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【医師監修】冬に肩こりが起きやすい原因とは?対策や放置のリスクを詳しく解説
「冬になると肩こりがひどくなる」
「肩こりの原因は何だろう」
「実は何かの病気ではないか」
このようにお考えの方も多いことでしょう。
冬は寒さで血行が悪くなったり、筋肉が硬くなったりするために肩こりが起きやすい季節です。また冬の室内環境の影響で肩こりが生じる場合もあります。
本記事では、冬特有の肩こりの原因やセルフケア、受診が必要な症状などについて解説します。
冬に向けた肩こり対策がわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
冬に肩こりが起こりやすい原因
冬に肩こりが起こりやすくなる、または悪化しやすくなる原因は主に以下の4点です。
- 冷えによる血行不良と筋肉のこわばり
- 寒さによる姿勢の変化
- 自律神経の乱れとストレスの影響
- 室内環境の影響
冷えによる血行不良と筋肉のこわばり
冬になると、寒さの影響で肩周辺の筋肉である僧帽筋がこわばり、肩こりが起こりやすくなります。
僧帽筋は、首の後ろから肩、背中にかけて広がる筋肉です。
寒さによって筋肉が血行不良を起こすと、新陳代謝が低下します。その結果、疲労物質が筋肉にたまり、こわばりを引き起こします。
筋肉のこわばりにより生じる現象が、血管および末梢神経の圧迫です。血管が圧迫されると血流が低下し、さらに筋肉がこわばるという悪循環が生じます。この悪循環により末梢神経がダメージを受けた結果、こりやしびれなどが生じます。
肩こりとは、疲労やストレスによって肩およびあごの筋肉が緊張し、硬くなった状態です。
2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況によると、男性は人口千人に対して53.3人、女性は人口千人に対して105.4人が肩こりを訴えています。(文献1)
下記の記事で、肩こりの治療や予防などについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
寒さによる姿勢の変化
寒くなると、冷えが原因で身体が震えてしまい、肩をすくめる姿勢が増えます。これも肩こりの一因です。
人の体は震えることで筋肉を収縮させ、熱を生み出そうとしています。冷えると身体が震えるのはそのためです。
肩をすくめている姿勢は、言い換えると、肩に力が入った姿勢です。この姿勢が長時間続くと筋肉に無理な負担がかかり、疲れやすくなります。
無理な姿勢は、肩が冷えたときと同様に筋肉の血行不良を引き起こし、結果として肩こりにつながります。
自律神経の乱れとストレスの影響
冬は寒くなったり寒暖差が大きくなったりするため、身体が急激な温度変化に対応できず、自律神経が乱れやすい時期です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、冬は交感神経が優位な状況にあります。
冬の寒さや寒暖差は身体にとって大きなストレスです。ストレスが強い状況でも、交感神経が優位になります。
また、冬になると血管を収縮させたり心臓の動きを早めたりして体内で熱を産生します。血管収縮や心拍数増加は、交感神経のはたらきによるものです。
交感神経が優位になると筋肉の緊張や血流の変化が生じ、肩こりに影響を及ぼします。
室内環境の影響
冬特有の室内環境としてあげられるものが暖房です。暖房をつけると空気が乾燥するため、呼吸が浅くなります。
乾燥した空気は、異物を外に出す機能やウイルスから身を守る機能を低下させます。(文献2)浅い呼吸は、乾燥した空気をなるべく肺に入れないようにするための防御反応です。
浅い呼吸は身体を防御する反面、肩こりをはじめとする筋肉のこわばりを引き起こします。
呼吸が浅いと、筋肉の細胞が酸素不足になるため、呼吸数が増加します。呼吸数の増加は、肩や首周りの筋肉に負担をかける因子の1つです。
加えて、浅い呼吸は交感神経を優位にします。交感神経優位の状況は筋緊張や血流の変化につながり、肩こりに影響を及ぼします。
冬の肩こりでよく見られる症状
冬の肩こりでよく見られる症状は、頭痛やめまい、吐き気などです。睡眠の質低下や全身の疲労感が生じる場合もあります。
頭痛やめまい、吐き気
肩こりのある方に起こりやすい頭痛は「緊張性頭痛」と呼ばれるものです。(文献3)肩や首周りの筋緊張が高まり、血流障害や神経痛が生じるために起こるとされています。頭痛以外の症状は、めまいや吐き気、手のしびれなどです。
緊張性頭痛は、精神的ストレスや天候の変化などでも悪化します。
緊張性頭痛のほかにも、さまざまな種類の頭痛があります。主なものを以下に示しました。
- 片頭痛
- 群発頭痛
- 脳血管疾患による頭痛
脳血管疾患による頭痛は、命に関わる場合もあります。肩こりに加えて、頭痛や吐き気が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
睡眠の質低下および全身の疲労感
肩こりは、肩や首の筋肉が緊張している状態です。筋肉の緊張によりリラックスできず、眠りも浅くなりがちです。肩こりがあると眠っているときも不快感があり、気持ちよく眠れないこともあります。寝返りが打ちづらくなり、睡眠中何度も目が覚める場合もあります。
その結果、もたらされるものが睡眠の質低下です。睡眠の質が低下すると眠りも浅くなり、疲労が蓄積されます。疲労の蓄積は日中の集中力低下や倦怠感を招き、慢性疲労につながります。
韓国の論文では、首や肩の痛みがひどいほど、また肩の動きが不自由なほど、ミドルエイジ(35歳から64歳まで)女性の睡眠の質が低下するとの結果が示されました。(文献4)
【悪化する?】冬の肩こりを放置した際に起こりうるリスク
冬に肩こりを放置すると、慢性化および自律神経への悪影響といったリスクが起こりえます。本章では、それぞれのリスクについて詳しく解説します。
肩こりの慢性化
寒さが続く冬は血流がとどこおり、筋肉の硬直が続きがちです。そのため、肩こりが改善しにくく慢性化しやすい状況です。
マッサージや湿布でケアしても、改善は一時的なケースも少なくありません。
ノルウェーの論文では、肩のこりや痛みがある方は、筋肉・血管の反応性が低下し、痛みが長引きやすい体質になるとのデータが示されました。(文献5)
肩こりの慢性化は、自律神経の乱れを引き起こす可能性があります。日本の研究者による論文では、肩こりを含めた慢性的な筋肉や骨格の痛みは、自律神経の乱れや仕事の生産性低下に影響するとのデータが示されました。(文献6)
自律神経への影響
肩こりや痛みといった症状は身体にとって大きなストレスであり、自律神経を乱す原因の1つです。
肩の痛みや肩関節周囲炎がある方は、自律神経が乱れやすいとの研究データも存在しています。(文献7)肩関節周囲炎、いわゆる五十肩の主な症状は肩関節の痛みや可動域制限(関節の動きが悪くなること)です。
冬の寒さや寒暖差による身体へのストレスも、自律神経の乱れにつながります。そのため、冬は肩こりによって自律神経が乱れる時期といえるでしょう。
自律神経の乱れは、イライラや胃腸の不調、睡眠の質低下など全身にさまざまな悪影響をもたらします。
冬の肩こりを改善・予防するためのセルフケア
肩こりのセルフケアとしてあげられるものは、主に以下のとおりです。
- 温熱ケア
- 肩回りの運動
- 室内環境の整備
- 生活習慣の改善
温熱ケア
温熱ケアは血行促進や筋緊張の緩和をもたらし、肩こりの改善・予防につながります。
肩の痛みや機能障害を有する患者に高周波治療用深部温熱装置を用いたところ、痛みの軽減や機能回復が認められたとの結果が示されました。(文献8)また、肩関節周囲炎患者に対し、ストレッチと深部加温を実施したところ、ストレッチと表面加温のグループよりも痛みが軽減されたとのデータも存在します。(文献9)
温熱ケアの具体的な方法は、主に以下のとおりです。
- 入浴で全身を温める
- 蒸しタオルで肩周囲をピンポイントに温める
- カイロを肩甲骨まわりに貼る
カイロの長時間使用は、低温やけどのリスクがあるため控えましょう。
カイロを使った肩こりのケア方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
肩回りの運動
肩甲骨を動かすストレッチや肩回しは、肩こりのケアとして有効です。肩回りを動かすことで、血流改善や筋肉の柔軟性向上、こりの予防などの効果が期待できます。
温熱療法とストレッチの併用で、肩の痛みが軽減されたとの研究データもあります。(文献9)
具体的な運動の例を以下に示しました。
- 両肩を前後に大きく回す
- 両手を肩に当てて、円を描くように動かす
- 肩をすくめた後、ストンと落とす
強い痛みが出ない範囲で、続けて行うことをオススメします。
室内環境の整備
室内環境で大切なのは、室温と湿度です。湿度を一定に保ち乾燥を防ぐと呼吸が深くなり、肩や首周りの筋肉の負担軽減につながります。
冬の室内は、温度20〜23℃、湿度40〜70%が望ましい環境です。暖房機器と加湿器を併用して室温と湿度を調整しましょう。
暖房でエアコンを使うときは、吹出口からの風が身体に直接当たらないようにしてください。風が直接当たると、血液循環が悪くなり、肩や首のこりが引き起こされやすくなるためです。
生活習慣の改善
生活習慣改善の1つが運動習慣を取り入れることです。ストレッチやウォーキング、ヨガなどを取り入れてみましょう。
運動習慣がある方は、首や肩の痛みのリスクが低いといった研究データも示されています。(文献10)
食生活も肩こりケアの一部です。筋肉疲労回復のため、タンパク質やビタミンB群を含む食品を積極的にとりましょう。タンパク質を多く含む食品は、肉や魚、大豆製品、卵などです。ビタミンB群は、豚肉やレバー、マグロ、大豆などに多く含まれます。
ビタミンB群を多く含む食品は、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
疲労やストレス軽減もセルフケアの1つです。そのためにも、十分な睡眠をとりましょう。6時間以上の睡眠が目安です。
パソコンを使う方は、正しい姿勢を心がけましょう。具体的には以下のとおりです。
- 背筋を伸ばす
- 椅子に深く腰掛ける
- 足裏全体を床につける
スマホを操作するときも、背筋を伸ばす、スマホを目の高さにするなどの正しい姿勢を心がけてください。
冬の肩こりで医療機関を受診すべきサイン
冬の肩こりの中には、医療機関を受診すべきものも存在します。主なものは以下のとおりです。
- 強い頭痛や吐き気、しびれを伴う肩こり
- 片側に集中する肩こり
- 再発を繰り返し長引く肩こり
強い頭痛や吐き気、しびれを伴う肩こり
肩こりに加えて、強い頭痛や吐き気、しびれがある場合は、なんらかの疾患が隠れている可能性があります。その1つが頸原性頭痛です。
頸原性頭痛とは、首の関節や筋肉、椎間板といった首の構造的な異常が原因で起こる頭痛を指します。右側だけ、もしくは左側だけなど、首の病変がある方だけに起こる頭痛が一般的です。(文献11)
頭痛や吐き気・しびれを伴う場合は、脳血管疾患の可能性もあります。思い当たる症状があるときは、早急に医療機関を受診しましょう。
片側に集中する肩こり
片側に集中する肩こりも、疾患のサインである可能性が大きいとされます。その1つが頸椎症性神経根症です。
頸椎神経根症は、首の骨(頸椎)から出る神経の根元が炎症を起こしたり損傷したりしたことで、神経の働きに異常が出る疾患です。身体の片側の神経が圧迫されると、片方の肩から腕にかけて痛みやしびれ、筋力低下が生じます。(文献12)
片側に集中する肩こりには、脳血管疾患が隠れているケースもあります。
片側に鋭い痛みを感じ、突然出現する肩こりや、短時間で急速に悪化する突然の肩こりは、脳梗塞の前兆である可能性が高いものです。早急に医療機関を受診しましょう。
以下の記事で、突然の肩こりと脳梗塞の関係を解説しています。あわせてご覧ください。
また、脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。
再発を繰り返し長引く肩こり
温熱療法やストレッチで一時的に改善されてもすぐに再発する慢性化した肩こりは、医療機関受診が望ましいといえます。
肩こりの原因が筋肉の緊張ではなく、なんらかの疾患である可能性が否定できないためです。
肩こりの原因疾患としては、以下のようなものがあげられます。
- 肩関節周囲炎
- 脊髄症(頸椎の構造異常)
- 自律神経失調症
- 顎関節症
症候性肩こりと呼ばれる、疾患による肩こりの場合は、原因疾患の治療が必要です。
冬は肩こりが起きやすい季節!改善しない場合は医療機関を受診しよう
冬は寒さによる血流悪化や筋緊張、室内の乾燥による浅い呼吸などの影響で肩こりが起こりやすい季節です。肩こりだけではなく、頭痛やめまい、吐き気といった症状や睡眠の質低下をもたらすことも少なくありません。
肩こりを放置すると慢性化し、自律神経に影響を及ぼす場合もあります。
肩こり改善や予防のためのセルフケアが、温熱療法やストレッチなどです。
しかし、強い頭痛や吐き気を伴う肩こりや、片側だけに集中する肩こり、再発を繰り返す肩こりの場合は、早急に医療機関を受診しましょう。なんらかの疾患が隠れている可能性があるためです。
当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。冬の肩こりにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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冬の肩こりに関するよくある質問
冬の肩こりはパジャマも起因となりますか?
パジャマの種類によっては、肩こりの原因となりうるものもあります。代表的なものが、フード付きのパジャマです。
パジャマに付いているフードは就寝時に首の下に溜まり、首の動きを妨げる可能性があります。その結果、寝返りがしにくくなり、肩こりや頭痛などを引き起こす可能性を高めます。
パジャマを選ぶときは、フードがないものにしましょう。
冬の肩こりにおすすめのグッズはありますか?
気軽に使えておすすめのグッズは使い捨てカイロや、肩をあたためる専用のサポーター、温熱シートなど、主に温熱ケアに用いるものです。各種通販サイトやドラッグストアなどで購入可能です。
各種温熱ケアグッズは、長時間使用すると、低温やけどを起こす可能性があります。取扱説明書を読んで、正しく使用しましょう。
冬の肩こり以外に寒いと体が痛くなる病気はありますか?
坐骨神経痛や肋間神経痛などのほか、膝関節痛や腰痛などがあげられます。また、冬になると関節リウマチによる関節痛が強まる場合もあります。
主な原因は、寒さによる血行不良や筋肉の収縮による神経の圧迫、自律神経の乱れなどです。
参考文献
Effects of deep and superficial heating in the management of frozen shoulder|PubMed Central













