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頚椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気について、あわせて検査と治療法を解説

頚椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気について、あわせて検査と治療法を解説します

背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を「椎間板」と言い、「頚椎椎間板ヘルニア」とは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状をきたす疾患です。

発症年齢としては、30~50歳代の男性に多くみられます。発生する部位ではC5、C/6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照)事故による外傷性や加齢による経年性による変性が機序となることが多く、「喫煙も危険因子」とされています。

なお脊柱管横断面で「正中型」、「外側型」と「傍正中型」とヘルニアが飛び出た方向で3分類されます。正中ヘルニアを脊髄症、外側型や傍正中型は神経根症や脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)をきたすことが多く、画像検査で椎間根ヘルニアを認めても、無症状であることも多いので注意が必要です。

脊柱管横断面 正中型 脊髄症
外側型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)
傍正中型

頚椎図

  • 発症原因
  • ・事故による外傷性
  • ・加齢による経年性による変性
  • ・喫煙も危険因子とされる

症状について

頸椎症のほかに、脊髄が圧迫されると脊髄症の症状、神経根が圧追されると神経根症が生じます。

頚椎症

首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすに痛みが増強し、安静にすると軽快します。

神経根症(radiculopathy)

上肢への放散痛、知覚障害、しびれ感、脱力感などの症状が生じます。放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を推測することが可能です。前胸部に放散する疼痛がある狭心症に似た頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患があり、鑑別を必要とします。

脊髄症(myelopathy)

ボタンが掛けにくい、著が使いにくい、ボタンを上手く掛けることができない、といった手指巧級運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容は揺劣となり、階段昇降時には手すりが必要となります。また小走りも難しくなります。

初期は大きなボタンを掛けることはできますが、ワイシャツのような小さいボタンが掛けにくくなります。指または手のひら全体のしびれを訴えることがあり、脊髄の圧迫する部位によってしびれの領域に違いがみられます。進行すると膀胱直腸障害(頻尿、尿勢低下、残尿感、便秘)も自覚するようになります。

身体所見について

身体的な所見としては、以下のような症状があげられます。

頸椎症

頸椎の可動域制限と僧帽筋、棘下筋、棘上筋などに圧痛を生じます。

神経根症

神経根の障害高位に一致した上肢の筋力低下および筋萎縮、感覚障害、深部腱反射の低下が生じます。スパーリングテスト(Spurling test)、ジャクソンテスト(Jackson test)が陽性となることが多いです。

脊髄症

上肢の障害髄節に一致して深部反射が弱くなり、筋力低下が生じることもあります。また錐体路障害により、それ以下の深部反射、ホフマン(Hoffmann)反射、ワルテンベルク(Wartenberg)反射が亢進し、バビンスキー(Babinski)反射、膝・足間代(足クローヌス)も陽性となります。

また小指が閉じることができない指離れ徴候(finger escape sign)がみられ、10秒テスト(手掌を下にしてできるだけ速く、グーパーを繰り返す)では通常20回以下になります。感覚障害は、初期には上肢のみに生じることが多いです。

画像検査について

診断には画像による診断が必要となり、そのため以下のような検査が行われます。

X線像(レントゲン)

椎間板ヘルニアでは一般に椎間板腔狭小化(椎間板と椎間板の間の隙間が狭くなること)や骨棘形成は軽度であることが多いです。高齢者では、骨棘などの変性が著明になると隣接椎間に椎間板ヘルニアが発生することもあります。

MRI(磁気共鳴画像法)

椎間板ヘルニアの局在や、圧迫された脊髄、椎間板変性の度合い、神経根の状態を確認することができます。

脊髄造影(ミエログラフィー)

脳槽・脊髄用の水溶性造影剤をくも膜下腔に注入して、脊髄や神経根を明瞭に描出することができる検査です。脊髄造影後にCTを撮影すると椎間板ヘルニアの局在、神経根や脊髄の圧迫を三次元的にとらえることが可能です。しかし、MRIが導入された現在では、脊髄造影をする機会は減ってきています。

頸椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気

疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が大変重要となります。

肩軟部組織の変性疾患(腱板断裂、凍結肩など)

肩関節の運動痛や肩関節可動域制限を認めれば、頸椎疾患以外と考えます。C5神経根症と腱板断裂は、ともに上腕近位外側の疼痛を訴え、関節の外転ができなくなるので鑑別を必要とします。
C5神経根症では、三角筋や上腕二頭筋で筋力低下を生じることが多いですが、腱板断裂では上腕二頭筋の筋力は通常正常です。

胸郭出口症候群 (thoracic outlet syndrome)

頸肋、中斜角筋、前斜角筋、鎖骨および第1肋骨、小胸筋などにより腕神経叢と鎖骨下動脈が胸郭出口部で圧迫され、上肢の疼痛、しびれ、握力低下、重だるさなどが生じます。
ライトテスト(Wright test)、モーレイテスト(Moley test)、アドソンテスト(Adson test)が陽性となります。胸郭出口症候群の症状は前腕尺側に多いのが特徴です。

肘部管症候群(cubital tunnel syndrome)

尺骨神経の絞扼性神経障害で尺骨神経溝にティネル様徴候(Tinel)がみられます。環指尺側から小指にかけてのしびれや麻痺など感覚障害が生じ、進行すると環指と小指の変形が起きます。

手根管症候群(carpal tunnel syndrome)

正中神経の絞扼性神経障害手根管部でティネル様徴候(Tinel)が陽性になります。母指から環指の痺れや疼痛など生じ、指先の症状は夜間や早朝に強い傾向があります。
母指球筋萎縮が進むと猿手変形が生じます。確定診断には、当該神経の神経伝導速度を測定が必要です。

脊随腫瘍 (spinal cord tumor)、脊椎腫瘍(spiatumor)

MRIで容易に確定診断することが可能です。稀に パンコースト(Pancoast)腫瘍により、主に尺骨神経側に神経症状を生じることもあるので注意が必要です。

頚椎椎間板ヘルニアの治療法について

頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。

頚椎症に対する治療

頚椎症状のみで手術療法を行うことはあまりありません。消炎鎮痛剤などの薬物療法、トリガーボイントブロック、ストレッチなどを行います。

神経根症に対する治療

●保存療法

消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。頸椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあり、痛みが激しい場合には、副腎皮質ステロイドの内服、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神神経ブロックなどを併用します。ほとんどの症例で、保存療法により2〜3カ月以内に軽快することが多いです。

●手術療法

保存療法を2〜3カ月続けても効果がない場合や、進行性の麻痺を認めた場合には手術を行います。推間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。

前方除圧固定術は胸鎖乳突筋の内側から進入し、気管と食道を内側によけて椎間板に到達し、当該高位の椎間板やヘルニアを完全に摘出し、椎体間に腸骨から採取した骨や人工物(インプラント)を移植して固定します。

アライメントの維持や移植骨の脱転を予防する目的で、前方にプレートを使用することもあります。神経根症をきたす椎間板ヘルニアは傍正中型あるいは外側型なので、後方から部分椎弓切除と椎間孔切除を行った上でヘルニアを摘出することもあります。

脊髄症に対する治療

●保存療法

軽度であれば、鎖椎カラーで頸部の安静を図り、椎間板ヘルニアの自然吸収を待ちます。しかし痙性歩行、手指巧緻運動障害により日常生活に支障がある場合や、排尿障害がある場合には、機能障害が永続性となることを避けるために手術を行います。

●手術療法

脊髄症の場合でも、通常は1椎間での障害で脊髄の前方にヘルニアがあるので、神経根症と同様に前方除圧固定術を選択することが多いです。しかし、椎間板ヘルニアの高位以外でも脊柱管の狭窄がある場合には、後方から椎弓形成術 (laminoplasty)を選択することもあります。

椎弓形成術は脊髄の広範囲な除圧を容易に行うことができ、さらに脊髄を保護する脊柱の後方要素を温存することができます。合併症は比較的少ないですが、頸椎後方伸筋群に侵襲を加えるため、術後に頸部痛をきたしやすいという難点があります。

以上、頚椎椎間板ヘルニアの辛い症状の種類と、似た病気、検査と治療法と題して記させて頂きました。

▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。

まとめ・頚椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気について、あわせて検査と治療法を解説

頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状を引き起こす疾患です。

30〜50歳代といった年齢の男性に多く見られ、特にC5-C6や、C6-C7の部位で頻繁に発生することが多い疾患です。発症原因は、事故による外傷性や、加齢による変性が主な原因とされ。喫煙も問題視されています。

症状には頚椎症、神経根症、脊髄症があり、それぞれ首から肩甲骨にかけての痛みや、上肢への放散痛、手指の運動障害、歩行障害などが見られます。

その診断には、レントゲン、MRI、脊髄造影などの画像検査によって行われます。

尚、他の疾患との鑑別も重要であり、類似した症状の病気として「肩腱板断裂」「胸郭出口症候群」「肘部管症候群」「手根管症候群」「脊髄腫瘍」なども考慮して判断されます。

治療法としては保存療法と手術療法があり、保存療法では「消炎鎮痛薬」の使用や「頸椎カラー(首を安定させて保護する目的で使用される装具。多くはプラスチック製で首を固定し、動きを制限することで頚椎を保護する)」の装着が行われます。

手術による治療は、保存療法が効果的ではない場合、また神経障害が進行している場合に選択されて前方除圧固定術や椎弓形成術といあった手術が行われます。

いずれにしても、検査の上、的確な診断をもとに総合的なアプローチで患者様の症状や病態に合わせた治療法を選択することが重要です。

 

監修:院長 坂本貞範

再生医療とは

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