モートン病にマッサージは効果ある?自宅でできる痛みの緩和方法とは
モートン病による痛みで悩んでいませんか?モートン病は中年女性に多く、足裏の痛みが主症状であるため、日常生活に支障が出やすい疾患です。少しでも痛みを緩和して日常生活を送りたいと思っている方はいるでしょう。
この記事では、モートン病の痛みを緩和する方法を解説し、マッサージやストレッチは効果があるのかという疑問にもお答えします。モートン病の痛みで悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
目次
モートン病とは
モートン病は、足趾間のしびれ・疼痛・灼熱感などの神経症状が出現する疾患です。症状が出現する部位は、中指と薬指の間が多いですが、人差し指と中指、薬指と小指の間に発症する場合もあります。原因は、つま先立ちのような姿勢を長時間続けることで、足趾につながる神経や軟部組織を圧迫するためです。ハイヒールをよく履く女性や長時間立って行う仕事をしている方に発症しやすく、環境要因が影響する疾患でもあります。
モートン病の検査・診断
モートン病の検査では、身体検査や画像診断が用いられます。身体検査では、マルダーテストがあり、足趾の付け根付近で足を横から挟むように圧迫し、疼痛が誘発されるとモートン病が疑われます。また、足趾間を叩いて放散痛が現れるチネルサインがみられるとモートン病による神経障害の疑いです。
画像診断では、CT検査で他の足部疾患と区別し、MRI検査により原因を特定します。CTは骨の状態を観察する検査であるため、モートン病では異常が見られません。一方、MRIは骨・腱・靭帯・神経を観察できるため、モートン病の障害部位や原因を特定できます。
モートン病の治療
モートン病の治療では、足底挿板の作成や運動療法などの保存療法が有効です。足底挿板で様子をみて症状が回復しなければ、手術を行う場合もあります。以下に保存療法と手術療法の内容を具体的に解説します。
保存療法
保存療法では、足底挿板の作成・靴の変更・運動療法・薬物療法が実施されます。第一選択として、足底挿板の挿入や靴の変更が大切です。以下で具体的な内容を解説します。
足底挿板の作成
足底挿板は、義肢装具士に依頼してオーダーメイドで自分の足に合ったものを作成します。モートン病は前足部の横アーチ低下に伴って、神経の圧迫がおこるため、アーチをサポートする足底挿板が必要です。また、代用可能なものとしてインソールの購入もおすすめです。インソールは市販で売られており、オーダーメイドではない商品が多いため、どんなものが良いか医師や専門店のスタッフに相談してみましょう。
靴の変更
靴の変更では、ソールが柔らかい靴・ヒールが低い靴を選択します。つま先が狭い靴や高いヒールの靴は前足部が圧迫されて、モートン病の症状が悪化しやすいです。そのため、踵が低くつま先にゆとりがある靴を使用しましょう。また、市販で売られている靴はインソールが薄いことが多く、衝撃吸収効果が得られにくいです。そのため、よりクッション性のあるインソールを別で購入するかオーダーメイドで注文するのが良いでしょう。
運動療法
モートン病の治療では、運動療法により足のアーチを高めることが大切です。足には内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチの3つのアーチがありますが、特に横アーチを高めるのが重要です。3つのアーチを構成する骨や筋肉を以下の表で紹介します。
骨 | 筋肉 | |
内側縦アーチ (土踏まず) |
踵骨・距骨・舟状骨・内側楔状骨・第1中足骨 | 後脛骨筋・前脛骨筋・長母指屈筋・長趾屈筋・母趾外転筋 |
外側縦アーチ | 踵骨・立方骨・第5中足骨 | 長腓骨筋・短腓骨筋・小趾外転筋 |
横アーチ | 内側・外側・中間楔状骨・立方骨 | 母趾内転筋・長腓骨筋 |
3つのアーチは、上記のイラストのような位置関係になっています。これらのアーチは相互に関連しており、横アーチが低下すると内側縦アーチ・外側縦アーチも影響を受けることが少なくありません。そのため、モートン病では偏平足を合併する人も少なからずいます。
薬物療法
モートン病の薬物療法では、消炎鎮痛剤や湿布によって痛みや炎症を抑えます。これは、モートン病を治すというより痛みに対処するための治療方法です。痛みが軽減しない場合は、ステロイド注射や局所神経ブロック注射を行う場合もあります。近年では、動注治療という治療法も広がりつつあります。動注治療とは、動脈に直接薬剤を注射する治療法で、新生血管を閉塞させ、炎症や痛みを緩和するものです。炎症の治癒過程では、異常な新生血管が残ることがあり、その場合に効果的です。
手術療法
手術療法は、運動療法や薬物療法でも改善しない場合に実施します。主に、神経乖離・神経腫摘出・深横中足靭帯などモートン病に関わる疼痛部位の切離です。原因となっている部位自体を取り除くことで、症状の改善を図ります。そのうち神経を取り除く手術では、手術後はそこから先の感覚はなくなってしまい、違和感が残る場合もありますが、術後1週間から2週間で以前と同じように歩けるようになります。
モートン病は回復する?
モートン病は、上記で解説した治療法を行うことで改善する場合がほとんどで、予後良好な疾患です。しかし、長期間放置すると治りにくくなったり痛みが脛やふくらはぎまで広がったりします。また、治った後に再発する可能性もあるため、普段の生活習慣や靴・インソールの見直しが大切です。
モートン病はマッサージでよくなる?
マッサージにより筋肉の柔軟性は改善する可能性がありますが、モートン病自体が治ることはありません。痛みの原因は、神経の圧迫によるものであり、荷重により痛みが出現するため、マッサージしても痛みが良くならない場合がほとんどです。しかし、筋肉の緊張により神経の圧迫を招いている場合には、効果があるかもしれません。そのため、マッサージよりも手術で根本的に原因を除去したり、インソールで障害部位への負担を減らすのが良いでしょう。
モートン病はストレッチでよくなる?
モートン病では、障害部位への負担軽減とアーチの維持が重要です。モートン病でおきやすい横アーチの低下は、偏平足も同時に起きやすいです。偏平足もモートン病も足裏の疲労や痛みが出現しやすいため、足裏やふくらはぎのストレッチが症状改善に良いと考えられます。しかし、ストレッチは一時的な対処方法なため、運動療法によりアーチを高めるか足底挿板が重要です。
簡単にできる痛みを緩和する方法
マッサージやストレッチでは痛みを改善するのが難しいと解説しました。では、痛みを緩和する方法には何があるのか紹介します。
モートン病では、神経を圧迫しないための対策が必要です。
具体的には、
- ・足趾や足裏の運動でアーチを高める
- ・適切な靴やインソールで荷重を分散
- ・歩き方や姿勢の意識
- ・長時間同じ姿勢を取らないこと
が大切です。詳しく解説していきます。
足趾や足裏の運動
モートン病で重要な横アーチを高めるためには、足内在筋(足の裏の筋肉)を鍛えるのが大切です。足内在筋とは、足の裏にある筋肉で、足趾の動きやアーチ形成に関与しています。足外在筋とは、下腿の骨から足底に渡って付着する筋肉で、足関節の動きに関与しています。以下にアーチを高めるための運動を3つ紹介します。
やり方 | |
段差でタオルギャザー | 前足部をタオルのうえに乗せて立ち、足趾を使ってタオルを手前に引き寄せるのが一般的なタオルギャザーです。このやり方では、外在筋が主に働きます。 モートン病に対して行う場合、指先のみはみ出して段差の上に立ち、 その状態で足趾を曲げます。そうすると、より内在筋を使った運動が可能です。 |
指広げ運動 | 親指と小指を広げた状態で固定し、人差し指から薬指までを浮かすことで足の内在筋を鍛えます。親指と小指が一緒に浮かないように注意します。 |
指上げ運動 | 親指のみ地面につけた状態で、他の指を上にあげます。この運動では、小趾外転筋・短母趾屈筋・母趾内転筋などの筋肉を鍛えられます。 |
適切な靴やインソールの選択
モートン病による痛みを緩和するには、幅が広く指先が圧迫されにくい靴を選びましょう。前足部の幅をひもやベルトで調整できる靴が良いです。また、インソールは横アーチの形状をサポートし、負荷を分散するものが良いです。インソールの種類には、ロッカーソールというタイプがあり、一般的なインソールより足趾が屈曲しない構造のため、圧迫されにくい特徴があります。
長時間同じ姿勢を取らない
長時間同じ姿勢を取らないようにすると、痛みが緩和できるでしょう。長時間立ち続けたり、歩き続けると足に負荷がかかり続けて痛みを発症します。特に、アーチが低下しているモートン病の方では、衝撃を分散させる能力が低下しているため、足裏に負担がかかりやすいです。仕事で長時間立っていることが多い場合には、適切な靴に変更すると足への負担を減らせるでしょう。
モートン病による合併症を予防するには
モートン病による合併症では、痛みやしびれが広範囲化、外反母趾など足部の変形が考えられます。痛みを回避するような歩き方を繰り返していたり、靴が合ってないことはモートン病を悪化させるだけでなく、さまざまな足部の疾患にもつながります。そのため、合併症を予防するには、適切な靴の選択・インソールの挿入・長時間同じ姿勢を取らないの3点が重要です。
痛みを緩和して過ごしやすい身体を取り戻しましょう。
モートン病の痛みを緩和するには、足底挿板が第一選択となり、インソール・薬物療法・運動療法などが必要です。
症状によっては、手術を行う場合もあります。ストレッチやマッサージによる改善効果はあまり見られず、アーチを高めることと負荷を分散するのが大切です。そのため、普段からできることでは、幅の広い靴やヒールが低い靴を使用・長時間の立位や歩行を避ける、などがあります。
また、足趾の運動も自宅で簡単にできるため、ぜひ取り入れてみてください。