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アキレス腱断裂とは|症状・原因・治療法からスポーツ復帰の基準まで現役医師が解説
アキレス腱に違和感があった際、「腱が断裂したのでは」と不安を感じる方もいるでしょう。アキレス腱断裂はその名のとおり、アキレス腱が切れてしまう外傷で、日常生活およびスポーツ復帰に時間を要するため、早期の対応が重要といえます。
アキレス腱断裂には前兆が見られる場合もあるので、違和感を覚えた際は見逃さないよう注意が必要です。本記事では、アキレス腱断裂の概要や症状、原因について解説します。
治療法やスポーツ復帰までの全治期間、再断裂予防法もまとめているので、アキレス腱断裂の疑いがある方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
アキレス腱断裂とは
アキレス腱断裂とは、ふくらはぎの後ろに位置する腓腹筋(ひふくきん)と、その奥にあるヒラメ筋の腱が合わさったアキレス腱が一部もしくは完全に切れてしまう外傷です。一般的に、アキレス腱断裂はスポーツ活動中に起こりやすく、好発年齢は30〜40代といわれています。(文献1)
しかし、アキレス腱は加齢による脆弱化でも断裂する可能性があります。そのため、スポーツをしていない50代以降は日常生活中にアキレス腱断裂を発症しやすい傾向です。(文献2)
スポーツ選手がアキレス腱を断裂すると、パフォーマンスに影響します。アキレス腱断裂を発症した場合は、迅速かつ適切な対応が重要です。
アキレス腱断裂の症状
アキレス腱断裂には、主に次のような症状が見られます。
- 「プチッ」「パン」などの音がする
- ふくらはぎが叩かれたような感覚がある
- ふくらはぎからかかと後方に痛みが生じる
- 足に力が入らずつま先立ちや階段昇降、歩行が困難になる
症状は人によって異なりますが、アキレス腱が断裂した際に破裂音が生じる傾向にあります。また、痛みが生じるだけでなく、歩行困難になるのもアキレス腱断裂の特徴です。
アキレス腱炎との違い
アキレス腱断裂とアキレス腱炎は、いずれもスポーツ活動中に起こる疾患です。しかし、以下のように症状が異なります。
|
疾患 |
特徴 |
主な症状 |
|---|---|---|
|
アキレス腱断裂 |
アキレス腱が切れることで生じる疾患 |
|
|
アキレス腱炎 |
アキレス腱まわりの炎症や微小損傷により生じる疾患 |
|
アキレス腱断裂とアキレス腱炎の違いを理解しておくと、応急処置などの適切な対応が可能です。
アキレス腱断裂の原因
アキレス腱断裂の原因はさまざまですが、激しいトレーニングを行ったり、腱に負荷をかける運動をしたりする場合に発生すると考えられています。
とくに断裂を起こしやすいのは、サッカーやバレーボール、バスケットボールといった腱に負荷をかけるスポーツです。(文献3)
実際に、激しいトレーニングによって、腱に通常以上の負荷がかかった場合にアキレス腱断裂が発生すると考えられる結果が、調査で報告されています。(文献4)
また、スポーツ以外の原因として考えられるのは、以下の2つです。
- 加齢
- 長時間の立ち仕事
加齢に伴う脆弱化や長時間の立ち仕事によるアキレス腱への負荷も、断裂の原因となるため、違和感などがあった場合は見逃さないよう注意が必要です。
アキレス腱断裂の前兆
アキレス腱断裂はいきなり切れるのではなく、前兆もあります。切れる前の前兆は、以下の通りです。
- アキレス腱に違和感がある
- アキレス腱が腫れている
- ふくらはぎやかかとが痛む
- 足がひどくむくんでいる
前兆がある場合、放置したままアキレス腱に負荷をかけると断裂を起こしやすくなります。また、アキレス腱が傷ついたり周囲に炎症が起きたりする症状のアキレス腱炎やアキレス腱周囲炎も、放置すると断裂の可能性を高めるため注意が必要です。
簡単な自己チェック方法としては、アキレス腱の部分に凹みがあるかどうかを左右で比べるとわかりやすいです。また、痛めた側の足でつま先立ちができるかどうかも重要なポイントです。
痛みが強い場合やつま先立ちができない場合は、アキレス腱断裂の可能性がありますので、早めに医療機関を受診してください。
アキレス腱断裂の診断方法
ここでは、アキレス腱断裂の診断方法を2つ紹介します。
- Thompsonテスト
- 超音波検査・MRI検査
各診断方法の特徴をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
Thompsonテスト
アキレス腱断裂が疑われる場合、Thompsonテストと呼ばれる触診で診断を確定します。Thompsonテストは、アキレス腱断裂を診断する一般的な方法です。
診断は、次の手順で行います。
- うつぶせになる
- 患者の膝を直角に曲げ、ふくらはぎをつまむ
- つま先が上下しなければ陽性
正常な場合、ふくらはぎをつまんでも足首は下へ向かう動きとなる底屈が見られます。しかし、アキレス腱が断裂している場合は、底屈が見られなくなるため陽性と判断可能です。
超音波検査・MRI検査
アキレス腱断裂は、問診や触診などで診断できますが、身体所見から判断できない場合にMRIや超音波検査を実施します。なお、X線検査では異常が確認できないケースがほとんどです。
超音波検査やMRI検査では、アキレス腱断裂の範囲や程度を詳細に把握可能なことから、断裂を確定する際に用いられます。保存療法と手術どちらが適しているかなど、適切な治療を検討する上で、超音波検査やMRI検査は有効な診断方法になります。
アキレス腱断裂の治療方法
アキレス腱断裂は、症状によって治療法が異なります。ここでは、主な治療方法を2つ解説します。
- ギプスや装具を用いた保存療法
- 手術療法
自分に合った治療方法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
また、エコー検査で足関節を底屈位(つま先を下げた状態)にした際に、断裂した腱の断端同士が接触するかどうかも確認します。断端が短縮して接触しない場合は、手術療法が望ましいと考えます。
ギプスや装具を用いた保存療法
アキレス腱断裂の症状が軽度、もしくは手術をしない場合はギプスや装具を用いて足首を固定し、安静に過ごす保存療法を行います。
安定期間を過ぎたあとは、装具を用いたトレーニングを実施し、回復へ向けてリハビリを行うのが一般的な流れです。
ギプスや装具を用いた保存療法は、手術と比較すると体への負担が少ないメリットがあります。ただし、手術と比べて回復までの期間が長くなるため、スポーツや立ち仕事をしている場合は復帰まで時間がかかる傾向といえます。
手術療法
アキレス腱が完全に断裂している、もしくは早期回復を目指す場合は手術療法を実施します。主な手術方法は、以下の2つです。
|
術式 |
手術内容と特徴 |
|---|---|
|
直視下縫合術 |
|
|
経皮的縫合術 |
|
手術療法は、保存療法と比べて再断裂のリスクが低いのに加えて、回復期間が短いため早期にスポーツ復帰や日常生活を送れるのが特徴です。ただし、後遺症や合併症の可能性とあわせて、入院が必要になります。
再生医療
アキレス腱断裂には、再生医療の治療法の1つとなるPRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)療法が行われています。PRP療法は、患者さんから採血した血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を傷んでいる場所に注射する再生医療です。
血液を遠心分離器にかける時間も含めて最短30分で施術可能なのに加えて、入院や手術を必要としません。PRP療法は日帰りで施術が可能なため、入院を避けたい場合におすすめの治療法です。
アキレス腱断裂の予防法
アキレス腱を断裂すると、長期間の治療が必要となるため日頃の予防が大切です。予防に効果的な方法は、以下の3つです。
- 日頃から運動を取り入れアキレス腱を鍛える
- アキレス腱をサポートする靴を選ぶ
- 運動後はアキレス腱のケアを行う
アキレス腱断裂の予防には、日頃からストレッチやトレーニングを取り入れ、筋肉の柔軟性を保つのがポイントになります。また、再発防止には医師や理学療法士の指示に基づいたリハビリや、スポーツ復帰後はアキレス腱に負担をかけない軽い動きからはじめるのが重要です。
アキレス腱断裂におけるスポーツ復帰までの全治期間
アキレス腱を断裂した場合、スポーツ復帰までには時間がかかります。ここでは、以下の期間に分けてスポーツ復帰までの全治期間を解説します。
- 松葉杖の使用期間
- 歩けるまでの期間
- リハビリメニューと期間
全治期間をもとに治療スケジュールを立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
松葉杖の使用期間
松葉杖の使用期間は手術後と保存期間で、いずれも1〜2週間ほどが目安です。ギプスなどで足首を固定している期間は、足に体重をかけることが制限されます。
そのため、1〜2週間ほどは、アキレス腱に負荷をかけないよう松葉杖での歩行が必要です。固定期間は無理せず安静に過ごし、治療経過を見ながら徐々に装具へ移行していきます。装具へ移行すると同時に、松葉杖の使用は中止します。
歩けるまでの期間
装具を外して歩けるまでの期間は、治療法によって異なります。歩けるまでの期間目安は、以下の通りです。
|
治療法 |
歩けるまでの目安 |
|---|---|
|
手術療法 |
損傷後2か月 |
|
保存療法 |
損傷後3か月 |
保存療法は、手術療法と比べて装具を外して歩けるまでに1か月ほど時間がかかります。手術療法と比べて保存療法の方が歩けるまでに時間がかかる理由は、ギプスなどで固定してアキレス腱の自然な癒合を待つ必要があるためです。アキレス腱を断裂した際は歩けるまでの期間を考慮し、自分に合った治療を検討しましょう。
リハビリメニューと期間
アキレス腱断裂のリハビリの期間は人によって異なりますが、全治期間は6か月ほどかかります。スポーツ復帰する際は、足関節の可動域を正常な状態に戻すことが条件です。また、つま先立ちでかかとを20回以上連続で上げられる状態が、スポーツ復帰を許容できる範囲といえます。
アキレス腱断裂のリハビリメニューは、以下の4つです。
- 足首を反らして可動域を広げる運動
- ふくらはぎの筋力強化運動
- 体重を乗せる練習
- スポーツや社会復帰に向けた動作練習
アキレス腱以外のリハビリを行う理由は、足首以外の筋力を維持するためです。アキレス腱断裂後は、膝や膝関節、足の指などもアキレス腱とあわせて積極的に動かすリハビリを取り入れます。
執刀医や術式ごとに術後リハビリテーションのプロトコル(計画)がありますので、早く復帰したいという気持ちが強い方こそ、医師や理学療法士の指導に従って進めることが一番の近道です。
アキレス腱断裂は日常生活に支障をきたすため早期治療が重要
アキレス腱断裂は歩行が困難になり、日常生活に支障をきたします。スポーツ復帰にも時間を要するため、症状が見られた場合は速やかに専門機関を受診しましょう。
治療法には保存療法と手術法があり、スポーツ復帰期間が異なります。治療法の特徴を理解した上で、自分に合った治療を検討する必要があります。また、手術をしない治療法として、再生医療を選択するのも手段の1つになります。
アキレス腱断裂は違和感や腫れといった前兆が見られる場合もあります。初期の対応が重要になるため、前兆を見逃さないようにしましょう。
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アキレス腱断裂に関するよくある質問
アキレス腱断裂は自然治癒しますか?
アキレス腱を断裂した場合、自然に治癒されることはありません。放置すると回復までに時間がかかるため、アキレス腱断裂を疑う場合は速やかに受診しましょう。アキレス腱断裂は、適切な治療の実施により早期回復が期待できます。
アキレス腱断裂を放置するとどうなりますか?
アキレス腱断裂を放置すると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋が上手く機能しなくなり、歩行やつま先立ち、階段の昇降が困難になる可能性があります。
また、治療しないでいると、慢性的な痛みといった後遺症が出るケースも少なくありません。後遺症のリスクを避けるためにも、放置せず適切な治療を行いましょう。
早期に受診して、適切な固定や手術療法を行うことが、回復への近道となります。
アキレス腱断裂治療後のつっぱり感といった後遺症はいつまで続きますか?
後遺症を緩和する期間の目安は人によって異なり、なかには数か月ほどかかる場合があります。つっぱり感といった後遺症が生じる主な原因は、リハビリを十分に行わず日常生活やスポーツ復帰した場合に起こります。
焦って無理をしてしまうと再発のリスクも生じるため、アキレス腱断裂後は医師や理学療法士の指導をもとに、リハビリを継続的に行うことが大切です。
アキレス腱断裂の治療は手術療法と保存療法どっちが良いですか?
手術のほうが早期回復が見込めるほか、再断裂率が保存療法に比べて低い傾向にあります。ただし、手術の場合は入院が必要です。入院を避けたい場合は、日帰りで治療が可能な再生医療を検討するのも手段の1つになります。
参考文献
アキレス腱断裂に対する術後早期理学療法の1例|尾道市立市民病院リハビリテーション科奥川若湖






















