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大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと【医師監修】
大腿骨頭壊死は、股関節のボール部分にあたる「大腿骨頭」が血流障害によって壊死してしまう病気です。
外傷や過度のアルコール、過度のステロイド使用など、さまざまな原因があります。なかには原因のない特発性もあり、指定難病にもなっています。
今回は、大腿骨頭壊死と診断されたら、どのようなことに気を付ければよいのか、またどのような生活を送るべきなのかについて詳しく解説します。
なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、大腿骨頭壊死の治療法の一つ、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。
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目次
大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと
大腿骨頭壊死を進行させる一番のリスクは、大腿骨頭にかかる負荷が増大することです。大腿骨頭は股関節を形成している部分であるため、立ったり歩いたりすると直接体重を受けてしまいます。
そのため、1本杖や松葉杖を使用して、過度な負担がかからないようにすることが必要です。
大腿骨頭壊死を発症した場合、激しい運動や階段昇降、重量物の運搬、長時間の立ち仕事など、股関節に持続的に強い負荷がかかることは避けましょう。
また、体重が増えてしまうことにも注意が必要です。体重が増えると、増えた体重分、股関節にかかる負担が大きくなります。
壊死は股関節の前方に発生することが多いため、しゃがみこむ動作や前屈動作など股関節を曲げる姿勢をとると、壊死部に負担がかかりやすいです。
アルコールとタバコも控えてください。骨密度を低下させる可能性もあるため、壊死で弱った骨をさらに弱くしてしまいます。
アルコールはそれ自体が大腿骨頭壊死の原因となることがわかっています。(文献1)
タバコも血流を悪化させ、骨壊死を加速させるリスクが考えられます。
職場・仕事でやってはいけないこと
職場や仕事での動作にも注意が必要です。長時間の立位姿勢は股関節に持続的な負荷をかけるため、立ち仕事は制限が必要です。10kg以上の重量物の運搬や、階段の頻繁な昇降も避けましょう。
デスクワークの場合でも、長時間の座位は股関節の血流を悪化させる可能性があるため、1時間ごとに休憩を取り、軽いストレッチを行うことが推奨されます。
病状を悪化させないように働くためには、職場の理解が欠かせません。診断書を提出し、上司や人事部に相談しましょう。
また、産業医との面談も活用しましょう。職場環境の調整として、椅子の使用、休憩の取り方、作業台の高さ調整などを検討してください。
家事・日常動作でやってはいけないこと
家事や日常動作でも、股関節に負担をかける動作は避ける必要があります。掃除機がけは前かがみの姿勢を避け、軽い掃除機を使用しましょう。
床の雑巾がけは、しゃがむ動作を避けるため、モップなどを活用してください。
重い買い物袋の運搬(5kg以上)は避け、カート付きバッグを使用することをおすすめします。布団の上げ下ろしは股関節に大きな負担をかけるため、ベッド生活への変更を推奨します。
また、和式トイレの使用は深くしゃがむ動作を伴うため、洋式トイレへの変更が望ましいです。正座やあぐらなど、股関節を深く曲げる姿勢も避けましょう。
これらの代替方法を取り入れることで、日常生活での股関節への負担を大幅に軽減できます。
運動・スポーツでやってはいけないこと
大腿骨頭壊死の患者様は、股関節に負荷がかかる運動を避ける必要があります。
ランニングやジャンプ系スポーツは、股関節に強い衝撃を与えるので避けましょう。
重量挙げやスクワットなどの重量トレーニングも、股関節への負荷が大きいため推奨されません。
激しいダンスやエアロビクスなど、股関節を大きく動かす運動も控えてください。
サッカーやテニス、バスケットボールなどの球技は、急な方向転換や衝撃が伴うため、避けるべきです。これらの運動は、壊死部への負担を増大させ、病状の進行を早める可能性があります。
大腿骨頭壊死でやってもよいこと
禁止事項だけでなく、大腿骨頭壊死でやってもよいことも理解するのも大切です。
以下では、大腿骨頭壊死の患者様でも取り組める運動と、推奨される栄養バランスの取れた食事について解説します。
やってもよい運動
大腿骨頭壊死の患者様でも、股関節への負担が少ない運動であれば行えます。
軽いウォーキング(1日20~30分程度)は、杖を使用することで股関節への負担を分散させられます。
また、水中ウォーキングや軽い水泳も、筋力維持にも効果的です。これらの運動は、股関節に体重をかけずに身体を動かせます。
ストレッチは股関節を深く曲げないよう注意が必要です。大腿四頭筋のストレッチなど、股関節への負担が少ないものが適しています。
他にも股関節に負担を書けない上半身の筋トレ(腕立て伏せ、ダンベル運動)や、エアロバイクなど、室内で行える自転車運動もおすすめです。
まずは専門家に相談し、指示に従って適切な運動を取り入れましょう。股関節への負担を最小限に抑えながら、健康的な生活を送ることができます。
栄養バランスの取れた食事
体重増加は股関節への負担を増すため、適正体重の維持が大切です。研究によれば、肥満は骨壊死の血管再生と骨治癒を阻害することが示されています(文献2)。
適正体重を維持する目安としては、BMI 18.5~25未満を目標にすることが挙げられます。
骨や筋肉の健康を保つため、以下の栄養素を意識して摂取しましょう。
- カルシウム:1日700~800mg(牛乳、チーズ、小魚など)
- ビタミンD:1日8.5μg(魚類、きのこ類、卵など)
- タンパク質:体重1kgあたり1.0~1.2g(肉類、魚類、大豆製品など)
避けるべき食品としては、アルコール、高カロリー食、加工食品が挙げられます。アルコールは大腿骨頭壊死の原因の一つであり、骨密度低下のリスクもあるため、基本的には禁酒が推奨されます(文献1)。
大腿骨頭壊死の進行ステージ別の注意点
大腿骨頭壊死は、病期分類(Stage 1~4)ごとに、注意すべき点や生活制限の程度が異なります。以下に各ステージの特徴と注意点をまとめました。(文献3)(文献4)
| ステージ | 特徴 | 注意点 |
治療法 |
|---|---|---|---|
| Stage 1(初期) | X線では異常が見られないがMRIで壊死が確認される段階 | 保存療法で進行を抑えられる可能性が高い。荷重制限が重要。 | 荷重制限、杖の使用、鎮痛剤 |
| Stage 2(進行期) |
X線で骨硬化像や嚢胞が見られる段階 |
荷重制限が重要。抗凝固薬やビスフォスフォネート製剤の使用も検討。 | 保存療法、薬物療法 |
| Stage 3(圧潰期) | 骨頭の圧潰が始まる段階 | 手術を検討する時期。日常生活での制限が厳しくなる。 |
骨切り術、血管柄付き骨移植 |
| Stage 4(末期) | 骨頭が完全に圧潰し、関節症が進行 | 人工関節置換術が必要になることが多い。 | 人工関節置換術 |
早期発見・早期治療が予後を左右するため、定期的に整形外科医の診察を受けることが重要です。
大腿骨頭壊死の治療法
大腿骨頭壊死の治療法は、大きく分けて保存療法、手術療法、再生医療の3つがあります。
保存療法
保存療法は、初期段階の大腿骨頭壊死に対して行われます。
杖の使用や荷重制限により壊死部への負担を減らし、骨の修復を促します。また、鎮痛剤で痛みをコントロールしたり、骨を強化する薬を使用したりすることもあります。
手術療法
手術療法は、保存療法で効果が得られない場合や、壊死が進行している場合に検討されます。
骨切り術、血管柄付き骨移植、人工関節置換術などがあります。
- 骨切り術:壊死部への荷重を減らすために骨の位置を変える手術
- 血管柄付き骨移植:血流のある骨を移植して壊死部の修復を促す手術
- 人工関節置換術:骨頭が完全に圧潰した場合に人工の関節に置き換える手術
ただし、人工関節は15〜20年程度で摩耗するため、若い年齢で手術を受けると将来的に再手術が必要になる可能性があります。そのため、できるだけ人工関節置換術を避けられるよう、病気の進行を遅らせる生活習慣を保つことが重要です。
再生医療
再生医療は、手術を必要としない治療法の一つです。
再生医療では、他の細胞に変化する能力がある幹細胞や、血液に含まれる血小板を濃縮した液体を利用します。血小板には、炎症を抑える働きがある成長因子が含まれます。どちらも施術は注射や点滴で行うため、手術を必要としないのが特徴です。
当院「リペアセルクリニック」では、これらの再生医療を提供しています。幹細胞治療では、米粒2~3粒ほどの脂肪組織を患者様から採取し、幹細胞を培養して投与します。
再生医療は手術を必要とせず、人工の関節にすることに抵抗がある方でも受けられます。また、幹細胞の投与は日帰りで行えるため、入院も不要です。
大腿骨頭壊死の治療法でお悩みの方は、ぜひ当院リペアセルクリニックへご相談ください。
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大腿骨頭壊死を進行させない!予防における理想的な生活習慣
大腿骨頭壊死を悪化させないためには、以下の生活習慣を心がけることが大切です。
杖の使用
痛みのある側と反対側に杖を持ち、荷重を分散させることで股関節への負担を軽減できます。杖の長さは、立った状態で手首の高さに合わせるのが適切です。
洋式生活
和式トイレや床座りを避け、椅子やベッドを使用する「洋式生活」を心がけましょう。股関節を深く曲げこむ動作が多い日本式の生活は、股関節に大きな負担を掛けます。
適度な運動
水中運動やストレッチで筋力維持を図りましょう。適度な運動は血行促進につながり、骨の修復を助ける可能性があります。
禁煙
喫煙は血流を悪化させるため、禁煙が推奨されます。タバコは骨壊死を加速させるリスクも指摘されているので控えましょう。(文献5)
ストレス管理
ストレスは血流に悪影響を与えるため、リラクゼーションを取り入れることが大切です。深呼吸、瞑想、趣味の時間などを活用しましょう。
体を温める
大腿骨頭壊死は血流障害によって起こります。体を温めることは血行を良くすることにつながるため、お風呂に入るなど体を冷やさないように心がけることも大切です。
これらの生活習慣を工夫しながら、整形外科医の定期的な診察を受けることが、大腿骨頭壊死の進行を防ぐ鍵となります。
まとめ|大腿骨頭壊死になったらやってはいけないこと
今回は大腿骨頭壊死になってしまったら、どのようなことに注意をすべきかに焦点を当てて解説しました。
大腿骨頭壊死は、患者様の生活習慣や行動が、その後の進行や症状を大きく左右する病気のひとつです。
股関節に負担をかける動作を避ける、体重管理を徹底する、飲酒・喫煙を控える、定期的な通院と経過観察を行うことが重要です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
リペアセルクリニックでは、再生医療による治療も提供しています。手術を避けたい方、進行を抑えたい方は、お気軽にご相談ください。
病気に対する理解と自己管理が、大腿骨頭壊死とうまく向き合うポイントとなります。ご自身の病状をしっかりと把握し、進行予防に努めましょう。
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大腿骨頭壊死になったらやってはいけないことに関するよくある質問
大腿骨頭壊死でも仕事は続けられる?
職種や病期によって異なります。以下の表にまとめました。
| 職種 | 継続可否 | 注意点 |
|---|---|---|
| デスクワーク | 継続しやすい | 1時間ごとに休憩を取り、軽いストレッチを行う |
|
立ち仕事 |
制限が必要 | 職場に椅子を用意してもらう、休憩時間を増やすなどの配慮を依頼 |
| 重労働 | 制限が必要 | 職種転換や休職を検討 |
職場への配慮依頼としては、診断書を提出し、上司や人事部に相談することが有効です。産業医との面談も活用しましょう。休職・復職のタイミングは、病期や症状に応じて主治医と相談してください。
大腿骨頭壊死は完治する?
壊死した骨は基本的に自然には再生しませんが、小さな壊死であれば消失する可能性があることが報告されています(文献7)。
適切な治療(保存療法、手術療法、再生医療)で症状をコントロールし、日常生活を送ることは可能ですが、完全な元通りに戻す方法は現時点ではありません(文献4)。
ただし、早期発見・早期治療により、進行を抑えられる可能性が高いため、定期的に整形外科医の診察を受けることが重要です。
飲酒は絶対にやめなければいけない?
アルコールは大腿骨頭壊死の原因の一つであり、骨密度低下のリスクもあるため、基本的には禁酒が推奨されます(文献1)。
とくにアルコール性大腿骨頭壊死の場合は、必ず避けてください。
それでも飲みたい場合は、主治医と相談することが重要です。少量であれば許容される場合もありますが、自己判断での飲酒は避けましょう。
遺伝的に大腿骨頭壊死になりやすい人はいますか?
現在の研究では、大腿骨頭壊死が遺伝的に引き起こされることは確認されていません。
ただし、ステロイド性の骨頭壊死に関しては、骨頭壊死を引き起こす遺伝子がある可能性までは研究でわかっており、今後さらなる研究が望まれます。
どのくらいのステロイドを使うと大腿骨頭壊死になりやすいですか?
明確な危険量はわかっていませんが、長期間にわたり、一日平均約20mgを超える場合は、骨頭壊死のリスクが高まるといわれています。(文献6)
これはプレドニゾロンというステロイドに換算した値ですので、実際に自分がどのような薬をどのくらい使用しているか気になる方は、主治医に確認してみてください。
参考文献
(文献1)
Osteonecrosis of the Femoral Head: Etiology, Pathophysiology, and Management|International Journal of Environmental Research and Public Health
(文献2)
Obesity impairs revascularization and bone healing in a mouse model of osteonecrosis|Journal of Orthopaedic Research
(文献3)
Idiopathic bone necrosis of the femoral head. Early diagnosis and treatment|The Journal of Bone and Joint Surgery
(文献4)
特発性大腿骨頭壊死症|難病情報センター
(文献5)
Influence of cigarette smoking on osteonecrosis of the femoral head (ONFH): a systematic review and meta-analysis|Hip International
(文献6)
Risk Factors and Mechanism for Steroid Induced Avascular Necrosis of the Femoral Head|EBM Consult
(文献7)
Application of biomaterials in treating early osteonecrosis of the femoral head: Research progress and future perspectives|Acta Biomaterialia









