トピックスtopics

脊柱管狭窄症でやってはいけないこと

脊柱管狭窄症でやってはいけないこと

あなたは脊柱管狭窄症が『薬で治る』と思っていませんか?

多くの日本人を悩ます、腰痛。腰痛の原因は様々ありますが、よく耳にする病名の一つに「脊柱管狭窄症」というのがあります。

本記事では、聞いたことあるけどイマイチよく分からない脊柱管狭窄症の原因や症状、治療法、そして脊柱管狭窄症との向き合い方を分かりやすく説明します。

脊柱管狭窄症とは?

脊柱管狭窄症は、50代以降の中高年に多く発症する腰部の疾患です。

脊柱とは24個の背骨(椎骨)で構成されており、それらが連なることで縦に長いトンネルができます。そのトンネルが脊柱管と呼ばれ、脳から伸びる脊髄神経が通る場所になります。

脊髄神経は、脳からの指令を手脚に伝えたり、手で触れたものなどの情報を脳に伝える役割をしており、その脊髄神経を保護する役割を担うのが脊柱管です。

脊柱管狭窄症は、その名の通り脊柱管がなんらかの原因により狭くなってしまい、脊柱管を通る神経や血管を圧迫している状態のことを指します。

脊柱管狭窄症でやってはいけないこと

出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html

脊柱管狭窄症の症状・原因

脊柱管狭窄症の症状は多岐にわたります。症状の中で当てはまるものがないかチェックしましょう。

脊柱管狭窄症の症状

脊柱管狭窄症の症状で特徴的なものに間欠性跛行があります。しばらく歩いていると下肢の痛みや痺れがひどくなり、歩くのが困難になります。

しかし、しばらく座ったり前屈みになったりして休んでおくと症状が落ち着き歩けるようになるのです。間欠性跛行以外にもさまざまな症状がありますので下記をご参照ください。

【脊柱管狭窄症の症状の例】

  • ・おしりから脚にかけての痛みや痺れがある
  • ・脚に力が入らない
  • ・長く歩いたり、立ったままになるのが辛い
  • ・歩いているときに症状が出ても、少し休憩すれば症状が和らぐ
  • ・体を反らす動きがしづらい
  • ・体を前屈させると症状が楽になる
  • ・尿漏れなどの排尿・排便障害がある

脊柱管狭窄症の症状の例

出典「日本整形外科学会」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spondiyolysis.html

脊柱管狭窄症になる原因

脊柱管狭窄症がどのように生じるのか簡単に説明しました。ではなぜ狭窄が起こってしまうのでしょうか?

原因はさまざまありますが、ここでは3つ紹介します。

①加齢による骨や軟部組織の変性が起こる

人間の体は20歳代半ばをピークに成長し、30歳を超えたあたりから機能が落ちてくると言われています。特に中高年では、加齢に伴う体の変化が顕著です。

そのため、背骨を構成する椎骨の変形や、椎間板の変性靭帯の肥厚などが生じ、脊柱管が狭くなると言われています。

②先天的な疾患によるもの

稀にですが、先天的に生じる脊柱管狭窄症があります。発育段階で脊柱管が狭くなっているせいで、比較的若い年代で症状が発症します。

割合としてはかなり少ないですが、比較的若い年代で上記の症状を有している人がいましたら詳しい検査を受けましょう。

③普段の姿勢や体の使い方によるもの

加齢による骨や靭帯組織の変性と合わせて主な原因となるのが日々の姿勢や動作習慣です。特に反り腰の人に多くみられます。

背骨は首から骨盤まで繋がっているため、反り腰の原因は腰だけではありません。胸椎や骨盤、股関節の可動性の低下が影響します。

猫背や偏った姿勢をとることが多い人は特に注意が必要でしょう。

脊柱管狭窄症の診断

脊柱管狭窄症の診断には主にレントゲンやMRIなどの画像診断が用いられます。特に分かりやすいのがMRIで、骨以外の靭帯や椎間板の変性も確認しやすく、診断の手助けとなる検査法の一つです。

また、神経圧迫の程度や他の腰部疾患との鑑別のために、腱反射や感覚検査、筋力測定も行います。

脊柱管狭窄症の治療

脊柱管狭窄症の治療法は様々あります。大まかにいうと、内服やリハビリ、装具などを用いた保存療法と、外科的な処置を行う手術療法に分けられます。

保存療法

保存療法の例は以下です。

薬物療法

神経障害性疼痛という神経由来の痛みに効果的なお薬が処方されることがあります。また、局所の炎症を抑え、血液循環を良くする目的に神経ブロック注射を行うこともあります。

いずれも痛みの悪循環を断つ目的で行う治療法です。

装具療法

腰椎の不安定性がある状態や、圧迫により症状が緩和する場合はコルセットを処方されることがあります。コルセットは、腹圧を高めるサポートをし、背骨を安定させ、余分な筋肉の緊張を緩和する効果があります。

ただし、長期間装着することで腹筋の筋力が低下する可能性もあるため注意が必要です。

リハビリテーション

リハビリテーションは、疼痛の緩和を目的とした物理療法と、関節の動きの改善、筋力の向上、体の使い方を改善させる運動療法からなります。物理療法の中には、電気刺激を与えて痛みを緩和させる電気刺激療法、温めることで痛みを緩和させる温熱療法を用いることがあります。

いずれも運動療法と併用して行うことでより効果が得られます。

運動療法は、理学療法士が中心となって、関節の動きや筋力の改善をサポートします。脊柱管狭窄症では、腰だけでなく、上部体幹(首や胸椎、胸郭など)や骨盤、下肢関節の動きも悪くなっていることが多々あります。

ストレッチや筋力トレーニング、姿勢の指導などその人に合わせたリハビリテーションを提供するのが特徴です。

手術療法

保存療法で症状の改善が見込めない場合や、神経の高度の圧迫により症状が強く出ている場合などには、手術療法を選択することがあります。

手術療法の一つに、狭くなった脊柱管を広げる方法があります。それは、椎弓と呼ばれる脊椎の一部と、肥厚した靭帯を部分的に切除する方法です。この手術により狭窄が解消でき、症状の改善につながります。

また、別の手術療法に、固定術というのがあります。腰椎分離症やすべり症といった背骨の不安定性を伴う脊柱管狭窄症の場合、神経を圧迫している場所の上下の背骨を固定する方法です。

いずれも重度な脊柱管狭窄症に用いられる手術療法ですが、その後のリハビリや生活習慣の見直しが重要となります。

脊柱管狭窄症で気をつけるポイント

脊柱管狭窄症の治療は簡単なものではありません。脊柱管狭窄症は、薬で完全に治る病気でもなく、手術したからといって完全に元のように痛みがとれるわけではないからです。

老化や長年の姿勢、負担のかかる動作の繰り返しなどがいくつも重なって生じるものなので、症状の改善も一筋縄ではいきません。

では、どういうところに気をつけて過ごしていくべきなのでしょうか。

歩き過ぎは禁物

リハビリに来られる患者さんの中には、

「歩くのが大事なんでしょ?」

と言って、痛いのを我慢してより長い距離を歩こうとする方も多くいらっしゃいます。

しかし、前述したように脊柱管狭窄症は間欠性跛行が特徴としてみられ、それだけ負担がかかっている状態なのでかえって痛みが増強することがあります。その結果、さらに悪い姿勢をとってしまう危険性もあるのです。

姿勢や動作の改善が大事

無理な歩き過ぎはかえってよくないとお話しましたが、ではどのように対処していけばいいのでしょうか。

対処法の一つに、ストレッチや筋力トレーニングがあります。それらを駆使して偏った体の状態を戻すことが重要です。

背骨は、首から腰までつながっており、S字にカーブしています。そのカーブによって背骨にかかる負担が分散され、安全に効率よく体を動かすことができます。しかし、脊柱管狭窄症の患者さんはよく反り腰になっているのです。

反り腰になることで、背骨の一つ一つがずれてしまい、その結果、脊柱管が狭くなってしまいます。反り腰は腰だけが悪いのではなく、首や胸椎など腰以外に原因があることが多いのです。

例えば、背中が丸まってしまうと、バランスをとろうとして自然と腰が反ってしまいます。スマホ首や、肩こりが多い人も要注意です。

そんな人は、首から肩周りにかけてストレッチをすることをオススメします。特に胸を張る動作がしづらくなっている方も多いので、胸を開くようなストレッチを頑張っていきましょう。

まとめ・脊柱管狭窄症でやってはいけないこと

本記事では中高齢者が悩む「脊柱管狭窄症のやってはいけないこと」について紹介しました。

脊柱管狭窄症は完治が難しく、内服や注射、手術にリハビリと多くの治療法が用いられています。症状を緩和することは大事なことですが、普段の姿勢の改善や無理な動作をしないなど、体を根本から変えることも必要です。

腰の痛みや痺れ、歩きづらさで悩んでいる方は、医療機関でしっかりみてもらうと同時に、普段の生活の中で負担になっている動きがないか、偏った姿勢をとっていないか見直してみましょう。

 

No.S086

監修:医師 加藤 秀一

カテゴリ

人気記事ランキング

イメージ画像トップ