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側弯症の手術、術後の後遺症、術後のリハビリについて 側弯症について次のような疑問や不安がある方はいませんか? 「側弯症の手術はどのような流れなの?」 「手術後の後遺症やリハビリについて知りたい」 今回の記事では、側弯症の手術の流れや後遺症、手術後のリハビリの内容を解説します。側弯症の手術について疑問や不安のある方は、ぜひ参考にしてください。 側弯症の手術の内容や流れ 側弯症は、前から見ると背骨が左右に曲がっている状態のことです。さまざまな原因によって起こりますが、多くが原因不明とされています。 変形が重度の場合は、進行しやすいとされ、息がしづらいなどの他の症状も出るため背骨をまっすぐにする手術が推奨されます。 まずは、手術の内容や流れを解説します。 手術の内容 手術は金属製のさまざまな器具を使って変形を矯正して、背骨を固定します。脇腹を切開する前方法と、背中の真ん中を切開する後方法があります。 手術は 3 〜 6 時間程度かかり、手術の方法や変形の程度によって差があります。 入院期間は 10 日前後で、退院後から通学が可能となることが多いです。 整形外科の手術の中で、最も大きく体に傷を入れるため、合併症や後遺症の注意が必要な手術です。 後遺症の詳細については後ほど解説します。 手術の流れ 手術をしてからの流れを表に示します。 手術からの日数 手術から退院までの流れ 手術前 術前に画像や血液の検査を行い、手術に向けた準備をします。 また手術により多くの出血をするため、自分の血液をためる自己血貯血(じこけつちょけつ)をします。自己血貯血は手術の 1 カ月くらい前から何回かに分けて行います。 手術当日 手術後は全身麻酔後のため、ICU(集中治療室)で状態の観察をします。全身の状態が落ち着いていれば、一般病棟に戻ります。 手術翌日以降 術後で痛みや動きにくさがあり、起き上がりや立ち上がりなども難しい場合があります。その場合、床ずれを防ぐために体の向きを定期的に変えてもらいます。 手術後 4 〜 5 日 痛みが我慢できる範囲で起きたり、歩いたりします。1 週間前後でシャワーも可能になります。 手術後 1 週間 背骨に負担がかからないよう固定するための装具を装着します。装具は手術後 3〜 6 カ月装着します。 手術後 10 日前後 痛みも和らぎ、合併症もないようなら退院します。 10 日以降で退院したら、すぐに通学も可能となります。 しかし、体をひねったり、かがむといった動作は禁止で、体育など背骨に負担のかかる運動もできません。 接触が激しくないスポーツは 6 カ月以降での再開が望ましいです。 側弯症の手術による後遺症 体の損傷が大きい側弯症の手術では、以下のような後遺症のリスクがあります。 手術では背骨の周辺に傷をつけるため、背骨を通る脊髄(せきずい)や、脊髄から枝分かれする神経を損傷させる危険性があります。 その場合、足に力が入りにくくなったり、感覚が麻痺したりといった後遺症が残ります。また、肺を損傷すると肺炎や無気肺といった肺の病気を引き起こす危険があります。 大きな傷をつけるため感染のリスクも高いです。 また、骨のくっつきが不十分なままになってしまったり(偽関節:ぎかんせつ)、固定した以外の関節が不安定になったりすることで腰痛が発生する場合もあります。 側弯症、手術の後遺症 ・神経損傷 ・肺炎や無気肺などの肺の病気 ・感染 ・腰痛 側弯症の手術についてメリット・デメリットを解説、以下の記事をご参考ください。 https://fuelcells.org/topics/20662/ 側弯症の術後リハビリ 側弯症の手術は体に大きな傷をつけるため痛みがあります。そのため、リハビリでは手術による体の状態に合わせた内容になります。 大きく分けて 3 つの時期に分けられます。 1, 術直後から離床前のリハビリ 手術直後は痛みも強く、体も十分に動かせないため、ベッド上でのリハビリとなります。 特に側弯の手術は胸や背中に傷をつけて、痛みを生じさせるため、呼吸がしにくくなります。そのため、呼吸を改善するリハビリをします。 また、痛みで起きられない場合は、体の機能がどんどん低下する「廃用症候群:はいようしょうこうぐん」を引き起こします。そのため、ベッドでできる運動やストレッチをして、廃用症候群を予防することが重要です。 2, 離床後から退院までのリハビリ 全身の状態が安定していれば、痛みの範囲で起きたり、立ち上がったりして、ベッドから離れる時間を増やします。 可能であれば 1 週間以内で病院内での歩行を始めて、以降は痛みの強まらない範囲で、階段や屋外といった応用的な歩行練習をします。 自宅に帰れば、無理に体をひねったり、前にかがんだりしなければ、普通の生活が可能です。 3, 退院後のリハビリ 退院後は徐々に活動量を増やしていき、体力を戻していきます。また、手術後の背骨を安定させて腰痛などを予防するために、体幹の筋肉を鍛える必要があります。 背骨をひねったり、かがまないような工夫をするなど、背骨に負担のかからないように気を付けてトレーニングをしましょう。 例えば、四つ這いで手足を対角に上げる運動や、仰向けで両足を上げる運動は、体幹だけでなく股関節などの筋力も同時に鍛えられるためおすすめです。 四つ這いトレーニング 両足上げトレーニング 運動は自宅に帰った直後は制限されており、術後 3 ヶ月程度でランニングなどの軽い運動から始めて、スポーツや体育が可能になるのは術後 6 カ月程度です。 さらに、器械体操など激しいスポーツは術後 1 年間程度控える必要があります。 まとめ・側弯症の手術、術後の後遺症、術後のリハビリについて 側弯症は子どもに多い疾患で、手術をするとなると体に大きな傷をつけるため不安になる方も多いでしょう。 そのため、事前に手術の流れや後遺症、リハビリといった情報を知ることで、少しでも不安を減らしましょう。 最近は治療成績も良くなり、しっかりした術前の説明もされます。手術を検討する場合は、しっかりメリットやデメリットを把握することも大切です。 そのため、遠慮せずに整形外科の医師に相談し、納得した治療が受けられるようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S107 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.08.27 -
- 手根管症候群
- 手部
手根管症候群を自分で治す!ストレッチとマッサージでセルフケア 本記事では、手根管症候群に対する、自分でできるケアの方法を中心にご紹介します。 家事に追われている主婦や、妊娠中の女性、手をよく使う建築業の方など、手の痛みや痺れに悩まされている人にはぜひ読んでいただきたいです。 手根管症候群とは 手根管症候群とは、手根管を形成する掌の小さい骨の集まり(手根骨)と、手根骨に蓋をするようにつく横手根靭帯の間に、正中神経(指を動かすための神経)が挟まり圧迫された状態をいいます。 手根管症候群の症状 神経が圧迫されることにより、親指から薬指の一部分に痺れや痛みを発します。 また、夜間から明け方にこの症状が強くなることが多く、場合によっては寝ている途中に覚醒してしまうほどです。 手を振ったり、手の形を変えることで症状が和らぐのも特徴の一つです。 圧迫の程度がひどく、長期間症状が続くと、親指の付け根の筋肉が萎縮してしまい、指先で物を掴む動作(ピンチ動作)が難しくなることがあります。 手根管症候群の原因 手根管症候群は、原因がよく分かっていない特発性のものが多く、妊娠・出産時期や更年期の女性に多いとされています。 手の屈伸動作の繰り返しや骨折などのケガから続発して発症するとも考えられており、家事動作が多い主婦、重労働で手に力を入れる建築関係の人にも見られます。 手根管症候群が疑われた場合やるべきこと 手根管症候群の初期症状は、手指の痺れや痛みですが、我慢できないほどではないため見過ごされやすい疾患です。 そのため、医療機関に相談に来た際には、手のひらの筋肉の萎縮が進んでいる状態で手術が必要となるケースも少なくありません。 上記に挙げたような症状がみられたら、迷わず専門の医療機関へ相談してみましょう。 手の指の痺れは、頸や肩周り、肘周囲で起こる他の神経障害との見分けもつきにくいため、原因を探ることは大切なことです。 自分でできる手根管症候群のセルフケア 次に、手根管症候群になった際、自分でできるケアついてご紹介します。 初期の手根管症候群や、筋肉の張りにより症状が出ている場合などは効果がでやすいため、試してみる価値ありです。 温めるのと冷やすのはどっちがいい? 手根管症候群に対しては、温めた方(温熱療法)が有効である場合が多いです。 手根管症候群のような神経を圧迫している場合、同時に血管も圧迫しており循環が悪くなっているケースがあります。 そのため、温めて循環を促すことで症状が緩和されるでしょう。 ただ、熱を帯びている場合はかえって痛みを増強させてしまうこともあるため、患部の状態を確認して行うようにしてください。 湿布の貼り方は?サポーターは有効? 結論から言えば、どちらも少なからず効果はあります。 湿布は痛み止め成分が入っているため、痛みが強い場合は一時的に軽減させる効果があります。 また、サポーターに関しては、手首を固定するサポーターだと安静を保つことができるため、症状が強い場合には効果的です。 手根管症候群は、手首や手指を使い過ぎて発症するとも考えられているため、サポーターにより動きに制限をつけることで使い過ぎを防いでくれます。 痛みが強い場合は、手首から手のひらにかかるところに湿布を貼り、その上からサポーターをすることを推奨します。 手根管症候群のセルフケアの方法を紹介 それでは自分で行うストレッチやマッサージの方法をいくつかご紹介していきます。 手関節屈曲筋のストレッチ 【対象となる筋肉】 ・橈側手根屈筋 ・尺側手根屈筋 ・浅指手根屈筋 ・深指手根屈筋 ①手のひらから手指にかけて把持し、その手で、手首を手の甲側に反らす ②その状態を保ったまま、ゆっくり肘を前方に伸ばす ③前腕につっ張り感を感じたところで、20〜30秒キープ 手関節伸展筋のストレッチ 【対象となる筋肉】 ・長橈側手根伸筋 ・短橈側手根伸筋 ・尺側手根伸筋 ・総指伸筋 ・示指伸筋 ①手の甲から指先までを軽く包み込むよう把持し、手首を手のひら側へ曲げ、ゆっくり肘を伸ばす ②前腕の外側部分に張りを感じたところで20〜30秒キープ 手指の腱のエクササイズ 手根管を通る腱の動きを滑らかにする運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節から曲げていく ③①の状態に戻すように指を伸ばしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 手内在筋(手のひらの筋肉)のエクササイズ 虫様筋(手のひらにある筋肉)の運動 ①手指をまっすぐ伸ばした状態から始める ②指の第一、第二関節は伸ばしたまま、第三関節(指の付け根)から指全体がお辞儀をするように曲げる ③直角近くまできたら、①の状態に戻るよう起こしていく ④これを10〜20回繰り返し行う 横手根靭帯のマッサージ ①手首と手のひらの境目ぐらいを反対の手の親指、人差し指で押さえ、つまむようにそれぞれの指を近づけていく ③次にそれぞれの指を離すように広げていく ④これを繰り返し行う セルフケアの注意点 簡単なセルフストレッチやエクササイズを紹介しました。 気をつけてほしいところは、無理に強い力で行わない、ということです。強い力の方が、効果が出やすいと思っている人も多いかもしれません。 しかし、ストレッチやマッサージは、強い力や、痛みが出るほどの伸張感で行ってしまうと、かえって硬くなることがあります。これが防御性収縮と呼ばれるものです。 いずれのケアも、力の入れ過ぎには注意し、効いているのか効いていないのか分からないくらいの力加減で行うようにしましょう。 どうしても症状がとれない場合は? これまで紹介したセルフケアは、手根管症候群の初期の状態では効果を示すことはありますが、重症化したものだと十分な効果は得られません。 「痺れや痛みがつよくなってきた」 「力が入らず箸を落としてしまう」 など、症状が顕著になった場合は、手術療法の適応になることもあります。 このような場合では、専門医に相談し、詳しい検査、治療を受けることを推奨します。 まとめ・手根管症候群を自分で治す!マッサージとストレッチでセルフケア 今回は、手根管症候群に対し、自分でできるケアの方法をお伝えしました。 同じような症状でも、一人一人原因が違います。 セルフケアを行うと同時に、負担になっている動作はないか、普段の生活を振り返り、改善していくことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.107 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.06.30 -
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
鎖骨骨折とは?!症状と手術、入院期間とリハビリについて 鎖骨骨折は、骨折全体の約 10%を占めると言われており、非常に頻度の高い骨折です。年齢も若年層から高齢者まで幅広く、ほとんどが転倒によって引き起こされます。 今回は、鎖骨骨折全治に向けて、少しでも早く治すための治療方法をお伝えします。特に手術療法については、その期間とリハビリの内容などを交えてご紹介します。 鎖骨骨折とは? 鎖骨骨折は、前述した通り、発生頻度が高い骨折の一つです。肩の痛みや機能障害(肩を動かせない等)を呈する疾患です。自転車走行中の転倒をはじめとして、スポーツで横から倒れた際に受傷するなどのスポーツ外傷が多くみられます。 鎖骨骨折の症状 鎖骨骨折の受傷直後は、とにかく肩の痛みが強く、自力で動かせないことが多くあります。 そのため、反対の手でケガした側の腕をカラダの近くで抑えて来院する方をよく見かけます。 鎖骨骨折の症状は以下です。 鎖骨骨折の症状 ・腕が上がらない ・気分不良 ・吐気、嘔気 ・手の指の感覚障害 ・鎖骨部の腫れ ・鎖骨の連続性の欠如(骨が途中で突出している状態) 鎖骨骨折の手術 鎖骨骨折後の治療は大きく「保存療法」と「手術療法」の 2つに分けられます。ズレが少ない、小さい子どもなどの条件の場合は、保存療法が用いられることが多いです。 一方、ズレや骨折の場所、年齢などによっては手術療法を選択した方が治りが早い場合もあります。ではどのような場合に手術療法が用いられるのでしょうか。 手術療法が選択されるケースは以下です。 手術が必要となる場合 ・骨片同士のズレが大きい ・複雑骨折(開放骨折、骨が皮膚から飛び出るケースなど) ・骨片が多い、3 つ以上 ・神経や血管、靭帯を損傷している可能性がある ・より早く確実に治したい さらに詳しく解説していきましょう。 骨のズレが大きい場合 骨のズレが大きい場合は、手術で固定した方が治りが早く、偽関節になるリスクも抑えられます。また、ズレが大きいと整復が難しい場合もあり、鎖骨の短縮が起こってしまい、肩の運動制限につながる恐れもあります。 このような理由から、ズレが大きい場合にオススメする治療は手術療法です。 骨片が複数ある場合、複雑骨折の場合 骨片(折れた骨のかけら)が複数ある骨折の場合は、きれいな整復が難しいため、手術療法の方が適している場合があります。 また、骨が体外に出てしまうような複雑骨折(解放骨折)の場合は、感染や多量出血により危険な状態に陥る可能性もあるため、できるだけ早めに手術で対応したほうがいいです。 いずれの骨折も、相当な痛みと動きの制限が伴うので、早めに医療機関への受診をしましょう。 烏口鎖骨靭帯が損傷または、断裂している場合 鎖骨は、肩甲骨の烏口突起と呼ばれるところに付く靭帯により、下から引っ張られています。この靭帯が烏口鎖骨靭帯といい、鎖骨の浮き上がりを抑えてくれる重要な役割を果たしています。 鎖骨骨折の時に、この烏口鎖骨靭帯が断裂してしまうと、胸に近い側の鎖骨骨片が浮き上がってしまい、折れた骨同士がくっつきにくくなるのです。 その場合は、骨の固定とともに、靭帯の修復まで行う必要があります。 鎖骨骨折の手術方法 手術による治療は一般的なもので、ワイヤーで固定する方法と、プレートで固定する方法の 2 種類があります。 ワイヤーの場合は、ズレが比較的小さい骨折が適応となり、小さい傷口で済みます。 プレート固定では、傷口は大きくなりますが、ズレが大きい骨折も強固に固定することができ、また靭帯損傷など合併している場合にも用いられることがあります。 プレート固定のデメリットとしては、費用がかかる、固定に使われた金属を取り除くためもう一度手術が必要となる、など何かと負担がかかることがあります。 いずれの治療方法も、保存療法と比較して、より確実に骨癒合が得られるでしょう。 ただ、保存療法よりも費用や身体的、精神的な負担も増えることが多いため、家族や専門医としっかり相談をして、より良い治療法を見つけてください。 1.ワイヤーによる固定 出典:一般社団法人 日本骨折治療学会(https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html ) 2.プレートによる固定 出典:一般社団法人 日本骨折治療学会(https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html) 鎖骨骨折の手術後の流れ~固定方法や入院期間〜 手術をした後の流れや固定方法、入院期間について解説していきます。 鎖骨骨折後の固定方法 鎖骨骨折の手術後は、基本的に三角巾固定をします。 固定期間は骨の繋がり状況によって変わりますが、順調に行けば 3 〜 4 週間で外すことができます。(プレート固定であればもっと早期に外すことが可能です。) 鎖骨骨折の手術後の入院期間? 鎖骨骨折の手術後の入院期間は、早くて 2 泊 3 日、長くても 1 〜 2 週間で退院できます。 痛み自体は比較的早く落ち着くため、早期に退院される方が多い印象です。但し、1 人暮らしの高齢者や術後の経過が思わしくなかった場合などはその限りではありません。 自宅に帰って身の回りのことをやる自信が無い人は、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。 入院期間 ・早い場合:2泊3日 ・長い場合:1~2週間(経過次第) 力仕事は骨癒合がしっかりしてきた後 手術後、力を入れる動作や体重をかける動作ができるのは、おおよそ 2 〜 3 ヶ月後です。 プレート固定であれば、もっと早めに許可が出る場合があります。 車の運転や力仕事は、3 か月を過ぎた辺りの骨がしっかりした時期より再開することを推奨します 鎖骨骨折の手術後のリハビリテーション 以前は、手術後のリハビリテーションは骨のズレを恐れて慎重に進めることが多かったのです。 しかし、動かさないことによる拘縮(関節が固まってしまった状態)などの後遺症が引き起こされてしまうため、早期に動かすことがスタンダードとなりました。 そのため、プレート固定では術翌日から、ワイヤー固定では 1 〜 2 週間後に肩を動かす訓練を行います。 可動域訓練(関節の動きを広げる運動) 可動域訓練の初めは、患者自身は力を抜き、リハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士)が腕を挙げていく他動運動から始めます。 2 〜 3 週目あたりから、自分で力を入れて動かす自動運動を開始します。 角度は、腕を下ろした状態から 90°(直角、目の前より低い位置)までの間で動かします。 そして、骨の繋がりがしっかりしてきた時に、より腕を挙げていくリハビリを行います。 これらの訓練は、骨の繋がり具合や、骨の転位、手術の方法により変動しますので、自分で勝手に判断しないよう注意が必要です。 【可動域訓練の順序の一例】 ①術後初期は、肩周囲の筋肉のリラクゼーションを中心に行う ②他動運動から開始し、徐々に 90°を目標に挙げていく ③痛みがなく骨癒合もできてきたら、徐々に動かす範囲を広げていく ④他動運動に加え、自分で動かす自動運動を開始する ⑤目標は、ケガをしていない方の肩と同じ範囲まで動かせるようにすること ※いずれのメニューも、代償動作が入らないように、専門のリハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士)の指導のもと行います 筋力訓練(力を戻していく運動) 可動域(動かせる範囲)が戻ってきたら、次に力を戻す運動を始めます。 ケガをしてから手術直後は安静期間で固定しているため、どうしても筋力が落ちていきます。 リハビリで大事なことは、焦らずに段階的に筋力を戻す、ということです。 【筋力訓練の順序の一例】 ①ケガをしていない方と手術側の手を握り、一緒に上に挙げていく ②手術側の腕だけで挙げていく(前、外、後ろの順番で行う) ③力が入ってきたら、ペットボトルなど軽い負荷をかけた状態で腕を挙げていく ④弱いバンドや、1 〜 2 キロのダンベルを持った状態で挙げていく ⑤痛みなくしっかり力が入るようになったら( 2 ヶ月ほど)、膝をついた状態での腕立て伏せを行う(慣れてきたらスタンダードな腕立て伏せを行う) ※④以降は患者の力量に合わせて行います 鎖骨骨折の手術前後に気を付けておくべきポイント! 鎖骨はつながりやすい骨折であり、ほとんどの場合スムーズに良好な経過を辿ります。 しかし、手術後早めに無理をしたことで、癒合が遅れたり、痛みがなかなか引かないと訴えたりするケースも少なくありません。 手術後早期はリハビリ以外しっかり固定をしておく 手術後は、基本的に三角巾やアームホルダーで固定(腕を吊るしておく)します。 これは、肩にかかる負担を減らすとともに、腕を極力使わないようにする予防策でもあります。骨の繋がりをしっかり確認し、担当医師より許可が出てから外すようにしましょう。 仕事の復帰や車の運転は3ヶ月から 特に力仕事や車の運転といった患部に負担のかかる動作は、手術後 3ヶ月後より始めるようにしましょう。 ただ、プレート固定など強固な固定をした手術の場合、その時期が早まることがあります。しかし、自分で判断せず、担当医師に確認することが大事です。 手術療法は保存療法と比べ費用がかかる 当然ですが、手術療法は保存療法と比べ費用が高くなります。 鎖骨骨折の場合、医療機関にもよりますが、おおよそ 15 〜 20 万円の手術代、入院費用、ご飯代、その他諸々の費用がかかります。 高額な医療費に対して、全国健康保険協会の「限度額適用認定証」により費用を抑えることは可能ですが、個室代や入院費用の中には実費負担のものもあります。 いずれにしても、保存療法よりは高額になることが予想されますので、注意が必要です。 手術療法の費用 ・ 手術代:15 〜 20 万円 ・入院費用、ご飯代、その他 ※「限度額適用認定証」は、自分で申請する必要があります。詳しくは、手術を受けられる医療機関でお尋ねください。 まとめ・鎖骨骨折とは?!症状と手術の場合、入院期間とリハビリについて 今回は、鎖骨骨折の手術に至るケースや、手術後の経過や費用についてもお話ししました。 鎖骨骨折の治療には「保存療法」と「手術療法」の2つがあります。 保存療法は、骨片のズレが少ない場合や、小さな子どもの場合に適用されます。一方、手術療法は、骨片のズレが大きい場合や、複雑な骨折の場合に選択されることが多いです。 手術後は患部を適切に固定した上、リハビリが重要となります。手術後のリハビリでは、可動域訓練と筋力訓練が行われ、正しい手順で行われることが大切です。 手術療法は、保存療法よりも手術費用やそれ以外に負担が大きい場合があります。骨の癒合(ひっつく)をより確実に得られる利点があります。 注意点としては鎖骨骨折は、骨がくっつきやすく、痛みもすぐ引くことが多いため、早めから患部に負担をかけたり、動かす方が少なくありません。 「せっかく手術までしたのに・・・」と、ならないよう医師からの提示された指示をしっかり守って過ごしていきましょう。 治療方法の選択や手術後のケア、リハビリについては医師としっかりご相談されお進めください。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S104 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下の記事も参考にされませんか 鎖骨骨折中の過ごし方|この痛みはいつまで続くの?
最終更新日:2024.04.24 -
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症を自力で治す!ストレッチと筋トレの方法を紹介 「脊柱管狭窄症の痺れや痛み、自力で和らげる方法を知りたい」 「脊柱管狭窄症に効果的な運動療法は、どのようなものがあるの?」 このような疑問がある方はいませんか? この記事では、脊柱管狭窄症とはどのようなものかを理解して、自分で治すためにできる、ストレッチや筋トレについて知ることができます。 運動をしたくても、正しい方法がわからない方はぜひ参考にしましょう。 脊柱管狭窄症とは?原因や症状を紹介 背骨は脊椎(せきつい)とも呼ばれ、椎骨(ついこつ)という骨がつながってできています。椎骨の後ろ部分には穴が空いており脊柱管と呼ばれます。 脊柱管には脳から続く神経である脊髄(せきずい)が通り、脊髄から全身につながる神経が枝分かれします。 脊柱管狭窄症は脊椎の変形などにより脊柱管が狭くなり、神経を圧迫してさまざまな症状を呈する病気です。 脊柱管狭窄症の原因 脊柱管狭窄症の原因で最も多いのは、加齢による脊椎の変形です。骨の一部が飛び出たり、骨がずれたりして神経を圧迫します。 また、事故や生まれつきの変形、手術による脊椎の固定なども原因になります。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症の症状はお尻から足にかけての痺れや痛みです。筋肉を動かす神経が圧迫されると力が入りにくくなります。 また、しばらく歩くと痛みや痺れが強まり歩けなくなるものの、数分間休んだり、前屈みの姿勢をとったりすると症状が和らいで歩けるようになる神経性間欠跛行(しんけいせいかんけつはこう)の症状が特徴的です。 重症な場合は排泄や排便が障害されます。 脊柱管狭窄症におすすめのストレッチ 脊柱管狭窄症のストレッチの重要な目的は、次の 2 点です。 ・狭くなっている神経の通り道を広げて、神経の圧迫を取り除く ・腰や足の付け根の、関節の動きを妨げる筋肉の凝りをほぐす これらを踏まえた具体的なストレッチの方法を 、ポイントを交えながら3 つ紹介します。 1 ,膝かかえストレッチ 初めに紹介するのは、神経の通り道を広げたり、背中の筋肉をほぐしたりするストレッチです。 ・仰向けになり両膝をかかえます ・太ももをお腹に近づけるようにします ・ 15 秒キープします ・ 5 回ほど繰り返します POINT: 太ももを近づけるタイミングで息をフーッと吐き出しましょう。 2 ,正座ストレッチ 次も、膝かかえストレッチと同じ効果が期待できるストレッチです。 少し難易度が高くなります。 ・四つ這いの状態で背中を丸めます ・手の位置は変えずに徐々に膝を曲げていきます ・背中を丸めるように意識して、正座のような姿勢になります ・また四つ這いの姿勢にゆっくり戻ります ・ 5 回ほど繰り返します POINT: 先ほどのストレッチと同じように、正座をするときは息を止めないようにして、リラックスをしましょう。 3 ,片膝立ちストレッチ 最後は太ももの前の筋肉である腸腰筋(ちょうようきん)のストレッチです。 腸腰筋が硬くなると腰が反る姿勢になりやすいため、柔軟性を保つことが大切です。 ・壁などを支えにして片膝立ちになります ・膝をつけている方の足を後ろに少し引きます ・前方の足の膝を曲げて、膝をついている方の太ももの前をストレッチします POINT: 腰を反ったり、上半身が前かがみにならないように注意しながら行いましょう。 脊柱管狭窄症におすすめの筋トレ 脊柱管狭窄症の筋トレのポイントは、脊椎にかかる負担を減らすために、腹筋や背筋といった体幹(インナーマッスル)の筋肉を鍛えることが大切です。 ここでは、 2 つの方法をポイントとともに紹介します。 1 ,ドローイング 椎骨を支える筋肉として、コルセットのような役割をする「腹横筋(ふくおうきん)」という筋肉があります。 お腹が割れたように見える筋肉は腹直筋(ふくちょくきん)ですが、脊柱管狭窄症の場合は腹筋の中でも「腹横筋」を鍛え、椎骨にかかる負荷をサポートしましょう。 ・仰向けになり両膝を立てます ・腹式呼吸の要領で、息を大きく吸ったり吐いたりします ・息を吐くときに合わせて、お腹を限界までへこませます ・これを 10 回程度繰り返します POINT: 息を吐くときは口をすぼめるようにして、ゆっくり長く吐くようにしましょう。 2 ,ダイアゴナル 腹筋と背筋の中でも、「インナーマッスル」という姿勢を保つ筋肉を鍛える運動です。 ・四つ這いの姿勢で、背中が曲がったり反ったりしないようにします ・右手と左足をまっすぐ上げて 15 秒キープします ・次に左手と右足をまっすぐ上げて 15 秒キープします ・ 10 回程度繰り返します POINT: 手足を上げたときに、体が傾かないように意識しましょう。また、お腹をへこませるように力を入れると効率よく筋肉を刺激でき、反り腰の防止にもなります。 ストレッチや筋トレをする上での注意点 3 つ ストレッチや筋トレなどの運動療法は、正しい方法で行う必要があります。 そこで 、3 つの意識したいことと注意点を紹介します。 1 ,痛みがあるときは無理をしない 「痛みを我慢した方がよく効く気がする」と思われる方がいるかもしれません。しかし、痛みがあるのに無理して運動療法をすると、脊柱管狭窄症の症状を悪化したり、別の部位を怪我したりする危険性があります。 筋肉がつっぱる程度のストレッチに止め、痛みや痺れが出るまで無理をしないようにしましょう。 2 ,崩れた姿勢で行わない 運動療法は正しい姿勢で行わないと、怪我の原因となったり、狙った効果がえられなかったります。 脊柱管狭窄症のストレッチでは、「腰を反らない」という点が大切になります。お腹に力を入れることを意識すれば腰が反りにくいです。 3 ,継続して取り組む ストレッチや運動を実施して症状が和らいでも、脊柱管狭窄症の原因となっている脊椎の状態や姿勢は、すぐには元に戻りません。 そのため、症状が楽になる運動は、特に継続して取り組むのが大切です。 特に筋トレは継続しなければ筋肉がつきません。最低 1 ヵ月は継続しましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症に合わせた正しいストレッチや筋トレで症状を和らげよう 脊柱管狭窄症の症状を和らげるためには、原因を理解して、状態に合わせたストレッチや筋トレをするのが大切です。 今回の運動療法は家でもできる簡単な方法ですので、症状が和らぐのを確認しながら、継続するようにしましょう。 また、脊柱管狭窄症は運動療法の他にも、薬物療法や生活の工夫などを組み合わせて治療をするのが基本です。 そのため、症状が気になる場合は整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による助言を受けながら実施するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S105 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2023.06.30 -
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脳出血の後遺症、寝たきりにならないためのリハビリについて 脳出血とは、脳の中の血管が破れて頭の中で出血が起こる病気です。溜まった血液が神経細胞を圧迫することでさまざまな症状を引き起こします。 また、障害を受けた脳の神経細胞は一定時間を過ぎると障害を受けたままになり、元には戻りません。そのため脳出血になると手足が動かないなどの麻痺症状や、言葉の出にくさなどの後遺症を残すことが多いです。 これらの後遺症が重症であると、そのまま回復せず寝たきりになってしまう場合もあります。そのような寝たきりの状態にならないために重要となるのがリハビリです。 この記事では、脳卒中のリハビリについて、具体的にどのようなことを行うのか、回復過程までの流れを紹介します。 脳出血後のリハビリとは リハビリとはリハビリテーションの略で、日常生活の自立や介護の軽減のために行われるものです。 それぞれの状態に応じて理学療法や作業療法などを組み合わせて行い、基本的動作の回復を目指し、できるだけ発症前の生活に戻れるようにするのです。 脳出血後の回復する過程は急性期、回復期、維持期の 3 段階に分かれておりそれぞれの段階に応じたリハビリを行います。 脳出血の回復過程 1)急性期 2)回復期 3)維持期 1)急性期 急性期は脳出血の発症直後から 2 週間程度までの間のことを指します。脳出血の急性期は全身の状態がまだ不安定な時期のため、再び危険な状態に陥らないかどうか慎重に経過をみる必要があります。 しかし、だからといってずっとベッドの上で安静にしていると筋肉が衰えたり関節が動かしにくくなり体の運動機能が低下します。この状態を廃用症候群と呼び、廃用症候群は褥瘡(じょくそう)や感染症のリスクとなります。 急性期のリハビリはこの廃用症候群を予防するために、無理のない範囲で手足を動かしたり、ずっと同じ姿勢にならないように体位の交換を適宜行います。 また、神経細胞が障害を受けた後に回復や神経機能の再構築が望める期間は3ヶ月と言われています。そのため発症直後からリハビリを開始することで、脳の機能の回復や代償機能の獲得が期待できるのです。 2)回復期 回復期は急性期の期間が終了してから約 6 ヶ月までの期間のことを指します。急性期の不安定な状態を脱した状態であるため、生じた症状に応じてさまざまなリハビリが始まります。 回復期のリハビリの目的は発症前の日常生活に戻るために必要な動作や身体機能の強化をはかります。それぞれの退院後の生活をイメージして、どのような訓練が必要かを考えて個人個人に沿ったリハビリが必要です。 脳出血、運動機能のリハビリ 身体機能の強化をはかります。 具体的にはベッドから起き上がる・立ち上がる動作や、自分で車椅子に乗り移って使用する・支持棒などを用いて歩行を行うなど移動に関するものから、食事の動作やトイレでの動作など、日常を送るために欠かせないものまで行います。 回復期は急性期の期間が終了してから約6ヶ月までの期間のことを指します。急性期の不安定な状態を脱した状態であるため、生じた症状に応じてさまざまなリハビリが始まります。 筋力強化 安静にしていた期間に低下した筋力を回復する目的のリハビリです。自重のトレーニングや重さの負荷をかけて行います。 持久力強化 持久力の低下に対して行うリハビリです。ウォーキングやエルゴメーターを用います。 協調運動訓練 協調運動とは、何かの動作を行う際に体の部位ごとの力の入れ方を調整する機能です。このリハビリを行うことでバランスの取れた動作を行えるようになります。 基本動作訓練 基本動作訓練とは日常生活に戻るために必要な動作の訓練を行います。具体的にはベッドから起き上がる・立ち上がる動作や自分で車椅子に乗り移って使用するなどです。 歩行訓練 歩行機能の向上を図ります。支持棒や歩行器を用いて安定した歩行を行う練習を行います。 巧緻(こうち)動作訓練 手や指を用いた細かい動きの訓練を行います。お箸を使用する、文字を書くなどの練習を繰り返し行い手指の巧緻性を高めます。 移動などに関するリハビリは理学療法士が、食事や排泄に関する動作などは作業療法士が行います。 言語機能・嚥下機能のリハビリ 言葉がうまく出てこないなど失語の症状がある場合は、言葉を出やすくするようなリハビリを行います。円滑な会話をする訓練や、読み書きの練習などが主な例です。 嚥下とは食べ物を飲み込み、気管に詰まらせないようにきちんと胃に食べたものを送る機能のことを言います。この機能が低下すると口からご飯が食べられなくなり、気道に食べ物が入り込み肺炎を起こしてしまいます。 そうならないように口や喉、舌の筋肉を鍛える運動を行います。このようなリハビリは、言語聴覚士が行います。 高次脳機能障害に対するリハビリ 人間の脳の機能は呼吸など生命を維持するために必要不可欠な機能から視覚や聴覚、嗅覚などの機能などが備わっています。高次脳機能は記憶力や注意力、行動や感情のコントロールを行う機能でこれらが障害されてしまうことを高次脳機能障害といいます。 高次脳機能障害に対するリハビリでは、どのような症状が起こっているのかを正確に把握しそれに沿ったリハビリを行うことが重要です。 記憶力が障害されている場合は、言葉や絵を覚えて記憶力を鍛える訓練や、忘れても思い出せるようにメモを取ったり物を定位置におくなどする練習を行います。 注意力が障害された場合は計算など集中力を鍛える訓練などを行います。 また、高次脳機能障害がある場合は周囲の方の協力も必要になります。患者様本人がわかりやすいように使用する言葉を統一する、生活環境を整えるなどがあります。 神経細胞の障害の度合いやリハビリの開始の時期などの影響で、人によってはリハビリの効果があまり実感できない場合もあります。 しかし回復期のリハビリを怠ると身体機能がさらに低下し、もとの生活に戻れなくなる可能性が上がります。そのためリハビリを継続することがとても重要です。 3)維持期のリハビリ 維持期とは急性期と回復期を終えて、症状と障害がある程度安定した時期のことを言います。発症後 6 ヶ月以降に行われるリハビリを維持期リハビリテーションと呼び、自宅や施設に戻った後に行います。 維持期のリハビリの目的は、急性期や回復期のリハビリで回復した機能を維持することです。一度回復したからとそこでリハビリを終えてしまうと再度機能が低下する可能性があるため、継続してリハビリを行う必要があります。 また、脳出血を一度発症するとどうしても機能障害が残り、以前はすんなりと行えていた動作が簡単に行うことが難しくなるなど、生活の質が落ちてしまうことが多くあります。 そのようにならないために、またそういった生活の質を改善するということも維持期のリハビリの目的です。 まとめ・脳出血の後遺症、寝たきりにならないためのリハビリについて 脳出血後に行うリハビリについて紹介しました。脳出血後のリハビリはなるべく早く始めて、根気強く継続することが重要です。 また、周囲の方の理解と環境調整も患者様本人の生活の質の改善のために必要です。 少しでも発症前の生活に戻れるようにリハビリを継続していきましょう。ご参考になれば幸いです。 No.S106 監修:医師 加藤 秀一 ▼脳出血関係で以下の参考にされませんか 脳出血の治療方法と手術になったときの入院期間や費用について
最終更新日:2024.03.29 -
- スポーツ外傷
- その他、整形外科疾患
鎖骨骨折の過ごし方|痛みはいつまで続くのか?を解説します 鎖骨骨折の発生要因と症状、治療、注意すべきポイントを紹介していきます。 鎖骨骨折は、どうやって起こるのか? 鎖骨骨折は、交通事故や転倒、スポーツ中などのスポーツ外傷として、鎖骨に対して強い衝撃が加わることで起こるケガです。骨折全体の中でもかなり多い骨折と言えるでしょう。 よく耳にするのが、自転車から落車。そして、鎖骨骨折をしてしまったという話やラグビーの試合中にタックルを受けて、肩から地面に倒れて骨折するスポーツ外傷など、いずれもコントロール不能な状態で肩を強打し受傷しています。 鎖骨骨折は、転倒した時に肩から落ちてその衝撃が鎖骨に伝わり受傷するパターン(介達外力)と、鎖骨を直接強く打って受傷するパターン(直達外力)があります。 受傷パターン ・肩から落ちるなど衝撃が鎖骨に伝わり受傷:介達外力 ・鎖骨を直接強く打って受傷:直達外力 このような鎖骨への力の加わり方の違いは、折れる場所などに影響してくるため、どのような状況で骨折したのか確認することが非常に重要です。 出典:一般社団法人 日本骨折治療学会( https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html ) 鎖骨骨折の症状 鎖骨骨折の症状で特徴的なものは、骨折部の痛みと腫れ、腕を上に挙げられないなどの運動制限です。 さらに、鎖骨周囲には血管や神経が通っているため、骨折の程度によりそれらの組織を傷つけ、手指がしびれたり動かせなくなる場合もあります。 また、鎖骨は皮膚の上から触れるほど体表にあるため、骨折している場合は簡単に観察できます。 肌を露出することが可能であれば、骨折があるかどうか目で確認してみましょう。 鎖骨骨折した後の対応 鎖骨骨折をしてしまった、もしくは鎖骨骨折が疑われる場合の対処についてお話しします。 鎖骨骨折はすぐに受診を 鎖骨骨折が疑われる場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。 なぜなら、症状の時にも述べましたように、鎖骨の骨片で大事な神経や血管を傷つけている可能性があるからです。その場合は、早急な対処が必要になります。 三角巾を使った鎖骨骨折の固定 また、そのまま固定もせずに無理に過ごしていると、折れた箇所がズレてしまい(転移)、骨癒合しにくくなることもあります。そうなると、手術をせざるを得ない状況になるのです。 早急に病院受診をおすすめしましたが、時間帯や日にちによっては専門の医療機関が空いていない場合もあります。 そんな時に使える鎖骨骨折後の応急処置として、三角巾での固定方法をお伝えします。 ①怪我した方の手を反対の手で固定してもらいます。(この姿勢が楽だと感じる人が多い) ②三角巾の頂点を骨折側の肘の下に挟み込むようにセットし、一方の端を反対の肩に回します。 ③他方の端を骨折側の脇の下を通すように背中側に回します。そうすると骨折側の腕を包み込むように固定できます。 ④首のところで両端を結び固定します。 ⑤頂点は肘の位置がズレないように結びます。 ⑥もう一つ三角巾を用意し、肘を体幹で固定するように巻くとぶれずに固定できます。 鎖骨骨折後の治療 ここまで、鎖骨骨折の発生要因や症状、鎖骨骨折後の対処についてお話ししてきました。それでは実際にどのような治療方法があり、どのような経過をたどるのでしょうか? 治療の方法は大きく2つに分けられます。一つは、体にメスを入れない保存療法、そしてもう一つは折れた骨同士を癒合させる手術療法です。 今回は、保存療法を中心にご説明します。保存療法が選択されるケースは以下です。 保存療法が必要となるケース ・単純骨折(骨片が2つ) ・骨片同士のズレが小さい ・骨形成率が早い子ども ・神経や血管、靭帯を損傷していない ・手術に対して抵抗がある 骨のずれが少ない場合は、鎖骨バンド(クラビクルバンド)と呼ばれるサポーターで固定をし、骨が繋がるのを待ちます。 出典:一般社団法人 日本骨折治療学会(https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip03.html) 鎖骨骨折の特徴として、胸の中心に近い方の骨片が上に移動し、外側の肩に近い方の骨片が相対的に下に位置することがあります。 そのため、バンドで胸の中心の方の骨片を上から抑えこむことで、そのズレを少なくし、骨を繋がりやすくします。通常であれば、2 〜 3 ヶ月もすれば、ある程度骨癒合(ひっつく)します。 ただ、鎖骨バンドを早期に外してしまったり、つけ方が甘かったり、早くから腕を動かし過ぎたりすると、骨が癒合するのが遅れ、遷延治癒(※)となることもあるので注意が必要です。 (※遷延治癒・・・一定期間が経過しても治らない状態) 鎖骨骨折の完治までの期間は? 鎖骨骨折は、およそ全治 3ヶ月と言われています。また、骨折部自体の痛みは 1ヶ月でかなり軽減し、2ヶ月頃には、ほとんど感じなくなる人も多いです。 腕をしっかり上まで挙げると鎖骨も大きく動くため、痛みが出ることもありますが普段の日常生活では、ほとんど痛まなくなるでしょう。 しかし、ズレが大きい場合、治療内容によっては 3ヶ月より長くかかることがあります。専門医と相談の上、適切な治療方法を選ぶよう心がけましょう。 鎖骨骨折後に気をつけること 最後に鎖骨骨折後に気を付けるポイントを2つご紹介します。やはり不便な場面は出てきますが、以下の注意点をしっかり守ることが早期治癒に繋がります。 ①鎖骨骨折後の日常生活ではとにかく腕を挙げないこと 鎖骨は腕(上肢)を動かすための、非常に重要な骨です。鎖骨が動かせなければ、腕はほんの少ししか上がりません。 腕を大きく挙げようとすれば鎖骨は動く、ということです。つまり、鎖骨が折れている状態で腕を大きく動かせば、鎖骨は自ずと動き、ズレようとする力が働くため、強い痛みが出てしまい、さらには骨の癒合を邪魔してしまいます。 そうなると、治りが遅くなり肩の動きが悪くなる後遺症が残る可能性もあります。 また、偽関節ができてしまい、力が入りづらくなることも考えられます。そのため、鎖骨骨折後の早期は手術の有無に関わらず、腕を挙げる行動を控えることが重要です。 ②鎖骨骨折後は寝方にも注意 鎖骨骨折後の早期は、寝る姿勢にも注意しなければなりません。 基本的に仰向けか患部を上にした横向きで寝ることが推奨されています。その際、骨折した側の腕が動かないようにバンドや三角巾などで固定しておくとよいでしょう。 仰向けで寝る場合は、肘が下に落ち過ぎて肩に負担がかかる場合もありますので、バスタオルを折り畳んだものを骨折側の肘の下に敷いておくと安定感が得られます。 車の運転はいつからいいの? よく聞かれる質問の一つに、「車の運転はいつからしていいのか?」というものがあります。 一人一人骨の繋がり具合や手術の有無によって差があるので一概には言えませんが、腕をしっかり挙げてOKと医師から許可が出た頃から練習をし始めるのがいいでしょう。 運転では、やむを得ず急ハンドルを切る場面が出てくるかもしれませんし、大きいカーブでは腕が上がる動作も加わります。 予測できないハンドル操作が出てくることも考えると、少なくとも1ヶ月半〜2ヶ月程度は我慢した方が良さそうです。 とにかく、鎖骨骨折をしてしまったら、自分で判断せずに専門の医療機関に診てもらい、骨折後や手術後すぐに肩を大きく動かす動作は避けましょう。 骨の繋がり状況は、レントゲンなどによって判断されるので、医師の指示のもと、段階的に動かすよう心がけましょう。 まとめ・鎖骨骨折の過ごし方|痛みはいつまで続くのか? 今回は、鎖骨骨折について発生要因や症状、治療方法、過ごし方などについてご紹介しました。 骨折の中では頻度が高い鎖骨骨折ですが、その予後は良く、医療機関の指示を守って生活すると大部分は前と同じように動かせるようになります。 鎖骨骨折そのものは、交通事故やスポーツ外傷などで発生しやすい怪我の一つです。 骨折するパターンとしては介達外力と直達外力の二種類があり、これによって治療法や経過に影響が出ます。症状は痛みや腫れ、腕の運動制限などで現れ、いずれも早めの受診が重要となります。 治療方法は保存療法と手術療法に分かれ、保存療法では鎖骨バンドの使用が一般的です。また、日常生活では腕の挙げ方や寝方にも注意が必要です。 骨の繋がり具合や手術の有無によって完治までの期間や注意点が異なるため、専門医の指示に従い、段階的な動作復帰を心がけましょう。 尚、鎖骨の骨片で大事な神経や血管を傷つけている可能性もあるため、骨の繋がり状況を確認しながら段階的に治療に取り組むことが完治への一番の近道、早く治すために有効です。 鎖骨骨折が疑われる場合は、手術をせざるを得ない状況も考えられますので「大丈夫だろう」と自分の判断で無理されることなく早めに医療機関を受診してください。 No.103 監修:医師 坂本貞範 ▼以下も参考にされませんか 鎖骨骨折の症状!?見た目の特徴、治療法と後遺症
最終更新日:2024.04.24 -
- 手根管症候群
- 手部
手根管症候群|手のしびれ放置はNG!手術と仕事復帰までの期間 「手のしびれがあるけど原因が何か知りたい」 「手のしびれは放っておいても大丈夫なの?」 このような疑問を持つ方はいませんか?手のしびれはもしかすると手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)が原因かもしれません。 この記事では、手根管症候群について紹介し、手術や必要な費用と仕事復帰までの流れを解説します。 手がしびれて気になる方は、ぜひ参考にしましょう。 手根管症候群とは?原因や症状、治療について 手根管症候群とは手首を通る神経(正中神経)が圧迫されたり、しめつけられたりして、神経の障害を引き起こす状態を言います。 正中神経は手首の骨や屈筋支帯(くっきんしたい)と呼ばれる靭帯でできたトンネルを通ります。 このトンネルを手根管と呼び、手根管の圧が高まることが症状を引き起こす原因になるため、手根管症候群と呼ばれます。 手根管症候群の原因 特発性と呼ばれ原因不明である場合が多いです。 以下のようなものが原因の1つと考えられています。 ・閉経 ・妊娠や出産 ・アルコールの多飲 ・腎臓病による透析 ・糖尿病 ・骨折や変形 ・腫瘤(こぶ) ・腱鞘炎(手の使い過ぎ) など 中高年の女性、手を酷使する職業やスポーツをする人に症状がでやすいとされています。 手根管症候群の症状 症状の出始めは、人差し指や親指の手のひら側にしびれやピリピリ感、痛みがあり、進行すると中指や薬指まで症状が広がります。 手根管症候群は手首を手のひら側に曲げると手根管にかかる圧が増えて上記の症状が悪化します。症状は夜中や明け方に強いのも特徴で、しびれや痛みが強まると手をふることで症状が和らぎます。 重症になると親指の付け根がやせてしまい、オッケーサインをしようとしても、うまく丸が作れなくなります。 しびれがあっても、すぐに元に戻り再発しないものは、足がしびれたときのように一時的に血行が悪くなっただけで心配ないです。 しかし、上記のようなしびれや痛みは放置すると症状が悪化して、重症化してしまいます。放置をせずに症状が気になる場合は、すぐにお近くの整形外科を受診しましょう。 手根管症候群の治療法 発症してすぐのため症状が軽かったり、妊娠していたりする場合は、手術をしない保存療法をします。 保存療法では手首を少しそらして固定する装具を使ったり、日常生活で手首に負担のかからない工夫をしたりします。 また、ステロイドを注射したり、痛み止めや神経の働きをよくするビタミンB12を服用したりして痛みやしびれの軽減を図る場合もあります。 保存療法で症状が改善しない場合や痛みが強い場合に選択されるのが手術療法です。 手術については次の見出しで詳しく解説します。 手根管症候群の手術内容や費用 手根管症候群の手術は以前に比べ短時間で、負担が軽くなっています。 そこで手術の具体的な内容や手術に必要な費用の目安を紹介します。 手根管症候群の手術とは 手術療法は、手根管開放術と母指対立再建術の二種があります。 手根管症候群の手術は手根管開放術と呼ばれ、屈筋支帯を切開して、神経の圧迫を取り除くのが目的です。 以前は手のひらから手首にかけて大きく皮膚を切っていましたが、今は内視鏡と呼ばれる小型のカメラ付きの管を挿入して手術をするため、短時間かつ小さな傷ですみます。 また、親指の筋肉がやせて力が入りにくくなっている場合は、親指の筋肉を別の部分から移行して再建する母指対立再建術が適応です。 さらに、腫瘤を取り除く必要がある場合は、皮膚を切開して腫瘤を取り除きます。 手術にかかる費用の目安 手術にかかる費用は、開放術の場合、概ね 12,000円から 30,000円です。 内視鏡を使用する場合は、使用しない場合に比べてやや金額があがります。 また、母指対立再建術を同時に実施する場合は、さらに費用が高くなります。 手根管症候群の手術から仕事復帰までの期間 内視鏡下で行う手根管開放術では、手術時間は 30 分もかからず、日帰りで終わる場合も少なくありません。そのため、長期間の入院で体が衰えることもなく、早期の社会復帰ができます。 母指対立再建術の場合は 1 〜 2 週間の入院をして、手術後には 1 週間程度の固定が必要です。 内視鏡手術後は翌日以降から痛みのない範囲であれば安静にする必要はなく、通常の生活が可能です。 ただし、神経が圧迫されて損傷したために起こるしびれがある場合、手術をしてもしびれが回復するのは半年程度かかる場合もあります。 1 週間ほどは傷口を水に濡らさないようにする必要があるため、水仕事が必要な仕事は行わないようにしましょう。 力仕事やタオルを絞ったりするのは手術部に負担がかかるため、術後 1 カ月程度を目安に控えるようにしましょう。 母指対立再建術の場合は、手術後に約 1 カ月の固定をする必要があるため、仕事復帰もそれ以降になります。 これらの期間は手術した病院や手術後の状態によって、ずれがありますので、医師に詳しく確認しましょう。 手根管症候群のしびれは放置せずに早めの受診が重要/まとめ 手根管症候群でしびれや痛みがある場合、適切な治療をしなければ症状が進行します。単なるしびれだからといって放置するのは危険です。 毎朝起床時にしびれる、しびれが続いて治らないなどの場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。 最近では短い時間で済む手術も増えています。 進行すると手術費も入院期間も増えてしまいますので、状態の進行を防ぐことが大切です。 この記事を参考にして、手根管症候群の悪化を防ぎましょう。 No.105 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.06.30 -
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 頭部
ある日突然起こる脳卒中にご注意!その症状と原因、予防法 脳卒中は、脳血管障害とも呼ばれる脳の重い病気です。 ケースによっては、からだを動かすのが不自由になる、言葉が出づらくなる、など後遺症が残ることも少なくありません。身近で脳卒中について話題になったこともあるでしょう。 この記事では、脳疾患である「脳卒中」にスポットを当てながら、病気の症状や原因、予防するための方法についてわかりやすく解説します。 脳卒中は、脳の血管障害によって発症する病気全般を指します! 脳卒中とは、脳の血管が詰まる、あるいは血管が裂けることで起きる脳の病気全般を指す言葉です。 例えば、腹痛と一口にいっても、下痢や便秘もあれば盲腸炎や大腸がんなど、原因となる病気はいくつも考えられるでしょう。 脳卒中には、大きく分けて次の 3 種類があります。 ・脳梗塞 ・脳出血 ・くも膜下出血 それぞれわかりやすく説明していきます。 脳梗塞 脳の血管が詰まる脳卒中の一種です。血管が詰まった先は血液の流れが悪くなるので、脳細胞が壊死していきます。 脳出血 脳の血管が、高血圧などにより内側から強い圧力がかかり、破けてしまう脳卒のことです。出血した血液が塊になって、脳が働かなくなります。 また、脳を圧迫するため、他の脳の部分にもダメージを与えます。 くも膜下出血 脳の太い血管にできた、動脈瘤というこぶが破れて起こる脳卒中のひとつです。 脳梗塞や脳出血は脳の中で起こりますが、出血した血液が脳の表面を覆って発症することがポイントです。 ここまでの説明を表にすると、以下のようなイメージです。 病名 病気の種類 病気が起きる原因 脳卒中 ・脳梗塞 脳の血管が詰まって血液が行き渡らなくなる ・脳出血 脳の血管が切れて出血して、脳の細胞が壊死する ・くも膜下出血 脳の血管にできた「動脈瘤」(こぶ)が破けて、脳の表面を覆うように出血が広がる もうお分かりですね! この表からもわかるように脳梗塞とは、あくまで脳卒中といわれる病名の中にあって、その種類のひとつなのです。このあたりは、知っている人に取っては当たり前ですが、知らない人にとってはごっちゃになっている部分だと思います。 最近は、脳卒中より脳梗塞という病名が知られるようになったため、別々の病気と思っている人も少なくありませんが、実は同じ病気だということです。 脳梗塞は脳の血管が詰まる・狭くなることで起きる ここまで説明してきたように、脳卒中と脳梗塞は異なるものではなく、脳卒中という大きな病気のひとつの種類に脳梗塞がある、とわかりました。 そして、 脳梗塞は、脳の血管が詰まって血液の流れが悪くなり、脳の神経細胞が死んでいくことによって発症します。 脳の血管が詰まる原因は、血栓と呼ばれる血の塊です。 年齢とともに血管の動脈硬化によってできる血栓や、心臓にできる血栓が脳に移動して、脳の血管を詰まらせます。血管が詰まると脳に血液が行き渡らなくなって、酸素や栄養が届かなくなり、脳が壊死してしまうのです。 脳梗塞の状態が重いほど、後遺症が強く残りやすくなります。 このように、脳梗塞や脳出血といった脳卒中は、寝たきりや認知症、高次機能障害といった後遺症を引き起こす重大な病気なのです。 脳卒中は年齢に関係なく突然起きる病気 代表的な脳卒中によくある症状は次の 5 つです。 症状 1.半身がしびれたり、麻痺が続く 2.ふらふらしたり、歩く・立つができなくなる 3.ろれつが回らず、言葉が出ない 4.視野の半分が暗くなる、二重に見える 5.激しい頭痛が突然起きる 脳梗塞をはじめ脳卒中は、ある日突然起きる病気です。脳の血管が詰まる、裂けるといった脳卒中の原因が突然起きると、一気に重い症状が現れることがポイントです。 脳卒中かもしれないと思ったら 「半身がしびれたり、麻痺がつづいている」「ろれつが回らなくなった」こうした脳卒中の症状に気づいたら、すぐに医師に診てもらいましょう。 脳梗塞や脳出血は似たような症状が起きることが多いため、日頃から脳卒中の代表的な症状を覚えておくことが大切です。 気になる症状があったときは、できるだけまずはかかりつけ医に電話で相談する、少しでも症状に不安を感じたら迷わず救急車を呼んでください。 脳卒中のリスクと予防 脳卒中は死に至ることもある重い病気で、後遺症が残ることも多いため、日常的に予防に努めることが大切です。 脳卒中の 5 大リスクとして知られているものは、次の 5 つです。 ①高血圧 ②糖尿病 ③脂質異常症 ④不整脈 ⑤喫煙 ここで挙げたリスクは、生活習慣病といわれていて、以下のような食事や運動、睡眠などの生活習慣の改善で予防できるものです。 食生活に気を配ることで予防が可能 ・塩分制限をする ・バランスの良い食事を心がける ・適度に運動する ・十分に睡眠をとる ・お酒や喫煙を控える 脳卒中は、起こってしまってからでは取り返しがつきません。 予防のためにも、まずは生活習慣を見直すことからスタートすることが何より大切です。 また、病院で血圧や血液検査などの異常を指摘された方も、薬による治療を続けると脳梗塞をはじめ脳卒中のリスクをコントロールすることができます。あわせて、定期的な健康診断や通院で、病気を管理することも忘れずに行いましょう。 まとめ・ある日突然起こる脳卒中にご注意!その症状と原因、予防法 脳卒中と脳梗塞の違いについて解説してきましたが、次のポイントを改めてチェックしておきましょう。 ・脳卒中は脳の血管障害による病気全般を指す言葉 ・脳卒中と脳梗塞は別々の病気ではなく、実は同じもの ・脳卒中の種類のうち、脳の血管が詰まるのが「脳梗塞」 ・脳卒中は生活習慣病が大きな原因 脳卒中の症状や、脳梗塞の特徴を覚えておいて、ぜひ病気の予防に努めましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.106 監修:医師 坂本貞範 ▼こちらも参考にしませんか 脳卒中の種類と原因|発症を予防するため、注意すべき生活目標と修正方法とは
最終更新日:2024.03.27 -
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脳出血の治療方法と手術になったときの入院期間や費用について 「脳出血と診断された。これからどんな治療をするのだろうか?」 「脳出血になったら、入院期間や費用はどれくらいかかるのだろう?」 脳出血は、早期の診断・治療がとても重要な疾患であり、治療が遅れれば遅れるほど、話しにくさや手足を動かしにくくなるという重篤な後遺症が残る可能性があります。 本記事では、脳出血が疑われる際の検査についてや、治療や手術、入院期間などについて解説してまいります。 脳出血の検査について 脳出血とは脳内の血管が破れて出血した状態で、一般的な症状として多くの人に認められるのが、突然の激しい頭痛や手足が動かしにくくなるという麻痺症状です。 出血がひどくなると意識障害などもみられることがあります。 このような脳出血の症状がみられる場合には、まず CT 検査を早急に行い、出血部位(被殻、視床、脳幹、小脳、皮質下)や出血量を確認することで確定診断に至ります。 脳出血は高血圧が原因であることが多いですが、MRIの検査によって脳動脈瘤や脳血管奇形といった脳内の血管自体の異常や損傷範囲などを調べることができます。 脳出血の手術と治療について 脳出血の治療は、内科的治療と外科的治療に分かれます。 それぞれについて、詳しくみていきましょう。 内科的治療法 内科的治療(薬物療法)として、最も重要になるのは、薬剤による血圧コントールです。 脳出血は高血圧が原因で発症することが多く、特に脳出血発症時には収縮期血圧が 200 mmHg以上となってしまうことも珍しくありません。 脳出血の発症から 6 時間以内は再出血が非常に起こりやすいと言われており、再出血を予防するために、血圧を安定させる降圧剤の点滴や内服などが用いられます。 退院後における慢性期においても、高血圧を放置することで脳出血の再発もあり得ますので、定期的な降圧剤の内服が必要なことが多く、血圧を安定させるための治療が行われます。 もう一点、内科治療として、脳出血により脳が浮腫み、腫れてくることがあります。そのまま放置してしまうと、出血していない部位にまで悪影響が出ることがあるため、マンニトールやグリセロールという抗脳浮腫薬の点滴を行うことがあります。 外科的治療法 脳出血の外科的治療法(手術)は、以下のような時に対して行われます。 ・出血量が 30 ml以上と多量であり、出血による血の塊(血腫)の圧迫により生命の危機がある場合 ・水頭症(髄液の循環不全により、髄液が過剰に溜まった状態) ・意識レベルの低下が疑われる場合 ただし、視床出血や脳幹出血の場合は重要な神経が通っているため手術は困難であり、また深昏睡状態(意識がなく自発呼吸もない状態)の場合も手術による改善が望めないため治療適応外となります。 手術方法としては血腫を除去する血腫除去術と、水頭症に対するシャント術が一般的です。 それぞれの手術法について詳しく見ていきましょう。 ◇血腫除去術 開頭血腫除去術 開頭血腫除去術は全身麻酔下で行われる手術で、3 時間程度要します。約 10 ㎝程度の大きさで頭蓋骨を切開し、脳内に溜まった血腫を摘出する手術になります。 内視鏡的血腫除去術 内視鏡的血腫除去術は開頭血腫除去術とは異なり、局所麻酔で行われる手術になります。数㎝程度皮膚を切開し、頭蓋骨に 1.5 ㎝程度の穴をあけて細い筒のようなものを挿入し、血腫の吸引を行っていきます。 開頭手術と比べるとおよそ半分程度の手術時間で完了するため、患者さんの負担も少なく、リハビリを早期から行うことが出来るというメリットがあります。 ◇シャント術 シャント手術とは、溜まってしまう髄液を体内の他の場所へ流し込むバイパスを作る手術になります。 主な経路としては、以下のようになります。現在では、脳室―腹腔シャントが最も多く行われています。 ①脳室から腹部(脳室―腹腔シャント) ②脳室から心臓(脳室―心房シャント) ③腰から腹部(腰椎―腹腔シャント) リハビリ 治療・手術後は、社会復帰に向けて必ずリハビリが必要となります。 「急性期」「回復期」「維持期」の回復過程に応じて、適切なリハビリを段階的に行うことになります。 脳出血の入院期間や費用について 入院期間 脳出血の平均入院日数は、およそ 107 日間となっており、下表のように年齢が上がると、日数は増える傾向にあります。 例えば、40~44 歳の方の平均入院日数は 56 .4 日となっていますが、80~84 歳の方の入院日数は約 3 倍の日数の 151 .3 日となっています。 これはご高齢になればなるほど、重症化のリスクやリハビリに要する期間が長くなるためだと思われます。 40 ~ 44 歳 56 .4 日 60 ~ 64 歳 81 .1 日 65 歳~ 69 歳 104 .8 日 70 歳~ 74 歳 96 .9 日 75 歳~ 79 歳 99 .1 日 80 ~ 84 歳 151 .3 日 入院費用 入院費用の平均は、約 70 万円前後( 3 割負担の場合)となっています。 なお、そのうち血腫除去術の一般的な手術費用は診療報酬点数が 47 ,020 点となっているので、1 点= 10 円とすると約 14 万円( 3 割負担)となります。 高額療養費制度を利用すると、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるので、最終的には更に軽減される可能性があります。 ただし、高額療養費制度の自己負担の上限額は、年齢や所得によって異なり、差額ベッド代や食事代等は制度対象外となります。 以上の入院日数や入院費用はあくまで平均値となっており、年齢や治療内容、症状などの差で変動します。 まとめ・脳出血の治療方法と手術になったときの入院期間や費用について いかがでしたでしょうか。 本記事では、脳出血の手術と治療、入院期間や入院費用について主に解説しました。 脳出血は早期の治療介入が非常に重要であり、重症度に応じて様々な治療方法が選択されます。発症から時間が経過すればするほど重い後遺症が残ったり、命の危機に晒されることに繋がりますので早期受診が重要です。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.104 監修:医師 坂本貞範 ▼脳出血、以下の記事も参考にされませんか 脳出血、後遺症の種類とリハビリによる改善の可能性
最終更新日:2024.03.29 -
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側弯症でやってはいけないこと!注意点について 側弯症において、以下のような疑問がある方はいませんか? 「側弯症でどのようなストレッチをしたらいいの?」 「側弯症でスポーツをしても大丈夫なのか不安…」 今回は側弯症の場合にストレッチや筋トレ、スポーツで注意するポイントを紹介します。 正しい知識を持てば、側弯症でも運動が可能ですので、しっかり確認しましょう。 側弯症とは?症状や原因、種類について紹介 側弯症は背骨が左右に弯曲する状態です。 側弯症にはさまざまな原因があり、原因や特徴によって分類されます。 やってはいけないことについて理解をしやすくするために、ここでは側弯症の種類や原因、症状について解説します。 側弯症の原因や症状 側弯で最も多い突発性側弯は、発症原因がよくわかっていないのが特徴です。 変性側弯も加齢による変形が原因ですが、なぜ変形するのか根本的な原因は不明な点も多いです。側弯があっても痛みなどの症状がない場合が多く、進行すると左右で非対称な見た目で変形がわかります。 子どもの側弯は学校の運動器健診の 1 つとして義務化されており、そこで指摘されて初めてわかることも少なくありません。 具体的には、次のような部分で非対称が確認できます。 側弯症の症状・非対称 ・肩の高さの左右差 ・片方の肩甲骨が突出している ・ウエストラインが非対称 ・前屈みになると片側が盛り上がって見える 変形の程度は人によってさまざまで、軽度の場合は定期的な経過観察で進行の有無を見逃さないようにするのが大切です。中度〜重度になると専用の装具や手術の検討も必要になります。 また、側弯が悪化すると腰や背中の痛みがでたり、背骨にある神経を圧迫して、しびれなどの神経症状がみられたりします。 側弯症の種類 背骨の変形を伴うものを「構築性側弯」、背骨の変形を伴わないものを「機能性側弯」といいます。 機能性側弯 機能性側弯は痛みをかばったり、足の長さの違いを補ったりするために起こる側弯です。 つまり、見かけ上は背骨が弯曲していても、原因を取り除けば側弯は解消されます。 構築性側弯 一方、背骨の変形を伴う構築性側弯には以下のような種類があります。 疾患名 特徴 特発生側弯 全体の80%前後を占める最も多い側弯。多くが思春期に発症して、女子に多い。原因は不明。 先天性側弯 先天的な背骨の変形などにより生じる側弯。 症候性側弯 神経や筋肉の病気により生じる側弯。 変性側弯 加齢に伴う背骨の変形による側弯。 一般的に側弯と呼ばれる疾患は構築性側弯で、多くは突発性側弯です。 側弯症の日常生活でやってはいけないこと 通学鞄の種類や寝る姿勢、ベッドか布団かといったような生活習慣は、側弯症と関係ないといった研究があります。そのため、日常生活では特別やってはいけないことというのは明確には分かっていません。 ただし、側弯症の場合、片側に姿勢が傾きやすかったり、腰を痛めたりといった点で日常生活に影響を及ぼす場合があります。長時間の崩れた姿勢は、見た目上の問題や腰痛につながることになります。 また、腰痛がある場合に、重いものをもったり、無理な運動をしたりするのは症状の悪化を招きかねません。 そのため、できるだけまっすぐな姿勢を保つ、痛みがあるのに無理な運動をしないといった点には気をつけましょう。 側弯症の筋トレやストレッチでやってはいけないこと 側弯症では弯曲した姿勢を修正するため、弱った筋肉を筋トレで鍛えたり、硬くなった筋肉をストレッチで伸ばしたりといった運動をよく耳にするかもしれません。 しかし、注意しなければ症状を悪化させる危険性があります。 そこで、筋トレやストレッチの注意点を解説します。 筋トレで注意すること 側弯症に対する筋トレの基本は、弯曲の凸側の筋力強化をして、凸になっている姿勢を修正することとされています。そのため、誤って凹側の筋力強化をしてしまうと、背骨をゆがみを強める力を働かせてしまうので注意が必要です。 また、凸側を鍛えると分かっていても、動きのコツをうまく理解していないと鍛えたい筋肉がうまく働きません。 例えば、腰の部分が右凸に変形しており、右側の骨盤が下がっている場合、右側の骨盤を持ち上げるようにしてトレーニングする方法があります。 この場合、 骨盤を持ち上げるのに合わせて上半身を一緒に左に傾けてしまうと、うまく腰回りの筋力を鍛えることができません。 このように、筋トレには側弯の状態に合わせた方法をオーダーメイドで考えることが大切です。 整形外科などで姿勢を評価してもらい、専門家の助言を受けるようにしましょう。 ストレッチで注意すること 側弯のストレッチでは以下の 3 点に注意が必要です。 筋トレと同様にストレッチでも正しい方法でストレッチをしなければ、より姿勢を悪化させる原因になりかねません。 また、痛みが出るまで伸ばしたり、反動や勢いをつけたりすると変形をした背骨に負荷がかかってしまいますので注意しましょう。 ストレッチの注意点 ・適当な方法で行わない ・痛みが出るまで無理をしない ・反動や勢いをつけない 側弯症でスポーツをする場合の注意点 側弯症だからといって、運動をすべて制限するのではなく、適度な運動を続けることは心身の機能を保つために必要なことです。 また、特定のスポーツであればクラシックバレエの経験がある女子に側弯が発生しやすいという研究があります。ただし、バレエが側弯に影響していたのか、側弯になりやすい体型の子がバレエをやっていることが多いのかは分かっていません。 そのほかのスポーツに関しても、側弯症の発症が増えるという科学的な根拠は明らかになっていません。しかし、腰痛のような症状が悪化するような無理な運動はしないようにしましょう。 また、痩せ型の女子に側弯が多いというデータがあり、スポーツのために無理な減量やダイエットをするのは控えた方がよいでしょう。 側弯症でも注意点を守れば運動は可能!気をつけて悪化を防ごう 側弯症で筋トレやストレッチをする場合は、正しい方法で行わなければ、症状を悪化させる危険性があります。そのため、側弯の程度や弯曲の仕方をチェックして、一人ひとりに合わせた方法で実施するのが大切です。 トレーニングやストレッチが適応かどうかは、整形外科を受診して医師に確認するようにしましょう。 運動を続けることは、心身の健康を保つためには必要なことですので、症状のない範囲で行いましょう。 まとめ・側弯症でやってはいけないこと!注意すべきこと 側弯症型の方がストレッチや筋トレ、スポーツを行う際には、注意が必要です。 側弯症は背骨が左右に曲がる状態であり、突発性や変性側弯などさまざまな原因があります。症状は個人によって異なりますが肩の高さの違いや、腰痛、姿勢の非対称などの症状が現れます。 日常生活や運動において、特にやってはいけないことは明確ではありませんが、無理な姿勢や運動は症状を悪化させる可能性があるため、筋トレやストレッチを行う際には、専門家の助言を受けることが大切になります。 適度な運動を心がけることで健康を維持するうえで大切です。ただ、側弯症の場合は、無理な負荷をかけないように注意してください。 整形外科にて、ご自身の状態に合わせた無理の無い運動プログラムや指導を受けましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.S103 監修:医師 加藤 秀一 ▼側弯症について以下もご覧いただけます 側弯症|子供の側弯症と大人の側弯症、それぞれの治療について
最終更新日:2024.05.07 -
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脳出血の前兆!初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない 脳出血とは脳卒中の 1 つで、脳を走る血管が破れて脳の中で出血が起こる病気です。 高齢であったり、高血圧や動脈硬化が強いと血管が弱くなるため、脳出血を引き起こしやすくなります。出血が広がると血液で脳が圧迫されたり、血液が神経細胞に行き渡らず細胞が死んでしまったりすることでさまざまな症状が出現し、広がりに応じて進行します。 一度障害を受けた神経細胞は元に戻ることはないため麻痺や感覚障害などの後遺症を残します。脳出血の約 70 %が後遺症を残すと言われており、生活に支障をきたさない程度の後遺症から、四肢麻痺など、日常生活が以前のように送れなくなるほどの後遺症までさまざまです。 リハビリを行うことである程度までの回復を期待することはできますが、完全に元に戻すこと難しく、何よりかなりの時間を要します。 脳出血で強い後遺症を残さない為にも、発症早期に気づき、周囲の神経細胞に障害が起こる前に治療を受けることが重要になります。 この記事では、脳出血の比較的急性期に認める症状や好発部位ごとに現れる症状の特徴、ご自身で参考にしていただける初期症状のセルフチェックシートなどを紹介します。 脳卒中!脳出血の好発部位とその症状の特徴は? 脳出血は出血が起こりやすい部位によって種類が分けられており、それぞれで症状に特徴があります。 好発部位は大きく分けて 5 つあり、以下に特徴を示します。 ①被殻(ひかく)出血 脳出血の中で、一番頻度が高い部位です。 症状はまず頭痛や嘔吐から始まり、片側の手足の麻痺や感覚の異常、うまく言葉が話せない構音障害などを認めます。 また、被殻出血が起こるとどちらか一方に目がよる共同偏視を認めることもあります。 ②視床出血 被殻出血の次に多く見られる脳出血です。 視床は感覚を伝達する神経が多く走っている部位のため、視床出血では感覚障害や視床痛という半身のみの痛みを認めます。 また、視床出血は脳脊髄液が循環している脳室と近い位置にあるため、出血が脳室まで及ぶと水頭症という状態になり意識障害を起こします。 視床出血になると左右の目が内下方を向くようになることが特徴です。 ③小脳出血 小脳は平衡感覚をつかさどる部位です。 そのため、この小脳で出血が起こると頭痛と嘔吐、めまい、歩行障害が起こります。 小脳出血が広がり脳幹まで圧迫されると呼吸が止まり致命的になる可能性があります。小脳出血のみですと、麻痺は起こりません。 ④橋出血 橋は脳幹の一部で呼吸や全身の運動などをつかさどっている部位です。 橋で出血が起こると意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸ができなくなり重篤な状態になることがあります。 橋出血が起こると左右両方の目の瞳孔が小さくなることが特徴です。 ⑤皮質下出血 脳の比較的表層の部分に出血が起こるものです。 部位によって症状はさまざまで、片側の手足の麻痺や構音障害、視界の左右どちらかが見えなくなる半盲などを認めます。 脳出血の前兆・初期症状を知ることで早期治療を! 脳出血は出血範囲が広がるほど多くの神経細胞が圧迫され重症となり、最悪の場合寝たきりや死亡してしまうこともあります。 しかし早期に発見できれば、手術で血の固まり(血腫)を取り除いたり、血圧をコントロールして血腫が大きくなることを防ぐ治療を受けることができるため、後遺症などが軽症ですむ可能性が上がります。 脳出血の初期症状セルフチェックシート 初期症状リストを以下に示します。これらを参考にして、初期の段階から脳出血に気付きましょう。 いずれの部位の脳出血でも認める症状 ▢突然の激しい頭痛 ▢嘔吐 重篤な状態を示唆する症状 ▢意識障害 ▢昏睡 運動障害 ▢手足の麻痺、動かしにくさがある ▢片側の顔の麻痺、動かしにくさがある ▢表情に左右差がある ▢歩きにくくなる、足がもつれる ▢ごはんが食べにくくなる、飲み込みづらくなる 感覚障害 ▢片方の手足が痺れる ▢左右どちらかの顔面が痺れる ▢半身の痛みが突然生じる 言語障害 ▢舌がうまく回らず上手に話せない ▢話したい言葉が出てこない ▢言葉が理解できない 視覚障害 ▢突然視野が狭くなる ▢左右どちらかの視野が障害される ▢物が二重に見える ▢瞳孔の大きさが左右で違う・やけに小さい 平衡感覚障害 ▢めまい ▢ふらつき ▢まっすぐ歩けない チェックシートに記載の症状で 1 つでも当てはまる項目があれば、脳出血である可能性が高いです。迷わず医療機関を受診してください。 特に今まで感じたことのないような突然発症の激しい頭痛を認めた時は、脳出血が頭の中で発症した可能性がかなり高いです。 それに伴い、「激しい吐き気」や「嘔吐」がある場合は、更にその可能性が高まります。これら 2 つの症状は、どの部位に出血が起こっても認める症状で、かつ頭痛は血管が破れた際に起こる症状です。 すみやかに治療を受けることで、その他の症状を発症せずに済むかもしれません。 意識障害や昏睡状態になっている場合はすでに重篤な状態であり、命に危険が及んでるかもしれません。いずれの場合も救急車を使用するなどして、いち早く専門の医療機関を受診しましょう。 脳出血に前兆はない? 脳出血は突然血管が破れて発症するため、前兆は基本的にありません。前兆ではありませんが、血圧は 1 日の中で朝の 10 時ごろが最も高いためその時間帯に脳出血が起こりやすくなっています。 そのため、日頃から生活習慣を気をつけて、初期症状を認めた場合はすぐ受診し早期の治療を受けることが必要です。 まとめ・脳出血の前兆!初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない 脳出血はある日突然発症し、多くの場合で後遺症が残ってしまう病気です。 しかし早期に治療を行うことができれば後遺症を残さないか、残っても軽度で済む可能性が高まります。加えて、脳出血は画像検査ですぐに診断をつけることが可能です。 そのため、少しでも疑う場合はすみやかに医療機関を受診することが重要です。また、脳出血の治療を行うのは主に脳神経外科になるため、脳神経外科の体制が整っている病院を選んでください。 尚、後遺症については、リハビリ以外にも最先端医療の「再生医療」という新たな手法もあり、万一後遺症が残った場合は、その存在を知っておくことで後遺症が改善する可能性も残されています。 以上、本記事が参考になれば幸いです。 No.S102 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下もご覧になりませんか 脳出血にならないために!予防と再発を防ぐための血圧管理方法は
最終更新日:2024.03.29 -
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脊柱管狭窄症とは?その症状と治療!ヘルニアとの違いとセルフチェックの方法 脊柱管狭窄症は、腰椎ヘルニアと並び、最も代表的な腰部の疾患の一つです。 神経への影響という部分では、ヘルニアと似ているところもありますが、原因や症状、治療法などが微妙に違ってきます。 今回は、脊柱管狭窄症の病態や自分でできるチェック方法、治療について解説します。 脊柱管狭窄症とは? 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、脊柱(背骨)で構成される脊柱管というトンネルが狭くなる疾患です。 脊柱管が狭くなる原因は、椎間板の突出と黄色靱帯の肥厚が面の原因となって、脊髄神経の前側と後ろ側を圧迫するのです。 その脊柱管の中には、脳と全身の器官を繋ぐ脊髄神経が通り、感覚や運動の指令を伝達するとても重要な役割を果たしています。 脊柱管狭窄症では、脊髄神経が通るトンネルが狭くなるため、脊髄神経は圧迫されてしまい、痛みやしびれ、力の入りづらさなど様々な症状で大きく悩まされる疾患です。 脊柱管狭窄症は部位によって分類される 脊柱は、7 個の頸椎と 12 個の胸椎、5 個の腰椎が連なって構成されます。 そのため、脊柱のどの部分で狭窄が起きているかで、呼び名が変わるのです。 ・頸椎で狭窄‥頸部脊柱管狭窄症 ・胸椎で狭窄‥胸部脊柱管狭窄症 ・腰椎で狭窄‥腰部脊柱管狭窄症 割合としては、腰部脊柱管狭窄症が 1 番多くみられるため、本記事でも腰部脊柱管狭窄症について述べていきます。 脊柱管狭窄症の症状 脊柱管狭窄症は、圧迫される場所によりタイプ分けされており、それぞれ症状が違います。 タイプは以下の2つに分けられます。 ①馬尾型 ②神経根型 また、この 2 つが組み合わさった混合型というのもあります。 ①馬尾型の症状 脊柱管狭窄症の 1 割程度でみられ、脊柱管の中心部に近いところで圧迫が起きます。 馬尾型では、両下肢のしびれやだるさ、膀胱直腸障害(排尿・排便障害)などがあり、症状が出現した場合は、すみやかに整形外科を受診するようにしましょう。 ②神経根型の症状 脊柱管狭窄症の 7 割が、神経根型といわれています。 多くは、片方の臀部や脚にかけてのしびれやピリピリする痛みがあります。 症状がなかなか落ち着かない場合は、整形外科に受診し、圧迫の程度や身体機能のチェックをおすすめします。 長時間(一定時間)の歩行で症状が増強する間欠性跛行 馬尾型、神経根型のいずれにおいても、長時間の歩行で痛みやしびれの増強がみられます。これが間欠性跛行です。 これは脊柱管狭窄症と診断された患者さんの大部分が訴える症状です。 いつもなら何事もなく歩ける距離が、急に辛くなった、休まないといけなくなった、などの症状が出たら、脊柱管狭窄症を疑いましょう。 この間欠性破行は前かがみ、つまり前屈によって症状は軽快します。自転車を乗ると全然痺れが出ないなどもこの背中の前屈によるものとされます。 もちろん、下肢の循環障害などでも同様の症状が出てくる可能性もあるので、専門機関でしっかり診断してもらうことが大切です。 出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html 脊柱管狭窄症の原因 脊柱管狭窄症は、脊髄神経が通る脊柱管が狭くなることで引き起こされる疾患です。 では、どうして狭くなってしまうのでしょうか? 脊柱管が狭窄を起こしてしまう原因は、以下の 3 つが考えられます。 ①加齢による骨や周囲の軟部組織の変化 人の体は20歳をピークに徐々に衰え始め、中高年の時期に急激に変化していきます。 脊柱でも同様のことが起こり、脊柱管狭窄につながる変化としては以下のものが挙げられます。 ・椎骨の変形(骨の形態が変わること) ・椎間板の変性・膨隆(椎間板の性質が変わること・椎間板が後方の脊柱管内に膨らむこと) ・脊柱周囲の靭帯の肥厚(主に黄色靭帯が厚くなること) 椎骨は脊柱の骨組みになるものであり、椎間板は背骨と背骨の間に入り込みクッションのような役割を果たし、靭帯は背骨を安定させるために働いてくれます。 これらの機能が落ちてくると、上記の 3 つのような変化が現れ、脊柱管を狭くし脊髄神経を圧迫、そしてしびれや痛み、脚の脱力感などの症状が出てしまうのです。 ②姿勢や動作習慣など日常的な体の使い方によるもの 加齢による背骨やその周りの組織の変化が起こると同時に、問題になるのが姿勢や動作習慣です。 脊柱管狭窄症の人は反り腰となっていることが多く、その原因は猫背姿勢や運動不足による体幹筋力の低下、股関節や上半身を上手に使えない誤った動作習慣が挙げられます。 腰を反らした姿勢では、脊柱管はより狭くなってしまい、症状が強く現れます。 反対に、腰を少し前かがみにすれば、脊柱管が広がり、痛みやしびれが軽くなります。 脊柱管狭窄症の人が、痛みがある時に腰を一時的に曲げる動作をとるのは、このような理由があるからです。 ③先天的な疾患によるもの 割合としては非常に少ないですが、先天的な骨の形態異常により脊柱管が狭くなってしまい発症する脊柱管狭窄症もあります。 脊柱管狭窄症は、中高年の年齢から発症することが圧倒的に多いですが、この先天的なものが原因となる脊柱管狭窄症では、発育途上の若い年代で起こることが多いです。 側弯症もその一つで、脊柱管が曲がって狭くなることで神経症状が出ることがあります。 脊柱管狭窄症とヘルニアの違い 脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアは、腰部の疾患に挙げられる代表的なものですが、その違いは以下です。 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間板ヘルニアは、脊椎と脊椎の間にあるクッションの役割をする椎間板が後方へ飛び出てしまい、神経を圧迫して症状が出ます。 よく発症する年齢は、50 歳代ですが、10 〜 20 歳代の若い男性に多くみられることがあります。 腰椎椎間板ヘルニアの場合、脊柱管狭窄症と違って、間欠性跛行の症状はありません。 脊柱管狭窄症 脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなり、そこを通る神経が圧迫され発症します。 主に椎間板と黄色靭帯による前後からの圧迫によって生じることが多く見られます。黄色靭帯の肥厚は若い人にはほとんどみられることはありません。 脊柱管狭窄症は、ヘルニアを伴うこともあり、完全に違う病気であるとは言い切れない部分もあるため、鑑別が難しいです。 好発年齢は 60 〜 70 歳代以降の人に多く、背骨の変形や姿勢の変化を伴うことが多いです。 脊柱管狭窄症のセルフチェック 脊柱管狭窄症は、特徴的な症状がいくつかあるため、セルフチェックができます。 下記の項目にチェックを付けて下さい 脊柱管狭窄症のチェックリスト ▢一定時間歩いていると脚に痛みやしびれが出てくる ▢立ったままの状態を長時間続けられない ▢足首や足の指を動かしづらい ▢陰部やお尻周りがしびれる ▢腰を反らすと痛い ▢腰を前に曲げると楽になる ▢尿漏れがある ▢身長が縮んだ ▢壁に踵・お尻・頭をつけた状態で立った時、腰と壁の間のスペースが大きい ▢下にある物を持ち上げる時、股関節や膝を曲げずに腰だけ曲げて持ち上げる いかがでしたか? ひとつでも当てはまるものがある方は、注意が必要です。 脊柱管狭窄症になっている可能性がある人や、今後脊柱管狭窄症になりやすい人は複数の項目でチェックが入るかもしれません。 特に下半身のしびれや長時間の歩行での痛み、尿漏れなどの症状が出ている人は、放置せずにできるだけ早めに専門の医療機関に相談しましょう。 https://www.youtube.com/watch?v=3yN5q8_ATpc 脊柱管狭窄症の治療 脊柱管狭窄症の治療法は様々あります。 【脊柱管狭窄症の治療方法】 ・神経からくる痛みに対しての内服 ・コルセットなどで腹圧を高めるためのサポートを行う ・体幹や肩周り、股関節周りの柔軟性を高めるストレッチ ・体幹や下半身の筋力トレーニング ・立っている時、座っている時の姿勢の改善 ・歩き方、動き方の改善 ・重症度の高い脊柱管狭窄症への手術療法 重度の脊柱管狭窄症の場合は、早急に神経の圧迫を取り除く必要があるため、手術療法が用いられます。 また、体にメスを入れない保存療法では、リハビリテーション、薬物療法、装具療法があります。 保存療法では、神経的な痛みに対する薬を処方し、まずは症状を抑えることが多いです。そして、症状の原因となる姿勢の改善や、誤った動作習慣を改善する目的でリハビリテーションを行います。 高齢になると、どうしても活動量が落ちてしまい、同一姿勢をとる時間が長くなります。そうすると、脊柱の柔軟性や体幹を保とうとする筋力が低下し、脊柱にかかる負荷が増えてしまうのです。 そんな悪循環を断ち切るために、気になる症状が出てきた時は、専門の整形外科へ相談しあなたにあった治療方法を探してみましょう。 まとめ・脊柱管狭窄症とは?その症状と治療!ヘルニアとの違いについて 今回は、脊柱管狭窄症の病態や、他の腰部疾患であるヘルニアとの違い、セルフチェック、治療方法について紹介しました。 中高齢の方に多い疾患ですが、その多くがそれ以前の姿勢や動作習慣が原因となって起こります。 今、症状が出ている人は、できるだけ早めに医療機関へ相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。 まだ症状が出ていない方、そして年齢的にもまだまだ若い方は、脊柱への過剰な負荷がかからないように、今のうちから姿勢や体の使い方を見直し、予防に努めましょう。 ▼脊柱管狭窄症でのお悩みは、再生医療という治療方法があります。手術や入院を避けることができる最新療法です。当院までお問い合わせ下さい。 No.S103 監修:医師 加藤 秀一
最終更新日:2024.08.30 -
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脳梗塞は、遺伝的要因があります。ただその他にも食事が関係します! 脳梗塞は日本でも死因上位の病気であり、脳梗塞のリスクとして食生活や遺伝が関係しています。 健康的な食事を摂ることは、高血圧 、糖尿病、高コレステロール (脂質) 、冠動脈疾患、肥満などの脳梗塞のリスクを減らすことがわかっています。 そこで今回は、脳梗塞の遺伝についてや、摂るべき食事や控えるべき食事など、食事方法について詳しく説明したいと思います。 脳梗塞は遺伝する!?「食事」が関係する理由 脳梗塞の発症には多因子の関与が知られており、この多因子は大きく後天的要因と遺伝的要因に分けられます。 それぞれ解説していきます。 脳梗塞の遺伝的要因 遺伝的要因としては年齢 、性別 、人種 、家族歴 、高血圧 、糖尿病 、高脂血症 、肥満 、過凝固状態(血液が固まりやすくなること)などの要素が挙げられます。 以下の3つに関してより詳しく解説していきましょう。 脳梗塞の遺伝的要因 ・年齢 ・性別 ・家族歴 脳梗塞はどの年齢でも発生する可能性がありますが、リスクは 1 歳未満の乳児と成人で高くなります。成人では、リスクは年齢とともに増加します。また、若い年齢では、男性は女性よりも脳梗塞を起こす可能性が高くなります。 しかし、女性は長生きする傾向があるため、脳梗塞になる生涯リスクは高くなります。また、経口避妊薬やホルモン補充療法を使用している女性や、妊娠中および出産後の数週間もリスクが高くなります。 脳梗塞の家族歴に関しては、親または他の家族が脳梗塞を発症したことがある場合、特に若い年齢で脳梗塞を発症するリスクが高くなります。 後天的要因とは?体質の遺伝は食事と関係する そして後天的要因として、食事などの生活習慣なども関与し、危険因子と呼ばれます。この後天的要因によって、脳梗塞が遺伝すると考えることもできます。 脳梗塞は稀ではありますが、遺伝に関係しているものはあります。ほとんどの場合は生活習慣、特に自宅で食べる際の食事の味付けに由来しています。 例えば塩辛い味が美味しいと感じる場合は、小さい頃から味付けが濃い食事を食べ続けたことが影響していると言えます。 つまり、脳梗塞の家族歴があると、食生活も家族と同じようなものになる傾向があるため、高血圧症になりやすい体質が遺伝する可能性が高く、同様に発症リスクが高くなるという考え方です。 脳梗塞と食生活との関係は? 脳梗塞後は、よく食べることが回復の鍵です。健康的な食品を選ぶことで、血圧や体重をコントロールし、脳梗塞を再発するリスクを減らし、治療やその他の日常活動の負担を軽減することができます。 その際、食べてはいけないものはあるのでしょうか?どのような食事を摂り、どのような食事を控えた方がいいのか解説していきます。 脳梗塞の時に摂るべき食事 基本的には脂肪分の少ない食事を心掛けましょう。 ・穀物や青魚 ・野菜(食物繊維): 栄養豊富な濃い緑色とオレンジ色の野菜など ・果物: 冷凍、またはドライフルーツ ・乳製品: 低脂肪または無脂肪の乳製品 ・タンパク質: 低脂肪または赤身の肉、鶏肉など 上記のような食事をバランスよく摂ると、発症リスクを抑えることが可能です。 脳梗塞の時に控えるべき食事 続いて控えるべき食事は以下です。 ・トランス脂肪酸 ・アルコール ・塩分加工食品 ・糖分の多い食品 トランス脂肪は、水素化と呼ばれるプロセスによって、不飽和植物油がより飽和したものに変わるときに形成され、高コレステロールと心血管疾患のリスク増加にも関連しています。 脂肪に関してはバターやマーガリン、またはラードからのものは極力制限しましょう。 脳梗塞の食事療法とは? 脳梗塞の時に摂るべき食事、控えるべき食事、さらに具体的にどのような工夫をすればいいか解説していきます。 ①毎食さまざまな色の野菜を取り入れる 果物や野菜に含まれる栄養素をバランスよく得るためには、毎食、さまざまな色の食品を選ぶことが重要です。 濃い赤、オレンジ、鮮やかな黄色、濃い緑、青、紫など、さまざまな色の果物、野菜、豆類を選択することで、さまざまな栄養素を確実に取り入れることができます。 ②飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールの摂取を制限する 脂肪やコレステロールは体の健康のために必要ですが、血中のコレステロールが多すぎると、脳梗塞や心臓病のリスクが高まる可能性があります。 飽和脂肪酸などは、肉、チーズ、卵黄、バター、アイスクリームなどの動物性食品、および一部の植物油 (パーム、ココナッツ) などに含まれています。 これらの食品から摂取する飽和脂肪、トランス脂肪酸、コレステロールの量を制限することが、脳梗塞予防の鍵となります。 ③食物繊維の多い食品を選ぶ 食物繊維はコレステロールと心血管疾患の全体的なリスクに関連しています。 食物繊維の摂取量は、コレステロール値や脳梗塞のリスクに影響するだけでなく、血糖値をコントロールし、胃や腸などの病気を予防し、体重管理に役立つなどの利点があります。 ④食事中のナトリウムを減らす ほとんどの人が、必要以上にナトリウムを摂取しています。ナトリウムを摂りすぎると、体液が貯留し、血圧が上昇する可能性があります。 塩分を減らす方法としては、食卓塩の代わりにハーブやスパイスを使用しましょう。塩味が控えめでも、風味が豊かになることで満足感を得ることができるのでおすすめです。 また、ナトリウムは食品の保存にも使用されるため、食品を加工すればするほど、ナトリウム含有量が高くなります。したがって、加工食品や缶詰食品を使用しないことも大切です。 ⑤健康的な体重を維持する 脳梗塞のリスクを減らすためのもう 1 つの重要な戦略は、健康的な体重を維持することです。 食事量に注意して、食物繊維が多く脂肪の少ない食品を食べる、活動を増やすことで、健康的な体重を達成することができます。減量は無理なく続けることが大切です。 きちんと計画を立てて、最初から現実的に達成可能な短期、又は長期の目標を設定して行うことが成功のポイントです。 ⑥糖分の摂取を減らす 糖分の過剰摂取は、高血圧、肥満、2 型糖尿病、脂質異常症と関連しており、これらはすべて脳梗塞の危険因子となっています。 砂糖の例としては、白砂糖、黒糖、蜂蜜、糖蜜、ゼリー、ジャム、加糖飲料などがあります。使用頻度を減らすか、使用する量を減らすことが推奨されています。 ⑦カリウムを十分にとる カリウムは果物、野菜、乳製品に豊富に含まれていますが、ほとんどの成人はカリウムを十分に摂取していません。 カリウムを摂るためには、バナナ、アプリコット、オレンジ、メロン、リンゴなどの果物がおすすめです。野菜には、じゃがいも、さつまいも、ほうれん草、ズッキーニ、トマトなどがあります。 適切な心機能を維持するためには、十分な食事性カリウムの摂取が必要不可欠です。 脳梗塞のリスクについて食事療法で気をつけるべきことは? では、食事療法の工夫の次に、注意点についても見ていきましょう。ただ単に食事内容に気をつけるだけではなく、以下のような注意点もあります。 ①肥満予防:食べる量に気をつける 満腹になるまで食べないことです。肥満を防ぐためにも常に8割くらいに抑えて、食事量を調整しましょう。 ②脱水症状予防:水分を一緒に摂る 水分不足にならないように、食事と共に必ずこまめに水分摂取してください。ただし、水分を摂るといっても、以下のような水分は推奨されません。 水分不足は、血流が滞り血栓ができやすくなる原因と言われています。水または麦茶など、カフェインの入っていない飲み物は利尿作用がなく、水分の排出が少なく済むのでおすすめです。 水分でも以下は推奨しない ・アルコール ・コーヒー、緑茶 ・甘いジュース ③誤嚥予防:嚥下障害に気をつける 脳梗塞の後遺症として、飲み込みづらさなどがあり、飲み込みづらい場合は、ベット上で頭を上げるなど工夫して食事療法を行います。誤嚥性肺炎などを引き起こす可能性もあるため、水分や固形物を飲ませる場合は、嚥下機能の評価を行ってからにしましょう。 まとめ・脳梗塞の遺伝的要因と後天的要因のリスク回避に食事療法を! いかがでしたでしょうか。脳梗塞は食事療法を行うことで、予防できることもあります。 今回の記事でご紹介した、摂るべき食品、控えるべき食品を考えた食生活をすることで、血圧や体重をコントロールし、脳梗塞を再発するリスクを減らし、治療やその他の日常活動の負担を軽減することができます。 より健康的な食事を摂るためにも、困った点があれば、栄養士に相談することも大切です。 今回の記事をご参考にしていただき、ぜひ改善に取り組んでみましょう。ご参考になれば幸いです。 No.S099 監修:医師 加藤 秀一 ※脳梗塞の後遺症でお悩みなら、再生医療という先端治療法があります。再生医療は、多くの症例数を有する当院までお問い合わせください。 ▼以下も合わせてご覧ください 脳梗塞患者の家族が、看護で注意すべきポイントとは
最終更新日:2024.03.22 -
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脊柱管狭窄症の手術|入院期間や費用、手術からリハビリまでの流れ 「脊柱管狭窄症の手術はどれくらい入院するの?」 「手術費用がいくらかかるか不安」 脊柱管狭窄症は足の痺れや痛みで歩けなくなる病気で、症状が悪化すると手術による治療が必要になります。 どのような手術やリハビリをするかはもちろんですが、入院期間や費用がどのくらいかかるかが気になる方も多いのではないでしょうか。 そこで、脊柱管狭窄症について、手術からリハビリまでの流れ、入院期間や必要な費用を詳しく解説します。 脊柱管狭窄症とは?原因とその症状 脊柱管狭窄症はさまざまな原因により、背中にある神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫することで症状を引き起こす状態です。 まずは脊柱管狭窄症についての理解を深めるために、原因や症状を紹介します。 脊柱管狭窄症の原因 多くの場合は、加齢により「脊柱の変形による神経の圧迫」が原因となります。 脊柱は小さな積み木のような骨が積み重なってできており、後方の脊柱管という空間に脳から伸びた神経(脊髄:せきずい)が通っています。また、脊髄から枝分かれした神経は脊柱の左右の隙間を通って、手足につながり感覚や運動を司っています。 脊柱の変形のため、これらの通り道が狭くなってしまうと、神経にダメージを与えてしまい、脊柱管狭窄症の症状につながるのです。 加齢による変形の他に、骨の代謝障害や生まれつきの変形によるものなどがあります。 脊柱管狭窄症の症状 お尻から脚全体にかけての痺れや痛み、脱力といった神経の症状が特徴です。 また、ある程度の距離を歩くと痛みや痺れなどが悪化して歩けなくなるものの、数分間休憩して前屈みの姿勢をとると再び歩けるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状がみられます。 症状が悪化すると排泄の障害や性機能が不全になるなどの膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)がみられます。 脊柱管狭窄症の治療方法について 脊柱管狭窄症の治療は、保存療法と手術療法があります。まず選択されるのは、手術をしない保存療法です。 脊柱管狭窄症の保存療法 保存療法は次のようなものがあります。 ・薬物療法 ・神経ブロック注射 ・運動療法 ・生活指導 薬物療法は、痛み止めや神経の働きを改善する薬を服用します。 神経ブロック注射は、傷害された神経に麻酔薬を注射して一時的に神経働きを麻痺させ痛みの軽減や神経症状の改善を目的とします。 また、運動や生活の工夫で腰部の負担を軽くして、症状の改善や悪化予防を図ります。 それでも回復しなかったり、症状が悪化したりする場合は、手術の適応となります。 脊柱管狭窄症の手術療法 脊柱管狭窄症の手術は大きく分けて「除圧術」と「除圧固定術」の 2 種類あります。 1 つ目は、神経を圧迫している背骨の一部を取り除いて、圧迫されている部分の除圧をする手術(除圧術)です。 もう 1 つは、除圧術をしたあとに、その部分を別の箇所の骨を移植して固定する手術(除圧固定術)です。 背骨が狭窄だけでなく、ずれがあったり変形が強かったりする場合、除圧術をすると背骨の関節が不安定になってしまいます。そのため、除圧に加えて固定をする必要があり、除圧固定術が適応となります。 最近では小型のカメラを使用して、わずかな傷で手術を行う内視鏡での手術が多くなっています。手術は全身麻酔で行われ、手術箇所や状態によりますが 1〜3 時間以内で終了することが多いです。 傷口が小さくて回復も早いため、従来の切開して行う手術に比べて入院期間が短くなっています。 脊柱管狭窄症の入院期間と費用 脊柱管狭窄症は状態に合わせて手術の方法が異なるため、入院期間や費用は手術内容に応じて変わってきます。 そこで、手術ごとの入院期間や費用の目安を紹介します。 入院期間の目安 内視鏡を使用した手術の場合、入院期間は 1 〜 2 週間程度です。 病院や状態によっては 1 週間以内で退院が可能になる場合もあります。 入院期間は除圧術の方が固定術に比べて短く、手術箇所が多いほど入院が長くなる傾向にあります。 また、脊柱管狭窄症にヘルニアなどの合併している場合も入院期間が長くなります。 費用の目安 費用は除圧術の場合、25 万円〜 40 万円程度になります。 除圧固定術は除圧術に比べて費用がかかり、 60 万円〜 85 万円程度になります。 術式や入院期間、リハビリの量などによって差が出ますので、手術を検討する病院でしっかり確認をしましょう。 脊柱管狭窄症の手術からリハビリまでの流れ 脊柱管狭窄症で内視鏡手術をした場合、早期からベッドを離れて、体を動かすことができます。 そこで、手術からリハビリまでの流れについて解説します。 手術の翌日からリハビリ開始 手術当日は安静にしますが、翌日からリハビリが始まります。 ベッドから起きたり、座ったりという動きを確認したあと、経過が良好であれば、コルセットを装着して歩くことも可能です。 コルセットは術後の背骨が安定するまで約 3 カ月間装着する必要があり、手術の翌日から正しい装着方法を習得することが重要です。 2日目以降は状態に応じて積極的なリハビリを実施 2 日目以降は歩行練習を含めて、活動的な生活を送るためのリハビリがしっかり行われます。 歩行が安定してくると、階段の昇降や屋外での歩行も開始して、退院が可能な状態まで回復を目指します。 中腰の作業や重い荷物を持つなどは腰に負担がかかるため、しばらくは行ってはいけません。 退院までに日常生活での注意点もしっかり理解を深めておくことが重要です。 退院後も必要に応じて外来でのリハビリを受けることがあります。 脊柱管狭窄症の手術内容やリハビリまでの流れを知って不安を減らそう 脊柱管狭窄症は症状が悪化して、手術を勧められても、手術の費用や入院期間やリハビリまでの流れを知らないと不安になるのも仕方ありません。 紹介した情報を知ることで、少しでも不安を減らしていただければ幸いです。 脊柱管狭窄症により神経症状が悪化すると、日常生活を送るのに支障をきたします。手術が必要になる前に、早めに整形外科を受診し、症状の悪化を防ぎましょう。 ▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。術後後遺症でお困りでしたら当院にご相談ください。 https://youtu.be/3yN5q8_ATpc No.102 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2024.08.30 -
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脳梗塞の後遺症を改善するリハビリの方法と期間の目安とは 脳梗塞の後遺症で次のような悩みを抱えている方はいませんか? 「脳梗塞の後遺症を改善する方法について知りたい。」 「脳梗塞のリハビリについて具体的な方法を知りたい。」 脳梗塞を発症後、適切な治療を受けても後遺症が残ることがほとんどです。脳梗塞の後遺症を改善し、元の日常生活に戻るためにも、長期間のリハビリが欠かせません。 そこで今回は、脳梗塞の後遺症や改善する方法、脳梗塞のリハビリについて具体的に説明いたしますので、ぜひ参考にしてください。 脳梗塞の後遺症を改善するために! 脳梗塞には、さまざまな後遺症や合併症があり、治療後、回復の仕方もさまざまです。 脳梗塞の改善に向けたリハビリは、自立生活に必要な身体の状態や動作などなを取り戻し、生活の質を向上させるのに役立ちます。脳梗塞の影響を受けた脳の部分に応じて、さまざまなリハビリを行わねばなりません。 脳梗塞の後遺症の改善には、多くの専門家が関わります 以下のように脳梗塞の後遺症を改善させるためにはリハビリを含めて医療機関のさまざまな職種の専門家が関与します。 医師や看護師 かかりつけの医師は、神経科医や理学療法とリハビリテーションの専門家と同様に、あなたのケアを指導し、合併症の予防に役立ちます。 理学療法士 ウォーキングやバランスの維持などの動きを再学習するのに役立ちます。 作業療法士 着替え、入浴、家事のスキルなどのより自立した活動的な生活を送るのをリハビリを通して助けます。 改善に向けてさらに感情的、社会的なリハビリに焦点を当てた専門職もあります。 ソーシャルワーカー ソーシャルワーカーは、医療、福祉、介護などにおいて、相談員として支援を行い、日常生活を送る上で、困り事や問題を抱えている方に対して援助や支援の調整を行います。 心理学者 これらの専門家は、あなたの思考スキルを評価し、あなたの精神的および感情的な精神衛生上の懸念に対処するのに役立ちます。 脳梗塞の改善結果に影響を与える要因は? 脳梗塞の改善には個人差があります。 どれほどの能力を多く改善させられるか、また期間的にどれくらい早く改善できるかを予測するのは困難です。一般的に、脳梗塞の改善に向けたリハビリの成功には次のような要素に依存します。 身体的要因 脳梗塞の重症度など 感情的要因 モチベーションや気分など 社会的要因 友人や家族のサポートなど 治療上の要因 リハビリの早期開始や有無やリハビリチームのスキルなど 改善率は一般に、脳梗塞後の数週間から数ヶ月で最も大きくなります。脳梗塞後の改善に向けたリハビリは、長期間にわたって必要であり、途中で挫折してしまうことにないよう、改善に向けたリハビリで最大の効果を得るためには長時間かかることを理解しておくべきです。 脳梗塞後のリハビリ、具体的な方法と期間の目安 脳梗塞を改善させるために行うリハビリは計画的に行わねばなりません。その方法は、脳梗塞の影響を受けた体の部位や能力の種類によって異なり、主に以下の3つの時期に分けられます。 ①急性期のリハビリ ②回復期のリハビリ ③維持期のリハビリ ①急性期のリハビリ : 脳梗塞発症後〜 48 時間以内 ・急性期のリハビリとしては、運動機能の改善などが含まれます。 運動機能の回復訓練 全身の筋力と協調運動を改善するのに役立ちます。これらには、バランス、歩行、さらには飲み込むために使用される筋肉が含まれます。 歩行器、杖、車椅子、足首装具などの移動補助具の使い方を学んだり、ベッドから立つ、座るなどの離床訓練も必要です。 関節の可動域訓練 特定の運動や治療は、筋肉の緊張(痙縮)を緩和し、可動域を取り戻すのに役立ちます。看護師や理学療法士が行う他動的運動と自分で動かす自動運動に分けられます。 ②回復期のリハビリ : 3〜6 ヶ月 ・回復期では、日常生活に戻ることを目的とし、主に以下のようなリハビリを行います。 機能的電気刺激 弱った筋肉に電気を流して収縮させることで、筋肉に運動の仕方を再学習させることができます。 ロボット訓練 ロボット装置は、障害のある手足が反復運動を行うのを支援し、手足の強さと機能を回復するのを助けます。 言語機能訓練 失語症などの後遺症が残ったら、読み書きや言葉の言語機能の訓練を行います。 作業療法 作業療法と言語療法は、記憶、処理、問題解決、社会的スキル、判断力、安全意識などの認知能力の喪失を手助けすることができます。 心理的評価と治療 脳梗塞後の後遺症として心理的なケアも大切です。カウンセリングを受けたり、支援グループに参加したりすることもできます。 ③維持期のリハビリ : 回復期以降 ・維持期では退院後に主に日常生活を取り戻すためにストレッチなどの軽めの運動から始めます。 退院前に、患者さんとその家族は、病院のソーシャルワーカーやケアチームと協力して、最適なリハビリ環境を決定する必要があります。 ここで考慮すべき要因には、適用される保険、患者さんとその家族にとって何が最も便利かなどがあります。 病院の外来 病院または診療所の外来に通います。 専門的な介護施設 介護施設で受けられるケアの種類はさまざまです。 自宅でのリハビリ 自宅でリハビリを行うことで、柔軟性が高くなります。ただし、専門のリハビリ機器を利用できない可能性があります。また、在宅プログラムの保険適用範囲は大きく異なります。 最良の選択肢について、医師や家族としっかりと話し合うことが大切です。 脳梗塞の後遺症を改善するため、リハビリで気をつけるべきポイントとは? 脳梗塞の後遺症を改善するためにリハビリが有効ですが、気をつけるべきポイントについてみておきましょう。 残された能力も同時に鍛えながらリハビリを行うこと 失われた機能を取り戻すことに執着しがちですが、健常な機能を維持することも大切です。 例えば、片麻痺で健常な方を鍛えることで、後遺症を残した部位のサポートを行うことが可能です。バランスよくリハビリを行うことを心がけましょう。 リハビリは無理をせずじっくり行うこと リハビリはすぐに効果が出るわけではないため、焦らないことが大切です。 また、痛みが出たら、リハビリは中止しましょう。無理にリハビリを行うと逆効果になってしまいます。 脳梗塞の後遺症を改善するリハビリ、よくあるQ&A 最後に、よくある質問について Q & A でまとめましたので、参考にしてください。 Q ,脳梗塞のリハビリはいつから始めるべき? A ,一般的には、脳梗塞のリハビリを開始するのが早ければ早いほど、失われた能力やスキルを取り戻せる可能性が高くなります。 脳梗塞のリハビリは、脳梗塞発症後 24 時間から 48 時間以内の入院中に開始するのが一般的です。 Q ,脳梗塞のリハビリはどのくらい続けますか? A ,脳梗塞リハビリが必要な期間は、脳梗塞の重症度と関連する合併症によって異なります。ほとんどの場合、長期間にわたるリハビリが必要であり、数か月または数年続く可能性があります。 まとめ・脳梗塞の後遺症を改善するリハビリの方法と期間の目安が知りたい いかがでしたでしょうか。 脳梗塞の後遺症は、適切な治療とリハビリを行って改善を目指すことができます。その為には、退院後の日常生活でも継続的なケアが必要になってまいります。 今回の記事では、実際のリハビリの方法や気をつけるべき点について解説してきました。脳梗塞から早く仕事復帰するためには、入院期間中早い段階からのリハビリを適切に行うことが不可欠です。 今回の記事で、改めてリハビリについて理解を深めて頂き、活用してみてください。 No.S101 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下も参考にされませんか 20代、30代の若年性脳梗塞について|要注意「まだ若いから」と油断は禁物!
最終更新日:2024.03.22 -
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側弯症の手術で後悔しない為に、そのメリットとデメリット 小学生の時に学校検診で前屈の動きをした覚えはありませんか? あの動き、実は側弯症を見極めるテストの一つなんです。なぜ成長期の時期に側弯症の健診があるのでしょうか? 本記事ではそんな疑問にお応えすべく、放っておくと実は怖い側弯症について、様々な治療法をメリット・デメリットとともにご紹介していきます。 側弯症とは 側弯症とは、背骨(脊柱)が前から見た時に曲がっている(捻れている)状態のことを言います。側弯の程度は個人差が大きく、背骨の曲がり方の指標である『コブ角』の測定が重要となります。 側弯症により痛みを伴うことは少ないですが、見た目の問題で心理的ストレスを感じたり、高度の側弯で肺活量の低下などの呼吸機能障害が起こったりすることもあります。 背骨(脊柱)の役割 通常、背骨は前から見ると真っ直ぐになっており、横から見るとS字のカーブを描いています。この形状により、重い頭部を効率よく支えることができ、重力による背骨への負荷を減らすことができるのです。 側弯症の指標であるコブ角とは? 側弯症の説明で必ずと言っていいほど出てくる指標がコブ角です。これは、背骨の横方向への曲がり方を表す角度になります。 角度を測る際に用いられるのが、レントゲン画像です。背骨(椎体)の上下で最も曲がりの強い椎体から線を引き、その2つの線が重なってできた角度がコブ角になります。 出典:脊椎手術.com (https://www.sekitsui.com/specialist/sp014-html/) コブ角が大きければ大きいほど側弯が強い、という判断になります。コブ角の程度により治療方法の選択が変わりますので頭に入れておきましょう。 側弯症の種類と原因 側弯症は、大きく2つの種類に分類されます。 種類 ・機能性側弯症 ・構築性側弯症 以下で詳しく解説していきます。 機能性側弯症とは 機能性側弯症とは、日常の姿勢や、仕事動作の反復、腰痛などによる逃避的な姿勢など、左右非対称に偏った姿勢を高頻度にとる人に多くみられる側弯症です。 機能性側弯症の場合、コブ角も小さいことが多く、根本となる姿勢の問題を改善することで解消できます。 構築性側弯症とは 構築性側弯症は、その中でもいくつか分かれており、側弯の程度も人により様々です。後述する装具療法や手術療法の適応となるのは、ほとんどがこの構築性側弯症になります。 構築性側弯症は以下の側弯症に分けられます。 構築性側弯症 ①特発性側弯症 ②原因疾患があり、二次的に発症する側弯症 それぞれ解説していきます。 ①特発性側弯症 特発性側弯症は原因不明の側弯症であり、構築性側弯症の大部分を占めます。 発症する時期により、 ・乳児期側弯症・・・3歳以下で発症 ・学童期側弯症・・・4〜9歳で発症 ・思春期側弯症・・・10歳以上で発症 このように分類されます。特に日本では思春期側弯症が多くみられます。 乳児期側弯症は 3 歳以下の男児に、思春期側弯症は 10 歳以上の女子に多いです。 学校検診で発見されることも多く、コブ角が少ない初期の段階では見逃されることも多いのですが、少しでも左右差があれば専門の整形外科への受診を勧められます。 進行のスピードには個人差があるため、1回のみでなく、定期的な受診により変形の程度を確認しましょう。治療の内容については後で述べますが、早ければ早いほど治療効果も高まります。 もし継続的な診察が必要だと言われたら、医師の指示に従い、そのまま放置しないよう注意してください。 ②原因疾患がある側弯症 もともと原因となる疾患がもとになって側弯症が引き起こされるものもあります。 それが以下になります。 ・先天性側弯症・・・背骨の一部である椎骨の先天的な変形によって起こる側弯症 ・症候性側弯症・・・筋ジストロフィーや脳性麻痺、レックリングハウゼン病、マルファン症候群、やけど、脊椎の腫瘍などに続発して起こる側弯症 挙げればキリがないほど、多くの原因疾患があります。 しかし、必ずしも側弯になるわけではありませんし、側弯の程度も個人差があるため、専門の医療機関でしっかりみてもらうことが必須となります。 構築性側弯症の治療方法 側弯症の治療方法はいくつかありますが、今回は構築性側弯症に絞ってご紹介します。 コブ角により推奨される治療方法が変わる 側弯症の程度を測る指標として最も用いられているものに、コブ角があります。 コブ角〜25°: 見た目にも分かりにくい状態。多くは経過観察。 コブ角25°〜40°: 見た目にも変形が分かるようになる。進行の防止および変形の矯正のために装具療法が用いられることが多い。 コブ角40°〜: 高度の側弯が見られる状態。場合によっては神経症状や呼吸機能の低下がみられる。手術療法により側弯を矯正する方法が推奨される。 出典:日本側弯症学会(https://www.sokuwan.jp/patient/disease/index.html) このコブ角の大きさにより、推奨される治療方法が変わります。 側弯症の治療方法①装具療法 装具療法では、進行しやすい成長期の段階で装着することが多いです。 側弯が進行しないようにすることが一番の目的であり、装具をしたからといって側弯した背骨が戻るわけではありません。骨の成長が終了するまで装具を装着し、できるだけ側弯の進行を抑える目的で処方されます。 基本的には装着時間が長ければ長いほど効果が高いと言われており、“お風呂以外の時間は装着”や、“家にいる時間は装着”、“24時間できるだけ装着”などと医療機関により多少ばらつきがあります。 しかし、装着時の違和感が強く、許可された時間以外でも外してしまうケースも多いです。 アンダーアーム装具(出典:日本側弯症学会 https://www.sokuwan.jp) 海外の権威ある研究においても16時間以上の装具装着により進行を抑えられたという報告もあることから、装着時間を守ることをオススメします。 側弯症の治療方法②手術療法 高度の側弯症に対しての唯一有効な治療法が手術療法です。 コブ角が50°を超えてしまうと、骨が成熟した後でも変形が進行する可能性があります。 変形が進行する=合併症の危険性が上がる、ということです 【高度な側弯症の手術】 ・変形が進行するリスクがある ・変形による他の合併症の恐れがある ・保存的治療(装具療法やリハビリ)では限界がある そこで、変形を矯正するための方法が手術になります。 現在は、手術技術や機器の向上により治療成績が格段に上がっているため、手術を推奨するケースが多いです。 側弯症の術前(左)と術後(右)(出典:日本側弯症学会 https://www.sokuwan.jp/) 上の写真を見れば、手術前と後での違いが一目瞭然ですよね。 側弯症の手術のメリット・デメリット いざ手術となると不安もでてきます。まず考えるのは、手術を受ける際のリスクだと思います。 「手術による後遺症はないのか?」「手術をしてもあんまり変わらないんじゃないの?」「手術で失敗したら怖い・・・」 このように考えてしまうのも無理はありません。そこで、手術をする、しないの選択に後悔しないように、手術によるメリットとデメリットについてお話します。 側弯症手術のメリット 側弯症の一番大きなメリットは、側弯の度合いを軽減させることができる、という点です。それにより、見た目が変わり心理的ストレスが改善されます。 また、側弯による呼吸器をはじめとした他の合併症のリスクを減らすことができます。基本的に現在の治療技術では、手術後でもほとんど前と同じような日常生活が送れます。 【側弯症手術のメリット】 ・側弯の矯正ができる ・側弯の程度の減少により心理的ストレスが改善できる ・側弯の程度の減少により呼吸器疾患などの合併症のリスクを減らすことができる ・手術後でも前と同じような日常生活を送ることができる そのため、以前に比べ手術を推奨する例が多くなっています。 側弯症手術のデメリット 側弯症に限らず、手術をする際には多少のリスクが伴います。また、手術後の過ごし方によって様々な問題を引き起こすこともあるのです。 まず頭に入れておいてほしいことは、手術後すぐには元の生活には戻れない、ということです。 手術後に最も重要なのは、処置した箇所の骨癒合(骨がくっつくこと)になります。骨癒合のためには、ある程度の安静が必要です。 背骨を過度に反らす、曲げる、捻る動きをとってしまうことで、金属挿入部が緩んでしまうことがあります。そうなると、再手術が必要となってしまうことがありますので、注意が必要です。 手術をするにあたり、神経に近いところにメスを入れます。どの手術でも言えることですが、小さい神経などを傷つけてしまうこともあります。 それにより麻痺や感覚異常などの神経障害が出てくる可能性もゼロではありません。 さらに、背骨の周囲には様々な臓器が隣接しています。そのため、呼吸器や循環器、泌尿器などの合併症を引き起こす可能性もあるのです。 また、手術後の創部管理が行き届いていないと、免疫が低下してしまうなどの理由で感染症を起こすことも考えられます。 【側弯症手術のデメリット】 ・手術後早期は術部に負荷のかからないような生活が必要 ・手術後は、ラグビーや柔道、バレーボールなどの激しくぶつかり合ったり、脊柱の大きな動きを伴うようなスポーツができない ・手術の侵襲により神経障害を引き起こすことがある ・手術の侵襲により他臓器の合併症を引き起こす可能性がある ・手術後の感染のリスクがある 手術にはこれらの危険性をはらんでいることを頭に入れて、後悔しないような選択をしましょう。 まとめ・側弯症の手術で後悔しない為に、そのメリットとデメリット 今回は、側弯症の病態からその治療方法、そして手術療法を行う上でのメリット、デメリットについてお話しました。 側弯症は専門性が求められる疾患であり、初期の状態では見過ごされることも多い疾患です。気になる症状があったり、治療方法で悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひ専門家へ相談することをオススメします。 手術療法についてはデメリットも多く感じるかもしれませんが、昔と比べると格段と治療成績が良くなっています。 治療をより効果的なものにするためには、術後の過ごし方や変形を助長させないような対処が必要になります。 病態の理解、経過観察、治療の選択などが重要なポイントとなりますので、1人で悩まず専門家や家族と相談しながら側弯症と付き合っていきましょう。 ご参考になれば幸いです。 No.100 監修:医師 坂本貞範 ▼以下も参考にしていただけます 側弯症の改善!ストレッチとエクササイズについて
最終更新日:2024.08.27 -
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【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 「脳出血後のケアはどうしたらいい?」 「脳出血後の看護ケアと介護ケアについて知りたい。」 脳出血後は、患者とその家族の両方にとって突然人生が変わりかねず、どうすれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか? 脳出血後の患者はほとんどの場合、複数の薬や治療が必要になるため、リハビリの道のりは非常に長く、困難になる可能性が高くなります。 何よりも、脳出血後の患者の精神的、社会的な負担も計り知れません。元通りの生活に戻るには、看護師、介護士、友人、家族からのサポートが何よりも必要です。 そこで、今回の記事では、脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイントについて含めて説明します。 脳出血後は後遺症が残る 脳出血とは、高血圧などによる動脈硬化症による血管の破裂により、脳の実質内に血液が流出する状態です。脳出血は死亡率が高く、最も致命的な病気の 1 つになっています。 脳出血後は、多くの合併症に苦しむ可能性があり、主に以下のような後遺症を残します。 ・運動麻痺 右上下肢や左上下肢が動かなくなり、歩行困難になることもある ・感覚障害 触覚や痛覚などの感覚が鈍くなったり、逆に過敏になる ・視覚障害 視野が狭くなったり、物が二重に見えたりする ・失語症 言葉の理解が悪くなったり、単語が出づらくなる ・構音障害 ろれつが回りにくくなる ・半側空間無視 片側の空間認識ができなくなる ・嚥下障害 食べ物が飲み込みにくくなる これらは患者とその家族の両方に著しく影響を与える可能性があります。 脳出血後の看護ケアについて では、実際の看護ケアについて考えていきましょう。観察項目について説明していきます。 観察項目とは、治療の効果、患者への適応を判断するために行います。 看護ケアにおける7つの観察項目 看護ケアではどのような項目について観察するべきなのか解説していきます。 脳出血後の入院中は、特に意識レベル、血圧の管理などを厳密に管理します。 ①意識状態 Glasgow Coma Scale (GCS) やJCSを通じて意識状態を評価し、新たな神経学的徴候の出現を確認します。 ②呼吸 入院中の呼吸管理としては、患者の頭をわずかに上げた位置に保ち、酸素飽和度(SpO2)を監視します。 呼吸抑制がある場合、カニューレを装着したり、マスクを用いて酸素を投与するなどして、呼吸を補助します。 ③血圧と心拍数 血圧と心拍数を頻繁に検出しましょう。特に血圧のコントロールは、血管痙攣による虚血性の合併症を避けるために必要です。収縮期血圧140mmHg未満を目指しましょう。 ④電解質バランスの変化(輸液管理) 輸液などで毎日の電解質のバランスを保ち、時間ごとの利尿を監視し、多尿または乏尿があれば、必要に応じて輸液量を調整します。 ⑤口腔内衛生や姿勢、褥瘡管理 1日に数回、口腔内を丁寧に掃除してください。 褥瘡管理は頻繁に体位変換を行う必要があり、片麻痺側の持続時間は健康な側の持続時間よりも短くする必要があります。床ずれ対策(エアマット、枕)を行いましょう。 また、姿勢管理では麻痺した手足に特に注意を払い、正しい姿勢をとります。 ⑥嘔吐、吐物管理 脳出血後は、予期せぬ嘔吐が出現しやすくなります。 嘔吐の場合は、気道が確保できているか確認し、誤嚥による肺炎の発生を回避する必要があります。 ・側臥位にする ・口の中の異物を吐き出させ、分泌物を吸引する 素早い判断で適切な対処を行うことが、とても重要です。 ⑦発作や薬の管理 発作時には、医師の指示に従って、抗けいれん薬を投与し、定期的に気道の状態を評価します。 また、血管内治療を受けた患者は、再出血を防ぐ薬を継続する必要があり、看護師は薬を飲めているか確認します。 脳出血後の介護で家族が知っておくべきこと では、続いて脳出血後に家族が自宅などで気をつける介護ケアについて解説していきます。 入院中は看護師やその他多くの専門職によってリハビリなどが行われますが、退院後は、家族が中心になってケアを行なっていく必要があります。 ほとんどの患者は、初期治療とリハビリ後に自宅で介護を受けることを選択します。 ①要介護認定は早めに受けるべき 脳出血などは特定疾病ですので、40歳以上であれば要介護認定を受けられます。 在宅介護の場合は、訪問介護や訪問入浴介護、自宅のバリアフリー化、福祉用具レンタル・購入などの在宅介護サービスを受けることができます。 ②在宅介護サービスを活用する 在宅介護サービスは、脳出血後の症状が残っており、比較的状態が安定している患者に推奨されるケアサービスです。 内容としては毎月の医師の診察、継続的なモニタリング、24 時間対応の電話応対などが含まれています。 在宅介護には、以下のようなメリットがあります。 ・長年住み慣れた自宅で生活できる ・経済的負担が少ない ・家族と一緒にいられるので安心感が生まれる ぜひ、このようなケアサービスも活用しましょう。 ③住宅改修で自宅の環境整備を行う 在宅介護を行う際は、補助器具と環境整備も行う必要があります。 患者が障害を抱えながら生活できるように、補助器具の使用や家庭環境の改善に取り組みます。 ④施設介護サービスも検討できる 自宅介護の他にも、施設サービスも検討しましょう。 自宅での介護が難しい場合は、日帰りでリハビリや介護などのケアを受けられるデイサービスやデイケアがあります。 在宅介護に比べて以下のようなメリットがあります。 ・専門性や高い介護ケアが受けられる ・介護をする家族の時間や精神的苦痛が少ない 家族の介護とはいえ、仕事との兼ね合いや子育て中であれば、精神的にも肉体的にも大変なことがあるかと思います。そんな時は、安心してお任せできる、施設の利用を検討するのもひとつかもしれません。 脳出血後の看護、介護に関するよくあるQ&A 最後によくある質問についてもまとめましたので、参考にしてください。 Q,要介護認定の相談は誰にすればいいですか? A,退院後の相談としては、医療ソーシャルワーカーなどに相談できます。 Q,要介護認定の方法は? A,要介護認定の申請方法としては、申請書の他に介護保険被保険者証や身分証明書などを準備して、役所の介護保険の担当課へ行きます。 申請手続きを済ませると、後日担当者が聞き取りによる認定調査に来ます。 まとめ・【脳出血後の看護と介護】脳出血後の看護ケアや介護ケア、家族が注意すべきポイント 脳出血後の入院中の看護や退院後の介護ケアは、患者さんがもとの日常生活に早く戻るためにもとても大切です。 退院後の介護ケアでは家族のサポートが不可欠なので、自分だけで抱え込まず、家族間でよく話し合う必要があります。時に、在宅介護と施設介護を上手く取り入れ、併用していくことも検討してみましょう。 今回の記事が看護や介護に向き合われる皆さまのご参考になれば幸いです。 No.101 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.06.30 -
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鎖骨骨折の症状?見た目の特徴、治療法と後遺症を解説します 以下のような症状がある場合、もしかすると鎖骨を骨折しているかもしれません。 ・事故のあと鎖骨が盛り上がっている気がする ・転んだあと鎖骨が痛む 骨折を放置すると、症状が悪化するばかりか、骨折が本来とは違った形、ずれた状態で”くっついて”しまう可能性もあります。 今回は鎖骨骨折について、骨折時の見た目の特徴や症状、治療法、後遺症について詳しく解説します。 鎖骨骨折の症状は?見た目でわかる?! 鎖骨骨折は全ての骨折のうち約10%を占める比較的頻度の多い骨折です。 交通事故やスポーツなどで腕を後ろにそらしたり、肩を下にしたりして転ぶと、地面についた衝撃が鎖骨に伝わって骨折してしまいます。 また、鎖骨に直接強い衝撃が加わって骨折する場合もあります。体の表面にあり確認しやすい骨なので、外見にもわかりやすい症状がみられる骨折です。 どのような症状があるのか、具体的に紹介します。 見た目の特徴:皮膚が盛り上がる 鎖骨はS字にカーブした長細い骨で、筋肉など厚みのある組織に覆われていないため、骨折時の見た目で分かることも少なくありません。 鎖骨は、中央1/3の部分で骨折することが多く、鎖骨の外側は腕の重さなどの影響で下にずれやすく、内側は首の筋肉の力で上にずれやすいという特徴があります。 そのため、骨折により骨がずれてしまうと、鎖骨の内側の部分が飛び出し、皮膚が上に盛り上がったような見た目になるのが特徴です。 また鎖骨が浮き上がらないように支えている烏口鎖骨靭帯(うこうさこつじんたい)が損傷した場合も鎖骨をおさえる機能が低下して、鎖骨が浮き上がりやすくなります。 骨がずれて重なってしまうことで、折れた方の肩幅が狭くなったように見える場合もあります。 鎖骨や肩の痛み 鎖骨は胸の中央にある骨(胸骨)や肩甲骨と合わせて関節を作っています。 肩甲骨は腕を上げたりおろしたりといった運動に関わり、肩甲骨と鎖骨でできる関節(肩鎖関節:けんさかんせつ)も、腕の運動に重要な役割を持っています。 そのため、鎖骨の骨折をすると肩を動かす場合に鎖骨に負担がかかり、痛みが生じることがあります。 肩の動きが制限される 前述のように鎖骨は肩の動きと関係するため、鎖骨を骨折すると腕を上げにくかったり、広げにくかったりといった制限がみられます。 腫れやアザができる 骨折による炎症症状で患部が腫れたり熱をもったりします。また、骨折による出血のため、アザがみられることがあります。 血流の障害や痺れ さらに、鎖骨は首の近くにある血管や神経を守る役割も担っています。 事故などで鎖骨に強い衝撃が加わったときに、周辺にある血管や神経も一緒に損傷される場合があります。その場合、血の流れが悪くなる血行障害や神経損傷による手の痺れや痛みといった症状がみられます。 鎖骨骨折の治療法 治療は手術をしない保存療法が基本ですが、骨が大きくずれてしまっている場合は手術を選択することがあります。 それぞれの治療方法について解説します。 手術しない保存療法 第一に選択されるのが、三角巾や鎖骨バンド(クラビクルバンド)と呼ばれる装具をつけて、骨折部が動かないように固定する治療です。 胸を張り、両肩を強く後ろに引いた状態で固定することで、鎖骨の変形を矯正して、骨を正しい位置でくっつけることになります。 入浴時以外はバンドをつけて生活して、入浴の際は骨折している方の手で体を支えない、90°以上の高さに腕を上げないという注意点があります。 固定の期間は4〜6週間が目安ですが、年齢が若いほど骨がくっつくのが早いため、固定期間が短くなりやすいです。 固定により腕を上げる制限がみられた場合は、リハビリで改善を図る場合があります。 骨のずれがひどい場合は手術療法 骨のずれが大きい場合や骨が砕けてしまうような骨折の場合は、手術が選択されます。 また仕事の都合できるだけ早く社会復帰を希望して、手術を選ぶ場合も少なくありません。手術療法だと、手術した後すぐにリハビリで腕を動かすことができるので、動作が改善しやすいというメットがあります。 手術は針金のようなワイヤーを鎖骨に通したり、プレートで支えたりして体の内側から鎖骨を固定します。 入院期間は手術の方法により異なり、必要に応じてリハビリを行います。 鎖骨骨折の後遺症 骨折した部分のずれがひどいと、元の位置に戻そうとしても十分な位置に戻らず、ずれたまま変形して骨がくっつく(変形治癒)という後遺症の可能性があるため、注意が必要です。 また、鎖骨の外側は平らな形をしており、折れた場合にくっつきにくいという特徴があります。くっつかずにそのままにしておくと、そこが別々の骨に分離した状態になり、まるで関節ができたようになります(偽関節:ぎかんせつ)。 いずれにしても、このような後遺症があると、痛みが出たり、肩の動きが制限されたりします。そのため、後遺症ができるだけ残らないように、状態に応じた適切な治療の選択が重要になるのです。 まとめ・鎖骨骨折の症状?見た目の特徴、治療法や後遺症について 鎖骨骨折は、外見の特徴もあり痛みも強くなりやすいため、症状がわかりやすい骨折です。外傷によって起こり、症状や治療法、後遺症について理解して治療を進めましょう。 症状と外見 ・骨折による皮膚の盛り上がりや、骨が浮き上が見られます。 ・肩や鎖骨周辺に対する痛みや腫れ、アザなどが見られます。 ・構造上、肩の動きが制限されることがあります。 ・手の痺れや痛みが生じることもあります。 治療法について ・保存療法としては、三角巾や鎖骨バンドで固定し、骨を正しい位置に保ちます。 ・骨のずれが大きい場合や、骨が砕けている場合は手術が必要です。 ・手術後は早期のリハビリが大切になります。 後遺症 ・骨折を治さないままにすると「変形治癒」や、「偽関節」が生じる可能性があります。 ・後遺症によって痛みや肩の動きの制限が生じます 鎖骨骨折は早期の診断と適切な治療が重要であり、後遺症を最小限に抑えるためには専門医の指導に従って適切な治療を行うことが必要です。 そのため、紹介したような症状がみられた場合は、できるだけ早めに整形外科を受診しましょう。治療をせず放置すると、変形治癒や偽関節になったりといった後遺症が生じる危険性があります。 早めの受診で、適切な診断や正しい治療を受けて、後遺症を防ぐようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.099 監修:医師 坂本貞範 ▼鎖骨骨折について以下もご覧になりませんか 鎖骨骨折とは?!症状と手術の場合、入院期間とリハビリについて
最終更新日:2024.04.24 -
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くも膜下出血後の生活|手術と入院期間、治療後のリハビリを詳しく解説 「くも膜下出血の手術や入院について詳しく知りたい」 「くも膜下出血の後の生活はどのように送ればいい?」 このような悩みを抱えている方はいませんか? くも膜下出血は生活習慣病などが原因となり、突然発症する怖い病気です。大切なご家族が突然くも膜下出血になる可能性もゼロではありません。 具体的にどんな治療方法があり、入院期間はどのくらいなのか、治療後のリハビリの方法など気になる方もいることでしょう。 そこで今回は、くも膜下出血後の生活についてリハビリの方法を詳しく解説していきます。 くも膜下出血とは? くも膜下出血は、動脈瘤の破裂または頭部外傷などによって、くも膜と脳を取り囲む軟膜との間の、くも膜下腔と呼ばれる部位に出血が起こることで発症します。 発症すると重い頭痛を訴えますが、今までにないような頭痛を訴えて救急外来を受診した患者のうち、最終的にくも膜下出血を発症するのはわずか 10 %程度です。 関連する症状には、首の痛み、吐き気や嘔吐、羞明-しゅうめい-(異常に眩しさを感じること)などがあります。 くも膜下出血の手術について くも膜下出血の治療の一つとして手術を選択する場合があり、影響を受けた血管を修復し、動脈瘤が再び破裂するのを防ぐための手術を行います。 主に、「開頭クリッピング術」と「コイル塞栓術」と呼ばれる 2 種類の手術があります。 クリッピングとコイルのどちらを使用するかは、動脈瘤の大きさ、位置、形状などによって異なります。 コイルは、クリッピングよりも発作などの短期的な合併症のリスクが低いため、しばしば好まれる手術ですが、クリッピングよりも長期的な利点があるかは不明です。 ①血管内治療 : コイル塞栓術 血管内治療では、カテーテルと呼ばれる細い管を足や鼠径部の動脈に挿入し、血管を通って脳の動脈瘤に導きます。 次に、小さなプラチナコイルをチューブに通して動脈瘤に挿入し、動脈瘤がコイルで満たされると、再び破裂したりするのを防ぐことが可能になります。 ②開頭手術 : クリッピング クリッピングは開頭術とも呼ばれ、頭部に切り込みを入れ、動脈瘤の位置を特定します。そして、小さな金属製のクリップを動脈瘤の基部に取り付け、動脈瘤を密閉します。 時間が経つにつれて、クリップが配置された場所に沿って血管の内側の層が再生し、動脈瘤が永久に密閉され、再び破裂するのを防ぐことができます。 くも膜下出血の入院期間や費用は? 入院期間や費用に関しては、受ける治療内容や重症度によって左右されます。 治療内容に関しては手術以外にも保存治療もあります。また、コイルによる手術を受けた人は、クリッピング手術を受けた人よりも早く退院し、全体的な回復時間も短くなる可能性があります。 費用に関しては 3 割負担で 50〜70 万円程度と考えていいでしょう。手術内容や保険の内容によって以下のように異なります。 ・血管内コイル塞栓術:19〜55 万円 ・開頭クリッピング術:22〜65 万円 さらに、これらの種類の手術が緊急治療として行われる場合、入院期間は、受ける手術の種類よりも症状の重症度に大きく依存します。 どちらの治療を受けている場合でも、合併症を避けるために、しばらくの間注意深く監視する必要があり、基本的には、2 週間から 2 ヶ月程度は入院する必要があります。 くも膜下出血後の生活について くも膜下出血から元の生活に戻るまでの時間は、その重症度によって異なり、手や足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症があるかどうかにも影響します。 重大な後遺症を残さないためにも早期のリハビリが必要 くも膜下出血後は少なからず後遺症が残るため、早期のリハビリが大切になります。 早期のリハビリ介入によって、くも膜下出血後の脳血管痙攣や再出血の頻度と重症度は軽減され、初期のリハビリテーションがいかに大切なのかわかります。 くも膜下出血のリハビリ方法 それでは具体的なリハビリ方法について以下の 3 つのステップに分けて説明したいと思います。 ①急性期 ②回復期 ③維持期 それぞれ詳しく説明していきます。 ①急性期リハビリ(治療後~14 日程度):廃用症候群の予防など 急性期には、身体の様々な機能がしにくくなり、褥瘡や足の血栓、感染症などさまざまな合併症が起こります。 また、ベッド上で動かず寝たきり状態になることで、筋肉が萎縮し衰え、関節が硬くなり運動機能が低下してしまうことを“廃用症候群”と言います。 この廃用症候群を予防するため、以下のようなリハビリを行います。 膝伸ばし運動 : 座った状態で片足の膝をゆっくり伸ばし、10 秒間保つ。 足の筋力運動 : 椅子に座り、背筋を伸ばして片足をゆっくり上げて下ろす 肩の上げ下げ運動 : 両肩を耳につけるイメージで、あげて下に落とす運動 手足の関節を動かす : 座った状態で手や足の関節を曲げて伸ばす 基本的には、座った状態でできる運動を行います。 ②回復期リハビリ: 日常生活動作の自立 急性期を脱し、病態や血圧が安定してきたら、症状の程度に応じて様々な回復期のリハビリに移りましょう。 日常生活を行う上で必要な基本動作が行えるよう運動機能を改善します。 基本動作の自立 : 寝返りをうつ、自力で座る、立つ 歩行訓練 : バランスを保つ、車いすへの移動、杖や歩行器などを用いた歩行練習 応用動作の訓練 : 手芸や工作、その他の作業 日常動作 : 食事やトイレ、着替え、入浴動作 さらに、食事ができるように嚥下機能を改善することも必要になります。 口の訓練 : 発声や舌・口・のどの筋肉を動かす運動 顔や首周りの訓練 : 首回りや肩の筋肉を動かす運動 間接的な嚥下訓練 : 水を含ませて凍らせた綿棒で喉の奥を刺激するなど 直接的な嚥下訓練 : ゼリーや水などの食物を用いる飲み込みの練習 そして、高次機能の改善としては以下のような特殊な訓練を行います。 ・風船、積木などの物を用いた訓練 ・繰り返し動作の練習 ・行動の順序を確認する練習 日常生活の動作に適応するためのリハビリを行っていきます。 ③維持期のリハビリ : デイサービス 維持期は、回復期で得た運動機能などを損なわないように機能を維持するために行うリハビリです。 ・生活の中の日常動作 ・散歩や軽い運動 維持期は生活期とも言われ、日常生活の中で取り戻した運動機能を低下させないように気をつける必要があります。 例えば、食事や着替え、入浴などはなるべく自分で行い、定期的に散歩やストレッチなどを行いましょう。 日帰りでリハビリなどの施設に通う、デイサービスなどもあります。ぜひ活用しましょう。 まとめ・くも膜下出血後の生活にはリハビリが欠かせない いかがでしたでしょうか。 今回は、くも膜下出血の手術後の生活について詳しく解説しました。くも膜下出血には大きく 2 種類の手術がありますが、重症度や治療内容によって入院期間や費用も異なります。 入院期間を短くして早く元の生活に戻るために欠かせないのが、入院時点で行う早期のリハビリです。完全に元の生活に戻るにはどうしても長期間かかり、なかなか根気強く続けるのが難しいかもしれませんが、続けることが大切です。 今回の記事がご参考になれば幸いです。 No.098 監修:医師 坂本貞範
最終更新日:2023.06.30 -
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脳梗塞が女性に多い理由!脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率とは 近年では、わが国でも生活習慣病などに関連した、脳梗塞に関する情報が注目されております。 また、昨今においては、男女間の性差に関連する医療研究が広く実施されるようになってきました。その中で、脳卒中の約3分の2の発症割合を占める脳梗塞についても、男女の性差での違いを認める疾患であることが分かりつつあります。 中でも、女性が脳梗塞に罹患するリスクが存在すると言われており、その原因として高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子が指摘されています。 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 脳梗塞の発症原因は? 脳梗塞の患者では、普段から高血圧を始めとする生活習慣病を発症している方が多く、これらの疾患は血管の動脈硬化性変化を進行させるので、脳梗塞を招くリスクが高くなると言えますし、近年の脂質異常症や糖尿病の増加に伴って、最近ではアテローム血栓性梗塞が増えてきています。 また、高齢化にともない心房細動という不整脈を抱えた患者さんが増加しているため、心原性脳塞栓症も徐々に増えています。 脳梗塞を発症させる原因として挙げられるものは以下で脳梗塞の原因として忘れてはいけない要素です。 脳梗塞発症原因 ・加齢 ・食生活の欧米化に伴うメタボリック症候群 ・過剰な塩分摂取 ・慢性的な運動不足 ・糖尿病 ・脂質異常症 ・喫煙歴 ・大量飲酒 ・日々の過剰なストレス 加齢に伴ってラクナ梗塞の原因である動脈硬化、あるいはアテローム血栓性脳梗塞の原因である生活習慣病は徐々に進行して、脳梗塞を発症しやすい状況に陥ると考えられます。 したがって、動脈硬化や生活習慣病、心房細動などを抱える高齢者は特に注意が必要です。 脳梗塞になりやすい年代とその発症確率は? 脳梗塞は、一般的に高齢者に発症することが多い疾患であり、初発の発症例では 65 歳以上が全体の 9 割を占め、本疾患は中年以降から高齢層にかけて罹患しやすい病気というイメージがありますが、30 〜 40 歳代の若年者に発症する若年性脳梗塞も存在します。 厚生労働省の発表データによれば、1996 年時点で国内に約 170 万人に及んで存在した脳血管疾患を発症した患者数は、2017 年時点でおよそ 110 万人程度まで減少傾向を示しており、脳梗塞で病院や診療所を受診したのはおよそ15万人程度と言われています。 具体的に、年齢別の内訳としては、 0〜14 歳が 100 人 15〜34 歳が 300 人 35 〜 64 歳が 1 万 4000 人 65 歳以上が 13 万 5000 人 75 歳以上が 10 万 6000 人 という状況です。 つまり、脳梗塞を発症する患者数は特に 75 歳以上の方で全体の7割以上を占めています。 女性に脳梗塞が多いのは、なぜなのか? 脳梗塞は男性に多い病気と考えられる傾向があります。 しかし、実は女性の死亡原因の第三位に位置づけられている疾患であり、女性の脳梗塞は増加傾向であり、かつ重症化しやすいことが知られています。 一般的に、脳梗塞は男性に発症数が多い一方で、女性の方が少ないと言われていますが、女性の脳梗塞患者は男性に比べて高齢で発症するケースが多い特徴があり、生命予後も不良になる傾向が認められると指摘されています。 脳梗塞を男女差の面から考えると、一般的に患者数は男性の方が多いです。 女性の持つ危険因子とは ところが、女性には妊娠、経口避妊薬の使用、ホルモン補充療法など特有の脳梗塞を発症する危険因子が背景に存在すると伝えられています。 脳梗塞を代表とする脳心血管疾患における最大の発症要因ともいえる高血圧に関連して、通常約 50 歳前後までは女性よりも男性の方が高血圧の平均数値が高い傾向を認めますが、その後の年代以上では高血圧の有病率に性差はほぼありません。 この理由としては、女性が閉経した後に女性ホルモンであるエストロゲンなどの働きが低下することによって、女性の高齢時における高血圧の発症原因に繋がっていると考えられます。 女性ホルモン「エストロゲン」との関係性 特に、エストロゲンは血管や骨などの状態を維持する機能を有するホルモンであり、おおむね女性が 50 歳前後の更年期に入ると急激にエストロゲンの分泌量が減少して、これまで適正範囲に機能していた保護作用などが効果を示さなくなっていきます。 また、30 歳前後における若年女性の収縮期の血圧は、平均すると同年代の男性層よりも約 10mm Hg 程度低い値であることが知られていますが、女性は男性よりも高血圧の影響が強く出現する傾向がありますので、若い年代の時期から高血圧予防に努めることが重要です。 さらに、動脈硬化の進行を促進する大きな要因である脂質異常症に関しても、若年時には男性の発症率が女性より高いことが判明していますが、年齢を重ねるごとにその発症率において性差が認められなくなります。 その背景には、女性特有のエストロゲンの影響だけでなく、男性だけでなく女性も喫煙習慣、脂肪分のリッチな食事スタイル、糖類を大量に含む飲食物を多く摂取するなど、近年よく見られる生活習慣病が直接的な原因になっていると思われます。 脳梗塞と不整脈 さらに、中年期から高年齢層にかけての女性は男性に比べて不整脈を発症しやすいと言われており、特に不整脈の中でも心房細動は脳梗塞の発症リスクを 5 倍程度に上昇させることが指摘されています。 不整脈のひとつである心房細動は、心原性脳塞栓症における大きな発症危険因子として認識されており、脳梗塞を引き起こす患者さんの約 70 %の割合で合併していると指摘されています。心房細動の頻度は、一般的に男性が女性の約 3 倍高いという報告が見受けられます ところが、心原性脳塞栓症を続発しやすいという観点でみると女性の方が男性よりも発症率が高い傾向にあると言われています。 その他の危険因子 その他にも、偏頭痛、心房細動、うつ病、感情的なストレスは、女性に多い脳梗塞の危険因子となります。 そして、特に女性で妊娠を契機に妊娠高血圧症候群が認められる際には、その後高血圧を発症するリスクが約 4 倍、そして脳梗塞に罹患するリスクが約 2 倍に上昇すると言われています。 また、閉経後の女性に対して女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを投与するホルモン代替治療は、骨密度を上昇させて骨折の危険を減らす利点がある一方で、脳梗塞の発症リスク因子になりますので十分に注意する必要があります。 したがって、女性が脳梗塞を発症した場合には、女性ホルモンの補充療法の有無を確認することが重要であるとともに、すでに投与されている際にはその中止も検討すべきであると言われています。 まとめ・脳梗塞が女性に多い理由と脳梗塞を発症しやすい年代と発症確率について 今回は、脳梗塞の発症原因や脳梗塞になりやすい年代と発症確率、女性に脳梗塞が多い理由などについて詳しく解説してきました。 脳梗塞の年代別発症率では、高齢者を中心に発症しやすいことが分かっており、その発症原因は色々考えられますが、良くない不規則な生活習慣の積み重ねが発症につながるケースは決して少なくありませんし、女性にも脳梗塞を発症するリスク因子が存在します。 特に、女性はエストロゲンの保護や生活習慣病という観点から、加齢に伴って閉経後など脳血管系疾患の影響が強く出て脳梗塞を発症するリスクがあります。 したがって、普段から食生活に気をつけて定期的に運動を実践するなどの予防策を若年期から意識しておきましょう。 脳梗塞の後遺症は取り返しのつかないものですので、元気なうちに対策を講じて、あらかじめ脳梗塞の危険因子を知っておくことが重要なポイントです。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 禁煙や体重管理、運動など生活習慣の改善によって、脳梗塞を引き起こさないようにすることが大切です。 No.S100 監修:医師 加藤 秀一 引用文献 1)松山 友美, 佐竹 真理恵:女性ホルモン補充療法中に脳梗塞を発症した3症例.脳卒中. 2013 年 35 巻 4 号 p. 301-305 DOI https://doi.org/10.3995/jstroke.35.301 ▼以下もご覧になりませんか 脳梗塞は遺伝するのか!?食生活にも関係か?【食事療法でリスクを回避する方法】
最終更新日:2024.03.22 -
- ひざ関節
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膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?! 次のような症状で不安になっている方はいませんか?膝の裏側の腫れや痛み、膝から下のむくみは「リンパの詰まり」が原因かもしれません。 「膝から下がむくんでいて気になる」 「膝の裏がふくらんでいるけど何が原因なの?」 このように膝下がむくむという症状は、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。特に長時間の立ち仕事や座り仕事、飛行機やバスなどの移動で足が下がったままになるときなどに起こります。 このように膝下がむくむのは何故なのでしょうか?今回は、膝裏のリンパの詰まりに関して、原因や具体的な対処法を解説します。 膝裏でリンパが詰まる原因 膝裏にはリンパの流れる管(リンパ管)が太くなっている部分があります。このような部分を「リンパ節」と呼び、膝裏のリンパ節は「膝窩リンパ節(しっかリンパせつ)」と言います。 リンパ管を流れるリンパは体内の老廃物や細菌を運ぶ下水道のような役割を果たしています。そしてリンパ節はリンパ管を通ってきた異物を取り除くための部分です。 リンパそのものの流れが悪くなると、リンパ節でリンパ液がうまく循環しなくなってしまい、リンパ節が詰まってしまうような状態を引き起こします。 リンパの流れが悪くなる原因としては以下のようなものが挙げられます。 ・運動不足 ・肥満 ・偏った食生活 ・長時間同じ姿勢を続ける など 運動不足や肥満、長い時間同じ姿勢を続けることに共通して言えることは、「筋肉の働きが低下する」ことです。 リンパ管は筋肉に挟まれながら、体を巡っています。そのため、身体の曲げ伸ばし、しゃがんだり、伸ばしたり、押してみたり筋肉をほぐすことでリンパ管を刺激してリンパの流れを促します。 筋肉の働きが低下すると、リンパ管への刺激が少なくなり、リンパの流れを悪くしてしまうのです。 また、肥満は脂肪が邪魔して筋肉が働きにくくなるのに加えて、リンパ菅を狭くしてしまいリンパの流れを妨げます。 偏った食生活は、肥満に繋がるのはもちろんのこと、老廃物を増やしリンパ節の働きを妨げてしまうためリンパ節が詰まる原因となるのです。 膝下がむくむんだ場合の3つの対策 膝裏のリンパが詰まっている場合は、先ほど説明したリンパの流れが悪くなる原因を考慮した対応が必要です。その際の具体的な解消方法を3つ紹介しましょう。 1,適度な運動 筋肉を動かし血液やリンパの流れを促すことを「筋ポンプ作用」と呼びます。筋ポンプ作用を働かせるためには、筋肉を適度に動かす運動が必要です。 運動不足は筋肉量や代謝率の低下につながります。適度な運動は筋肉量や代謝率を向上させるだけでなく、血液やリンパ液の循環も促進します。 おすすめは膝や足首の屈伸運動です。特につま先を上げ下げする足首の運動は、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉を刺激して、血液やリンパ液の循環を促すのでおすすめです。 「テレビを見ながら」「トイレで座りながら」など、「ながら運動」でこまめに行うようにしましょう。筋肉痛になるほど、きつい運動をすると疲労が蓄積してしまうため、無理な運動は控えるようにしましょう。 具体的は足首を回す。足首を時計回りや反時計回りに回すことで、筋肉のポンプ作用を促し、血液やリンパ液の流れを改善します。 2,マッサージ リンパの流れを良くするためのマッサージを行いましょう。 膝裏やふくらはぎを軽くさする、推すなどの程度から始めて、徐々にほぐすようにしていきましょう。足裏からふくらはぎに向かって優しくマッサージすることで、血管やリンパ管の収縮力を高め、血液やリンパ液の排出を助けます 押すなどして圧迫した場合に、痛みや違和感を感じる場合はリンパの流れが悪いだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性があるので無理に行わないで中止しましょう。 専門家によるマッサージではなく、自分で行う場合は、あくまで気持ちいい程度の加減で行うことが大切です。 3,生活の工夫 リンパの流れを妨げる肥満を予防・改善するために、バランスの良い食事や運動の継続といった規則正しい生活習慣をすることは重要です。 また、生活の中で膝を圧迫したり、足を下ろし続けたりといった長時間椅子に座ることは膝窩リンパ節への負担の原因になります。 適度に休憩して歩いたり、しゃがんでみたり、伸ばしてみたり、運動やマッサージをしたりしましょう。 自宅にいる時などは、足を高くして休む。足を心臓より高い位置に置くことで、重力に逆らわずに血液やリンパ液を戻しやすくします。 そうすることで、足が心臓より高く位置することになり、リンパの流れを体の方に戻す効果があります。 また、食事や水分摂取に気を付けましょう。塩分やカフェインなどの摂り過ぎは水分代謝を悪化させるので控えましょう。また、水分不足もむくみの原因になるので、適度に水分補給しましょう。 膝裏が腫れている場合に注意したいポイント 膝の裏が腫れている場合に、リンパ節のむくみだけではなく、他の病気が潜んでいる可能性もあります。 以下のポイントを参照にして、気になる場合は自己判断で治療したり、放置したりせずに整形外科や循環器内科などを受診しましょう。 全身にむくみがある 全身にむくみがある場合は、心臓や腎臓など内科系の疾患によるむくみの可能性があります。 膝裏のむくみに気づいた場合には、他の部位にもむくみがないかどうかをチェックしましょう。 膝周辺に痛みや熱がある 膝裏のむくみだけでなく、痛みや熱がある場合は、膝関節の炎症や怪我などの可能性があります。 また、リンパ節に細菌が入って感染症を起こしてしまうこともあります。 このような症状の場合は、早めの医療機関で適切な治療を受けることが大切ですので注意しましょう。 だんだん浮腫がひどくなる このような場合も病気が潜んでいる可能性があるので気をつけましょう。 膝裏にリンパ以外のものが詰まっている可能性として、「ベイカー嚢腫(のうしゅ)」という病気の場合があります。 ベイカー嚢腫は膝裏にある袋状の部分が肥大してしまう病気で、50歳以降の女性に多く見られます。 また、膝の変形が進んでいくことで、膝の関節に炎症が生じて関節に水が溜まってしまうことがあります。 いずれにせよ、専門家による適切な治療が必要です。 膝下のむくみは、規則正しい生活で改善しましょう 膝裏のリンパの詰まりは運動やマッサージの継続、正しい食事による肥満の予防などの対策があります。何よりも継続が大切です。できることから始めて無理ないペースで続けましょう。 また、膝裏のむくみがリンパ以外の可能性もありますので、気になる場合は早めの受診がおすすめです。特に痛みや熱など他の症状がみられる場合は、放置しないように注意しましょう。 まとめ・膝の裏側の腫れや痛み、膝下のむくみはリンパの詰まりが原因か?! 膝下がむくむのは何故かという問いには、血液やリンパ液の循環不良が原因でした。その対策としては、足を高くして休む、足首を回す、マッサージする、食事や水分摂取に気を付ける、適度な運動をするという方法があります。 これらの方法を実践することで、膝下のむくみを予防や改善することができます。膝下がむくむと感じたら、ぜひ試してみてください 以上、「膝下のむくみは、膝裏のリンパの詰まりが原因!」を解説させていただきました。参考になれば幸いです。 No.S095 監修:医師 加藤 秀一 ▼以下もご参考ください 膝が痛い|朝寝起きや、歩きはじめの膝に痛みや違和感を感じたときの治療法
最終更新日:2024.02.28