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脳卒中|リハビリについての予後予測

脳卒中のリハビリで予後予測は非常に重要です

脳卒中のリハビリテーションの予後に関する予測について「予後」とは、病の経過や、結果に関する見通しを指します。

今回は、脳卒中についてリハビリ後の医学的な見通しについて、病気の進行具合や,治療に対する効果,そして今後の改善の見込みを予測するということの重要性を記させていただきます。

脳卒中リハビリ

脳卒中の予後予測をすることは、必要だと分かっているけど、いつ、どんな時に、どのようにすればいいか分からない方が多いのではないでしょうか。

まず、予後予測を立てることによって、リハビリの内容や、進め方といった治療内容などを修正をしながら進めることができます

しかし、予後予測をせずにリハビリを続けていくと、果たしてその治療法が合っているのか、効果的であるのかどうか、今後の軌道修正が必要なのかさえもわからなくなります。

例えば予後予測を立てずにリハビリを行うというのは、目的地を決めずにドライブをしているようなものです。それでは最短の道順を決められず、だらだら寄り道をしながら進むことになるため、どこへ到着するのか、それさえも分かりません。

つまり、リハビリにおいては予後予測をして「目的地」を決めることこそが何よりも大切だということです。

リハビリにおいて予後予測をすることが大切とされている理由として、目標を共有することで治療内容を吟味することができ、病棟での対応の統一化、退院際の検討があげられるからです。

リハビリは、生活そのものを対象に行う

リハビリは、一人で行うわけではなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど様々な職種がチームとして情報共有しながら関わるべきです。

仮にトイレ動作の確立を目標にした場合、

リハビリでの練習だけでなく、病棟で看護師にもリハビリと同じやり方でできるように動作方法を伝えておくことで、入院中の生活においても自然と練習ができるようになります。

そして、患者さんごとに予後予測をたてて、治療を進めますが、「2か月後には自立歩行」できると予測したとして、達成することができていれば、そのリハビリは正解であったということになります。

その場合、たとえ目標が達成できなかったとしても「脳画像の解読が不十分だった」のか、「治療内容が適切でなかった」のか、「既往歴の影響があった」のか、「認知面の影響で学習が阻害されていた」のか、などの点を振り返ることが必要です。

もし、その患者さんに関わる期間がまだ残っているのであれば、再度、予測をたて直すことで治療内容を改善することが可能です。またリハビリが終了してしまったのであれば、今後の自分の成長につなげることもできるでしょう。

入院中にリハビリで介入している時間は、回復期病棟の場合でも最大で3時間であり、それ以外の時間は病棟で過ごすことになってしまうため、病棟での生活にもおいても「起き上がり」、「靴の脱ぎ、履き」、「車椅子のこぎ方」、「更衣の仕方」、「トイレでの動作」などをリハビリの一貫として取り組むことが改善の早道になることは言うまでもありません。

具体的には、片麻痺の患者さんであれば患側(麻痺側)から足をズボンに通すなどの順番があるため、定着できるように病棟で指導したり、部屋に手順を記した紙を貼って普段から意識できるようにすることが大切です。

予後予測の大切さ

また、予後予測をして今後は、独歩での歩行が可能になると予測できれば、あえて車椅子の片手片足駆動のやり方や、ブレーキ、フットレストの管理に関する指導は形程度で済ませ、それよりは病棟に頼んでリハビリの時間以外に看護師さんと歩くための練習時間をつくるなどの対応を求めるべきでしょう。

このときに「今後、歩く見込みがないならやる必要ない」と指摘されないためにも予後予測が必要という訳です。

また、今後の方針を決める場合に「リハビリの経過をみて決めていきましょう」という内容で家族と話すことが多いのではないでしょうか。

この場合、1ヶ月程度リハビリをしてみて、回復度合いなどから考慮して予後予測ができればいいですが、2~3ヶ月たっても見通しがつかないとなるとなかなか退院時期をはっきりすることができません。

もしも自宅への退院が難しい場合、家族は受入施設を探す必要があります。その際、いくつかの施設を見学して決めることになると思うのですが、実施のところ一日で全部の見学が終わるわけではなく、検討する時間も必要になります。

自宅への退院だとしても、自宅での環境の調整が不可欠、サービスの調整も必要となると意外と時間がかかります。反対に予後予測ができていれば、これらの退院の調整や準備をじっくりすることが可能です。

これら色々な事柄について予後予測が大切になってまいります。

脳卒中治療ガイドライン予後予測の必要性が書かれています。

1.リハビリテーションプログラムを実施する際、日常生活動作(ADL)、機能障害、患者属性、併存疾患、社会的背景などをもとに機能予後、在院日数、転帰先を予測し参考にすることが勧められる(グレードB)。

2.既に検証の行われている予測手段を用いることが望ましく、その予測精度、適用の限界を理解しながら使用すべきである(グレードB)。

引用文献:脳卒中ガイドライン2009

一般的に脳卒中には「6ヵ月の壁」といわれるものが存在します。発症から6ヵ月を過ぎると、脳自体が回復しなくなり、症状や機能も一定になるといわれており、これを「プラトー」といいます。

脳卒中には様々な症状があるので、一つの予後予測だけだと精度は不十分です。現在、運動機能、脳画像、FIM(機能的自立度評価法)、年齢からなど様々な方法が開発され、いろんな角度から予後予測することができるようになりました。

脳卒中の予後予測

二木の早期自立度予測基準

臨床的で簡易に評価ができ、精度も高く、日本で最も使用されている予後予測法に「二木の早期自立度予測基準」があります。
発症時期に合わせて、①入院時の予測、②発症2週時での予測、③発症1ヵ月時での予測、の3つにわけられ、それぞれの時期によって使い分ける必要があります。

①入院時の予測

入院時のADL能力 歩行能力予測
ベット上生活自立(※1) 歩行自立(大部分が屋外歩行可能で、かつ1か月以内に屋内歩行自立)

基礎的ADL(※2)のうち2項目目以上実行

歩行自立(その大部分が屋外歩行かつ、大部分が2か月以内に歩行自立)
運動障害軽度(※3)
発症前の自立度が屋内歩行以下かつ運動障害重度(※4)かつ60歳以上 自立歩行不能(大部分が全介助)
Ⅱ桁以上の意識障害かつ運動障害重度(※4)かつ70歳以上

※1:介助なしでベッド上の起坐・座位保持が可能
※2:基礎的ADL・・・食事、尿意の訴え、寝返り
※3:Brunnstorm stage4以上(麻痺側下肢伸展挙上可能)
※4:Brunnstorm stage3以下(麻痺側下肢伸展挙上不能)

②発症2週時での予測

発症2週時でののADL 歩行能力予測
ベット上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が2か月以内に歩行自立)

基礎的ADL(※2)3項とも介助かつ、60歳以上

自立歩行不能(かつ、大部分が全介助)
Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、夜間せん妄を伴った中程度の認知症があり、かつ60歳以上

※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能
※2:基礎的ADL:食事、尿意の訴え、寝返り

③発症1ヵ月時の予測

発症1か月でののADL 歩行能力予測
ベット上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が3か月以内に歩行自立)

基礎的ADL(※2)の実行が1項目以下かつ、60歳以上

自立歩行不能(かつ、大部分が全介助)
Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、両側障害、高度心疾患などがり、かつ60歳以上

※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能
※2:基礎的ADL:食事、尿意の訴え、寝返り

④入院1ヵ月時に予測不能なケース

・全介助で59歳以下
・全介助60歳以上だが、遷延性意識障害・認知症・両側障害・高度の心疾患を有さず、しかも基礎的ADLを3項目中2項目以上実行可能

損傷部位と予後

予後に与える影響は、脳の損傷した部位と大きさによって異なります。そしてそれは脳の損傷部位と大きさなどから、3項目に分類されます。

1.小さい病巣でも運動予後の不良な部位

・放線冠(中大脳動脈穿通枝領域)の梗塞
・内包後脚
・脳幹(中脳・橋・延髄前方病巣)
・視床(後外側の病巣で深部関節位置覚脱失のもの)

2.病巣の大きさと比例して運動予後がおおよそ決まるもの

・被殻出血
・視床出血
・前頭葉皮質下出血
・中大脳動脈前方氏を含む梗塞
・前大脳動脈領域の梗塞

3.大きい病巣でも運動予後が良好なもの

・前頭葉前方の梗塞・皮質下出血
・中大脳動脈後方の梗塞
・後大脳動脈領域の梗塞
・頭頂葉後方~後頭葉、側頭葉の皮質下出血
・小脳半球に原曲した片側性の梗塞・出血

運動機能の予後は、放線冠、内包後脚など錐体路を含んでいれば、例え小さな梗塞でも予後不良といわれており、小脳出血や小脳梗塞では、良好な改善がみられる場合があるので、初期症状からは、予後予測の判断が難しいとされています。

脳卒中における予後予測の中でも歩行自立度に関しては理解力、学習能力があれば弛緩性完全麻痺の場合などを除き、ある程度の歩行自立は可能だと考えられています。そのため、理解力や学習能力の判断が重要になります.

その他にも、発症後の機能をもとにした予後予測の方法があり、

①脳卒中を発症して初日~3日で症状が安定しているとき

・背もたれがなければ座れない:車椅子レベル
・背もたれがなくても座れる:立位、装具と杖を使用して伝い歩きレベル
・手すりを持って立てる:装具と杖を使用して歩行可能
・手すりを持たないでも立てる:杖歩行or杖なし歩行

②脳卒中の発症7日後で下肢のブルンストローム(Brunnstorm Stage)を指標にしたもの

・Stage1:車椅子レベル
・Stage2:立位、装具と杖を使用して伝い歩きレベル
・Stage3:装具と杖を使用して歩行可能
・Stage4:杖歩行or杖なし歩行

これらはあくまで発症後の機能をもとにしたものであるため、脳出血では脳内の血腫の吸収度合にもよっても予後予測は変わってきますし、運動麻痺では放線冠や内包にかかっているかどうかも重要な要素になってきます。
よって、これは参考程度の簡単な予後予測であることを理解しておきたいものです。

脳卒中|再生医療の可能性

ここまで脳卒中のリハビリに関する予後予測に関するご説明をしてまいりました。最後に、再生医療という先端治療の可能性についてお話いたします。

まだまだ一般的ではない治療法なのですが、症状を改善させる期待を持てる方法です。これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療の手法なら一度機能しなくなった脳細胞が復活し、後遺症を改善できることがわかってたからです。

もともと我々の身体にある「幹細胞」は神経、血管、骨、軟骨などに変化することがわかっています。その幹細胞を培養して数を増やし、いろいろな組織に変化する性質を利用して脳細胞を再生させるのです。

今では脳血管障害の再生医療の研究が進み、安全性が高く効果があると認められ、世界でも注目されている治療法となっています。

 

▼ 脳卒中、再生医療の可能性はこちら
再生医療で脳卒中の予後を改善する先端治療法いついて

 

脳卒中|リハビリについての予後予測/まとめ

リハビリでの目標を設定するには、予後予測が必ず必要です。しかし予後予測を行い「歩行自立は困難」という結果になったとしても、諦めるべきではありません。

予後予測の精度は高くてもそれはあくまで予測でしかなく、予後予測通りに目標を設定し、治療プログラムを進めたとしても、それ以上の結果は得られることは難しいこともあります。

なので、目標設定をする際は予後予測よりも、少し上、場合によってはさらに上を目指すことが大切です。これくらいが現実的かな、という冷静な考え方も必要ですが、絶対に諦めないという医療従事者としての強い想いも必要だと思います。

また、新たな可能性として再生医療という先端治療があることも解説させて頂きました。

 

No.S023

監修:医師 加藤 秀一

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