視床出血の特徴的な症状とは?治療後の予後を予測
公開日: 2023.01.18更新日: 2024.10.07
目次
視床出血の特徴的な症状とは?治療後の予後を予測
「視床出血と診断されたけど、一体どんな病気?」
脳内出血には出血部位により 5つの種類があり、視床出血はそのうちのひとつです。
突然の頭痛で発症する点は脳内出血全般で共通の症状です。本記事では視床出血について症状の特徴や治療方法などについて詳しく見ていきましょう。
視床出血とは
視床出血とは脳内出血のうち、視床と呼ばれる部位に出血を生じたもので 2 番目に多い出血部位になります。
視床は脳の奥にある 5 – 6 ㎝程の神経細胞が集まっている場所であり、嗅覚以外のあらゆる感覚情報(痛覚、視覚、聴覚、味覚など)を大脳に伝達する中継所としての機能を果たしています。この重要な部位が出血し、障害されることで様々な症状が出現します。
症状について詳しく見ていきましょう。
視床出血の症状
視床出血の症状の特徴としては下記のようなものがあります。
|
これらの症状は一例であり、全てが同時に起こりうるわけではありません。出血の範囲、程度により上記のような多様な症状が出現します。
これら以外にも、発症してから数か月~数年後に視床痛(出血側の反対側の手や足に生じる強い痛み)が発症することがあります。
最初は感覚障害から始まり、その後焼き付くような、剣山を押し付けられたようななどといった表現しづらい疼痛が生じます。
視床出血の原因
視床出血は、高血圧による動脈硬化が主な原因です。
動脈硬化により血管がもろくなり、さらに高い血圧に晒されることにより血管が破綻し出血が起こります。出血の原因となる血管は穿通枝と呼ばれる極めて細い血管になります。
診断
頭部CT検査で視床部位の出血を確認することで確定診断となります。
CTでは出血は白く映り、出血の程度や脳室出血の有無などを判定します。これにより治療方法や予後の予測の参考とします。
MRIでも出血の判定は可能ですが、検査に時間を要するためCT検査が行われることが多いです。
治療法
視床出血に対しては、どれほど出血量が多くても、血腫(出血による血の塊)を除去する手術は基本的に行われません。
これは視床は脳の奥深くにあり到達が容易ではなく、重要な神経が多く集まっているため、手術を行うことで脳にさらにダメージを与えてしまう可能性が高いからです。ただし出血の範囲があまりに大きい場合は、合併症を最小限に食い止めるために手術が行われるケースもわずかながら存在します。
また、水頭症(髄液の循環不全により、髄液が過剰に溜まった状態)により命のリスクがあると判断された場合は、シャント術が行われます。
手術療法:シャント術
シャント術とは、溜まってしまう髄液を体内の他の場所へ流し込むバイパスを作る手術になります。
主な経路としては、
|
などがあります。現在では脳室―腹腔シャントが最も多く行われています。
薬物療法:薬剤による血圧コントール
手術の有無に関わらず重要な治療になるのが、薬剤による血圧コントールです。
視床出血は高血圧が原因で発症することが多く、特に症状発症時には収縮期血圧が 200 mmHg以上となってしまうことも珍しくありません。発症から 6 時間以内は再出血が非常に起こりやすいとされており、再出血を予防し出血範囲を拡大させないために、血圧を安定させる降圧剤の点滴や内服などが用いられます。
また、慢性期に生じることのある視床痛においては、残念ながら有効な治療は確立されておらず、一般的な鎮痛剤は無効であることが多いです。ノルアドレナリンや塩酸マプロチンといった薬剤が用いられることもありますが、効果がない場合はガンマ線を用いた定位放射線手術が行われることがあります。
予後
視床出血の症状は、出血量と範囲によって異なります。
予後についても同様で、出血が多ければ多いほど、広範囲であればあるほど後遺症が残る可能性が高くなり、予後不良となることが多いです。
また中脳にまで出血範囲が広がると生命の危機に繋がる可能性が高いともいわれています。これは中脳が生命を維持するために重要な役割を果たしているためです。視床出血の死亡率は一般的に 14 – 52 %と報告されておりますが、これは基礎疾患やもともとの健康状態などに大きく左右されます。
水頭症を発症したり、視床出血発症後も出血範囲が広がるようなことがあると、予後がさらに悪化するケースもあるため、厳格な血圧コントロールが重要となります。また、少しでも後遺症を軽減するために早期からのリハビリも非常に重要となります。
まとめ・視床出血の特徴的な症状とは?治療後の予後について
視床出血の詳細に関して解説いたしました。
視床出血は脳出血の中でも重症化しやすく予後不良な疾患です。後遺症が残る場合も多く、発症してしばらく経過してからも症状に苦しむことが多い厄介な疾患です。刻一刻を争う病態ですので疑わしい症状がみられた際は速やかに医療機関を受診しましょう。
ご参考になれば幸いです。