アキレス腱が切れたら放置しない!応急処置と治療法を解説【医師監修】
公開日: 2023.05.12更新日: 2024.10.23
「アキレス腱が切れたときは、放置して治るの?」
「アキレス腱が切れたときの応急処置と治療法は?」
アキレス腱の断裂(だんれつ)は、スポーツ中などに起こりやすい怪我です。
ただ、主に40代以上の方はスポーツをしていなくても、年齢などによる影響から日常生活で断裂する場合もあります。
「いずれ治るだろう」と放置すると、歩行困難や慢性的な痛みなど、後遺症が出る可能性もあるので、早急に医療機関を受診しましょう。
今回はアキレス腱が切れたときの音や応急処置、検査方法や治療法などを詳しく解説します。
読み進めていただければ、アキレス腱が切れたときの対応を理解できます。ただ、自己判断せずに必ず医療機関で医師に相談してみてください。
目次
アキレス腱が切れるときは「ブチッ」「パン」などの音がする
アキレス腱は、体の中でもとても太い腱で、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と、かかとの骨をつないでいます。
アキレス腱が切れてしまうと、人によって程度は変わりますが、かかと周辺に強い痛みが生じます。
実際に怪我をされた方から話をお聞きすると、以下のような経験をしている場合が多いようです。
「後ろから誰かにかかとを蹴られたような強い衝撃と痛みがあった」 「ブチッといった断裂音が聞こえた」 |
アキレス腱が切れた直後は、歩行困難になる場合も多く、少しずつ腫れや内出血があらわれます。
何かしらの症状が出ていない場合でも、放置せず早急に医療機関を受診するのが大切です。
アキレス腱が切れた直後の応急処置
「アキレス腱が切れたかも」と思ったら、運動中のときはすぐに中断し、できる限り歩行を避けましょう。
固定できるもの(新聞紙・段ボールなどで代用可)があるときは、足首が動かないように固定できると良いです。
周りの人が応急処置を手伝ってくれるときは、うつ伏せの姿勢になりながら、固定用具を足元の下に敷いて、固定用具ごと包帯などで巻いてもらいます。
また、腫れや痛みを防ぐために足を心臓より高くして、足首を氷などで冷やす方法をお試しください。
アキレス腱が切れたまま放置すると後遺症が出る場合もある
アキレス腱が切れたまま放置すると、歩行困難になる場合があります。
アキレス腱が切れると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋がうまく機能しません。以下のように、足首を動かす動作に影響が出る可能性もあります。
・つま先立ちが難しくなる |
また、時間が経過すると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋が少しずつ痩せて、筋肉が萎縮します。
ほかにも、断裂した部位を治療せずに放置すると、慢性的な痛みが残る可能性もあるでしょう。
アキレス腱が切れたときは後遺症を出さないためにも、適切な治療を受けるのが重要です。なるべく早急に整形外科を受診しましょう。
アキレス腱が切れたかを判断する検査方法
アキレス腱が切れたかどうかは、視診や触診だけでも、ある程度判断できます。
アキレス腱が断裂した部位には、delle(デレ)と呼ばれる凹みがあり、皮膚表面からでも触れると確認できるからです。
また、アキレス腱が切れた可能性がある方には、うつ伏せの姿勢になってもらい、ふくらはぎを圧迫して、足首が動くかどうかを確認するトンプソンテストを行います。
アキレス腱がつながっていれば、ふくらはぎを圧迫すると自然に足首が動きます。しかし、アキレス腱が切れている場合、ふくらはぎを圧迫しても足首は動きません。
ほかには、超音波でもアキレス腱の断裂を確認できます。別の部分に骨折がないかレントゲンで撮影したり、触診でわかりづらいときはMRI検査をしたりする場合もあります。
アキレス腱が切れたときの治療方法は2つ
アキレス腱が切れたときの治療方法は、手術を行わずにギプスや装具を使って治療する「保存療法」と、断裂したアキレス腱を直接糸で縫合する「手術療法」に分けられます。
どちらが良いのかは、個人の状況によっても異なるので、十分に担当医と相談しながら決めてみてください。
保存療法【手術を避けたい場合】
保存療法では、断裂したアキレス腱が離れないように、足首を底屈(つま先立ちする際の方向)にした状態でギプスによる固定を行います。
その後、専用の装具を使って、少しずつ歩行練習などを行う流れです。
手術療法【スポーツで復帰したい場合】
スポーツ選手や若い世代など、体を使う機会が多い方は、手術をする場合が多いです。
ただし、手術をしたとしても、すぐにスポーツができるわけではなく、保存療法と同じく専用の装具を使った治療期間が必要になります。
再断裂するリスクは手術療法のほうがやや低いですが、どちらも再断裂の危険性はあります。また、手術をすると細菌感染などのリスクも生じるでしょう。
ただ、スポーツの復帰を目指したい方が、必ず手術療法を選ばないといけないわけではありません。担当医と話し合って納得した上で治療法を選ぶのが大切です。
保存療法と手術療法のメリットとデメリットについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
まとめ|アキレス腱が切れたら放置せず治療を始めよう
アキレス腱の断裂は、スポーツをしている方だけでなく、誰にでも起こりうる怪我です。ただ、放置すると歩行困難や慢性的な痛みなど、後遺症が出る可能性もあります。
「アキレス腱が切れたかも」と感じたときは、運動している場合は中止し、足の固定と冷やす応急処置が大切になります。
保存療法と手術療法など、放置せずに適切な治療を行うと、後遺症を防ぎながら、日常生活やスポーツへの復帰が可能となります。
アキレス腱の断裂を疑う症状がある場合は、速やかに整形外科を受診しましょう。
当院「リペアセルクリニック」では、自身の幹細胞を培養して投与する「再生医療」を含めて、アキレス腱断裂などの治療を行っています。
スポーツ外傷は⼿術をしなくても治療できる時代です。痛みや症状に合わせた治療を行いますので、まずはお悩みや症状をご相談ください。
この記事がアキレス腱が切れた際の応急処置、治療方法を知る上でのご参考になれば幸いです。
アキレス腱が切れたときによくあるQ&A
アキレス腱が切れたときに、よくお聞きする質問をまとめました。
Q.いつからスポーツの復帰ができますか?
A.スポーツに復帰できる時期は個人差がありますが、一般的には保存療法の場合は6カ月程度、手術療法でも4カ月程度の治療期間が必要になることが多いです。
復帰してからも、少しずつ運動強度を上げていく必要があり、再断裂を防ぐための筋力トレーニングなどのリハビリは必須です。
アキレス腱の断裂における全治期間を知りたい方は、以下の記事で詳細を解説しています。仕事への復帰期間とあわせて確認してみてください。
Q.手術はどのような方法で行いますか?
A.基本的に手術は、ふくがい(うつぶせの姿勢)で行うのが一般的です。
アキレス腱を断裂している部分に近い皮膚を切開し、直接アキレス腱に糸をかけて縫い合わせます。
縫い方にはいくつかの方法があり、どのような方法を選択するかは医師の判断によりますが、いずれの方法でもしっかりと縫合できます。
また、手術は全身麻酔や腰椎麻酔(下半身麻酔)で行う場合が多いでしょう。ただ、局所麻酔のみの日帰りで行っている病院もあるので、各担当医に詳細をご確認ください。
Q.アキレス腱が切れるのを予防するには?
A.アキレス腱の断裂を予防するには、ふくらはぎの筋肉における柔軟性を保つために、下腿三頭筋などのストレッチやトレーニングをするのがおすすめです。
また、運動するときはいきなり激しく足を動かさず、事前に軽く体のストレッチなどを実施します。
アキレス腱の断裂を予防するストレッチやトレーニングの詳細が知りたい方は、以下の記事で解説しています。再発予防にも期待できるので、ぜひ参考にしてみてください。