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人工関節置換術後の痛みが取れない原因は?対処法などを現役医師が解説
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「人工関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」
「痛みの原因がわからず不安」
人工関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。
そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。
そこで今回は、人工関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。
目次
人工関節置換術後の痛みが生じる原因
まず人工関節置換術後に痛みが生じるのは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる状態です。
人工関節置換術後、痛みは多くの場合数週間から3カ月程度で回復します。
しかし、痛みが気になる方や長引いている方は、主に以下の原因から生じている可能性があります。
- 手術による損傷
- リハビリ不足
- 感染(合併症)
- 人工関節の耐久性の問題
それぞれ詳しく解説していきます。
原因1:手術による損傷
人工関節置換術後に生じる痛みの原因は、手術による損傷が代表的な理由です。
人工関節置換術は、患部の股関節の骨を削る工程があるため、体への負担がかかる治療法です。骨を削るだけでなく、人工関節の埋め込みに伴い、筋肉や血管などを傷つけてしまいます。
手術をしている最中に神経が引っ張られて損傷し、足の感覚が鈍くなる症例も認められています。
多くの場合、手術による損傷は一時的で回復する傾向にはありますが、長引いている方は早めに担当医師に相談しましょう。
以下の記事では、人工関節における年代別のリスクも取り上げているので、あわせてご覧ください。
原因2:リハビリ不足
人工関節置換術後に痛みが生じる原因には、リハビリ不足もあげられます。人工関節置換術後のリハビリは、関節の動きを改善するだけでなく、筋力強化が主な目的です。
リハビリが不足していると、筋肉や靭帯への負荷がかかります。無理に歩くと人工関節周辺にかかった負担が炎症につながってしまうのです。逆に早く痛みを改善しようと、無理なリハビリをおこなってしまうのも注意が必要です。
適切なリハビリ方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
原因3:感染(合併症)
人工関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。
痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続いたり、強くなったりする方は注意が必要です。
感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感、発熱、倦怠感を伴う場合もあります。
なお、以下の危険因子(特定の病気や状態を引き起こす可能性がある要因)がある方は感染症にかかるリスクが高いため、注意してください
- 肥満
- 糖尿病
- 関節リウマチ
- 心血管障害など
人工関節置換術後に痛みだけでなく、感染を疑わせる症状を伴う場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
高齢者の方は、危険因子以外に注意しておきたい手術のリスクがあるため、以下の記事もあわせてご覧ください。
原因4:人工関節の耐久性の問題
人工関節の耐久性も術後に痛みを感じる原因の1つです。
人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。しかし、日常生活において過度に負担をかけていると、耐久性に問題が生じてしまいます。
術後は3カ月、6カ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。
人工関節への負担を抑えるために、杖のような生活支援用具を使用した生活がおすすめです。
さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどの実施をおすすめします。
ジョギングや器械体操、シングルテニスなどを含め、走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。
万が一、違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに医師にご相談ください。早期発見や対処が、人工関節の長期的な機能維持につながります。
人工関節置換術後の痛みに対処する方法
人工関節置換術後の痛みが気になる方には、以下の方法で対処しています。
- 薬物療法
- リハビリ
- 再手術
それぞれ詳しく解説していきます。
薬物療法
人工関節置換術後の痛みに対処するため、まずおこなわれるのが薬物療法です。
主に、炎症を抑えるためにロキソニンのような痛み止めを処方します。ただし、薬物療法の場合は根本的な解決を目的にしているわけではないため注意してください。
また、薬によっては胃腸障害や眠気などの副作用が伴うケースがあります。長期間使用すると、効果が薄れてしまうため、あくまで一時的な対処と覚えておきましょう。
リハビリ
人工関節置換術後の痛みには、適切なリハビリも重要です。
効果的なリハビリは、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。
具体例をあげると、以下のようなリハビリを実施しています。
種類 |
内容例 |
---|---|
関節可動域訓練 |
足首の曲げ伸ばし 膝の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ |
筋力増強運動 |
踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 |
歩行練習 |
平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き |
バランス運動 |
足踏み運動 |
日常生活動作の訓練 |
階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 |
複数の運動を組み合わせ、患者様の状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。
再手術
人工関節置換術後の痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。
- インプラントの緩み
- 感染
- 関節の不安定性
- 周囲組織の炎症や損傷
診断により原因を特定し、必要に応じて再手術を検討します。
再手術では、緩んだインプラントの交換や、感染組織の除去、位置の修正などを行うことで、多くの場合症状の改善が期待できます。一方で、回復そのものに時間がかかってしまう点には注意が必要です。
人工関節置換術後の痛みには再生医療が1つの選択肢になる
人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。
再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。手術と比べて体への負担が少なく、軟骨の再生や炎症の軽減により、痛みの改善が期待できます。
従来の人工関節置換術後の痛みに対する治療は、薬物療法やリハビリといった保存的治療、または再手術が一般的でした。しかし、再手術には入院期間や回復期間が必要で、手術に伴うリスクも考慮する必要があります。
再生医療は、そのような手術のリスクを避けながら、痛みの軽減と関節機能の改善を目指す新しい治療選択肢です。
再生医療について、より詳しい情報は以下のページでご紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。
人工関節置換術後の痛みについて、再手術以外の新たな選択肢として再生医療があります。再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。
手術を必要としないため体への負担が少なく、治療により炎症の軽減や症状の改善が期待できます。
再生医療について詳しくは、以下のページで紹介しています。痛みでお悩みの方は、ぜひご覧ください。
まとめ・人工関節置換術後の痛みが気になったら早めの受診を!
今回は人工関節置換術後の痛みを感じる原因や対処法について解説しました。
人工関節置換術後の痛みの原因として、手術による損傷やリハビリ不足などがあげられます。
痛みを早く解決するために無理なリハビリをするのはおすすめできません。症状の改善には、専門医による適切な指導のもとでリハビリを進めることが大切です。
また、人工関節の不安定性や炎症が痛みの原因の場合は、再手術が検討されます。「手術を避けたい」とお考えの方には、手術に頼らない再生医療という選択肢もあります。
当院「リペアセルクリニック」では幹細胞を用いた再生医療を行っています。
当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、痛みにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
\まずは当院にお問い合わせください/
人工関節置換術後の痛みの原因が知りたい方からのよくある質問
そもそも人工関節置換術後の痛みはいつまで続くの?
人工関節置換術後の痛みは、手術した日とその翌日をピークに、1週間程度続きます。痛みは次第に回復し、手術後に処方された痛み止めを徐々に減らしていきます。
術後のつっぱり感も多くの場合、半年程度で回復しますが、長期的な健康維持が大切です。
なお、仕事の完全復帰や旅行、スポーツなどを考えている方は6カ月〜1年程度と考えてください。
無理をしてしまうと、痛みが続く期間が伸びる可能性があるため、定期的な受診をおすすめします。
以下の記事では人工関節置換術について、知っておきたいポイントを網羅的に解説しています。
人工関節置換術後にやってはいけないことは?
人工関節置換術後、やってはいけない姿勢や動きがあります。
たとえば、横座りやあぐら、足組みなどがあげられます。和式トイレの使用や前傾姿勢も、脱臼の可能性があるので、控えてください。
また、人工関節置換術後は適度な運動が推奨されていますが、野球やテニスのような関節の動きが多いスポーツは避けましょう。
日常生活でも階段の利用は控え、立ちっぱなしの時間が長くならないよう、座ってできる作業をおすすめします。
転倒にも注意が必要なため、術後はとくに杖やストックを使って歩くのがおすすめです。
自宅でできる予防法はある?
自宅で簡単に行える予防法は、以下のようなエクササイズです。
エクササイズ |
内容 |
目的 |
---|---|---|
足関節ポンプ運動 |
仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する |
浮腫の軽減 |
ストレートレッグレイズ |
手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する |
太もも前面の筋力強化 |
膝の屈曲・伸展運動 |
椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする |
関節可動域の維持 |
上記のエクササイズを毎日行うと、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。
しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。
なお、エクササイズだけでなく、日頃の感染予防も大切です。手術した部位を清潔に保てるよう、定期的な受診や抗菌薬の服用が主な予防法です。
発熱や腫れ、痛みが生じた場合は速やかに担当医に相談してください。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。
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監修者
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坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。