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【医師監修】くも膜下出血の退院後に気をつけることは?食事や運転など生活習慣について詳しく解説
くも膜下出血は、急性期の治療を終えて退院したあとも注意が必要な病気です。
再発予防のためには、血圧管理や服薬の継続、食事、生活リズムの見直しが欠かせません。
とくに退院直後は、「何に気をつければ良いのか」「運転や仕事はいつ再開できるのか」と迷いやすい時期です。
本記事では、くも膜下出血の退院後に気を付けることを、血圧・食事・運動・飲酒・喫煙などの生活習慣を中心に解説します。くも膜下出血の再発を防ぎ、日常生活を無理なく立て直すための参考にしてください。
なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療による脳卒中の治療を行っております。気になる方はぜひ、公式LINEにご登録ください。
目次
くも膜下出血の退院後に気をつけること5選
くも膜下出血の退院後は、再発を防ぎながら日常生活を過ごすことが重要です。
脳卒中後の生活では、治療の継続だけでなく、日々の自己管理やリハビリテーションの積み重ねが再発予防につながります。
血圧、食事、運動、服薬、嗜好品の見直しを意識しながら、退院後の安定した日常生活を送りましょう。
1.血圧の定期的な測定・記録
退院後の再発予防で、重要な管理項目の一つが血圧です。
高血圧は脳卒中全般の主要な危険因子であり、くも膜下出血の再発予防でも継続的な管理が欠かせません。
高血圧症によるくも膜下出血の再発を防ぐためには、定期的に血圧を測定し、記録しておきましょう。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2025」では、個別の状況を考慮した上で、年齢を問わず以下の降圧目標が設定されています。(文献1)
- 診察室血圧:130/80mmHg未満
- 家庭血圧:125/75mmHg未満
病院では緊張して血圧が上がることもあるため、自宅でリラックスしているときの「家庭血圧」を把握することが重要です。
毎日、朝(起床後1時間以内)と夜(就寝前)の2回、決まったタイミングで測定し、血圧手帳に記録しましょう。この記録は、主治医が薬の調整や治療方針を判断する際の非常に重要なデータとなるため、定期受診の際に必ず持参してください。
2.指示通りの服薬
くも膜下出血の背景には、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が潜んでいることもあります。
そのため、くも膜下出血そのものの治療が終わっていても、再発予防のために基礎疾患を適切に管理する必要があります。
処方された降圧薬や血糖降下薬などは、状態の安定に不可欠なため、症状が落ち着いていても指示通りに服用しましょう。
なお、副作用が気になる場合は、自己判断で中止せず医師や薬剤師に相談してください。
3.塩分を控えたバランスのよい食事
食事では、塩分のとり過ぎを避けることが重要です。
塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、脳卒中再発のリスクを高めます。
減塩の工夫として、以下のような点を意識しましょう。
- 調味料を減塩タイプに変える
- 出汁や酸味を活用して味を調える
- 外食や加工食品を控える
また、意外に見落としがちなのが「排便時のいきみ」です。
強くいきむと血圧が急上昇するリスクがあります。こまめな水分補給や食物繊維が豊富な食べ物を摂取して、便秘解消を心がけましょう。
4.適度な運動と規則正しい生活リズム
退院後の生活において、リハビリテーションは非常に重要です。
病院でのリハビリだけでなく、普段の食事や着替え、入浴、家事といった「身の回りのこと」をできる限り自分で行うこと自体が、大切なリハビリの一環となります。
さらに歩行が安定している場合は、散歩や軽いストレッチを無理のない範囲で取り入れると良いでしょう。
病院や通所リハビリで指示された運動がある場合は、自己流で行うより、決められた内容を継続する方が安全です。
また、生活リズムを整えることも重要です。
睡眠不足や昼夜逆転した生活、過度な疲労やストレスは血圧や体調の乱れにつながります。起床時間と就寝時間をできるだけ一定にし、食事の時間も大きく崩さないことが望まれます。
退院後の生活を安定させることが、再発予防の基本です。
再発リスクを減らす予防法やくも膜下出血の再発率については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】
【医師監修】くも膜下出血の後遺症とは?症状の種類や回復の可能性を解説
【医師監修】くも膜下出血の再発率は?生存率や再発時の前兆も紹介
5. 禁煙と控えめの飲酒
くも膜下出血の再発予防の観点から、禁煙は重要です。
喫煙により、タバコに含まれる成分が血管を収縮させて血圧を上げ、血管壁を傷つけるためです。
また、飲酒は、量が多いほどリスクが高まることが知られています。
日本人を対象にした研究では、男性の大量飲酒はくも膜下出血のリスクを4倍にし、高血圧がある人では13倍に増加することが報告されています。(文献2)
自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来の受診も検討してください。
普段から飲酒の習慣がある方は、休肝日を設けて、主治医と相談の上で適量を守りましょう。
くも膜下出血退院後の仕事復帰の目安
仕事復帰のタイミングは一律ではなく、後遺症の有無や程度、職種、勤務内容によって異なります。
厚生労働省の脳卒中に関する資料では、脳卒中後の復職は発症から3カ月〜6カ月ごろと、1年〜1年6カ月ごろに多いとされており、最終的な復職率は50〜60%と報告されています。(文献3)
退院できたからすぐに元どおり働けるとは限らず、焦らず段階を踏むことが大切です。復帰時期は自己判断ではなく、主治医の許可を得た上で決める必要があります。
また、復帰の際は以下のステップを踏むことが重要です。
- 段階的な復帰:最初は「時短勤務」や「デスクワークなどの軽作業」から始め、徐々に本来の業務強度に戻していくのが理想的です。
- 「見えない後遺症」への配慮:身体的な麻痺がなくても、脳へのダメージにより「以前より疲れやすい」「集中力が続かない」「物忘れが激しくなる」などの症状が出ることがあります。
- 職場との連携:会社側には病状を正しく伝え、必要に応じて産業医とも面談を行いましょう。周囲の理解を得ておくことで、無理のない範囲で業務を継続しやすくなります。
くも膜下出血退院後の運転再開の時期
くも膜下出血後の運転再開は、本人の判断だけでは決められません。
車の運転再開については、身体機能だけでなく、判断力や注意力が十分に回復しているかを慎重に見極める必要があります。
運転を再開するには、以下の2つの許可が必須となります。
1. 医師の許可:主治医による医学的な判断です。
2. 公安委員会の許可:脳卒中など一定の病気を発症した後は、運転免許試験場などの「運転適性相談窓口」へ届け出を行い、安全に運転できる状態であると認められる必要があります。
これらの許可を得ないで運転し事故を起こした場合は、法的・社会的に厳しい責任を問われることになります。
まずは主治医に相談し、適切な手続きを進めましょう。
くも膜下出血退院後の一人暮らしで気をつけること
後遺症が軽く一人暮らしを継続する場合、異変が起きた際にすぐに助けを呼べる体制作りが重要です。
- 緊急時の連絡体制:家族や近隣住民、かかりつけ医と情報を共有しておきましょう。「毎日決まった時間に連絡を入れる」といったルール作りも有効です。
- 救急車を呼ぶ判断基準の再確認:「突然の激しい頭痛」「片側の麻痺」「ろれつが回らない」といった症状が出た際は、迷わず119番通報してください。
- 自己管理の仕組み化:一人だと怠りがちな「血圧記録」や「服薬」を継続するため、アラーム機能付きの血圧計やお薬カレンダーを活用しましょう。
- 見守りサービスの活用:自治体や民間企業が提供している「緊急通報システム」や、ウェアラブル端末(スマートウォッチ等)の転倒検知機能を導入すると、万が一の際の安心感が高まります。
かかりつけ医療機関の連絡先をすぐ見られる場所にまとめ、緊急時に誰へ連絡するかを決めておくと安心です。
退院後のくも膜下出血患者に対して家族ができること
家族のサポートは再発予防と心の安定に大きな役割を果たしますが、過度な干渉は本人のストレスになることもあります。
- 自立を尊重した見守り:日常生活そのものがリハビリになるため、すべてを手伝うのではなく、本人ができることは見守り、できない部分をサポートする姿勢が大切です。
- 健康管理の共有:血圧の記録や服薬が正しく行われているか、サポートしましょう。家族も一緒に減塩食に取り組むことで、本人の孤独感を和らげることができます。
- 再発サインの把握:本人が異変を自覚できない場合もあります。家族も頭痛、吐き気、意識の混濁といった再発の兆候を正しく理解しておきましょう。
- 外部サポートの活用と介護認定:家族だけですべてを抱え込むと、共倒れのリスクがあります。デイサービスや訪問看護などの外部サービスの活用も考慮してください。支援が必要な状態では、介護認定の申請も検討しましょう。
家族が支援するときは、自立を尊重しながら見守る姿勢が重要です。
くも膜下出血の再発予防に「再生医療」という選択肢
くも膜下出血の再発防止や、残ってしまった後遺症を改善するための新しい選択肢として、近年「再生医療」が大きな注目を集めています。
これまでのリハビリテーションは「残された機能をどう使うか」という訓練が中心でしたが、再生医療は、患者さん自身の細胞の力で傷ついた組織そのものの修復を促すという、まったく異なるアプローチをとります。
- 自身の細胞を活用:患者さん自身の脂肪から採取した「幹細胞」を培養し、体内に戻す治療法です。自分自身の細胞を用いるため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いのが特徴です。
- 血管内皮の修復をサポート:損傷した脳の血管内皮の修復を促す働きが期待されています。これにより、従来の治療法だけでは対応が難しかった脳血管障害の再発予防や、神経機能の改善への応用が進んでいます。
- 身体への少ない負担:脂肪の採取は、局所麻酔下でごく小さな切開を行うだけで済むため、入院の必要もなく身体への負担は最小限で済みます。
「これ以上の回復は難しいと言われたけれど、諦めたくない」「手術以外の方法で再発リスクを下げたい」という方にとって、再生医療は非常に有力な選択肢の一つとなります。
くも膜下出血の後、幹細胞治療を受け10年来の後遺症から解放された方の症例をご覧ください。
また、脳卒中の再生医療について詳しく知りたい方は以下ページもご覧ください。
脳卒中のお悩みに対する新しい治療法があります。
くも膜下出血の退院後に気をつけることを把握して再発を予防しよう
くも膜下出血の退院後は、次の5つを生活の基本として続けることが大切です。
- 血圧を定期的に測定し、記録する
- 処方された薬を指示通りに服用する
- 塩分を控えたバランスの良い食事を心がける
- 適度な運動と規則正しい生活リズムを続ける
- 禁煙を徹底し、飲酒は控えめにする
再発予防では、ひとつの対策だけに頼るのではなく、生活習慣全体を整えることが重要です。
仕事復帰、車の運転、そして一人暮らしの継続については、「主治医への相談と許可」が前提です。焦らず、段階を踏んで社会復帰を目指しましょう。
退院後の生活に不安がある方や、後遺症や再発予防について詳しく相談したい方は、一人で抱え込まずにぜひ当院へご相談ください。
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退院後のくも膜下出血に関するよくある質問
くも膜下出血の生存率はどのくらいですか?
くも膜下出血の生存率は、発症時の重症度や年齢、治療までの速さによって大きく異なりますが、5年生存率はおよそ55%程度と報告されています。発症後30日時点の生存率は70.1%で、早期に死亡する例が少なくないことも示されています。(文献4)
意識障害が強い状態で救急搬送された人と、比較的軽い段階で受診できた人では予後が異なります。
治療開始が遅れるほど重症化しやすいため、突然の激しい頭痛やろれつが回らない、意識低下などがあれば早急な受診が重要です。
くも膜下出血後の食事で避けた方が良い食べ物はありますか?
基本的には「これを食べてはいけない」という絶対的な食べ物はありませんが、血圧上昇や動脈硬化を招く成分には注意が必要です。
以下の表を参考に、摂取頻度を調整しましょう。
|
多量摂取を避けた方が良い成分 |
食品例 |
リスク |
|---|---|---|
|
塩分 |
たらこ ウインナー 漬物 |
血圧上昇 |
|
飽和脂肪酸・トランス脂肪酸 |
バター インスタント食品 揚げ物 |
動脈硬化の進行 |
|
糖質(炭水化物) |
スナック菓子 菓子パン 甘い清涼飲料水 |
動脈硬化 肥満 |
完全に控えるのが難しい場合は、食べる頻度を減らすことからはじめましょう。
退院後にみられる後遺症にはどのようなものがありますか?
くも膜下出血は、出血の部位や量、合併症の有無によって、退院後も以下のような後遺症がみられることがあります。
- 手足が動かしにくい
- 触覚が鈍くなる
- 食べ物が飲み込みにくくなる
- 視野が狭くなる
- うまく話せない
- 最近の出来事を思い出せない
軽度の場合はリハビリを通じて発症前とほぼ変わらない生活が可能となる一方で、重度の場合は日常生活サポートが必要になることもあります。
くも膜下出血の詳細は以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
くも膜下出血の再発リスクはどれくらいですか?
再発(再出血)のリスクは、治療の状態や経過期間によって異なります。
未治療の状態:発症初日の再出血率は3〜4%と高く、その後4週間は1日あたり1〜2%の割合で発生します。発症から1カ月で20〜30%、その後は年間約3%の割合で再出血が起きるとされています。(文献5)
手術(完全クリッピング術)後:適切に処置が行われた場合、再発率は大幅に低下します。術後3年以上生存した方の長期追跡調査では、10年時点での累積再出血率は2.2%、20年時点でも9.0%という報告があります。(文献6)
手術を受けたからといってリスクがゼロになるわけではありませんが、正しい生活習慣を維持することで、再発の可能性を極めて低く抑えることが可能です。
再発率については、以下記事もご参照ください。
参考文献
脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究:栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較|第35回日本脳卒中学会
脳卒中治療ガイドライン2009 Ⅳ.クモ膜下出血|日本脳卒中学会
Risk of recurrent subarachnoid hemorrhage after complete obliteration of cerebral aneurysms|Stroke





















