ガングリオン足の原因と症状、最適な治療法を解説
投稿日: 2024.09.16更新日: 2024.10.07
ガングリオンとは、関節にしこりができる病気です。突然、関節にしこりがあらわれると「なにこれ!」とびっくりし、心配になります。しかし、しこりがガングリオンの場合は放っておいても問題ありません。しかし、足にしこりがある状態は、歩きにくく違和感があるでしょう。大きくなると、痛みが生じてくるため、早めの治療が大切です。
今回の記事では、ガングリオンでしこりができる原因や足にできたときの症状、治療法を詳しく解説します。足にしこりができてお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
ガングリオンとは?
ガングリオンとは、関節周囲に発生する「コブのようにふくらんだ良性腫瘍」です。良性腫瘍のため症状がなく、しこりが気にならない程度なら積極的に治療をしなくても問題ありません。
しかし、ガングリオンの特性として大きくなってくる可能性があるため早めの診断や治療が必要です。また、しこりができた場所によっては、目立つため見た目が気になる場合もあるでしょう。ここでは、ガングリオンの定義や特徴の解説と、具体例を紹介します。
ガングリオンの定義と特徴
ガングリオンの定義は、「ゼリー状の液体がつまったしこり」です。
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これらの組織から、茎をとおってガングリオンの袋の中に関節液が漏れ出し、ゼリー状に固まってしこりができます。
発症の特徴は、20代~50代の女性に発症しやすいですが、足や関節をよく動かす方が発症と関係しているわけではありません。そのため、職業や趣味、生活スタイルは直接的にガングリオンができる原因と関係はないとされています。また、治療を繰り返しても再発しやすいというのもガングリオンの特徴です。
治療方法については、記事の後半で詳しく解説します。
足にできるガングリオンの具体例
足に発生するガングリオンは、内くるぶしや外くるぶし、足の甲、裏、ゆびの関節が好発部位です。具体例として以下のようなエピソードがあります。
<具体例①>足の甲にしこりがあったが、痛みが無いのでそのまま放置していた。ただ、歩きすぎると痛みが出るため、歩きすぎた日は足を休めるように心がけていた。 ある日、足を休めても痛みが引かないため整形外科を受診。ガングリオンと診断され、注射器で中身を抜いてもらった。中身が抜けると徐々に痛みが引いていき、不思議な感覚だった。負担をかけないように言われ、再び痛みが出たらまた中身の液体を抜きに来てくださいと言われた。 <具体例②>新しい登山靴で登山をした2日後に、足の親指の付け根のふくらみに気づいた。 徐々に大きくなり、普段の靴をはくのも難しくなったため、整形外科を受診。ガングリオンと診断され、合わない靴が負担を与えた可能性があると言われた。 注射器で液を抜いてもらったが、完全にはしこりが無くならず、しばらく負担をかけないようにと指導を受けた。合わない靴や激しい運動は避けるように意識し、再度しこりが膨らんできたら受診するように言われた。 <具体例③>仕事やプライベートで忙しい日々が続いており気づかなかったが、忙しさが落ち着くとふと膝が膨らんでいるのに気づいた。数日後、膝が2倍ほどの大きさにまで膨らんでいた。しかし、痛みはなく膝が曲げにくいこと以外、問題はなかった。 しかし、しこりが気になるため、内科を受診したところ、整形外科に行くように言われ、整形外科を受診。ガングリオンと診断された。注射器で中の液体を抜いてもらい、解消した。再発の可能性を医師から説明されたが、今のところ再発はしていない。 |
ガングリオンの原因
上記の具体例をみてもわかるように、ガングリオンは関節に負担がかかった場合に、しこりが現れています。しこりを放っておくと大きくなり、徐々に症状を自覚し始めます。ガングリオンは、関節に負担がかかれば誰でも発症する可能性がある病気です。
ここでは、しこりができる原因や関節へ負担がかかる状況について解説します。
主な原因
ガングリオンが形成される原因について、残念ながら詳しくは解明されていません。
関節包(かんせつほう)や靭帯(じんたい)、腱鞘(けんしょう)などを損傷したのをきっかけにできるのではないかと考えられています。転倒やケガなどで足の関節を痛めた場合、関節に強い負担がかかります。また、姿勢などの問題で関節に継続的な負担がかかっている場合も、足にしこりができやすい状態といえます。
繰り返し負荷がかかる状況
繰り返し足に負荷がかかるのは、以下のような状況です。
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これらの状況は、繰り返し足に負荷がかかっているといえますが、だからといって必ずしもしこりができるわけではありません。「しこりができるきっかけになるかもしれない」程度の要因ととらえておきましょう。
ガングリオンの症状
ガングリオンが原因でできたしこりは、基本的に症状はありません。しかし、大きくなることで、違和感や痛み、しびれなどを訴える方が多いです。
ここでは、しこりができたときの痛みや不快感、ほかの症状との違いについて解説します。
痛みや不快感の詳細
できたしこりを放っておくと痛みや不快感、違和感の原因になります。理由として、しこりが大きくなると関節周囲の神経や血管を圧迫するため、症状があらわれるのです。主に、以下のような症状があらわれます。
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また、関節を圧迫するために、違和感や不快感、関節の動かしにくさを感じるでしょう。たとえば、靴が入らなくなる、歩きにくい、しゃがみにくいなど、悪化すると日常生活にも影響を及ぼします。
他の症状との違い
しこりがあらわれる病気は他にもありますが、ガングリオンとほかの病気には症状の違いがあります。なかでも、紛瘤や脂肪腫は、しこりのように皮膚が膨らみ異物感があります。見た目はガングリオンと似ていますが、しこりの内容物やできる部位に違いがあります。
<紛瘤>
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<脂肪腫>
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紛瘤も脂肪腫も、治療が必要な場合、一般的には手術で取り除きます。
しこりの存在に気づいていても症状がない場合、「痛くないし平気だろう」と、様子をみて受診を後回しにしてしまうことがあります。しかし、別の病気との鑑別も必要なため、しこりの存在に気づいたら、一度医療機関を受診しておくと安心でしょう。
ガングリオンの治療法
ガングリオンの治療は、主に以下の2つの方法でおこなわれます。
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ここでは、各治療法や、自然治癒の可能性、治療効果や費用について紹介していきます。
⓵非侵襲的治療(保存的療法)
まず、保存的療法における自然治癒の可能性や、治療方法、その効果について解説します。
自然治癒の可能性
ガングリオンは、30%~40%は自然に消失するといわれており、治療をしなくても自然治癒の可能性があります。しこりは、大きくなったり小さくなったりを繰り返しますが、その経過の中で自然に治癒するケースがあります。
ガングリオンならば、良性腫瘍のため目立った症状がなければ経過観察でもよいでしょう。
注射治療の方法と効果
ガングリオンの治療は、まず、注射器で内容物の吸引治療がおこなわれます。
注射器でおこなう吸引治療の特徴
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注射の針程度の傷しかつかないため、比較的痛みも少ない処置といえます。傷跡も残らず痛みも少ないため、外来で処置が可能です。
内容物の吸引をしたあとにステロイドの注入をおこなう場合があります。これは、患部の炎症を抑え、痛みを和らげる効果を期待しておこなう処置です。ステロイドの注入は必ずおこなうわけではなく、医師の診察と判断により実施が検討されます。
一般的に、まずは注射器での内容物の吸引治療をおこない、再発を繰り返す場合には手術療法が検討されます。
②侵襲的治療(手術療法)
ここでは、手術の詳細や費用について解説します。
手術の詳細と費用
手術療法では、以下の2つの手術方法があります。
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手術自体は、日帰りでできる場合も多く、手術時間は20分~30分程度で終わります。ガングリオンができた位置や数が多い場合、神経の奥に入り込んでいるものなど、まれに治療が難しいケースがあります。そのような場合には、日帰り手術ではなく入院治療が必要です。術後2週間後に抜糸をおこない、術後3週間程度は激しい動きは控え安静にしましょう。
手術には以下のようなリスクがあります。
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手術といわれると、治療に対して不安が大きくなりますよね。医師からの説明をよく聞き、わからないことは手術の前に確認しておくと安心です。不安な気持があることも伝えておきましょう。
一般的な手術の費用は以下の通りです。
負担割合 | 負担金額 |
1割負担 | 約3000円前後 |
3割負担 | 約9000円前後 |
そのほか、診察代や検査代、処方箋代などがかかります。手術部位によっても費用が異なるため、詳しくは手術を受ける病院に確認してください。
ガングリオンの予防策
ガングリオンの原因ははっきりと解明されていないため、確実な予防策はありません。しかし、少し対策をすれば、発症のリスクを下げることができます。
ここでは、ガングリオンの発症予防や悪化予防のためにできる日常生活での注意点や、スポーツをするときの注意点について解説します。
日常生活での注意点
足のガングリオンは、合わない靴をはき続けたり、歩き方や姿勢が悪かったりすると、一部の関節に負担がかかります。そのような状態はガングリオンを発症するきっかけになったり、すでにあるガングリオンを悪化させる可能性があります。靴はサイズの合ったはきやすい靴を選び、歩き方や姿勢にも気をつけましょう。
ガングリオンを強い力でマッサージするのも良くありません。軽くさする程度なら問題ありませんが、力を加えマッサージをおこなうと、痛みが悪化したりしこりが大きくなったりする可能性があります。
また、痛みが出てきた場合には、無理に動かさず安静にしましょう。患部に熱感がある場合には炎症が起きている可能性が考えられます。保冷剤や濡らしたタオルで冷やし、早めに医療機関を受診しましょう。
スポーツ時の対策
スポーツをするときには、関節に負担をかけないようにし、ケガに気をつけましょう。
ガングリオンは、関節包(かんせつほう)や靭帯(じんたい)、腱鞘(けんしょう)などを損傷した場合にできると考えられています。ケガがきっかけでガングリオンができる可能性があるため、スポーツをする前にはしっかり準備運動やストレッチをしてから始めましょう。
また、ケガをしにくい体作りも大切です。関節の柔軟性を高めるストレッチや筋トレを取り入れ、ケガをしにくい強い関節をつくりましょう。
適切な治療と管理が大切
ガングリオンは珍しい病気ではないため、経験した方もいるでしょう。ここでは、ガングリオンの早期発見・早期治療の重要性と、適切な治療を受けた場合について解説します。
早期発見と治療の重要性
ガングリオンは良性の腫瘍ですが、早期発見するに越したことはありません。しこりが大きくなる前に治療ができれば、痛みやしびれなどの症状を起こさずに済みます。また、まれにガングリオンではなく悪性腫瘍だったケースもあります。
しこりがあると感じたら、早めに医療機関を受診し、適切な検査や治療を受けましょう。
適切な治療を受けた結果
ガングリオンは、適切な治療と管理をおこなえば再発のリスクを下げられます。ただし、ガングリオンができた位置や数が多い場合、神経の奥に入り込んでいるものなど、治療が難しいケースがあります。いくつものガングリオンが、ブドウの房のようにできた症例もあり、必ずしもできたガングリオンがひとつとは限りません。
受診する医療機関は、整形外科が一般的です。そのほか、形成外科、皮膚科、外科でも治療が受けられます。適切な治療を受けるためには、医療機関を受診し、担当の医師と治療方針について十分話をしておく必要があるでしょう。
まとめ
ガングリオンは、女性に多くみられる疾患です。関節に負担がかかることで、関節液が漏れ出しゼリー状に固まりしこりができます。合わない靴や歩き方、姿勢の悪さは、足の関節に負担がかかり、ガングリオンができるきっかけになります。足の関節に負担がかからないよう気を付けるとともに、関節の柔軟性を高め、負担がかかっても耐えられる関節をつくることが大切です。
良性腫瘍のため治療はしなくても問題はないですが、痛みやしびれなどの症状が問題になる場合には、早めに整形外科を受診しましょう。
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