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ドケルバン病とは?手首が痛い際に考えられる疾患や治療法を専門医が解説

公開日: 2022.10.19
更新日: 2024.11.10

親指や手首を動かすと痛みを感じて困っている方はいませんか。その症状の原因は、もしかしたら「ドケルバン病」かもしれません

ドケルバン病は、筋肉をスムーズに動かすために必要な「腱鞘(けんしょう)」が炎症を起こす病気で、放置すると日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。

この記事では、ドケルバン病の症状やセルフチェックの方法、治療法をご紹介します。病気に関する知識を深めることで症状改善につながり、痛みのない生活を送れるきっかけになるでしょう。

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手首の親指側が痛いときに考えられる「ドケルバン病」とは?

ドケルバン病とは、手首の親指側に痛みが出ている状態のことです。この場所には、親指を動かす以下の2本の腱が通っています。

  • ・短母指伸筋腱:主に親指の第2関節を伸ばす役目をしている
  • ・長母指外転筋腱:親指をひろげる役目をしている

腱とは、各筋肉の両端についている硬い組織のことです。この腱のまわりには、腱鞘(けんしょう)という組織が筒のように包んでいます。

これはつまり、腱鞘というトンネルのなかを腱がくぐりぬけているようなイメージです。この腱鞘があることで腱が滑らかに動き、スムーズに筋肉の伸縮ができるのです。

親指を動かす「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」の腱鞘が、炎症を起こしたり厚みが増したりすると、腱の滑りが悪くなって痛みが現れ、ドケルバン病の発症につながります。

ドケルバン病の症状

ドケルバン病の代表的な症状は、手首の親指側の痛みや熱感(熱を持つこと)などです。

とくに、親指や手首を動かす動作で症状が強くなりやすい特徴があります。患部を上から押さえると、さらに痛みが増します。

以下のような動作も症状が強くなりやすいので、注意が必要です。

  • ・親指をひろげる
  • ・物をつかむ、握る
  • ・タオルを絞る

またドケルバン病を長期間放置すると、手に力が入らなくなることもあります。

ドケルバン病の原因

ドケルバン病の原因として多いのは、おもに以下のとおりです。

  • ・手や親指の使い過ぎ
  • ・女性ホルモンの変化

ここでは、それぞれの原因について詳しく解説します。

手や親指の使い過ぎ

ドケルバン病は、以下のような手や親指をよく使う方にみられやすい病気です。

  • ・手をよく使う仕事
  • ・手をよく使うスポーツ
  • ・ゲーム

親指を酷使すると腱鞘の壁が分厚くなったり、腱の表面に傷がついたりして、ドケルバン病の発症につながります。

また、スマートフォンの画面をよく親指で操作する方も、ドケルバン病の発症原因の1つです。そのことから、スマートフォンが原因で発症したドケルバン病を「テキストサム損傷」(サムは“親指”という意味)とも呼びます。

女性ホルモンの変化

女性では、妊娠出産期や更年期のホルモンの大きな変化が原因で、ドケルバン病を発症するケースがあります。ドケルバン病に関係するホルモンには、「プロゲステロン」と「エストロゲン」があげられます。

プロゲステロンとは、出産後に増加する女性ホルモンです。このホルモンが増加すると、出産後にゆるんだ子宮や骨盤が縮まり元に戻る作用が現れます。

しかし、プロゲステロンが増加すると腱鞘も縮み、腱と接触しやすくなるため、腱鞘炎のきっかけとなるのです。

エストロゲンとは、腱や腱鞘を柔らかく保つ働きがある女性ホルモンです。更年期にこのホルモンが減少すると腱や腱鞘が硬くなり、腱鞘炎を引き起こしやすくなります。

また、出産後の女性にドケルバン病が増えやすくなる原因は、女性ホルモンの変化だけではありません。赤ちゃんを抱えて頭を支える際に、手を広げることで親指に負荷がかかり、それが発症につながるとも考えられています。

ドケルバン病のセルフチェック方法3つ

ドケルバン病は、基本的に医師が視診と触診で診断を行いますが、セルフチェックも可能です。おもなセルフチェックの方法は、以下の3つです。

  • ・フィンケルシュタインテスト
  • ・フィンケルシュタインテスト変法
  • ・岩原・野末テスト

ここでは、それぞれの方法の手順について解説します。

1.フィンケルシュタインテスト

フィンケルシュタインテストの方法は、以下のとおりです。

フィンケルシュタインテスト
  • 1.  症状のある手の小指が一番下になるように(前にならえのように)前へ出す
  • 2. そのままで親指を内側に折り曲げる(手で数字の「4」を表す形にする)
  • 3. 折り曲げた親指を小指側に寄せる
  • 4. 手首を小指側に曲げる
  • 5. 手首や親指の付け根に痛みが現れたら、ドケルバン病の可能性がある

2.フィンケルシュタインテスト変法

フィンケルシュタインテスト変法の方法は、以下のとおりです。

フィンケルシュタインテスト変法
  • 1.  親指を中にして握りこぶしを作る
  • 2.  そのまま手首を小指側に直角に曲げる
  • 3  手首や親指の付け根に痛みが現れたら、ドケルバン病の可能性がある

3.岩原・野末テスト

岩原・野末テストの方法は、以下のとおりです。

岩原・野末テスト
  • 1.  手首を手のひら側に直角に曲げる
  • 2.  親指をできるだけ外へ伸ばす
  • 3.  痛みが現れたらドケルバン病の可能性がある

ドケルバン病の治療方法

ドケルバン病の治療法としては、保存療法と手術があげられます。ここでは、それぞれの治療方法について詳しく解説します。

保存療法

手術以外で症状の緩和・改善を図る保存療法では、おもに以下のような内容が行われます。

  • ・安静
  • ・手首の固定
  • ・薬物療法

ドケルバン病の多くは、手首の負担を減らすことで改善するため、まずは安静に専念しましょう。

仕事や家事などでどうしても腕や手首を使う場合は、装具によって関節の固定性を高めて、負担軽減を図る方法がおすすめです。

薬物療法では、消炎鎮痛剤のシップや塗り薬を使用します。腱や腱鞘の炎症が広がっている場合は、改善のためにステロイドの注射を行うことも1つの手段です。このような保存療法を行わない場合、約半数の方が1年以内に再発するとされています。

手術(腱鞘切開)

保存療法で改善がみられない、または再発を繰り返す場合は、手術を検討する必要があります。ドケルバン病では、「腱鞘切開」という手術が行われます。

腱鞘切開では局所麻酔にて、手首の親指側の腱鞘を露出させ、腱の通っている方向にあわせて切開します。これにより腱が腱鞘に包まれている状態が解除されるため、病状の改善が期待できます。

手術時間は30分程度で、日帰りで行うことが一般的です。手術後の数日間は切開部分の防水が必要で、約1週間後に抜糸し、2週間程度経過したら力仕事が可能です。

まとめ|ドケルバン病は放置せずに早めの相談を!

ドケルバン病は、手首の腱鞘が炎症を起こすことで親指側が痛くなる病気です。

原因としては手の使い過ぎや女性ホルモンの変化などがあげられます。診断は医師による視診と触診のほか、さまざまなテストを行います。

症状が軽い場合、できるだけ手を使わずに安静を心がけることが重要です。しかし、安静が難しい場合は、装具や注射が必要になることがあります。

治療法は保存療法から手術療法まで多岐にわたり、再発を防ぐには早期の対処がポイントです。手首の痛みを感じたら、早めに整形外科で相談してみましょう。

ドケルバン病に関するよくある質問

ここでは、ドケルバン病に関するよくある質問についてお答えします。ドケルバン病に関して疑問がある方は、こちらも参考にしてみてください。

ドケルバン病と腱鞘炎の違いはありますか?

ドケルバン病は腱鞘炎の1種です。そのため、腱鞘炎のほうがより広い意味合いが含まれています。

また、腱鞘炎にはおもに「ドケルバン病」と「ばね指」に分けられ、それぞれ違いがあります。ドケルバン病が手首に症状が現れるのに対して、ばね指は、指の腱鞘に炎症が生じる病気です。

腱鞘炎に関して知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。

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