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視床出血における後遺症は?リハビリ・看護について現役医師が解説

公開日: 2023.01.30
更新日: 2024.12.08

視床出血は脳出血の一種で、脳の深部にある「視床」という重要な部位に出血が起こる疾患です。

高血圧などが原因で発症し、身体の片側の麻痺や感覚障害など、後遺症が出ることも少なくありません。

そんな視床出血後の回復には、適切なリハビリが欠かせません。

この記事では、視床出血の後遺症の特徴と、リハビリを通じた回復までの過程、さらに看護のポイントについて医師が詳しく解説します。

ぜひ参考にしてください。

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そもそも視床とは?

そもそも視床とは、脳の中心部に位置し、感覚情報を大脳皮質に伝達する重要な役割を担っている脳の一部です。

視床は視覚や聴覚、触覚など、さまざまな感覚情報を統合し、体の各部分から送られてくる情報を適切に処理する、など私たちの行動や認識に関与しています。

また、視床は運動機能にも関わりがあり、感覚と運動を調整する重要な役割があります。

本記事のテーマである「視床出血」とは、脳の一部である「視床」に出血が起こった状態を指します。

視床出血は、脳出血全体の2〜3割程度を占めるとされており、その多くが高血圧を原因としています。

次の章からは、そんな脳出血の中でも頻度が高い視床出血における後遺症や、それに対するリハビリ・看護に関して解説します。

関連:視床出血の特徴的な症状とは?治療後の予後を予測

視床出血の症状と後遺症

視床出血看護

視床は、主に感覚をつかさどっています。

そのため視床出血が起こると、痺れなどの感覚障害を認めます。

また、視床の周囲には運動神経が走っているため、出血が拡大すると運動麻痺が生じます。

さらに出血が拡大するとその分脳の神経細胞が圧迫されるため、圧迫された部位に応じた症状が現れます。

視床は脳の深い場所に位置するため、原則手術は行わず、出血の拡大防止のために血圧を下げるなどの内科的な治療を主に行うことになります。

そのため視床出血は、症状が消失せず後遺症となってしまうことが多くあります。

視床出血で多く見られる後遺症は、視床痛と呼ばれる手足の強い痛みや痺れ、感覚障害を伴った半身麻痺です。

視床痛はジンジン・ピリピリというような痛み(痺れ)を認め、鎮痛薬は効果がないことがほとんどです。

また、麻痺も感覚障害を伴わない麻痺と比べて、手先の感覚や、立ったり歩いたりするときの位置感覚がわかりづらくなります。

そのため日常生活に支障をきたしてしまうことが多いです。

右視床出血と左視床出血の違いは?

脳は左右にわかれた大脳半球から構成されており、各半球は身体の反対側を制御しています。

視床出血は主に高血圧などの原因で生じ、出血の部位によって異なる症状が現れます。

右側の視床で出血が起こると左半身に麻痺が生じ、左側の視床での出血は右半身に麻痺を引き起こします。

さらに、視床出血は視床痛や視床性の運動障害といった二次的な症状をもたらすこともあり、患者の生活に大きな影響を与えることがあります。

参考:J-STAGE|視床出血における左右半球の違いは歩行に影響を与えるのか?

視床出血後遺症のリハビリ

半身麻痺が残り体の運動機能が低下した場合、運動機能障害に対するリハビリとして理学療法と作業療法を行います。

それぞれ解説していきます。

理学療法

理学療法は平行棒や歩行器を使用した歩行の練習や姿勢を保持する練習、体力・筋力の維持や向上など日常生活を送る上で必要な動作の練習を行います。

前述したように視床出血の半身麻痺は感覚障害を伴っていることが多いです。

そのため歩行の練習では免荷式(めんかしき)トレッドミルという機械を用います。

免荷式トレッドミル・・・体を上から吊るし、ハーネスで体を支えることで、足にかかる体重を調整できるためバランス感覚を鍛えます。これによって体重のかかり方を意識した歩行の練習を行えます。

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作業療法

作業療法は、お箸の使い方など、日常生活を送るために必要な作業の訓練を行います。

麻痺側の手を積極的に使うことで、作業の質の向上をはかるCI療法がガイドラインなどでも推奨されています。

1日6時間以上麻痺した手を使用することで、手の機能が改善した報告もあります。

また、このCI療法を行うことで指先などの動きだけでなく、高次機能も回復した報告もされています。

視床出血で嚥下機能が低下した場合、言語聴覚士による嚥下の訓練を行います。

口周りや顔の筋肉の運動やゼリーなどを用いた飲み込む練習を行うことで、発症前のように口から食事が取れるようにリハビリを行います。

脳出血後のリハビリは毎日、長期間継続が重要です。

途中で中断してしまうと一度は回復した身体機能が再度低下してしまう可能性もあります。

長い道のりにはなりますが、回復を信じて、モチベーションを保ちつつリハビリを継続しましょう。

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視床出血の看護

視床出血を含む脳出血の看護は、急性期と慢性期で大きく異なります。

急性期は再出血や血腫の増大、脳浮腫などが起こる可能性があり、そうなった際は早期発見と早期治療が回復の大きな鍵となります。

そのため、急性期の看護では全身状態をしっかり観察することが重要です。

以下のことに注意を向けて観察しながら看護しましょう。

  • ・意識や瞳孔の確認
  • ・血圧コントロール
  • ・褥瘡(じょくそう)予防の適切なポジショニング
  • ・一人ひとりの後遺症に沿った看護

それぞれ解説します。

意識や瞳孔の確認

視床出血の患者さんの中には自発運動ができない方や発語がない方も多くいらっしゃいます。

そのため、こまめにバイタルサインをはかり、意識や瞳孔の変化などに注意しましょう。

血圧コントロール

脳出血にとって血圧コントロールは再出血予防のために最も重要です。

決められた範囲内で血圧が維持できているかどうかを、きちんと確認しましょう。

褥瘡(じょくそう)予防の適切なポジショニング

再出血などを予防するために、急性期は安静を保たなければなりません。

ベッド上での安静保持は、関節の拘縮や褥瘡のリスクとなります。

褥瘡の好発部位の皮膚観察や、こまめな体位変換、拘縮予防するための適切なポジショニングを意識しましょう。

一人ひとりの後遺症に沿った看護

急性期を過ぎて回復期や慢性期に入った患者さんには、再発防止のための内科的治療と、後遺症へのリハビリが中心となります。

各患者さんの後遺症に応じた看護を行いましょう。

また、褥瘡を予防するための皮膚観察や関節拘縮を防ぐための体位調整に加え、栄養状態、運動機能、精神状態にも注意が必要です。

嚥下機能が低下した場合、誤嚥性肺炎のリスクがあるため、食事時の姿勢と口腔ケアを徹底しましょう。

また、感覚麻痺や視床痛が残る患者さんには心のケアも重要です。

感覚が鈍くなっていることを意識し、体に触れる際には声をかけるなどの気遣いを忘れないようにしましょう。

まとめ・視床出血における後遺症は、一人ひとりの後遺症に沿った看護とリハビリが大切

視床出血のリハビリと看護に関して紹介しました。

患者さんが1日でも早く、発症前のような生活に戻れるように看護ケアやリハビリを行いましょう。

また、脳梗塞による障害で精神的な苦痛を感じてしまう方も多くいらっしゃいます。

そういった精神的苦痛にも寄り添ったケアを行ってください。

この記事がご参考になれば幸いです。

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