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- ひざ関節
- 変形性膝関節症
膝の痛みは放置してはいけません!今すぐ病院へ 皆さんの日々の暮らしの中で膝が痛いと感じたことはありませんか?、まさか膝痛は、時間が経過すれば自然と治癒するものと思っている方はいませんか? いわゆる膝関節は、見た目では分からないほど色々な組織で取り囲まれていて複雑な構造をしています。また体重の何倍もの衝撃を受け止めてくれる存在でもあり、スポーツはもちろんのこと、日常生活でも損傷を受けやすい場所と言えるのです。 実は、膝の組織は、年月を経て加齢に伴い消耗されていくことをご存知でしょうか? そのため、高齢になればなるほど膝の痛みを自覚する人が増加する傾向があります。また、激しいスポーツ競技を繰り返していたり、肥満気味で体重が重い場合など、膝部分には大きな負担、ストレスがかかっていると容易に想像頂けることでしょう。 膝は日常的にも歩く、走る、座る、立ち上がるといった誰にとっても重要な役割を果たしている大切な部位です。その部分に痛みなどの違和感があるにも関わらず放置していると、スポーツはもちろん、日々の生活で歩いたり、階段を昇り降りするなど単純な動作も困難になる可能性があります。 今回は、膝の痛みを放置すると、どうなるかということをテーマに、膝の痛みに対して病院でどのような処置をするのか、膝の痛みを放置しないで病院へ行くことの重要性を解説してまいりましょう。 膝の痛みがありながら、放置するとどうなるか 膝が痛む原因は様々であり、例えば外傷で靭帯を損傷する場合もありますし、変形性膝関節症、腱炎や滑液包炎などの疾患が原因となることも考えられます。 変形性膝関節症は、関節部位においてクッションのような役割を果たしている軟骨成分が、加齢や筋肉量の低下によって組織が摩耗し、擦り減ることで膝の痛みを認め、最終的に骨の変形にまで至る疾患です。 変形性膝関節症においては、個々によって症状の程度や進行度合いが異なる事が知られており、変形がかなり進んでいても痛み症状を自覚しない場合もあれば、強度の痛みを認めていても実際にはあまり関節変形が認められない方もいらっしゃいます。 特に超高齢化社会を迎える我が国では、中高年の人々は膝部の違和感や痛みが慢性化している場合が多く、症状を放置してしまう傾向がありますが、膝からのサインを見逃すと症状が悪化して変形性膝関節症を始めとする関節疾患を招く結果となってしまいかねません。 当然ですが、どんな疾患であっても早期に発見することができて、早期に治療できれば治癒までの期間も少なくて済みますし、処置自体も軽く済む傾向が高いものです。発見や治療が遅れれば遅れるほど重症化し、治癒期間は長くなり、治療方法も複雑化してしまいます。 痛みは体からのサインです。膝に痛みや違和感を感じたら、症状が軽いうちに病院等の医療機関へ出向くことが正解です。 膝の痛みに対して病院でどのような処置をするか 日常生活で膝に痛みを感じた人が整形外科などを受診すると、専門医による問診や触診などの診察を受けると同時にレントゲン検査を始めとし、必要に応じてCTや、MRIなどの画像検査が行われます。 これは表面から見えない骨や、組織の状態を把握するためです。この検査から得られたデータに基づいて確実な治療を実施するための正確な診断に結び付けられています。 慢性的な膝の疼痛症状に対する治療策としては、「薬物療法」、「リハビリテーション治療」、「手術治療」などが存在し、症状に合わせた治療が選択されます。 検査の結果、診断内容や、ひざ痛の原因にもよりますが、患者さん本人の症状が軽度の際には内服薬や外用薬を使用することで痛みといった症状を緩和することから始まり、場合によっては膝関節内にヒアルロン酸を注射を投与することで膝の可動域を広げたり、炎症を抑えたりする治療が行われます。 これらの治療と合わせて膝の痛みを抱えた患者さんに対して、日常生活に十分復帰や対応できるようにリハビリテーションを実践することで筋力の衰えや、膝の可動域の確保、こわばりといった症状を防ぎます。 さらに膝部分を温める物理療法、ならびに足底板(インソール)や膝、サポーターなどの装具を作成して、膝周りを支えることで膝を安定化させる理学療法がおこなわれます。 ただし、このような保存的な治療でも膝の痛みが改善しない場合で病状の進行を認める際には主治医より、関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などの手術による加療の選択を勧められることがあります。 膝の痛みは放置してはいけない。病院へお越しください 膝痛の原因として多いのが「変形性膝関節症」というもので、加齢やケガで軟骨がすり減り、膝関節が変形してしまう病気です。 初期状態では日々の生活上、立ち上がる際に痛みを感じるの程度であり、痛みがあっても、しばらく安静にすれば症状も改善するため、大した症状ではない、また痛みが薄れると治ったと甘く考えたりして勘違いすることがあります。 実は、この膝に起こる痛みといった症状こそが更なる病状悪化のサイン、前兆である可能性があります。 放置した結果、病状が進行すると軟骨組織が、すり減って膝関節の骨と骨のすき間が狭くなると同時に、骨辺縁部位に骨棘(こっきょく)と呼ばれるトゲのような突起物が骨に形成され、更に骨が変形して病状が悪化していく可能性があります。 変形性膝関節症では時間経過とともに徐々に症状が重くなり、次第に正座や階段の昇降がスムーズにできなくなり、末期状態になると安静時にも膝部位に痛みを覚えるようになり、関節部の変形も顕著になって最終的には歩行することが困難になってしまいます。 変形性膝関節症は、けして自然治癒しないとお考え下さい。それどころか完治が難しい進行性の疾患です。したがって、膝部に疼痛症状を自覚された際には初期の段階で、早めに整形外科など病院の診療科に行き、検査、診断を経て治療を開始することで病状の進行を遅らせなけらばなりません。 また既に、階段の昇降や正座が困難になってきた、最近では安静時にも膝の痛みを覚えて歩けなくなってきたなどの症状に心当たりのある場合も、ぜひ早めに医療機関を受診されるようお勧め致します。 まとめ・膝の痛みは放置してはいけません!今すぐ病院へ 今回は膝の痛みを放置するとどうなるか、膝の痛みに対して病院でどのような処置をするか、膝の痛みを放置せずに病院へ行く重要性などについて詳しく解説してきました。 年齢を重ねれば重ねるほど、身体の色々な箇所に不調が出現するものですが、特に実生活において非常に大きく影響を及ぼす症状のひとつとして「膝の痛み」が挙げられます。 膝の痛みや違和感をそのまま放っておくと、膝関節の骨自体が変形してしまう変形性膝関節症を代表とする関節疾患を発症して日常生活に重大な支障をきたすなど様々なリスクが考えられます。 そのため、自己判断で放置せず、病院等、医療機関を受診するよう心がけましょう。早期発見、早期治療が何よりも大切です。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S056 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 膝の痛みに再生医療という選択肢! 変形性膝関節症の軟骨のすり減り、再生医療なら軟骨を再生できることをご存知でしょうか
2022.03.15 -
- 再生治療
肉離れとは?治療法と再発予防について|スポーツ医療 「肉離れ!」を簡単に見過ごしてはいけません。肉離れは、「筋肉のケガ」です 筋肉は筋繊維というものが束になってできています。肉離れは、筋肉が伸ばされながら急激に収縮することで、筋繊維に損傷が生じて発症します。肉離れの多くは部分断裂なのですが、完全に断裂してしまう場合もあります。 肉離れは、そもそも筋肉が発達していない乳幼児には起こりにくいですが、小学校も高学年以上になってくると筋肉が発達し、スポーツなどで運動量が増えてきます。 そのため、短距離で急激に加速したり、ジャンプするなどした場合に大腿二頭筋、大腿四頭筋、ハムストリングスといった太ももの筋肉に、肉離れを起こすことがあります。 また、ランニングをはじめ、陸上競技や、サッカー、テニス、バレーボール、ラグビー、その他で起こりやすいのが、ふくらはぎの腓腹筋の肉離れです。 これは、それらスポーツでは瞬発的な動きが必要で、急激な筋肉の収縮が起こりやすいからです。スポーツをしているとこのような肉離れといたスポーツ障害を引き起こすことがあります。 肉離れという言葉自体は、よく耳にされると思われますが、いったん症状が起こると激しい痛みが生じ、ひどい場合は歩行が困難になる場合もあるので簡単に見過ぎるのは誤りです。 同様に注意したいのは、多少、痛みが残っていても肉離れを軽く見ているため、或いは早く復帰したいと焦るあまり、無理をすることで、かえって全治までの期間が長くなることです。 肉離れは「繰り返す」と言われます。そのため、一度肉離れを起こしたら再発しないように対策することが必要です。肉離れは筋肉のケガなので、肉離れが起こった場合、万一のために病院など、医療機関を早めに受診されることをおススメします。 肉離れの予防はスポーツ前後のストレッチ 肉離れは、筋肉の疲労や柔軟性の低下が原因となり起こります。そのため、スポーツを行う前後には、その準備としてストレッチなどで筋肉をほぐすことがとても重要です。 筋肉を動かす準備をせずに、筋肉に急激な負荷をかけることは、肉離れのリスクを高めることになるからです。その間スポーツができないことで焦ることがあるかもしれません。 しかし、しっかり治らないままに早期復帰をすると、再発のリスクが高くなってしまうため、できる限り医療機関を受診して助言を得るようにするべきです。 スポーツ医療では発生から復帰までの間、リハビリテーションに力を入れることが多くあります。肉離れが発生した直後には安静が必要ですが、断裂した筋繊維が修復し痛みがなくなってくると、筋肉が硬くならないように動かしていく必要があるからです。 しかし、いきなり走ったり負荷をかけ過ぎると、肉離れが再発したり、痛みの出現につながるため、まずは痛みがないことを確認しながらストレッチから始めるようにしましょう。 このストレッチも無理な動きをしないように注意しなければなりません。ストレッチをすることで、スポーツを休んでいる間の筋肉低下の予防にもなります。 スポーツ復帰してからは、スポーツをする前後にストレッチを習慣化するようにしてください。ストレッチで筋肉の柔軟性を高めることで肉離れの再発予防になります。 肉離れの全治、回復までの期間 肉離れの主な治療は安静と固定です。筋繊維が損傷または、断裂した部分が出血し、内出血や圧痛が生じることがあります。また血腫という血の塊ができることもあり、この場合は血腫を吸引して取り除く治療も必要です。 スポーツ医療では、スポーツをする人を対象としており、早期の全治を目指して、早期に復帰を遂げたいという思いを持つ選手が多くいます。筋繊維が損傷した部位に しかし、これだけでは診断はできないため病院で超音波検査(エコー検査)やMRI検査を行い、筋繊維が断裂した部位の特定や重症度を判断します。この重症度によって全治までの期間を予測していきます。 軽度の肉離れは 1 ~ 2 週間で復帰できる場合もありますが、多くの場合は、全治までに 3 ~ 5 週間かかると思った方がいいでしょう。焦って復帰しては再発のリスクが高まります。 肉離れは筋肉が傷ついた状態です。断裂してしまった筋繊維を固定して修復させる必要があるため、安全性と選手の将来の可能性を鑑みて全治までの期間がある程度長くなってしまうのです。 肉離れが重症の場合は全治までに2~ 3 か月必要な場合もあり、こうなると選手にとっては非常に長く感じることでしょう。こうした肉離れは、スポーツ選手だけでなく、小中学生などの若者、また、スポーツをしない中高年でも起こることがあります。 肉離れの治療 肉離れが発生すると、まず激しい痛みを感じます。肉離れは筋肉の損傷なので、まずは安静にする必要があります。損傷した筋肉を無理に動かしたり負荷をかけたりしないように、包帯で固定したり、重症の場合はギプス固定をすることもあります。 筋繊維が断裂した部分が出血し、血腫という血の塊ができることもあります。その場合は血腫を吸引する処置を行う必要があります。 また、肉離れが発生した直後に重要なのが冷却です。筋繊維が断裂するとその部分に炎症が起こるからです。 数日間は湿布を貼って患部を冷やします。早目に湿布を貼るなどの患部を冷却する処置をすることで、治癒までの期間が変わってくることがあります。 肉離れの治療に湿布は有効ですが、湿布だけでは肉離れを治すことはできません。安静や、必要なら固定をして筋繊維の断裂を修復させながら、内服薬や湿布で痛みをコントロールする場合もあります。 スポーツ選手にとってこの期間が長くなると選手生命の危機を覚えるそうです。現在は、「再生医療」という先端医療があり、修復速度をを早めることが可能になってきました。 これは自身の細胞から採取した幹細胞を用いて損傷した組織を修復させる治療法で、副作用が少なく、安全で、治療期間を短縮できるというメリットがあるため、スポーツ医療として是非チェックしておきたいものです。。 スポーツ医療で注目される肉離れですが、スポーツをしない人にも起こります。 それは筋肉の疲労や柔軟性の低下によるものです。そのような状態の場合、筋肉を柔軟に動かすことができず、階段の上り下りのような日常生活のささいな動きでも肉離れが起こることがあります。 スポーツ選手同様、肉離れを起こしたら湿布で患部を冷やした上、当初は安静にして、治り始めたら、様子を見ながらストレッチなどの軽い動きから始めるようにしましょう。 まとめ・肉離れとは?治療法と再発予防について|スポーツ医療 「肉離れ」は、筋繊維の断裂で、筋肉が急激に収縮することで起こります。肉離れは全治まで1~2週間という場合が多く見られますが、重症の場合は2~3か月必要なこともあるので油断は禁物です。 肉離れは、比較的なじみのある症状だけに簡単にとらえがちですが、再発する可能性がありるため、注意が必要です。肉離れが起こったら症状に関わらず、まずは患部を冷やすことに努めましょう。 肉離れの主な治療法は、当初の冷却と安静、そして固定です。近年は、スポーツ選手のためのに「スポーツ医療」という分野も発達してまいりました。そして注目の先端医療である「再生医療」という方法も注目されています。 効果的に一日も早く全治を目指すためにも肉離れを起こしてしまったときには、まず病院等にて専門医にご相談ください。 以上、スポーツ治療における「肉離れの治療と再発予防について」記させて頂きました。参考にしていただければ幸いです。 No.S055 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ医療、(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手の選手生命、パフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.15 -
- 健康・美容
- ひざ関節
軟骨成分、プロテオグリカンは本当に関節痛に効果的があるのか? 関節の痛みが続くと階段の上り下りや椅子に腰掛けるといった日常的な動きも大変になるため、早目に対処したいものです。関節痛に効果のある成分といえば、コラーゲンや、ヒアルロン酸などがよく知られていました。 しかし、近年これらをさらに上回る働きをもつ成分として近年注目されているのがプロテオグリカンです。プロテオグリカンは、関節と関節の間にある軟骨(関節軟骨)を主成分の一つであり、保水性に優れているため軟骨の保護に効果的と言われています。 本記事では、プロテオグリカンの効果効能や関節痛との関わりについて解説してまいります。 プロテオグリカンとは 関節軟骨は、骨とは違い、約70%が水分、他30%がプロテオグリカンやコラーゲン、ヒアルロン酸で構成されています。プロテオグリカンとは関節と関節の間にある軟骨や皮膚に存在している保水性に優れた成分です。 プロテオグリカンは例えるなら水をよく含んだスポンジです。軟骨に摩擦や衝撃が加わると、水分が浸みだして、軟骨に潤いを与えます。これにより、関節が摩擦や衝撃から守られるのです。 近年では、プロテオグリカンの様々な効果・効能が数多くの研究により報告されており、健康食品や化粧品の原材料として利用する動きが高まっています。 プロテオグリカンはどうやって作られる? プロテオグリカンは、プロテイン(タンパク質)とグリカン(多糖)が結合した「糖タンパク質」と言われるものです。糖は水とよく馴染むため、高い保湿性や弾力性をもたらします。 プロテオグリカンは、19世紀末に発見されました。その当初から関心の高い成分ではありましたが、これまではなかなか研究が進んでいませんでした。 それというのもプロテオグリカンは、分子量が大きく複雑であるため、素材として取り出すことが困難だったことが大きな理由です。しかし、弘前大学医学部の研究により氷頭(ひず)と呼ばれるサケの鼻軟骨からプロテオグリカンを安全で安価に抽出する技術が確立されたことでプロテオグリカンの活用が一気に進むことになりました。 現在では、プロテオグリカンによる様々な効果効能が報告されており、健康食品や化粧品への応用も進められています。 プロテオグリカンの効果・効能 プロテオグリカンには、次のような効果効能が期待できるといわれています。 ・細胞の増殖や成長を促進 ・抗炎症作用 ・生活習慣病の予防 細胞の増殖や成長を促進 プロテオグリカンは、細胞の増殖や成長を促進する因子(EGF)とよく似た作用があることが報告されています。摩擦や衝撃ですり減った軟骨細胞を修復する機能は関節痛を和らげるために非常に重要です。 また、プロテオグリカンはコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す作用があるため、美肌効果も期待できます。 抗炎症作用 プロテオグリカンには、炎症を抑えるサイトカインの働きを促す効果があるため、抗炎症作用があるといわれています。軟骨細胞の修復に加えて、痛みそのものの軽減も期待できます。 生活習慣病の予防 プロテオグリカンは、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防にも効果を発揮するといわれています。プロテオグリカンを摂取することで、体重の減少や血糖値の上昇抑制に繋がったとの報告があるようです。 プロテオグリカンは関節痛に効くのか 関節は私たちの生活にとって大切な役割を果たしており、関節痛が慢性化すると日常生活が制限されてしまいます。 プロテオグリカンは擦り減った軟骨の修復を助け、関節痛の症状の進行を抑制すると考えられています。軟骨のもとになる細胞(軟骨前駆細胞)を増やすことで、軟骨細胞の増加の促進に繋がるのです。 また、プロテオグリカンには抗炎症作用もあるため痛みを和らげることにも期待ができます。 食事でプロテオグリカンを取り込むのは難しい プロテオグリカンは動物の軟骨の主成分であるため、食事で摂取することができます。特に、魚や動物の軟骨に多く含まれています。ただ、プロテオグリカンを構成しているタンパク質は熱に弱いため、加熱すると分解されてしまう点が難点です。 また、タンパク質は胃や腸で消化吸収される際にアミノ酸にまで分解されるため、食事で摂取したプロテオグリカンを、そのまま成分として身体に取り込むことは非常に難しいと言わざるを得ません。 ただし、タンパク質は必須栄養素として身体には大変重要で良い働きをもたらします。軟骨のため!美容のため!と摂取してもダイレクトに届けるのは難しいということです。 食事(消化器官から)でプロテオグリカンを成分として取り込むのは難しい サプリメントでもプロテオグリカンを取り込むのは難しい プロテオグリカンは、サプリメントとして発売されており、摂取することで効果的に取り込めると表示しているモノもありますが、一般的に考えて食事同様、サプリは胃や腸で分解されてしまうため、プロテオグリカンを血中に取りこむことは難しいと思われます。 また、取り込めたとしても軟骨は、血流が少ないためにその成分が届くとは考えにくいと思われす。つまり、プロテオグリカンのサプリメントを摂取しても軟骨が再生するというほどの効果を上げることは難しいと考えます。 プロテオグリカンは、膝などの関節以外、美容面での効果を大きく表示していることもありますが上記と同じ理由にて積極的に効果があるとはいえません。ただ、プラシボー効果による効いたような感覚になることがあるかもしれません。ただ、それも効果です。 食事と同様、サプリメントでプロテオグリカンを成分として取り込むのは難しい 取り込めても、血管が少ない関節には届くとは考えにくい プラシボー(プラセボ)効果とサプリメント プラシボー効果(プラセボとも言います)という言葉をご存知でしょうか。プラシボー効果は有効ではない「くすり等」を、成分が含まれている前提で使用者に摂取させると、実際に効いた人が出る現象です。 いわゆる偽薬なのに効いてしまうという訳です。これは、どういうことでしょう? 人は、「〇〇に良い成分が入っているから!」と言われると(知ると)、その効果に対する暗示を受けてか、実際にその効果を実感することがあります。これは自らの治癒力が発揮されて解決に導いている…のではないかと言われる不思議な現象です。 だからといって偽の薬や、サプリがすべて代替えできるものかというと、もちろんそうではありません。プラシボー効果は絶対ではないからです。当然ですが万人に効くとは言えません。 逆に「薬」と言われるものは、当然ですが効果が明確に証明され、安心して使用できるものです。 ただ、サプリメントを摂取することで得られる精神的な満足感があるのは否めず、プロテオグリカンも摂取するとするなら、せっかくなので疑いながらではなく、「効果がある」、「効いてる」と思って摂取したほうが良いかもしれません。 ・実効は無いはずのものが、効果を発揮することがあるいプラシボー効果 ・自身の治癒力が精神的な面から発揮されている可能性がある 実は!関節のプロテオグリカンは自分で増やせる ここまでプロテオグリカンを取り込むために食物やサプリメントのお話をしましたが、実は関節のプロテオグリカンは、身体の中にある成分で、食事やサプリに頼ることなく自分自身で増やすことができると言われています。 では、どうすれば「プロテオグリカン」を自ら増やすことができるのでしょうか? その答えは、実は単純。体を動かす機会を増やすことです。運動などで関節の曲げ伸ばしを行うと、血流量が増加して軟骨細胞に酸素や栄養が行き渡り、プロテオグリカンの増加が促進されるのです。 その逆に、動かしたり、運動をしないでいると身体が、「プロテオグリカンは必要がない」と判断するため減少てしまいます。つまり、自ら積極的に体を動かすことで身体にプロテオグリカンの必要性を感じさせることが大切なのです。 その意味でリハビリなどの運動療法は、非常に効果的であり、理に適っているといえるのです。 また、プロテオグリカンを増加させるのに激しい運動は必要ありません。ウォーキングやストレッチなどでも十分に効果的です。関節の痛みを恐れて運動不足になってしまうと、酸素や栄養が軟骨細胞に供給されなくなります。 結果、プロテオグリカンが減少し、かえって関節痛の悪化に繋がる恐れがあります。 ただし、増えるなら!と無理することは禁物、膝などの関節に痛みや故障がある場合は、病院等、医療機関の専門家の指導の下、身体に無理のない範囲で行うようにしてください。 プロテオグリカンは、軟骨成分 > 身体にある成分なので自分で増やすことができる 身体を適度に動かすこと > プロテオグリカンが必要と身体が反応 > 増加へ 身体を動かさない > プロテオグリカンが不要と身体が判断 > 増えない 医療機関等、専門家の指導の下、適度な運動やリハビリを行ってプロテオグリカンを増やそう! まとめ・軟骨成分、プロテオグリカンは関節痛に効果があるのか? 関節痛の緩和に効果のあるプロテオグリカンは、食事やサプリメントで摂取することは現実的ではないのが本当ですが、精神的な満足感や、プラシボー効果などで実際に効いてしまう人がいるのも事実です。 ただ、適度な運動を行うことでプロテオグリカンを増やすことができると言われているため、関節の健康のためには、身体を安静にしすぎることなく、医療機関や専門家の指導に従って適度な運動などを行い、関節を動かすことでプロテオグリカンの減少を防ぐことができるはずです。 まずは普段の生活から健康的でバランス取れた食事をしっかり食べて、適度な運動を心がければプロテオグリカンが不足する事態を防ぐことが可能なはずです。 もし今、すでに関節痛で悩まされていて症状を改善したいなら、サプリメントなどに頼るのではなく、病院や医療機関を受診し、指導を受けられてはいかがでしょうか。 また、再生医療という最先端の治療法もあり、興味がある場合は以下のリンクからチェックされることをおススメします。 以上、軟骨成分、プロテオグリカンは関節痛や美容に効果的なのか?と題して記させて頂きました。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 No.S054 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の痛みを止める! 膝の新たな治療法、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます
2022.03.14 -
- 脳卒中
- 頭部
- くも膜下出血
くも膜下出血|その原因と治療、怖い再発について 「くも膜下出血」は、脳と、くも膜の間に出血した血が溜ることをいいます。 「脳」に関する病気は、死亡を伴う、命を落とす危険性が高いため、とても怖いものです。その意味で「くも膜下出血」も脳に関わる怖い病気の一つです。 ちなみに、この疾患は中年期40代以降から、発症リスクが高まるほか、男性よりも女性に多く発症しています。特に、喫煙や飲酒といった習慣がある場合や、高血圧の場合は、発症するリスク、その確率が高くなるとされています。 くも膜下出血が起こると激しい頭痛がおこるほか、死亡に至らずとも重い後遺症が残る可能性が高いことが知られていますが、実際には具体的なことは「よく知らない!」という人も少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、くも膜下出血の症状や原因、治療方法などの概要に合わせて、再発予防の観点からも、その注意点を紹介してまいりましょう。 くも膜下出血の症状 くも膜下出血を発症した際の症状で、代表的なものとして挙げられるのが「頭痛」です。くも膜下出血に場合、痛みは徐々に訪れるのではなく、数秒でピークに達するのが特徴です。 症状としては、これまでに経験したことがないような激しい頭痛で、大げさではなく「ハンマーで思いっきり叩かれたような痛み」が突然起こるという具合に例えられています。脳内での出血量が少ないと痛みも少ないのですが、出血量が多くなると痛みも強なりく、意識障害を引き起こすケースも少なくありません。 また、くも膜下出血によって脳が圧迫されると脳細胞が破壊されてしうことで「麻痺やしびれ、言語障害などの後遺症」が残るケースは珍しくありません。 そこで、これまで体験したことのない激しい痛みが突然、頭に覚えた場合は、大至急、救急車の手配など緊急で医療機関の受診が必要であることを忘れてはなりません。意識がある状態で病院に到着することが生死を分けると言います。 ぜひ前兆や初期症状を見逃すことなく対応下さい。 くも膜下出血の原因 くも膜下出血は、「激しい頭痛に見舞われる」「後遺症が残る」など、危険で怖い病気の一つです。くも膜下出血の原因は、脳動脈にできる瘤(こぶ:脳動脈瘤/のうどうみゃくりゅう)にあります。 血管には、膜が薄く弱い部位あります。その弱い部位が強い血流を受けると膨らんで瘤ができてしまいます。その瘤に、高い血圧がかかるなどした場合に破裂してしまうのが「くも膜下出血」です。 脳動脈瘤は血流が強くなる部分、血管が分岐している箇所などにできやすいのが特徴です。 くも膜下出血の治療 くも膜下出血の治療法は、原因となる脳動脈瘤が再び破裂しないように、頭痛や後遺症が発症するのを防ぐことが目的になります。ただし、脳動脈瘤を小さくしたり、脳動脈瘤を消したり、無くしたりする方法は無いことから、脳動脈瘤へ血液が流れないようにする手術的治療が行われます。 脳動脈瘤へ血液が行かないようにする手術方法として代表的なものの一つは、開頭して行う手術で動脈本管と動脈瘤がつながっている部分(ネック)を専用のクリップで挟む「ネック・クリッピング」という治療法です。 また、二つ目に、脳動脈瘤のなかに血液が入らないようにするために、開頭をせずに血管を使ってカテーテルを動脈瘤まで進め、破裂した部位にプラチナ製のコイルを詰める方法があり「コイル塞栓術」という治療方法になります。 いずれの治療法であっても必要なのは術後の経過観察です。定期的な診察を受けることが大切です。 ・くも膜下出血の治療(手術) ・ネック・クリッピング(開頭) ・コイル塞栓術(血管から) くも膜下出血が危険で怖い理由は「再発」です くも膜下出血が起こった際に適切な治療が行われても安心してはいけません。くも膜下出血は、非常に恐ろしく危険な病気だと呼ばれるのは、「命にかかわる病気であること」、そして何よりも「再発率の高さ」が挙げられます。 その「再発には前兆」があります。そこで再発を防ぐために気を付けて欲しいことを記しました。 くも膜下出血を発症した場合、治療を受けることは当然ですが、それに満足しないでください。その後、再発しないように気をつけることが重要なテーマになります。くも膜下出血の再発を防ぐためには、その前兆を知っておき、常日ごろから注意するという意識が大切です。 今回は、「くも膜下出血の再発の前兆」と題して既に発症し、治療をうけたものの再発に注意すべき人に向けて、覚えておいて欲しい点を解説しました。また、併せて発症後の後遺症に対してもご説明してまいります。 1.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「動眼神経麻痺」とは くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として代表的な症状が目に現れます。それが動眼神経麻痺」です。動眼神経麻痺とは、片方の瞼が開かなくなって、両目で物を見ようとすると物が2つに見えるようになる状態をいいます。 動眼神経麻痺は、大きくなった動脈瘤が動眼神経を圧迫するために起こります。そのため、「動眼神経麻痺になってしまうと動脈瘤が大きくなっている可能性があるります。 この動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血が再発してしまう可能性があるいため、この症状を忘れないでくださいす。また、大きくなった動脈瘤は動眼神経だけではなく、「視神経を圧迫」することもあります。 そうなると視力が低下したり視野が欠けたりするケースもあるのでそのような症状に気が付いたときは、何よりも早く病院で脳外科、脳神経外科などの医療機関を受診し、治療を受けてください。 動眼神経麻痺の特徴 ・両目でモノを見るとモノが二つに見える ・視力の低下 ・視野が欠ける 2.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「頭痛」に注意 動眼神経麻痺のほかにも、くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として「頭痛」があります。視野の乱れと共に起こることがあり、くも膜下出血が再発する兆候として頭痛も疑って欲しいと思います。 その症状を感じた場合は、すでに少量の出血が生じている可能性が高いため、早急に治療すべきとの意識を持ってください。この際に「軽い頭痛」についてご注意ください。 初期症状として頭痛の程度はそれぞれで、例えば「軽い頭痛」の場合、「くも膜下出血」の再発の前兆とは考えずに見過ごしてしまいかねないことがあります。軽い頭痛であっても異常を感じたら念のため病院へ向かいましょう。 受診する際には、過去の既往症として「くも膜下出血を発症した」という情報を与えなければなりません。そうで無い場合、単なる風邪などと診断されてしまうケースが少なくないからです。 ついては、過去に「くも膜下出血」を発症したことがあるなら、重い軽いに、関わらず頭痛がある場合には明確に「過去、くも膜下出血を患った」という情報を伝えるようにすることが大切です。 その他にも症状を感じたなら、「いつもと違う」「初めての痛み」などと、症状の内容を詳しく医師に伝えるよう努めてください。 くも膜下出血の再発の前兆 ・動眼神経麻痺 ・めまい ・視力低下 ・頭痛(症状は様々、軽い場合も要注意) くも膜下出血の再発を防ぐのは定期的な検査 ここまで「くも膜下出血の再発防止」のために、知っておきたい前兆について記してまいりましたが、再発防止には定期的に検査を受けることが非常に重要です。 くも膜下出血の原因となる動脈瘤を検査で発見することができれば、動脈瘤が破裂してしまう前に処置することができるからです。くも膜下出血を発症して10年くらい経過してから治療した動脈瘤が再び大きくなったり、新しい動脈瘤ができて破裂したりする可能性もあります。 一度検査して問題なかったからと安心や、油断をせずに定期的に検査を受けるようにしましょう。 再発を防ぐために ・定期的な検査を受け続けることが何より大切 まとめ・くも膜下出血とは|その原因と治療、怖い再発について くも膜下出血の特徴について簡単に分かりやすいようにご紹介しました。発症時にハンマーやバットで突然殴られたような激しい頭痛に見舞われること。再発率が非常に高いため、くも膜下出血を経験したなら再発防止にも力を入れる必要があること等をご説明しました。 また、くも膜下出血は、危険です。死亡を免れても後遺症が残る可能性が高いとても怖い病気です。ここで記したような症状を感じたらすぐに病院の脳外科や、脳神経外科等の専門医療機関を受診してください。 手術による方法としては「ネック・クリッピング」や、「コイル塞栓術」というものがあります。 また、治療後であっても再発率は高いため、くも膜下出血の前兆を知っておくことは大切です。早期に対処すれば再発を防ぐ可能性が高まります。何度も申しますが何か頭に違和感を感じたら迷わず医療機関を頼りましょう。 ただ、くも膜下出血が早期に発見され、適切な処置を受けた場合でも麻痺や痺れといった障害が残る可能性が高いのが現実です。 障害については治療後、リハビリに励むことで改善を目指せますが慢性期に移行すると機能の回復は困難となり、最終的に身体を動かせなくなってしまいかねません。 そんな、くも膜下出血の後遺症でお困りの方へ再生医療の可能性を伝えることができればと考えています。興味があれば以下のリンクをクリックして下さい。 以上、くも膜下出血とは、その原因と治療、怖い再発について、記させていただきました。ご参考にしていただければ幸いです。 No.S053 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で脳卒中の治療する 脳卒中(脳梗塞、脳内出血)は、再生医療による幹細胞治療で復活を目指せます
2022.03.14 -
- 健康・美容
要介護を防ぐ!ロコモ(運動器症候群)とロコチェック!ロコモを予防するロコトレとは? ロコモとは、ロコモティブシンドロームの略で、身体を動かす機能の衰えにより、歩く、移動するといった身体の能力が衰えたり、不足している状態を指し、寝たきりや、要介護になる危険の高い状態をいいます。 また、ロコモは、略称で正式名称は「ロコモティブシンドローム」と呼ばれるものです。以下、「ロコモ」という表記でご説明してまいります。ロコモは、身体を動かす機能の重要性を分かりやすい形で広く啓蒙することを目的としています。 自分の運動機能がロコモに当てはまり、寝たきりや、要介護になる危険性があるか確認できるチェック項目を「ロコチェック」といい、身体の動作、移動に適した下半身の筋力を得たり、バランスを整えるために行うロコモ対策のトレーニングを「ロコトレ」と呼び、ロコモにならないため、それをケアする「ロコモケア」として推奨されています。 ・ロコモ:ロコモティブシンドロームの略で運動器症候群のこと ・ロコモケア:ロコモにならないため、それをケアする ・ロコチェック:寝たきりや、要介護になる危険性があるか確認できるチェック項目 ・ロコトレ:身体の動作、移動に適した下半身の筋力を得たり、バランスを整えるためのトレーニング ロコモ(ロコモティブシンドローム、locomotive syndrome)は、高齢者の身体機能の低下や運動能力の低下により、日常生活動作や歩行に制限が生じる状態を指す医学的な概念を表しています。 具体的な症状や特徴としては、次のようなものがあります: 筋力の低下: 筋肉量や筋力の減少により、日常生活動作の遂行が困難になります。例えば、階段の上り下りや荷物の持ち上げなどが難しくなることがあります。 骨密度の低下: 骨密度の減少により、骨折や転倒のリスクが高まります。 姿勢の変化: 猫背や体の前かがみ姿勢が増え、バランスや歩行の安定性が損なわれます。 歩行困難: 歩行速度や歩行距離の減少、歩行中のバランスの崩れなどが見られます。 ロコモティブシンドロームは、高齢者の健康と生活機能を保つために重要な概念であり、早期発見と予防が重要です。 適切な運動や筋力トレーニング、栄養バランスの良い食事などの取り組みが、ロコモティブシンドロームの予防や改善に役立つとされています。定期的な健康チェックや医師の指導のもとでの適切なケアが重要です。 ロコモは、高齢者に限らず40~50代から徐々に始まるといわれています。 どこかに掴まらないと身体がグラグラしたり、歩いたりするとスグに疲れてしまって、座りたくなるという人は、ぜひ本記事を参考にして自分の運動習慣を見直してみましょう。 現代社会は、移動手段が便利になったことで日常生活に支障がないことが多いため、既にロコモになっていることに気が付いていません。生活習慣病や高血圧といった症状がある場合は若年層であってもロコモに気を付けなければなりません。 要介護を防ぐ具体的なロコモ対策 あらためてましてロコモとは、「主に加齢によって身体を動かす機能が低下し、寝たきりや要介護になる危険の高い状態」を指し、ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)、運動器症候群と呼んでいます。 ロコモの原因には、次のようなものが挙げられます ・筋力が低下している ・骨や関節などの機能が低下している ・持久力が低下している ・身体のバランスを取るための力が低下している ・膝や腰の病気が隠れている ロコモは、高齢者になってから、いきなり始まるのではなく、40~50代からでも徐々に兆候が現れます。年齢が若くても長時間歩けない、歩くスピードが遅くなったという人は特に注意が必要です。 ロコモの危険性チェック:ロコチェックとは! まずはロコモになっていないか以下のチェック項目(ロコチェック)を使って、自分の身体の状態を確認してみましょう。この「ロコチェック」は無理にその場でやってみる必要はなく、普段の生活を思い返してみるだけで大丈夫です。 ロコチェック ①片脚立ちで靴下がはけない ② 家の中で躓いたり、滑ったりする ③ 階段の上り下りに、手すりが必要である ④ 横断歩道を青信号になってから赤に変わるまでの間に渡りきれないことがある ⑤ 15分間続けて歩けない ⑥ 2㎏程度(1Ⅼの牛乳パック2本)の買い物をして、持ち帰るのが困難である ⑦ 家の中で、やや重い家事(掃除機をかける、布団の上げ下ろし)が困難である 何個チェックが付きましたか?実は、7項目のうち、1つでも当てはまるものがあれば「ロコモ」の疑いがあります。 ちなみに、横断歩道の青信号の点灯時間は、1秒間に1m歩く速さをもとに赤に変わるよう設定されているため、青信号で渡りきれない場合は、歩く時間がそれ以下だと考えられます。 要介護!とならにため、防ぐためにも普段から気を付けましょう! 更に、次の片足立ち上がりテストに挑戦してみてください! 次のロコチェックの項目でまったく問題なかったら、「片足立ち上がりテスト」にも挑戦してみましょう。 片足立ち上がりテストは、次の手順で行います ・椅子や台に、両手を胸の前で交差させて上体をやや前に傾けて座る ・片方の膝を伸ばす → 手や上体の反動の力を使わずに、片足の力だけで立ち上がれますか?! どうですか? ・手を使わないと立ち上げれない ・ぐらつく ・転んでしまう 上記のようなら、ロコモ状態が始まりかけている「ロコモ予備軍(将来、要介護予備軍の危険性)」の可能性があります。 ロコモ、要介護を予防する「ロコトレ」に挑戦! ロコモ(要介護)の予防や、改善には、筋力やバランス能力を上げるトレーニングが必要です。そのため、ロコモティブシンドロームを効率的に改善するためのトレーニングとして、「ロコトレ」が推奨されているのです。 ロコモティブシンドロームを予防する「ロコトレ」 ▼片脚立ち バランス能力をつける運動です。足の筋力を鍛えられ、寝たきりの原因となる転倒の予防にも効果があります。左右1分間ずつ、1日3回行うと効果的です。支えが必要であれば、机などに手や指をついて行います。 ▼スクワット 足腰の筋力をつける運動です。太ももやお尻の筋力を上げ、体幹を鍛えることにも繋がります。深呼吸をするペースで5~6回繰り返し、1日3回行うと効果的です。椅子に腰掛けて机に手をついて立つ・座る動作を繰り返すだけでも大丈夫です。 ロコトレは「ながらトレーニング」も効果的 ロコモが気になり予防する意識があっていても、運動習慣を作るのは思ったより難しいものです。 忙しくてなかなか運動が実践できない人や、運動が苦手な人は、日常生活の動きに取り入れやすいロコトレである「ながらトレーニング」をやってみるだけでも、要介護に対する予防として効果があります。 「ながらトレーニング」には、例えば次のような方法があります。 ロコモを予防する簡単な「ながらロコトレ!」とは ▼料理をしながら片脚立ち キッチンのシンクのふちなどを支えにすれば、食材を鍋で煮込んでいる間などに片脚立ちをすることができます。片脚立ちでふらついたときのために、周りに障害物が無いか確認し、刃物や火の近くで行わないように気を付けましょう。 ▼テレビを観ながらスクワット テレビを同じ姿勢で見続けていると、身体がこわばってしまい肩こりや腰痛の原因にもなります。CMが流れている間にスクワットなどのロコトレを行うと、時間的にも丁度良く身体をほぐすことができるでしょう。 また、お風呂に入る前にロコトレを行うなど、生活の場面にトレーニングのタイミングを作ることで予防が可能です。 継続した要介護予防には、「ロコトレ仲間」を作ろう 運動習慣がない人にとって「ロコモ」の予防になるとはいえ、一人きりでロコトレをコツコツと続けていくのは、なかなか大変なものです。 ロコトレは、継続することで予防力を発揮します。そのためには、家族に励ましてもらったり、友人や「ロコトレ仲間」と一緒に、声がけしたり、励ましたりすることで楽しく続けていくことができるものです。 自治体によっては、地域ぐるみでロコトレを行っているところもあるのでこうしたイベントに積極的に参加するのも有効です。 まとめ・要介護を防げ!ロコモ(運動器症候群)とロコチェック、ロコモを予防するロコトレとは? ロコモティブシンドロームは、ロコモと訳すことが多く、寝たきりや、要介護になる危険の高い状態を表しています。 普段身体に痛みや自覚症状がない人でも、ロコチェックに当てはまるものがある場合は運動機能が落ちている可能性があります。その場合は、ロコトレなどを取り入れて運動習慣を持つことでロコモを予防することが可能になります。ロコトレは、できるだけ継続することが大切です。 ロコチェックで気付いたことを参考に、周りの人とも協力して身体を動かす習慣をつくっていきましょう。そうすることで、いつまでも自分の足で歩くことができ活き活き!とした生活を送ることができるようになります。 また、関節や腰の痛みなどが酷い場合は、無理な運動をすることなく、ロコチェックやロコトレの前に病院等、医療機関で医師の診察を受けるようにしましょう。 以上、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、運動器症候群についてご説明させて頂きました。要介護にならなうためにも参考にしていただければ幸いです。 No.S052 リペアセルクリニック大阪院 監修:医師 加藤 秀一
2022.03.11 -
- 膝蓋軟骨軟化症
- ひざ関節
ランナー膝のひとつ(膝蓋軟骨軟化症)とは、その原因、症状と治療法 ランニングなどの競技で膝を過剰に酷使した際に起こる障害を総称してランナー膝と呼んでいますが、膝蓋骨の裏側にある軟骨に異常が出現する「膝蓋軟骨軟化症」もランナー膝のひとつと考えられています。 この疾患は、特に若年層の女性に多く発症するひざ痛を生じさせる病気として周知されており、膝蓋骨の裏側にある軟骨部分に変形や破壊などの損傷変化が引き起こされることで膝関節部に強い疼痛症状を自覚することが多いです。 今回は、若い女性ランナーに多いと言われている膝蓋軟骨軟化症という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 ・膝蓋軟骨軟化症:若い女性ランナーに多く見られる ・ランニングなどで膝を酷使した場合に起こるランナー膝のひとつ 膝蓋軟骨軟化症の原因 そもそも膝蓋軟骨とは、膝の皿である膝蓋骨のうしろ側に付着している軟骨成分のことを指しており、通常であれば大腿骨と関節部を構成しています。 この軟骨組織の存在で通常であれば滑らかに関節面を可動するはずが、太ももの筋肉の一つである大腿四頭筋が筋力不足になっている、あるいは関節面の柔軟性低下などによって関節接合部が摩耗されてしまうと、ゴリゴリと膝部から音が鳴ることもあります。 それ以外にも発症要因としては、膝蓋骨と大腿骨の関節面における適合性が悪い構造的な問題も考えられていますが、詳細な発症メカニズムはいまだに明確にされておらず、はっきりとした結論は知られていません。 成人においては、特にビタミンD成分が欠乏すると、膝蓋部のみならず全身の軟骨軟化症に繋がると考えられており、あわせて骨密度の低下が引き起こされる懸念もあります。 本疾患は主に10代~20代の比較的若い女性に発症することが知られていて、その原因として、若年層の女性が普段ハイヒールなど通常よりもヒールの高い靴を履く習慣があるため、膝への負担が男性よりも大きくなると考えられています。 さらに、ハイヒール自体が外反母趾を発症させる要因として捉えられており、外反母趾はX脚に発展しやすいのみならず、膝蓋軟骨軟化症に罹患しやすいといった疾患関連性が指摘されています。 膝蓋軟骨軟化症の症状 膝蓋軟骨軟化症という病気においては、膝関節の周囲部や、その裏側、後ろ面に鈍い痛みを覚えることが往々にしてありますが、一般的には膝関節の腫れや熱感などは認められません。 特に、膝関節を屈伸した際に強度の痛みが起こると言われているため、階段の昇降時や長時間、座位の姿勢を保っている場合、ランニングするときや、急に椅子から立ち上がる際などに症状が悪化しやすいと考えられます。 特に、走っているときに膝蓋骨の裏側に痛み症状を覚えた際には本疾患が発症した疑いが持たれます。ランニングする際に膝部分を何度も屈曲する動作を行うことで膝蓋骨裏側に存在する軟骨成分と大腿骨下端部が摩擦し合って関節面が傷ついていることが考えられます。 膝蓋軟骨軟化症の検査 膝蓋軟骨軟化症では、通常の専門医による問診、視診、触診などの診察のみならず、MRI検査を始めとする画像検査が行われます。 まずは診察することでどのような症状がどういった時に出現しやすいのか、あるいはいつから症状を自覚しているのかなどの臨床経過を確認する作業から開始します。 併せて、膝関節部に腫れなどといった所見はあるか、押さえて痛い部分は存在するか、膝をどのように可動させた際に疼痛症状が起こるかなどを順番に評価していきます。 MRI検査では、膝蓋骨の裏側に位置している軟骨部にどのような異常所見を認めるかを確認して、本疾患において特徴的な軟骨変形や軟骨破壊などの病変部があるかどうかを調査します。 膝蓋軟骨軟化症と類似している疾患としては膝蓋骨後面欠損、離断性骨軟骨炎などが挙げられますので、MRI画像所見やこれまでに外傷を負ったか否かなどを詳細に評価して適切な診断に繋げていきます。 膝蓋軟骨軟化症の治療 本疾患では、主に保存療法、理学療法、薬物療法、手術療法などが実施されます。 初期段階における疼痛症状に対しては、患部を冷却してアイシングする、あるいは鎮痛薬を服薬する、湿布剤を貼付するといった対策が実践されます。 また、膝裏部に存在する軟骨が損傷を受けていますので直接的に病変部位を触りにくいと思われますが、リハビリ加療など理学療法を実行することによって大腿四頭筋の柔軟性を高めて膝蓋軟骨関節部の摩擦を軽減させることで疼痛症状を緩和させることが出来ます。 万が一にも、症状が長期に渡り継続する場合、または再発を繰り返して認める際には関節鏡視下に関節軟骨部の凹凸(おうとつ)を平らに整える処置を行うために根治的な手術を受けることを検討する余地があります。 ・保存療法 ・理学療法 ・薬物療法 ・手術療法 まとめ・ランナー膝のひとつ(膝蓋軟骨軟化症)とは、その原因、症状と治療法 今回は若い女性ランナーに多く見受けられるランナー膝の一種、膝蓋軟骨軟化症とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて解説しました。 昨今では、健康意識が向上してウォーキングやランニングを日常的に取り入れている人も多いので、膝を痛めて困っている方もいらっしゃるかもしれません。 この病気は、ランニングやジョギングなどのスポーツ動作を繰り返すことで膝部分に過度の負担がかかる場合に発症しやすいと言われています。 ほとんどのケースでは保存的治療により良好な経過を得ることができますが、難治性の場合などでは手術治療が考慮されるパターンもありますので、膝蓋軟骨軟化症と診断された際には最寄りの整形外科など専門医療機関を受診されることをお勧めします。 以上、膝蓋骨の裏側にある軟骨部分に変形や破壊などの損傷変化が引き起こされる膝蓋軟骨軟化症について、その原因、症状と治療法について記させて頂きました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S051 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.11 -
- 半月板損傷
- ひざ関節
半月板損傷|ヒアルロン酸注射による治療の限界 半月板組織は、膝関節内部の内側(内側半月板と呼ばれる)と外側(外側半月板と呼ばれる)にひとつずつ存在しています。 半月板は主に大腿骨と脛骨などで形成される関節面に介在して膝関節の動きをスムーズにし、膝関節において屈曲伸展などあらゆる動きで膝関節を安定化させる役割を有しています。 更に、運動を行った場合、ジャンプなど、強度の外的なストレス、物理的な衝撃をできるだけ分散させるクッションのような機能を果たすなど大切な役割を担っています。 半月板の機能 ・膝関節なスムーズな動きをアシスト ・膝関節の安定性の確保 ・膝関節への衝撃を分散(クッション的な機能) したがって、これらの重要な役割を担っている半月板が、仮にスポーツ活動や日常動作などによって損傷してしまうと膝関節部の痛みや関節の可動域の制限といった症状が現れます。 半月板が損傷した初期にはその部分の安静を保ち、患部に対してヒアルロン酸注射による治療を実施することが主流になっていますが、このヒアルロン酸による注射投与について様々な理由で限界があることが知られています。 今回は、半月板損傷に対するヒアルロン酸注射による治療の有効性や限界点などについて順番に解説していきます。 1.半月板損傷に対するヒアルロン酸注射による治療の有効性 半月板損傷は、ジャンプをした際の着地や、ストップやターンを繰り返すような膝に大きく負担がかかる動作でバランスを崩した際などに起こりやすく、そんな場合、同時に側副靱帯や前十字靱帯など周囲組織の損傷を合併するケースも見受けられます。 半月板を損傷した場合には、多くの場合で対症療法にて様子を観察をし、保存的治療を行うことで症状が軽快すると考えられています。 半月板が断裂した程度が軽症の部類であれば、サポーターなどの装具やテーピングなどの補助器具による補強、あるいは疼痛軽減を目的として鎮痛剤などの投薬治療や運動器によるリハビリテーションを実践します。 スポーツや運動などで半月板を損傷したケースの初期では、患部の局所的な安静を保って関節部に注射を使って関節液を吸引、局所麻酔剤やヒアルロン酸注射による療法が主流となっています。 従来、抗炎症作用を狙って患部にステロイド注射を頻回に行っていた時代がありました。このステロイドは魔法の薬と呼ばれ炎症を抑制できるのですが、その逆の面もあり、様々な副作用に注意が必要です。 特に、最近では半月板を損傷した後にヒアルロン酸ナトリウム(商品名アルツなど)を関節内に注入する注射療法が一定の効果を示すと考えられています。 実は、膝関節軟骨の一成分でもあるヒアルロン酸物質は、水分の保有率が高いことが知られており、関節軟骨組織や半月板そのものが損傷した際に関節内部において潤滑油のような働きをして関節部の可動性を改善させると伝えられています。 ヒアルロン酸注射は、屈曲伸展などの関節可動域を拡大するのみならず、関節痛や腫れの改善にもある程度の効果が期待できるようです。 このヒアルロン酸による方法は、もともと高齢者における変形性膝関節症の治療用として開発され、普及してきたものですが、最近では外傷を起こしやすいスポーツ選手にもこのヒアルロン酸療法が使用されるようになりました。 実際にスポーツ選手における円板状半月板形成的切除術後のスポーツ復帰を考察した文献によると、術後3~6ヵ月で関節水腫を合併する症例が見られましたがヒアルロン酸の関節内注入と2~3週間の運動制限によって症状は消失したと報告されています。 ヒアルロン酸ナトリウムは、軟骨細胞に対する増殖作用や軟骨基質産生を促進する作用が報告されており、線維性軟骨からなる半月板組織にも好影響を与えることが予測されています。 2.半月板損傷に対するヒアルロン酸注射による治療の限界 前章でも説明した通り、ヒアルロン酸というのは関節の内部を満たしている関節内溶液の主成分とも言われるものです。このヒアルロン酸には、関節部の軟骨を保護して関節内部や滑膜周囲組織の炎症を軽減させる効果や、軟骨そのものの破壊を防止する機能があると伝えられています。 半月板損傷でヒアルロン酸注射を行う場合には、軟骨の主成分であるヒアルロン酸物質を関節内に注射を用いて直接、注入することになります。 この注射治療は、まずは1週間に1回のペースで開始して5週程度連続して実施することが多く、次の段階では、間隔を少しずつ空けていき、約2週間に1回のペースで注射を5回~10回前後継続して行います。 これらの治療を施行しても関節の疼痛が軽快しなければ、また元通り、週に1回にタイミングを調整しながら、概ね3か月程度様子を観察し、それでも著効しないケースでは根治的な手術治療を考慮することになります。 仮に半月板組織が損傷すると、損傷部位の炎症の広がることによって関節液が増えることになり、関節液内部のヒアルロン酸成分が分解されてしまうことで関節内のヒアルロン酸濃度が減少します。そのため内包液の粘度や弾力性が低下することに繋がります。 このような場合に、患部にヒアルロン酸を注射すると、関節液の粘り気や弾力度合いが一時的に回復する結果、膝関節の疼痛も改善するという治療効果が起こります。 しかし、気を付けて欲しい点として、「ヒアルロン酸の注射で得られる効果はあくまで短期的」であり、必ずしも長期間に渡って改善効果が続かないというものです。 1回のヒアルロン酸注射で期待できる効果(持続期間)は、長く見積もってもせいぜい1~2週間程度と言われています。ただ、長期間立て続けに繰り返しヒアルロン酸注射を実施した場合には、痛みを軽減する効果は徐々に減弱して、耐性が付いてくると効果も薄れてくることになります。 このことは、ヒアルロン酸自体が膝関節に悪影響を及ぼしているからではなく、注射によって一時的に症状が改善して痛みが緩和されることで日常生活において膝を酷使してしまい、関節機能を悪化させるといった原因が重なり、組織損傷のスピードを助長させてしまうからです。 また、ヒアルロン酸を半月板損傷部に注射して、痛みが薄れても、その部分の軟骨が自動的に再生するわけではないことも知っておくべきです。 このようにヒアルロン酸注射はあくまで緊急的にその場をしのぐ対症療法であり、根本的な解決にならないことは十分に認識して実践するようにしてください。 ヒアルロン酸注射の限界 ・ヒアルロン酸注射(治療)で得られる効果は短期的 ・症状の改善効果は一時的となる ・長期に投与すると耐性が付き効果が薄れる ・痛みが薄れても軟骨が再生するわけではない(根本的解決にはならない) まとめ・半月板損傷|ヒアルロン酸注射による治療の限界 半月板損傷において、膝の痛みを和らげて軽快させる治療法として期待され、広く普及しているのが「ヒアルロン酸注射」です。 この療法は、注射をするだけ、治療時間そのものの短さも魅力的な要素であり、膝関節内部の潤滑油のような役割を果たしているヒアルロン酸自体を補充することによって軟骨組織を保護して半月板周囲の痛みを軽減させることで炎症の抑制に繋げることができるといた一定の効果を示しています。 しかし、ヒアルロン酸成分は時間が経って代謝の過程で分解されて体外に排出されると、その効果は失われますので、症状改善効果はあくまで一時的なものであることを念頭に置いておきましょう。 ヒアルロン酸注射による療法は単純な注射治療になりますので、忙しい日常生活を大幅に制限することはありませんが、ヒアルロン酸注射のみで根本的な治療は達成できないことを知っていただければと思います。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S050 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 半月板損傷|不可能といわれた軟骨を再生する再生医療 再生医療なら半月板損傷は、手術、入院をせずに軟骨を再生、症状の改善ができます
2022.03.11 -
- ひざ関節
- 半月板損傷
半月板損傷!そもそも半月板とは?膝が痛むその原因、検査と治療法 半月板というのは膝関節に位置する大腿骨と脛骨間に存在する線維軟骨を意味します。一般的には、膝部分の内側と外側のそれぞれに存在し、主には膝にかかる荷重や負担を分散して物理的な衝撃を吸収する役割を有しています。 半月板損傷という病気は、膝関節内にある半月板に亀裂が生じる、あるいは組織が欠損する状態であり、若年者から高齢者まで発症し、慢性化すると変形性膝関節症を引き起こすことが懸念される病気です。本疾患に罹患した際には進行しないように早期に医療機関を受診し、適切に治療することが重要となります。 今回は、そのような半月板損傷という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 1.半月板損傷、膝が痛む原因 近年、積極的にスポーツに取り組む人とそうでない人の二極化傾向が指摘される背景があり、通常の運動不足に伴う運動能力の低下のみならず、過度なエクササイズによって「スポーツ傷害」を引き起こしかねない、どちらにもリスクが存在するようになりました。 一般的に、スポーツや運動による膝の外傷には、大きく分類すると骨折、靱帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷がメジャーな疾患となっていますが、このうち最も頻繁にみられるのが半月板損傷と言っても過言ではありません。 また、半月板損傷は運動時の怪我から発症する場合だけでなく、加齢により傷つきやすくなっている半月板組織に僅かな外力が加重されて損傷し変性断裂が引き起こされるケースが存在します。 外傷による半月板損傷では、急なターンなどスポーツ中に膝部を傷めて膝前十字靱帯の断裂に合併して引き起こされることもありますし、特に外側半月板損傷は内側に比べて発症率は少ないと言われているものの若年者でよく罹患すると考えられています。 外傷とはまったく関係なく発症するタイプには生まれつき半月組織が大きく分厚いのが特徴的な円板状半月の症例で半月板損傷を認める場合もあります。 2.半月板損傷の症状 半月板が仮に損傷すると膝部に強い痛みが生じて運動する際や膝を屈曲伸展するときに膝に引っかかり感を覚えることがありますし、症状が進行した場合には膝に関節液が貯留して急激に膝が曲げ伸ばしできなくなるロッキングという状態に陥ります。 万が一、半月板が損傷すると激痛のために歩行できなくなることも経験されますし、関節の内部で強い炎症を惹起して水が溜まって膝部分が顕著に腫れあがる、あるいは膝内部の関節区域で出血が引き起こされて血液が貯留することも考えられます。 3.半月板損傷の検査 仮に本疾患が疑われる際には医療機関で整形外科の医師などが用手的に半月板部分に外的ストレスをかけることで、痛み症状などを再現させる診察が施行されることも多いです。 理学的所見などに基づいて積極的に半月板損傷を疑うときには、追加で半月板損傷に伴う関節症変化の有無を評価できるレントゲン検査を始めとする画像検査が実践されます。 また、核磁気共鳴装置を用いて行うMRI検査の場合は、半月板そのものが撮影されないレントゲン写真とは異なって、半月板自体を写し出せるので半月板損傷の診断率が非常に高く有用であると考えられています。 MRI検査を施行することによって半月板に縦断裂や水平断裂、横断裂、弁状断裂を始めとしてどのような組織損傷が起こっているか把握することができますし、半月板の変性状態を推察することにも貢献します。 4.半月板損傷の治療 半月板損傷に対する主な治療策としては、大まかに言うと保存治療と手術療法があります。保存療法とは、一般的に安静を保持する、抗炎症薬などの薬物を内服する、リハビリテーションなどを行うことを意味します。 仮に、これらの保存療法を実践してみても、膝部の痛み、引っかかり感、ロッキングなどの症状が継続して認められる場合には手術療法を検討します。 手術療法には、半月板のなかで損傷した部分を切り取る切除術、ならびに損傷した部分を上手い具合に縫い合わせる縫合術のふたつのタイプが挙げられ、通常では関節鏡を駆使した鏡視下手術を施行することが主流です。 実際には、半月板手術例のうち約9割は切除術が選択されていますが、この方法では膝関節の衝撃を吸収して膝関節の安定性を保持する役割を持つ半月板の機能そのものが失われるため、将来的に変形性膝関節症へ進行するリスクが高率であることが指摘されています。 したがって、特に近年では可能な限り縫合術を選んで半月板を出来る限り温存するという考え方がメジャーとなっています。 まとめ・半月板損傷!そもそも半月板とは?膝が痛むその原因、検査と治療法 今回は半月板損傷とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて詳しく解説してきました。 半月板という組織は膝関節の内部に存在している軟骨様の構造物であり、内側と外側に各々ひとつずつあり、主な役割としては関節に加わる体重の負荷を分散させて関節部を安定に保つ働きを担っています。 半月板には、軟骨部に荷重される物理的なストレスを軽減させる重要な役割があるために現在では手術療法を選択した際には出来る限り半月板を温存して残す治療方法が重要視されています。 以上、半月板損傷とは、その原因と症状、治療法についてご説明させていただきました。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S049 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療で半月版損傷を治療する 半月板損傷の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院も不要で症状をする
2022.03.10 -
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 オスグッド・シュラッター病という病気をご存知でしょうか? 普段あまり聞き慣れないかも病名ですが、脛骨結節部という膝の皿(膝蓋骨)の下に存在している骨が飛び出してくることで膝痛が引き起こされる病気です。 この疾患は、患部が赤く腫れあがる、あるいは熱感を認めることもあって、傾向的には成長期に該当する少年に発症しやすいスポーツ障害のひとつと言われています。 特に、サッカーや陸上、バスケットボールなどの競技において、跳ねる行為やボールを蹴る動作を頻繁に必要とされる場合によく遭遇する病気と考えられています。 今回は、そのようなオスグッド・シュラッター病という病気の原因、症状、検査、治療などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 オスグッド・シュラッター病の「原因」 オスグッド・シュラッター病が引き起こされる原因は、膝を伸ばす力が繰り返されることによって脛骨結節部分が引っ張られて成長期に認められる膝軟骨部が剥離することと言われています。 オスグッド-シュラッター病という疾患は大腿四頭筋の過剰使用によるスポーツ障害の一種とされており、骨が軟骨から急激に成長する時期である概ね10歳から15歳頃の成長期における男児に多い病気です。 もともと、膝の曲げ伸ばし運動は太ももにある大腿四頭筋という筋肉によって常日頃から行われており、この筋肉が膝蓋腱を介して脛骨結節を引っ張っているため、跳躍運動やボールなどを蹴る動作で脛骨結節に過剰な負荷がかかると本疾患を発症しやすいと言えます。 一般的には、成長期が過ぎてしまえば自然と症状が軽快する病気であり、疼痛症状が改善すればスポーツや運動行為を再開することが出来ます。 オスグッド・シュラッター病の「症状」 オスグッド・シュラッター病における主な症状としては、「脛骨結節部の隆起と痛みや腫れ、あるいは患部が熱感」を持つことなどが挙げられます。 通常であれば、それらの症状は片脚にのみ認められることが多く、痛み症状は膝を動かすときに出現しやすく、休息している際には緩和されていることが知られています。 成長期においては、骨成長スピードに周囲の筋肉が追いつけずにアンバランスになっている状態であり、筋肉自体に強度と柔軟性が乏しいためにスポーツなどを過度に実践すると、大腿四頭筋から繋がっている脛骨粗面部に負荷がかかりやすくなります。 その結果として、膝軟骨が一部剥離するなど物理的な刺激が生じて、かつ成長期の脛骨結節部は通常よりも柔らかい構造であるがゆえに外的刺激がより過重されて、患部の熱感や腫脹などに伴って疼痛症状を引き起こされやすいと考えられます。 オスグッド・シュラッター病の「検査」 オスグッド・シュラッター病の診断は、基本的には医師による診察と症状、あるいは画像検査などに基づいて評価されます。 この疾患では特徴的な症状を捉えると同時に、患部の隆起所見や圧痛の有無などによって診断されますし、より確実な診断に繋げるためにX線レントゲン検査を行って脛骨結節の剥離があるかどうかを確認する作業が行われます。 膝部分のX線検査を施行することで、脛骨粗面の腫脹の有無、あるいは剥離破片が形成されているか否かも判断できます。また、必要に応じて超音波検査、CT検査やMRI検査などの画像的評価を追加して実施することも往々にしてあります。 オスグッド・シュラッター病の「治療」 オスグッド・シュラッター病は成長期に一時的に認められる病気とされており、通常では成長を重ねると共に自然と治癒傾向を示します。 この病気に伴う症状は通常であれば数週間から数カ月後の間に消失することが多く、激しい運動ならびに深く膝を屈伸する動作などを避けると症状の軽減に繋がります。 本疾患による症状の悪化を回避するために、大腿四頭筋のストレッチング、あるいは患部のアイシングなどを実践すると同時に、万が一疼痛症状がひどい際には鎮痛剤の服用や湿布を貼付することも考えられます。 症状が改善されればスポーツ活動や運動動作を再開することも可能ですが、スポーツする前後に出来る限りストレッチングやアイスマッサージをする、そして膝にベルトなど固定具を装着するなどの対策を講じると有用ですので心がけましょう。 まとめ・オスグッド・シュラッター病は成長期の少年に発症しやすいスポーツ障害!痛む膝の治療法 今回はオスグッド・シュラッター病とはいったいどのような病気なのか、また本疾患の原因、症状、検査、治療などについて詳しく解説してきました。 オスグッド・シュラッター病とは、主に成長期の子どもたちが膝前下部に痛みや熱感を自覚する疾患であり、激しい運動を繰り返すことで発症しやすいと考えられています。 スポーツ活動中に万が一にも膝部に疼痛を認める際には我慢せずに安静にして休息することが重要であり、症状改善後には運動前後にウォーミングアップやクーリングダウンを確実に実践することで、スポーツ障害の発生を回避できると考えられます。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S048 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(オスグッド・シュラッター病、筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.10 -
- 手部
- 手部、その他疾患
腱鞘炎!箸が持てない!そんな悩みを解消する治療法と予防について 腱鞘炎の痛みで「お箸も持てない」「ドアノブも掴めない」などと、悩んでいる人はいませんか? 腱鞘炎になると手首や手の指に激痛が走り、日常生活にも支障をきたすようになります。「このまま痛みが続いたらどうしよう」「治らないとかも」と不安になりますよね。 しかし、腱鞘炎は適切に対応すれば、早期の回復が可能な病気です。ここでは腱鞘炎の種類と症状、原因と効果的な治療法。そして予防についても解説します。 腱鞘炎の種類と原因 腱鞘炎は、指を動かし過ぎるために、腱の通り道にあるトンネル状の腱鞘が炎症のために厚くなることや、腱鞘の中を通っているロープ状の腱が腫れることで起きます。 以前は楽器の演奏者、ラケットを使う競技、テニスやバドミントン、ゴルフなどのスポーツ選手、作家や重い鍋を振る料理人など一部の人に多く現れるため、職業病とされていました。 ただ、最近では、パソコンやスマホで手指を長時間使用することから一般の人にも増えています。 その他、スーパーなどでレジの操作、子供の抱きおろしなど育児でも起こったり、編み物を頻繁にするなど普段手指をよく使うなど、手を頻繁に使う人に起こりやすい傾向があります。 またホルモン分泌の変化に伴い、妊婦や更年期の女性にもよく見られ、糖尿病やリウマチの患者さんにも多く発症しています。腱鞘炎は、痛みが生じるため、仕事や日常生活にも支障をきたしてしまいます。 腱鞘炎の原因(頻繁に繰り返される動作により起こる) ・スポーツ選手▷ ラケット競技の多い(テニス、バドミントン、ゴルフほか) ・事務▷ パソコンをはじめとしたキーボードを頻繁に使う職務 ・料理▷ 中華等で重い鍋を繰り返し使う職務 ・育児▷ 乳児の抱きおろしなど ・その他▷ 作家(文筆業)、一般人(スマホを頻繁に使う) ・その他▷ ホルモンの関係で妊婦や更年期の女性に多い ・その他▷ 糖尿病やリウマチへの罹患 腱鞘炎の種類 腱鞘炎は、2種類に分けられます。 一つは、手首に症状が現れる「ドケルバン病」と言われるものと、指に症状が現れる「ばね指」というものです。 ドケルバン病 ドケルバン病は、狭窄性腱鞘炎といい、親指側の手首の腫れや力が入らなくなるという症状が主な特徴です。これは指と手首を繋いでいる2本の腱と、その2本の腱を覆ってトンネル状になっている腱鞘といわれる部分が炎症を起こして痛みが生じます。 また圧倒的に女性に多いという特徴があります。 ばね指 ばね指は指を曲げたり、伸ばす場合に痛みが出たり、動きにくくなるなどの症状が起こります。これは指の手のひら側にある腱をカバーするように覆っているトンネル状の腱鞘と呼ばれる部分に炎症が起こる病気です。 発症すると指を上手く動かせなくなります。症状が進むと急に指が伸びるようなバネ現象が起こる特徴があるため、ばね指と言われています。 腱鞘炎の種類 ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎) ・手首に起こる ・女性に多い ばね指 指に起こる これら、いずれの症状も仕事や日常の動作が関係しているため、慢性化することが多くなります。中には腱鞘炎が原因で、やむを得ず転職するはめになったという方もいます。 手首や指に痛みや違和感を感じたら放置せずに、安静にし、それでも痛みなどが残る場合は、軽いうちに治せるよう整形外科等の病院、医療機関を受診してください。 腱鞘炎の治療法 腱鞘炎の原因は手の使いすぎですから、軽症であれば一定期間、手の使用を控えるようにしていれば治ることがあります。 手に違和感がある場合は、湿布で冷やすことや、テーピングにも効果が期待できます。 1)保存的治療 まずは、親指や手首を休ませることです。添え木を用いて手首を固定し、安静にする場合もあります。湿布で冷やしたり、痛み止め、テーピング、痛み止めの内服などの使用が保存療法的な主な治療法です 2)ステロイド注射トリアムシノロン 投薬治療をしても改善されない場合は、ステロイドの注射をする方法もあります。 3)手術 腱鞘炎の再発を繰り返し、改善がみられない場合は、手術という選択が必要になる場合もあります。手術は、局所麻酔による日帰り手術が可能です。 手指をよく使う腱鞘炎のリスクが高い職種の方は、日頃から手や指のストレッチや、マッサージなどのケアをしっかり行い予防を行うことが大切でしょう。 腱鞘炎の予防策 腱鞘炎の予防は、日頃からのケアが大事です。腱鞘炎は、手の使い過ぎだけでなく、血行不足でも生じることがあります。その予防策について以下を参照してください。 ・手と手首のストレッチで血流を良くする▷ 仕事の前後、合間など気が付いたら行いましょう ・手や指、手首に違和感や痛みがある▷ 温冷法(熱めのお湯と冷水を交互に30秒ずつ5セット) ・スマートフォンは、両手で操作する▷ 片手操作は、親指と手首に負担がかかります 普段から長時間同じ作業を続けないように意識しましょう。 ときどき休憩を挟んで手を休ませることが必要です。作業の前後にストレッチを取り入れるのも有効です。パソコンであれば、強くキーボードを叩かないなどの工夫をしてみることも効果があります。 そして、症状が軽いうちにケアをして、痛みを長引かせないことが大切です。 痛みが続くようなら病院等、医療機関を受診してください。症状に合わせて塗り薬を使う、炎症を抑えるステロイド薬を注射をする、またリハビリを行うなどの治療方法があります。 それでも改善が見られない場合は手術になることもあります。また、近年は、スポーツ医療の分野でも話題になっている「再生医療」で治療するという方法を検討することもできます。 まとめ・腱鞘炎!箸が持てない!そんな悩みを解消する治療法と予防について 腱鞘炎は、スポーツをはじめとして手や指を使う職業、そして育児など子供の抱きおろしでも発症します。 一度発症すると治るまでに時間がかかってしまう場合がありますが、治らない疾患ではありません。悪化する前に早めに対応してください。 また、手を酷使しないよう定期的に休憩をして手を休ませるなど予防に努めましょう。 腱鞘炎は手や指を頻繁に使う仕事に起こりやすい症状です。腱鞘炎というものを意識して日頃から予防をすれば避けることができます。 治療法については、保存的治療、注射、手術の3つの治療を説明しました。 近年は再生医療による治療を選択することもできます。手術以外の選択肢として、この治療法は、患者さんの負担を抑えることができ、副作用も少ないため、注目を集めている治療方法のひとつです。 慢性化した腱鞘炎の治療としては、薬物療法やリハビリテーション、手術、再生医療など、さまざまな方法があります。痛みや違和感が長く続く場合は、整形外科をはじめ専門の医療機関で相談してください。 以上、腱鞘炎!箸が持てない!そんな悩みを解消する治療法と予防についてを説明させていただきました。この記事が参考になれば幸いです。 No.S047 監修:医師 加藤 秀一
2022.03.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症でお悩みの方へ|ひざの痛みの改善に最新の治療法 膝の痛みが進み、変形性膝関節症になると、症状が進行するごとに痛みを感じる頻度が増えます。痛みを我慢して日常生活を送っているのはとても辛いですから、何とかして痛みを和らげたいものです。 変形性膝関節症は、中期から末期になると痛みが強くなり、末期には膝が変形するほどの症状となります。そうなると日常生活を送るのが難しくなりますし、何よりも歩くことができなければ運動不足になり、結果として肥満が進んだり、内臓の働きが悪くなって様々な病気を引き起こす原因になります。膝の痛みや違和感は我慢せず、早めに病院等、医療機関を受診してください。 今回は、膝の痛み・変形性膝関節症の痛みの対処法とこれまでの治療法、新たに注目されているおすすめの「最新治療法」についてご紹介します。 膝の痛み、変形膝関節症の初期の対処法 変形膝関節症は、初期の段階で炎症を悪化させないようにすることが大切です。 初期~中期の前半あたりでは、3日から1週間ほどなるべく安静にし、膝に負担をかけない生活を送ることを心がけてください。炎症が収まり、痛みも引く場合があります。 安静にしていても膝の痛みが治まらない場合は、医療機関を受診してください。専門医による適切な治療を受けることをおすすめします。 変形性膝関節症の従来の治療法 変形性膝関節症の従来の治療では、症状が軽いうちは、生活習慣の改善と内服薬での治療がメインとなります。もう少し進行するとリハビリも取り入れた治療となり、症状が重い末期では手術を行うこともあります。 生活習慣の改善 症状が軽い場合は、日常生活における膝の負担軽減を目的として、生活習慣の改善を行います。具体的には普段の動作を見直す、肥満であれば減量するといった内容です。 膝への負担を減らす目的での体重管理は、大切ですが、自己流では難しいものです。できれば、診察を受けている病院等にて指導を受けて取り組まれることお勧めします。 運動療法(リハビリテーション) 運動によって脚に筋力をつけ、膝周辺の筋肉を強化し、膝関節を保護します。良くある誤解は、運動をすると膝の痛みが強くなるのでは?という疑問です。 この点に関して不安になる患者さんもいらっしゃいますが、適切・適度な運動を行うことで膝周囲の筋肉強化が可能になります。筋肉が強化されると、膝関節の負担を軽減することができるため前向きにお取組みください。 ただし、自己流は逆に膝を傷めることもあります。病院のリハビリ等、専門家の指導を受けて無理のない範囲で行いましょう。 薬物療法 痛みのある患者さんには、内服薬や外用薬を使った痛み止め治療を行います。 装具療法 歩行や立ち上がりの際の膝への負担を軽減するため、膝サポーターや足底(インソール)への装具着用を行います。 物理療法 膝周辺を温めて血行を促したり、炎症が酷く腫れている場合は冷やすなどします。 外科手術 症状が進行した場合、外科的治療が必要になることがあります。具体的には、内視鏡を使った関節鏡視下手術や、骨を切って変形を矯正する高位脛骨(けいこつ)骨切り術、人工膝関節置換術などがあります。 膝の症状が進行し、変形性膝関節症で辛い思いをしている患者さんは少なくありません。特に、投薬や注射でも改善しない痛みが続く末期の患者さんは日常生活に支障をきたしています。そのような場合、次のような方法が選択肢となります。 ・関節鏡視下手術 ・高位脛骨(けいこつ)骨切り術 ・人工膝関節置換術※ ※人工膝関節置換術とは 変形性膝関節症の人工膝関節置換術では、特殊な金属とポリエチレンから作られる人工関節を設置することで、膝関節の動きをサポートすることができます。 術後はそれまでの膝関節の痛みがなくなる、もしくは大きく和らぎ、膝の痛みが軽くなることで、運動もできるようになることが多くあります。人工関節置換術によって痛みは和らぎ、日常生活の不便も少なくなりますが、やはり手術には注意点やリスクがあります。 例えば、人工関節が外れたり、異物を入れたことによる細菌感染が起きるといったリスクがあり、時間の経過に伴い人工関節が緩むこともあります。 ですから、変形性膝関節症で最新治療を受ける場合は、信頼できる病院を選ぶこと、また、術後も定期的に受診をし、適切な検査を受けることが必要です。 変形性膝関節症のおすすめ最新治療「再生医療」 保存療法や手術に代わる、新しい選択肢としておすすめしたいのが「再生医療」です。 膝の痛みの原因のひとつ、膝軟骨のすり減りに対しては、軟骨を再生させることはこれまで不可能と言われてきました。それが先端医療の再生医療では、患者さんの幹細胞を培養して軟骨を再生することができるようになりました。 再生医療は大掛かりな手術を必要とせず、本人の細胞を利用することで患部の再生を促す医療で、保存療法よりも早期の治療効果が期待でき、しかも確実性が高く、従来の手術法よりも体への負担が少ない治療法として注目されています。 再生医療の中でもおすすめは、自分の幹細胞を培養して用いる治療法で培養するための時間は必要ですが手術することなく、入院の必要もなく、日常生活に復帰できる点が評価されている治療法です。 再生医療は新しい医療分野だけに、医師であっても知見に乏しいことがあります。ご相談される場合は、一般の病院等ではなく再生医療専門医のいるクリニック等にてご相談されることをおすすめします。 当院でも、再生医療による変形性膝関節症の治療をおこなっています。是非一度お問い合わせください。 まとめ・変形性膝関節症、ひざの痛みでお悩みの方には「再生医療」がおすすめです 軽度な変形性膝関節症は、外科手術を必要としなくても進行を抑えることが可能ですが、進行してしまうと外科的手術が必要になる場合があります。しかし、末期の変形性膝関節症でも「最新治療」によって運動が可能になるほど症状を緩和することが可能です。 最新治療を検討する場合、変形性膝関節症の治療実績の高い病院やクリニックで整形外科を選ぶこと、また、術後のトラブルを防ぐためにも、定期的な受診を怠らず検査をきちんと受けるようにしましょう。 変形性膝関節症は、早期治療が何よりも大切、膝に痛みや違和感を感じたら自己判断せずに病院等にて診察を受けられることをおすすめいたします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S046 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 変形性膝関節症でオススメの再生医療は、幹細胞治療です 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます
2022.03.03 -
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筋断裂に注意したい「ふくらはぎ」と、そのリハビリについて 筋断裂はいろいろな部位で起こる可能性がありますが、なかでも起こりやすい部位の「ふくらはぎ」です。筋断裂とは、スポーツなどで急に強い力や、無理な力がかかった際に、筋肉が耐えられなくなって筋線維が損傷、避けたり、破れたりして断裂することです。 筋線維のうち、一部など範囲が限定的な断裂の場合は部分断裂といい「肉離れ」とも言われます。筋断裂が起こると、たとえ部分断裂であってもそれ以上の運動はもちろん動けなくなってり歩くことも困難になります。 ふくらはぎの筋肉は、歩行や走る場合、立っている時の姿勢の安定などに関わります.また、血液を心臓へ戻す役割を果たすことから第2の心臓とも言われている筋肉なのです。そのため、筋断裂を起こすと生活に大きな支障が出てしまいかねません。 今回は、ふくらはぎの筋断裂の症状や原因、再発防止や予防法について紹介してまいります。 ふくらはぎの筋断裂の症状 ふくらはぎの筋断裂の主な症状は、ふくらはぎの痛みや内出血です。ふくらはぎの一部分に凹みが出てくる場合もあります。ふくらはぎの痛みは度合いによって異なります。 安静時や、軽く歩く程度なら問題ないものの、走るときだけ痛いという場合もあれば、歩くだけでも痛い場合もあります。また、重度の場合は安静にしていても痛みを感じる場合があります。 ふくらはぎの筋断裂の主な原因 ふくらはぎの筋断裂の主な原因は、筋力の低下や柔軟性の低下、疲労の蓄積などが挙げられます。 スポーツなど激しい動きの有無にかかわらず、事前にウォーミングアップ目的のストレッチを行ったり、終了時にはクールダウンのスチレッチを十分に行うことが大切です。このような準備が不足すると筋断裂の原因につながります。 また、筋力のバランスや身体の動かし方が悪いことも筋断裂が起こりやすくなる原因になります。そのため、スポーツをしている人はフォームやトレーニング方法を見直すことも必要です。 これはスポーツをしていない人にも当てはまり、普段の姿勢などを見直してみるてはいかがでしょうか。 ふくらはぎの筋断裂の再発防止や予防法 ふくらはぎが筋断裂を起こすと痛みや動きの制限などで悩まされることになるので、再発防止や予防が必要になりますす。特に、スポーツに取り組んでいる人などは、完全に回復しないまま早期復帰したために、再発してしまうことがあるので無理や大丈夫との過信は禁物です。 ふくらはぎの筋断裂の再発防止や予防に効果的なのはストレッチですが、筋肉は色々な方向に向かって付いているため、ストレッチする際は一つの方向にだけ伸ばすのではなく、いろいろな方向へ伸ばしたり、捻りや回転などを加える意識を持ってください。ストレッチは、複数の動きを取り入れましょう。 筋断裂の再発防止と予防 ・激しい動きやスポーツには事前のウォーミングアップと事後のクールダウンを行う ・身体のバランスを整える、正しい姿勢を知る ・身体の柔軟性を高めるストレッチは有効 ・ストレッチは一方向だけでなく、筋肉に合わせた色々な方向へのストレッチを行う 筋断裂が起きたとき、回復に欠かせないのがリハビリです 何故リハビリが必要なのか?どのようなリハビリが必要か?という疑問や質問がある人のために、筋断裂の治療でリハビリをおこなう理由や、リハビリを始めるタイミング、どのようなリハビリをおこなうのかについてご紹介しましょう。 筋断裂の治療でリハビリをおこなう理由 筋断裂の治療でリハビリをおこなう主な目的は、柔軟性と筋力の回復です。筋断裂が起きて筋組織が回復していくなかで、患部とその周囲は徐々に硬くなっていきます。 幹部や周囲が硬くなったまま、これまで通り部位を使用していると、思うように動かすことができなかったり、大きな負荷がかかって筋断裂が再発する危険性もあります。 また、筋断裂が起こると動かせる範囲も制限され、動かせたとしても安静にしておく必要があるため、どうしても筋力が低下してしまいます。 そのため、患部をはじめとした州にも硬くなった部分の柔軟性を改善していくと共に、低下した筋力も改善していかねばなりません。このように、柔軟性と筋力を回復させ、発症前と同じような動きができるよう、そして、再発防止のためにリハビリはとても重要なのです。 筋断裂のリハビリを始めるタイミング 筋断裂のリハビリは、筋断裂を起こしてからいきなり始めるわけではありません。 なぜなら筋断裂が起きると断裂した部分は炎症を起こします。そのため、炎症を起こしている間は安静にして、患部を冷やしたり、圧迫し、血腫が大きくなるのを防ぐなどして、痛みや腫れが軽減していくのを待つことが必要です。 その後、腫れが治まり、痛みが治まるのを待って、ゆっくりと患部を動かしてみます。痛みなくリハビリをおこなえる状態であれば、そこからリハビリを開始することになります。 筋断裂のリハビリ リハビリの内容は医療機関や指導者によって異なりますが、ストレッチと筋力トレーニングが基本となります。ストレッチは、患部が軽く伸びるくらいの強さで、時間をかけて(20秒から30秒くらい)ゆっくりと伸ばしていきます。それを3セットから5セットくらい行います。 筋力トレーニングは、筋力低下を改善するという目的の他にも、患部に刺激を与えることで回復が早まることも期待できます。例えば、筋断裂が起きやすい太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)の筋力トレーニングでは、うつぶせになって足を伸ばした状態で上へ挙げるヒップエクステンションというトレーニングがよくおこなわれます。 このようにリハビリ目的での筋肉トレーニングは有効ですが、こうしたトレーニングは過度に行うべきではなく、その際は専門家の指導の下、行うことが再発の防止につながります。 まとめ・筋断裂が起こりやすい「ふくらはぎ」とリハビリについて ふくらはぎの筋断裂の症状や主な原因、再発防止や予防法について紹介しました。ふくらはぎの筋断裂を起こすと痛みや動きの制限で悩まされることになります。 再発したり、慢性化したりしないようにストレッチなどでウォーミングアップやクールダウンをしっかりおこなうようしましょう。また、もし筋断裂を起こしてしまったときは、適切な治療を受けることが必要です。 筋断裂の治療でおこなわれるリハビリは、筋断裂が回復するまでしっかりとリハビリをおこなうことは大切ですが、回復して、筋断裂を起こす前と同じような生活を送れるようになった場合も、再発防止のため、ストレッチなどを行うなど発症予防をしましょう。 以上、筋断裂に注意したい「ふくらはぎ」と、そのリハビリについて記してまいりました。 最近は、スポーツ医療の分野で、「再生医療」に注目が集まっています。この再生医療についても詳細を知っておき、万一の筋断裂を治療する選択肢の1つとして検討してみられてはいかがでしょうか。 No.S045 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.03 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷!再生医療が画期的な治療法と言われる訳とは! 脊髄損傷の患者様は、日本に15万人ほどおられ、毎年4000〜5000人が受傷していると言われています。脊髄を損傷する原因は、交通事故・高所からの転落・スポーツでの事故・平地での転倒などさまざまです。 脊髄を損傷すると、手足の運動や感覚が麻痺するなど、身体機能に大きな影響をもたらす可能性が高いものの、これまで損傷した脊髄を再生させたり、麻痺を回復させたりするような効果的な治療法はありませんでした。 しかし、再生医療という新たな医療分野の出現によって損傷した脊髄を再生させ、体の機能を取り戻す、回復するといった画期的な方法が登場しました。この医療は、これまでは難しかった症状を手術や入院をせずに回復に向かわせる奇跡的ともいえる手法と言われています。 この記事では、これまでの脊髄損傷の治療法と、新たな治療法である再生医療での治療法をわかりやすく解説します。 脊髄損傷とは 脊髄とは脳から骨盤にかけて出ている神経で、脳と体の各部位を連結させる通信経路の役割があります。脊髄が損傷すると、体の機能に大きな影響を与えるため、脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙骨)が形成する脊柱管に守られるようにして体の各部位へ分岐します。 脊髄損傷はあらゆる年齢に発生しますが、特に20歳と59歳に発生頻度が高まるとされてきました。しかし、近年の調査では70代に最も多く発生することがわかっています。これは、加齢とともに転倒リスクが上がるためと考えられます。 脊髄損傷は、完全麻痺と不全麻痺に分けられます。完全麻痺は、脊髄が完全に離断されると発生し、手足の感覚がわからない、全く動かなせないといった状態で、不全麻痺は、運動機能や感覚麻痺が一部だけ残っている状態です。残存する機能は、損傷部位や程度により変わります。 脊髄を損傷の特徴として、高い位置で損傷するほど重症度が高くなります。一般的に、上位頚髄の損傷では、自分で呼吸ができなくなり、呼吸器を必要とする重篤な麻痺を生じることがあります。また、胸髄の損傷では頚髄損傷と比較して、完全麻痺の可能性が高まります。 脊髄損傷のこれまでの治療法 脊髄を損傷すると、損傷部位の安静を確保し、手術によって脱臼・骨折した脊椎を安定させます。その後、残存した機能を活かしてリハビリテーションに取り組みますが、受傷時に負った麻痺がそのまま残ってしまうのが現状です。 急性期の治療 損傷時は、脊椎をギプスや装具で固定して安静を図ります。特に、重症化しやすい頚椎の固定は強く推奨されているほか、頭蓋骨の牽引や手術により神経を圧迫している原因を除去します。 また、頚髄や上部胸髄損傷により自発呼吸が機能しなくなった際には呼吸確保が実施されます。 脊髄損傷をしてすぐは、ベッド上で安静にすることが多く、褥瘡(床ずれ)などさまざまな合併症に気をつけます。 脊髄損傷による合併症 ・褥瘡 ・筋力の低下 ・関節可動域の低下 ・呼吸器疾患 ・尿路感染症 ・起立性低血圧 慢性期の治療 脊髄損傷後に残存した機能を活かし、日常生活を送れるようにリハビリテーションが行われます。リハビリでは、筋力トレーニングや関節可動域訓練など、日常に即した訓練が実施されます。 また、寝返りの練習により床ずれを防止したり、排泄の練習をしたりと、個人の状態に合わせた訓練に取り組み社会復帰を目指します。 再生医療が画期的な治療法と言われる訳 これまでは脊髄を損傷すると、手術により神経を圧迫している骨片を取り除き、リハビリによって社会復帰を目指してきました。しかし、手術やリハビリでは損傷した神経を再生させたり、麻痺を回復させる効果はなく、損傷した神経に対し有効な治療法がないのがこれまでの現状でした。 さらに、手足の麻痺や感覚が戻るかどうかは個人差があり、損傷した部位によっては寝たきりや車椅子での生活を余儀なくされるケースもありました。そんな中、最新医療である再生医療の出現によって、損傷した神経の再生が期待できるようになったのです。 再生医療とは 再生医療とは人間が持つ自己修復力を高める最新医療で、脊髄損傷に対しては体内に存在する幹細胞が使われます。幹細胞が持つさまざまな組織に分化(変化)する特徴を活かして、損傷した神経の修復・再生が期待されます。 幹細胞を使った治療法とは 脊髄へ使われる幹細胞は、骨髄由来の幹細胞か脂肪由来の幹細胞です。 骨髄由来幹細胞は、神経に分化しやすいとされていますが、培養しにくい上に感染リスクがあります。それに対して、脂肪由来幹細胞は、採取・培養しやすく、感染リスクもほとんどありません。 脂肪由来の幹細胞は、骨髄由来の幹細胞と比べてより多くの細胞を投与できることから高い治療効果が期待されます。最近の研究では、脂肪由来の幹細胞治療の方が治療成績は高いことがわかっています。 脊髄への投与方法 脊髄損傷への幹細胞の投与方法は、点滴と硬膜内注射の2種類があります。点滴では、血管へ幹細胞を投与し、血液を介して脊髄へ届けます。硬膜内注射では、腰あたりから脊髄のある硬膜内に直接投与します。または、両者を掛け合わせて効果を高める場合もあります。 点滴では脊髄に幹細胞が到達するまでに数が少なくなってしまいますが、損傷部位へ直接投与する方法では、幹細胞の数を減らすことなく確実に患部へ届けられるため、点滴と比べて神経の再生力が高いです。 ただし、硬膜内へ直接投与する方法は国内でも限られた医療機関でしか行われていません。硬膜内注射を検討される場合、受診予定の医療機関へ問い合わせてみると良いでしょう。 まとめ・脊髄損傷!再生医療が画期的な治療法と言われる訳とは?! 脊髄損傷は、大きな事故や転落だけでなく平坦な道で転んでも発生する疾患です。脊髄神経が損傷されると、手足を動かせなくなったり感覚を感じとれなくなったりと、これまで通りの生活を送れなくなる場合があります。 急性期には、脊椎を固定し安静にするほか、手術で骨のかけらを取り除きます。ただ、慢性期にリハビリに取り組んだとしても、一度傷んだ神経が元通りになることはなく、これまで効果的な治療法はありませんでした。 しかし、最新の治療法である再生医療では、損傷した神経の修復や再生が期待できるようになりました。再生医療は、これまで効果的な治療法が存在しなかった脊髄損傷に対して、大きな可能性が広がる治療として注目されています。 以上、脊髄損傷の画期的な治療法と言われる再生医療について記させていただきました。参考になれば幸いです。 No.046 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.03.02 -
- 肘関節
野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばす スポーツをする上で気を付けたいのが何といってもケガや故障です。 今回ご説明する「野球肘」は少年野球の選手のうち5人に1人が発症するとされるスポーツ障害の一種です。野球肘は、ボールを投げる動作を繰り返すことで起こります。 特に子供さんが野球チームに入り、ピッチャーの才能があることが分かっても手放しで喜んではいけません。ピッチング、投球のしずぎで肘の故障を起こして結果的に野球を断念…といこともあり得るからです。 せっかくの才能をつぶさないで伸ばしてあげるためにも野球肘には十分注意してあげなければなりません。子供さんからの肘が痛いというサインを見逃さないでください。 日本は、とかく根性論に走りがちです。根性は大切ですが万一、症状が悪化してしまっては本末転倒、選手生命を奪いかねません。そこで野球肘の原因や予防方法を知って是非、選手生命を伸ばす方向で取り組んで頂ければと思うのです。 野球肘とは 野球肘とは、ピッチングなど、ボールを投球する動作が原因で起こる「肘関節の損傷をまとめた呼び方」です。 野球肘|起こる原因 野球肘は、肘に反復して過度な負担がかかることが原因で発症します。野球のボールを投げる動作は、腕を大きく振りかぶった状態から肘の機能を使って力いっぱい投げおろすため、肘への負担が大きな動作となります。この動作を繰り返すことで肘の靱帯や軟骨に大きな負担がかかってしまうのです。 野球肘|種類 野球肘は肘関節のさまざまな部位で起こりますが、痛めた部分によって大きく3種類に分けられます。 野球肘が起こる部位 ・肘の内側の骨である橈骨側の靱帯や軟骨を損傷してしまうもの ・肘の外側の骨である尺骨側の軟骨を損傷してしまうもの ・尺骨自体を損傷してしまうもの 球を投げる動作を分解 肘の内側には骨や靱帯が引き離される方向に力がかかりますが、この引っ張られる力は、関節を痛めやすいため、橈骨側の靭帯は野球肘の起こりやすい部位です。 一方、肘の外側と後ろ側には骨がぶつかり合う方向で力がかかります。そのため、骨自体に損傷を与えてしまうことで発症すると重症化しやすく、注意が必要になります。 野球肘の症状と重症化を防ぐ予防法 野球肘の発症後、その治療は、何よりも安静が第一です。短くても数週間、長いと数年、野球肘と付き合いが続く可能性があります。そのためにも、症状や違和感を感じたら、少しぐらいと我慢してはいけません。 軽症のうちから医療機関を受診し、指導を受けて重症化を防ぐことが必要です。 野球肘|症状 野球肘は、ボールを投げるときの痛み、違和感が代表的な症状です。痛みについては、投げるときのみの場合と、投げた後しばらく痛む場合がありますが、軽症の場合なら、安静にすることで痛みは引きます。 これは良いことのようですが実は、この痛みが引いてしまうこと困りものと言えるのです。 なぜなら、少々痛くても休んたら大丈夫と勘違いしてしまうからです。その結果、治療せず放置し、痛みが継続的に出るようになり、こうなると重症化して治りにくくなります。 無理は禁物ということですが、この部分は本人だけでなく、周りの意識も非常に重要です。肘が痛いという言葉に敏感にならなければなりません。 すでに野球肘の症状がある場合 野球肘の心配がある場合は、初期の段階から医療機関で診察を受けることをお勧めします。野球肘の症状がある場合は、何年も肘の安静を強いられることがないように、重症化を防ぐ必要があります。 まずは投球する回数を減らし、肘を休ませましょう。そして、長くプレーを続けるためには、肘に負担が掛かる投げ方をしていないか指導者を交えての指導が必要です。肘に負担が掛かるような投げ方を改善する必要があります。 治療については、スポーツ外来などがある医療機関を受診し、治療はもちろん。リハビリを含め、以後の取り組みについて指導を受けるようにしましょう。エコー検査やレントゲンなど検査を受け状態を確認し、早期に治療を開始することが大切です。 野球肘|予防にはストレッチが有効 肘の関節や靭帯を守るため、動かす前に準備が大切!野球肘を予防するには、プレー前に関節をしっかり伸ばすストレッチを行いましょうす。スポーツの前後にストレッチをしっかり行うことは、大切ですが肘周りのストレッチだけで安心していてはいけません。 野球肘の予防には、肘の関節だけでなく、全身の柔軟性を上げることが重要だからです。そこで以下に野球肘の予防に効果的なストレッチをご紹介します。 野球肘を予防するストレッチの種類 運動前に準備運動を行ったり、ストレッチを行うことは一般的に知られています。野球肘の予防にもストレッチは大切です。肘周り、肩回り、下半身と全身の柔軟性を上げてから練習に挑むことでケガや故障を防ぐことが可能になるからです。 野球肘は肘の酷使が原因ですから、まずは、肘の負担を減らすために肘周りの関節をほぐしていきましょう。痛みがあるときは無理して行わず、専門家に相談することをお勧めします。 手首・肘の内側を伸ばすストレッチ 片手をまっすぐ前に伸ばします。この時、手の甲は天井を向き、手首と腕が90度になるようにします。そして、伸ばしている手と反対の手で、指先を体の方に引き寄せましょう。 次の動作は、そのまま手のひらを反時計回りに180度回転させ、手の甲が地面を向くようにします。そのまま手のひらを机などの平らなところに着き、ゆっくりと体重をかけていきます。 肩・肩甲骨をほぐすストレッチ 投球動作では、肩にも大きな負担がかかります。肩甲骨周りの可動域を広げることは、きれいな投球フォームを作ることにもつながります。 肩回りを伸ばすストレッチ 身体の前で肘を体に対して直角に上げ、手の平から肘までをピッタリつけて肩甲骨を開きます。(肘の角度は90度でキープ!)次にゆっくりと胸を張るように、腕を後ろに引きましょう。この時、肩甲同士を骨を内側に寄せるイメージで行ってください。 体幹と下半身のストレッチ 投球は足を大きく踏み込み、体の回転をボールに伝えることでより肘への負担を軽減できます。そのためには体幹のストレッチも忘れず行いましょう! 体幹と股関節のストレッチ 足を開いて座り、片方の足は体側に引き寄せます。腕を頭上にまっすぐ伸ばし、曲げた足側の手を反対の手で引っ張りながら伸ばしている足の方へ体を倒しましょう。反対側も同様に行います。 効果的なストレッチについて ストレッチにはコツがあります。そのコツを抑えるだけで野球肘の予防効果をアップさせることができます。せっかくストレッチを行うのですから次に紹介するポイントを守って、より効果的なストレッチを行いましょう。 ストレッチをする時に気を付けるポイント 第一に、ストレッチの動作はゆっくり行いましょう。急に関節を伸ばすと、痛めてしまうこともあります。具体的には、1つの部位を伸ばすのに20秒程度かけるのが理想的です。 加えて、ストレッチをしてすぐに激しい動きをするのはNGです。緊張がゆるんだ関節を急に動かすと思わぬケガにつながりますから、軽い運動を行ってから練習を始めてくださいね。 野球肘治療後のストレッチは専門家に相談する ストレッチは関節の可動域を広げるために重要です。ただし、野球肘の治療後にストレッチを始める場合は、医師の指示に従って行うようにしましょう。 また、リハビリにストレッチのメニューが加えられた場合、専門家の指導のもとで行うことも大切です。安易な自己判断で野球肘を悪化させることがないように気を付けてください。 まとめ・野球肘をスチレッチで予防して選手生命を伸ばす 野球の投球は全身で行うことが理想で、手だけの力で投げ続けると、野球肘発症の引き金となってしまいます。練習前に時間をかけてストレッチを行うことで、野球肘の予防だけでなく、練習後の疲労も軽減できるでしょう。 野球肘の原因は肘の使い過ぎです。最初から強く投げたり、いきなり投球するのではなく準備が必要です。プレーや練習前、練習後には入念なストレッチを行うことが必要です。 練習計画に前後のストレッチを取り入れて野球肘を予防しましょう。 それでも肘の違和感がある、痛みがあるというような場合は重症化を防ぐためにも肘を安静にし、早めに医療機関を受診しましょう。せっかくの才能ですから伸ばすためには身体の手入れが一番の練習だとご理解ください。 以上、野球肘を予防する!ストレッチで選手生命を伸ばすと題して説明させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S044 監修:医師 加藤 秀一 ▼ スポーツ外傷、野球肘をはじめとした再生医療という手段について 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.01 -
- 関節リウマチ
関節リウマチの治療|生物学的製剤は有効だけど副作用に気をつけて 関節リウマチで悩まれている人はいませんか?この関節リウマチの治療方法で使われる薬物療法も日々進歩を重ね、現在では「生物学的薬剤」による治療が行われるようになってきました。 そこで、今回は関節リウマチに悩んでいる人が知りたい以下の疑問点について解説してまいります ・生物学的薬剤は効果があるのか? ・生物学的薬剤はどの程度、効果を期待できるのか ・生物学的薬剤に副作用の心配はないのか 関節リウマチの治療で使われる生物学的薬剤とは 生物学的薬剤とは、科学的に合成されたものではなく、バイオテクノロジー技術を駆使して生体がつくる物質を薬剤として使用するものです。2003年から日本でも使われるようになりました。 これは、それまで使用されていた抗リウマチ薬で効果がなかった人にも効果があるなど、今では関節リウマチの薬物療法の切り札的存在になっていいる薬剤です。 今や多くの種類の生物学的薬剤が使われるようになってきました。使用に際しては患者さんの状態、「基礎疾患があるか」「高齢であるか」を踏まえて医師が適切なものを使い分けることで、より高い効果が期待できるようになっています。 医師が状態を鑑みて判断 ・基礎疾患があるか ・高齢であるか 効果|炎症を抑える 生物学的薬剤は、関節リウマチによる炎症を抑える効果を期待できるものです。関節リウマチは免疫の異常によって起こり、症状としては体内の細胞や組織を攻撃して炎症を起こし、腫れや痛みを生じさせるものです。 その際に、身体にはサイトカインという物質が多く分泌されていて、このサイトカインが炎症を広げていくことで更に炎症が悪化していくことになります。 これに対して生物学的薬剤は、このサイトカインの働きを抑える効果が期待でき、炎症を抑制し、関節リウマチの症状が悪化することを抑える効果があります。 効果|関節が破壊されるのを抑制 生物学的薬剤の大きな特徴は、関節リウマチによって関節が破壊されていくのを抑制する効果が優れている点です。関節リウマチは、免疫の異常によって起こり、炎症が生じると関節の内側を覆う滑膜が腫れあがり、関節や骨を破壊します。 生物学的薬剤は、この破壊を抑制する効果が期待できるのです。また、破壊を抑制するだけでなく、破壊された関節や骨を修復する効果も期待できることも分かってきています。 ただし、破壊された関節や骨が完全に修復されるというわけではなく、既に完全に破壊されてしまった関節や骨には効果が期待できません。つまり、生物学的薬剤による治療は、できるだけ早めに開始するのがおすすめです。 生物学的薬剤の効果 ・炎症を抑える ・関節の破壊を防ぐ ・崩壊した関節を修復(早期治療が条件) 関節リウマチ治療の生物学的製剤に副作用はあるか 生物学的製剤を使ったリウマチ治療はとても有効です。しかし、治療を受けてみようと思っている人なかには、副作用が心配だという人も少なくないでしょう。そこで、リウマチ治療に使用される生物学的製剤にはどのような副作用があるのかについて解説します。 また、副作用に対して自分で予防できることについても紹介します。 副作用|感染症に注意 生物学的製剤を使った関節リウマチの治療による副作用で注意したいのは「感染症」です。リウマチは免疫の異常によって、体内の組織や細胞を攻撃してしまうのが原因と考えられています。 そのため、免疫の働きを抑える効果がある生物学的製剤を使用するわけですが、免疫の働きを抑えると、体内に侵入したウイルスや細菌などを攻撃して身体を守るという免疫本来の働きも抑制されてしまいます。 その結果、肺炎や結核などの感染症にかかりやすくなります。そのため、仮に感染症になった場合は、治りにくくなってしまいかねません。こうした感染のリスクを抑えるために医療機関は、生物学的製剤の治療前に採血を行い感染症の原因となるウイルスや細菌の有無をチェックします。 これら感染症に対して自分ができる予防法としては、手洗いや、うがいを小まめに行ったり、マスクを付ける等があります。また、咳や熱が出たという場合は、症状が軽くてもできるだけ早めに医師に伝えることが大切です。 副作用|アレルギー 生物学的製剤を使ったリウマチ治療では副作用としてアレルギーが出る可能性もあります。例えば、生物学的製剤のなかの1つであるレミケードにはマウスのタンパクが含まれているので、それが体質に合わずにアレルギー反応が出ることがあります。 また、他の種類のエンブレルは人のタンパクなので、大きなアレルギー反応が出ることは、ほぼありませんが、それでも体質が合わずに「アレルギー反応」が出る可能性があります。 副作用|注射時 関節リウマチ治療での主な副作用は感染症とアレルギーですが、注射時に副作用が出ることもあります。関節リウマチ治療の生物学的製剤の投与方法には点滴注射や皮下注射がありますが、点滴注射では頭痛や発疹、皮下注射では注射箇所に赤みや腫れなどの症状が出ることがあります。 しかし、こうした症状が出た場合でも多くは一時的で、すぐに治まります。そのな場合、心配や不安があれば、すぐ医師に相談しましょう。 まとめ・関節リウマチの治療|生物学的製剤は有効だけど副作用に気をつけて 以上、関節リウマチの治療方法として生物学的薬剤に期待できる効果と副作用について紹介しました。生物学的薬剤は、従来使われていた抗リウマチ薬よりも高い効果を期待することができます。 しかし、治療を受けるのが遅れると期待するほど回復しないなど、思うような効果が得られないこともあるので我慢せずに早めに医療機関を受診するようにしましょう 関節リウマチ治療に使用される生物学的製剤の副作用について、副作用は必ず出るものではありません。医師も事前の検査で患者に合った生物学的製剤を使用するなど副作用のリスクを極力抑えた状態で治療を行います。 ただ患者自身も、どのような副作用があるかを把握しておくことは大切です。心配な症状が出たら、すぐに医師に相談できるからです。少しでもリスクを減らすために、医師に自分の状態をしっかりと伝える、そして予防できることはしっかりとおこなうことも大切です。 そして、関節リウマチは、早期治療が非常に大切です。身体や関節に異変、違和感を感じたら放置しないで早めに医療機関を受診することをおススメいたします。 No.S043 監修:医師 加藤 秀一
2022.02.25 -
- インピンジメント症候群
- 肩関節
インピンジメント症候群とは、その原因、症状と治療法 インピンジメント症候群とは、肩を使う動作の途中で痛みを感じたり、引っかかるような違和感を感じて、それ以上に動かせなくなる症状を起こす障害です。この「インピンジメント」とは、聞きなれない言葉ですが「衝撃、衝突、挟まる」といった意味になります。 なぜこの症状に衝撃や衝突、挟まるといった言葉が使われているかというと、その症状が肩の関節を上げたり、動かそうとした際に、関節が骨や筋肉と衝突を起こすような衝撃があることに由来しているようです。 今回は、この舌を噛みそうな名前の「インピンジメント症候群」についてお話しましょう。 インピンジメント症候群はスポーツが原因になることが多いスポーツ障害 インピンジメント症候群とは、肩のインナーマッスル(肩関節の周りを取り囲み肩を支えている腱板)が骨の屋根にあたって突っかかったり、挟まったりすることで痛みが起こり、うまく動かせなくなるといった症状の総称です。 これは肩が使われると肩峰や靱帯に上腕骨頭が衝突や、摩擦が起こることによって腱板が挟まれ、肩峰の下にある腱板を保護している滑液が入った袋、「肩峰下滑液包(肩関節の保護や動きを滑らかにしています)」に炎症が起こり、肩が痛むようになるものです。 インピンジメント症候群と深く関わっているのがスポーツです。特に多いのが野球で、ピッチングなどで肩を酷使すると投球障害が起こりやすくなります。その他にも肩をよく使うテニスなども発症しやすいスポーツ障害の一つです。 このようにインピンジメント症候群は、繰り返し肩関節を刺激することで肩に痛みが起こる疾患です。野球ならボールを投げる時、テニスならサーブやスマッシュを打つ時です。どちらも長時間にわたって何度も肩を使います。 同じ理由でバドミントンやバレーボールもインピンジメント症候群になりやすいスポーツと言えます。バドミントンならスマッシュ、バレーボールならサーブとスパイクなどが、肩関節に負担がかかる動作になります。 主な症状 野球の投球動作で起こることが多い ・腕を肩より上で動かしたときの運動痛 ・腕の上げ下げ、腕を上げる場合、下げる際に痛みがでる ・腕を上げていく時に、ある角度までくると痛みや、ひっかかる感じがあり上げられなくなる ・夜間痛がある インピンジメント症候群を発症しやすいスポーツ ・野球 ・テニス ・バドミントン ・ゴルフ ・バレーボール ・やり投げ等、肩関節を使う競技に多い インピンジメント症候群は、日常生活上の動作が原因にもなる インピンジメント症候群は、一般的にスポーツ障害ですが、あながちスポーツだけが原因ではありません。日常生活でもインピンジメント症候群になりやすい動作についてご説明します。 インピンジメント症候群は、スポーツで肩を使うことに近い動作、肩を使うことが多い仕事などで発症することがあります。例えば荷物などを高い所に上げたり、高い場所から下ろしたりする動作です。このような動作を日常的に繰り返していると肩を痛めることがあります。 荷物などを高い所に上げる時は、腕が肩より上になり、肩に負担が掛かかり、高い所の物を下す時も同様に肩に負担が掛かります。これを繰り返していると、肩を酷使するスポーツ選手と同様の状態になります。 このように特に肩を使うようなスポーツをやっていない場合でも、仕事や普段の生活で頻繁に腕を上げ下げすることがあれば、それはインピンジメント症候群になる可能性があるため注意が必要です。 インピンジメント症候群は加齢も原因になる! 実は、インピンジメント症候群は、加齢にも関わりがあります。私達は年を取ると骨がもろくなっていきます。肩関節も同じです。加齢によって、肩の高くなっている部分(肩峰(けんぽう)といいます)の下に骨の棘(骨棘(こつきょく:尖った突起物))ができ、加齢ととともに大きくなることで腕の上げ下げの際に骨同士が衝突(インピンジメント)するようになります。 この状態になると、肩そのものの動きがスムーズではなくなります。肩の骨の出っ張りが摩擦・衝突しやすくなり、インピンジメント症候群になるのです。 インピンジメント症候群の治療 インピンジメント症候群で痛みを発症した場合は、痛みを感じる動きを行わないことが大切です。その上で痛みには、痛み止めの薬物療法や痛み止めの注射、そしてヒアルロン酸の局所注射することがあります。その後は、ストレッチをはじめとしたリハビリを行うことになります。 2~3か月程度リハビリテーションを繰り返しても症状が改善しない、改善が乏しいという場合は、関節鏡視下で手術をすることも検討されるでしょう。 ・肩の安静 ・リハビリテーション(ストレッチ) ・痛み止め(薬物療法) ・痛みの改善(ヒアルロン酸、ステロイドの局所注射) ・手術(関節鏡視下が主流) まとめ・インピンジメント症候群とは、その原因、症状と治療法 インピンジメント症候群は、肩を酷使するスポーツ障害ですが、その他にも日常生活の動作や、仕事上での動き、また加齢でも発症します。特に肩を使った運動をしていなくても、仕事や日常生活の中で腕を振ったり上げたりする動作が多い場合は、十分インピンジメント症候群になる可能性があります。 また、年を取るとより症状が出やすくなります。スポーツをしていなくても、肩の痛みや違和感、肩の動きに異変を感じたら早めに対策するようにしましょう。 いずれにしても、スポーツの前後にストレッチなどを取り入れて肩の手入れを行うようにすることで症状の発生を予防する意識も不可欠です。以上、スポーツ障害|肩のインピンジメント症候群の原因について解説しました。 No.S043 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で肩の痛みを治療する 肩の痛みは、再生医療なら手術や入院をせずに症状を改善することができます
2022.02.25 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症のつらい痛みは手術で消える?ただし、手術によっては再手術の可能性が 変形性膝関節症は、関節軟骨の摩耗を起因に膝に慢性炎症を引き起こし、つらい痛みが起こる病気です。膝が炎症を起こす仕組みは、関節軟骨や半月板が加齢や怪我から摩耗し、軟骨のかけらが関節を覆っている滑膜という組織を刺激するためです。 変形性膝関節症は進行性の病気です。発症した初期には膝関節の違和感や軽い痛みだったものが次第に痛みが増強したり、膝が変形したりします。変形性膝関節症の治療では、少しでも進行を遅らせるように、膝に負担がかからないように過ごし、リハビリテーションなどで膝周囲の筋肉を鍛えることが大切です。 膝に負担の無い生活スタイルを見直し、リハビリをはじめ、運動療法に取り組んでも改善がみられない場合には手術が勧められます。ただ、手術と聞くと不安を抱かれる方も多いはずです。 この記事では変変形性膝関節症のつらい痛みは手術で消える!?ただし、手術によっては再手術の可能性についてそのポイントを解説します。 変形性膝関節症の手術で痛みは消える?! 変形性膝関節症の手術には、関節鏡視下手術・高位脛骨骨切り術・人工関節置換術の3種類があります。どの手術を実施するかは、変形の進行度や痛みの程度、年齢を考慮し選択します。 変形性膝関節症で行われる手術の種類 ・関節鏡視下手術 ・高位脛骨骨切り術 ・人工関節置換術 ※手術の選択:変形の進行、痛みの程度、年齢で判断 手術で痛みが消えるのか? この問いに対しては、「膝の手術を受けると痛みは軽くなったり、なくなったりする可能性が高い」といえます。特に人工関節置換術を受けると、ほとんどの場合に痛みは改善し、膝を痛める以前のような歩行ができます。 ただし、どのような手術でも少なからず体の負担になること、術後はある程度の期間の入院が必要で、リハビリに励む必要があること、人工関節置換術実施後は正座ができなくなる可能性が高いことなどを念頭に置いておきましょう。 手術で膝の痛みが消えれば楽になること ・起床時に膝のこわばりがなくなる ・痛みなく階段を上り下りできる ・膝を気にすることなくスッと歩き出せる ・膝を気にすることなく好きなところに出掛けられる 変形性膝関節症の痛みは手術で消えるが油断は禁物 変形性膝関節症の手術後は、痛みが無くなりますが油断はできません。膝を気にせず、関節に負担がかかるような姿勢や動作をしていては、痛みの再発だけでなく、再手術の可能性が高まります。 関節鏡視下手術 変形性膝関節症の初期で適応される手術は関節鏡視下手術です。関節鏡視下手術では、炎症を引き起こす原因の軟骨のかけらを取り除くほか、傷んだ半月板の形を整えます。しかし脚の変形や軟骨のすり減りが悪化することで、痛みが出現すれば再手術になることがあります。 高位脛骨骨切り術 高位脛骨骨切り術は脚の変形を矯正し、関節にかかる偏った負担をなくす手術です。変形が進行しきっていないことが条件で、人工関節置換術を受ける方より年齢が若い60歳未満の方に適応されることが多いです。高位脛骨骨切り術によりO脚やX脚などの脚の変形を矯正しても、軟骨のすり減りや、痛みが再発する可能性があり、将来定期には再手術を必要とする場合があります。 人工関節置換術 人工関節置換術は変形性が進行した末期、または60歳以上の方に適応されます。年齢が重要視される理由は、人工関節の耐久性(20年前後)を考慮して、再手術をしなくても良いように考えられているためです。 人工関節置換術をすると、軟骨がすり減る心配をしなくて済むほか、痛みを気にせずに過ごせます。しかし、膝に負担がかかるような過ごし方を続けると、人工関節に破損や緩みが出てきて耐久年数に関わらず再手術の可能性が高まります。 変形性膝関節症の手術をしても、膝の状態が悪ければ再び手術が必要です。とくに高位脛骨骨切り術後に再手術が必要な場合、変形は進行し、ある程度加齢していることが予想されるので人工関節置換術が選択されるケースが多いのです。 ただし、人工関節置換術を受けると、膝を完全に曲げることができなくなります。痛みの改善は期待できる分、少なからず可動域が狭まることで日常動作に制限がかかります。 手術後もリハビリ、運動療法に継続して取り組むこと 変形性膝関節症の手術をうける上で大切なことは、再手術を防ぐことです。膝の状態の悪化を防ぐには、生活に中で膝への負担をかけないように過ごし、運動療法により膝を安定させることです。 手術後に気をつけること ・正座や深くしゃがむ動作を避ける ・膝に負担のかかるような激しい動作はしない ・手術前と同じように運動療法は継続する・定期的に受診し状態を確認しておく まとめ・変形性膝関節症のつらい痛みは手術で消える?ただし、手術によっては再手術の可能性が 変形性膝関節症は、膝に痛みや変形を及ぼす病気で、進行すると痛みから普通の生活を送れなくなります。治療の基本はリハビリとしての保存療法となりますが効果がみられなければ手術という選択肢になります。 当然、手術はメスを入れることになり、体の負担になるだけでなく「術後に痛みが消えなければどうすべきか」と、不安を感じる方もいるはずですが「手術を受けるれば痛みは改善する可能性は高い」と思われます。 ただし、痛みの改善はあくまで膝関節に焦点を当てた話になります。手術をしても、膝周囲の皮膚の癒着、関節の拘縮、筋力低下、術操作による神経の損傷など、さまざまな理由で痛みが残存することもあります。 そのため、術後に取り組むリハビリテーションは非常に重要です。それでも膝の状態によっては、どの手術を選択しても将来、再手術のリスクがあります。 例えば人工関節は耐久年数があり、個人差はありますが概ね15年前後と言われています。その時点で高齢な場合、再び体に負担がかかり、リハビリをはじめ精神的に前向きに取り組めるか心配にもなります。 そうならないためにも術後に膝の痛みが取れても、無理は禁物。過度な膝への負担を避け、リハビリテーションをはじめとして適度な運動を継続することが再手術を防ぐポイントになります。 手術で痛みは消える可能性は高いと考えられます。ただし、リハビリや適切な運動を継続し、膝の健康を保つことが大切です! No.045 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療なら変形性膝関節症を手術を避けて治療が可能です 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で症状を改善するには!
2022.02.24 -
- 糖尿病
- 内科疾患
妊娠糖尿病|その治療法や、出産への影響について 妊娠中はいろいろ気を付けなければならないことがあります。妊娠糖尿病もその1つです。でも妊娠中に母親が糖尿病になったら、生まれてくる子供や母体にどういう影響があるのか不安ですよね。 この記事では、妊娠前や妊娠中に糖尿病と診断されたときの症状や妊娠中に糖尿病と診断されたときの対処法について解説します。 妊娠中の糖尿病は3種類 妊娠中の糖尿病には以下の3つの種類があります。 1)妊娠糖尿病 2)糖尿病合併妊娠 3)妊娠中の明らかな糖尿病 妊娠糖尿病は妊娠中に糖尿病を発見あるいは発症した程度の軽い糖代謝異常のことをいい、糖尿病合併妊娠とは妊娠前から糖尿病を発症していた人が妊娠した状態をいいます。 また、妊娠中の明らかな糖尿病とは、妊娠糖尿病の基準よりも数値が高く糖尿病の基準を満たす、妊娠前に糖尿病に罹患していたかもしれない、ものになります。 これら3つの糖尿病について、発症の時期にわけて詳しく見ていきます。 1)妊娠糖尿病 妊娠糖尿病とは妊娠中にはじめて発見または発症した糖代謝異常のことで、糖尿病にはいたらない程度の軽いものをいいます。「明らかに糖尿病である」と妊娠中に診断された場合は妊娠糖尿病に含めません。 すい臓ではインスリンという血糖値を下げる働きのあるホルモンが作られます。しかし、妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンの働きが抑えられます。また、インスリンを破壊する酵素も胎盤から分泌されます。そのため、妊娠中は血糖値が上がりやすくなってしまいます。 妊娠糖尿病を発症すると、母体だけでなくお腹のなかの胎児も高血糖になるため、さまざまな合併症が現れる可能性があります。妊娠糖尿病の具体的な症状は後述します。 2)糖尿病合併妊娠 妊娠前から糖尿病を発症している患者が妊娠することを糖尿病合併妊娠といいます。 高血糖状態で妊娠・出産をすると奇形を持った子供が生まれやすくなるといわれています。特に胎児の臓器は妊娠4~9週で作られますので、妊娠初期に血糖値が高いと奇形が起こりやすくなるのです。 糖尿病患者の方が妊娠を望む場合は妊娠前に血糖コントロールに努め、妊娠しても良い状態かどうかを医師に確認するなど、計画的に妊娠することが大切です。 3)妊娠中の明らかな糖尿病 妊娠中の明らかな糖尿病とは、妊娠糖尿病よりも程度が重く、糖尿病の基準を満たすものをいいます。 妊娠中の明らかな糖尿病には以下のようなものがあります。 ・妊娠前に見逃された糖尿病 ・妊娠中に発症した1型糖尿病 ・妊娠中の糖代謝の変化の影響で生じた糖代謝異常 妊娠糖尿病の診断方法と診断基準 妊娠糖尿病は、スクリーニング検査と75gブドウ糖負荷試験の2段階の検査で判断します。 スクリーニング検査 妊娠糖尿病のスクリーニング検査はすべての妊婦を対象に妊娠初期と中期に行う検査で、妊娠糖尿病の可能性がある人を抽出する目的で行われます。 日本産科婦人科学会が推奨している妊娠糖尿病スクリーニング検査 ・妊娠初期:随時血糖値 ・妊娠中期:随時血糖値あるいは50gブドウ糖負荷試験 妊娠初期の随時血糖値の基準は検査施設によって95mg/dlまたは100mg/dlと異なります。また、妊娠中期の随時血糖値の基準は100mg/dl、50gブドウ糖負荷試験の基準は140mg/dlとなります。 妊娠糖尿病スクリーニング検査で陽性と判断された方は次で説明する75gブドウ糖負荷試験に進みます。 75gブドウ糖負荷試験 妊娠糖尿病スクリーニング検査で陽性が出た場合、75gブドウ糖負荷試験を行います。75gブドウ糖負荷試験では、以下の基準を1つでも満たした場合に妊娠糖尿病と診断されます。 ・空腹時血糖値 ≧92mg/dl ・1時間後の血糖値 ≧180mg/dl ・2時間後の血糖値 ≧153mg/dl 妊娠糖尿病の母体・胎児への影響 妊娠糖尿病は母体や胎児に大きな影響をおよぼします。具体的にどのような影響があるのでしょうか。 出産と母体への影響 妊娠糖尿病を発症して高血糖状態が続くと、以下のような合併症を発症したり、出産に影響をおよぼす可能性があります。 ・羊水過多 ・感染症(腎盂腎炎や膀胱炎など) ・妊娠高血圧症候群 ・低血糖 ・腎症 ・網膜症 ・神経障害 ・流産 ・早産 ・帝王切開の確率が上がる ・肩甲難産など 胎児への影響 妊娠中に高血糖状態が続くとお腹のなかの胎児も高血糖になり、以下のような合併症を引き起こすことがあります。 ・子宮内胎児死亡 ・新生児低血糖 ・巨大児 ・低出生体重児 ・多血症 ・特発性呼吸促拍症候群 ・頭蓋内出血 ・鎖骨骨折 ・頭血腫 ・上腕神経麻痺など 妊娠糖尿病の治療法と血糖値が下がらない場合の対処法 妊娠糖尿病と診断されたら、血糖値コントロールを行うことになります。ただし、妊娠中は運動療法を行うことが難しいため、食事療法と薬物療法が主になります。 食事療法で注意すべき点 妊娠糖尿病の治療は食事療法で血糖コントロールを行うことが基本になります。 妊娠中は食後高血糖を起こしやすい傾向がありますが、空腹時は血液中の糖が胎児のエネルギー源として使用されるため、糖尿病ケトアシドーシスを起こしやすくなります。また、妊娠中は乳房・子宮の発達や胎児の発育のため必要なエネルギーが増えます。 これらを踏まえ、妊娠糖尿病の患者は、健康な妊婦に必要なエネルギーから30%程度カットしたエネルギーを目安とします。これ以上のエネルギーをカットすることは絶対に避けましょう。 薬物療法で注意すべき点 食事療法を行っても血糖値のコントロールがうまくいかない場合は薬物療法を行います。妊娠中の薬物療法では経口血糖降下薬ではなく、インスリン治療を行うことになります。 通常のインスリン療法では血糖値コントロールがうまくいかないという場合はインスリンの基礎量や追加量を補充する方法を取ることがあります。これを強化インスリン療法(インスリンの頻回注射療法やインスリン持続皮下注入療法のこと)といいます。 妊娠糖尿病の人が食べられるおやつ 1日当たりのエネルギー量内であれば、おやつと食事に分割して食べることも可能です。また、同じエネルギーの食事を分割して食べることで高血糖を防ぎやすくなります。妊娠糖尿病で食事療法を行う際のおやつはヨーグルトやフルーツなどが良いでしょう。 なお、おやつや間食を摂ることについては医師や患者の状態によって判断が異なります。おやつを食べる場合は必ず医師と相談してから食べるようにしましょう。 妊娠糖尿病の予防法 妊娠糖尿病を予防できれば、母体や胎児への影響を減らすことにつながります。妊娠中はインスリンの分泌量が増えます。そのため空腹状態をなるべく作らないことが大切です。空腹を感じた場合は、野菜や豆類、鶏のささみなど良質のたんぱく質を摂るようにしましょう。 また、食事は食べる順番も大切です。野菜から食べ始め、汁物、メイン、炭水化物という順番で食べることで血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。 妊娠糖尿病は通常の糖尿病と同様に、生活習慣だけでなく遺伝的要素も関係するといわれています。そのため上記で紹介したような方法を取り入れたにも関わらず妊娠糖尿病を発症したという場合も、あまりストレスに感じる必要はありません。 産後の妊娠糖尿病の影響 授乳中の食事は妊娠前の摂取エネルギーに約450kcal程度増やすことを目安にします。これは授乳のための付加エネルギーですので、授乳が終われば元の摂取エネルギーに戻しましょう。 また、産後はインスリンの必要量が減ります。妊娠中は胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンの働きが抑えられたり、インスリンが胎盤によって分解されるため、インスリンの必要量が増えます。しかし、産後はこれらの影響がなくなるため、必要なインスリン量が減ることになります。どの程度減らすかは患者ごと異なりますので、血糖値の測定結果を見て決めることになります。 インスリンは母乳に影響がありませんが、飲む薬のなかには母乳に混ざりこんでしまうものもあります。妊娠前は飲み薬による治療を行っていたという人も、産後はインスリン治療を継続しましょう。 また、妊娠糖尿病患者の方は、正常な妊婦と比べて将来糖尿病を発症する確率が約7倍といわれています。産後6~12週間後にブドウ糖負荷試験を受け、妊娠糖尿病が治っているか確認し、その後も定期的に検査を受けることが重要になります。 まとめ・妊娠糖尿病|その治療法や、出産への影響について 妊娠前や妊娠中に糖尿病と診断されたときの対処法と母体や胎児への影響について説明しました。妊娠糖尿病を発症したら母体だけでなく、胎児にも影響をおよぼします。また、妊娠中は運動療法が困難なうえ、使用できる薬が限定されるため、治療は慎重に行う必要があります。 糖尿病患者が妊娠を望む場合は血糖コントロールに努め、医師と相談しながら計画的に妊娠することも重要です。また、妊娠糖尿病患者の方は産後の糖尿病発症率が高いため、産後も定期的に検査を受けましょう。 以上、妊娠糖尿病に関する原因や治療法、出産に対する胎児への影響と注意すべき点、合わせて予防について記しました。 No.S042 監修:医師 加藤 秀一 ▼糖尿病|最新の再生医療(幹細胞治療)は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています
2022.02.22 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症を悪化させないための運動方法と日常の工夫 変形性膝関節症は、加齢・外傷・肥満・遺伝・日常における膝の負担になる生活様式など、さまざまな要素が関与して発症する病気です。 変形性膝関節症になると、膝の関節に痛みや変形が出現するほか、膝を動かすと関節から音(関節軋轢)がなったり、可動域制限がかかったりします。また、炎症が起きると膝に水がたまる関節水腫がみられます。 そんな変形性膝関節症の治療は、運動療法により関節を安定させることです。しかし、膝に痛みがあると、満足に運動に取り組めなくなることから、日頃から膝に負担がかからないような生活が大切です。 この記事では、変形性膝関節症を悪化させない日常の工夫を細かく解説します。膝の痛みでお困りの方はぜひご覧ください。 膝に負担がかからないような生活をする 日常から膝に負担がかかる生活は、関節軟骨のすり減りや軟骨下骨の新陳代謝に異常を及ぼします。さらに、すり減った軟骨のかけらが滑膜を刺激し痛みを感じるようになります。膝に痛みがあると、これまで通りの生活にも支障をきたすため、できる限り膝に優しい生活をしましょう。 和式から洋式へ生活スタイルを変える 膝の痛みは生活スタイルを変えるだけでも緩和します。地べたで過ごす和式から、椅子で過ごす洋式へ変えるのがおすすめです。洋式での生活は、正座や低い位置からの立ち上がりを必要とせず、膝の負担を軽減・痛みの緩和が期待できます。 膝に負担のかかる運動は避ける 体を動かすことは、膝の筋肉強化や健康増進が期待できるものの、膝に負担となる運動は禁物です。たとえば、テニス・卓球・ゴルフ・社交ダンスなど、急な方向転換・発進や停止・繰り返される膝の屈伸運動やジャンプを必要とする運動は要注意です。 減量をする 肥満であることは膝に大きな影響を与えます。立つ・歩く・座るなど、いかなる動作においても膝へ負担がかかっています。 二足歩行をする人間は、体重の半分を片脚で支えているだけでなく、歩くと体重の3倍は負担がかかると言われています。つまり、体重が重たいと、膝にかかる負担も大きく、軟骨のすり減りを進行させてしまうため、肥満傾向の方は減量に取り組みましょう。 背筋を伸ばして綺麗な姿勢 姿勢が悪ければ膝への負担になります。理想的な立ち方は、目線は正面を向き、肩を開き、骨盤を軽く前傾させることです。鏡などで確認した際に、足の外くるぶしから耳までが一直線になっていれば綺麗な姿勢を取れています。 また、綺麗な立ち方をしても、歩き出した途端に姿勢が崩れるようではいけません。歩行中に意識するのはもちろん、定期的に自分の姿勢を鏡で確認すると良いでしょう。 杖を使う 杖を使って、膝への負担を減らします。杖は痛みがある方と反対側の手で持ち、痛みがない脚と杖に重心を乗せることで、痛みのある膝に体重がかからないようにします。膝の痛みから、外出の機会が減っていたり、歩行に気乗りがしなかったりするときには、杖がおすすめです。 中には、杖を使うのに抵抗がある方もいらっしゃいます。しかし、杖を使用すると、姿勢を伸ばすだけでなく、膝への負担を減らせるので、ずいぶんと楽に歩けるはずです。最近では、デザインが施されていたり伸縮機能があったりと、いろんな杖がありますので、自分に合った杖を選びましょう。 足に合った靴を履く 足に合っている靴を履いて、膝を安定させます。靴はヒールやサンダルではなく、スニーカーがおすすめです。靴選びで失敗してしまうと、膝の安定性を高めるための歩行がかえって負担になるのです。さらに、外反母趾・膝痛・腰痛・股関節痛などのように、痛みが全身に広がる可能性まであります。 靴選びのポイント ・足のサイズに見合ったもの ・クッション性が高いもの ・足首までしっかり覆われているもの ・靴紐やテープで足首をしっかり固定できるもの 手すりを使う 玄関・お風呂・階段などに手すりをつけ膝への負担を軽減します。階段を昇るときには、手すりを支えにして痛くない方の脚から出し、降りるときも同様に手すりを支えにしますが、痛みがある方の脚から下ろすのがポイントです。 また、運動で階段を昇り降りされる方がいらっしゃいますが、階段昇降時には体重の6〜7倍もの負荷がかかります。負荷が大きいほど、トレーニングの効果は期待できますが、余計に傷める可能性もあり注意が必要です。 特に変形性膝関節症の方は、膝に負担がかかりやすい足運びをされているケースがあるため、まずは水中歩行・地上でのウォーキング・室内でできるトレーニングをおすすめします。 継続して運動に取り組む 膝への負担を下げるには、関節を安定させている筋肉を鍛えることが大切です。太もも前面にある大腿四頭筋をはじめ、太もも後面にあるハムストリングスなど、バランスよくトレーニングします。 水中運動 浮力がある水中では、膝への負担を減らしながら運動ができます。水中での歩行をはじめ、クロールで使うバタ足も膝のトレーニングには有効です。泳ぎが得意ではない場合、プールサイドに腰をかけたり、つかまったりしながら脚をバタバタと動かすだけでも効果的です。 地上でのウォーキング 屋外での歩行で足腰を鍛えます。ウォーキングは、筋力トレーニングと比べて充分な運動に感じないかも知れません。しかし、ウォーキングを1年半継続すると、生活への支障や痛みに対して、トレーニングと同程度改善することがわかっています。ただし、ただ歩くだけではなく、靴選びにこだわり、歩行中は姿勢を意識し、必要であれば杖を使用して安定した歩行をしましょう。 また、変形性膝関節症を進行させるリスクに、ビタミンD不足があります。ビタミンDは、日光を浴びると体内で活性化される栄養素のため、屋外での運動は膝周囲の筋力を鍛え、変形を進行させるリスクも抑えます。 自宅でできるトレーニング 雨の日や外に出るのが億劫な場合、自宅でできる運動を紹介します。 大腿四頭筋トレーニング ① 椅子に腰をかけて、片側の脚を伸ばしきります ② 座面と水平になるように脚を持ち上げて、10秒間キープします ③ ゆっくり脚を下ろし3秒間休憩します (①〜③を20回繰り返して、脚を入れ替えます。) 大腿四頭筋・ハムストリングスのトレーニング ① 椅子の背を両手で持ち、脚は肩幅に広げます ② つま先と膝の向きはまっすぐ向くようにします ③ 膝を前に出さず、お尻を後ろに突き出すように上体を落とします (① 〜③を1セット5〜10回、1日3セットします。) 痛みがあるときには無理をしない 膝に痛みがあるときは、無理をせずに休息します。痛みに対しての対処法ですが、熱感や腫れがある場合には、冷やして炎症を抑え、慢性的な痛みには温めて血の流れを促します。痛みが強い場合には、病院を受診し、痛み止めの薬を処方してもらいましょう。 痛みの緩和は薬だけでなく、鍼灸治療やマッサージでも効果的だとわかっています。薬をできる限り飲みたくない場合や、薬でも効果が見られないときには、鍼灸やマッサージといった手段も覚えておきましょう。 膝の痛みの緩和にグルコサミンやコンドロイチンを服用する方がいらっしゃいます。両者は膝に軟骨に含まれる成分で、痛みの緩和を期待され服薬しますが、信頼度の高い研究は行われていないのが現状です。服用を検討している方は、かかりつけ医に相談することをおすすめします。 まとめ・変形性膝関節症を悪化させないための運動方法と日常の工夫 変形性膝関節症はさまざまな原因が組み重なって発症・進行してく病気です。膝の状態を悪化させないためには、膝に負担がかからないように生活をして、継続して運動に取り組みます。 日頃から膝に負担をかけていると、軟骨が摩耗するだけでなく、変形を進行させてしまいます。地べたではなく椅子に座るなど、できることから取り組みましょう。 運動療法に取り組む際は、くれぐれも無理は禁物です。痛みを我慢したまま続けてしまうと余計に悪化するため、膝の痛みがあるときは、炎症を起こしているのか、慢性的な痛みなのか判断し適切な対処が必要です。しかし自分では膝がどのような状態なのかわからない場合があります。そのような時は自己判断をせず病院を受診し、適切な処置を受けることが変形性膝関節症の悪化を防ぐことと覚えておきましょう。 以上、変形性膝関節症を悪化させないために日常生活においてできる工夫について記しました。 No.044 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療の幹細胞治療で変形性膝関節症を治療する 手術不要、入院不要の変形性膝関節症の新たな治療法。再生医療の幹細胞治療で症状を改善できます
2022.02.22 -
- ひざ関節
- 肘関節
- 健康・美容
コラーゲンのサプリやドリンクは、関節に良い効果を与えてくれるのか 近年、CMなどでよく見かけるサプリメントや、ドリンクとしてのコラーゲン!このような摂取方法で本当に効果があるのでしょうか?コラーゲンは美容的に注目されていますが、実は体にとっても非常に大切な栄養素です。 そこで本記事では、コラーゲンを摂取することで体にどのような効果があり、またどのような働きをしているのか解説していきます。関節に違和感があったり、痛みを感じられている方でコラーゲンのサプリメントやドリンクの摂取をお考えの場合は、ぜひ参考にしてみてください。 コラーゲンについて コラーゲンと聞くと、肌に良いイメージを持たれる方もいるのではないでしょうか。しかし、コラーゲンの働きは皮膚だけではありません。そもそもコラーゲンとは何かをみていきましょう。 コラーゲンとは コラーゲンとは、人間の体に存在するタンパク質の一種です。タンパク質は人間の筋肉や臓器など体のさまざまなところに分布されています。また、タンパク質は三大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)の一つとして数えられ、人間の体に必要なエネルギー源にもなっています。 コラーゲンは体内のタンパク質のうち約30%を占めていて、皮膚や骨、血管などに多く含まれています。組織の部位ごとに分類され、繊維性コラーゲンや基底膜コラーゲン、短鎖コラーゲンなど、現在分かっているものだけでも29種類あります。 コラーゲンのはたらき 肌に良いイメージがあるコラーゲンは、皮膚の約70%がコラーゲンでできていると言われていて、肌に弾力とハリを与える働きをしています。 コラーゲンは皮膚だけではなく、骨や関節、腱、靭帯などにも存在し、強度や柔軟性を保つ機能があります。骨の中にコラーゲンがあることでクッション性が加わり、骨にしなやかさを与え、転んだときなどの強い衝撃から守っています。 また、関節の部分にもコラーゲンが存在し、骨と骨の摩擦による擦り減りから骨が傷つくのを防ぐ役割もしています。このようにコラーゲンは骨や関節にも密接に関わっています。 加齢による体内のコラーゲンの減少 コラーゲンは健康の維持に欠かせないものですが、年齢とともに減少していきます。加齢に伴って細胞の数が減ったり、衰えたりすることでコラーゲンの合成力が衰えてしまうためです。 また、紫外線による影響で皮膚のコラーゲンが減少することが分かっており、シワやたるみなどの原因になっています。では、コラーゲンを摂取した場合に、減少したコラーゲンを補うことができるのでしょうか。 コラーゲンを飲むことで効果は期待できるのか 日本整形外科学会によれば、直接関節にヒアルロン酸を注射した場合には科学的データに基づいて、有効性が認められているとされています。 しかし、食べ物などの口からの摂取の場合は有効性が確認できる科学的データはないとし、効果が期待できないと結論づけています。ですが、まったく効かないというデータもないため、悩ましいですね。 参考資料:サプリメントの効果について|公益法人日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/public/about/supplement.html 希望の星!低分子コラーゲン(コラーゲンペプチド) 食べ物からの摂取でコラーゲンの有効性が認めれられていないとされているものの、最近の研究では低分子コラーゲンを摂取することでコラーゲンを作る材料になったり、コラーゲンの生成量を増やしたりすることが期待できることが分かってきました。 低分子コラーゲンとはコラーゲンタンパク質を小さくしたものを言います。低分子化したものは、コラーゲンペプチドともよばれ粒子が細かく、腸壁で吸収され血液を通って皮膚や骨、関節など全身に行き渡ります。 サプリメントの種類と成分 コラーゲンペプチドはサプリメントとして錠剤やパウダー、ドリンクに配合されており種類もさまざまあります。 サプリメントのコラーゲンの成分には主に動物性由来と魚由来があり、動物性由来であれば、牛や豚、鶏などの皮から抽出したもの、魚由来は魚皮や魚鱗から抽出したものが原料となっています。 注意!コラーゲンとアレルギーの関係性 サプリメントの原料になっている牛や豚、鶏、魚などが原因でアレルギー反応を起こす可能性があります。アナフィラキシーを起こした事例も報告されているため、サプリメントなどでコラーゲンを摂取する際は十分に注意が必要です。 特に鶏や卵にアレルギーがある方は、鶏が原料になっているコラーゲンは避けた方が良いでしょう。 コラーゲン・トリペプチドの効果 コラーゲン・トリペプチドとはコラーゲンの最小単位で、その大きさは一般的なコラーゲンサプリメントの20分の1から50分の1の大きさと言われています。 そのため小腸から直接そのままの形で吸収されることが分かっています。最近の研究では関節や骨など体内でコラーゲンが不足しているところに、効率よく届くことが期待できるという報告がされています。 関節や骨への具体的効果について 関節 傷ついた関節の治療の際、患者さんがコラーゲンペプチドのサプリメントを摂取したところ、関節の修復が早いという結果の報告されています。また、変形性膝関節症の症状の改善にも効果があることも分かってきました。 骨 骨を丈夫にするにはカルシウムのイメージが強いですが、カルシウムだけでは強度な骨は作れません。 骨の約30%がコラーゲンできていると言われ、コラーゲントリペプチドを摂取することでコラーゲンの生成を助ける働きがあることが分かっています。 まとめ・コラーゲンのサプリやドリンクは関節に良い効果を与えてくれるのか これまではコラーゲンを食べ物で摂取しても、体の中でアミノ酸としてバラバラに分解されて吸収されてしまうため効果がないと考えられてきました。 しかし、小さな分子のコラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)であれば腸壁から吸収され血液を通って、体の中のコラーゲンが不足しているところへ効率よく届くということが分かってきています。 そのため、コラーゲンのサプリやドリンクを購入する場合は「低分子コラーゲン」、「コラーゲンペプチド」との表記があるものが良いかもしれません。いずれにしてもコラーゲンの効果には個人差があり、短期ではなく、長期で考える必要があります。 関節のために体内のコラーゲンをキープしたいと摂取する場合は、毎日の食生活に取り入れ、長期的な視点で取り組みましょう。コラーゲンが関節や健康の維持に役立つと良いですね。 以上、コラーゲンのサプリやドリンクは関節に効果があるのかについて記させて頂きました。 No.S041 監修:医師 加藤 秀一
2022.02.16 -
- ひざ関節
鵞足炎は、膝の酷使が原因に!その痛みと治療法とは 皆様の中で日常的に立ち上がる瞬間や、階段を昇り降りする際などに「膝が痛い、痛む」と自覚している人はおられませんか。 普段生活している中で「膝が痛む症状」で悩んでおり、その対策や改善方法を探索している方も少なからずいらっしゃることでしょう。仮にひざを酷使して膝痛を自覚している場合には「鵞足炎(がそくえん)」という病気を見逃してはいけません。 普段聞きなれない、この病気は「鵞足」と呼ばれる場所、膝関節の内側より下方に位置する脛骨付近に炎症が引き起こり、膝に痛みが出現することで知られています。 今回は、膝を酷使すると起こりやすい鵞足炎という病気の特徴やその疾患に対する対策や治療法について詳しく解説していきます。 膝を酷使で起こる鵞足炎、膝の内側の痛み そもそも「鵞足」と呼ばれる部位は、膝から5㎝程度足側に存在している脛骨という骨の内側部分に位置しており、一般的には縫工筋、半腱様筋、薄筋という三種類の筋肉に付着している腱がその脛骨にくっついている場所を指しています。 この鵞足部位にある「滑液包の内部に強い炎症が起こっている状態が鵞足炎」であると考えられており、鵞足炎を発症していると膝を屈曲するときや股関節を内転する動きにより慢性的に膝に痛みを覚えます。 本疾患は、膝を酷使するマラソンなどの走る系の一般アスリートや、それ以外でもトップアスリートなどプロスポーツ選手に生じやすいと言われており、打撲などの外傷を契機に発症する可能性も指摘されています。 鵞足炎の原因は、自分に見合っていない不適切なトレーニングをする、運動前にストレッチを怠る、急な坂道を急激に長時間走る、肥満体形で膝に負担が掛かりやすいなどが発症に関与していると考えられています。 このように鵞足炎という病気は、スポーツにかかわる障害として代表的な疾患のひとつであり、その臨床的な特徴所見としては鵞足部への圧痛や、同部の動作時における疼痛症状が現れることでああります。 この疾患に罹患すると、初期では膝関節の内側部より5㎝ほど下方の部位に痛みを覚えて、その部位を押すと強い痛みを自覚します。また、運動時や階段昇降時に疼痛症状が悪化しやすく、更に病状が進行すると安静時にも同部位が疼くように痛みを感じることがあります。 鵞足炎の治療法について 鵞足炎に対する治療策は、一般的には理学療法、あるいは投薬や注射などの保存的な療法が通常の流れになっています。 理学療法の一環として、本疾患においては大腿部の筋肉が硬くなると膝の症状が悪化すると考えられていますので、効果的なストレッチで筋肉部の緊張を和らげることが重要な視点となります。 注意点としては、炎症が強くて痛み症状が顕著な時期にストレッチ運動を過剰に実践してしまうと、逆に膝の痛みが悪化する原因こなりかねないとの指摘もあります。 したがって、症状がひどい際には軽めのストレッチに留めておき、十分な安静を保持して、患部のアイシングや、湿布をはったり、外用消炎剤を塗布する、あるいは消炎鎮痛剤を服薬するなどの対処策を検討することになります。 また、鵞足炎に対する理学療法の一つとしてテーピングや、サポーターが挙げられます。 具体的には、膝関節を少し曲げながら股関節をやや内側に保持した状態で伸縮性のあるテーピングを貼付したり、サポーターを用いることで膝関節部における内側方向の動作を物理的に制限することができ鵞足部への負担を減らすことが出来ます。 もし鵞足炎に対して患部安静、局所的アイシング、抗炎症薬の使用、理学療法を実践するなどの治療方法を施行しても症状が改善しないケースでは、滑液包の内部に少量ステロイド薬を直接的に注射する療法も考慮されます。 このステロイドによる注射治療は施行後すぐに症状が軽快することが多く認められますが、数か月経過すると再度膝の痛みが再燃する可能性がありますので十分に注意を払っておくべきです。 また、痛みを覚えると身体を動かさなくなり、運動量が減ると体重が増加する恐れがあります。膝には体重の数倍の付加が、かかるとされ、体重の増加はそのまま症状の悪化につながりかねません。予防も含めて体重管理には注したいものです。 まとめ・鵞足炎は、膝の酷使が原因に!その痛みと治療法とは 鵞足炎という病気は鵞足部に存在している滑液包における炎症が主な病態であり、通常の場合には過度の運動などによって同部において繰り返して引き起こされる摩擦と物理的なストレスが原因で発症するものです。 特に、マラソンランナーや陸上選手などを始めとして膝を屈曲あるいは内旋する動作そのものが膝の内側、鵞足部への過剰な負担となりますし、縫工筋や半腱様筋、薄筋などの筋肉の緊張度が高い状況下に鵞足炎は頻繁に発症することが知られています。 本疾患に対する治療法としては、基本的には薬物療法、湿布などのアイシング、そしてストレッチであり、鎮痛剤を内服する、消炎鎮痛剤を塗布する、炎症部位をアイシングすることで熱感を除去する、そして症状軽快後はストレッチなどを入念に実践することを心がけましょう。 鵞足炎は再発しやすいとも指摘されているため、焦らずにきちんと治すことを意識しながら、担当の医師や理学療法士などの医療従事者や専属トレーナーと一緒に使用するシューズを見直すなど症状が再発しないように出来る工夫策を共有することが重要な観点です。 心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談してみることも考慮してみましょう。以上、鵞足炎は膝の酷使で起こる、その痛みと治療法と題して記させて頂きました。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.S040 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療が膝の治療を変える! 膝の痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます
2022.02.16