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- 変形性股関節症
【医師監修】高齢者が股関節手術を受けるリスクを解説|年代別で控えた方がいい理由も紹介
「80代の親が股関節の手術を勧められた」
「高齢者が人工股関節手術を受ける場合、なんらかのリスクがあるのではないか?」
「高齢者でも手術を受けられるのだろうか」
このように心配されるご家族も多いことでしょう。
変形性股関節症が進行した場合の選択肢としてあげられるのが、人工股関節置換手術です。しかし、高齢者は若年層の方より、股関節の手術によるリスクが高まる可能性があります。
本記事では高齢者が人工股関節手術を受ける場合のリスクや、手術をするかどうか迷いがある場合の考え方について解説します。
股関節治療における手術以外の新たな選択肢についても解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
【変形性股関節症】高齢者に多い人工股関節手術のリスク
高齢者が変形性股関節症のため人工股関節手術を受ける場合、さまざまなリスクが想定されます。この章では、手術前および手術中、手術後のリスクについてそれぞれ紹介します。
手術前および手術中に考えられるリスク
高齢者は、多方面において手術前および手術中のリスクが高い状況です。その1つが、麻酔によるリスクです。日本老年麻酔学会の報告では、高齢者の周手術期における合併症発生率は全年齢と比較して高いことが示されました。主な例は以下のとおりです。(文献1)
- 心筋梗塞:約5倍
- 重症不整脈:約10倍
- 肺塞栓:約7倍
- 脳血管障害:約40倍
周手術期とは、入院から手術を経て、退院するまでの一連の期間を指します。
高齢者の手術リスクは麻酔だけではありません。高血圧や糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持つ方は、手術時の血圧や血糖コントロールが難しくなると言われています。血圧や血糖コントロールが難しい場合、合併症の発症率が高まるため、手術前の身体状況評価がとくに重要です。
糖尿病を有する高齢者は感染症や心筋梗塞、腎不全などの術後合併症リスクが高いとされています。(文献2)
また、年齢に伴って血管がもろくなったり免疫機能が低下したりするため、感染リスクや止血が困難になるリスクも想定されます。
手術後に起こりやすい合併症のリスク
高齢者は身体の予備能力が低下しており、合併症を起こした際に重症化しやすいとされています。(文献3)股関節手術後の主な合併症としてあげられるものは、脱臼や感染症、深部静脈血栓症などです。
また高齢者は、術後せん妄を引き起こす可能性が高いとされています。術後せん妄とは、手術をきっかけにして起こる精神障害です。人工股関節置換術は術後せん妄を引き起こしやすい手術の1つとされています。(文献4)
術後せん妄の具体的な症状を以下に示しました。
- 急激な見当識障害
- 幻覚
- 錯乱
- 妄想
見当識障害とは、今いる場所や今の時間および曜日などがわからなくなる障害です。
人工股関節置換術後の長期的な合併症としては、人工関節のゆるみがあげられます。
【年代別】リスクから見る股関節手術を控えたほうがいい理由
この章では股関節手術を控えた方が良い理由を、高齢者と若年層に分けて解説します。
高齢者に限らず、若年層も手術リスクが存在すると知っておきましょう。
人工関節手術のリスクおよびメリットやデメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
80代以上|手術後のリハビリが難航する
一般的に、80代以上の高齢者は股関節症手術を控えたほうが良いと言われます。
その理由の1つとしてあげられるものが、手術後のリハビリです。80代以上の高齢者の場合、体力や筋力などの衰えにより手術後のリハビリが難航する傾向にあります。そのため、若年層の方よりも根気強さや「リハビリを頑張りたい」といった強い意志が必要です。
医療機関でのリハビリが順調に進んでも、退院後の支援体制が整っていない場合、身体機能が再び低下したり寝たきりになったりする可能性もあります。
高齢者の股関節手術後のリハビリは、長期的な視点で考えることが必要です。
高齢者が手術を受ける場合の体力や心肺機能への影響
高齢者の場合、体力や心肺機能の面でリスクが高いことから手術を控えたほうが良い場合もあります。
たとえ本人や家族が手術を希望していたとしても、持病や年齢によって既に心肺機能が低下している場合は、手術が受けられないケースも少なくありません。
股関節の手術は一般的に全身麻酔にて実施するため、心肺機能が低下した状態で受けることは、非常に大きな危険が伴うためです。
90代で手術を受けた症例もあるがリスクが大きい
90代で変形性股関節症の手術を受けた症例もあります。つまり、人工関節の手術自体は高齢が理由で妨げられるものではありません。
ただし、手術後はある程度高度なリハビリが必要となるため、リハビリに耐えられる体力がある方に限られます。
逆にリハビリができない場合は、手術後寝たきりになるリスクもあり、手術を受けた意味がなくなる可能性も少なくありません。そのような状況にならないためにも、手術については医師としっかり相談して進める必要があります。
家族による術前の同意や術後の協力も必要不可欠です。
若年層|比較的リスクは低いが注意点もある
40〜50代で人工股関節手術を選ぶ方は、体力や回復力があるため、手術リスクは比較的低いとされます。
一方で、人工関節には寿命があるため、将来的に再手術が必要になる可能性が高いでしょう。とくに、身体を動かす仕事の方やスポーツを続けたい方にとっては、術後の可動域制限や人工関節の耐久性が懸念材料です。
保存療法で股関節痛が改善せず、日常生活に支障をきたしている場合には、QOL(生活の質)を優先して手術を受ける選択肢もあります。自分自身の生活スタイルや将来の見通しを踏まえて、慎重に判断しましょう。
【高齢者の股関節手術】リスクから判断に迷ったときの対処法
高齢者の股関節手術にはさまざまなリスクが存在します。そのため、手術に関する判断に迷うことも多いでしょう。
この章では、手術への判断に迷ったときの対処法について解説します。
体力や持病および生活環境などから考える
高齢者は高血圧や糖尿病、心疾患といった基礎疾患を有する方が多く、手術リスクが高い状況です。
手術後のリハビリを受けるときも体力が必要になるため、日常的な運動量や栄養状態も広い意味では手術の判断材料になります。
自宅に段差が多い、寝室が2階にある、1人暮らしで家族のサポートが得られにくいなど、生活環境を具体的に考慮する必要もあります。手術やリハビリを終えて退院しても、生活環境が整っていないと日常生活に支障をきたすためです。
家族による支援や各種介護サービス利用の有無など、退院後の支援体制も手術に影響すると知っておきましょう。
医師に質問する
手術に関して迷いや不安がある場合は、遠慮せず医師に質問しましょう。
迷いや不安が解消されると、手術を受ける受けないを含めて納得した結論を出せます。
医師に質問するときは、事前に質問事項を整理しておくと良いでしょう。例としては以下のようなものがあげられます。
- 手術のメリットおよびデメリット
- 合併症のリスク
- 術後の回復見込み
- リハビリの流れ
医師に直接質問しにくい場合は、看護師や医療ソーシャルワーカーに相談するのも1つの方法です。
セカンドオピニオンを活用する
高齢者が股関節の手術を受ける場合、家族が「本当にこの判断で良いのだろうか」と不安を感じることも少なくありません。そのようなときは、主治医とは別の医師に意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用するのも1つの方法です。
セカンドオピニオンを受けると、治療方針や手術リスクについて複数の視点から判断できるため、本人や家族にとって納得できる方法を選びやすいでしょう。
セカンドオピニオンを受けたい場合、まずは主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。
高齢者の股関節手術リスクを理解した上で再生医療も検討してみよう
高齢者が股関節の手術を受ける場合、手術前や手術中、手術後にさまざまな合併症が発生するリスクがあります。一般的に股関節の手術は、全身麻酔による大掛かりなものです。そのため、手術を受ける方の年齢や生活環境なども見据えた上で手術を受けるかどうか判断する必要があります。
また、股関節の手術後はリハビリが必要ですが、そのリハビリは年齢が高くなるにつれて難しくなる場合もあります。そのため、股関節痛を手術で改善したいけれど、手術を受けられない方も少なくありません。
そこで紹介したいのが、近年注目されている再生医療です。
再生医療は、人工関節を入れる手術と比べても治療期間が少なく、副作用のリスクも少ない治療です。そして、年齢が高くても治療できる可能性があり、高い治療効果も期待できます。
体力面や心肺機能などで手術に不安がある方や、治療期間を短くしたい方、なるべく体に負担が少ない治療を受けたい方は、再生医療を検討してみてはいかがでしょうか。
股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
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高齢者の股関節手術や再生医療に関してなど、お気軽にご相談ください。
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高齢者の股関節手術とリスクに関するよくある質問
高齢者が人工股関節手術後に歩けるようになるまでどのくらいかかりますか?
個人差はありますが、手術後1~3か月目が安定した歩行を目指す段階とされています。それまでに、寝返りや起き上がりの練習、筋力回復訓練、歩行器や杖を使った歩行訓練などが段階的に行われます。
高齢者の人工股関節置換術後のリハビリについては下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:高齢者の人工股関節置換術後のリハビリ内容とは?歩けるようになるまでの流れを解説
人工股関節手術後に「歩けない」と感じる原因は何ですか?
原因として考えられるのは、主に以下のような状況です。
- 手術の傷から細菌感染が生じて人工関節周囲に炎症が起きている
- 手術後のリハビリが不足している
- 充分に回復していない中でのリハビリにより股関節周囲に負担がかかっている
歩けないと感じる場合は、我慢せず医師やリハビリ専門職に相談しましょう。
人工股関節置換術後の痛みがなかなかとれない場合はどうしたらいいですか?
人工股関節手術後、約10%の割合で慢性的な痛みが発生しているとの研究データもあります。(文献5)
痛みがとれない場合の治療法としては、鎮痛剤の処方や適切なリハビリなどがあります。再手術を行うケースもありますが、その場合は回復に時間がかかることを知っておきましょう。
いずれにしても、痛みが続くときは我慢せずに主治医に伝えましょう。
人工股関節置換術後の痛みが取れない状況については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
参考文献











