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健康診断や定期検査で脂肪肝と診断されたとき、どのような食事をすれば良いか気になる方もいるのではないでしょうか。 脂肪肝を改善するためには、避けるべき食べ物を把握しておくことが重要です。栄養バランスが整った食生活を意識すれば、そのほかの病気のリスク軽減にもつながります。 この記事では、脂肪肝になった後に食べてはいけないものや、食事の際のポイントをご紹介します。食生活を見直し、生活習慣を整えることで、脂肪肝の改善につながるでしょう。 【一覧】脂肪肝の食事で食べてはいけないもの 脂肪肝とは、脂質のひとつである中性脂肪が肝臓内に多く蓄積している状態のことです。 脂肪肝の食事で食べてはいけないものとしては、糖質や脂質を多く含まれているような食べ物です。これらの食べ物は脂肪肝を悪化させるだけでなく、メタボリックシンドロームをはじめとしたさまざまな疾患を引き起こす恐れがあります。 また、アルコールの摂取を控えることも重要です。脂肪肝には、過食や過剰飲酒が原因で起こるアルコール性のものと、それ以外の非アルコール性のものがあります。 このように、脂肪肝にとってだめな食事は多くあり、それらを避けることが大切です。 肝臓の病気に対する新たな治療法として、再生医療が注目を浴びています。再生医療について気になる方がいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。 脂肪肝を改善する食事のポイント7つ 脂肪肝を改善するには、以下のような食べ物を避けることを意識しましょう。 糖質を多く含んでいる食べ物 ジュース類 駄菓子 果物 脂質を多く含んでいる食べ物 揚げ物 肉の脂身 ドレッシング マヨネーズ ※調理油は植物性が望ましい(オリーブオイル、菜種油、大豆油など) アルコール 1日あたり純アルコール20g(※)まで ※ビール中瓶(500ml)1本程度に相当 ここでは、避けるべき食べ物に加えて、脂肪肝を改善するための食事のポイントを解説します。 1.摂取エネルギーを抑える 1つ目は、糖質をはじめとした摂取エネルギーを抑えることです。食事から過剰摂取した糖質は、中性脂肪に変換されて脂肪肝の発症につながります。 ポイントとしては、摂取エネルギーの目安を把握した上で、それを超えないように食事制限する点です。 一般的な摂取エネルギー量の目安としては、以下のとおりです。 自分の摂取エネルギー量を計算した上で食事管理をして、理想的な標準体重を目標にしましょう。 2.糖質を控える 糖質の摂取もできるだけ控えましょう。 白米や十六穀米などの穀類に含まれる糖質は、比較的肝臓への影響が少ないと考えられています。そのため、1食につきお茶碗1杯程度なら大きな問題にはつながりません。 それよりも注意すべき食べ物が、お菓子や果物です。ジュース類や駄菓子に含まれているショ糖、果物に豊富な果糖は、穀物と比較すると中性脂肪が肝臓に蓄積しやすい特徴があります。 普段の食生活でもできるだけ間食を避け、糖質が多く含んでいる食べ物はなるべく摂取しないように心がけましょう。 3.脂質を控える 脂肪肝を改善するには、脂質を控えることも重要です。とくに、揚げ物やマヨネーズなどの脂質が豊富な食べ物には注意が必要です。 食べ物を調理する際は、なるべく動物性ではなく植物性の油の使用を心がけましょう。1日あたりの油の使用量は、大さじ1杯程度までに抑えるのが理想的です。 脂質の過剰摂取は肝臓に中性脂肪がたまる原因となりますが、極端な制限は必須脂肪酸の欠乏につながります。そのため、適度な脂質の制限が重要です。 食事の目安として、脂質を多く含むものを摂取する機会を週に1〜2回程度に抑えるように調整しましょう。 4.たんぱく質を適度に摂取する 糖質や脂質を控えめにする一方で、たんぱく質はなるべく意識的に摂取しましょう。 たんぱく質は、筋肉を作る上で欠かせない栄養素です。たんぱく質の過不足は、脂肪肝を悪化させるとされています。適量を確保するためには、良質なたんぱく質の摂取が大切です。 良質なたんぱく質を含む食べ物は、おもに以下のとおりです。 豆腐 納豆 牛乳 肉類(牛、鶏、豚) 魚介類(あじ、サバなど) 食事の際は、これらの食べ物を取り入れてみましょう。 5.アルコールの考え方 アルコールは肝臓で脂肪に合成されやすく、脂肪肝の悪化につながる恐れがあります。 可能なら禁酒が望ましく、飲むとしてもアルコール度数の高いお酒や、糖質の多い発泡酒などはなるべく控えましょう。 アルコールを摂取する際は、1日平均2ドリンク(純アルコールで20g)程度までに制限し、週に2日以上は休肝日を設けることが推奨されています。 お酒ごとの純アルコールの目安としては、以下のとおりです。 お酒の種類 目安量 純アルコール量 ビール 中瓶1本(500ml) 20g 日本酒 1合(180ml) 22g ウイスキー・ブランデー ダブル(60ml) 20g 焼酎 1合(180ml) 50g ワイン 1杯(120ml) 12g 6.野菜などの食物繊維が多いものから摂取する 野菜に多く含まれている食物繊維の摂取も重要です。 食物繊維は食後の血糖値の上昇をゆるやかにして、コレステロールの増加を防ぐ働きがあるとされています。そのほかにも、満腹感を得られるようになり、エネルギーの摂りすぎ防止も期待できます。 1日の野菜の摂取量は、約350gが目安です。食物繊維は野菜だけでなく、海藻やきのこ類などにも豊富に含まれているので、これらの食べ物も意識的に取り入れてみましょう。 7.食事の仕方に配慮する 食べ物だけでなく、食事の仕方にも工夫が必要です。具体的なポイントは、以下のとおりです。 1日3食を規則正しい時間で食べる 夜遅くの食事は控える ゆっくり良く噛んで食事をする 主食・主菜・副菜のバランスを整える 不規則な時間帯での食事は、脂肪をため込む原因となります。また、ゆっくり良く噛むことで消化が良好となり、満腹中枢が刺激されて満腹感を得やすくなります。 栄養バランスを整え、偏った食事にならない点も注意が必要です。 まとめ|食事習慣を整えて脂肪肝の改善をしよう! 脂肪肝とは、肝臓を構成している肝細胞表面に脂肪が沈着して蓄積される病気です。 本疾患の原因として、肥満や糖尿病、過度のアルコール摂取などがあげられます。食事内容を見直すことで、脂肪肝の改善が期待できます。 脂肪肝を放置すると肝臓の機能が悪くなるだけでなく、肝硬変や肝臓がんなどの深刻な病気につながる恐れもあるでしょう。病状が悪化する前に、早めに医療機関にご相談ください。 脂肪肝の食事に関する良くある質問 ここでは、脂肪肝の食事に関する良くある質問についてお答えします。脂肪肝について疑問がある方は、ぜひ参考にしてみてください。 脂肪肝に良い食べ物は? 脂肪肝の方におすすめなのが、良質なたんぱく質を含む食べ物や食物繊維が豊富な食べ物です。 たんぱく質は普段不足しがちなので、肉類や魚類などの質の高い栄養源は積極的に摂り入れることをおすすめします。 また、食物繊維には脂肪の蓄積を防ぐ作用が期待できます。野菜やきのこ類など、食物繊維が豊富な食べ物を意識的に食べましょう。 脂肪肝は糖質制限すべき? 糖質制限は、脂肪肝に対して大きな効果が得られるわけではないとされています。 海外の研究によると、減量するには糖質や脂肪などの特定の栄養素ではなく、摂取カロリーの制限が大きく関係しているとされています。(文献1) そのため、糖質や脂質などの栄養素よりも、摂取カロリーを意識した食生活を心がけましょう。 ただ、栄養素の偏りは健康に悪影響を及ぼす恐れがあるので、糖質や脂質を控えめにしつつ、たんぱく質を意識的に摂り入れてみてください。
2022.05.19 -
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肝臓の重要な働きと注意すべき気について解説 肝臓とは、人間が生きて行く上で重要な働きを有する大切な臓器であることはご存知かと思います。では、肝臓がなぜ重要でどのような働きを行っているかご存知でしょうか? 肝臓は、人体の腹部内において右上の肋骨に位置する臓器であり、成人では約1kg以上もの重量がある臓器で体重の50分の1にあたるほどの存在感があります。 肝臓という臓器の役割は、栄養素などを含めて様々な物質を化学的に変化させる機能を有していて人間の身体の中で最大の代謝機能を司る重要な臓器です。 この臓器は、日々何千という生体酵素を介して500種類以上の複雑な代謝過程を起こしており、肝臓が元気であることは、その他のすべての器官や臓器にとっても非常に重要なことと言えるのです。 そこで今回は、「肝臓の役割」と「肝臓に関する主な病気」に関して詳しく解説していきます。 肝臓の働きと役割 肝臓は多くの働きをする臓器ですが、その中でも大きく4つの事項に分けることができます。ただ、肝臓の働きは多岐にわたります。 本稿では働きを便宜上4つに分けて示しましたが代謝と備蓄を別にとらえたり、免疫を含めなかったり、色々な面から解説されています。そのため、肝臓の働きを4つと限定するものではないのでご注意ください。 肝臓の4つの役割 胆汁を作る(脂肪成分を消化するための液体) 代謝、栄養素(エネルギー)を貯える 有害な同素等の中和、解毒 免疫機能 1)胆汁を作る 胆汁は、食べ物の中に含まれる脂肪成分などを消化するために必要な液体の分泌物であり、おおむね黄緑色の色調を呈しています。 胆汁は、肝臓における細胞から絶えず分泌されており、肝細胞レベルでは脾臓から運搬されてきたビリルビンという黄色の色素性成分を水に溶けやすいように変化させています。 2)栄養素を貯えて変化させる 普段私たちが摂取している多くの食べ物はそのままの状態では身体に吸収されませんので、有効な栄養素として効率よく吸収できるように肝臓で代謝することが必要になります。 肝臓は糖や脂質における代謝という観点においても中心的な役割を果たしている臓器のひとつです。例えば、炭水化物から摂取されるブドウ糖成分をグリコーゲンという物質に変化させた状態で体内に貯えることができます。 その上で、必要な時に合わせてエネルギーとして使用できるよう肝臓外の体内へ送り出す機能も有しています。 更に骨髄という場所で赤血球などの血液成分を作成するために必要な物質である葉酸やビタミンB12を貯蔵し、必要時に分配する役割も担っています。 ほかにも、たんぱく質から摂取されるアミノ酸成分からアルブミンとフィブリノゲンという物質を作って血中に循環させる機能を持っています。 3)解毒作用を有している 肝臓は生体にとって極めて重要な機能を司っており、体内に侵入した毒物を分解して毒性のない物質に変換することが出来ます。例えば、飲酒時のアルコールを中和したり、喫煙では、ニコチンを人体にとって無害なものへと中和して解毒する作用を有しています。 また、体内に乳酸が余分に溜まると倦怠感を自覚すると言われていますが、肝臓内においてはその乳酸成分をグリコーゲンに変化させることが出来ます。 4)免疫細胞が活躍 肝臓内においてクッパー細胞と呼ばれる重要なセル成分が生体に入ってきた異物を貪食する、あるいはナチュラルキラー(NK)細胞がウイルスに感染した細胞や老廃物を処理するなど免疫機構にとって重要な細胞に対して肝臓は指令する重大な働きを担っているのです。 肝臓の注意が必要な病気とは ここでは、肝臓に関連する非常に怖い病気について、いくつか紹介していきます。 急性肝炎 まずは、「急性肝炎」に関してご説明いたします。この病気は、肝炎ウイルスやアルコール、薬剤などの影響によって肝臓内に存在する細胞が破壊されて強い炎症所見を呈するものです。 例えば、「アルコール性肝炎」は、飲酒の習慣化し、その量が多い場合に起こりやすい疾患です。肝臓に脂肪が蓄積されることで炎症が起こります。また、飲酒の習慣が内にも関わらずアルコール性肝炎似ている症状で肝臓に脂肪が蓄積し炎症が起こす「非アルコール性肝炎」というものもあります。 肝炎ウイルス(A・B・C・E型/Dもあるが日本ではあまり見られない)に感染する「ウイルス性肝炎」の場合、数週間から数カ月経過して身体の倦怠感、食欲不振、白目や皮膚が黄染される黄疸などの症状が出現すると言われています。 これらの疾患では、原因となっている「飲酒をやめる」、原因となる「ウイルスを排除」する、原因となっている「薬剤を中止」するなどの対応ができれば、数カ月単位で症状が改善していく傾向があります。 慢性肝炎 次に、「慢性肝炎」に関して説明します。この病気は、急性肝炎とは異なりおよそ半年以上に渡って肝臓自体の炎症が継続している状態を指しています。 主な発症要因としては、急性肝炎が完全に治りきらない状態が続くために引き起こされますが、本疾患における自覚症状が非常に軽微であるために健康診断の血液検査でたまたま発見されることのほうが多いと言われています。 仮にそのまま放置すると肝硬変や肝臓癌などに移行することもあると問題視されているため、健康診断の数値などに対して十分に注意を払う必要があります。異常な数値がみられる場葵は早期に病院等、医療機関の早期受診をお勧めします。 肝硬変 そして、次に「肝硬変」という病気を紹介したいと思います。 この病気は皆さんもよく耳にする機会が多いかもしれませんが、慢性肝炎などによって肝臓内の細胞が破壊されて修復再生を繰り返すうちに、肝臓組織が繊維化されて固くなってしまう特徴を有していることから名づけられた疾患です。 肝臓における重要な機能や役割が低下して、元の正常な状態に改善できなくなってしまい、肝細胞癌など悪性腫瘍病変に進展してしまうことも十分に考えられます。 初期にはほとんど有意な症状を認めないことが多いですが、進行するにしたがって倦怠感や吐き気、あるいは体重減少など多彩な症状が出現することが知られています。 さらに病状が悪化すると、四肢の浮腫像や腹部膨満感、そして全身が黄色く染まる黄疸と呼ばれる症状などが自覚されることになります。 肝臓病の例 急性肝炎 慢性肝炎 アルコール性肝炎 非アルコール性肝炎 ウイルス性肝炎 肝硬変 肝臓がん まとめ・肝臓の病気は怖いのでくれぐれもご注意ください 今回は、肝臓の役割と肝臓に関する主な病気に焦点を当ててご紹介してまいりました。肝臓という臓器は身体にとって非常に重要な役割を数多く有している大切な臓器です。組織を修復する能力や代償する機能にも優れています。 今回、代表的な肝臓の病気をご紹介しましたが、皆様ご存じの通り、肝臓は「沈黙の臓器」と言われています。通常、わたしたちは体のどこかに異常があると、何かしらかの痛みを自覚するなど、様々な自然反応が出現します。 これに対して、肝臓は非常に我慢強く、多少の異常が起こっても症状が乏しい特徴があります。そのため、病変の存在に気付きにくく、知らぬ間に病状が進行していることが往々にしてあります。 ある意味、非常に怖い臓器なのです。注意して見守ってやらねばなりません。 したがって、定期的な健康診断などを受診して自分の肝臓が正常に機能しているかどうかを評価することは大変重要なことですし、実際に肝臓病になって出現する症状は個々で異なる場合も考えられますので、不安であれば主治医や肝臓専門医に相談しましょう。 また自身で予防できることとして、「暴飲暴食などの習慣化を避ける」だけでも一部の肝臓病は避けることができます。もの言わぬ臓器だけに自分自身を労わる気持ちをもって生活を見直し、管理するようにしましょう。 肝臓の病気は怖いのでくれぐれもご注意ください。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼肝臓に関わる病気|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、肝臓病の新たな治療法として注目を浴びています
2022.04.04 -
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「健康診断で肝臓の数値が高いと言われて不安になった…」 「肝臓の数値異常は薬のせい?」 このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくいため、健康診断の結果で初めて異常を指摘される人も多いとされています。 数値が悪化する原因はさまざまですが、日常的に服用している薬が肝臓に負担をかけている可能性もあります。 本記事では、肝臓の数値が悪化する原因やそれを改善するための対策について解説します。 肝臓の数値を改善し、健康な状態を維持するためのポイントを押さえていきましょう。 薬による肝臓への負担と薬物性肝障害 私たちが薬を服用すると、その成分は体内で吸収され、血液を通じて全身に運ばれます。 その過程で重要な役割を担うのが「肝臓」です。 肝臓は、薬の成分を分解・代謝し、体にとって不要なものを無毒化する働きをしています。 しかし、薬の種類や飲み合わせ、服用量によっては、この代謝過程が肝臓にとって大きな負担になる場合があり、肝臓の数値に影響を与え、基準値より高くなることがあります。 肝臓の数値が上昇している場合、薬が原因となっている「薬物性肝障害」の可能性が考えられます。 自覚症状がないケースも多いため、定期的に肝機能をチェックし、薬の影響で肝臓に負担がかかっていないかを確認することが大切です。 薬物性肝障害とは? 薬物性肝障害とは、薬の影響によって肝臓の細胞が傷つき、肝機能に異常が生じる状態を指します。 薬そのものだけでなく、代謝の過程で発生する物質が肝細胞にダメージを与えることもあります。 症状には倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(おうだん)などがありますが、自覚症状がまったく現れないケースも少なくありません。 そのため、体調に異変がなくても、定期的に血液検査で肝臓の数値(AST・ALTなど)を確認することが大切です。 とくに、複数の薬を同時に服用している方や、長期間薬を使っている方は、知らず知らずのうちに肝臓に負担がかかっている可能性があります。 数値の異常が見つかった場合は、薬の中止や変更を検討する必要があるため、早期発見と医師のフォローが重要です。 肝機能を示す主な検査数値と薬が与える負担について 肝臓の状態を把握するには、血液検査で得られる肝機能の数値をチェックすることが重要です。 肝臓への薬の負担を把握するうえでも注目すべき指標は次の3つです。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP それぞれの数値の役割と、どのような薬が影響を及ぼすのか、詳しく解説します。 AST(GOT)とは? AST(GOT)は、肝臓に関するトラブルの初期発見に役立つ指標のひとつです。 主に肝臓や心臓、筋肉などに存在する酵素で、細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出し、その数値が上昇します。 正常値の目安 :男性でおおよそ10~40 U/L、女性で10~35 U/L 上昇するケース:肝炎、アルコール性肝障害、筋肉疾患など ASTは、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)や抗生物質、抗てんかん薬などの使用によって上昇することがあります。 とくに高用量の解熱鎮痛薬は、肝臓への代謝負担が大きく、ASTが一時的に高くなる場合があります。 ALT(GPT)とは? ALT(GPT)は、主に肝臓に多く含まれている酵素で、肝細胞が損傷を受けた際に血中に放出されます。 ASTよりも肝臓に特化した指標とされており、肝機能をダイレクトに反映する重要な数値です。 正常値の目安:男性で10~45 U/L、女性で7~30 U/L 上昇するケース:脂肪肝、薬物性肝障害、ウイルス性肝炎など ALTは、脂質異常症の治療薬(スタチン系)や糖尿病治療薬(メトホルミン)、一部の抗生物質などで上昇することがあります。 また、サプリメントの過剰摂取もALT上昇の原因になる可能性があり、「健康のために摂ったつもり」が肝臓に負担をかけるケースもあります。 γ-GTPとは? γ-GTP(ガンマグルタミルトランスぺプチダーゼ)は、肝臓や胆道に関係する酵素で、アルコール摂取や薬物、胆道系の異常によって上昇しやすい数値です。 とくに、アルコール性肝障害との関連が深い指標です。 正常値の目安:男性で10~70 U/L、女性で10~40 U/L(施設によってやや異なる) 上昇するケース:アルコール性肝障害、胆道閉塞、脂肪肝など γ-GTPは、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)や精神安定剤(バルビツール酸系)、一部の抗菌薬などで上昇することがあります。 また、鎮静剤や睡眠薬の長期使用でもγ-GTPが高くなる場合があります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 薬による肝臓の負担を軽減する方法 薬は正しく使えば健康の回復や症状の改善に大きな力を発揮しますが、使い方を誤ると肝臓に負担をかけてしまうこともあります。 本章では、薬の服用による肝臓への負担をできるだけ軽減するため、次の3つの方法を紹介します。 医師・薬剤師に相談しながら服用する 用法・用量を守る(過剰摂取しない) アルコールと併用しない 医師・薬剤師に相談しながら服用する 複数の薬を同時に使うことで、肝臓に過度な負担がかかることがあります。 薬を服用する際は、自己判断で市販薬やサプリメントを追加するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。 とくに持病がある方や長期間薬を使用している方は、定期的な血液検査で肝臓の数値を確認しながら、服薬を見直すことも検討しましょう。 用法・用量を守る(過剰摂取しない) 「早く治したいから」と、決められた用量を超えて薬を飲むことは非常に危険です。 解熱鎮痛薬や風邪薬などは市販でも手軽に手に入りますが、過剰摂取すると肝臓に強いダメージを与えることがあります。 薬は決められた量・タイミングで飲むことが、肝臓の負担を最小限に抑える基本です。 アルコールと併用しない アルコールは肝臓で分解されるため、薬と一緒に摂取すると肝臓への負担がさらに大きくなります。 解熱鎮痛剤や抗生物質など、肝臓に影響を与えやすい薬を服用している場合のアルコールの摂取は、数値異常や薬物性肝障害のリスクを高めることになります。 薬を服用中は、なるべくアルコールは控えるようにしましょう。 薬以外で肝臓に負荷がかかる要因 薬の服用だけでなく、日常生活の中にも肝臓に負担をかける要因は多く存在します。 代表的な要因は次のとおりです。 アルコールの過剰摂取 脂肪肝や肥満 睡眠不足や過労 サプリメント・健康食品の過剰摂取 上記の要因が重なることで、肝臓が処理しきれず、薬による影響がより強く出る可能性もあるため注意が必要です。 肝臓は自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」ともいわれているため、気づかないうちにダメージが蓄積していることも少なくありません。 薬を安全に使うためにも、日常的に肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 肝臓の数値を正常化するためにできること 肝臓の機能は体全体の健康に大きな影響を与えるため、定期的に肝臓の状態をチェックし、必要な対策を講じることが重要です。 本章では、肝臓の数値を正常化するためにできることとして次の2つがあります。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓に優しい生活習慣を継続する それぞれについて、詳しく解説します。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓の数値を正常化するための第一歩は、健康診断で定期的に肝機能をチェックすることです。 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少ダメージを受けていても自覚症状が出にくいため、異常があっても気づかないことがよくあります。 健康診断では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が肝臓の状態を把握する指標として確認されます。 もし検査結果で数値が基準値を超えていた場合は、原因の特定が重要です。 たとえば、薬の服用歴や飲酒の習慣、肥満の有無などを医師と一緒に振り返り、生活習慣や薬の見直し、再検査などの対策がとられます。 健康診断の結果は「見て終わり」にせず、早期に対策を講じることが大切です。 とくに、薬を継続して服用している人や肝臓に負担をかける生活習慣がある人は、年に一度の健康診断を習慣にすることで、肝機能の異常を早期にキャッチしやすくなります。 肝臓に優しい生活習慣を継続する 肝臓の数値を正常化するためには、生活習慣の改善が不可欠です。 まず、バランスの取れた食事を心がけ、肝臓に負担をかける脂肪分やアルコールの摂取を控えましょう。 脂肪肝や肥満は肝臓に大きな負担をかけるため、適度な運動を取り入れて体重管理を行うことも大切です。 また、睡眠は肝臓の修復を助けるため、質の良い睡眠を十分にとることもポイントです。 生活習慣を改善することにより、肝臓の機能が回復し、数値が正常範囲に戻ることが期待できます。 肝臓は自己修復力がある臓器なので、日々のケアを続けることで、肝機能が向上しやすくなります。 まとめ|肝臓の負担が少ない適切な食事・運動で異常数値を防ごう 肝臓は私たちの体内で薬やアルコール、老廃物の処理などを担う重要な臓器ですが、知らず知らずのうちに負担がかかっていることも少なくありません。 薬を服用している場合、肝臓はその成分を代謝・分解するために大きく働くことになり、負担が蓄積すると数値異常や薬物性肝障害のリスクも高まります。 肝機能の異常を防ぐためには、日々の生活習慣の見直しが何より大切です。 バランスの良い食事と脂肪・糖分・アルコールの過剰摂取を避けることで肝臓負担を軽減できます。 定期的な健康診断での数値チェックと異常時の早期受診も大切です。薬との付き合い方を見直し、肝臓に優しい生活を心がけましょう。 肝臓健康に不安がある方は、当院「リペアセルクリニック」での再生医療もご検討ください。専門医が個別に合わせた治療をご提案しています。ぜひご相談ください。
2022.03.25 -
- 肝疾患
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脂肪肝の改善に向けて その原因と症状、治療法について解説します 肝臓に中性脂肪が貯留した状態を「脂肪肝」と言います。この疾患はメタボリック症候群に合併しやすいことが指摘されており、放置すると肝炎などを引き起こして重症化するため注意が必要です。 脂肪肝とは、一言で言うと肝臓内に中性脂肪を始めとした脂質成分などが異常蓄積する状態を指しており、通常では日々の生活習慣において栄養バランスの偏った食生活や慢性的な運動不足などが原因で引き起こされます。 一般的に、脂肪肝という病気には飲酒をしすぎる場合に発症するアルコール性、あるいはアルコールを多量に摂取していないけれども引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患(略称:NAFLD)に分類されます。 このNAFLDは、さらに細かく分けると病状があまり進行しない種類の非アルコール性脂肪肝(略称:NAFL)と、その逆に肝炎へ進展しやすいことが問題視されている非アルコール性脂肪性肝炎(略称:NASH)に分類されます。 脂肪肝 アルコール性 過度の飲酒が原因 非アルコール性脂肪性肝疾患 略称:NAFLD 飲酒を原因としない 非アルコール性脂肪肝/略称:NAFL 症状が進行しずらい 非アルコール性脂肪性肝炎/略称:NASH 肝炎に進行しやすい 脂肪肝は基本的には無症状のままで経過することが多く、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありませんが、本疾患を放置しすると約1~2割の頻度で「肝炎、肝硬変、肝細胞がん」へと病状が悪化するケースも散見されるため注意が必要です。 この病気は生活習慣と関連して発症することが多いことが判明しており、肝硬変などに進行していない状態であれば普段の生活習慣を見直すことで肝臓の機能が改善することも十分に期待できます。 今回は、脂肪肝とはどのような病気なのか、その原因、症状、検査、脂肪肝を改善するための情報を中心に詳しく解説していきます。 脂肪肝の原因 脂肪肝を引き起こす主要な原因としては過食と多量の飲酒習慣です。 それ以外にも、糖尿病、基礎疾患に対するステロイド剤の長期服用、栄養障害による代謝異常なども本疾患を発症させる原因になることが判明しています。 導入でも触れましたが、特にアルコールではなく過度の食事摂取などが原因で脂肪肝から肝炎や肝硬変に進展するタイプを「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼称しており、近年では年々罹患率が増加していることから特に注目を浴びています。 アルコール性の脂肪肝に関しては当然のことながら過剰な飲酒習慣が継続されることによって発症すると伝えられている一方で、非アルコール性の脂肪肝ではその背景に肥満やメタボリックシンドロームなどが潜在して引き起こされることが通常です。 その他にも、やせ過ぎ、遺伝的な代謝疾患、妊娠を契機として様々な原因や経過によって脂肪肝が引き起こされることも報告されています。 脂肪肝の原因の一例 過食 過度の飲酒 糖尿病 ステロイド剤の長期服用 栄養障害(代謝異常) 肥満、メタボリックシンドローム 痩せすぎ、遺伝的代謝疾患、妊娠 その他 脂肪肝の症状 脂肪肝の初期には、ほとんど自覚症状はなく、顕著な症状が現れにくい状態でもあります。脂肪肝が悪化して、やがて肝炎を起こして肝硬変に進行して初めて食欲不振や倦怠感、右上腹部痛などの有意な症状が出現するようになる傾向があります。 これらの病気が進行すると、手足の浮腫所見や体が黄色く染まる黄疸、あるいは腹水貯留などの症状が出現しますし、仮に肝臓への血流が停滞して門脈圧が上昇しすぎると食道静脈瘤を形成して命に係わる場合も考えられます。 このように、脂肪肝は進行すると重篤で致命的な症状が現れる可能性がある疾患ですので、無症状でも指摘された際には放置することなく医療機関を受診するように心がけましょう。 脂肪肝の状況 近年の肥満人口の増加に伴って過剰な栄養摂取による脂肪蓄積を原因とする非アルコール性脂肪性肝疾患 (non‐alcoholic fatty liver disease:略称NAFLD) が世界的にみて患者数が増えていると言われています。 NAFLDの中でも単純な脂肪肝の場合には一般的に予後良好とされています。 ところが、肝臓レベルでの炎症や線維化を主徴とする過度のアルコール摂取歴が関与しない脂肪性肝炎 (non‐alcoholic steato‐hepatitis: 略称NASH)については肝硬変や肝細胞癌に進展する重症なタイプであると考えられています1)。 脂肪肝の検査 仮に健康診断などで脂肪肝を指摘されて医療機関を受診して実施された血液検査で肝数値などの異常所見が認められた場合には、肝臓の状態をより詳細に精査するために腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などを始めとした画像をもって評価が実行されるでしょう。 それ以外にも肝細胞を採取する肝生検という処置が行われて、それによって得られた細胞の特性を顕微鏡で詳しく調査することによって病気の進展度や悪性所見の有無などが確実にアセスメントすることができます。 基本的には、摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると余分なエネルギーが自然に発生して中性脂肪につくり替えられて肝臓にも貯蔵されることが知られていることから、肝細胞の30%以上で中性脂肪が沈着していると原則脂肪肝と診断されます。 ▼肝臓の再生医療について再生医療というアプローチもあります。 肝臓(肝炎・肝硬変)の再生医療・幹細胞治療 脂肪肝の改善に向けて 脂肪肝は、その原因や発症機序によって治療方針が異なります。生活で注意すべき視点も柔軟に変化させる必要があります。アルコールが原因で脂肪肝に罹患した場合には、当然ですが日々の生活においてアルコール摂取量を減らすことが肝要です。 また、非アルコール性脂肪性肝疾患のように肥満やメタボリックシンドロームなどが背景として存在している際は、運動して減量する、食事量を調整するなどの対策が必要となります。 脂肪肝の治療では、一度生活習慣を是正出来たとしても元通りの生活リズムに戻ってしまうと脂肪肝が再発してしまうこともあり、日常的に運動療法や食事治療などを楽しむ心意気を持ちながら、決して無理しない範囲で継続することがキーポイントとなります。 脂肪肝を指摘された際には、放置せずに早めに医療機関を受診して確実な治療に結び付けることが重要な視点となります。 アルコールが原因で脂肪肝に罹患した場合の改善ポイント 日々の生活においてアルコール摂取量を減らす 肥満やメタボリックシンドローム(非アルコール性脂肪性肝疾患)の改善ポイント 運動して減量する、食事量を調整する 生活習慣の見直しで好転しても元の生活リズムに戻らないようにする改善ポイント 日常的に運動療法、食事治療を楽しみ無理せず継続できるよう心がける まとめ・脂肪肝の改善に向けて その原因と症状、治療法について 今回は脂肪肝とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療、そして改善のポイントについて解説いたしました。 脂肪肝は、肝臓に中性脂肪や脂質などの成分が蓄積する状態でバランスが偏った食生活や運動不足が原因で発症します。 健康診断や人間ドックで肝機能の数値で異常が発見されることが多く、初期の段階ではほとんど自覚症状が無いのが特徴的ですが病状が進行すると倦怠感、腹部膨満感、食欲不振などの有意症状が出現する場合もあります。 この病気に対する基本的な治療策としては、主に生活習慣の改善、食事療法や運動療法になります。 そのたには定期的に主治医や、かかりつけ医と相談しながら肝機能の数値を検査して自分の状態を適切に把握していくことが改善に向けての重要な観点になります。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼以下にも脂肪肝に関する記事がございます 脂肪肝を改善するために食べてはいけないもの
2022.03.17