手首が痛い!ドケルバン病とは?その症状と原因、治療法を紹介
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手首が痛むドケルバン病とは?その症状と原因、治療法を紹介
親指や手首を動かすと手首の親指側が痛い、それはドケルバン病かもしれません。
この病気をはじめて発表した、スイスの医師にちなんで名付けられたドケルバン(de Quervain)病。日本では別名『狭窄性腱鞘炎』ともよばれています。
ドケルバン病とはどの部位?
症状が出るのは「手首の親指側」です。この場所は親指を動かす2本の腱が通っています。
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腱とは筋肉の両端にあり、筋肉が骨に癒着する部分です。この腱のまわりを腱鞘(けんしょう)という組織が筒のように包んでいます。
別の言い方をすれば、腱鞘というトンネルを腱がくぐりぬけているようなイメージです。脂肪や筋肉の中に、この腱鞘というトンネルがあることで、腱が滑るように動くことができ、スムーズに筋肉を伸び縮みさせることができます。
親指を動かす「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」は、「手首の部分」で手背第一コンパートメントと呼ばれる腱鞘を通り抜けています。
この部分の腱鞘が炎症を起こしたり厚みが増すと、腱の滑りが悪くなって痛みが現れる、これがドケルバン病です。
ドケルバン病の症状
ドケルバン病では手首の親指側に痛みや熱を持つといった症状が現れます。とくに親指や手首を動かす動作で症状が強くなりやすいという特徴があります。患部を上から押さえると痛みが増します。
以下のような動作で、症状が強くなることが多いと言われています。長期間放置すると手に力が入らないこともあります。
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ドケルバン病の原因
ドケルバン病の原因として多いのは、手や指の使い過ぎと、女性ホルモンの変化です。
手の使い過ぎ
ドケルバン病は、仕事やスポーツ、ゲームなどで、手や指をよく使う人にみられます。
親指の使い過ぎで腱鞘の壁が分厚くなったり、腱の表面に傷がついて、それがさらに刺激となって症状が強くなると考えられます。
スマートフォンの画面をよく親指で操作する人にもドケルバン病を発症する人が多かったことから、スマートフォンが原因で発症したドケルバン病のことを「テキストサム損傷」(サムは“親指”の意味)という言葉で表現する場合もあります。
女性ホルモンの変化
女性では妊娠出産期や更年期にドケルバン病が多くなります。その理由として、この時期には女性ホルモンの量が大きく変化するためと考えられています。
プロゲステロン:
出産後に増加するホルモン。本来はゆるんだ子宮や骨盤を縮めて元に戻すために増加するが、このホルモンが増加すると腱鞘も縮み、腱とこすれやすくなるため、腱鞘炎を引き起こしやすくなります。
エストロゲン:
腱や腱鞘を柔らかく保つ働きがあります。更年期にこのホルモンが減少すると腱や腱鞘が硬くなり、腱鞘炎を起こしやすくなります。
出産後の女性にドケルバン病が増えるのは、女性ホルモンの変化に加え、手をひろげて赤ちゃんの頭を支える動作が、親指をひろげる負荷となることも関連していると考えられています。
ドケルバン病の診断
ドケルバン病の診断方法は、基本的に医師が視診と触診で診断を行います。また、手指及び手首を動かすテストで診断します。
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ドケルバン病の治療
治療には、保存療法から手術療法まで様々な方法があります。
局所の安静
ドケルバン病の多くは、手首の負担を減らすことで改善します。
装具による手首の固定
仕事などでどうしても腕や手首を使う場合は装具で手首を固定します。
投薬
消炎鎮痛剤のシップや塗り薬を使用します。
腱鞘内ステロイド注射
腱や腱鞘に炎症があると、その刺激で炎症のない部分にまで炎症がひろがることもあり、早めに炎症を抑える目的で1回目からステロイドの注射を行うこともあります。
1回の注射でほとんどの人が1週間程度で症状がかなり軽くなります。しかし、手の使い方をかえなければ、約半数の人が1年以内に再発します。
腱鞘切開(手術)
手術は30分程度で日帰りで行なうことが一般的です。
局所麻酔、もしくは腕だけの麻酔を行ない、手首の親指側に小切開を行い腱鞘を露出して、腱の通っている方向に合わせて切開します。これにより腱が腱鞘に包まれている状態が解除されるため、病状が改善します。
数日は切開部分の防水が必要、約1週間後に抜糸、力仕事などは2週間程度経過してから可能となります。
まとめ/ドケルバン病とは?その症状と原因、治療法を紹介
ドケルバン病は手首の親指側が痛くなる病気で、手の使い過ぎや女性ホルモンの変化で発症します。
この病気は手首の腱鞘が炎症を起こすことで生じます。原因としては手の使い過ぎや女性ホルモンの変化などが挙げられます。診断は医師が視診と触診で行い、上記のようなドルゲバン病に専用で用いられるテストを行います。
症状が軽い場合はできるだけ手を使わないようにすれば改善しますが手の安静が難しい場合などは装具や注射が必要になることもあります。治療法は保存療法から手術療法まで多岐にわたりますが、早めの対処が再発を防ぐカギとなります。
手首の痛みを感じたら、早めに整形外科での相談をおすすめいたします。
今回は、ドケルバン病についてとその症状と原因、治療法を紹介しました。ご参考になれば幸いです。
No.S087
監修:医師 加藤 秀一