしたくない、入院を避けたい) このように手術による治療は、慎重かつ根気強くリハビリをしなければならないため、術後しばらくの間安静が取れない方やリハビリの時間が作れない方、仕事や家事で手を使わなければいけない方などにとってはハードルの高い治療とも言えます。 ところが近年、手術を受けなくとも腱板断裂を修復する幹細胞治療といわれる再生医療があります。幹細胞とは体の様々な組織に分化できる細胞であり、腱板も例外ではないです。もともと腱板は血流が乏しく組織的にも脆いにも関わらず、腕を動かすと腱板は引っ張られるため、損傷した箇所を広げようとする力が働きます。このような状態では腱板はなかなか自然に治癒しませんが、幹細胞の力を使えば断裂した腱板の修復が可能です。 幹細胞を使った再生医療であれば、糸で縫い合わせるような治療ではなく注射による治療のため、再断裂のリスクが極めて少ないです。一方手術をした場合では、わずか数年でも再断裂が多くみられますので、この点において再生医療のメリットは大きいといえます。 しかも幹細胞による治療であれば、再断裂のリスクが少ないため術後のような長期間の固定が必要ありませんので、痛みが出ない範囲であれば日常生活に制限はありません。再生医療においてもリハビリに取り組むことは重要ですが、拘縮を引き起こす治療方法ではないため、術後のように緻密な計画に沿ったリハビリを必要としないのもメリットの1つです。 もちろん手術を受けてしっかりとリハビリに取り組めば、上記のような後遺症があったとしても7割近い満足度があります。ところが再生医療では手術の後遺症を引き起こす恐れが少なく、高い除痛効果や可動域の改善もみられるため、9割近い満足度があるといわれています。 手術後の腱板断裂にも再生医療が効果大! 実は腱板損傷に対する再生医療では、手術を受けた後の場合であっても効果が発揮されます。先述しましたように手術で腱板を縫い合わせると、縫合した部分から再び断裂を引き起こす割合が高く、せっかく手術を受けても腱板の断裂部分が小〜中等度であれば10〜30%、断裂部分が大きいと40〜60%の確率で再断裂が発生します。 そのため再断裂を回避するには、手術よりも再生医療の方がリスクの少ない選択と言えますが、術後の再断裂の予防としても再生医療は効果を発揮します。もし腱板断裂の手術を受けたけれど、再断裂を起こさないように更なる修復を望むのであれば、手術後に再生医療を併用すると再断裂の確率を抑えることができます。 さらに再生医療の併用で、術後に発生する疼痛の抑制も期待でき、計画通りにリハビリを進めやすくなります。 このように手術療法のデメリットを受けることなく腱板断裂を修復できる治療法として、そして手術療法のデメリットをフォローできる治療法としても、「幹細胞治療による再生医療」が注目を集めています。 ▶こちらの動画で詳しく解説しています。是非ご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=bKupVfsXpHM まとめ・腱板断裂とは!その原因や症状、治療法について 今回は腱板断裂とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などについて詳しく解説してきました。腱板断裂は、肩のインナーマッスルである4種類の腱板筋群の腱組織が断裂して切れてしまう状態を意味しています。 主に上腕骨と肩甲骨を接合している腱組織が切れてしまう本疾患では、肩を挙上する際に力が入りにくくなる、あるいは肩関節面で軋轢音を聴取することがありますので、何らかの自覚症状がある方は自己診断せずに専門の医療機関などで的確な診断を受けることが重要です。 医療機関で腱板断裂と診断された方は、医師の判断を受けて保存療法や手術療法、あるいは近年新たな治療選択として注目されている再生医療など様々な治療アプローチに従い、症状の改善を目指しましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 肩の腱板断裂を再生医療(幹細胞治療)で改善を目指す第三選択肢! ▼こちらも併せてご覧ください 肩の腱板断裂は放置では治らない!早めの受診が必要!
2022.04.14 -
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肩の痛みで疑うべき病気の種類|検査方法、治療とは 肩の痛みは、肩関節疾患を抱えた患者さんの自覚症状として最も多いと言われています。肩が痛む患者さんを診察する際には、いつから、どのような動作で、どこが、どう痛むかなど具体的に詳しく問診したうえで診察や検査を進めます。 その上で疼痛といった症状の原因となる疾患を診断し、確実な治療に結び付けることが大切になります。そこで、今回は、肩の痛みで疑うべき疾患とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説してまいります。 肩の痛みで疑うべき肩の病気 一般的に肩の痛みを引き起こす関連疾患は整形外科でも色々な可能性が挙げられますが、広く知られている代表的な病気は、「肩関節周囲炎(別名:五十肩)」、「肩蜂下インピンジメント症候群」、「腱板断裂」といた3つの病気です。 1.肩関節周囲炎 肩関節周囲炎という疾患は、40~60歳代の中高年齢層でよく経験されるいわゆる「五十肩(四十肩)」と呼ばれている状態のことを指しており、この病気は特に誘因になるような契機がないものの、肩の痛みといった症状が出現して知らぬ間に肩を挙げることができないといった可動域制限を認めます。 2.肩蜂下インピンジメント症候群 肩蜂下インピンジメント症候群では、日常生活で頻繁に肩関節を動作させることで肩甲骨の先端部に位置している肩峰と腱板の間に存在している肩峰下滑液包が炎症を引き起こすことによって強い肩の痛みを生じる状態を意味しています。 インピンジメント症候群には、肩峰と棘上筋間で肩峰下包が挟まれるエクスターナル型、あるいは棘上筋の関節包面が後上方関節唇と衝突するインターナル型の2種類があり、野球の投球動作やテニスのサーブ動作などオーバーハンドスポーツ競技者で多く認められます。 3.腱板断裂 腱板断裂という疾患は、中高年齢層の方に罹患率が高く、加齢と同時に喫煙、外傷、スポーツなどの要因によって発症することが知られており、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉腱から構成される腱板が断裂することで肩の痛みを引き起こします。 肩の痛みで代表的な病名 肩関節周囲炎(別名:五十肩または四十肩) 肩蜂下インピンジメント症候群 腱板断裂 肩の痛みで疑われる病気と検査方法 肩の痛み、肩関節部を構成する軟部組織におこる炎症に伴う痛みといった症状や、運動制限を特徴とする肩関節周囲炎は自然治癒すると思われがちですが、実際のところは放置すると痛みや拘縮が強くなり症状が慢性化することが多いため、早期的に診断することが重要です。 病院などの医療機関では、専門医による問診、画像検査、可動域を測定することなどを実施して肩関節周囲炎を診断できることが多いです。 一般的には、本疾患ではレントゲン検査上で異常所見を認めないとされており、個々の患者さんの経過や状況に応じて肩関節部の軟部組織状態を精密に評価するために関節造影検査やMRI検査をあわせて実施するケースもあります。 肩蜂下インピンジメント症候群の診断と検査 肩蜂下インピンジメント症候群に対する検査は、問診や肩関節部におけるテスト法、MRI検査、超音波検査などが有効的とされております。 特に、超音波検査を実施することで肩峰下滑液包と腱板の腫脹、腱板断裂の有無を調べることが出来ますし、肩を外転する際に腱板や滑液包の肩峰下への滑動状態やすべり具合を判定することが可能となります。 腱板断裂の診断と検査 腱板断裂においては、診断が遅れてしまうと治療による症状改善が難しくなってしまう可能性があり、早期発見および早期治療が重要な鍵になります。 実際の診察場面では、肩の痛みの場所や症状、肩がどのような動きで痛みを感じるのか確認する外転テスト、ドロップアームテストなどを施行すると共に、レントゲン検査、MRI画像検査などを実行されることが多いです。 これらの画像的な精密検査によって肩関節部の腱板断裂以外の石灰性腱板炎を始めとする疾患との鑑別も可能となります。 肩の痛みで疑われる病気と治療方法 研究によると肩の痛みといった症状が改善することで身体的側面から健康に関連する生活の質(Quality Of Life)が向上する可能性があることが示されています。 肩の痛みに対する治療は、一般的に個々の症例における年齢、職業、生活環境などの要素や患者さん自身の希望を検討したうえで決定することになります。 肩関節周囲炎の治療 肩関節周囲炎に対する治療方法は、まず痛みを自覚している炎症期においては三角巾を用いて上肢を安静に保つ、あるいは消炎鎮痛薬を服用することが考慮されます。 また、症状が比較的強いときには肩関節の患部内に局所麻酔薬を注入して、癒着した関節包組織を開大させる手技法も症状改善に有用であると考えられています。 そして、肩の痛みがある程度軽減して肩部の動作制限が症状の主体である拘縮期においては、リハビリテーションを中心とした関節可動域の訓練を実施します。 万が一これらの保存治療でも奏功しない難治例に対しては、全身麻酔下で鏡視下関節包切離術などの根治的外科的処置が実施される場合もあります。 肩蜂下インピンジメント症候群 肩蜂下インピンジメント症候群では、肩の痛み症状を呈している直接の原因とされてる関節包などの拘縮度を解消するためのストレッチング、あるいは上腕骨頭が上方に向かないようにするためのインナーマッスルを中心とした筋力増強トレーニングが実践されます。 仮に痛みが非常に強い場合や前述した運動療法が著効しないケースでは、滑液包内に炎症を抑制する作用を有する副腎皮質ステロイド剤を注入することもあります。 そして、副腎皮質ステロイド剤の注入を頻回に繰り返しても肩の痛み症状が継続される際には、関節鏡視下に関節包切離処置や肩峰下除圧術などが実施されることになります。 腱板断裂 腱板断裂に対する有用な治療方法としては薬物療法や理学療法が知られています。 特に、加齢に伴う腱の変性による腱板断裂を認める際には、まず保存療法が行われることがほとんどであり、非ステロイド性抗炎症薬を内服あるいは外用する、そして副腎皮質ステロイド剤を関節内注入することを検討します。 また、患部を温熱療法で温める、ストレッチやトレーニングによって肩関節部の可動域を広げて筋力強化に繋げる理学療法もお勧めされます。 若年者における外傷に伴う腱板断裂やスポーツによって引き起こされた断裂病変に対しては、肩峰下除圧術や腱板修復術が実践されることもあります。 まとめ・肩の痛みで疑うべき病気の種類|検査方法、治療とは 今回は肩の痛みで疑うべき病気とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などについて詳しく解説してきました。 「肩が痛い」、「肩が挙上できない」などの症状を自覚して日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けて、保存療法や手術療法など様々な治療アプローチによって症状改善を図るように心がけましょう。 また、これら整形外科的な治療以外にも「再生医療」という新しい治療法も注目を得ています。興味があれば以下のリンクからご参照ください。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=YQsu_VT2ZGqSNB2v 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療で肩の痛みを治療できることをご存知ですか 肩の痛みは、再生医療により手術や入院を避けて改善することができます ▼腱板損傷、腱板について参考して頂けます 五十肩・四十肩の腕を上げると肩が痛む症状におすすめの治療法
2022.03.16 -
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腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査の特徴には、①簡便かつ非侵襲的(体に傷をつけない)、②リアルタイムで観察可能、③プローブを使用するなどの特徴があります。 検査をするにあたって、場所は選ばず、特別な準備も必要ありません。そのため超音波器械さえあれば、その場で好きなときに好きなだけ検査を行うことができます。また、体の外から当てた超音波は人体には無害で痛みもありません。簡便かつ非侵襲的な診断といえるものです。 最近ではポータブルの超音波器械が普及しており、性能も十分に高いため、器械そのものを持ち込んで集団検診、疫学調査が可能となっています。 スポーツ領域では競技グラウンドや練習現場に、学校などでは集団検診の場で検査が可能であり、一度に大量のデータを集積することも可能となっています。 リアルタイムで観察が可能 超音波画像はリアルタイムで観察できるため、腱板や関節唇上腕二頭筋長頭腱の動態検査、ストレス検査による不安定性の計測が可能です。また超音波の画像をみながら、損傷部位にピンポイントで穿刺(対外から針を刺す)することも可能です。 プローブを使用する 超音波検査ではプローブを用いますが、この際プローブによる軽い圧迫で、患部の圧痛との相関がみられることがあります。腱板の検査においては特にそれが認められ、診断率を上げることが可能です。 (1)使用する装置とプローブ 肩関節の超音波診断に使用する超音波断層装置は、ある程度の上級機種であれば大差はありません。プローブは7.5MHz~10MHz程度のリニアプローブを用いるのが一般的です。 体表面が凹となっている腋窩(わきの下のリンパ節)や肩峰—鎖骨間隙では、小型のコンベックスタイプのプローブが有用です。 (2)肩関節に対する超音波検査 ①患者を坐位または仰臥位とし、肩関節を中間位で軽度伸展させます。 ②まず、上腕二頭筋長頭腱および結節間溝を中心に検索します。肩甲下筋腱は、被検者の上腕を内外旋して小結節付着部を中心に検索します。 ③プローブを頭側へ移動させると棘上筋腱前縁が確認でき、さらに後方へ長軸像のまま棘上筋腱全体を検索します。 ④短軸像でも棘上筋腱全体を調べた後、棘下筋腱を長軸像で付着部を中心に検索します。 ⑤さらに、肩甲棘の中点で棘下筋の筋幅を両側計測します。 腱板損傷の超音波像 (1)肩甲下筋腱断裂・損傷 上腕骨を外旋させ、健側と厚み形態を比較します。健側と比べ腱が非薄化しており、投球障害では頭側関節包面に低エコーを呈します。 (2)棘上筋腱断裂 腱板の表面エコーと内部エコーの変化に注意しながら検査します。 表面エコーが平坦か下方凸になっていれば小断裂の存在を、内部エコーにおいて限局した低エコーが関節包面に存在していれば関節包断裂の存在を、境界エコーが不整で直下の内部エコーが低エコーになっていないケースでは滑液包断裂を示唆します。 また超音波で異常が存在した部位に限局している圧痛を認めたら、臨床的に同部が疼痛の主因になっていることが多いです。 (3)棘下筋断裂 棘下筋は薄いため、左右を比較します。頭側に低エコーを呈することが多いです。 (4)棘下筋萎縮 棘下筋の萎縮は投球動作で出現しやすいです。棘下筋の筋腹の厚みを左右比較するとともに、経時的に観察します。 まとめ・腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査は、軟部組織を簡便かつ非侵襲的に診断できるとともに、患者自らモニターに映し出される画像をみることができるという利点があります。 最近では、超音波器機の発達に伴い画像が鮮明化し、診断の精度が向上するとともに、腱板のみならず他の部位にも応用されつつあります。 しかし、まだ診断率は検者の技量と経験に左右されるため、超音波検査の特性と限界を十分理解することが正診率を上げるうえで重要になってきます。 以上、腱板損傷における超音波・画像診断による検査についてご説明しました。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下では腱板損傷の保存療法をご紹介しています 肩の腱板損傷の症状と機能改善のための保存療法について
2021.08.18 -
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肩腱板損傷の画像診断|CT、MRI以外、関節の造影検査をご存知ですか 肩関節疾患の診断において、CTや、MRIの飛躍的な進歩にもかかわらず、造影検査は依然として重要な補助診断法の一つです。この造影検査方法には3種類あります。 1)陽性造影:ヨード製剤を用います。 2)陰性造影:空気を用います。 3)二重造影:ヨード製剤と空気の両方を用います。 この3種類の中では、「1)陽性造影」が広く行われています。 動態関節造影と肩峰下滑液包造影 それぞれの方法をご説明します。 動態関節造影 イメージ透視の映像をビデオなどに連続的に記録する方法で、造影剤のダイナミックな移動が観察でき、所見の見落としを防ぐ事もできるので、肩関節造影時に同時に行っています。 肩峰下滑液包造影 主に腱板滑液包面断裂の診断に用いられています。造影剤(ウログラフイン、イソビストなどの水溶性のもの) 5mLと1%キシロカイン5mLを混和した注射器に、23G短針を接続して、立位または座位で透視下にて、肩峰外側縁のやや下方から AHI(acromio-humeral interval:肩峰前下面の骨皮質と上腕骨頭の頂点との間の距離)の中上 1/3を目標にして、肩峰下滑液包内に刺入します。 二重造影では造影剤1mLと空気10mLを注入します。造影剤が腱板内に入り込んだり、腱板滑液包、局所に貯留したりする場合は腱板滑液包面断裂を疑います。 腱板断裂の関節造影について 関節造影について詳しくご説明します。 腱板断裂で疑われる画像所見 造影剤が肩峰下滑液包に漏出すれば、腱板の全層断裂 (full-thickness tear)の診断が確定します。外旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘上筋腱の断裂を疑い、内旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘下筋腱の断裂を疑います。 scapular Y像 腱板の断裂部への造影剤の漏出だけでなく、水平断裂像の描出も可能です。長期間経過した腱板小断裂や腱板不全断裂 (関節包面断裂や水平断裂)の描出は難しいので、他動的に肩関節をよく動かして、関節内圧を上げてから再度調べる必要があります。 動態撮影を併用すると、断裂の大きさや断裂部位がより明らかとなります。また、腱板滑液包面断裂の診断には、肩峰下滑液包造影が用いられます。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます 一般的な肩関節造影法について 以下で詳しくご説明いたします。 前方刺入法 ① 検査前にヨードや局所麻酔薬に対するアレルギー反応の有無について確認します。 ② 透視台の上に仰臥位になって貰います。 ③上肢を体側に接して透視台の上に置いた状態で外旋位になるように体位を調整します。 ④ 烏口突起を中心に広範囲に消毒をします。 ⑤ 1%キシロカイン10mLの入った注射器に21Gスパイナル針を接続。 ➅透視下にて烏口突起先端の1cm尾側で、1cm外側から関節裂隙に垂直に刺入。 ⓻少量の局所麻酔薬を注入して抵抗がないこと、上肢を少し内外旋して針先が関節内にあることを確認。 ⑥ 21Gスパイナル針を留置したまま 造影剤 (ウログラフィン、イソビストなどの水溶性のもの) 10mLと1 %キシロカイン10m Lを混和した延長チューブ付きの注射器に交換。 透視下にて確認しながら、ゆっくり注入します。(注入量は約 20rnLとされています。) ⓻造影は内旋位、外旋位および挙上位の3枚の前後像を撮影。 ⑧肩関節疾患に応じて軸射位像と scapular Y像などの撮影を追加します。 正常の画像所見 内旋位像 肩関節の前方組織が弛緩するので、内側に肩甲下筋滑液包(subscapularis bursa)、内下方に関節包前部 (anterior pouch)、および下方に関節包下部(腋窩陥凹; axillary pouchまたは inferior pouch) が描出されます。 外旋位像 肩関節の前方組織が緊張するので、肩甲下筋滑液包、関節包前部、および関節包下部は縮小します。外側に上腕二頭筋長頭腱腱鞘 (bicipital tendon sheath) が描出されます。 挙上位像 肩関節の下方組織が緊張するので、関節包下部は縮小します。上方に上腕二頭筋長頭腱腱 鞘、内側に肩甲下筋滑液位が描出されます。 軸射位像 関節窩の前縁と後縁に関節唇が三角形の陰影として描出され、前方には肩甲下筋滑液包も描出されます。 scapular Y像 前方に肩甲下筋滑液包、前下方に関節包前部、下方に関節包下部、および後下方に関節包後部 (posterior pouch)が描出されます。 以上、肩腱板損傷の画像診断について、CT、MRI以外の検査方法である関節の「造影検査」についてご説明いたしました。今回は、専門的な内容で難しかったかもしれませんが、ご不明な点があればご遠慮なくお問い合わせください。 少しでも参考にしていただけたなら幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の検査方法もご参考下さい 腱板損傷の診断法、超音波(エコー)による画像検査について
2021.08.04 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: 肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: 肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: 腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます 肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: 背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: 患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: 患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
2021.04.01 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷のリハビリには、損傷を受けていない腱や筋肉の機能向上や患部に負担をかけないための動作改善といった効果があります。 しかし、リハビリを進めていくにあたりいくつか注意点があります。症状の悪化を防ぐためにも、リハビリの正しい実践方法を覚えましょう。 本記事では、腱板損傷におけるリハビリの効果や代表的なリハビリプログラムを解説します。リハビリをとおして、腱板損傷の症状を緩和させたい方は参考にしてみてください。 腱板損傷はリハビリだけで治るのか? 腱板損傷は、損傷の範囲が狭ければリハビリで症状の改善を期待できます。しかし、完全断裂や広範囲の断裂の場合は、リハビリのみでの回復が難しく手術が選択肢に入ってきます。 そもそも、腱板とは肩に付いている筋肉(腱)で「棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋」の4つからなります。腱板損傷では、これらの筋肉のいずれかが損傷し、あるいは複数の筋肉が断裂している状態です。 損傷の程度は筋肉の一部分が損傷している「部分断裂」と、完全に切れてしまった「完全断裂」とに分けられます。 現在、腱板損傷の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 腱板損傷におけるリハビリの目的や期間 腱板損傷におけるリハビリの目的は、損傷していない筋や腱の機能向上や損傷した部位に負担をかけないための動作改善です。 腱板損傷のリハビリ期間の目安は、日常生活への復帰なら2〜3カ月程度、スポーツや重労働の仕事への復帰であれば6カ月程度です。 個々の状態によっても、リハビリ期間は変わってきます。自身の状態を把握したい方は、以下の記事で紹介している腱板損傷の筋力や痛み確認テストを試してみてください。 腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラム ここでは、腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラムを紹介します。 ・筋力トレーニング ・ストレッチ ・日常生活の訓練 順番に見ていきましょう。 筋力トレーニング 機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 腱板は体の深いところに位置するため「インナーマッスル」と呼ばれます。そのため、腱板損傷のリハビリを目的とした筋トレは、インナーマッスルに焦点を当てたトレーニングが効果的です。 たとえば、腱板を鍛えるトレーニングでは、筋トレ用のゴム製チューブやタオルを活用して、対象部位を効果的に鍛えるやり方が有効です。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れたときの痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされたときの痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、ほかの腱板に対する運動をおこなうようにします。 ストレッチ ストレッチには、腱板の可動域を広げたり、筋肉の緊張状態をほぐしたりする効果があります。 たとえば、肩の上げ下げや肩回しの動きは腱板損傷の回復に効果が期待できます。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理のなく進めましょう。 日常生活の指導 腱板損傷の症状を悪化させないために、日常生活における動作の指導もおこなわれます。 以下は、日常生活のなかで腱板に負荷がかかりやすい動作の一例です。 ・衣服の着脱 ・荷物の持ち運び ・寝るときの姿勢 損傷を起こしている部位や症状の程度に応じて、個々に合った動作指導がおこなわれます。 腱板損傷のリハビリでやってはいけない3つのNG行為 腱板損傷のリハビリに取り組む際、やってはいけない行為があります。 ・発症直後に無理をして動かすこと ・焦って負荷をかけすぎること ・リハビリを怠ること 順調な回復を図るためにも、紹介する3つのポイントをおさえてリハビリに臨みましょう。 発症直後に無理をして動かすこと 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、無理に関節を動かすと疼痛を助長させてしまうリスクがあります。そのため、発症直後は三角巾を含む固定具を用いて患部の安静を第一優先しなければなりません。 段階的回復を目指すためにも、リハビリは患部の炎症が落ち着いてから進めましょう。 現在、腱板損傷の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 焦って負荷をかけすぎること リハビリ開始時は、自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じずに運動できれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。 ただし、腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツにたとえると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要する場合があります。 そのため、リハビリは焦らず取り組んでいきましょう。 リハビリを怠ること 腱板損傷を発症してから長期間が経過している場合は、関節包の硬化による筋肉の伸張性低下や、疼痛による関節拘縮を起こすケースが多くなります。 リハビリを怠ると症状が慢性化する可能性があるので、医師の指示に従って継続的にリハビリを実施しましょう。 肩の腱板断裂を放置するリスクについてはこちら▼ まとめ|腱板損傷に効果的なリハビリを覚えて回復を目指そう 腱板損傷では受症してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 本記事で紹介した代表的なリハビリのプログラムを中心に、専門医の指導のもと無理のない範囲で進めていきましょう。 もし手術を勧められ迷われている場合は、切らない治療の「再生医療」という選択肢もあります。 以下の動画で再生医療の詳しい説明をしているので、治療の進め方や効果が気になる方は参考にしてみてください。 https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=bKupVfsXpHM&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Ffuelcells.org%2F&source_ve_path=Mjg2NjY
2021.03.22 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩腱板断裂の痛みを少しでも和らげたい」「自分で肩腱板断裂の痛みに対処する方法はない?」 そんな思いを抱えていませんか? 肩腱板断裂は腕を上げるたび鋭い痛みが走るケガであり、夜も眠れないほどの不快感に悩まされている方も多いはずです。日々の生活で痛みを我慢し続けるのは、心身に大きな負担がかかるでしょう。 結論からいえば、肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法によって軽減することも可能です。 今回は、肩腱板断裂の痛みを緩和する5つの方法をご紹介します。 最後までご覧いただくことで、痛みの負担を少しでも軽減できるきっかけになるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。 肩腱板断裂の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 肩腱板断裂の痛みを和らげる5つの方法 肩腱板断裂の痛みを和らげるには、以下5つの方法があります。 温冷療法 姿勢と腕の位置の矯正ストレッチ 枕の高さのを調整 消炎鎮痛剤や湿布 これらは自宅でも実践できる方法ですが、医師の指導のもと症状や生活スタイルに合わせて取り入れていきましょう。 本章ではそれぞれの対処法を詳しく解説していきます。 また、以下の記事では肩腱板断裂が放置では治らない理由を紹介していますので、気になる方は参考にしていただけると幸いです。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 温冷療法は、症状や時期によって温めたり冷やしたりすることで効果的に痛みを軽減する対処法です。 ケガをしてから48時間以内の急性期は冷やすことで炎症を抑制し、それ以降は温めて血行を促進します。 冷却には氷嚢やアイスパックを、温めるにはホットパックや入浴を活用しましょう。 ただし、15分以上の連続使用は避けて皮膚を保護するためにタオルを必ず挟むのがポイントです。(文献1) 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 日常生活では、正しい姿勢や腕の使い方を工夫すると肩への負担を大きく軽減できます。 とくに気をつけたいのは以下の3点です。 腕を上げすぎない 同じ姿勢を長時間続けない 重いものを持たない デスクワークでは、肘を机につけて支えると肩の負担を減らせます。 また、パソコン作業時はキーボードを体の正面に置き、マウス操作は肘を開きすぎないよう注意しましょう。 こまめに休憩を取り軽く肩を回すのも効果的です。 痛くない範囲でのストレッチ 痛くない範囲で行うストレッチは、肩周りの柔軟性を保ち痛みの軽減に期待できます。 まずは、壁に手をついて体を少しずつ前に傾けるストレッチから始めましょう。 ここでも痛みが出ない程度にゆっくりと動かし、無理な姿勢は避けます。 1回のストレッチは10秒程度を目安に、1日3回ほど実施するのがおすすめです。 徐々に可動域を広げていくと、日常生活での動きやすさも改善していきます。 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 肩腱板断裂の痛みが夜間に強くなる場合、枕の高さが合っていないのが原因の1つとして挙げられます。 枕が高すぎると肩に負担がかかり、痛みが増す可能性があるためです。 そのため、適切な高さの枕を選ぶと肩が自然な位置に保たれ負担が軽減します。 また、横向きで寝る際は肩を下にせず、クッションで支えると楽になるはずです。 夜間の痛みは睡眠の質を低下させて日中の活動にも影響を及ぼすため、枕の高さを調整して痛みの緩和対策をしましょう。 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える 肩腱板断裂の痛みを一時的に抑えるには、消炎鎮痛剤や湿布も有効です。 薬局で購入できる市販の痛み止めや湿布は、炎症を抑える効果があるためです。 湿布は冷感タイプと温感タイプがあるため、症状に合わせて使い分けましょう。 たとえば、炎症や腫れが強い場合は冷感タイプ、慢性的な痛みや筋肉のこわばりが気になる場合は温感タイプが適しています。 ただし、痛みを緩和する一時的な対策であり根本的な治療ではありません。 したがって、長期間使用する際は症状や治療方針について医師への相談をおすすめします。 肩腱板断裂の主な原因3つ 肩腱板断裂が起こる原因は大きく分けて3つあります。 加齢による腱板組織の老化 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 過度の使用(オーバーユース) 年齢や生活習慣、事故などさまざまな要因で発症する可能性があります。 本章では肩腱板断裂の主な3つの原因を詳しく解説していきます。 加齢による腱板組織の老化 加齢に伴う腱板組織の老化は、肩腱板断裂の最も一般的な原因です。 40代後半から徐々に腱板の組織が弱くなり始め、50代以降で断裂のリスクが高まります。 年齢とともに腱板を構成する組織の弾力性が低下し、血行も悪くなるため、日常生活での些細な動作でも断裂を引き起こすことがあります。 加齢による腱板組織の老化は、定期的なストレッチや適度な運動によって、ある程度の予防が可能です。(文献2) 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 転倒やスポーツで肩を強打した際に腱板が損傷することがあるため、外傷が直接的な原因となるケースも少なくありません。 とくに高齢者は転倒時に受け身が取りづらく、肩に衝撃が集中しやすいためです。 また、重い物を持ち上げた際に腱板が急激に引っ張られて断裂する場合もあります。 したがって、外傷による損傷を防ぐためには、転倒防止の対策や筋力トレーニングが効果的です。 万が一、外傷を受けて肩腱板断裂が疑われる際には、早めに医療機関で診察を受けましょう。 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 過度の使用(オーバーユース)腱板の再断裂 日常的に肩を酷使する動作を続けていると、腱板がダメージを受けやすくなります。 たとえば、テニスや野球などのスポーツや、肩を頻繁に動かす職業や趣味を持つ人は注意が必要です。 腱板に休息が取れない状態が続くと、小さな損傷が断裂につながることがあります。 そのため、適切な休息を取り、筋肉をサポートするストレッチやトレーニングを取り入れると良いでしょう。 肩を労わりながら、長く健康を保つ意識が大切です。 また、腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。 肩腱板損傷の検査方法は4つ 肩腱板断裂が疑われる場合、適切な治療のために正確な診断が必要です。 検査方法は主に以下の4つがあります。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 それぞれの検査には特徴があるため1つずつ詳しく見ていきましょう。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) ドロップアームテストは、診察の初期段階で実施することが多い検査方法です。比較的短時間で検査が可能であり、特別な機器も必要なく実施できるのが特徴です。 腕を横に90度上げた状態からゆっくりと下ろしていく動作で、肩腱板の状態を確認します。 健康な場合は腕をスムーズに下ろせますが、腱板断裂があると途中で腕が落ちてしまいます。 また、痛みを伴う場合は必ず検査前に医師に伝えましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を確認する基本的な画像診断です。 腱板断裂に伴う骨の変形や、肩峰下の石灰沈着の有無を調べられます。 また、年齢による骨の変化も同時に確認できるため、治療方針を決める重要な情報となります。 レントゲン検査の時間は数分程度で済み、基本的に痛みもほとんどありません。 ただし、軟部組織である腱板自体は直接見ることができないため、他の検査と組み合わせて診断を行います。 超音波検査 超音波検査は、腱板の状態を動きながら観察できる便利な検査方法です。 肩を動かしながらリアルタイムで腱板の様子を確認でき、断裂の有無や範囲を詳しく調べられます。 体への負担が少ない検査なので、高齢者でも気軽に受けられるのが特徴です。 また、検査時に医師と対話しながら痛む部位を直接確認できるため、より正確な診断につながります。 MRI検査 MRI検査は、最も詳細に腱板の状態を確認できる検査方法です。 腱板の断裂の有無はもちろん、断裂の大きさや周囲の組織への影響まで把握できます。 検査は専用の装置の中で、約20〜30分ほど静かに横になっているだけで済みます。 放射線は使用せず痛みもないため、体への負担は最小限です。 ただし「心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳」など、金属を体内に入れている方は検査できない場合があるため、事前に医師に相談しましょう。 また、CTやMRI以外で行う関節の造影検査については以下の記事でも詳細に解説しています。 肩腱板断裂の3つの治療法 肩腱板断裂の治療は症状の程度や年齢、生活スタイルによって選択していきます。 主な3つの治療法は以下のとおりです。 治療法 特徴 保存療法 投薬やリハビリテーションを中心とした非手術的な治療 手術療法 断裂した腱板を修復する外科的な治療 再生医療 幹細胞などを用いた新しい治療 それぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。 保存療法とは、痛みの軽減と肩の機能回復を目指し、投薬やリハビリテーションを組み合わせて進める治療法です。 具体的には、消炎鎮痛剤の服用や温冷療法、ストレッチなどを行います。 治療期間は3〜6カ月程度が一般的で、65歳以上の方や部分断裂でも保存療法が推奨されます。 症状が軽減するまで時間はかかりますが、根気強く続けることで日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 手術療法 手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や、完全断裂で症状が重い場合に検討される治療法です。 代表的なのは、断裂した腱板を縫い合わせて肩の機能を回復させる「関節鏡を使った手術」です。 手術後にはリハビリが必要となりますが、しっかり行えば機能が改善する可能性が高まります。 そのため、手術療法はリハビリ期間も含めて医師と十分に相談した上で選択してください。 再生医療 再生医療は、患者さん自身の血小板や幹細胞を利用して、損傷した腱板の修復を促進する治療法です。 従来の手術に比べて身体への負担が少なく回復も早いのが特徴で、手術を避ける選択肢として近年注目を集めています。 また、手術をされた方にも再生医療は有効です。 腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えるだけでなく、傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 再生医療に関する詳細は以下のページでも詳しく解説しています。 また、当院では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。肩腱板断裂の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 まとめ|肩腱板断裂の痛みについては専門医に相談してみよう 肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法で和らげることができます。 自宅でできる温冷療法やストレッチ、姿勢の改善から医療機関での治療まで症状に応じた選択肢があります。 ただし、自己判断での過度な運動や負荷は症状を悪化させる可能性もあるので注意が必要です。 まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 早期発見・早期治療が、痛みの軽減と日常生活への早期復帰につながります。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療の提供もしていますので、肩腱板断裂の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 肩腱板断裂に関するQA 腱板断裂でやってはいけないことはなんですか? 肩腱板断裂で最も避けたいのは、無理に肩を使い続けることです。 腕を頭上に上げる動作や、重いものを持ち上げたり、我慢して運動を続けるのも「やってはいけない動作」だといえます。 また「様子を見れば治るだろう」と放置してしまうのも要注意です。 適切な治療を受けないまま症状が進行してしまうと、より複雑な治療が必要になったり、回復までの期間が長引いたりするケースもあります。 少しでも痛みが気になる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。 また、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけない動作については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 肩腱板損傷はどのくらいで治るのですか? 肩腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。 軽度であれば数週間から数カ月ですが、完全断裂の場合は手術が必要となるため、術後のリハビリも含めると半年から1年ほどかかるでしょう。 したがって、早期発見・早期治療が重要ですので、痛みがあれば我慢せずに早めの受診をおすすめします。 また、肩腱板損傷を放置する危険性については以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてください。(文献2) 参考文献一覧 (文献1) 物理療法系専門領域研究部会_寒冷療法 (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会_「肩腱板断裂」
2021.03.16