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減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説!

減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説!

レジャーダイバーや潜水作業をされている方で以下のような症状に思い当たりはありませんか?

  • 「股関節が痛む」
  • 「歩きにくい」

これは、もしかしたら「減圧症による骨頭壊死」かもしれません。

減圧症のなかでも、骨頭壊死は「慢性減圧症」とも呼ばれます。急激な圧変化が起きた直後ではなく、時間が経ってから症状が現れる疾患です。日本で潜水を仕事にする人の骨壊死は、欧米諸国と比べて発生頻度が高いことが分かっています。

仕事ではなく、レジャーとしてダイブを楽しむ場合、事前の正しい教育や潜水時間の短縮、そして減圧症発症時における対応、すなわち速やかに治療を行う大切さを知ることで骨壊死を減らせることが分かっています。

しかし、レジャーダイブの増加もあり、安直な教育で知識に乏しい中、ダイブが行われている場合があり、いまだダイブ後、骨壊死が発症する例が後を絶ちません。

そこで、本記事では減圧症による大腿骨頭壊死をはじめとした骨壊死について、その原因や症状・治療について解説をするとともに、減圧症の確かな知識を身に着けて頂くことを念頭に記してまいります。

 

潜水病 骨壊死

減圧症とは?

高い圧がかかる環境下では、より多くの空気が組織や血液中に溶け込みます。空気が溶け込んでしまった状態で急激に圧の低い場所に行くと、組織・血液内の空気は飽和状態となります。溶けきれなくなった空気はそのまま気体に変化するため「気泡」が発生するのです。

この気泡が直接的に血管に入ったり組織を傷つけて血栓を作りやすい状態にしたりします。こうして全身にダメージを及ぼす病態が「減圧症」です。

減圧症が起こりうる代表的な状況は、海底で作業をしたのち急浮上をしたときです。このため、「潜水病」とも呼ばれています。

減圧症による骨壊死がおこるメカニズムと好発部位

減圧症による骨壊死発症の原因として考えられているのは、気泡や血栓が起こり骨の栄養動脈に十分な血液が行き届かなくなることです。また、骨髄内圧が上昇することにより、静脈の流れが阻害されることも関わるとする説もあります。

動脈が詰まったり、静脈の流れが阻まれたりして血液が回らなくなると、やがてその部分の骨は壊死に至ります。

骨は本来、体重や運動による力がかかっても壊れない強さをもつものです。ところがひとたび壊死をしてしまうと、体重や力が掛かった部分は潰れてしまいます。

壊死が起こりやすいのは、骨の端の部分です。多くの骨は他の骨との間で「関節」を形成しています。つまり、壊死して骨が潰れてしまうことで「関節の痛み」「関節の変形」が起こります。

とくに大腿骨頭(股関節の足側)や上腕骨頭(肩関節の腕側)がダメージを受けやすい場所です。他に膝や肘・骨盤などにも認めることがあります。

骨壊死はどんな症状?

壊死のみでは基本的には目立った症状はないことが多いです。壊死した部分が潰れていくと、痛みを自覚するようになります。

例えば最も多い大腿骨頭壊死の場合は股関節痛です。進行すると、足を引きずるようになり日常生活にも大きな支障が出ます。

骨壊死はどのようにして診断するの?

レントゲンは基本的な検査で、骨が潰れて関節が壊れているかを見ることができます。しかし、早期の壊死は発見できません。

レントゲンではっきりしない場合でもMRIを撮影すると壊死がわかります。壊死した部分を取り囲むようにできた血管が豊富な部分が帯状にみえるのが特徴です。

なお、一ヶ所に壊死が見つかると他の部分にもできている可能性があります。その場合は骨シンチグラムという全身の骨の代謝をみる検査を行うことがあります。

骨壊死の治療について

残念ながら、従来の医学では壊死をきたしてしまうと回復できないとされてきました。

壊死が部分的であったり力がかかるところから外れたりしている場合には、鎮痛薬や生活指導などを行いつつ様子を見ることもあります。

また、骨頭に穴をあけて骨髄内圧を下げる「骨穿孔術」をしたり、血管柄つきの骨を移植したりする方法もあります。しかし、いずれも進行例にはあまり効果がありません。

壊死が広かったり壊死部に力がかかりやすかったりする場合や、進行して関節が壊れていく場合は骨切り術や人工関節置換術が行われます。

骨切り術

骨切り術とは、関節面を傷んでないところに調整して負担を減らす手術です。股関節や膝関節などで多く行われており比較的早期例に選択されます。手術直後は患部に力をかけられず、注意しながら生活を送る必要があります。

人工関節置換術

人工関節置換術とは傷んでしまった部分を人工物に変える手術です。関節の一部のみを置換する部分置換術と、全部を取り替える全置換術に分けられます。骨切り術と違い、早いうちから力をかけることができますが、長期経過すると人工物が消耗してしまう可能性があります。

股関節の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

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まとめ・減圧症による骨壊死の症状とその治療法を医師が解説!

骨壊死がいったんおこってしまうと、残念ながら現代の医学では進行を止めることはできません。最大の予防は適切な減圧手順を守ることです。

また、他の減圧症を起こしてしばらくしてから発症することが多いです。軽症であっても、減圧症を起こした後は股関節痛などを認めたら早期に受診をしましょう。

減圧症などの原因のない「特発性大腿骨頭壊死」のガイドラインでは、幹細胞を用いた再生医療が、今後期待される治療であると述べられています。とくに関節破壊が進んでいない早期例に骨穿孔術などと併用していくつかの研究が行われ、良好な治療成績が示されてきました。

減圧症による骨壊死の治療選択肢としても広がっていく可能性は充分にあるでしょう。減圧症による骨壊死でお悩みの方は、再生医療専門の当院にお問い合わせください。

 

No.165

監修:医師 加藤 秀一

参考文献

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小田義直, 香月一朗, 牛島正博, 筒井秀樹, 杉岡洋一. 整形外科と災害外科 38:(4)1431~1436,1990.

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