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【医師監修】脊柱管狭窄症が手遅れになるリスクを解説|後悔しないための治し方や予防法も紹介

脊柱管狭窄症 手遅れ
公開日: 2025.12.13

「歩くと足がしびれて休まないと進めない」

「このまま歩けなくなったらどうしよう」

年齢を理由に放置していたら症状が進み、今さら治療しても手遅れなのではと不安に思う方もいるでしょう。

脊柱管狭窄症は、放置すると神経への圧迫が進み、回復が難しくなる疾患です。しかし、早期に治療を始めれば症状の改善が期待できます。

本記事では、脊柱管狭窄症が手遅れになるリスクについて詳しく解説します。治療法や予防法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

当院リペアセルクリニックでは、電話相談も実施しております。脊柱管狭窄症の症状が手遅れなのか不安な方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。

脊柱管狭窄症を放置して手遅れになるリスク

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されて起こる疾患です。

脊柱管狭窄症を放置すると、神経への圧迫が徐々に強まり、日常生活に深刻な支障をきたすようになります。最初は腰や脚の軽いしびれ程度でも、進行すると歩行困難や排尿障害など取り返しのつかない症状へと悪化するケースもあるため、注意が必要です。

脊柱管狭窄症を放置すると起こるリスクを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

歩行障害

脊柱管狭窄症が進行して手遅れに近づくと現れる症状の1つが「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」の悪化です。間欠性跛行とは、歩いて足に痛みやしびれが生じた際に、少し前かがみで休むと症状が和らぎ再び歩けるようになる状態です。

初期では15分ほど歩けた状態でも、放置すると10分、5分と連続して歩ける時間が短くなっていきます。最終的には、家の近所のゴミ出しやスーパーでの短い買い物など、ごくわずかな距離でさえ、途中で何度も立ち止まらなければ移動できなくなります。

この状態は、単に移動が不便になるだけではありません。外出そのものが億劫になり、自分の足で好きな場所へ行けるという、当たり前だった自由が失われる深刻な障害です。

足の筋力低下・麻痺

神経への圧迫が長期間にわたって続くと神経そのものがダメージを受けるため、足の筋力が徐々に低下し、やがて麻痺に至る危険性があります。

初期症状のサインの具体例は、以下のとおりです。

  • 自分では意識していないのにスリッパが脱げる
  • カーペットの縁など、何もないはずの場所でつまずく

症状がさらに進行すると、足首がだらりと垂れ下がったままになる「下垂足(かすいそく)」という状態になり、歩行が著しく難しくなります。最終的には、足がほとんど動かせなくなり、車椅子が必要になるケースも珍しくありません。

転倒による骨折のリスクも格段に高まり、自立した生活を維持するのが困難になる「手遅れ」といえる状態です。

強い痛み

脊柱管狭窄症は慢性的な痛みが続きますが、進行すると症状が一層強くなり、安静にしていても痛みやしびれが続くようになります。

脊柱管狭窄症の痛みは長時間立つ・歩く・背筋を伸ばすなどの動作で増し、座るとやや楽になるのが特徴です。

しかし、放置すれば痛みが慢性化し、夜間も眠れないほど強まる場合があります。安静にしていても激しい痛みが続くため、良質な睡眠を妨げたり、日常生活に影響を及ぼしたりと、心身ともに疲弊する原因につながります。

神経への圧迫が長期間続くと、神経自体の機能が低下し、治療しても痛みやしびれが残る「神経障害性疼痛」を引き起こすケースも少なくありません。

脊柱管狭窄症が進行すると、強い痛みへの恐怖から身体を動かすのを避けるようになり、結果として筋力低下や症状を悪化させます。

排尿・排便障害

脊柱管狭窄症が進行すると、膀胱や直腸のコントロールが難しくなり、排尿・排便障害を引き起こします。排尿・排便障害の原因は、脊柱管のもっとも下部に位置する神経の束である「馬尾(ばび)神経」の圧迫です。

具体的な症状は、以下のとおりです。

  • 尿意を感じにくい
  • トイレが近くなる
  • 残尿感がある
  • 失禁
  • 便意を感じられない
  • 便秘

排尿・排便に関する症状が出現した場合、手術などの治療を早急に受ける必要があります。放置すれば、自力での排泄が困難になる可能性もあるため、ただちに専門医による診断と治療が必要です。

【手遅れになる前に確認】脊柱管狭窄症の重症度評価

脊柱管狭窄症は、症状の進行度や代表的な症状である「間欠性跛行」を目安に軽度から最重度まで4段階に分けられます。それぞれの進行度と症状は、以下のとおりです。

進行度

主な症状

歩行能力の目安

軽度

・腰や足に痛みやしびれが出る
・少し休めば回復する

30分以上は連続で歩ける

中等度

・間欠性跛行の症状がはっきりと現れる
・少し休まないと先に進めない

10〜20分程度の歩行で休憩が必要

重度

・安静時でも腰や足に痛みやしびれが現れる
・足に力が入りにくい

・何もないところでつまずく

10分未満の歩行で間欠性跛行が生じる

最重度

・足の痛みやしびれ、筋力低下が見られる

・排尿・排便障害が現れる

5分未満の歩行で間欠性跛行が生じる

軽度の症状では「年のせい」と放置するケースも珍しくありません。しかし、放置して症状が重度以上に進行した場合、神経組織は回復が難しいほどのダメージを受け始めています。

神経は一度深く傷つくと、手術しても完全に元通りになるのが難しくなるため、早期に適切な対応できるか否かが治療後の経過に大きく左右します。放置して手遅れになる前に、早めに整形外科を受診しましょう。

脊柱管狭窄症の治し方

脊柱管狭窄症の治療は、症状の重さや生活への影響度に応じて選択されます。軽度〜中等度の段階では、保存療法を中心に痛みの軽減や機能回復を目指します。(文献1)

改善が見られない場合や神経障害が進行している重度以上では、手術療法の検討が必要です。近年では、再生医療を取り入れた治療法も登場し、体への負担を抑えながら回復を促す選択肢が広がっています。

それぞれの治療方法について解説するので、参考にしてください。

保存療法

保存療法は、脊柱管狭窄症の軽度〜中等度の症状に対して行われる基本的な治療で、神経の圧迫を和らげ、痛みやしびれを軽減するのを目的としています。具体的な治療方法を以下にまとめました。

治療方法

治療内容

薬物療法

消炎鎮痛剤や血流改善薬・ブロック注射などで痛みやしびれを抑える

装具療法

コルセットを装着し、姿勢を安定させて狭窄を起きにくくする

理学療法

熱を利用して、痛みの軽減や筋肉の緊張緩和・血流を改善する

リハビリ

姿勢の改善や背筋・腹筋の強化を通じて脊柱への負担を軽くする

薬物療法では、痛みに対して内服薬や湿布などの消炎鎮痛剤が処方されます。症状の程度により、血流を改善して症状を和らげる血流改善薬や、神経の炎症に働きかけるブロック注射も用いられるケースも多いです。

コルセットを装着する装具療法では、姿勢を安定させて狭窄を起きにくくできるため、痛みの軽減が期待できます。

ほかにも、温熱療法を用いた理学療法や、腹筋・背筋を鍛えて背骨を支える力を高めるリハビリも脊柱管狭窄症に対する保存療法の1つです。

保存療法は狭くなった脊柱管を元に戻す治療ではありませんが、症状を上手にコントロールし、日常生活の支障を減らすのを目的としています。

手術療法

保存療法を数カ月続けても症状の改善が乏しい場合や、あるいは歩行障害が著しく日常生活に大きな支障をきたしている場合に検討されるのが手術療法です。手術療法には、主に以下の2つが挙げられます。

手術の種類

内容

除圧術

狭くなった脊柱管内の骨や靭帯を取り除き、神経への圧迫を解消する

固定術

不安定な脊柱管やゆがんだ背骨を金属製のスクリューやボルトで固定する

除圧術は、狭窄の原因となっている骨や靭帯の一部を切除し、物理的に神経の圧迫を取り除く方法です。固定術は、背骨の不安定性を改善する方法で、除圧術と併用されるケースもみられます。

近年では内視鏡を用いた手術も普及し、体への負担が少なく入院期間も短縮されています。手術により歩行機能の改善や痛みの軽減が期待できる一方、回復には一定期間のリハビリが欠かせません。

医師と十分に相談し、手術の適応を慎重に判断するのが重要です。

手術療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

再生医療

再生医療は、自身の脂肪から抽出した成分を利用して、組織の修復能力を高め、痛みの改善を目指す新しい治療の選択肢です

当院では、脂肪から採取した幹細胞を脊髄腔内に直接注射する「脊髄腔内ダイレクト注射療法」を実施しています。脊髄腔ダイレクト注射療法は、抗炎症作用や組織修復作用を持つ注入成分によって、神経周囲の環境を改善し、痛みやしびれを和らげる効果が期待されている治療法です。

体への負担が少なく、手術を避けたい方や高齢者にも適しています。脊柱管狭窄症に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。

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脊柱管狭窄症を手遅れにしない予防法

脊柱管狭窄症の進行を食い止め、手遅れにしないためには、以下の生活習慣を見直すのが重要です。

  • 正しい姿勢で背中への負担を減らすように意識する
  • 適度な運動を習慣化する
  • 腰への負担を減らす

腰を反らす姿勢は脊柱管を狭めるため、できるだけ正しい姿勢を心がけましょう。日常生活では、少し前かがみの姿勢を意識するのが有効です。

次に、腹筋や背筋といった体幹の筋肉を鍛えると、背骨を支える天然のコルセットの役割を果たし、腰への負担を大きく軽減します。なかでも、ウォーキングや水泳など、腰に負担をかけずにできる運動がおすすめです。

また、腰への負担を減らすように意識するのも、重要です。長時間同じ姿勢を避けたり、重いものを持つ際は腰を曲げないようにしたりと地道に努力すると、症状の進行を食い止める効果が期待できます。

脊柱管狭窄症は手遅れになる前に受診しよう

脊柱管狭窄症は、放置するほど神経への圧迫が進み、歩行障害や排尿障害など手遅れな状態に陥る恐れがあります。

しかし、早期発見と適切な治療で多くの症状は改善が期待できます。症状の重症度を見極め、保存療法・手術療法・再生医療などを状況に合わせて選択するのが大切です。

日常生活では、正しい姿勢や腰に負担がかからないように意識し適度な運動を習慣化すると、手遅れな状態に進行するのを防げます。「年のせいかも」と自己判断で放置せず、違和感を感じたら整形外科を受診しましょう。

脊柱管狭窄症の手遅れな状態に関するよくある質問

脊柱管狭窄症は手術しないで治すことができますか?

脊柱管狭窄症の症状のうち、軽度から中等度では、薬物療法・リハビリなどの保存療法で症状の改善が期待できます。

ただし、狭くなった脊柱管を物理的に元通りに広げて完治させるのは、手術以外の方法では困難です。とくに、歩行障害や排尿障害が現れた場合は、神経の損傷が進んでいる可能性があり、保存療法での回復が難しくなります。

手術が必要な状態まで脊柱管狭窄症が進行しないようにするためにも、早めの受診が欠かせません。

脊柱管狭窄症の手術後に後遺症はありますか?

脊柱管狭窄症の手術後、多くのケースでは歩行障害や痛みの改善を実感しますが、まれに後遺症が残る場合があります。後遺症の症状は以下のとおりです。

  • 手術後の痛み
  • しびれや焼けるような痛み

手術後は、傷口だけでなく、周辺筋肉・関節などにも痛みが現れるケースがあります。また、手術時に神経が刺激されるため、しびれや痛みを伴う場合があるのも事実です。

手術は神経の圧迫を除去する目的で実施されますが、傷ついた神経を完全に回復できるわけではありません。ただし、後遺症は時間とともに改善するケースも多く、リハビリを継続すると機能回復を促せます。

痛みが強い場合は、我慢せずに主治医に相談しましょう。

参考文献

(文献1)

腰部脊柱管狭窄症の診断治療|日本医科大学整形外科学教室