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脳卒中のリハビリについて

リハビリテーション(リハビリ)とは元に戻すこと!

リハビリテーションの語源はre(再び)+ habilis(適した)で「再び適した状態に戻ること」、「本来あるべき状態に回復すること」を意味します。

脳卒中においては、脳卒中による手足の麻痺(まひ)を回復させ、残った機能を最大限に活用することで「人間らしい生活の送り方を取り戻す活動が「リハビリテーション」というものです。

脳卒中のリハビリ

これまで、脳卒中のリハビリは、脳卒中を発症してから間もない急性期ではなく、病状が定着する慢性期や回復期から開始するのが一般的な段取りでした。

しかし近年、脳科学の進歩に伴って脳卒中を発症した早期から開始することが、その後の良好な機能の回復につながる可能性が高いと指摘されるようになってきました。

脳卒中によって手足の麻痺などが生じた場合、程度には個人差がありますが、何らかの後遺症(障害)が残ることが多くみられます。この後遺症と付き合いながら、いかに人間らしく生活を送るかがリハビリテーションの意義となるのです。

そのためには麻痺した手足を回復させ、残った機能を最大限に活用します。

さらに、失った機能を補うための補装具や、コミュニケーション・エイド(コミュニケーションを助ける用具)の使用や、住宅の改修改造、ベッドや車いすを借りるなどについて公的な支援制度を生かし、「日常生活活動」(ADL:activities of daily living)の幅を広げるだけでなく、「生活の質」(QOL:quality of life)の向上を図ることが大切です。

脳卒中の発症を見逃さないために

脳卒中でみられる症状には様々あり、特に顔、手足、言語に障害がみられます。顔、手足、言語のうち一つでも異常があれば脳卒中である確率は、非常に高いとされています。

(1)頭痛やめまい

・突然の激しい頭痛(吐き気や嘔吐を伴うこともある)→くも膜下出血
・回転性めまい(吐き気や嘔吐を伴うこともある)

(2)意識の異常

・意識がもうろうとし、反応が鈍い
・わけもなく暴れる

(3)手足の力の異常

・ろれつが回らない
・顔面を含む半身の脱力
・口の片側からよだれが出る、食べたものがこぼれる
・食事中に箸を落とす、字がうまく書けない、手の動きがぎこちない
・足の片側でよくつまずく、片方のスリッパが脱げやすい
・片足を引きずる、壁伝いか手すりを使わないと歩けない

(4)手足の感覚の異常

・唇の周囲と片方の手のひらの感覚が同時におかしくなる
・顔の片側と左右どちらか一方の感覚がおかしくなる
・入浴した時に体の半分はお風呂の熱さを感じない

(5)言語の異常

・言いたいことがうまく言えない、書けない
・聞いた言葉や読んだ文章が理解できない

(6)目の異常

・片方の目が突然見えなくなる
・視野が半分になる
・物が二重に見える

(7)バランスの異常

・力はあるのに、うまく物がつかめない
・座ったり、立ったり、歩いたりするのにバランスが取れない

(8)その他

・突然の記憶障害
・けいれん発作

脳卒中で3つの症状>FAST

脳卒中で起こる典型的な3つの症状と、発症時刻を組み合わせた言葉に“FAST”というものがあります。

FAST

①Face:顔のマヒ
・・・顔の半分が下がる、ゆがんでいる、うまく笑えない

②Arm:腕のマヒ
・・・両腕を前に突き出した時に片腕が高さを保持できず下がってくる

③Speech:ことばの障害
・・・ろれつが回らない、文章を正しく繰り返せない、返事が乏しい

④Time:症状に気付いた時刻
・・・これらの症状に気付いたら発症時刻を確認してすぐに“119番通報”を!

【救急車の呼び方】

① “119番”に電話をかける

② “救急です”と伝える

③ 現在地を伝える

④ 患者の姓名、性別、年齢、症状を伝える

脳卒中急性期のリハビリテーション

リハビリは、医師の指示のもと、セラピスト(療法士)によって行われます。セラピストにはそれぞれ専門分野があり、それに応じて役割を分担して対応させて頂きます。

■セラピストの種類と役割

・理学療法士

(PT:Physical Therapist)

起き上がる、座る、立つ、歩くなど生活の基本となる動作(基本的動作)に、必要となる関節の動きや筋力などを評価し、能力の習得や向上を目指す運動や練習を行います。

・作業療法士

(OT:Occupational Therapist)

患者さんがご飯を食べる、着替えをする、トイレに行く、歯を磨く、字を書くなどの動作(応用動作)を身につけるために、不自由となっている腕や手の機能などについて評価し、その動作能力を向上させたり獲得するための作業練習を行います。

・言語聴覚士

(ST:Speech Therapist)

聞く、話す、読む、書くなど言語機能に障害のある患者さんの障害の程度によって、必要な練習や助言をします。

次に、実際のリハビリついて紹介します。

【1】理学療法

■離床に向けてのベッド上でのリハビリテーション
ベッドで寝ている状態のことを臥床(がしょう)といい、臥床期間が長期にわたると、麻痺した側の手足の関節が硬くなったり、麻痺していない側の手足の筋力が弱くなったりします。そのため病床でのリハビリは必要不可欠になります。

長期の臥床は、褥瘡(じょくそう)や肺炎・尿路感染症、心肺機能の低下、起立時の血圧低下によるふらつきの原因にもなります。このように動けないことによって生じる一連の障害を「廃用症候群」と言います。

①床上安静期

■関節可動域訓練・筋力増強訓練
廃用症候群を予防するため、早期からベッドサイドでのリハビリによって手足の関節を動かしたり、筋力をつけたりする練習を開始します。

脳卒中を発症してから浅い時期は、病状が進行する可能性があり、ベッドから起き上がることは控えた方が良いため、セラピストが病室にてリハビリを行います。

この時期には、手足の関節が硬くなること(関節拘縮)を予防する目的で、痛みが生じないよう関節を動かす関節可動域訓練、筋力の低下を予防するため、手足の筋力増強訓練も行います。 

②離床期

■頭部挙上負荷試験(とうぶきょじょうふかしけん)
脳卒中の患者さんの場合、突然起き上がると血圧が下がり(起立性低血圧)、症状が悪化することがあるので、ベッド上で寝た状態から徐々に頭を上げていき、症状に変化がないかどうかを確かめます。

・チェック項目:血圧、心拍数、自覚症状、徴候の変化
・頭部挙上角度:30°→60°→90°の順
・負荷試験時間:30分間       

■端坐位、座位練習

ベッドで90°まで頭を上げられるようになれば、足を床に下ろして座る(端坐位)練習に移行します。その後、徐々に自力で座位を保つ練習や自分で起き上がる練習を行います。

■車椅子の練習

ベッドから車椅子に、車椅子からベッドへ移乗する練習、車椅子の動かし方や止め方(ブレーキ)などの練習を、行動範囲を広げていけるように行います。

【2】リハビリテーション室にて

離床が進み、車いすに乗れるようになると、患者さんの行動範囲は大幅に広がるため、多くは集中治療室を出て一般病棟へ移ります。ベッドサイドで行われていたリハビリもリハビリテーション室に変わります。

■一般的なリハビリ
リハビリテーション室での訓練が可能になると、まず立つ練習から始め、立位保持が可能になれば歩行練習に移ります。まずは平行棒などの手すりを用いて行い、歩行が安定していけば、杖を使う歩行練習です。

基本は、①杖をつく→ ②麻痺側の足をだす→ ③健常側の足を出す。このような順で歩行します。 

脳卒中のリハビリについて 

杖は歩行障害の程度に応じて大きく3種類あり、患者さんの麻痺の程度により使用する杖の種類が検討されます。麻痺した足をコントロールできず、立位保持や歩行が困難な場合は、足関節の固定を目的とした短下肢装具を使用する場合があります。

短下肢装具にはいくつかの種類があり、金属支柱付き短下肢装具、プラスチック短下肢装具、ゲイトソリューションデザイン、ファイナーなどが使用されます。

どの装具を選択するかは、ふくらはぎの筋肉の緊張度合いによって決めます。ふくらはぎの緊張が強く、足関節の強固な固定が必要な場合には金属支柱付き短下肢装具を、緊張が低い場合にはファイナーを使います。

それぞれの装具の特徴を理解し、患者さんの症状や回復度合いに合わせて、最適な装具を使用します。装具は、医師の処方をもとに作製すれば、健康保険の適用となります。

その他、必要に応じて階段昇降やバランス練習など、患者さん毎に練習内容を計画し、実施していきます。

【3】作業療法

■サンディング

・傾斜したボードを上下方向に滑らせるもの
・関節の動きの改善や麻痺側の手の機能回復を目的として行う

■ペグボード

・麻痺した手でペグ(木釘)をボードに差し込んだり、ペグを指先でつまんで反転させたりするもの
・手指の巧緻性(つまんだり、離したりする機能)を高める目的で行う

【4】言語聴覚療法

言語機能の障害は大きく「失語症」と「構音障害」にわけられます。

① 失語症
失語症になると「話す」ことだけでなく「聞く」、「読む」、「書く」ことも難しくなります。失語症には次のような種類があり、「聞く」「話す」「読む」「書く」などの言語機能について評価し、コミュニケーション能力の向上に必要な訓練・助言を行います。

・運動性失語 言葉を聞くと理解はできるのに、うまくしゃべれない
・感覚性失語 言葉を聞いても理解ができず、言い間違い(錯語)が多い
・健忘失語 よく話を理解し流暢な話し方なのに、物の名前が出てこないために回りくどい話し方になる
・全失語 「聞く、話す、読む、書く」すべてに重度の障害がある

② 構音障害(運動性構音障害)
一方で「構音障害」は、脳卒中によって言葉を話すのに必要な舌や口唇、声帯など発声発語器官の麻痺や、それらの動きをうまくコントロールできず(失調)、呂律(ろれつ)が回らなくなり発音が不明瞭となる状態です。

麻痺の程度について評価し、より明瞭に発音できるよう発声・発語の練習を行います。重症の患者さんには、状態に合わせて筆談や五十音表の使用など、代わりのコミュニケーション手段の提案を行います。

【5】摂食・嚥下機能療法

脳卒中をきっかけに、食べたり飲んだりすることへの障害(摂食・嚥下障害)が起こる場合があります。

このような場合、医師や看護師、栄養士などが連携を取りながら、嚥下機能の評価・訓練を行い、患者さんの障害程度に応じ、食べる際の姿勢や、食べる物の柔らかさ、形を調整し、摂食・嚥下能力を高める練習をします。

再生医療という選択肢

脳卒中のリハビリは、これまで不通にできたことが、できなくなるため、嘆きたくなりますが、粘り強く続けることが大切です。そんな時、ともすれば挫折しそうにもなるものです。

そこで、お知らせしたいのが「再生医療」という最先端の医療分野の可能性についてです。

これまで脳の血管が破れたり、詰まったりすると脳細胞に血液や栄養が届かず約3~6時間で脳細胞が死に至り、元には戻らないと言われてきました。

しかし、再生医療によって一度機能しなくなった脳細胞が復活し、後遺症を改善できることが分かってきたのです。患者様ご自身の幹細胞を用いて脳細胞を再生させる可能性があります。

安全性が高く効果があると認められ、世界でも注目されている治療法です。詳しくは以下よりお確かめください。

No.034

監修:医師 坂本貞範

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