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足のしびれの原因は?医師が説明

足のしびれの原因 医師が解説
公開日: 2025.02.12

「足のしびれ」…とても気になりますよね。その裏には、糖尿病や腰椎椎間板ヘルニアといった病気が潜んでいることもあるのをご存知でしょうか? 実は、足のしびれは、初期症状として現れることが多いのです。この記事では、足のしびれの原因となる代表的な5つの病気を、医師の視点から詳しく解説します。簡単なセルフチェックの方法もご紹介しますので、ぜひ読み進めてみてください。

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足のしびれの原因となる病気5選

足のしびれ。それは誰もが一度は経験するありふれた症状です。しかし、その裏には深刻な病気が潜んでいる可能性があることを忘れてはいけません。

糖尿病性神経障害

糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなる病気です。この高血糖状態が続くと、血管や神経がダメージを受け、しびれなどが出てきます。その中でも、足のしびれは糖尿病性神経障害の初期症状としてよく見られます。

初期のしびれは、まるで靴下を履いているような感覚の鈍さや、足先がピリピリするといった軽いものから始まります。多くの患者さんは「気のせいかな?」と軽く考えてしまいがちですが、放置すると症状は徐々に進行し、やがて激しい痛みや灼熱感、あるいは逆に全く何も感じなくなる症状も出てきます。

糖尿病性神経障害は、血糖コントロールの状態と密接に関係しています。適切な治療を行わずに高血糖状態が続けば、神経障害は進行し、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。

腰椎椎間板ヘルニア

椎体と椎体の間には、クッションの役割を果たす椎間板が存在します。この椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれが生じるのが腰椎椎間板ヘルニアです。

腰椎椎間板ヘルニアによる足のしびれは、片側の足に起こることが多く、神経が圧迫される部位によって症状の出方も様々です。例えば、坐骨神経が圧迫されると、お尻から太ももの裏、ふくらはぎにかけて、痛みやしびれが生じます。

くしゃみや咳など、お腹に力が入る動作で症状が悪化することも特徴です。また、重症になると、足に力が入りにくくなったり、膀胱直腸障害が出たりすることもあります。

脊柱管狭窄症

脊柱管とは、背骨の中を通る神経の通り道です。加齢やその他の要因によってこの脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれが生じるのが脊柱管狭窄症です。

脊柱管狭窄症の特徴的な症状は「間欠性跛行」です。これは、しばらく歩くと足がしびれて歩けなくなるものの、少し休むとまた歩けるようになるという現象です。まるで一定の距離を歩くと休憩が必要なように感じられます。

進行すると、頻尿や便秘などが現れることもあります。また、馬尾症候群という重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。馬尾症候群は、腰仙骨部における神経の束である馬尾が圧迫されることで、両足のしびれや麻痺、膀胱直腸障害などを引き起こす緊急性の高い疾患です。

末梢神経障害

末梢神経障害は、脳や脊髄から枝分かれした末梢神経が様々な原因で障害されることで、手足にしびれや痛み、筋力低下などの症状が現れる病気の総称です。糖尿病やアルコールの過剰摂取、ビタミン欠乏、特定の薬剤の副作用などが原因で発症します。

末梢神経障害の症状は、手足の末端から現れ、次第に中心に向かって広がっていく「ストッキングとグローブ」型の分布を示す場合があります。初期には、手足の指先にジンジンする、ピリピリするといった感覚異常が現れます。進行すると、しびれの範囲が広がり、痛みや灼熱感、冷感、触覚の過敏などが現れることもあります。

原因によって治療法が異なるため、自己判断で対処せず、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。末梢神経障害の有病率は人口の1%から7%と決して少なくなく、特に50歳以上では増加する傾向があります。

馬尾症候群

馬尾症候群は、腰椎の下部にある馬尾神経が圧迫されることで、両足のしびれや痛み、排尿・排便障害などの症状が現れる病気です。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腫瘍などが原因となることが多いとされています。場合にっては、手術が必要になり、迅速な診断と対応が不可欠です。

腰痛や足のしびれなどから始まり一般的な鎮痛薬が効かない場合や、特に尿閉を伴う場合は、馬尾症候群の可能性を強く疑う必要があります。馬尾症候群は比較的まれな疾患ですが、放置すると神経が不可逆的な損傷を受け、後遺症が残る可能性があります。

一刻も早い診断と治療開始が予後を大きく左右するため、少しでも気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。

足のしびれのセルフチェック3つの方法

足のしびれは、多くの人が経験する症状ですが、その原因は様々です。深刻な病気が隠れているケースもあるため、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。まずは、ご自身の状態を把握するために、以下の3つのセルフチェックを行ってみましょう。

どの指がしびれているか確認する

足のどの指がしびれているかを確認することは、原因特定の重要な手がかりとなります

神経は、それぞれ特定の領域を支配しています。この支配領域をdermatome(皮膚分節)と言います。例えば、腰から出ている神経(腰神経)は、足の様々な領域を支配しており、しびれの場所によって、どの腰神経が影響を受けているかを推測することができます。

 

 親指、人差し指、中指にしびれがある場合:L4という第4腰椎から出る神経が損傷

  • 薬指と小指にしびれがある場合:L5という第5腰椎から出る神経損傷

  • 足の裏全体がしびれている場合:S1という第1仙椎から出る神経が損傷

もちろん、必ずしもこの通りになるとは限りません。複数の神経が同時に影響を受けている場合や、腰ではなく、より末梢の神経が影響を受けている場合もあります。

さらに、末梢神経障害の場合、手足の末端から症状が現れ、次第に中心に向かって広がっていく「ストッキングとグローブ」型の分布を示すことがあります。これは、手足の最も遠い部分から神経障害が始まり、徐々に体幹に向かって広がっていくためです。

どの指がしびれているかを記録しておくことで、医師に伝えるべき重要な情報となります。

しびれの範囲を確認する

しびれは、足先だけですか?それとも、足全体、あるいは太ももやお尻まで及んでいますか?

しびれの範囲も、原因を特定する上で重要な情報です。範囲が狭い場合は、特定の末梢神経の圧迫などが考えられます。例えば、腓骨神経麻痺は下肢で最も一般的な絞扼性神経障害であり、多くの場合、神経が腓骨頭レベルで圧迫されることで発症し、足首が上がらなくなる足下垂が生じます。

逆に、範囲が広い場合は、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの可能性が高くなります。腰椎椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである椎間板の一部が飛び出し、神経を圧迫することで激しい痛みやしびれを引き起こします。また、脊柱管狭窄症では、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、間欠性跛行と呼ばれる、しばらく歩くと足がしびれて歩けなくなるものの、少し休むとまた歩けるようになるという特徴的な症状が現れます。

しびれの範囲を具体的に記録しておきましょう。「右足」「足の甲」「くるぶしより上」のように、左右、場所、範囲を記録しておくと、医師とのコミュニケーションがスムーズになります。

動作によってしびれが悪化するか確認する

しびれは、常に同じように感じますか?特定の動作によって悪化したり、軽減したりしますか?

動作との関連を確認することで、原因の特定に役立ちます。例えば、長時間立っていたり、歩いたりすることでしびれが悪化する場合は、脊柱管狭窄症の可能性があります。前屈して悪化する場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。逆に、安静時にしびれが強く、動くと楽になる場合は、血行不良が原因となっている可能性もあります。

症状が強くなる動き、軽減する動きを具体的に記録しておきましょう。「10分歩くとしびれ始める」「座ると楽になる」のような感じです。

これらのセルフチェックは、あくまでご自身の状態を把握するためのものです。

参考文献

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監修医師 リペアセルクリニック 理事長
     医師 坂本貞範

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