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肝血管腫とは?放置していい?がんとの違いや治療が必要なケースを解説【医師監修】
肝血管腫は、がんとは異なる良性の腫瘍です。肝臓の中で細い血管が網目のように絡み合い、塊になったもので、多くは症状がなく治療も必要ありません。
ただし、「放置してよい」のは、ほかの病気ではないと確かめたあとの話です。最初に一度は造影CTやMRIなどの精密検査を受け、がんと見分けておくことが大切です。
本記事では、内科医が肝血管腫とがんとの違い、検査の流れ、治療が必要なケース、日常生活の注意点について解説します。健診で肝血管腫を指摘された方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
肝血管腫とは?肝臓にできる良性の「血管のかたまり」
肝血管腫とは、肝臓の中で細い血管が網目のように絡み合い、塊になった良性の腫瘍です。
多くは「海綿状血管腫」と呼ばれるタイプです。「海綿」はスポンジのことで、小さな穴がたくさんあるスポンジのように見えることから、この名前が付いています。
肝細胞がんなどの悪性腫瘍と違い、ほかの臓器へ転移したり、周りの組織に入り込んだりしません。
肝血管腫は、めずらしい病気ではありません。米国のデータでは、成人の約20%に症状のない小さな肝血管腫がみられ、そのほとんどが女性です。(文献1)
近年は画像検査が広く行われるようになりました。そのため、健診やほかの病気の検査で偶然見つかるケースが増えています。(文献2)
以下の記事では、女性に多い肝臓の病気について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
健診で「肝血管腫の疑い」と言われるのはなぜ?
健診の腹部エコーで、肝血管腫は境界のはっきりした白っぽい影として映ります。
エコーの画像だけでは確定できないため、健診の結果には「疑い」と書かれることが多くあります。「疑い」は確定診断ではありません。ただし、典型的な見え方をしていれば、血管腫である可能性は高いと考えられます。
がんの治療歴や肝臓の持病がなく、大きさが3cm未満で典型的な見え方であれば、エコーだけで診断できるとされています。(文献3)
これらに当てはまらない方は、造影剤(画像を見やすくする薬)を使った検査で確かめる必要があります。
まずは一度きちんと検査を受けていただき、安心していただくことが大切だと考えています。
肝血管腫はがんになる?がんとの違い
肝血管腫ががんに変化することは基本的にありません。
「血管腫だと思っていたら、がんだった」という話を聞いて不安になる方もいるかもしれません。これは血管腫ががんに変わったのではなく、最初の画像で見分けがつかなかったケースと考えられます。
そのため、初めて指摘されたときは、造影CTやMRIで確認しておくことが大切です。
ただし、それは最初に血管腫であってがんではないと見分けられていることが前提です。そのため、初回の精密検査は必ず受けてくださいとお伝えしています。
肝血管腫と肝臓がんの主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 肝血管腫 | 肝臓がん |
|---|---|---|
| 腫瘍の性質 | 良性 | 悪性 |
| 大きさの変化 | ほとんど変わらない | 短期間で大きくなりやすい |
| ほかの臓器への転移 | しない | することがある |
画像の見え方が典型的でないと言われた場合は、専門の医療機関で詳しく調べてもらいましょう。
肝血管腫の症状|多くは無症状で大きくなると腹部の張りなど
肝血管腫のほとんどは無症状で、健診で見つかっても自覚症状がないのが一般的です。ただし、大きさが約4cmを超えると、周りの臓器を押して症状が出やすくなります。(文献1)
主な症状は以下のとおりです。
- お腹の不快感や張り
- 食欲がない
- 吐き気
- 少し食べただけでお腹がいっぱいになる
10cmを超える大きな血管腫では、腹痛が出やすい傾向があります。(文献2)ごくまれに、発熱や黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)などがみられることもあります。
ここでは、すぐに受診すべき症状と、大きな血管腫で注意したい点、乳幼児の肝血管腫について解説します。
すぐに医療機関を受診すべき症状
肝血管腫は、まれに破裂してお腹の中で出血することがあります。
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
- 突然の強い腹痛
- 冷や汗
- ふらつきやめまい
- 意識がぼんやりする
お腹の張りや痛みが続く場合も、早めに消化器内科を受診しましょう。胃や胆のうなど、ほかの原因がないかもあわせて確認できます。
巨大な血管腫では出血や血液凝固の異常に注意
巨大な血管腫では、血が止まりにくくなることがあります。血管腫の中で、血を固める働きをもつ血小板などが使われてしまうためです。この状態は「カサバッハ・メリット症候群」と呼ばれます。
鼻血が出やすい、あざができやすいなどの変化に気づいたら、早めに受診しましょう。
こうした状態は、非常に大きな血管腫でみられるものです。健診で見つかる小さな血管腫で、心配する必要はほとんどありません。
乳幼児の肝血管腫は成人とは分けて考える
乳幼児の肝血管腫は、健診で見つかる成人の血管腫とは別の病気として考えます。
乳児にできる肝血管腫は、通常は成長とともに自然に消えていきます。ただし、一部の巨大なものや数が多いものでは、心不全や血が止まりにくい状態など、重い症状が出ることがあります。これは「乳幼児肝巨大血管腫」として、指定難病に定められています。
国内で新たに発症するのは、年間5〜10例程度と推定されるまれな病気です。肝臓の働きが慢性的に低下した場合には、肝移植が行われることもあります。(文献4)
成人の方が健診で指摘された血管腫とは異なるため、過度に心配する必要はありません。
肝血管腫の原因とできやすい人
肝血管腫の原因は、はっきり分かっていません。生まれつきの血管のでき方の異常が関わっていると考えられています。(文献1)
女性に多い傾向はありますが、男性にもできます。性別によって、診断や治療の考え方が変わることはありません。
原因が分かっておらず、現時点で確立した予防法はないため、健診などで指摘されたときに適切な検査を受けることが大切です。
健診で指摘されたあとの受診・検査の流れ
健診で肝血管腫を指摘されたら、消化器内科または肝臓内科を受診しましょう。健診結果の用紙と、過去に撮った画像があれば持参してください。以前の画像と比べることで、大きさの変化を確認できます。
受診後の主な流れは以下のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 問診 | 症状や持病、がんの治療歴、服用中の薬などを確認します |
| 2. 腹部エコー検査 | 血管腫の大きさや見え方を確認します |
| 3. 造影CT・MRI検査(必要に応じて) | エコーで判断が難しい場合に、がんなどと見分けます |
| 4. 方針の決定 | 経過観察でよいか、治療を検討するかを決めます |
血液検査も行われることがあります。主な目的は、肝炎などほかの肝臓の病気がないかを確認することです。がんの目印となる物質(腫瘍マーカー)を調べることもあります。
なお、針を刺して組織をとる検査(生検)は、出血のリスクがあるため原則として行いません。
また、がんの治療歴や服用中の薬についても伝えていただけると、診察がスムーズに進みます。
ここでは、主な画像検査の特徴を解説します。
超音波(エコー)検査|最初に行う体に負担の少ない検査
超音波検査は、被ばくや痛みがなく、最初に行われる検査です。お腹に機械を当て、跳ね返ってきた超音波を画像にして肝臓の中を調べます。
肝血管腫は、境界のはっきりした白っぽい影として映るのが特徴です。姿勢を変えると内部の見え方が変わる「カメレオンサイン」も、判断の手がかりになります。ただし、エコーだけでは、がんとの見分けが難しい場合があります。その場合は、造影CTやMRIで詳しく調べます。
造影CT検査|造影剤の染まり方で見分ける
造影CT検査は、造影剤の染まり方の違いから、血管腫かどうかを見分ける検査です。
造影剤を注射して撮影すると、肝血管腫は周りからまだらに染まり始めます。時間をかけて中心まで染まっていくのが、血管腫の特徴的なパターンです。
一方で、放射線による被ばくや、造影剤による副作用の可能性があります。以下に当てはまる方は、検査前に医師へ伝えてください。
- 過去に造影剤でアレルギーが出たことがある
- 腎臓の働きが低下している
- ぜんそくがある
- 糖尿病の薬を飲んでいる
糖尿病の薬は、メトホルミンなど一部の種類で、検査前後に服用を控える必要があります。お薬手帳を持参すると安心です。
MRI検査|良性が疑われるときに最も情報が多い検査
MRI検査は、良性の腫瘍が疑われるときに最初に行う精密検査として望ましいとされています。(文献3)
強い磁石と電波を使って体の断面を撮影するため、被ばくの心配がありません。肝血管腫はMRIの特定の撮り方(T2強調画像)で明るく写るため、ほかの病気と見分けやすいのが特徴です。
一方で、検査に時間がかかり、費用もCTより高くなる傾向があります。狭い筒の中に入るため、閉所が苦手な方には負担になることもあります。
不安がある場合は、事前に医師や検査スタッフに相談しましょう。
放置してよい?肝血管腫の治療方針
無症状で典型的な肝血管腫は、基本的に治療の必要はありません。治療が必要になるのは、症状がある場合など一部に限られます。
ただし、「放置してよい」とは、受診せずに済ませてよいという意味ではありません。最初に精密検査で血管腫と確認したうえで、主治医の方針に沿って経過をみることが前提です。
ここでは、定期的に様子をみる「経過観察」でよいケースと、治療が必要になるケースについて解説します。
無症状で典型的な血管腫は経過観察でよい
症状がなく、画像で典型的な見え方をしている血管腫は、治療をせずに経過をみるのが基本です
肝血管腫の大部分は、時間がたっても大きさが変わりません。一方で、少数ですが大きくなったり、小さくなったり、自然に消えたりすることもあります。定期的な画像検査が必要かどうかは、医療機関によって考え方が異なります。典型的な血管腫であれば、定期的な画像検査は不要とする考え方もあります。(文献3)
検査の間隔は、血管腫の大きさや見え方をふまえて主治医が判断します。自己判断で受診をやめず、主治医の方針に従いましょう。
そのため、通院をやめるかどうかは自己判断せず、主治医と相談して決めましょうとお伝えしています。
治療が必要になるケース
治療が検討されるのは、症状がある場合や、大きさ・状態に変化がみられる場合です。
経過観察でよいケースと、治療を検討するケースは以下のとおりです。
| 経過観察でよいケース | 治療を検討するケース |
|---|---|
| ・症状がない ・画像で典型的な見え方をしている ・大きさの変化がほとんどない |
・腹痛やお腹の張りなどの症状がある ・急に大きくなっている ・破裂して出血している ・血が止まりにくいなど、血液の異常がある ・画像でほかの病気ではないと言い切れない |
とくに10cmを超える血管腫では、腹痛や破裂による出血が起こりやすい傾向があります。(文献2)右側の項目に当てはまる方は、主治医とよく相談しましょう。
肝血管腫の主な治療法
治療が必要と判断された場合、主な選択肢は手術、カテーテル治療、放射線治療の3つです。どの治療を選ぶかは、血管腫の大きさや位置、症状、全身の状態をふまえて医師と相談して決めます。
主な治療法は以下のとおりです。
| 治療法 | 治療の特徴 |
|---|---|
| 手術 | 血管腫を切り取る。最も多く行われている治療 |
| カテーテル治療 | 血管腫に栄養を送る血管を塞ぎ、症状を和らげる |
| 放射線治療 | 手術が難しい場合などに、血管腫へ放射線を当てる |
それぞれの治療の特徴を詳しく解説します。
手術(肝切除・腫瘍摘出)
手術は、肝血管腫の治療として最も多く行われている方法です。血管腫を肝臓の一部とともに切り取る方法(肝切除)と、血管腫だけをくり抜く方法(核出術)があります。
お腹の開け方には、主に以下の2つがあります。
| 手術の方法 | 特徴 |
|---|---|
| 腹腔鏡(ふくくうきょう)手術 | お腹に小さな穴を開け、カメラと器具を入れて行う。傷口が小さく済む |
| 開腹手術 | お腹を切り開いて行う。血管腫の位置によっては、こちらのほうが安全な場合がある |
どちらを選ぶかは、血管腫の位置や大きさをもとに医師が判断します。
カテーテル治療(肝動脈塞栓術)
カテーテル治療は、血管腫に栄養を送る動脈を塞ぐ治療です。「肝動脈塞栓術」とも呼ばれ、足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を入れて肝臓の動脈まで進め、血流を止めます。
多くの場合、血管腫そのものは小さくなりませんが症状は和らぎます。血管腫を根本的に治す治療ではない点に注意が必要です。
破裂による出血や、血が止まりにくい状態があるときに行われます。また、手術の前の処置として行われることもあります。
放射線治療
放射線治療は、手術が難しい場合などに検討される治療です。血管腫のある部分に、体の外から放射線を当てます。
放射線治療を行った例では、症状の改善に加えて、血管腫が小さくなったり消えたりしたという報告があります。(文献2)
一方で、副作用もあるため、効果とのバランスをみて放射線の量を決める必要があります。なお、肝臓全体に血管腫が広がり、ほかの治療で改善しないまれなケースでは、肝移植が検討されることもあります。
肝血管腫と診断されたあとの日常生活
肝血管腫と診断されても、日常生活は基本的にこれまでどおりで問題ありません。
ここでは、診断後によくある疑問について解説します。
- 食事やサプリで小さくできる?
- 運動やスポーツは制限が必要?
- 妊娠やピル(ホルモン薬)は続けてよい?
それぞれ詳しく解説します。
小さな血管腫であれば、普段どおりの生活で問題ないとお伝えしています。
食事やサプリで小さくできる?
現在のところ、食事やサプリメントで小さくする方法は確立していません。一方で、経過観察中に血管腫が小さくなったり、自然に消えたりすることはあります。(文献2)
大きい血管腫や症状がある場合は、自己流の対策ではなく、医療機関での治療を検討しましょう。
以下の記事では、健診で気になる肝臓の数値について詳しく解説しているので、ご自身の状況を知りたい方は参考までにご覧ください。
運動やスポーツは制限が必要?
小さく症状のない肝血管腫であれば、一般的に運動の制限は必要ありません。
ただし、10cmを超える大きな血管腫では、破裂の危険が高くなります。外からの衝撃で破裂した例もあるため、注意が必要です。(文献2)
ラグビーや格闘技など、体がぶつかり合うスポーツをしている方は、続けてよいか主治医に相談しましょう。
妊娠やピル(ホルモン薬)は続けてよい?
典型的な肝血管腫であれば、妊娠や経口避妊薬(ピル)の服用を避ける必要はないとされています。(文献3)
ただし、大きな血管腫を指摘されている方や、症状がある方は注意が必要です。妊娠を希望する場合やピルを服用する場合は、産婦人科と消化器内科の両方に相談しましょう。
妊娠中にお腹の張りや痛みが出た場合は、早めに受診してください。
肝血管腫の多くは心配いらない。指摘されたら一度は精密検査を
肝血管腫は良性の腫瘍で、多くは症状がなく、治療も必要ありません。ただし、最初に一度は造影CTやMRIなどで、がんなどほかの病気と見分けることが大切です。
以下に当てはまる場合は、専門の医療機関で相談しましょう。
- 腹痛やお腹の張りなどの症状がある
- 血管腫が急に大きくなった
- 画像の見え方が典型的でないと言われた
突然の強い腹痛やふらつきがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
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肝血管腫に関するよくある質問
破裂する可能性はありますか?
肝血管腫が破裂することはまれです。
ただし、10cmを超える大きな血管腫では、破裂の危険が高くなります。(文献2)また、カサバッハ・メリット症候群で血が止まりにくい状態のときは、破裂した場合の出血が重くなりやすいため注意が必要です。
肝血管腫の破裂に伴う特徴的な症状が、突然の激しい腹痛やめまいなどです。大量の出血で血圧が急に下がる状態(出血性ショック)を起こした場合、意識障害を招く恐れもあるため、すぐに医療機関を受診してください。
10cmを超える大きな血管腫がある方は、体がぶつかり合うスポーツなど、お腹に強い衝撃が加わる運動について主治医に相談しましょう。小さな血管腫であれば、通常は運動を控える必要はありません。
肝血管腫は自然に消えることはありますか?
自然に小さくなったり、消えたりすることもあります。ただし、大部分の肝血管腫は大きさが変わりません。(文献2)
乳児の肝血管腫は、通常は成長とともに自然に消えていきます。(文献1)
消えるかどうかを自分で判断するのは難しいため、主治医の方針に沿って経過をみましょう。
男性でも肝血管腫になりますか?
男性でも肝血管腫になります。女性に多いとされていますが、男性にもみられる病気です。(文献1)
男性でも、診断や治療の考え方は女性と同じです。健診で指摘された場合は、一度消化器内科で詳しく調べてもらいましょう。
何科を受診すればよいですか?
消化器内科または肝臓内科を受診しましょう。健診結果の用紙と、過去の画像があれば持参してください。以前の画像と比べることで、大きさの変化を確認しやすくなります。
治療が必要と判断された場合は、消化器外科や放射線科などへ紹介されます。
参考文献


















