医師が解説する「頚椎椎間板ヘルニアの治療法」と日常生活の注意点
目次
頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる治療法を医師が解説します
頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎と頚椎の間にある椎間板というクッションのような構造が後ろに飛び出すことで、神経を圧迫し、しびれや痛みなどが生じる病気です。
この記事では、椎間板ヘルニアの痛みを和らげる方法や、治療法について解説していきます。
辛い!頚椎椎間板ヘルニアの原因と発症メカニズム
首の部位にある背骨のことを医学用語で「頚椎(けいつい)」と呼びます。
その頚椎が積み重なるようにして、背骨は作られています。そして、頚椎の間には「椎間板(ついかんばん)」というクッションのような構造があり、ゴムのような線維性軟骨からなる環状部分(繊維輪)と、ゼリーのような柔らかい(髄核)でできています。頚椎椎間板ヘルニアとは、椎骨の間の椎間板が後ろに飛び出てしまい、脊髄や神経根が圧迫されて症状が出る病気です。
頚椎椎間板ヘルニアの原因は、椎間板が加齢などの理由で変性して、後ろの方へ突出することです。30〜50代の働き盛りの方に多く、誘因なく、突然発症することが多いとされています。
また、悪い姿勢での仕事や、スポーツなどがきっかけとなることもあります。
頚椎椎間板ヘルニアの症状としては、急な首の痛みに引き続き、腕や手指のしびれが特徴的とされています。飛び出した椎間板が大きく、脊髄を圧迫してしまうと、歩行障害や手指の運動障害が生じることもあります。
頚椎椎間板ヘルニアの診断・検査
頚椎椎間板ヘルニアの診断には、首の骨のレントゲン撮影やCT検査、MRI検査などが行われます。
MRIでは、変性した頚椎の椎間板や、頚椎椎間板ヘルニアを確認することが可能です。椎間板が後ろの方へ飛び出すことによって、脊髄や神経根が圧迫されているかどうか、またその程度も確認することが可能です。画像検査の結果と症状を照らし合わせて矛盾がない場合には、椎間板ヘルニアによる症状であると診断することができます。
また、首を斜め後ろへ反らすと腕や手に痛みが走るということも特徴的ですので、診断の際にこうした手技が用いられることもあります。
頸椎ヘルニアのテスト
頚椎伸展テスト:首を後ろにそらすと腕から手指にかけてのしびれや痛みが増強します。
ジャクソンテスト(Jackson head compression test):頭を少し後ろにして首をそらし頭を上から圧迫すると腕から手指にかけて痺れや痛みが出てきます。
スパーリングテスト(Spurling test):頭を症状のある方向へ傾けると腕から手指にかけてのしびれや痛みが出てきます。
頚椎椎間板ヘルニアの治療法
それでは、頚椎椎間板ヘルニアの治療法をご紹介していきます。
治療法は、症状の程度によって保存的治療か外科的治療かに分けられます。まずは軽い症状の場合の治療法から解説します。
保存的治療
頚椎椎間板ヘルニアによる痛みを和らげる方法として、鎮痛薬や神経ブロックといった薬物治療、牽引(けんいん)治療や理学療法も行われます。
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また、頚椎椎間板ヘルニアによる症状は、ヘルニアが自然に吸収されることで自然に治癒する例も多数報告されています。そのため、まずは保存的な治療で様子をみていくことが多いです。
こうした保存的な治療を開始してから3ヶ月経っても症状の改善がない場合には、手術を考慮したほうが良いという報告もあります。
外科的治療
保存的な治療をしても症状が改善しない場合や、早く症状を改善したいという希望が強い場合には、外科的手術が推奨されます。
また、脊髄症の症状、つまり運動麻痺が強く出ている場合にも手術が考慮されます。
外科的手術の方法としては、以下が標準的な術式として推奨されています。
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頚椎椎間板ヘルニアの日常生活での注意
頚椎椎間板ヘルニアに限らず、頚椎の変性によって起こる病気に対しての日常生活でのポイントをご紹介していきます。
良い姿勢を保つ保存的治療や予防の段階では、頚椎の良い姿勢を保つことが大切です。特に、後屈、つまり後ろに反らす動作を避けることが重要です。 例えば、上を見上げる姿勢は取らない、首をぐるぐると回す運動は避けましょう。そして腹ばいでの読書や、不適切な姿勢でのテレビ視聴はしないようにします。 寝方に注意するさらに、寝方にもポイントがあります。 就寝時には、頭だけでなく首もしっかりと固定できるような、面積の広い枕を選ぶようにしましょう。 |
このような日常生活の注意によって、ヘルニアを含め頚椎症による神経症状の悪化をある程度予防することは可能と考えられます。ひいては、頚椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげることにもつながるでしょう。
まとめ・医師が解説する「頚椎椎間板ヘルニアの治療法」と日常生活の注意点
今回の記事では、頚椎椎間板ヘルニアの治療や症状を和らげる方法について解説しました。
頚椎椎間板ヘルニアで症状が重い方には手術療法が選択されます。一方で、手術を行っても脊髄や神経根の損傷が完全に修復されないこともあります。その結果、しびれや痛みといった症状が残ってしまう場合もみられます。
そこで当院では、脂肪由来の幹細胞を使用した脊髄腔内ダイレクト注射療法という方法を独自に開発しました。この方法を用いて、傷ついた神経の再生を試みています。
頚椎椎間板ヘルニアの手術を受けてもなかなか症状が改善しないというような方は、ぜひ一度当院までご相談ください。
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No.S159
監修:医師 加藤 秀一
▼首のヘルニアの原因について記しました
頚椎椎間板ヘルニアの原因、首の痛みからわかること